説明

透明複合材料及び透明フィルムの製造方法

【課題】熱変化に対する線膨張率が小さく、表示装置用基板に好適に使用することができる透明複合材料を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示される重合性リン酸エステルモノマー(A)及び平均粒子径が5〜300nmのアルミナ粒子(B)を必須成分とし、メチルメタクリレートを含有しない硬化性組成物を硬化してなる透明複合材料、その材料から得られる透明フィルム及びその製造方法。


(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はアルキレン基を表し、Mは1価のカチオンを表す。nは1〜10の数を表し、mは1〜3の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明複合材料及び透明フィルムの製造方法に関する。さらに詳しくは、透明で耐熱性があり低線膨張率、かつ垂直方向の複屈折(Rth)が小さい光学的等方性の高い透明フィルムに成形できる透明複合材料、その材料から得られる透明フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置や有機EL表示装置用の表示素子基板、カラーフィルター基板、太陽電池用基板等としては、ガラスが広く用いられている。しかしながらガラス基板は割れやすく、曲げられない、比重が大きく軽量化に不向きなどの理由から、近年その代替としてプラスチック素材が検討されている。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホンからなる基板が提案されている(例えば、特許文献1(特開2004−9362号公報)参照)
【0003】
しかしながら、これら従来のガラス代替用プラスチック素材は、高温で保持したり、加熱処理した場合に熱変形してしまうことがあった。近年の表示基板のフィルムに要求される温度は200℃以上と高くなっているため、従来の方法では熱収縮やそりなどの変形が発生してしまう。そこで、熱変形の抑制方法として樹脂フィルムに無機微粒子フィラーを添加する方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献2(国際公開第2009/069429号パンフレット)には無機微粒子フィラーとして球状のコロイダルシリカを添加した樹脂組成物が開示されている。粒子の形状が等方的なため硬化物の線膨張係数等の熱機械物性は、無機フィラーとマトリックス樹脂の相加平均に近いものとなり、寸法安定性を向上させるためには無機フィラーの添加量を高くしなければならなかった。そのため、フィラー同士の凝集などの問題により成形物の高い透明性を得ることは困難であり、また高価なフィラーを用いる場合は製品のコストが高くなるといった問題があった。
【0005】
特許文献3(特開2008−45121号公報)には無機微粒子フィラーとして層状スメクタイト等の平板状の無機物質を添加した樹脂組成物が開示されている。アスペクト比の大きな平面状無機微粒子フィラーを充填すると、低い添加率でもフィルム等の成形物の線膨張係数は低減できるものの、フィラーが面方向に配向してしまうために、垂直方向の複屈折(Rth)が大きくなってしまい、液晶ディスプレイ等の光学的等方性を必要とするフィルムには使用しにくいという問題があった。
【0006】
また、熱可塑樹脂を延伸して製造する、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの延伸透明フィルムも、樹脂中の分子鎖や結晶が延伸方向に配向して、垂直方向の複屈折(Rth)が大きくなってしまうという課題があった。
【0007】
特許文献4(特開2009−13005号公報)には、無機微粒子フィラーとしてシランカップリング剤で処理したアルミナ超微粒子を含む分散液及びその硬化成形体が開示されている。棒状ナノアルミナ等のアスペクト比の高いナノフィラーを添加する場合、ランダムに配向し垂直方向の複屈折(Rth)が大きくならない可能性はあるが、通常のシランカップリング剤などを用いて処理し表面を疎水化させた無機微粒子を樹脂中に均一に分散させることは難しく、透明度の高い硬化物を得ることは困難である。
【0008】
なお、特許文献5(特開2007−297451号公報)には、水酸化アルミニウム粒子とリン酸エステルを含むメタクリル樹脂組成物が、特許文献6(特開2009−74023号公報)には、リン酸エステルで表面処理されたγ―アルミナを含むメタクリル樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献5、6には組成物が透明性に優れる旨の記載はあるが、樹脂成分が熱可塑性のメタクリル(メタクリル酸メチルを主成分とする)樹脂であるため成形体の耐熱性、寸法安定性は高くなく、また光学的等方性が良好である旨の記載や示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−9362号公報
【特許文献2】国際公開第2009/069429号パンフレット
【特許文献3】特開2008−45121号公報
【特許文献4】特開2009−13005号公報
【特許文献5】特開2007−297451号公報
【特許文献6】特開2009−74023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、透明性、耐熱性、寸法安定性かつ光学等方性に優れる透明複合材料及び透明フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、特定のリン酸エステルにより表面処理されたアルミナ微粒子を必要に応じてメチルメタクリレートとは異なる重合性モノマーを含む硬化性組成物を硬化して得られる成形体が透明性、耐熱性、寸法安定性かつ光学等方性に優れることを見出し、本願発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りのものである。
【0012】
[1] 一般式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はアルキレン基を表し、Mは1価のカチオンを表す。nは1〜10の数を表し、mは1〜3の整数を表す。)
で示される重合性リン酸エステルモノマー(A)及び平均粒子径が5nm〜300nmのアルミナ粒子(B)を必須成分とし、メチルメタクリレートを含有しない硬化性組成物を硬化してなることを特徴とする透明複合材料。
[2]前記アルミナ粒子の断面の最大寸法の平均が2〜20nm、長さの平均(平均長さ)が4〜200nm、アスペクト比(長さ/断面の最大寸法の平均長さ)が2〜100の針状または棒状のベーマイトまたは疑ベーマイトである[1]に記載の透明複合材料。
[3]前記アルミナ粒子の含有量が5〜90質量%である[1]または[2]に記載の透明複合材料。
[4]前記硬化性組成物中にメチルメタクリレート以外の重合性モノマー(C)をさらに含む[1]〜[3]のいずれかに記載の透明複合材料。
[5]前記硬化性組成物中に前記重合性リン酸エステルモノマー(A)以外の重合性成分を含まない[1]〜[3]のいずれかに記載の透明複合材料。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の透明複合材料からなる、厚みが10μm以上200μm以下の透明フィルム。
[7]50〜200℃の面方向の平均線膨張率が50ppm/℃以下である[6]に記載の透明フィルム。
[8]100μm厚当たりの透明フィルムの全光線透過率が85%以上である[6]または[7]に記載の透明フィルム。
[9]100μm厚当たりの透明フィルムの垂直方向の複屈折(Rth)が20nm以下である[6]〜[7]のいずれかに記載の透明フィルム。
[10]一般式(1)
【化2】

(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はアルキレン基を表し、Mは1価のカチオンを表す。nは1〜10の数を表し、mは1〜3の整数を表す。)で示される重合性リン酸エステルモノマー(A)及び平均粒子径が5nm〜300nmであるアルミナ粒子(B)を必須成分とし、メチルメタクリレートを含有しない硬化性組成物を、平面上に塗布した後、表面が平滑なシートまたはフィルムで挟み、硬化させることを特徴とする[6]〜[9]のいずれかに記載の透明フィルムの製造方法。
[11]前記硬化性組成物が溶剤を含み、該硬化性組成物を平面上に塗布した後、溶剤を乾燥し、表面が平滑なシートまたはフィルムで挟み、硬化させる[10]に記載の透明フィルムの製造方法。
[12]前記硬化方法が紫外線(UV)照射及び/または加熱による硬化である[9]または[11]に記載の透明フィルムの製造方法。
[13][6]〜[9]のいずれかに記載の透明フィルムに透明導電膜を形成してなる透明導電性フィルム。
[14][13]に記載の透明フィルムを基材とした表示装置。
[15]前記表示装置が、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、または電子ペーパーである[14]に記載の表示装置。
[16][6]〜[9]のいずれかに記載のフィルムを基材とした太陽電池用基板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、または電子ペーパー等の表示装置用基板として好適な一定の厚みを有する透明性、耐熱性に優れ、かつ光学的等方性に優れるフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の透明複合材料は、以下の一般式(1)で示される重合性リン酸エステルモノマー(A)及び平均粒子径が5nm〜300nmであるアルミナ粒子(B)を必須成分とし、メチルメタクリレートを含有しない硬化性組成物を硬化してなることを特徴とする。
【化3】

式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はアルキレン基を表し、Mは1価のカチオンを表す。nは1〜10の数を表し、mは1〜3の整数を表す。
【0015】
本発明において、透明複合材料を用いたフィルムの透明性は全光線透過率で評価する。本発明の透明フィルムとは、100μm厚でのJIS K−7361−1に準拠して測定された全光線透過率が85%以上、JIS K−7136 に準拠して測定されたヘーズ値が5%以下のものをいう。ただし、全光線透過率は90%以上であることがより好ましい。また、フィルムのヘーズ値は5%以下の材料であることが好ましく、さらに好ましくは3%以下である。ヘーズ値が5%より大きいと透過光がゆがみ、鮮明さに欠ける。
【0016】
本発明の透明複合材料を構成する硬化性組成物の各成分について以下に説明する。
[(A)重合性リン酸エステルモノマー]
本発明で用いる重合性リン酸エステルモノマーは、上記一般式(1)で示される。R2が表すアルキレン基は炭素数1〜6のものが好ましい。具体例としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。また、nが2以上の場合、R2が表す複数のアルキレン基は、すべて同一であってもよいし、各々異なっていてもよい。さらに、複数のアルキレン基が各々異なる場合は、それらは互いに規則的に結合していてもよいし、不規則に結合していてもよい。
【0017】
一般式(1)において、Mが表す1価のカチオンの例としては、水素イオン、ナトリウムイオンやカリウムイオンのようなアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、炭素数1〜4程度のアルキル基で置換されたアンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0018】
一般式(1)で示される重合性リン酸エステルモノマーの具体例としては、例えば、アシッドホスホキシ・ポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート(一般式(1)中、R1がメチル基、R2がプロピレン基、Mが水素イオン、nが5〜6、mが1であるリン酸エステル、ユニケミカル(株)製の「ホスマーPP(Phosmer−PP)」)及び2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(一般式(1)中、R1がメチル基、R2がエチレン基、Mが水素イオン、nが1、mが2であるリン酸エステル、共栄社化学(株)製の「ライトエステルP−2M」)等が挙げられる。
【0019】
[(B)アルミナ粒子]
本発明で用いられる「アルミナ粒子」は、組成式内にAl23単位を含む粒子であれば特に限定はない。好ましいアルミナ粒子としては、ベーマイトまたは擬ベーマイト等のアルミナ水和物の超微粒子、α−アルミナの超微粒子、γ−アルミナの超微粒子、または非晶質のアルミナの超微粒子が挙げられるが、これらの中でも入手のし易さからベーマイト構造または擬ベーマイト構造を有するアルミナ水和物がより好ましい。
【0020】
ベーマイト構造または擬ベーマイト構造を有するアルミナ水和物は、下記一般式(2)で示される。
【化4】

式中、nは0〜3の整数を表し、mは通常0または1〜10の数、好ましくは0〜5、より好ましくは0〜3、特に好ましくは0.8〜1.2を表す。mH2Oは、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水であるため、mは整数でない値をとることができる。また、この種のアルミナ水和物を焼成した場合、mは0に達することもあり得る。
【0021】
アルミナ粒子の粒径は平均粒子径が5〜300nmのものであれば特に限定されない。本発明の透明複合材料よりなる透明フィルムをディスプレイ用基板等に使用する場合、平均粒径は可視光の波長より十分小さいものである必要がある。なお、ここでいう可視光とは、波長が400〜800nmの範囲の光をいう。従って、アルミナ粒子の平均粒子径は5〜300nmの範囲であり、5〜100nmの範囲がさらに好ましい。平均粒子径が5nm未満の場合は透明フィルムの面方向の線膨張率が十分小さくならない傾向があり、300nmを超える場合は可視光波長と重なる粒径のものも含まれるため、透明性の点で好ましくない。
【0022】
なお、ここでいうアルミナ粒子の平均粒子径とは、溶媒中に分散させながら動的光散乱法により求めた平均粒子径を指す。動的光散乱法による平均粒子径は、例えば「粒子径計測技術」(粉体工学会編,1994年)の第169〜179頁を参照することで求めることができる。具体的な測定装置としては、動的光散乱式粒径分布測定装置(例えば、(株)堀場製作所製,LB−550型)を挙げることができる。前記の動的光散乱法により求めたアルミナ粒子の平均粒子径は、本発明における樹脂層に分散された後のアルミナ粒子の平均粒子径と実質的に同じである。
【0023】
アルミナ粒子の形状は特に限定されず、球状、楕円状、棒状、針状、板状、鱗片状、羽毛状、繊維状、球状粒子が連なった数珠状、無定形が挙げられるが、断面方向(径)と断面方向と垂直な方向に長さを持つ棒状あるいは針状が好ましい。棒状あるいは針状が好ましい理由は次の通りである。フィラーであるアルミナ粒子がアスペクト比を持つことにより、少量の添加率で効果的に耐熱性、寸法安定性を向上させることができる。また、板状、鱗片状と異なり面に沿って粒子が配向しにくく等方的な光学物性を示すのに有利である。さらに、繊維状、羽毛状などよりも、硬化前の組成物の粘度が低く成形しやすい点でも好ましい。
棒状あるいは針状の粒子としては、断面方向の最大寸法(断面が円形の場合は直径、楕円形の場合は長径、多角形の場合は最長の対角線)の平均が2〜20nm、長さの平均(平均長さ)が4〜200nm、アスペクト比(断面方向の最大寸法/平均長さ)が2〜100の針状または棒状のベーマイトまたは疑ベーマイトが好適である。断面方向の最大寸法及び長さは、透過型電子顕微鏡の画像から求めることができる。本発明において断面方向の最大寸法及び長さの平均長さ値は透過型電子顕微鏡により観察される像の各粒子の長径の長さと短径の長さを計測しその算術平均値を計算することにより求められる。
【0024】
硬化して得られる透明複合材料(固形分)中のアルミナ粒子の含有量は、5〜90質量%の範囲が好ましく、10〜50質量%の範囲がより好ましい。アルミナ粒子の含有量が5質量%未満の場合は、透明複合材料の50〜200℃までの平均線膨張率が大きくなり、50ppm/℃を超える傾向がある。また、平板状無機物質の含有量が90質量%を超えると、アルミナ粒子を樹脂中に均一に分散させることが困難となる傾向がある。
【0025】
[メチルメタクリレート以外の重合性モノマー(C)]
本発明の透明複合材料を構成する硬化性組成物中には種々の、メチルメタクリレート以外の重合性モノマー(C)を含むことができる。重合性モノマー(C)の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、フルオロフェニル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、シアノフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート及びビフェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸芳香族エステル;
フルオロメチル(メタ)アクリレート及びクロロメチル(メタ)アクリレート等のハロアルキル(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、アルキルアミノ(メタ)アクリレート、及びα−シアノアクリル酸エステル;等が挙げられる。
その他のビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレン及びビニルトルエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び安息香酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルピリジン、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
架橋性多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエステルジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−(ω−(メタ)アクリロイロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン等のジ(メタ)アクリレート;
フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジメタリル、テレフタル酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,5−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,4−キシレンジカルボン酸アリル及び4,4’−ジフェニルジカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸ジアリル類;
シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル及びジビニルベンゼン等の二官能の架橋性モノマー;
トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート及びジアリルクロレンデート等の三官能の架橋性モノマー;
さらにペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の四官能の架橋性モノマー等が挙げられる。
【0026】
上記の重合性モノマー(C)は、1種を単独で、または2種以上を混合または組み合わせて用いることができる。これらの重合性モノマー(C)の使用量には特に制限はないが、アルミナ粒子100質量部に対して、1〜1000質量部であることが好ましく、2〜500質量部であることがより好ましく、5〜100質量部であることが特に好ましい。重合性モノマーの使用量が1質量部未満であると、添加効果が小さく、機械強度が低下したりすることがある。重合性モノマーとして単官能性モノマーを多量使用した場合には、架橋密度が低くなり耐熱性が不十分になることがある。また、使用量が1000質量部を超えると耐熱性や寸法安定性が発現されない場合がある。
【0027】
本発明の透明複合材料を構成する硬化性組成物は、諸物性を改良する目的でラジカル反応性の樹脂成分を含んでいてもよい。これら樹脂成分としては不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。
【0028】
不飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコールと不飽和多塩基酸(及び必要に応じて飽和多塩基酸)とのエステル化反応による縮合生成物を、必要に応じてスチレン等の重合性不飽和化合物に溶解したもので、例えば「ポリエステル樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社,1988年発行,第16〜18頁及び第29〜37頁などに記載されている樹脂を挙げることができる。この不飽和ポリエステル樹脂は、公知の方法で製造することができる。
【0029】
ビニルエステル樹脂は、エポキシ(メタ)アクリレートとも呼ばれ、一般にエポキシ樹脂に代表されるエポキシ基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸などの重合性不飽和基を有するカルボキシル化合物のカルボキシル基との開環反応により生成する重合性不飽和基を有する樹脂、またはカルボキシル基を有する化合物と、グリシジル(メタ)アクリレート等の分子内にエポキシ基を持つ重合性不飽和化合物のエポキシ基との開環反応により生成する重合性不飽和基を有する樹脂を指す。詳しくは「ポリエステル樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社,1988年発行,第336〜357頁などに記載されている。このビニルエステル樹脂は公知の方法により製造することができる。
【0030】
ビニルエステル樹脂の原料となるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ビスフェノールFアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、ノボラック型ポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
【0031】
上記のラジカル反応性の樹脂成分は、1種を単独で、または2種以上を混合または組み合わせて用いることができる。これらのラジカル反応性の樹脂成分の使用量には特に制限はないが、アルミナ100質量部に対して、1〜1000質量部であることが好ましく、2〜500質量部であることがより好ましく、5〜100質量部であることが特に好ましい。
【0032】
[硬化剤]
本発明の透明複合材料を構成する硬化性組成物には硬化剤を使用してもよい。使用できる硬化剤としては特に制限はなく、一般に重合性樹脂の硬化剤として用いられているものを用いることができる。中でも、ラジカル重合開始剤を添加することが望ましい。ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、光重合開始剤、アゾ化合物等が挙げられる。
【0033】
熱硬化させる場合は、有機過酸化物を用いることが特に好ましい。有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド系またはジアルキルパーオキサイド系開始剤、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル系開始剤、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどのパーカーボネイト系開始剤、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール系開始剤などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0034】
また、上記の光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、オキシフェニルアセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、オキシフェニルアセチックアシッド2−[2−ヒドロキシエトキシ]エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルフェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、ヨードニウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロフォスフェート(1−)、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0035】
アゾ化合物としては2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物等が挙げられる。
【0036】
[添加剤]
本発明の透明複合材料を構成する硬化性組成物には、硬度、強度、成形性、耐久性、耐水性を改良する目的で、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、離型剤、滑剤、撥水剤、難燃剤、低収縮剤、架橋助剤などの添加剤を必要に応じて添加することができる。しかし、これらの添加剤は上述した具体例に制限されるものではなく、本発明の目的、または効果を阻害しない範囲であらゆるものを添加することができる。
【0037】
[溶剤]
本発明の透明複合材料を構成する硬化性組成物中にアルミナ粒子を均一に分散させるために溶剤を使用することができる。溶剤としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の炭素数6〜10の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数6〜10炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、(イソ)プロパノール、ブチルアルコール等のアルコール類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ピリジン、アセトニトリル等の含窒素系溶剤等が挙げられる。好ましくは、トルエン等の芳香族炭化水素やテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。
【0038】
溶剤の固形分(硬化することにより固形となる成分)に対する比率は、溶剤の種類によって大きく異なるが、固形分100質量部に対して0〜10,000質量部であり、より好ましくは10質量部〜1,000質量部である。
【0039】
[硬化性樹脂組成物の調製方法]
本発明の透明複合材料を構成する硬化性組成物の調製方法は特に限定されないが、加熱処理、ミックスローター、マグネティックスターラー、ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、ヘンシェルミキサー、超高圧微粒化装置、超音波照射等の公知の方法にて混合、分散させることにより調製が可能である。
【0040】
溶剤の濃度を変えることにより、硬化性組成物の粘度を塗工に最適な粘度に調整する。硬化性組成物の粘度は特に限定されないが、成形する方法に適した粘度であることが好ましい。例えば、ロールコーティング法及びドクターナイフ法の場合は25℃における粘度が0.01〜1,000Pa・sの範囲であることが好ましい。粘度が0.01Pa・sより低くても、また1,000Pa・sより高くても作業性が悪くなり好ましくない。常温での粘度が高い場合は分散液の温度を上げて作業性を改善することができる。
【0041】
得られた硬化性組成物の組成は、固形分中の割合として、アルミナ粒子は5〜90質量%であり、より好ましくは10〜50質量%である。リン酸エステルは、1〜90質量%であり、より好ましくは2〜50質量%である。重合性モノマー成分としては0〜90質量%であり、より好ましくは1〜50質量%である。重合開始剤成分としては0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。酸化防止剤等の添加剤成分としては0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.05〜5質量%である。
【0042】
[フィルムの成膜方法]
前記硬化性組成物の塗工は、減圧することにより脱気及び粘度調整したものを塗工液として用い、ガラス、金属、プラスチックフィルム等の平滑な基材上にダイレクトグラビア法やリバースグラビア法及びマイクログラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法、及びドクターナイフ法やダイコート法、ディップコート法、バーコーティング法やこれらを組み合わせたコーティング法等の通常工業的に用いられている方法により行うことができる。
【0043】
硬化性組成物が溶剤を含む場合の溶剤を揮発させる温度は、重合性モノマー(C)を含まない場合は0〜200℃が好ましい。0℃未満の場合には、揮発速度が著しく遅いため好ましくない。200℃より高い場合には、溶剤の急激な揮発や沸騰による発泡または樹脂のゲル化が発生し表面平滑性が低下しヘーズ値が上昇する可能性があり好ましくない。より好ましくは10〜100℃である。重合性モノマー(C)を含む場合その沸点未満、より好ましくは10〜100℃である。溶剤を揮発させる圧力は、10Pa〜1MPaが好ましい。1kPa未満の場合には、突沸が発生する恐れがあり、表面平滑性が低下しヘーズ値が上昇する可能性があり好ましくない。より好ましくは10〜200kPaである。溶剤を揮発させる時間は1〜120分が好ましい。1分未満の場合には、溶剤を十分に揮発させることができず、硬化の際に気泡が発生する。120分より長い場合には、生産性が悪くなるため好ましくない。溶剤を揮発させる場合には、空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の気体を使用してもよい。また、これらの気体は溶剤の揮発成分を含んでいてもよい。溶剤を揮発させる際の気体の流速は、0.01m/s〜200m/sが好ましい。0.01m/sより遅い場合には、溶剤の揮発分が滞留してしまい、200m/sより速い場合には、塗布液が不均一となる。より好ましくは、0.1m〜50m/sである。
【0044】
塗工及び/または塗工乾燥したフィルムの基材とは反対側の面をラミネータなどによって保護フィルムをラミネートすることによって貼り合わせることが必要である。硬化性組成物を、表面が平滑な平面上、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに上記方法にて塗布した後、溶剤を含む場合溶剤を揮発させ、表面が平滑な二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等の保護フィルムで挟み、UV(紫外線)照射及び/または加熱硬化させる方法が挙げられる。
【0045】
加熱硬化により硬化性組成物を硬化させる場合には、硬化温度は30〜160℃、好ましくは40〜130℃である。また、硬化時の収縮や歪の抑制を考慮すると、昇温しながらゆっくりと硬化する方法が好ましく、0.5〜100時間、好ましくは、3〜50時間である。UV照射時間は0.01〜10時間、好ましくは0.05〜1時間、さらに好ましくは0.1〜0.5時間かけて硬化するのがよい。UV積算光量は10〜5000mJ/cm2である。10mJ/cm2未満であると不完全硬化になり好ましくない。5000mJ/cm2では生産性が悪くなる。電子線照射により硬化性組成物を硬化させることもできる。その場合は重合開始剤は必要ない。ただし、アフターキュア操作によって硬化を完全にする場合には、熱重合開始剤を併用してもよい。電子線照射の時の電子線の加速電圧は30〜500kV、好ましくは50〜300kVである。また、照射線量は1〜300kGy、好ましくは5〜200kGyである。電子線加速電圧が30kV未満だと、組成物の厚さが厚い場合に電子線の透過不足が生じる恐れがあり、500kVを超えると経済性が悪くなる。また、照射線量は300kGyを超えると、場合によって基材を損傷する恐れがある。
【0046】
前記硬化処理後、硬化性硬化物の硬化が不十分な場合には、アフターキュアによって硬化を完全に進行させることができる。アフターキュアを行う場合には、透明フィルムをガラス、金属、プラスチックフィルム等の平滑な基材から剥離しても構わないし、剥離しなくてもよい。アフターキュアの温度は50〜300℃、好ましくは80〜250℃である。アフターキュアの時間は0.1〜10時間、好ましくは0.5〜5時間である。アフターキュアの圧力は1.0×10-7Pa〜1MPaの減圧〜加圧雰囲気下で実施することができ、好ましくは1.0×10-6Pa〜0.5MPaである。アフターキュアの雰囲気は空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の雰囲気下で行うことが可能であるが、着色低減の点からは窒素雰囲気下が好ましい。
【0047】
上記の製造方法により得られた本発明の透明フィルムの線膨張率としては、50℃と200℃との間の平均線膨張率が50ppm/℃以下であることが好ましく、20ppm/℃以下であることがさらに好ましい。本発明の透明フィルムの全光線透過率は、100μm厚当たりで85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。また、本発明の透明フィルムの垂直方向の複屈折(Rth)は、100μm厚当たりで20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げ本発明を説明するが、本発明はこれらの記載により何らの限定を受けるものではない。
なお、線膨張率、全光線透過率、垂直方向の複屈折(Rth)の測定方法は、以下の通りである。
【0049】
[線膨張係数]
線膨張係数は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製TMA/SS6100を使用し、引張モードで測定を行った。フィルム状試験片は、厚さ100μm×3mm×12mm(チャック間距離10mm)、張力:30mNとし、窒素を100mL/minの雰囲気下で昇温速度5℃/minで200℃まで温度を上げた後、50℃以下まで冷却し、再度、昇温速度5℃/minで50〜200℃までの間で、試験片の伸長率を測定した。50℃と200℃との伸長率差と温度差(150℃)とから50〜200℃の間の平均線膨張係数を計算した。サンプル数は3とし、その算術平均値を求めた。
【0050】
[全光線透過率]
全光線透過率は、東京電色社製全自動ヘーズメーターTC−H3DPKを使用し、JIS K−7361−1に準拠して測定した。測定サンプル形状は55mm角、厚み100μm、の試験片を用いた。サンプル数は3とし、その算術平均値を求めた。
【0051】
[複屈折]
複屈折は、大塚電子株式会社のRETS−100を使用し、回転検光法で測定した。測定サンプル形状は55mm角、厚み100μm、の試験片を用いた。サンプル数は3とし、その算術平均値を求めた。
【0052】
実施例1:
重合性リン酸エステルモノマーとしてユニケミカル社製ホスマーPP 3.75g、共栄社化学製ライトエステルP−2M 11.25gを用い、これらをアセトン15gに均一に溶解させた。これを有機化処理液−1とする。
川研ファインケミカル社製アルミナゾル10A(アルミナ濃度10質量%の水溶液、平均粒子径15nmの棒状アルミナ、アスペクト比20)100gを直径4cmのSUS製4枚羽根を用い400rpmで撹拌しつつそこに上記有機化処理液−1を添加した。添加完了後24時間撹拌を継続した後、遠心分離機にて上澄み液と沈殿物を分離した。沈殿物を蒸留水中で撹拌し均一に分散させた後、再び遠心分離機にて上澄み液と沈殿物を分離した。同様な操作をさらに2回行い洗浄し白色のケーキを回収した後真空乾燥機にて乾燥し有機化アルミナ粒子を得た。
得られた有機化アルミナ粒子(アルミナとリン酸エステルの質量比=10:15)10gをテトラヒドロフラン20gに溶解させ、熱開始剤として日本油脂社製パーオクタO 0.03gを添加し均一な混合液を得た。
得られた混合液をナイフコーターにて光学用ポリエチレンテレフタレートフィルム上に溶剤除去後の膜厚が100μmとなるように成膜した。空気循環式乾燥機にて80℃、30min乾燥させ溶媒を除去した後ポリエチレンテレフタレートフィルムでラミネートし90℃のオーブンで1時間重合、さらに130℃で1時間後硬化させた。
得られた硬化フィルムの物性を測定したところ、線膨張係数16ppm/℃、光線透過率90%、垂直方向の複屈折(Rth)は2.5nmであった。
【0053】
実施例2:
重合性リン酸エステルモノマーとして共栄社化学社製のライトエステルP−2M 15.0gを脱イオン水15gに溶解させた。これを有機化処理液−2とする。
川研ファインケミカル社製アルミナゾル10A 100gを直径4cmのSUS製4枚羽根を用い400rpmで撹拌しつつそこに上記有機化処理液−2を添加した。添加完了後24時間撹拌した後、遠心分離機にて上澄み液と沈殿物を分離した。沈殿物を蒸留水中で撹拌し均一に分散させた後、再び遠心分離機にて上澄み液と沈殿物を分離した。同様な操作をさらに2回行い洗浄し白色のケーキを回収した後真空乾燥機にて乾燥し有機化アルミナ粒子を得た。
得られた有機化アルミナ粒子(アルミナとリン酸エステルの質量比=10:15)10gをトルエン20gに溶解させ、そこに新中村化学社製メタクリルモノマー14G(エチレングリコール骨格が14個入ったポリエチレングリコールジメタクリレート)を2.4g加え、さらに熱開始剤として日本油脂社製パーオクタO 0.03gを添加し均一な混合液を得た。
得られた混合液をナイフコーターにて光学用ポリエチレンテレフタレートフィルム上に溶剤除去後の膜厚が100μmとなるように成膜した。空気循環式乾燥機にて80℃、30min乾燥させ溶媒を除去した後ポリエチレンテレフタレートフィルムでラミネートし90℃のオーブンで1時間重合、さらに130℃で1時間後硬化させた。
得られた硬化フィルムの物性を測定したところ、線膨張係数45ppm/℃、光線透過率91%、垂直方向の複屈折(Rth)は15nmであった。
【0054】
比較例1:
200mlビーカー中にトルエン90gを入れ、さらにトリオクチルメチルアンモニウム塩でカチオン交換処理された親油性スメクタイト(コープケミカル社製,合成スメクタイトSTN:数平均粒径50nm,アスペクト比(平均粒子径/単位厚み)50)10gをスターラーで撹拌しつつ少量ずつ入れた。スターラーで2日間室温下にて十分撹拌しスメクタイト分散液を得た。
前記スメクタイト分散液に昭和電工製ビニルエステルオリゴマー スーパーポリエステルSSP−UHを10g、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製,IRGACURE651)0.50g加え十分撹拌し組成物とした。
前記組成物をナイフコーターで50μmの高透明ポリエチレンテレフタレートフィルム上に硬化後のフィルムが100μmの厚みになるように塗布した。60℃の熱風乾燥機で1時間乾燥させ溶剤のトルエンを蒸発させた。さらに上から同じポリエチレンテレフタレートフィルムでカバーをし、紫外線照射装置(東芝製トスキュア401)により3000mJ/cm2紫外線照射をした。その後ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離しサンプルフィルムを得た。かかるフィルムの線膨張率は18ppm/℃、光線透過率は、91%、垂直方向の複屈折(Rth)は890nmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はアルキレン基を表し、Mは1価のカチオンを表す。nは1〜10の数を表し、mは1〜3の整数を表す。)
で示される重合性リン酸エステルモノマー(A)及び平均粒子径が5〜300nmのアルミナ粒子(B)を必須成分とし、メチルメタクリレートを含有しない硬化性組成物を硬化してなることを特徴とする透明複合材料。
【請求項2】
前記アルミナ粒子の断面の最大寸法の平均が2〜20nm、長さの平均(平均長さ)が4〜200nm、アスペクト比(長さ/断面の最大寸法の平均長さ)が2〜100の針状または棒状のベーマイトまたは疑ベーマイトである請求項1に記載の透明複合材料。
【請求項3】
前記アルミナ粒子の含有量が5〜90質量%である請求項1または2に記載の透明複合材料。
【請求項4】
前記硬化性組成物中にメチルメタクリレート以外の重合性モノマー(C)をさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載の透明複合材料。
【請求項5】
前記硬化性組成物中に前記重合性リン酸エステルモノマー(A)以外の重合性成分を含まない請求項1〜3のいずれかに記載の透明複合材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の透明複合材料からなる、厚みが10μm以上200μm以下の透明フィルム。
【請求項7】
50〜200℃の面方向の平均線膨張率が50ppm/℃以下である請求項6に記載の透明フィルム。
【請求項8】
100μm厚当たりの透明フィルムの全光線透過率が85%以上である請求項6または7に記載の透明フィルム。
【請求項9】
100μm厚当たりの透明フィルムの垂直方向の複屈折(Rth)が20nm以下である請求項6〜8のいずれかに記載の透明フィルム。
【請求項10】
一般式(1)
【化2】

(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はアルキレン基を表し、Mは1価のカチオンを表す。nは1〜10の数を表し、mは1〜3の整数を表す。)で示される重合性リン酸エステルモノマー(A)及び平均粒子径が5nm〜300nmであるアルミナ粒子(B)を必須成分とし、メチルメタクリレートを含有しない硬化性組成物を、平面上に塗布した後、表面が平滑なシートまたはフィルムで挟み、硬化させることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の透明フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記硬化性組成物が溶剤を含み、該硬化性組成物を平面上に塗布した後、溶剤を乾燥し、表面が平滑なシートまたはフィルムで挟み、硬化させる請求項10に記載の透明フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記硬化方法が紫外線(UV)照射及び/または加熱による硬化である請求項9または11に記載の透明フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項6〜9のいずれかに記載の透明フィルムに透明導電膜を形成してなる透明導電性フィルム。
【請求項14】
請求項13に記載の透明フィルムを基材とした表示装置。
【請求項15】
前記表示装置が、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、または電子ペーパーである請求項14に記載の表示装置。
【請求項16】
請求項6〜9のいずれかに記載のフィルムを基材とした太陽電池用基板。

【公開番号】特開2013−49792(P2013−49792A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188865(P2011−188865)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】