説明

通信システムおよび通信方法

【課題】使用する通信コマンドの数を増加させることなく、マルチセンサ機器との間での通信を実現できる通信システムおよび通信方法を提供する。
【解決手段】アドレス認識手段21は、マルチセンサ機器1に設けられた個々のセンサユニットSU1,SU2,・・・SUnに対応付けられたアドレス番号を用いて通信相手を認識する。通信実行手段22は、アドレス認識手段21により認識された通信相手(センサユニット)との間で、すべてのセンサユニットに対し共通化された通信コマンドを用いて通信を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HART通信の通信コマンドを用いて、マルチセンサ機器との間で通信を行う通信システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントに設置されるセンサ等のフィールド機器として、HART通信協会が定めたHART通信機能をもたせたフィールド機器が用いられている。このようなフィールド機器では、古くからの業界標準であったアナログ4−20mA信号にデジタル信号を重畳することで、外部機器との間でデジタル通信を行うことができる。
【0003】
HART通信では、センサ等の検出信号以外に、例えば、メンテナンスに必要な様々な値(起電力、温度等)を出力可能なほか、通信を用いてフィールド機器の校正等を行うことができる。これらの通信に用いられる通信フォーマットは、HART通信の規格により定められている。
【特許文献1】特開2003−186503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィールド機器として、複数のセンサを1つの機器に収容したマルチセンサ機器が使用されている。このようなマルチセンサ機器にHART通信機能を与えることもできる。
【0005】
しかし、1つの機器に設けられるセンサ数が複数ある場合には、機器で使用されるパラメータ数が増加する。例えば、8つのセンサが設けられている場合、通常の約8倍の数のパラメータを使用することになり、使用する通信コマンド(HARTコマンド)の数もその分増加してしまう。このため、通信コマンドを各パラメータに割り当てるためのコマンド設計に負担がかかる。
【0006】
本発明の目的は、使用する通信コマンドの数を増加させることなく、マルチセンサ機器との間での通信を実現できる通信システムおよび通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の通信システムは、HART通信の通信コマンドを用いて、マルチセンサ機器との間で通信を行う通信システムにおいて、前記マルチセンサ機器に設けられた個々のセンサに対応付けられたアドレスを、通信相手として認識するアドレス認識手段と、前記アドレス認識手段により認識された通信相手との間で、すべての前記センサに対し共通化された前記通信コマンドを用いて通信を実行する通信実行手段と、を備えることを特徴とする。
この通信システムによれば、アドレスによって定められた通信相手との間で、すべてのセンサに対し共通化された通信コマンドを用いて通信を実行するので、使用する通信コマンドの数を抑制できる。
【0008】
前記アドレス認識手段は、HART通信の信号線とは独立して設けられ、前記マルチセンサ機器から前記アドレスを取得するための信号線を含んで構成されてもよい。
【0009】
前記アドレス認識手段は、前記アドレスをHART通信の通信コマンドとして取得してもよい。
【0010】
本発明の通信方法は、HART通信の通信コマンドを用いて、マルチセンサ機器との間で通信を行う通信方法において、前記マルチセンサ機器に設けられた個々のセンサに対応付けられたアドレスを、通信相手として認識するステップと、前記アドレスを認識するステップにより認識された通信相手との間で、すべての前記センサに対し共通化された前記通信コマンドを用いて通信を実行するステップと、を備えることを特徴とする。
この通信方法によれば、アドレスによって定められた通信相手との間で、すべてのセンサに対し共通化された通信コマンドを用いて通信を実行するので、使用する通信コマンドの数を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の通信システムによれば、アドレスによって定められた通信相手との間で、すべてのセンサに対し共通化された通信コマンドを用いて通信を実行するので、使用する通信コマンドの数を抑制できる。
【0012】
本発明の通信方法によれば、アドレスによって定められた通信相手との間で、すべてのセンサに対し共通化された通信コマンドを用いて通信を実行するので、使用する通信コマンドの数を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1および図2を参照して、本発明による通信システムの一実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の通信システムの構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の通信システムは、n個のセンサユニットSU1,SU2,・・・SUnを備える酸素濃度計であるマルチセンサ機器1と、マルチセンサ機器1との通信相手となる機器2と、マルチセンサ機器1および機器2を接続する信号線3と、を含んで構成される。
【0016】
図1に示すように、マルチセンサ機器1は、8つのセンサユニットSU1,SU2,・・・SU8のほか、変換器12およびモデム13を備える。マルチセンサ機器1のセンサユニットSU1,SU2,・・・SU8は、それぞれ酸素濃度に応じた起電力を発生するジルコニア式センサユニットであり、変換器12は、センサユニットSU1,SU2,・・・SU8の起電力信号に基づいて酸素濃度を計算する。また、変換器12は計算結果である酸素濃度値を4−20mA信号として信号線3へ出力する。
【0017】
また、変換器12はHART通信機能を備えており、シリアルのデジタル通信回線14を介して、HARTコマンドを用いた通信コマンドの送受信を行う。モデム13はHARTコマンドのデジタル信号と、アナログ変調信号との間の変換を実行する。アナログ変調信号は、上記4−20mA信号に重畳され、信号線3を介して送受信される。
【0018】
さらに、図1に示すように、変換器12にはセンサユニットを指定するアドレス番号を入力するための入力部21aが設けられている。入力部12aには、アドレス信号線5を介して、0/1信号の組み合わせ(2進数数字)により1〜8までのアドレス番号を示すパラレルデータが与えられる。
【0019】
図1に示すように、機器2は、マルチセンサ機器1に設けられた個々のセンサユニットSU1,SU2,・・・SUnに対応付けられたアドレス番号を用いて通信相手を認識するアドレス認識手段21と、アドレス認識手段21により認識された通信相手(センサユニット)との間で、すべてのセンサユニットに対し共通化された通信コマンドを用いて通信を実行する通信実行手段22と、を構成する。また、機器2は、モデム13と同様の機能を有するモデム23を備える。
【0020】
アドレス認識手段21には、アドレス信号線5を介して、0/1信号の組み合わせ(2進数数字)により1〜8までのアドレス番号を示す上記パラレルデータが与えられる。アドレス認識手段21は、上記パラレルデータで示されるアドレス番号を介して、通信相手となるセンサユニットを認識する。
【0021】
次に、マルチセンサ機器1と機器2との間で通信を行う場合の通信方法について説明する。
【0022】
アドレス認識手段21および変換器12には、通信対象となるセンサユニットのアドレス番号がアドレス信号線5を介して与えられる。アドレス番号は個々のセンサユニットに対応しており、センサユニットSUkのアドレス番号は「k」である(kは1〜8の正数)。すなわち、センサユニットSU1のアドレス番号は「1」、センサユニットSU2のアドレス番号は「2」、・・・、センサユニットSU8のアドレス番号は「8」である。
【0023】
変換器12は与えられたアドレス番号に従って、通信対象となるセンサユニットを選択する。また、変換器12は選択されたセンサユニットの4−20mA信号を信号線3に与えるとともに、機器2との間で、選択されたセンサユニットについて、通信コマンド(HARTコマンド)の送受信を実行する。
【0024】
一方、機器2の通信実行手段22は、アドレス認識手段21により認識された通信対象のセンサユニットからの信号として、4−20mA信号を受け取る。また、アドレス認識手段21により認識された通信対象のセンサユニットについて、マルチセンサ機器1との間で通信コマンド(HARTコマンド)の送受信を実行する。
【0025】
図2(a)は本実施形態の通信システムにおける通信方法を示す図である。図2(a)に示すように、本実施形態の通信システムでは、センサユニットを特定するためのアドレス番号のパラレルデータによるやり取りと、通信コマンドの送受信とを分離し、アドレス番号と通信コマンドを組み合わせた通信形態を採っている。また、通信対象がどのセンサユニットであるかに関わらず、同一の意味の通信コマンドには同一のHARTコマンドを対応付けている。このため、通信コマンドとして、通信対象となるセンサユニットごとに異なるHARTコマンドを用意する必要がなく、1つのセンサユニットを備える機器と同数のHARTコマンドの使用で、すべてのセンサユニットについて通信が可能となる。
【0026】
図2(b)はセンサユニットを特定するためのアドレス番号を、HARTコマンドを用いて表現する場合の通信方法を示している。この例では、HARTコマンドによる通信コマンドの送受信とは別に(別のタイミングで)、信号線3を介してHARTコマンドによるアドレス番号のやり取りを実行する。この例では、パラレルデータのやり取りに必要な通信経路(アドレス信号線5)を別途設ける必要がない。また、図2(b)の場合にも、通信対象がどのセンサユニットであるかに関わらず、同一の意味の通信コマンドに同一のHARTコマンドを対応付けることで、通信コマンドに必要なHARTコマンドの総数を、図2(a)の場合と同数に抑制できる。
【0027】
以上のように、上記実施形態の通信システムによれば、アドレス番号によって定められた通信相手との間で、すべてのセンサに対し共通化された通信コマンドを用いて通信を実行するので、使用する通信コマンドの数を抑制できる。なお、パラメータについてもセンサ間で同一パラメータを使用できるため、パラメータの数も同様に抑制できる。
【0028】
また、通信コマンドをすべてのセンサに共通化することにより、通信コマンドを取り扱うエンジニアリングの負担を軽減できる。例えば、センサごとに異なる通信コマンドを設定する作業が不要となる。また、通信コマンドないしパラメータを表示するに際し、通信コマンドないしパラメータと、画面表示上の要素とを対応付けるための余分な作業を要することなく、容易に各センサについての画面表示を作成することが可能となる。
【0029】
例えば、上位システム等において画面表示を行いたい場合、画面表示の作成に際して、通信コマンドないしパラメータと、表示上の要素との対応付けをすべてのセンサについて共通化できるため、表示対象となるセンサを切り替えるだけでセンサごとの同一表示画面を得ることが可能となる。
【0030】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、HART通信の通信コマンドを用いて、マルチセンサ機器との間で通信を行う通信システムおよび通信方法に対し、広く適用することができる。
【0031】
また、本発明の技術は、HART通信と同様な手順を有する通信、例えば、マスタ・スレーブ通信で、同一回路に複数のスレーブがつながり、マスタがアドレスでスレーブを指定するような場合にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態の通信システムの構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態の通信システムにおける通信方法を示す図であり、(a)はアドレス番号をパラレルデータによりやり取りする例を、(b)はアドレス番号を、HARTコマンドを用いて表現する場合の例を、それぞれ示す図。
【符号の説明】
【0033】
1 マルチセンサ機器
2 機器
5 アドレス信号線(アドレス認識手段)
21 アドレス認識手段
22 通信実行手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HART通信の通信コマンドを用いて、マルチセンサ機器との間で通信を行う通信システムにおいて、
前記マルチセンサ機器に設けられた個々のセンサに対応付けられたアドレスを、通信相手として認識するアドレス認識手段と、
前記アドレス認識手段により認識された通信相手との間で、すべての前記センサに対し共通化された前記通信コマンドを用いて通信を実行する通信実行手段と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記アドレス認識手段は、HART通信の信号線とは独立して設けられ、前記マルチセンサ機器から前記アドレスを取得するための信号線を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記アドレス認識手段は、前記アドレスをHART通信の通信コマンドとして取得することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
HART通信の通信コマンドを用いて、マルチセンサ機器との間で通信を行う通信方法において、
前記マルチセンサ機器に設けられた個々のセンサに対応付けられたアドレスを、通信相手として認識するステップと、
前記アドレスを認識するステップにより認識された通信相手との間で、すべての前記センサに対し共通化された前記通信コマンドを用いて通信を実行するステップと、
を備えることを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−27281(P2008−27281A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200501(P2006−200501)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】