説明

通信システム、送信装置、送信方法、およびプログラム

【課題】適切な再送を行う。
【解決手段】通信に使用可能な通信帯域Bのうちの、一部の帯域が、再送データの送信時(再送時)に用いる再送帯域Barqとして確保される。そして、通常データ(再送データではない、はじめて送信されるデータ)の送信時(通常送信時)には、通常データが、通信帯域Bから再送帯域Barqを除いた残りの帯域Bdataを使用して送信され、再送時には、通信帯域Bの全体を使用してデータが送信される。即ち、通常送信時には、通常データが、通信帯域Bから再送帯域Barqを除いた残りの帯域Bdataを使用して送信され、再送時には、再送データが、再送帯域Barqを使用して送信されるとともに、通常データが残りの帯域Bdataを使用して送信される。本発明は、例えば、ビデオストリーミングデータを送信する送信装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、送信装置、送信方法、およびプログラムに関し、特に、適切な再送を行うことができるようにする通信システム、送信装置、送信方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、移動無線通信環境では、リンクロス、フェージングなどの影響により、伝送エラーが発生する。伝送エラーを回復する方法として、FEC(Forward Error Correction,前方誤り訂正)や、ARQ(Automatic Repeat reQuest,自動再送制御)がよく知られている。
【0003】
FECでは、送信側でデータに対して冗長データを付加して、送信(伝送)の対象とする送信データとし、伝送エラーが発生して、送信データの一部がロス(欠落)した場合に、冗長データを使って、ロスしたデータ(ロスデータ)を再構成することで、伝送エラーの回復が行われる。
【0004】
FECによれば、伝送エラーの発生の有無に関わらず、冗長データがデータに付加され、送信データとされる。また、送信データにおいて、データに付加された冗長データを越えるサイズのデータがロスした場合、ロスしたデータを回復することは困難である。このため、伝送エラーが動的に変動するような伝送路では、想定される最大の伝送エラー(ロスするデータの最大サイズ)に合わせた冗長データを付加する必要があり、伝送効率が劣化する。
【0005】
一方、ARQは、伝送エラーによりロスしたデータ(ロスデータ)を再送することで、伝送エラーの回復を行う技術である。再送されるデータ(再送データ)は、実際にロスしたデータだけなので、FECに比べて帯域使用効率がよい。例えば、平均ロス率が10%の伝送路については、FECでは約20%の冗長度が必要と言われるが、ARQでは約11%の冗長度で伝送エラーの回復が可能である。
【0006】
例えば、特許文献1乃至5には、リアルタイムで再生されるリアルタイムデータを送信するリアルタイム通信用のARQが提案されている。特許文献1乃至5に記載のARQでは、受信側で受信したデータをある一定時間バッファリングしておき、ロスがあった場合には、バッファリングされているデータを再生している間に、送信側においてロスデータの再送を行って伝送エラーを回復する。これにより、受信側においてリアルタイムデータをリアルタイムで再生するリアルタイム性を保証している。
【0007】
リアルタイムデータの送信(通信)では、受信側において、ロスデータが再生される再生開始時刻までに、ロスデータを受信することができなければ、ロスデータは不要となる。このため、リアルタイム通信用のARQでは、受信側から送信側への再送の要求(再送要求)の送信に要する時間と、送信側から受信側へのロスデータの再送に要する時間との合計である往復伝送遅延時間に基づき、受信側から送信側に再送要求を送信するかや、送信側から受信側にロスデータを再送するかが制御される。
【0008】
即ち、往復伝送遅延時間を考慮した場合に、ロスデータの再生開始時刻までに、再送されるロスデータが受信側に到着するのであれば、受信側から送信側に再送要求が送信され、その再送要求に応じて、送信側から受信側にロスデータが再送される。
【0009】
ここで、再送されるデータ(ロスデータ)を再送データ(再送用のデータ)といい、再送ではなく、はじめて送信されるデータを通常データ(通常送信用のデータ)という。
【0010】
ところで、従来のリアルタイム通信用のARQでは、データの送信(通信)に使用される帯域(使用帯域)が、再送時に、瞬時的に増大することがあることが考慮されていなかった。
【0011】
即ち、リアルタイム通信用のARQによれば、送信側において、通常データを送信しているときに、その通常データに加えて、受信側からの再送要求に応じて再送データを送信しようとすると、短期的に使用帯域が増加する。
【0012】
ここで、図1は、データの送信に使用される使用帯域の時間変化を示している。なお、図1において、横軸が時刻を表し、縦軸が使用帯域を表す。
【0013】
図1において、送信側は、一定レートで受信側へ通常データを送信している。さらに、図1では、時刻t0から時刻t1の間に送信されたデータがロスしており、このため、受信側は、ロスしたデータ(ロスデータ)の再送要求を、送信側に送信し、送信側は、受信側からの再送要求に応じて、時刻t2から時刻t3の間に、通常データに加えて、再送要求があったロスデータを再送データとして再送している。そして、送信側は、再送データの再送が終了した後、一定レートでの通常データの送信を続行している。
【0014】
図1において、ロスしたデータの送信に要した、時刻t0から時刻t1までの時間を、ロス時間Tlossと呼ぶこととして、そのロス時間Tlossと同一の時間で、再送データを送信することとすると、再送データが送信されている時刻t2から時刻t3までの時間は、ロス時間Tlossに等しくなり、その時間の間、使用帯域は、他の時刻の使用帯域の2倍になる。
【0015】
有線伝送路においては、通常データの送信に使用される使用帯域が、有線伝送路の物理帯域に比べて低いことが多いため、再送データの送信時に、瞬間的に、使用帯域が2倍に増加することは(ほとんど)問題にならない。
【0016】
しかしながら、無線伝送路においては、通信に使用可能な通信帯域が制限されていることが多いため、瞬間的に、使用帯域が増加することが大きな問題となることがあり、特許文献1乃至5に記載のARQでは、このような、瞬間的な使用帯域の増加については考慮されていない。
【0017】
また、特許文献6では、再送時に、優先度の低いデータを間引くことで使用帯域の増加を抑えつつ、リアルタイム性を保証しようとする技術が提案されている。
【0018】
しかしながら、再送データとして再送すべきデータのデータ量は、伝送エラーの状況、つまり、ロスしたデータのデータ量に依存する。従って、特許文献6に記載の技術では、伝送エラーの状況によって、例えば、データが間引かれる場合と、間引かれない場合とが生じ、データが、例えば画像データであれば、受信側で再生される画像の画質が変動することになる。
【0019】
【特許文献1】特開平7-221789号公報
【特許文献2】特開平9-191314号公報
【特許文献3】特開2002-84338号公報
【特許文献4】特開2001-119437号公報
【特許文献5】特開2003-169040号公報
【特許文献6】特開2000-228676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、適切な再送を行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の側面は、データを送信する送信装置と、前記データを受信する受信装置とを備える通信システムにおいて、前記送信装置が、ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間である通信遅延時間として許容される許容通信遅延時間と、ロスしたデータの送信に要した時間であるロス時間として許容される許容ロス時間と、通信に使用可能な通信帯域のうちの、通常送信時に使用される帯域であるメディア通信帯域として許容される許容メディア通信帯域との3つのパラメータのうちの、1つのパラメータが与えられたときに、残りの2つのパラメータを、前記通信遅延時間、前記ロス時間、および前記メディア通信帯域の関係に基づいて設定するパラメータ設定手段と、通常送信時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用してデータを送信し、再送時には、前記通信帯域の全体を使用してデータを送信する送信手段とを有し、前記受信装置が、前記送信装置から送信されてくるデータを受信する受信手段を有する通信システムである。
【0022】
本発明の第2の側面の送信装置は、データを送信する送信装置において、ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間である通信遅延時間として許容される許容通信遅延時間と、ロスしたデータの送信に要した時間であるロス時間として許容される許容ロス時間と、通信に使用可能な通信帯域のうちの、通常送信時に使用される帯域であるメディア通信帯域として許容される許容メディア通信帯域との3つのパラメータのうちの、1つのパラメータが与えられたときに、残りの2つのパラメータを、前記通信遅延時間、前記ロス時間、および前記メディア通信帯域の関係に基づいて設定するパラメータ設定手段と、通常送信時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用してデータを送信し、再送時には、前記通信帯域の全体を使用してデータを送信する送信手段とを備える。
【0023】
本発明の第2の側面の送信方法は、データを送信する送信装置の送信方法において、ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間である通信遅延時間として許容される許容通信遅延時間と、ロスしたデータの送信に要した時間であるロス時間として許容される許容ロス時間と、通信に使用可能な通信帯域のうちの、通常送信時に使用される帯域であるメディア通信帯域として許容される許容メディア通信帯域との3つのパラメータのうちの、1つのパラメータが与えられたときに、残りの2つのパラメータを、前記通信遅延時間、前記ロス時間、および前記メディア通信帯域の関係に基づいて設定し、通常送信時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用してデータを送信させ、再送時には、前記通信帯域の全体を使用してデータを送信させるステップを含む。
【0024】
本発明の第2の側面のプログラムは、データを送信する送信装置を制御するコンピュータに実行させるプログラムにおいて、ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間である通信遅延時間として許容される許容通信遅延時間と、ロスしたデータの送信に要した時間であるロス時間として許容される許容ロス時間と、通信に使用可能な通信帯域のうちの、通常送信時に使用される帯域であるメディア通信帯域として許容される許容メディア通信帯域との3つのパラメータのうちの、1つのパラメータが与えられたときに、残りの2つのパラメータを、前記通信遅延時間、前記ロス時間、および前記メディア通信帯域の関係に基づいて設定し、通常送信時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用してデータを送信させ、再送時には、前記通信帯域の全体を使用してデータを送信させるステップを含む処理をコンピュータに実行させる。
【0025】
本発明の第1の側面の通信システム、第2の側面の送信装置、送信方法、またはプログラムにおいては、ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間である通信遅延時間として許容される許容通信遅延時間と、ロスしたデータの送信に要した時間であるロス時間として許容される許容ロス時間と、通信に使用可能な通信帯域のうちの、通常送信時に使用される帯域であるメディア通信帯域として許容される許容メディア通信帯域との3つのパラメータのうちの、1つのパラメータが与えられたときに、残りの2つのパラメータが、前記通信遅延時間、前記ロス時間、および前記メディア通信帯域の関係に基づいて設定され、通常送信時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用してデータが送信され、再送時には、前記通信帯域の全体を使用してデータが送信される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、適切な再送を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、発明の詳細な説明に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、発明の詳細な説明に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の詳細な説明中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0028】
本発明の第1の側面の通信システムでは、
データを送信する送信装置(例えば、図4や図13の送信装置12)と、前記データを受信する受信装置(例えば、図4や図13の受信装置14)とを備える通信システムにおいて、
前記送信装置は、
ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間である通信遅延時間として許容される許容通信遅延時間と、
ロスしたデータの送信に要した時間であるロス時間として許容される許容ロス時間と、
通信に使用可能な通信帯域のうちの、通常送信時に使用される帯域であるメディア通信帯域として許容される許容メディア通信帯域と
の3つのパラメータのうちの、1つのパラメータが与えられたときに、残りの2つのパラメータを、前記通信遅延時間、前記ロス時間、および前記メディア通信帯域の関係に基づいて設定するパラメータ設定手段(例えば、図4のパラメータ設定部114や、図13のパラメータ設定部214)と、
通常送信時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用してデータを送信し、再送時には、前記通信帯域の全体を使用してデータを送信する送信手段(例えば、図4の送信部111や、図13の送信部211)と
を有し、
前記受信装置は、前記送信装置から送信されてくるデータを受信する受信手段(例えば、図4や図13の受信部121)を有する。
【0029】
本発明の第2の側面の送信装置は、第1に、
データを送信する送信装置(例えば、図4や図13の送信装置12)において、
ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間である通信遅延時間として許容される許容通信遅延時間と、
ロスしたデータの送信に要した時間であるロス時間として許容される許容ロス時間と、
通信に使用可能な通信帯域のうちの、通常送信時に使用される帯域であるメディア通信帯域として許容される許容メディア通信帯域と
の3つのパラメータのうちの、1つのパラメータが与えられたときに、残りの2つのパラメータを、前記通信遅延時間、前記ロス時間、および前記メディア通信帯域の関係に基づいて設定するパラメータ設定手段(例えば、図4のパラメータ設定部114や、図13のパラメータ設定部214)と、
通常送信時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用してデータを送信し、再送時には、前記通信帯域の全体を使用してデータを送信する送信手段(例えば、図4の送信部111や、図13の送信部211)と
を備える。
【0030】
本発明の第2の側面の送信装置は、第2に、
少なくとも、前記送信手段が再送用のデータを送信している間、通常送信用のデータを記憶する記憶手段(例えば、図13の送信バッファ203)をさらに備え、
前記送信手段は、再送の終了後、前記通信帯域の全体を使用して、前記記憶手段に記憶された通常送信用のデータを送信する。
【0031】
本発明の第2の側面の送信方法、またはプログラムは、
データを送信する送信装置の送信方法、または送信装置を制御するコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間である通信遅延時間として許容される許容通信遅延時間と、
ロスしたデータの送信に要した時間であるロス時間として許容される許容ロス時間と、
通信に使用可能な通信帯域のうちの、通常送信時に使用される帯域であるメディア通信帯域として許容される許容メディア通信帯域と
の3つのパラメータのうちの、1つのパラメータが与えられたときに、残りの2つのパラメータを、前記通信遅延時間、前記ロス時間、および前記メディア通信帯域の関係に基づいて設定し(例えば、図9のステップS1や、図21のステップS31)、
通常送信時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用してデータを送信させ、再送時には、前記通信帯域の全体を使用してデータを送信させる(例えば、図9のステップS5およびS7や、図21のステップS35およびS38やS40)
ステップを含む。
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0033】
図2は、本発明を適用した通信システム(システムとは、複数の装置が論理的に集合した物をいい、各構成の装置が同一筐体中にあるか否かは問わない)の一実施の形態の構成例を示している。
【0034】
図2において、通信システムは、送信機1と受信機2とがネットワーク3を介して接続されて構成されている。
【0035】
送信機1は、例えば、リアルタイム性を要求されるリアルタイムデータとしてのビデオストリーミングなどのデータを、ネットワーク3を介して送信する。受信機2は、送信機1からネットワーク3を介して送信されてくるデータを受信して再生する。
【0036】
ネットワーク3は、例えば、無線網(無線伝送路)(無線リンク)などを含む、通信に使用することができる通信帯域に制約があるネットワークである。
【0037】
図3は、図2のネットワーク3の例を示している。
【0038】
図3上から1番目では、ネットワーク3は、無線網のみから構成されている。
【0039】
図3上から2番目と3番目では、ネットワーク3は、有線網と無線網とから構成されている。
【0040】
但し、図3上から2番目では、送信機1が有線網に接続し、有線網には、アクセスポイント(AP)が接続されている。そして、アクセスポイントと受信機2との間が無線網になっている。
【0041】
また、図3上から3番目では、受信機2が有線網に接続し、有線網には、アクセスポイント(AP)が接続されている。そして、アクセスポイントと送信機1との間が無線網になっている。
【0042】
なお、図3において、無線網は、伝送エラーが発生してもPHYレート(物理層の伝送レート)が変更されない無線網であるとする。
【0043】
次に、図4は、図2の送信機1および受信機2の第1の構成例を示している。
【0044】
送信機1は、データ生成装置11と送信装置12とから構成されている。
【0045】
データ生成装置11は、例えば、ビデオストリーミングデータなどのリアルタイム性のあるデータ(リアルタイムデータ)を生成して出力する。ここで、データ生成装置11は、例えば、ビデオカメラのようにリアルタイムでビデオデータを生成する装置であっても良いし、ビデオデッキやハードディスクレコーダのように、記録媒体に記録されたビデオデータを再生する装置であっても良い。また、データ生成装置11は、ネットワーク上を流れているストリーミングデータを取り込みながら、そのストリーミングデータを、送信装置12に供給するPC(Personal Computer)やホームルータのような装置であってもよい。
【0046】
なお、図4では(後述する図13でも同様)、データ生成装置11は、送信装置12とは別の装置になっているが、送信装置12と一体的に構成することが可能である。
【0047】
送信装置12は、送信部111、再送バッファ112、再送制御部113、およびパラメータ設定部114から構成されている。
【0048】
送信部111は、データ生成装置11が出力するデータを取り込み、そのデータを、ネットワーク3を介して、受信機2(の受信装置14)に送信する制御を行う(送信させる)。また、送信部111は、再送バッファ112から供給されるデータ(再送データ)の送信も制御する。さらに、送信部111は、受信機2に送信したデータを、再送に備えて、再送バッファ112に供給する。
【0049】
再送バッファ112は、送信部111から供給されるデータを、受信機2から再送要求があったときに再送することができるように一時格納(記憶)する。
【0050】
再送制御部113は、受信機2からネットワーク3を介して送信されてくる再送要求を受信し、再送バッファ112を制御することで、受信機2からの再送要求によって要求されたデータを、再送データとして、再送バッファ112から送信部111に供給させる。
【0051】
パラメータ設定部114は、送信装置12がデータを送信するにあたり、3つの通信パラメータを設定して、必要なブロックに供給し、これにより、送信装置12によるデータの送信を制御する。ここで、3つの通信パラメータとしては、許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域がある。許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域については、後述する。
【0052】
一方、受信機2は、受信装置14とデータ再生装置15とから構成される。
【0053】
受信装置14は、受信部121、受信バッファ122、および再送要求部123から構成される。
【0054】
受信部121は、送信機1の送信装置12(の送信部111)からネットワーク3を介して送信されてくるデータ(再送データを含む)の受信を制御し、送信装置12から受信したデータを受信バッファ122に供給する。
【0055】
受信バッファ122は、受信部121から供給されるデータを、データ再生装置15に渡す時刻になるまで一時格納(記憶)して、データ再生装置15に供給する。
【0056】
再送制御部123は、受信部121が送信装置12から受信したデータにロス(伝送エラー)がないかどうかをチェックし、ロスがある場合には、ロスしたデータの再送を要求する再送要求を、ネットワーク3を介して、送信装置12の再送制御部113に送信する。
【0057】
データ再生装置15は、受信バッファ122から供給されるデータを再生する。
【0058】
以上のように構成される送信機1の送信装置12では、受信機2の受信装置14に対して、第1の方式により、データが送信される。
【0059】
図5を参照して、第1の方式によるデータの送信について説明する。
【0060】
図5は、第1の方式によるデータの送信に使用される帯域の時間変化を示している。
【0061】
第1の方式では、通信に使用可能な通信帯域Bのうちの、一部の帯域が、再送データの送信時(再送時)に用いる再送帯域Barqとして確保される。そして、通常データ(再送データではない、はじめて送信されるデータ)の送信時(通常送信時)には、データが、通信帯域Bから再送帯域Barqを除いた残りの帯域Bdataを使用して送信され、再送時には、通信帯域Bの全体を使用してデータが送信される。
【0062】
即ち、第1の方式では、通常送信時には、通常データが、通信帯域Bから再送帯域Barqを除いた残りの帯域Bdataを使用して送信され、再送時には、再送データが、再送帯域Barqを使用して送信されるとともに、通常データが残りの帯域Bdataを使用して送信される。
【0063】
ここで、図5では、まず、通常データが、帯域Bdataを使用して送信されており、時刻t10乃至t11の時間に送信された通常データがロスし、ロスデータとなっている。ロスデータが生じたことによって、受信装置14から送信装置12に再送要求が送信されるが、その再送要求が、送信装置12に到着するのに、(遅延)時間Treqを要し、このため、時刻t11から時間Treqが経過した時刻t12から、再送帯域Barqを使用して再送データの送信が開始されている。再送データの送信中も、帯域Bdataを使用した通常データの送信は続行しており、時刻t13において、再送データの送信が終了している。
【0064】
いま、ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間、即ち、データのロスが生じてから、そのロスしたデータの再送が完了するまでの時間を、通信遅延時間Tdelayということとすると、図5では、データのロスが生じたのが時刻t10であり、そのロスしたデータの再送が完了したのが時刻t13であるから、通信遅延時間Tdelayは、時刻t10から時刻t13までの時間である。
【0065】
また、ロスしたデータの送信に要した時間を、ロス時間Tlossということとすると、図5では、データのロスが、時刻t10乃至t11の時間に生じているから、この時間がロス時間Tlossである。
【0066】
さらに、通信に使用可能な通信帯域Bのうちの、通常送信時に使用される帯域を、メディア通信帯域Bdataということとすると、メディア通信帯域Bdataは、通信帯域Bから再送帯域Barqを除いた残りの帯域である。
【0067】
第1の方式においては、通信遅延時間Tdelay、ロス時間Tloss、およびメディア通信帯域Bdataには、式(1)の関係が成り立つ。
【0068】
【数1】

・・・(1)
【0069】
また、メディア通信帯域Bdata、再送帯域Barq、および通信帯域Bの間には、式B=Bdata+Barqが成り立ち、これを式(1)に代入して整理すると、式(2)が得られる。
【0070】
【数2】

・・・(2)
【0071】
通信帯域Bは、通信に使用可能な帯域であるから既知であり、従って、式(2)における、例えば、通信遅延時間Tdelayに、その通信遅延時間Tdelayとして許容される最大の値である許容通信遅延時間を与えることにより、式(2)は、メディア通信帯域Bdataとロス時間Tlossとの関係を規定する式となる。この場合、メディア通信帯域Bdataとロス時間Tlossとの関係を規定する式(2)から、メディア通信帯域Bdataとして許容される最大の値である許容メディア通信帯域と、ロス時間Tlossとして許容される最大の値である許容ロス時間とを決めることができる。
【0072】
ここで、図6に、式(2)の通信遅延時間Tdelayに対して、許容通信遅延時間を与えた場合の、メディア通信帯域Bdataとロス時間Tlossとの関係を示す。即ち、図6は、横軸をTlossとするとともに、縦軸をBdata/Bとして、Tdelayが、50ms(ミリ秒)、100ms,150ms,200msである場合それぞれの、TlossとBdata/Bとの関係を示している。
【0073】
また、式(2)における、例えば、メディア通信帯域Bdataに、許容メディア通信帯域を与えることにより、式(2)は、通信遅延時間Tdelayとロス時間Tlossとの関係を規定する式となる。この場合、通信遅延時間Tdelayとロス時間Tlossとの関係を規定する式(2)から、許容通信遅延時間と許容ロス時間とを決めることができる。
【0074】
ここで、図7に、式(2)のメディア通信帯域Bdataに対して、許容メディア通信帯域を与えた場合の、通信遅延時間Tdelayとロス時間Tlossとの関係を示す。即ち、図7は、横軸をTdelayとするとともに、縦軸をTlossとして、Bdata/Bが、0.5,0.6,0.7,0.8,0.9である場合それぞれの、TdelayとTlossとの関係を示している。
【0075】
さらに、式(2)における、例えば、ロス時間Tlossに、許容ロス時間を与えることにより、式(2)は、通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係を規定する式となる。この場合、通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係を規定する式(2)から、許容通信遅延時間と許容メディア通信帯域とを決めることができる。
【0076】
ここで、図8に、式(2)のロス時間Tlossに対して、許容ロス時間を与えた場合の、通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係を示す。即ち、図8は、横軸をBdata/Bとするとともに、縦軸をTdelayとして、Tlossが、10ms,20ms,30msである場合それぞれの、Bdata/BとTdelayとの関係を示している。
【0077】
なお、データが、再生順に、送信装置12から受信装置14に送信されるとすると、受信装置14では、データのロスが生じても、その時点で受信バッファ122に記憶されているデータが再生されるので、データの再生は、即座には途切れない。しかしながら、ロスが生じた時点で受信バッファ122に記憶されていたデータのすべての再生が終了したときに、ロスしたデータの再送が完了していないと、再生が途切れることになる。
【0078】
そして、許容通信遅延時間が大であると、データのロスが生じてから、そのロスしたデータの再送が完了するまでの時間が大となる。従って、許容通信遅延時間が大である場合に、受信装置14側での再生が途切れないようにする(リアルタイム性を保証する)には、受信バッファ122に記憶するデータのデータ量を大にする必要があり、その結果、例えば、受信装置14においてデータの受信を開始してから、データの再生が開始されるまでの遅延時間が大になり、ユーザにストレスを感じさせることになる。
【0079】
一方、式(2)のメディア通信帯域Bdataに、許容メディア通信帯域を与えたときの、通信遅延時間Tdelayとロス時間Tlossとの関係(図7)によれば、通信遅延時間Tdelayを小とすると、ロス時間Tlossも小になる。従って、許容通信遅延時間を小にすると、許容ロス時間も小になる。許容ロス時間が小になると、ロスしたデータの送信に要した時間が小でなければ、そのロスしたデータを、再生開始時刻に間に合うように(受信バッファ122に記憶されているデータすべての再生が終了する前に)再送することができなくなるから、僅かな伝送エラーしか回復をすることができない、つまり、僅かなデータのロスがあった場合にしか再送データを送信することができないことになる。
【0080】
従って、許容通信遅延時間および許容ロス時間は、例えば、データの再生が開始されるまでの遅延時間と、伝送エラーを回復する能力とをバランスさせるように決めるのが望ましい。
【0081】
また、許容メディア通信帯域が小であると、送信することができる通常データのデータレートが制限される。一方、許容メディア通信帯域が大であると、再送帯域Barqが小となるから、再送データの再送に時間を要することになり、その結果、許容通信遅延時間および許容ロス時間を大にする必要が生じる。
【0082】
従って、許容メディア通信帯域は、例えば、データ生成装置11が出力するデータのデータレートと、再送データの再送に要する時間とをバランスさせるように決めるのが望ましい。
【0083】
なお、上述したように、許容ロス時間が小であると、僅かな伝送エラーしか回復をすることができない。逆に、許容ロス時間が大であると、大きな伝送エラーを回復すること、つまり、ロスしたデータが大であっても、再送データを再生開始時刻に間に合うように送信することができる。従って、許容ロス時間は、伝送エラーに対する耐性(許容エラー耐性)を表しているということができる。
【0084】
また、以下、適宜、式(2)におけるBdataの他、Bdata/Bも、メディア通信帯域という。さらに、Bdata/Bとして許容される最大の値も、Bdataとして許容される最大の値と同様に、許容メディア通信帯域という。Bdata/Bは、Bdataを、いわば正規化した値である。
【0085】
次に、図9のフローチャートを参照して、第1の方式によりデータを送信する図4の送信装置12の処理について説明する。
【0086】
送信装置12では、まず最初に、ステップS1において、パラメータ設定部114が、3つの通信パラメータ、即ち、許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域を設定する。
【0087】
ここで、パラメータ設定部114には、許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域の3つの通信パラメータのうちの、1つの通信パラメータが与えられる。そして、パラメータ設定部114は、1つの通信パラメータが与えられると、残りの2つの通信パラメータを、通信遅延時間Tdelay、ロス時間Tloss、およびメディア通信帯域Bdata/Bの関係を表す式(2)に基づいて設定する。
【0088】
なお、パラメータ設定部114に与えられる1つの通信パラメータ(以下、適宜、基準パラメータという)は、例えば、通信システムに要求される性能(仕様)として、ユーザが指定する。即ち、許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域のうちの基準パラメータとするものと、その基準パラメータの値とは、ユーザに指定してもらう。
【0089】
許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域のうちの基準パラメータとするものと、その基準パラメータの値とは、ユーザが直接入力するようにしても良いし、その他、例えば、幾つかのプロファイルを用意しておき、その幾つかのプロファイルの中から、ユーザに選択してもらうようにすることもできる。
【0090】
即ち、送信装置12の製造時に、例えば、超低遅延モードのプロファイル(許容通信遅延時間50ms)、低遅延モードのプロファイル(許容通信遅延時間100ms)、通常モードのプロファイル(許容通信遅延時間200ms)といったように、基準パラメータ(の属性名)と、その基準パラメータの値(属性値)とを対応付けた幾つかのプロファイルを用意しておき、その幾つかのプロファイルのうちのいずれかのプロファイルを、ユーザに選択してもらうようにすることができる。
【0091】
超低遅延モードのプロファイル、低遅延モードのプロファイル、通常モードのプロファイルのうちの、例えば、低遅延モードのプロファイルが選択された場合、パラメータ設定部114は、許容通信遅延時間100msが与えられたとして、許容通信遅延時間を100msに設定し、さらに、残りの2つの通信パラメータである許容ロス時間と許容メディア通信帯域として最適な値を、式(2)に基づいて設定する。
【0092】
ここで、1つの通信パラメータが与えられたときに、残りの2つの通信パラメータを、式(2)に基づいて設定する方法としては、例えば、評価関数を用いる方法がある。
【0093】
即ち、例えば、いま、1つの通信パラメータとして、許容通信遅延時間100msが与えられた場合、パラメータ設定部114は、ロス時間Tlossとメディア通信帯域Bdata/Bを評価する評価関数として、例えば、式(3)の評価関数Fevalを演算し、その評価関数Fevalの演算結果を評価値として、その評価値を極大にするロス時間Tdelayとメディア通信帯域Bdata/Bとを、それぞれ、許容ロス時間と許容メディア通信帯域に設定する。
【0094】
【数3】

・・・(3)
【0095】
ここで、式(3)において、αは、ロス時間Tlossに対する重みであり、βは、メディア通信帯域Bdata/Bに対する重みである。αまたはβは、それぞれ、ロス時間Tlossまたはメディア通信帯域Bdata/Bを重要視する度合いに応じてあらかじめ決定されていることとする。
【0096】
例えば、いま、ロス時間Tlossよりもメディア通信帯域Bdata/Bを重要視するとして、α:β=1:4になっているとする。また、式(2)から、ロス時間Tlossは、式(4)で表される。
【0097】
【数4】

・・・(4)
【0098】
式(3)において、α=1,β=4として、式(4)を、式(3)に代入すると、評価関数(評価値)Fevalは、式(5)で表される。
【0099】
【数5】

・・・(5)
【0100】
式(5)の通信遅延時間Tdelayとして、上述の許容通信遅延時間100msを与えると、メディア通信帯域Bdata/B=0.8のときに、式(5)の評価値Fevalは極大値となり、さらに、ロス時間Tloss[ms]は、式Tloss=20-0.2Treqで与えられる。
【0101】
時間Treq[ms]は、図5で説明したように、再送要求が、受信装置14から送信装置12に到着するのに要する(遅延)時間であり、通信環境によって一意に決まる。
【0102】
従って、許容通信遅延時間が与えられると、評価値Fevalに基づき、その評価値Fevalを極大にするメディア通信帯域Bdata/Bとロス時間Tlossを求めることができ、パラメータ設定部114は、このメディア通信帯域Bdata/Bとロス時間Tlossを、それぞれ、許容メディア通信帯域と許容ロス時間に設定する。
【0103】
ここで、許容メディア通信帯域と許容ロス時間の設定は、送信装置12が通信(データの送信)を開始する直前のステップS1で行う他、通信環境の変化によって時間Treqが変動するたびに行うようにしても良い。あるいは、定期的、または不定期に、時間Treqを測定し、時間Treqを測定するごとに、許容メディア通信帯域と許容ロス時間を設定をし直すことも可能である。
【0104】
また、ロス時間Tlossが大である場合には、伝送エラーに対する耐性が大になり、メディア通信帯域Bdata/Bが大である場合には、高速なデータの送信を行うことができるから、ロス時間Tlossおよびメディア通信帯域Bdata/Bについては、いずれも、値を大にすることが、ユーザの満足度を向上させる方向に働くため、式(3)では、ロス時間Tlossとメディア通信帯域Bdata/Bとを、単純に乗算して評価値Fevalを求めるようにしたが、評価値Fevalは、その他、例えば、通信遅延時間Tdelayをも考慮して求めることが可能である。但し、通信遅延時間Tdelayは、その値が大であるほど、上述したように、受信装置14において再生が開始されるまでの遅延時間が大となり、従って、ユーザの満足度を低下させるので、通信遅延時間Tdelayをも考慮する場合には、評価値Fevalは、通信遅延時間Tdelayの逆数を乗算することにより求めるのが望ましい。
【0105】
なお、許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域の3つの通信パラメータのうちの、許容ロス時間、または許容メディア通信帯域が与えられた場合も、許容通信遅延時間が与えられた場合と同様に、残りの2つの通信パラメータを設定することができる。
【0106】
ステップS1において、パラメータ設定部114が、上述したように、許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域の3つの通信パラメータを設定すると、ステップS2に進み、送信部111は、データ生成装置11がデータを生成して出力するタイミングであるかどうかを判定する。
【0107】
ステップS2において、データ生成装置11がデータを生成して出力するタイミングであると判定された場合、ステップS3に進み、送信部111は、データ生成装置11が出力するデータを取り込み(受け付け)、ステップS4に進む。
【0108】
ここで、送信部111は、ステップS3においてデータ生成装置11から取り込んだデータのデータレートが、許容メディア通信帯域を越えている場合には、例えば、データを、受信装置14側でリアルタイムでの再生ができるように送信することができないとして、その旨のメッセージを出力し、処理を終了することができる。
【0109】
ステップS4では、再送制御部113が、受信装置14から再送要求があったかどうかを判定する。ステップS4において、受信装置14から再送要求がなかったと判定された場合、ステップS5に進み、送信部111は、直前のステップS3でデータ生成装置11から取り込んだデータを、通常データとして、通信帯域Bのうちの許容メディア通信帯域Bdataを使用して、受信装置14に送信し、ステップS6に進む。
【0110】
ステップS6では、送信部111は、直前のステップS5で送信した通常データを、再送バッファ112に供給して記憶させ、ステップS2に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【0111】
また、ステップS4において、受信装置14から再送要求があったと判定された場合、即ち、再送制御部113が、受信装置14から送信されてきた再送要求を受信し、再送データを再送していない再送要求が存在する(残っている)場合、再送制御部113は、再送バッファ112を制御することにより、受信装置14からの再送要求によって要求されているデータを、再送データとして、送信部111に供給させ、ステップS7に進む。
【0112】
ステップS7では、送信部111は、直前のステップS3でデータ生成装置11から取り込んだデータと、再送バッファ112から供給された再送データとを、通信帯域Bの全体を使用して、受信装置14に送信する。
【0113】
即ち、ステップS7では、送信部111は、データ生成装置11から取り込んだデータを、通常データとして、通信帯域Bのうちの許容メディア通信帯域Bdataを使用して、受信装置14に送信するとともに、再送バッファ112から供給された再送データを、通信帯域Bのうちの許容メディア通信帯域Bdataを除いた残りの帯域、即ち、再送帯域Barqを使用して、受信装置14に送信する。
【0114】
そして、ステップS7からステップS6に進み、送信部111は、直前のステップS7で送信したデータのうちの通常データを、再送バッファ112に供給して記憶させ、ステップS2に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【0115】
一方、ステップS2において、データ生成装置11がデータを生成して出力するタイミングでないと判定された場合、ステップS8に進み、再送制御部113が、ステップS4と同様に、受信装置14から再送要求があったかどうかを判定する。ステップ8において、再送要求がなかったと判定された場合、ステップS2に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【0116】
また、ステップS8において、受信装置14から再送要求があったと判定された場合、即ち、再送制御部113が、受信装置14から送信されてきた再送要求を受信し、再送データを再送していない再送要求が存在する場合、再送制御部113は、再送バッファ112を制御することにより、受信装置14からの再送要求によって要求されているデータを、再送データとして、送信部111に供給させ、ステップS9に進む。
【0117】
ステップS9では、送信部111は、再送バッファ112から供給された再送データを、通信帯域Bのうちの再送帯域Barqを使用して、受信装置14に送信し、ステップS2に戻って、以下、同様の処理が繰り返される。
【0118】
なお、図9では、先に、ステップS2において、データ生成装置11がデータを生成して出力するタイミングであるかどうかを判定し、その後、ステップS4またはステップS8において、再送要求があるかどうかを判定するようにしたが、先に、再送要求があるかどうかを判定を判定し、その後、データ生成装置11がデータを生成して出力するタイミングであるかどうかを判定するようにすることも可能である。
【0119】
また、再送要求がある場合には、送信部111において、再送データの送信のための処理と、通常データの送信のための処理とは、いずれを先に行うことも可能である。但し、再送データは、通常データに比較して、時間制約が厳しいことが多いため、リアルタイム性という観点からは、再送データの送信のための処理を先に(優先的に)行うのが望ましい。
【0120】
さらに、ステップS7やステップS9での再送データの送信は、例えば、通信遅延時間Tdelayが、ステップS1で設定された許容通信遅延時間を超える場合や、ロス時間Tlossが、ステップS1で設定された許容ロス時間を超える場合には、行わないようにすることができる。即ち、ステップS7やステップS9での再送データの送信は、通信遅延時間Tdelayが許容通信遅延時間の範囲であり、かつ、ロス時間Tlossが許容ロス時間の範囲内である場合にのみ行うことができる。
【0121】
以上のように、図4の送信装置12では、送信部111が、第1の方式(図5)により、通常送信時には、データを、通信帯域Bのうちの許容メディア通信帯域Bdataを使用して送信し、再送時には、データを、通信帯域Bの全体を使用して送信する。
【0122】
即ち、通常送信時には、通常データが、通信帯域Bのうちの許容メディア通信帯域帯域Bdataを使用して送信され、再送時には、再送データが、再送帯域Barqを使用して送信されるとともに、送信すべき通常データがあれば、その通常データが、許容メディア通信帯域Bdataを使用して送信される。
【0123】
このように、送信部111は、データを送信するのに使用する使用帯域を制御するが、即ち、通常データの送信には、許容メディア通信帯域帯域Bdataを使用し、再送データの送信には、再送帯域Barqを使用するように、使用帯域を制御するが、この使用帯域の制御は、例えば、送信するデータが、通常データであるか、または再送データであるかによって、データの送信のスケジューリングを行うスケジューラによって行うことができる。
【0124】
但し、使用帯域の制御をスケジューラによって行う場合には、送信装置12にスケジューラを実装する必要が生じる。
【0125】
そこで、送信部111では、例えば、図10に示すフォーマットのパケットを使用してデータを送信することにより、使用帯域の制御を、例えば、スケジューラなしで行うことができる。
【0126】
即ち、図10は、送信部111がデータの送信に使用するパケットのフォーマットを示している。
【0127】
パケットは、固定長のパケットで、その先頭から、パケットヘッダ部、ペイロード部、CRC(Cyclic Redundancy Checking)部が順次配置されて構成されている。
【0128】
パケットヘッダ部には、パケット長その他のパケットに関するパケット情報が配置される(含められる)。ペイロード部には、送信するデータ(実データ)が配置される。CRC部には、エラーチェックに用いられるCRCコードが配置される。
【0129】
図10の固定長のパケットにおいて、ペイロード部は、許容メディア通信帯域Bdataと再送帯域Barqとの比に応じた割合の2つの領域である通常用領域と再送用領域と区分されている。ペイロード部のうちの通常用領域は、許容メディア通信帯域Bdataに対応する部分(領域)で、許容メディア通信帯域Bdataに対応するサイズになっている。また、ペイロード部のうちの再送用領域は、再送帯域Barqに対応する部分で、再送帯域Barqに対応するサイズになっている。
【0130】
送信部111は、常時、一定のレートで、図10の固定長のパケットを送信するが、パケットのペイロード部には、図11に示すように、データを配置する。
【0131】
即ち、図11は、通常送信時と再送時のそれぞれにおいて送信部111が送信するパケットを示している。
【0132】
通常データ(通常送信用のデータ)のみを送信する通常送信時においては、送信部111は、図11上側に示すように、通常データを、通常用領域に配置するとともに、再送用領域を空白にして(例えば、パディング用のパディングデータを再送用領域に配置して)、パケットを送信する。
【0133】
また、通常データと再送データ(再送用のデータ)を送信する再送時においては、送信部111は、図11下側に示すように、通常データを、通常用領域に配置するとともに、再送データを再送用領域に配置して、パケットを送信する。
【0134】
以上のように、固定長のパケットのペイロード部へのデータの配置を制御することにより、(実質的な)使用帯域の制御を容易に行うことができる。
【0135】
次に、図12のフローチャートを参照して、図4の受信装置14の処理について説明する。
【0136】
受信装置14では、受信部121が、ステップS11において、送信装置12の送信部111からデータがネットワーク3を介して送信されてくるのを待って、ステップS12に進み、送信部111から送信されてくるデータ(パケット)を受信し、受信バッファ122に供給して記憶させる。
【0137】
そして、ステップS13において、再送要求部123は、受信部121が受信したデータに基づき、送信部111が送信したデータにロス(伝送エラー)があるかどうか、即ち、ロスデータがあるかどうかを判定する。ステップS13において、ロスデータがないと判定された場合、ステップS11に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【0138】
また、ステップS13において、ロスデータがあると判定された場合、ステップS14に進み、再送制御部123は、そのロスデータの再送を要求する再送要求を、ネットワーク3を介して、送信装置12の再送制御部113に送信して、ステップS11に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【0139】
次に、図13は、図2の送信機1および受信機2の第2の構成例を示している。なお、図中、図4の場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【0140】
即ち、図13において、送信装置12は、再送バッファ112と再送制御部113が設けられている点で、図4の送信装置12と共通する。但し、図13の送信装置12は、送信部111とパラメータ設定部114に代えて、それぞれ、送信部211とパラメータ設定部214が設けられているとともに、モード判定部202と送信バッファ203が新たに設けられている点で、図4の送信装置12と相違する。
【0141】
また、図13において、受信装置14は、図4の送信装置と同様に構成されている。
【0142】
モード判定部202は、送信部211がデータを送信する伝送(送信)モードを判定する。即ち、送信部211は、データを送信するときの伝送モードとして、後述する通常モード、再送モード、および高速送信モードの3つの伝送モードを有しており、モード判定部202は、送信部211の現在の伝送モードを判定する。
【0143】
また、モード判定部202は、データ生成装置11が出力するデータを取り込み、そのデータを、通常データとして、送信バッファ203または送信部211に供給する。なお、モード判定部202は、伝送モードの判定結果に応じて、通常データを、送信バッファ203または送信部211のうちのいずれかに供給する。
【0144】
送信バッファ203は、モード判定部202から供給される通常データを一時記憶し、送信部211に供給する。
【0145】
送信部211は、モード判定部202または送信バッファ203から供給される通常データや、再送バッファ112から供給される再送データの送信を制御する。さらに、送信部211は、図4の送信部111と同様に、送信したデータを、再送に備えて、再送バッファ112に供給する。
【0146】
なお、送信部211は、上述したように、通常モード、再送モード、および高速送信モードの3つの伝送モードを有しており、そのうちのいずれかの伝送モードで、データ(通常データ、再送データ)を送信する。
【0147】
パラメータ設定部214は、図4のパラメータ設定部114と同様に、許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域の3つの通信パラメータを設定して、必要なブロックに供給し、これにより、送信装置12によるデータの送信を制御する。なお、図4のパラメータ設定部114では、第1の方式によるデータの送信を行う場合の許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域が設定されるが、図13のパラメータ設定部214では、第2の方式によるデータの送信を行う場合の許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域が設定される
【0148】
図14を参照して、第2の方式によるデータの送信について説明する。
【0149】
図14は、第2の方式によるデータの送信に使用される帯域の時間変化を示している。
【0150】
第2の方式は、通信に使用可能な通信帯域Bのうちの、一部の帯域が、再送時に用いる再送帯域Barqとして確保され、通常送信時には、通常データが、通信帯域Bから再送帯域Barqを除いた残りのメディア通信帯域Bdataを使用して送信され、再送時には、通信帯域Bの全体を使用してデータが送信される点では、第1の方式と共通する。
【0151】
但し、第1の方式では、図5で説明したように、再送時には、再送データが、再送帯域Barqを使用して送信されるとともに、通常データが残りの帯域Bdataを使用して送信されるが、第2の方式では、再送時には、再送データが、通信帯域Bの全体を使用して送信される。
【0152】
即ち、第1の方式では、再送データの送信は、通信帯域Bのうちの再送帯域Barqのみを使用して行われるため、データのロスが生じてから、そのロスしたデータの再送が完了するまでの通信遅延時間Tdelayが、ロスしたデータの送信に要したロス時間Tlossに大きく影響される傾向にある。このため、データのロスがバースト的に発生する通信環境では、大きなロス時間Tlossが生じることを考慮し、通信遅延時間Tdelayとして許容される許容通信遅延時間として、大きな値を見込んでおく必要が生じる。
【0153】
そこで、第2の方式では、図14に示すように、データのロスが生じた場合には、そのロスしたデータ(再送データ)が、通信帯域Bの全体を使用して送信され、これにより、短時間で再送データの送信を終了することができるようになっている。さらに、第2の方式では、再送データの再送中に送信するはずであった通常データをバッファリングしておき、再送データの再送の終了後に、バッファリングされている通常データが、そのバッファリングされている通常データがなくなるまで、通信帯域Bの全体を使用して送信される。
【0154】
ここで、図14では、まず、通常データが、メディア通信帯域Bdataを使用して送信されており、時刻t20乃至t21の時間に送信された通常データがロスし、ロスデータとなっている。ロスデータが生じたことによって、受信装置14から送信装置12に再送要求が送信されるが、その再送要求が、送信装置12に到着するのに、(遅延)時間Treqを要し、このため、時刻t21から時間Treqが経過した時刻t22から、メディア通信帯域Bdataに再送帯域Barqを加えた通信帯域Bの全体を使用して再送データの送信が開始されている。再送データの送信中は、通常データがバッファリングされており、再送データの送信が終了すると、その終了した時刻t23から、バッファリングされている通常データが、通信帯域Bの全体を使用して送信される。
【0155】
バッファリングされている通常データが、通信帯域Bの全体を使用して送信されている間も、通常データはバッファリングされており、バッファリングされている通常データがなくなると、そのなくなった時刻t24からは、メディア通信帯域Bdataを使用しての通常データの送信が行われる(再開される)。
【0156】
従って、第2の方式では、通常データが、メディア通信帯域Bdataを使用して送信される場合、再送データが、通信帯域Bの全体を使用して高速送信される場合、および、バッファリングされている通常データが、通信帯域Bの全体を使用して高速送信される場合の3つの場合がある。
【0157】
ここで、通常データを、メディア通信帯域Bdataを使用して送信する伝送モードが通常モードであり、再送データを、通信帯域Bの全体を使用して高速送信する伝送モードが再送モードである。また、バッファリングされている通常データを、通信帯域Bの全体を使用して高速送信する伝送モードが高速送信モードである。
【0158】
第2の方式によれば、再送データが、再送帯域Barqではなく、より広い通信帯域Bの全体を使用して送信されるので、再送データの送信を、第1の方式に比較して短時間で終了することができる。さらに、再送データの送信中は、通常データがバッファリングされ、その送信を待つことになるが、その送信を待った通常データは、再送データの送信が終了した後に、やはり、広い通信帯域Bの全体を使用して送信されるので、送信を待った時間を、いわば取り戻すことができる。
【0159】
以上のような第2の方式においては、データのロスが生じてから、そのロスしたデータの再送が完了するまでの通信遅延時間Tdelay、ロスしたデータの送信に要したロス時間Tloss、および、通常送信時(通常データのうちのバッファリングせずに送信される通常データの送信時)に使用されるメディア通信帯域Bdataの関係は、以下のようになる。
【0160】
即ち、図14において、通信遅延時間Tdelayは、データのロスが生じた時刻t20から、そのロスしたデータの再送が完了した時刻t23までの時間であり、ロス時間Tlossは、時刻t20乃至t23の時間である。さらに、図14では、受信装置14から送信された再送要求が送信装置12に到着するのに、(遅延)時間Treqだけ要している。
【0161】
従って、通信遅延時間Tdelay、ロス時間Tloss、および、メディア通信帯域Bdataには、式(6)の関係が成り立つ。
【0162】
【数6】

・・・(6)
【0163】
式(6)の右辺の第1項と第3項とを、ロス時間Tlossでまとめると、式(7)が得られる。
【0164】
【数7】

・・・(7)
【0165】
式(7)における、例えば、ロス時間Tlossに、許容ロス時間を与えることにより、式(7)は、通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係を規定する式となる。この場合、通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係を規定する式(7)から、許容通信遅延時間と許容メディア通信帯域とを決めることができる。
【0166】
ここで、図15に、式(7)のロス時間Tlossに対して、許容ロス時間を与えた場合の、通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係を示す。即ち、図15は、横軸をBdata/Bとするとともに、縦軸をTdelayとして、Tlossが、10ms,20ms,30msである場合それぞれの、Bdata/BとTdelayとの関係を示している。
【0167】
なお、第1の方式の場合と同様に、第2の方式についても、式(7)の通信遅延時間Tdelayに、許容通信遅延時間を与えることにより、式(7)は、メディア通信帯域Bdataとロス時間Tlossとの関係を規定する式となり、その、メディア通信帯域Bdataとロス時間Tlossとの関係を規定する式(7)から、許容メディア通信帯域と許容ロス時間とを決めることができる。また、式(7)のメディア通信帯域Bdataに、許容メディア通信帯域を与えることにより、式(7)は、通信遅延時間Tdelayとロス時間Tlossとの関係を規定する式となり、その、通信遅延時間Tdelayとロス時間Tlossとの関係を規定する式(7)から、許容通信遅延時間と許容ロス時間とを決めることができる。
【0168】
上述したように、第2の方式によれば、再送データが、通信帯域Bの全体を使用して送信されるので、再送帯域Barqのみを使用して再送データを送信する第1の方式に比較して、再送データの送信を、短時間で終了することができる。そして、その結果、通信遅延時間Tdelayとして許容される許容通信遅延時間を短くすることができる。
【0169】
即ち、図16は、第1と第2の方式それぞれについての、通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdata/Bとの関係を示している。
【0170】
なお、図16において実線は、式(2)のロス時間Tlossに、ある許容ロス時間を与えることにより得られた通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdata/Bとの関係、つまり、第1の方式についての、通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdata/Bとの関係を示している。
【0171】
また、図16において点線は、式(7)のロス時間Tlossに、同一の許容ロス時間を与えることにより得られた通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係、つまり、第2の方式についての、通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係を示している。
【0172】
図16によれば、第2の方式の方が、第1の方式に比較して、通信遅延時間Tdelayとして許容される許容通信遅延時間を短くすることができることが分かる。
【0173】
ところで、第2の方式では、伝送モードが再送モードである場合と高速送信モードである場合には、データが、通信帯域Bの全体を使用して送信されるため、その送信中に伝送エラーが生じ、その伝送エラーを再送によって回復した場合には、通常データの送信を待つ時間が長くなる。
【0174】
即ち、図17および図18は、第2の方式において再送データがロスした場合の、データの送信に使用される使用帯域の時間変化を示している。
【0175】
ここで、図17は、ロスした再送データの再送要求が、最初にロスした通常データの再送中に、受信装置14から送信装置12に到着した場合の、使用帯域の時間変化を示している。
【0176】
即ち、図17では、まず、通常データが、メディア通信帯域Bdataを使用して送信されており、時刻t30乃至t31の時間に送信された通常データがロスし、ロスデータとなっている。ロスデータが生じたことによって、受信装置14から送信装置12に再送要求(1回目の再送要求)が送信されるが、その1回目の再送要求が、送信装置12に到着するのに、(遅延)時間Treqを要し、このため、時刻t31から時間Treqが経過した時刻t32から、通信帯域Bの全体を使用して再送データの送信が開始されている。さらに、図17では、再送中の時刻t33乃至t34に再送された再送データがロスし、時刻t34から時間Treqだけ経過した時刻t35に、ロスした再送データの再送要求(2回目の再送要求)が到着し、1回目の再送要求によって要求された再送データの再送が中断され、2回目の再送要求によって要求された再送データの再送が、時刻t35乃至t36の間に行われている。そして、図17では、時刻t36から、1回目の再送要求で要求された再送データの送信が再開され、その再送データの送信が、時刻t37で終了している。
【0177】
再送データの送信中は、通常データがバッファリングされており、図17では、再送データの送信が時刻t37で終了した後、バッファリングされている通常データが、通信帯域Bの全体を使用して送信され、その送信が終了すると、その終了した時刻t38からは、メディア通信帯域Bdataを使用しての通常データの送信が行われる。
【0178】
図17に示したように、2回目の再送要求が、1回目の再送要求によって要求された再送データの送信中に、送信装置12に到着した場合には、2回目の再送要求が、受信装置14から送信装置12に送信されるのに要する時間Treqは、通信遅延時間Tdelayに影響しない。このため、2回目の再送要求によれば、通信遅延時間Tdelayは、その2回目の再送要求によって要求されている再送データを送信するのに要する時間だけ増加する。
【0179】
一方、図18は、ロスした再送データの再送要求が、最初にロスした通常データの再送の終了後に、受信装置14から送信装置12に到着した場合の、使用帯域の時間変化を示している。
【0180】
即ち、図18では、まず、通常データが、メディア通信帯域Bdataを使用して送信されており、時刻t40乃至t41の時間に送信された通常データがロスし、ロスデータとなっている。ロスデータが生じたことによって、受信装置14から送信装置12に再送要求(1回目の再送要求)が送信されるが、その1回目の再送要求が、送信装置12に到着するのに、時間Treq(以下、適宜、再送要求遅延時間Treqという)を要し、このため、時刻t41から再送要求遅延時間Treqが経過した時刻t42から、通信帯域Bの全体を使用して再送データの送信が開始されている。さらに、図18では、再送が終了する直前の時刻t43乃至t44に再送された再送データがロスし、再送が終了した時刻t44から再送要求遅延時間Treqだけ経過した時刻t45に、ロスした再送データの再送要求(2回目の再送要求)が到着している。
【0181】
一方、再送データの送信中は、通常データがバッファリングされており、再送が終了した時刻t44から2回目の再送要求が到着する時刻t45までの間は、バッファリングされている通常データが、通信帯域Bの全体を使用して送信される。
【0182】
そして、時刻t45に2回目の再送要求が到着すると、バッファリングされている通常データの送信が中断され、時刻t45乃至t46の間に、2回目の再送要求によって要求された再送データの再送が行われる。その後、図18では、2回目の再送要求によって要求された再送データの再送が終了した時刻t46から、バッファリングされている通常データの送信が再開され、その送信が終了すると、その終了した時刻t47からは、メディア通信帯域Bdataを使用しての通常データの送信が行われる。
【0183】
図18に示したように、2回目の再送要求が、1回目の再送要求によって要求された再送データの送信の終了後に、送信装置12に到着する場合には、通信遅延時間Tdelayは、図17の場合よりも最大で、再送要求遅延時Treqだけ大になる。
【0184】
従って、第2の方式を採用する図13の送信装置12では、パラメータ設定部214は、図18で説明したような、いわば最悪の場合(通信遅延時間Tdelayが最大となる場合)を考慮して、許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域の3つの通信パラメータを設定する必要がある。
【0185】
なお、再送データの再送時において、大きなロス時間Tlossのロスが1回だけ生じる第1のケースと、小さなロス時間Tloss'のロスではあるが、複数回のロスが生じ、その複数回のロスの合計のロス時間としては、第1のケースのロス時間Tlossと等しい第2のケースとでは、全体のロス時間が等しくても、第2のケースでは、複数回の再送要求が、受信装置14から送信装置12に送信され、その複数回の再送要求それぞれの再送要求遅延時間Tarqが、通信遅延時間Tdelayに影響しうる。従って、パラメータ設定部214では、そのような複数回の再送要求それぞれの再送要求遅延時間Tarqをも考慮して、許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域の3つの通信パラメータを設定する必要がある。
【0186】
そこで、いま、再送データの再送時に生じたロスの回数をN回とし、再送データの再送時のk回目(k=1,2,・・・,N)のロスのロス時間を、Tloss(k)と表すこととする。また、通常データの送信時に生じたロス(最初のロス)のロス時間を、Tloss(0)と表すこととする。
【0187】
さらに、最悪の場合として、再送時における1回あたりのロスに応じて行われる再送によって、通信遅延時間Tdelayが、再送要求遅延時間Tarqとロス時間Tloss(k)とを合計した時間だけ増加する場合を考えると、再送データの再送時にN回のロスが生じた場合の、通信遅延時間Tdelay、ロス時間Tloss(k)(k=0,1,・・・,N)、および、メディア通信帯域Bdataには、式(8)の関係が成り立つ。
【0188】
【数8】

・・・(8)
【0189】
いま、式(8)の右辺のΣTloss(k)、即ち、ロス時間の総和を、式(9)に示すように、Tloss_sumとおく。
【0190】
【数9】

・・・(9)
【0191】
一方、通常データの送信時に生じたロス(最初のロス)のロス時間Tloss(0)と、式(9)のロス時間の総和Tloss_sumとは、式(10)で表される関係を満たす。
【0192】
【数10】

・・・(10)
【0193】
式(8)におけるΣTloss(k)を、式(9)のロス時間の総和Tloss_sumで置き換え、さらに、その置き換え像の式(8)に、式(10)で表される関係を適用すると、式(11)が得られる。
【0194】
【数11】

・・・(11)
【0195】
式(11)は、通信遅延時間Tdelayとして許容される許容通信遅延時間の上限を表している。式(11)によれば、再送データの再送時に生じるロスの回数Nが増加すると、通信遅延時間Tdelayは、ロス時間の総和Tloss_sumに対応する時間(1+Bdata/B)Tloss_sumに対して、再送要求遅延時間Treqだけ増加する傾向にある。
【0196】
再送データの再送時にロスが生じる場合については、式(11)のメディア通信帯域Bdataに、許容メディア通信帯域を与えることにより、式(11)は、通信遅延時間Tdelayとロス時間の総和Tloss_sumとの関係を規定する式となり、その、通信遅延時間Tdelayとロス時間の総和Tloss_sumとの関係を規定する式(11)から、許容通信遅延時間と許容ロス時間の総和とを決めることができる。
【0197】
ここで、図19に、式(11)のメディア通信帯域Bdata/Bに対して、許容メディア通信帯域を与えた場合の、通信遅延時間Tdelayとロス時間の総和Tloss_sumとの関係を示す。即ち、図19は、横軸をTloss_sumとするとともに、縦軸をTdelayとして、メディア通信帯域Bdata/B=0.9、再送要求遅延時間Treq=4msである場合の、Nが、1,2,3,4であるときそれぞれの、Tloss_sumとTdelayとの関係を示している。
【0198】
同様に、式(11)におけるロス時間の総和Tloss_sumに、各ロスの許容ロス時間の総和を与えることにより、式(11)は、通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係を規定する式となり、その、通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係を規定する式(11)から、許容通信遅延時間と許容メディア通信帯域とを決めることができる。
【0199】
さらに、式(11)の通信遅延時間Tdelayに、許容通信遅延時間を与えることにより、式(11)は、メディア通信帯域Bdataとロス時間の総和Tloss_sumとの関係を規定する式となり、その、メディア通信帯域Bdataとロス時間の総和Tloss_sumとの関係を規定する式(11)から、許容メディア通信帯域と許容ロス時間の総和とを決めることができる。
【0200】
次に、図13の送信装置12の送信部211は、上述したように、通常データをメディア通信帯域Bdataのみを使用して送信する通常モード、受信装置14からの再送要求に応じて再送データを、通信帯域Bの全体を使用して送信する(再送を行う)再送モード、再送の終了後に、バッファリングされた通常データを、通信帯域Bの全体を使用して送信する高速転送モードの3つの伝送モードを有する。
【0201】
図20は、送信部211の伝送モードの状態遷移を表す状態遷移図である。
【0202】
送信部211は、初期状態、つまり、データの送信の開始時においては、通常モードの状態となる。通常モードの状態において、受信装置14から再送要求があると、送信部211は、再送モードの状態に遷移する。再送モードの状態は、再送要求に応じて再送が行われている限り続き、再送が終了すると、送信部211は、高速送信モードの状態に遷移して、バッファリングされているデータを送信する。
【0203】
高速送信モードの状態において、受信装置14から再送要求があると、送信部211は、再度、再送モードの状態に遷移する。また、高速送信モードの状態において、バッファリングされているデータすべての送信が終了すると、送信部211は、通常モードの状態に遷移する。
【0204】
なお、図20では、送信部211は、再送モードの状態において、再送が終了すると、高速送信モードの状態に遷移するようになっているが、その他、例えば、再送データの再送が終了する前に再送を打ち切って、再送モードの状態から高速送信モードの状態に遷移することが可能である。
【0205】
また、図20では、送信部211は、高速送信モードの状態において、バッファリングされているデータすべての送信が終了すると、通常モードの状態に遷移するようになっているが、その他、例えば、バッファリングされているデータが残っている状態で、そのバッファリングされているデータの送信を打ち切って、高速送信モードの状態から通常モードの状態に遷移することが可能である。
【0206】
再送の打ち切りや、バッファリングされているデータの送信の打ち切りは、例えば、ロス時間Tloss(の総和)が、許容ロス時間(の総和)を越えそうな場合や、通信遅延時間Tdelayが、許容通信遅延時間を超えそうな場合、あるいは、データの送信が、そのデータの再生開始時刻に間に合わない場合などに行うのが望ましい。
【0207】
また、再送の打ち切りのみや、バッファリングされているデータの送信の打ち切りのみを可能とし、あるいはその両方のいずれをも可能とすることができる。いずれを可能とするかは、例えば、あらかじめ、送信装置12に設定しておくことができる。
【0208】
さらに、再送の打ち切りや、バッファリングされているデータの送信の打ち切りは、データの重要度(優先度)に応じて、重要度が低いデータのみを対象として行うようにすることが可能である。
【0209】
次に、図21のフローチャートを参照して、第2の方式によりデータを送信する図13の送信装置12の処理について説明する。
【0210】
送信装置12では、まず最初に、ステップS31において、パラメータ設定部214が、3つの通信パラメータ、即ち、許容通信遅延時間、許容ロス時間(の総和)、および許容メディア通信帯域を設定する。
【0211】
ここで、パラメータ設定部214には、許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域の3つの通信パラメータのうちの、1つの通信パラメータが与えられる。そして、パラメータ設定部214は、1つの通信パラメータが与えられると、残りの2つの通信パラメータを、通信遅延時間Tdelay、ロス時間Tloss、およびメディア通信帯域Bdata/Bの関係を表す式(7)(または式(11))に基づいて設定する。
【0212】
なお、パラメータ設定部214への1つの通信パラメータ(基準パラメータ)の与え方としては、例えば、図4のパラメータ設定部114への1つの通信パラメータの与え方と同様の方法を採用することができる。
【0213】
また、パラメータ設定部214において、1つの通信パラメータが与えられたときに、残りの2つの通信パラメータの設定の仕方としては、例えば、図4のパラメータ設定部114の場合と同様に、評価関数を用いた方法を採用することができる。
【0214】
ステップS31において、パラメータ設定部214は、許容通信遅延時間、許容ロス時間、および許容メディア通信帯域の3つの通信パラメータを設定すると、ステップS32に進み、モード判定部202は、データ生成装置11がデータを生成して出力するタイミングであるかどうかを判定する。
【0215】
ステップS32において、データ生成装置11がデータを生成して出力するタイミングであると判定された場合、ステップS33に進み、モード判定部202は、データ生成装置11が出力するデータを取り込み(受け付け)、ステップS34に進む。
【0216】
ここで、モード判定部202は、ステップS33においてデータ生成装置11から取り込んだデータのデータレートが、許容メディア通信帯域を越えている場合には、例えば、データを、受信装置14側でリアルタイムでの再生ができるように送信することができないとして、その旨のメッセージを出力し、処理を終了することができる。
【0217】
ステップS34では、モード判定部202が、送信部211の伝送モードを判定する。
【0218】
ステップS34において、送信部211の伝送モードが通常モードであると判定された場合、モード判定部202は、直前のステップS33でデータ生成装置11から取り込んだデータである通常データを、送信部211に供給して、ステップS35に進む。
【0219】
ステップS35では、送信部211は、モード判定部202からの通常データを、現在の伝送モードである通常モードで、即ち、通信帯域Bのうちの許容メディア通信帯域Bdataを使用して、受信装置14に送信し、ステップS36に進む。
【0220】
ステップS36では、送信部211は、直前のステップS35で送信した通常データを、再送バッファ112に供給して記憶させ、ステップS32に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【0221】
また、ステップS34において、送信部211の伝送モードが再送モードであると判定された場合、ステップS37に進み、モード判定部202は、直前のステップS33でデータ生成装置11から取り込んだデータである通常データを、送信バッファ203に供給して格納し(記憶させ)、ステップS38に進む。
【0222】
ステップS38では、再送バッファ112に記憶されている再送データを再送する、後述する再送処理が行われ、その後、ステップS32に戻って、以下、同様の処理が繰り返される。
【0223】
また、ステップS34において、送信部211の伝送モードが高速送信モードであると判定された場合、ステップS39に進み、モード判定部202は、直前のステップS33でデータ生成装置11から取り込んだデータである通常データを、送信バッファ203に供給して格納し、ステップS40に進む。
【0224】
ステップS40では、送信バッファ203に記憶されている通常データを高速送信する、後述する高速送信処理が行われ、その後、ステップS32に戻って、以下、同様の処理が繰り返される。
【0225】
一方、ステップS32において、データ生成装置11がデータを生成して出力するタイミングでないと判定された場合、ステップS41に進み、再送制御部113が、受信装置14からの再送要求があるかどうかを判定する。ステップS41において、再送要求があると判定された場合、即ち、再送制御部113が、受信装置14から送信されてきた再送要求を受信し、再送データを再送していない再送要求が存在する場合、ステップS42に進み、再送処理が行われ、その後、ステップS32に戻って、以下、同様の処理が繰り返される。
【0226】
また、ステップ41において、再送要求がないと判定された場合、ステップS43に進み、モード判定部202は、送信部211の伝送モードが高速送信モードであるかどうかを判定する。
【0227】
ステップS43において、送信部211の伝送モードが高速送信モードでないと判定された場合、ステップS32に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【0228】
また、ステップS43において、送信部211の伝送モードが高速送信モードであると判定された場合、ステップS44に進み、高速送信処理が行われ、その後、ステップS32に戻って、以下、同様の処理が繰り返される。
【0229】
次に、図22のフローチャートを参照して、図21のステップS38およびS42で行われる再送処理について説明する。
【0230】
再送処理では、まず最初に、ステップS51において、送信部211は、伝送モードを再送モードとして、ステップS52に進み、再送制御部113は、再送バッファ112を制御することにより、受信装置14からの再送要求によって要求されているデータを、再送データとして、送信部211に供給させ、ステップS53に進む。
【0231】
ステップS53では、送信部211は、再送バッファ112から供給された再送データを、現在の伝送モードである再送モードで、即ち、通信帯域Bの全体を使用して、受信装置14に送信し、ステップS54に進む。
【0232】
ステップS54では、再送制御部113が、まだ処理していない再送要求、即ち、再送データを再送していない再送要求があるかどうかを判定する。ステップS54において、処理していない再送要求がないと判定された場合、即ち、再送すべきデータの再送がすべて終了している場合、ステップS55に進み、送信部211は、伝送モードを高速送信モードとしてリターンする。
【0233】
また、ステップS54において、処理していない再送要求があると判定された場合、ステップS55をスキップしてリターンする。即ち、この場合、送信部211の伝送モードは、再送モードのままとされる。
【0234】
なお、本実施の形態では、処理していない再送要求の有無にかかわらず、図22の再送処理を終了し、図21で説明したように、再び、ステップS32において、データ生成装置11がデータを生成して出力するタイミングであるかどうかの判定の処理が行われるが、その他、例えば、処理していない再送要求がある場合には、再送処理を終了せずに、処理していない再送要求によって要求されているデータの再送を続行し、処理していない再送要求がなくなってから、再送処理を終了することが可能である。但し、図22のように、処理していない再送要求の有無にかかわらず、再送処理を終了し、再び、ステップS32において、データ生成装置11がデータを生成して出力するタイミングであるかどうかの判定の処理を行う方が、データ生成装置11が出力するデータを取りこぼしがない。
【0235】
さらに、図22の再送処理は、例えば、通信遅延時間Tdelayが、図21のステップS31で設定された許容通信遅延時間を超える場合や、ロス時間Tlossが、ステップS31で設定された許容ロス時間を超える場合には、行わないようにする(スキップする)ことができる。即ち、再送処理は、通信遅延時間Tdelayが許容通信遅延時間の範囲であり、かつ、ロス時間Tlossが許容ロス時間の範囲内である場合にのみ行うことができる。
【0236】
次に、図23のフローチャートを参照して、図21のステップS40およびS44で行われる高速送信処理について説明する。
【0237】
高速送信処理では、送信部211は、ステップS61において、送信バッファ203に記憶されているデータである通常データを読み出して、ステップS62に進み、その通常データを、現在の伝送モードである高速送信モードで、即ち、通信帯域Bの全体を使用して、受信装置14に送信し、ステップS63に進む。
【0238】
ステップS63では、送信部211は、直前のステップS63で送信した通常データを、再送バッファ112に供給して記憶させ、ステップS64に進む。
【0239】
ステップS64では、送信部211が、送信バッファ203に未送信の通常データが記憶されていないかどうかを判定する。ステップS64において、送信バッファ203に未送信の通常データが記憶されていないと判定された場合、ステップS65に進み、送信部211は、伝送モードを通常モードとしてリターンする。
【0240】
また、ステップS64において、送信バッファ203に未送信の通常データが記憶されていると判定された場合、ステップS65をスキップしてリターンする。即ち、この場合、送信部211の伝送モードは、高速送信モードのままとされる。
【0241】
なお、本実施の形態では、送信バッファ203に未送信の通常データが記憶されているか否かにかかわらず、図23の高速送信処理を終了し、図21で説明したように、再び、ステップS32において、データ生成装置11がデータを生成して出力するタイミングであるかどうかの判定の処理が行われるが、その他、例えば、送信バッファ203に未送信の通常データが記憶されている場合には、高速送信処理を終了せずに、送信バッファ203に記憶されている(未送信の)通常データの送信を続行し、送信バッファ203に記憶されている通常データがなくなってから、高速通信処理を終了することが可能である。但し、図23のように、送信バッファ203に未送信の通常データが記憶されているか否かにかかわらず、高速送信処理を終了し、再び、ステップS32において、データ生成装置11がデータを生成して出力するタイミングであるかどうかの判定の処理を行う方が、データ生成装置11が出力するデータを取りこぼしがない。
【0242】
以上のように、図13の送信装置12では、送信部211が、第2の方式(図14、図17、図18)により、通常送信時には、データが、通信帯域Bのうちの許容メディア通信帯域Bdataを使用して送信し、再送時には、通信帯域Bの全体を使用してデータを送信する。
【0243】
即ち、通常データを送信する通常送信時のうちの、伝送モードが通常モードであるときには、通常データが、通信帯域Bのうちの許容メディア通信帯域帯域Bdataを使用して送信され、伝送モードが再送モードである再送時には、再送データが、許容メディア通信帯域帯域Bdataと再送帯域Barqとを合わせた通信帯域Bの全体を使用して送信される。さらに、通常送信時のうちの、伝送モードが高速送信モードであるときには、通常データが、通信帯域Bの全体を使用して送信される
【0244】
このように、送信部211は、データを送信するのに使用する使用帯域を制御するが、即ち、伝送モードが通常モードであるときには、許容メディア通信帯域帯域Bdataを使用し、伝送モードが再送モードまたは高速送信モードであるときには、再送帯域Barqを含む通信帯域Bの全体を使用するように、使用帯域を制御するが、この使用帯域の制御は、例えば、伝送モードによって、データの送信のスケジューリングを行うスケジューラによって行うことができる。
【0245】
但し、使用帯域の制御をスケジューラによって行う場合には、送信装置12にスケジューラを実装する必要が生じる。
【0246】
そこで、送信部211では、例えば、図4の送信部111と同様に、図10に示したフォーマットのパケットを使用してデータを送信することにより、使用帯域の制御を、スケジューラなしで行うことができる。
【0247】
即ち、送信部211は、常時、一定のレートで、図10の固定長のパケットを送信するが、パケットのペイロード部には、図24に示すように、データを配置する。
【0248】
即ち、図24は、伝送モードが、通常モード、再送モード、高速送信モードである場合のそれぞれにおいて送信部211が送信するパケットを示している。
【0249】
伝送モードが通常モードである場合には、送信部211は、図24上から1番目に示すように、通常データを、通常用領域に配置するとともに、再送用領域を空白にして(例えば、パディング用のパディングデータを再送用領域に配置して)、パケットを送信する。
【0250】
また、伝送モードが再送モードである場合には、送信部211は、図24上から2番目に示すように、再送データを、通常用領域と再送用領域、即ち、ペイロード部の全体に配置して、パケットを送信する。
【0251】
さらに、伝送モードが高速送信モードである場合には、送信部211は、図24上から3番目に示すように、通常データを、通常用領域と再送用領域、即ち、ペイロード部の全体に配置して、パケットを送信する。
【0252】
以上のように、固定長のパケットのペイロード部へのデータの配置を制御することにより、使用帯域の制御を容易に行うことができる。
【0253】
以上説明したように、許容通信遅延時間と、許容ロス時間と、許容メディア通信帯域との3つの通信パラメータのうちの、1つの通信パラメータが与えられたときに、残りの2つの通信パラメータを、通信遅延時間Tdelay、ロス時間Tloss、およびメディア通信帯域Bdataの関係を表す式(2)や、式(7)、式(11)に基づいて最適に設定し、通常送信時には、通信帯域Bのうちの許容メディア通信帯域のみを使用してデータを送信し、再送時には、通信帯域Bの全体を使用してデータを送信することにより、通信遅延時間Tdelay、ロス時間Tloss(伝送エラーに対する耐性)、およびメディア通信帯域Bdataの関係を考慮した適切な再送を行うことが可能となる。
【0254】
従って、例えば、通信帯域Bの制約された無線網を含むネットワークを介して、ビデオやオーディオ等のストリーミングデータを送受信する場合において、バースト的に、ストリーミングデータのロスが発生しても、リアルタイム性を保ちつつ、高品質なビデオストリーミングやオーディオストリーミングを実現することが可能となる。
【0255】
次に、上述した一連の処理は、ハードウェアにより行うこともできるし、ソフトウェアにより行うこともできる。一連の処理をソフトウェアによって行う場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、汎用のコンピュータ等にインストールされる。
【0256】
そこで、図25は、上述した一連の処理を実行するプログラムがインストールされるコンピュータの一実施の形態の構成例を示している。
【0257】
プログラムは、コンピュータに内蔵されている記録媒体としてのハードディスク505やROM503に予め記録しておくことができる。
【0258】
あるいはまた、プログラムは、フレキシブルディスク、CD-ROM(CompactDiscReadOnlyMemory),MO(MagnetoOptical)ディスク,DVD(DigitalVersatileDisc)、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体511に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体511は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
【0259】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体511からコンピュータにインストールする他、ダウンロードサイトから、ディジタル衛星放送用の人工衛星を介して、コンピュータに無線で転送したり、LAN(LocalAreaNetwork)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送し、コンピュータでは、そのようにして転送されてくるプログラムを、通信部508で受信し、内蔵するハードディスク505にインストールすることができる。
【0260】
コンピュータは、CPU(CentralProcessingUnit)502を内蔵している。CPU502には、バス501を介して、入出力インタフェース510が接続されており、CPU502は、入出力インタフェース510を介して、ユーザによって、キーボードや、マウス、マイク等で構成される入力部507が操作等されることにより指令が入力されると、それにしたがって、ROM(ReadOnlyMemory)503に格納されているプログラムを実行する。あるいは、また、CPU502は、ハードディスク505に格納されているプログラム、衛星若しくはネットワークから転送され、通信部508で受信されてハードディスク505にインストールされたプログラム、またはドライブ509に装着されたリムーバブル記録媒体511から読み出されてハードディスク505にインストールされたプログラムを、RAM(RandomAccessMemory)504にロードして実行する。これにより、CPU502は、上述したフローチャートにしたがった処理、あるいは上述したブロック図の構成により行われる処理を行う。そして、CPU502は、その処理結果を、必要に応じて、例えば、入出力インタフェース510を介して、LCD(LiquidCrystalDisplay)やスピーカ等で構成される出力部506から出力、あるいは、通信部508から送信、さらには、ハードディスク505に記録等させる。
【0261】
ここで、本明細書において、コンピュータに各種の処理を行わせるためのプログラムを記述する処理ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。
【0262】
また、プログラムは、1のコンピュータにより処理されるものであっても良いし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであっても良い。
【0263】
なお、送信装置12には、第1または第2の方式のうちのいずれか一方だけを実装することもできるし、両方を実装することもできる。
【0264】
ここで、図16に示したように、第2の方式では、第1の方式よりも、同一のロス時間Tlossに対する通信遅延時間Tdelayが小になるので、逆に、同一の通信遅延時間Tdelayに対するロス時間Tlossは大になる。即ち、ある通信遅延時間Tdelayに対しては、第2の方式のロス時間Tlossは、第1の方式のロス時間Tlossよりも大になる。
【0265】
従って、第1と第2の方式の両方を、送信装置12に実装する場合には、ロス時間Tlossに応じ、ロス時間Tlossが、第1の方式を使用してもリアルタイム性を維持することができるほどに小であれば、第1の方式を使用し、ロス時間Tlossが大であれば、第2の方式を使用するようにすることができる。
【0266】
また、第1または第2の方式のうちのいずれを使用するかは、その他、例えば、ユーザの操作に応じて決定することができる。
【0267】
さらに、本実施の形態では、ネットワーク3が、無線網を必ず含むこととしたが(図3)、ネットワーク3は、無線網を含まない、有線網のみから構成されていても良い。
【0268】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0269】
【図1】ARQによる使用帯域の時間変化を示す図である。
【図2】本発明を適用した通信システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【図3】ネットワーク3の構成例を示す図である。
【図4】送信機1および受信機2の第1の構成例を示すブロック図である。
【図5】第1の方式によるデータの送信に使用される使用帯域の時間変化を示す図である。
【図6】メディア通信帯域Bdataとロス時間Tlossとの関係を示す図である。
【図7】通信遅延時間Tdelayとロス時間Tlossとの関係を示す図である。
【図8】通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係を示す図である。
【図9】送信装置12の処理を説明するフローチャートである。
【図10】パケットのフォーマットを示す図である。
【図11】通常送信時と再送時のそれぞれにおいて送信されるパケットを示す図である。
【図12】受信装置14の処理を説明するフローチャートである。
【図13】送信機1および受信機2の第2の構成例を示すブロック図である。
【図14】第2の方式によるデータの送信に使用される使用帯域の時間変化を示す図である。
【図15】通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係を示す図である。
【図16】第1と第2の方式それぞれについての、通信遅延時間Tdelayとメディア通信帯域Bdataとの関係を示す図である。
【図17】第2の方式において再送データがロスした場合の、データの送信に使用される使用帯域の時間変化を示す図である。
【図18】第2の方式において再送データがロスした場合の、データの送信に使用される使用帯域の時間変化を示す図である。
【図19】通信遅延時間Tdelayとロス時間の総和Tloss_sumとの関係を示す図である。
【図20】送信部211の伝送モードの状態遷移を説明する図である。
【図21】送信装置12の処理を説明するフローチャートである。
【図22】再送処理を説明するフローチャートである。
【図23】高速送信処理を説明するフローチャートである。
【図24】伝送モードが、通常モード、再送モード、高速送信モードである場合のそれぞれにおいて送信されるパケットを示す図である。
【図25】本発明を適用したコンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0270】
1 送信機, 2 受信機, 3 ネットワーク, 11 データ生成装置, 12 送信装置, 14 受信装置, 15 データ再生装置, 111 送信部, 112 再送バッファ, 113 再送制御部, 114 パラメータ設定部, 121 受信部, 122 受信バッファ, 123 再送要求部, 202 モード判定部, 203 送信バッファ, 211 送信部, 214 パラメータ設定部, 501 バス, 502 CPU, 503 ROM, 504 RAM, 505 ハードディスク, 506 出力部, 507 入力部, 508 通信部, 509 ドライブ, 510 入出力インタフェース, 511 リムーバブル記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送信する送信装置と、前記データを受信する受信装置とを備える通信システムにおいて、
前記送信装置は、
ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間である通信遅延時間として許容される許容通信遅延時間と、
ロスしたデータの送信に要した時間であるロス時間として許容される許容ロス時間と、
通信に使用可能な通信帯域のうちの、通常送信時に使用される帯域であるメディア通信帯域として許容される許容メディア通信帯域と
の3つのパラメータのうちの、1つのパラメータが与えられたときに、残りの2つのパラメータを、前記通信遅延時間、前記ロス時間、および前記メディア通信帯域の関係に基づいて設定するパラメータ設定手段と、
通常送信時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用してデータを送信し、再送時には、前記通信帯域の全体を使用してデータを送信する送信手段と
を有し、
前記受信装置は、前記送信装置から送信されてくるデータを受信する受信手段を有する
通信システム。
【請求項2】
データを送信する送信装置において、
ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間である通信遅延時間として許容される許容通信遅延時間と、
ロスしたデータの送信に要した時間であるロス時間として許容される許容ロス時間と、
通信に使用可能な通信帯域のうちの、通常送信時に使用される帯域であるメディア通信帯域として許容される許容メディア通信帯域と
の3つのパラメータのうちの、1つのパラメータが与えられたときに、残りの2つのパラメータを、前記通信遅延時間、前記ロス時間、および前記メディア通信帯域の関係に基づいて設定するパラメータ設定手段と、
通常送信時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用してデータを送信し、再送時には、前記通信帯域の全体を使用してデータを送信する送信手段と
を備える送信装置。
【請求項3】
前記設定手段は、再送時にデータがロスした場合も考慮して、前記3つのパラメータのうちの、前記1つのパラメータが与えられたときに、前記残りの2つのパラメータを設定する
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記送信手段は、再送時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用して、通常送信用のデータを送信するとともに、前記通信帯域の残りの帯域を使用して、再送用のデータを送信する
請求項2に記載の送信装置。
【請求項5】
前記送信手段は、
通常送信時には、固定長のパケットのペイロードのうちの、前記許容メディア通信帯域に対応する部分に、通常送信用のデータを配置して、前記パケットを送信し、
再送時には、固定長のパケットのペイロードのうちの、前記許容メディア通信帯域に対応する部分に、通常送信用のデータを配置するとともに、前記通信帯域の残りの帯域に対応する部分に、再送用のデータを配置して、前記パケットを送信する
請求項4に記載の送信装置。
【請求項6】
前記送信手段は、
再送時には、前記通信帯域の全体を使用して、再送用のデータを送信する
請求項2に記載の送信装置。
【請求項7】
前記送信手段は、
通常送信時には、固定長のパケットのペイロードのうちの、前記許容メディア通信帯域に対応する部分に、通常送信用のデータを配置して、前記パケットを送信し、
再送時には、固定長のパケットのペイロードの全体に、再送用のデータを配置して、前記パケットを送信する
請求項6に記載の送信装置。
【請求項8】
少なくとも、前記送信手段が再送用のデータを送信している間、通常送信用のデータを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記送信手段は、再送の終了後、前記通信帯域の全体を使用して、前記記憶手段に記憶された通常送信用のデータを送信する
請求項6に記載の送信装置。
【請求項9】
前記送信手段は、
通常送信時には、固定長のパケットのペイロードのうちの、前記許容メディア通信帯域に対応する部分に、通常送信用のデータを配置して、前記パケットを送信し、
再送時には、固定長のパケットのペイロードの全体に、再送用のデータを配置して、前記パケットを送信し、
再送の終了後、固定長のパケットのペイロードの全体に、前記記憶手段に記憶された通常送信用のデータを配置して、前記パケットを送信する
請求項8に記載の送信装置。
【請求項10】
データを送信する送信装置の送信方法において、
ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間である通信遅延時間として許容される許容通信遅延時間と、
ロスしたデータの送信に要した時間であるロス時間として許容される許容ロス時間と、
通信に使用可能な通信帯域のうちの、通常送信時に使用される帯域であるメディア通信帯域として許容される許容メディア通信帯域と
の3つのパラメータのうちの、1つのパラメータが与えられたときに、残りの2つのパラメータを、前記通信遅延時間、前記ロス時間、および前記メディア通信帯域の関係に基づいて設定し、
通常送信時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用してデータを送信させ、再送時には、前記通信帯域の全体を使用してデータを送信させる
ステップを含む送信方法。
【請求項11】
データを送信する送信装置を制御するコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
ロスしたデータの再送により生じる、通信の遅延時間である通信遅延時間として許容される許容通信遅延時間と、
ロスしたデータの送信に要した時間であるロス時間として許容される許容ロス時間と、
通信に使用可能な通信帯域のうちの、通常送信時に使用される帯域であるメディア通信帯域として許容される許容メディア通信帯域と
の3つのパラメータのうちの、1つのパラメータが与えられたときに、残りの2つのパラメータを、前記通信遅延時間、前記ロス時間、および前記メディア通信帯域の関係に基づいて設定し、
通常送信時には、前記許容メディア通信帯域のみを使用してデータを送信させ、再送時には、前記通信帯域の全体を使用してデータを送信させる
ステップを含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2007−19705(P2007−19705A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197289(P2005−197289)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】