説明

通信指令システムの制御方法、およびそれを用いた通信指令システム

【課題】通信指令システムにおいて、オペレータが無線交信をする場合に、自動的に無線モニタ手段による拡声音量を調節し、オペレータの操作性を向上させる。
【解決手段】複数の無線通信装置を選択制御すると共に、同無線通信装置で送受信される音声をスピーカからモニタ音声として拡声させる無線モニタ手段88fを備えた複数の指令台と、同指令台と通信可能に接続され、無線通信装置を指令台の指示により制御すると共に、無線通信装置の音声を無線モニタ手段88fへ出力する指令制御装置とを備えてなる通信指令システムであって、複数の指令台のうち一の指令台が無線通信装置を選択した時、一の指令台からの指示により無線通信装置が選択されている間、無線モニタ手段88fから出力されるモニタ音声の音量を一時的に低下させる無線モニタ制御手段8eを指令台に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防署や警察署などで使用される通信指令システムに係わり、より詳細には、本部に設置された指令台や無線モニタ装置などに備えられた無線通信モニタ機能の音量制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消防署に設置される通信指令システムは、例えば図5に示すシステムブロック図に示す構成になっている。このシステムにおいて、本部装置80は、指令台81と指令台81’、自動出動指定装置82、地図等検索装置83、指令伝送送信装置84、指令制御装置85、ネットワークプリンタ87で構成されるとともに、相互に、例えばLAN(local area network:構内情報通信網)で、回線接続している。なお、各指令台は同じ機能を有しており、その内部にはスピーカ81aとヘッドセット81bが接続された指令装置88がそれぞれ備えられている。また、アンテナ86aを備えた2台の無線通信装置86が、指令制御装置85に接続されている。
【0003】
そして、指令伝送送信装置84は、回線網89を介して2台の署所装置90に接続されている。
【0004】
事故や事件などの緊急通報は、指令制御装置85のFPT(Fire Police Trunk) 回線から入力され、この入力された音声を指令制御装置85の内部でデジタルデータに変換し、この変換された音声データをLANを介して指令台、例えば指令台81へ送信する。これを受信した指令台81は、オペレータが装着したヘッドセット81bへ音声として出力する。オペレータは緊急通報の通報者と通話して通報の内容を確認し、この通報内容に対応して、各署所装置90に指令を発行する。
【0005】
自動出動指定装置82は、緊急通報の内容をオペレータが、図示しないキーボードやマウス、タッチパネルなどの入力装置を用いて、逐次入力するとともに入力された通報の内容に基づき自動的に緊急出動車両、例えば、救急車や消防車などを指定し、また、指令書をネットワークプリンタ87で印刷出力する。
【0006】
地図等検索装置83は、入力された通報の内容に基づき緊急発生地点を含む地図、特殊危険物の処理方法等を検索し出力する。指令伝送送信装置84は、指令書及び地図を送信データとして生成し、回線網89を介して各署所装置90へ送信するとともに音声合成による予告指令、本指令などの音声データを送信する。
【0007】
署所装置90は、本部装置80と回線接続し、指令伝送送信装置84が送信した送信データを受信し、指令書及び地図を復元し、画面表示用データを生成するとともに、音声データを復元し音声出力し、また、画面表示用データを画面表示し、指令書及び地図を印刷出力する(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
この指令書を受け取った署所では、指令書に基づいて車両や隊員が緊急出動する。一方、本部のオペレータは、出動した車両に対して無線通信装置86を介して逐次交信し、状況確認や新たな指令を指示する。この交信は無線通信装置86から指令制御装置85、そして、LANを介して指令台、例えば指令台81、ヘッドセット81bに至るルートで送受信が行なわれる。
【0009】
また、2台の無線通信装置86の交信音声は、指令制御装置85の内部でミックスされ、LANを介して指令台81と指令台81’の各指令台へ伝達され、それぞれのスピーカ81a,81a’から拡声されるようになっている。従って、指令台81の交信音声は指令台81’のスピーカ81a’からも聞くことが可能であり、複数の指令台を担当するオペレータ間で情報を共有するようになっている。
【0010】
図6は指令台81の構成を示すブロック図である。以下にその詳細な説明を行なうが、指令台81’に関しては全く同じ機能を備えているため説明を省略する。
【0011】
指令台81は指令装置88と、これに接続されたスピーカ81aとヘッドセット81bとキーボード81cと表示装置81dとで構成されている。
【0012】
指令装置88は、指令業務専用のプログラムが格納された制御装置(ボードコンピュータなど)で構成されてれおり、その内部は、LANに接続されたLAN通信手段88hと、LAN通信手段88hに接続される、通話手段88a、無線通信装置切替手段88dが接続された交信手段88b、ヘッドセット81bへ接続する信号を切り替える通話切替手段88c、スピーカ81aが接続された無線モニタ手段88f、キーボード81cと表示装置81dとが接続されたデータ入力・表示手段88gとで構成されている。
【0013】
LAN通信手段88hは、指令装置88の内部データとLANのデータとを相互に変換するインターフェースであり、無線モニタ手段88fは、LANを介して受信する無線通信装置86の音声データを音声信号に変換する機能を有しており、変換した音声信号をスピーカ81aへ出力して拡声させる。
【0014】
データ入力・表示手段88gは、キーボード81cから入力される各種指示や緊急通報で確認した内容などをLANを介して他の装置に送信したり、他の装置から受信した地図や指令書などを表示表示装置81dで表示する機能を有している。
【0015】
通話手段88aは、LANと指令制御装置85とを介して、一般電話回線やFPT回線と、ヘッドセット81bによる電話での通話を行なう機能を有しており、交信手段88bは、LANと指令制御装置85とを介して2台の無線通信装置86とヘッドセット81bを用いて選択的に交信を行なう機能を有している。また、交信手段88bには無線通信切替手段88dが接続されており、2台の無線通信装置86を選択して使用するようになっている。
【0016】
通話切替手段88cは、ヘッドセット81bと通話手段88aと交信手段88bとに接続されており、ヘッドセット81bへの入出力を電話か、無線か、択一的に選択できる構成になっている。この通話切替手段88cと前述した無線通信切替手段88dとは、オペレータの操作により、機械的なスイッチ、または、キーボード81cから切替指示入力に従って切り替えられる構成になっている。
【0017】
図7は指令制御装置の構成を示すブロック図である。指令制御装置85は、LANに接続されたLAN通信手段85eと、LAN通信手段85eに接続され、トランク制御用の専用プログラムで動作するパソコンからなるトランク制御部85fと、FPT回線に接続される119トランク85aと、一般電話回線に接続される局線トランク85bと、2台の無線通信装置86と接続される無線トランク85cと、内部にミックス回路85eを備え、2台の無線通信装置86の音声信号ラインと並列に接続される無線モニタトランク85dとで構成されている。
【0018】
トランク制御部85fは、LANを介して受信する指令台からの指示により、前述した4種類のトランクを制御したり、また、各トランクの状態、例えば着信などをLANを介して指令台へ送信する。119トランク85aは救急通報専用の電話回線に接続されており、119番通報等を受け付ける。局線トランク85bは一般電話回線の発着信を制御し、指令台の操作により、通報元へ内容確認の電話を発信する時などに使用される。
【0019】
無線トランク85cは、2台の無線通信装置86に対する送受信を制御し、また、送受信される音声信号をLANを介してデジタルデータとして指令台との間で送受信する。無線モニタトランク85dは、2台の無線通信装置86で送受信される音声信号、つまり、交信音声をミックス回路85eで混合し、この混合された交信音声をLANを介してデジタルデータとして指令台へ送信する。従って、指令台では異なる無線通信装置の音声であっても、同時にモニタすることができる。
【0020】
しかしながら、無線モニタトランク85dは、常時、無線通信装置の音声をモニタする構成となっており、例え、指令台のオペレータが無線通信時に発する音声であっても、モニタ用のスピーカから拡声されるため、オペレータが通信相手の音声を聞き取りにくい場合があり、最悪の場合はモニタ音声がヘッドセットのマイクに回り込み、ハウリングを起こしてしまう虞があった。
【0021】
また、このような問題に対処するため、指令台の無線モニタ手段には音量ボリュームの機能が備えられているが、通信の都度、音量ボリュームを操作することはオペレータにとって不便であり、また、音量を小さくしたまま忘れることがあり、重要な無線交信を聞き逃してしまう虞もあった。
【特許文献1】特開2006−31241号公報(第4−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は以上述べた問題点を解決し、オペレータが無線交信をする場合に、自動的に無線モニタ手段による拡声音量を調節し、オペレータの操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は上述の課題を解決するため、請求項1に係わる発明は、
複数の無線通信装置を選択制御すると共に、同無線通信装置で送受信される音声をスピーカからモニタ音声として拡声させる無線モニタ手段を備えた複数の指令台と、同指令台と通信可能に接続され、前記無線通信装置を前記指令台の指示により制御すると共に、前記無線通信装置の音声を前記無線モニタ手段へ出力する指令制御装置とを備えてなる通信指令システムの制御方法であって、
前記指令台に、前記無線モニタ手段の音声音量を制御する無線モニタ制御手段を設け、
前記複数の指令台のうち一の指令台が前記無線通信装置を選択した時、前記一の指令台の前記無線モニタ制御手段は、前記モニタ音声をミュート、または、音量を低減させる開始ステップと、前記一の指令台からの指示による前記無線通信装置の選択が終了した時に、前記モニタ音声を前記無線通信装置の選択以前の音量に戻す終了ステップとを実行する。
【0024】
また、請求項2に係わる発明は、
前記一の指令台の前記無線モニタ制御手段は、前記一の指令台が前記無線通信装置を選択した時、前記開始ステップと前記終了ステップとを実施する旨の実施指示を前記一の指令台以外の前記指令台に送信し、
前記一の指令台以外の前記指令台に備えられた前記無線モニタ制御手段は、前記一の指令台の前記無線モニタ制御手段から送信される前記実施指示を受信し、受信した前記実施指示に従って、前記開始ステップと前記終了ステップとを実行する。
【0025】
また、請求項3に係わる発明は、
前記一の指令台に備えられた前記無線モニタ制御手段は、前記開始ステップと前記終了ステップとの実施指示に関する送信先と送信の有無とを規定するパターン情報を格納した処理テーブルを備え、
前記一の指令台の前記無線モニタ制御手段は、前記一の指令台が前記無線通信装置を選択した時、前記パターン情報に従って、前記一の指令台以外の前記指令台に備えられた前記無線モニタ制御手段を制御する。
【0026】
一方、請求項4に係わる発明は、
複数の無線通信装置を選択制御すると共に、同無線通信装置で送受信される音声をスピーカからモニタ音声として拡声させる無線モニタ手段を備えた複数の指令台と、同指令台と通信可能に接続され、前記無線通信装置を前記指令台の指示により制御すると共に、前記無線通信装置の音声を前記無線モニタ手段へ出力する指令制御装置とを備えてなる通信指令システムであって、
前記複数の指令台のうち一の指令台が前記無線通信装置を選択した時、前記一の指令台からの指示により前記無線通信装置が選択されている間、前記無線モニタ手段から出力される前記モニタ音声の音量を一時的に低下させる無線モニタ制御手段を前記指令台に設ける。
【0027】
また、請求項5に係わる発明は、
前記通信指令システムに、前記無線モニタ手段と、前記無線モニタ制御手段を備え、前記一の指令台と通信可能に接続された無線モニタ装置とを設け、前記無線モニタ装置内の前記無線モニタ制御手段は、前記一の指令台の無線モニタ制御手段の指示を受信し、同指示に従って前記無線モニタ装置内の前記無線モニタ手段から出力される前記モニタ音声の音量を制御する。
【発明の効果】
【0028】
以上の手段を用いることにより、本発明による通信指令システムの制御方法によれば、
請求項1に係わる発明は、無線通信装置が選択された時に無線モニタの音量を制御できるので、交信するオペレータの声がスピーカから拡声されず、オペレータは交信音声を明瞭に聞き取ることができる。また、特に意識しなくても、交信が終了すれば元の音量に自動的に復帰するので、オペレータの負担を軽減できる。
【0029】
請求項2に係わる発明は、交信を行なう指令台の無線モニタ音量の調節だけでなく、他の指令台の音量まで同時に制御できるので、他の指令台からのモニタ音声の音量を低減させ、交信を明瞭に行なうことができる。
【0030】
請求項3に係わる発明は、開始ステップと終了ステップとを実施すべき送信先を記載した処理テーブルを備えているため、指令台が設置されている室内の環境に合わせて、モニタ音量を制御する対象機器を任意に設定できる。
【0031】
また、本発明による通信指令システムによれば、
請求項4に係わる発明は、無線通信装置が選択された時に無線モニタの音量を制御できるので、交信するオペレータの声がスピーカから拡声されず、オペレータは交信音声を明瞭に聞き取ることができる。また、特に意識しなくても、交信が終了すれば元の音量に自動的に復帰するので、オペレータの負担を軽減できる。
【0032】
請求項5に係わる発明は、通信指令システムに無線モニタ装置を設け、交信を行なう指令台の指示により、無線モニタ装置の拡声音量を制御するので、単独で設置されている無線モニタ装置も制御の対象にすることができ、指令台が設置されている室内の環境に合わせて、モニタ音量を制御可能な対象機器を任意に配置できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。なお、従来技術と同じ構成については同じ番号を付与し、詳細な説明を省略する。
【実施例1】
【0034】
図1は消防署に設置された本発明による指令シテムの構成を示すシステムブロックである。このシステムにおいて、本部装置10は指令台1と指令台1’、自動出動指定装置82、地図等検索装置83、指令伝送送信装置84、指令制御装置85、ネットワークプリンタ87で構成されるとともに、相互に、例えばLAN(local area network:構内情報通信網)で、回線接続している。
【0035】
なお、各指令台は同じ機能を有しており、その内部にはスピーカ81aとヘッドセット81bが接続された指令装置8がそれぞれ備えられている。また、アンテナ86aを備えた2台の無線通信装置86が、指令制御装置85に接続されている。
【0036】
そして、指令伝送送信装置84は、回線網89を介して2台の署所装置90に接続されている。従来のシステムと異なる部分は指令装置8の構成である。
【0037】
図2は本発明による指令台1の構成を示すブロック図であり、以下に詳細な説明を行なう。なお、指令台1’も同じ構成であるため、指令台1の説明のみ行い、指令台1’の説明を省略する。
【0038】
指令台1は指令装置8と、これに接続されたスピーカ81aとヘッドセット81bとキーボード81cと表示装置81dとで構成されている。
【0039】
指令装置8は、一般的なパソコンやボードコンピュータなどで構成されており、その内部は、LANに接続されたLAN通信手段88hと、LAN通信手段88hに接続される、通話手段88a、無線通信装置切替手段88dが接続された交信手段88b、ヘッドセット81bへ接続する信号を切り替える通話切替手段88c、スピーカ81aが接続された無線モニタ手段88f、キーボード81cと表示装置81dとが接続されたデータ入力・表示手段88gと、交信手段88bからの情報に基づき無線モニタ手段88fでの音声信号出力レベルを制御し、LAN通信手段88hに接続される無線モニタ制御手段8eとで構成されている。
【0040】
無線モニタ制御手段8eは、無線通信装置切替手段88dの切替状態を、交信手段88bを介して取得する。そして、無線モニタ制御手段8eは、無線通信装置A、または、Bのいずれかが選択された場合、この選択されている間、拡声する音声信号をミュート、または、音量を低下させる信号を無線モニタ手段88fに対して出力し、無線モニタ手段88fは、この信号に対応して出力する音量を低下させる。
【0041】
なお、無線通信装置切替手段88dは、3つの状態に切り替えられるようになっており、無線通信装置A、又はBの選択状態の他にOFFの状態がある。このOFFの状態はいずれの無線通信装置も選択されない状態であるが、いずれの無線通信装置でも受信は行なうようになっている。つまり、無線通信装置A、またはBの選択とは、選択された無線通信装置を用いて交信を行なうために該当する無線通信装置を確保(選択されている間、他の指令台からは送信できない)するモードであり、このモードを選択したのち、図示しない指令台のプレストーク・スイッチを押下することにより、選択された無線通信装置から電波が送信される。従って、無線通信装置を選択するとプレストーク・スイッチを押下していなくても、無線モニタ手段88fでの音声信号出力レベルが低下、又はミュートされる。
【0042】
一方、図示しないが、このような通信指令システムに、前述した無線モニタ手段と無線モニタ制御手段とを備え、指令台とLANで通信可能に接続された無線モニタ装置を設ける。そして、無線通信装置が選択された指令台(請求項で記載した一の指令台)の無線モニタ制御手段の指示を、この無線モニタ装置内の無線モニタ制御手段が受信し、同無線モニタ制御手段が無線モニタ装置内の無線モニタ手段での拡声音量を制御する構成にしてもよい。
【0043】
この場合、交信を行なう指令台(一の指令台)の指示により、無線モニタ装置の拡声音量を制御するので、単独で設置されている無線モニタ装置も制御の対象にすることができ、指令台が設置されている室内の環境に合わせて、音量を制御する対象機器を任意に制御することができる。
【0044】
無線モニタ制御手段8eから出力される信号により音量調整される対象としては、実際に無線交信を行なう指令台(一の指令台)と、無線交信のモニタを行なう他の指令台、また、図示しない指揮台や隊員の待機室に備えられた無線モニタ装置などがあり、さらに、無線通信装置A、または、Bの種別により、音量調節の有無が決定されており、これらの条件は予め無線モニタ制御手段8eの内部に設けられた処理テーブルに設定されている。
【0045】
ところで、このようなシステムが設置される消防本部指令室の規模は自治体で異なっており、指令台の数が2台程度のものから10台以上の規模のものまであり、これらがどのような配置で設置されているのかは様々である。従って、無線モニタの音量を調整する場合、どの対象機器(指令台など)を音量制御するのかはシステムの運用方法に依存しており、このような色々な運用方法に対応するように、前述した処理テーブルで決定される運用モードを予め設定しておく。
【0046】
図3はこの処理テーブル内容を説明する説明図であり、運用モードと、これに対応する音量自動調整が実施される対象場所(機器)を示している。『運用モード』はシステムが設置される消防署でシステム設置時に択一的に決定される。
【0047】
処理テーブル表の横方向の項目で、『運用モード』は前述した音量調節する機器の対象範囲を規定するものであり、『対応無線機』はそれぞれの無線機から出力される音声を示し、『自身の指令台』は実際に無線交信を行なおうとしている指令台(一の指令台)を示し、『他の指令台』は自身以外の指令台を示し、『指揮台』は緊急事案に対して総合的に指揮を行なう場所を示し、『待機室』は出動のために隊員が待機している場所をそれぞれ示している。
【0048】
運用モードは大きく分けて運用モードa〜cと、運用モードd〜fの2つのグループに分かれている。このグループの違いは無線通信機Bの音声の取り扱いにある。
【0049】
通常の消防署では、所轄管内でのみ使用される周波数と、県内で共通に使用される周波数とで交信が可能となるように無線通信機A(所轄管内で使用)と、無線通信機B(県内で共通使用)を備えている。そして常時、これらの機器を使用して2つの周波数を同時に受信しており、必要に応じていずれかの無線通信機で交信するようになっている。
【0050】
つまり、無線通信機A(所轄管内で使用)は所轄管内の移動車両と交信するものであるから、その交信内容は限定地域に関連する内容となる。一方、無線通信機B(県内で共通使用)は、所轄外から応援にきた車両や、関係機関に対する交信であり、その交信内容は比較的広範囲の内容になる。
【0051】
従って、無線通信機Aと無線通信機Bとのそれぞれの交信内容は、異なる種類の指示や情報を取り扱うため、運用モードd〜fでは無線通信機Aを選択している間でも、無線通信機Bの音声はミュートせずに従来通り必ず拡声するようになっている。
【0052】
この場合、図7の指令制御装置85の無線モニタトランク85dで、2つの無線通信装置の音声を混合しないでLANへ送出するようにし、無線モニタ手段88fで混合したり、個別で使用するようにしてもよいし、または、混合された2つの無線通信装置の音声をそのまま使用したり、分離した後に使用するようにしてもよい。
【0053】
運用モードa〜cは、ミュート、または、音量を低下させる対象範囲が異なるようになっている。例えば、運用モードaでは自身の指令台のみミュート、または、音量を低下させ、その他の場所では拡声するようになっている。また、運用モードcでは待機室のみ拡声するようになっている。なお、運用モードa〜cでは、無線通信機Bの音声を無線通信機Aの音声と同じ取り扱いにしている。
【0054】
なお、以上説明した各処理は無線モニタ手段88fでの音声取り扱いに関するものであり、例えば各指令台で音声をミュートしたとしても、ヘッドセットで聞こえる音声にいかなる制限を与えるものでない。従って、他の指令台で音声モニタがミュートされたとしても、ヘッドセットを介して2つの無線通信機の音声を聞くことが可能である。
【0055】
このように、無線通信装置を選択するのと同時に無線モニタの音量を制御できるので、交信するオペレータの声がスピーカから拡声されず、オペレータは交信音声を明瞭に聞き取ることができる。また、特に意識しなくても、交信が終了すれば元の音量に自動的に復帰するので、オペレータの負担を軽減できる。
【0056】
また、指令装置の無線モニタ制御手段8eは、無線通信装置切替手段88dで無線機が選択された時(一の指令台となった時)、他の指令台や指揮台の無線モニタ機器をミュートや音量低下するように処理テーブルで設定されていた場合、LAN通信手段88hを介して他の無線モニタ機器の無線モニタ制御手段8eに対して、その旨の指示を送信する。これを受信した他の無線モニタ機器の無線モニタ制御手段8eはこの指示に従って該当機器の無線モニタ手段88fを制御する。
【0057】
図4は無線モニタ制御手段の動作を説明するフローチャートである。なお、STはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を、また、YはYesを、NはNoをそれぞれ表している。また、ここでの説明の前提として、2つの無線通信装置は選択されておらず、また、無線モニタ手段ではこれらの無線通信装置の音声を設定された音量で、各指令台や無線モニタ装置のスピーカから拡声させている。この状態が通常であり、『音声ミュートや音量低減の解除』とは、この通常状態へ復帰することを意味する。
【0058】
無線モニタ制御手段は、まず、LANを介して他の指令台からのミュート、または、音量の低下指示を受信したか確認する(ST1)。他の指令台からの指示がなければ(ST1−N)、次に、無線通信装置切替手段の状態(無線機の選択状態)を交信手段を介して確認する(ST2)。そして、無線機が選択されていないOFF状態なら(ST2−N)、自身の指令台も含め、音声モニタしている全ての機器へ音声ミュートや音量低減の解除指示を送信する(ST3)。そして、ST1へジャンプする。
【0059】
一方、ST1で他の指令台からのミュート、または、音量の低下指示を受信した場合は、受信した指示の内容に従って自指令台の無線モニタ手段へ、ミュート処理、又は、音量低下の指示、もしくは、これらの解除指示を出力する(ST8)。そして、ST1へジャンプする。
【0060】
また、ST2で無線機が選択さた状態、つまり、制御元の指令台(一の指令台)となったなら(ST2−Y)、処理テーブルから設定されたモード、例えば、図3の運用モードaに対応した処理内容を読み出す(ST4)。これは前述したように、無線通信装置A,Bに関係なく、自身の指令台(一の指令台)のみミュート処理、又は、音量低下の処理を行い、その他の機器はモニタ音声を拡声したままの状態にする処理内容である。システムとして運用モードa以外が設定されていたら、そのモードに対応した処理内容を処理テーブルから読み出す。
【0061】
次に、無線機を選択、つまり現在交信を行なおうとしている自指令台(一の指令台)の無線モニタ手段へ、ミュート処理、又は、音量低下指示を出力する(ST5)。そして、自指令台以外でミュート処理、又は、音量低下指示があるか、処理テーブルから読み出した情報で確認する(ST6)。自指令台以外で指示がある場合(ST6−Y)、LANを介して他の無線モニタ装置(指令台など)へ、ミュート、または、音量の低下の指示を送信する。そして、ST1へジャンプする。
【0062】
一方、ST6で自指令台(一の指令台)以外でミュート処理、又は、音量低下指示がない場合(ST6−N)、ST1へジャンプする。
【0063】
このように制御することにより、無線通信装置の選択と同時に無線モニタの音量を制御できるので、交信するオペレータの声がスピーカから拡声されず、オペレータは交信音声を明瞭に聞き取ることができる。また、特に意識しなくても、交信が終了すれば元の音量に自動的に復帰するので、オペレータの負担を軽減できる。
【0064】
また、交信を行なう指令台(一の指令台)の無線モニタ音量の調節だけでなく、必要であれば他の指令台や無線モニタ装置の音量まで同時に制御できるので、指令台が設置されている室内の環境に合わせて、音量を制御する対象機器を任意に設定できる。
【0065】
なお、以上説明した実施例は消防通信指令システムの例として説明しているが、これに限るものでなく、警察の通信指令システムや、タクシー無線での配車指令システムなど、幅広く応用することができる。また、システムの一例として、図1の構成で説明しているが、各装置や機器は統合してもよいし、または、更に分散化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による通信指令システムの実施例を示すシステムブロック図である。
【図2】本発明による指令台の実施例を示すブロック図である。
【図3】運用モードと音量自動調整対象を規定した処理テーブル内容を説明する説明図である。
【図4】本発明による無線モニタ制御手段の動作を説明するフローチャートである。
【図5】従来の通信指令システムの実施例を示すシステムブロック図である。
【図6】従来の指令台の実施例を示すブロック図である。
【図7】従来の指令制御装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1 指令台
8 指令装置
8e 無線モニタ制御手段
10 本部装置
81a スピーカ
81b ヘッドセット
81c キーボード
81d 表示装置
82 自動出動指定装置
83 地図等検索装置
84 指令伝送送信装置
85 指令制御装置
85d 無線モニタトランク
86 無線通信装置
86a アンテナ
87 ネットワークプリンタ
88a 通話手段
88b 交信手段
88c 通話切替手段
88d 無線通信装置切替手段
88f 無線モニタ手段
88g 表示手段
88h LAN通信手段
89 回線網
90 署所装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信装置を選択制御すると共に、同無線通信装置で送受信される音声をスピーカからモニタ音声として拡声させる無線モニタ手段を備えた複数の指令台と、同指令台と通信可能に接続され、前記無線通信装置を前記指令台の指示により制御すると共に、前記無線通信装置の音声を前記無線モニタ手段へ出力する指令制御装置とを備えてなる通信指令システムの制御方法であって、
前記指令台に、前記無線モニタ手段の音声音量を制御する無線モニタ制御手段を設け、
前記複数の指令台のうち一の指令台が前記無線通信装置を選択した時、前記一の指令台の前記無線モニタ制御手段は、前記モニタ音声をミュート、または、音量を低減させる開始ステップと、前記一の指令台からの指示による前記無線通信装置の選択が終了した時に、前記モニタ音声を前記無線通信装置の選択以前の音量に戻す終了ステップとを実行してなることを特徴とする通信指令システムの制御方法。
【請求項2】
前記一の指令台の前記無線モニタ制御手段は、前記一の指令台が前記無線通信装置を選択した時、前記開始ステップと前記終了ステップとを実施する旨の実施指示を前記一の指令台以外の前記指令台に送信し、
前記一の指令台以外の前記指令台に備えられた前記無線モニタ制御手段は、前記一の指令台の前記無線モニタ制御手段から送信される前記実施指示を受信し、受信した前記実施指示に従って、前記開始ステップと前記終了ステップとを実行してなることを特徴とする請求項1記載の通信指令システムの制御方法。
【請求項3】
前記一の指令台に備えられた前記無線モニタ制御手段は、前記開始ステップと前記終了ステップとの実施指示に関する送信先と送信の有無とを規定するパターン情報を格納した処理テーブルを備え、
前記一の指令台の前記無線モニタ制御手段は、前記一の指令台が前記無線通信装置を選択した時、前記パターン情報に従って、前記一の指令台以外の前記指令台に備えられた前記無線モニタ制御手段を制御してなることを特徴とする請求項2記載の通信指令システムの制御方法。
【請求項4】
複数の無線通信装置を選択制御すると共に、同無線通信装置で送受信される音声をスピーカからモニタ音声として拡声させる無線モニタ手段を備えた複数の指令台と、同指令台と通信可能に接続され、前記無線通信装置を前記指令台の指示により制御すると共に、前記無線通信装置の音声を前記無線モニタ手段へ出力する指令制御装置とを備えてなる通信指令システムであって、
前記複数の指令台のうち一の指令台が前記無線通信装置を選択した時、前記一の指令台からの指示により前記無線通信装置が選択されている間、前記無線モニタ手段から出力される前記モニタ音声の音量を一時的に低下させる無線モニタ制御手段を前記指令台に設けてなることを特徴とする通信指令システム。
【請求項5】
前記通信指令システムに、前記無線モニタ手段と、前記無線モニタ制御手段を備え、前記一の指令台と通信可能に接続された無線モニタ装置とを設け、前記無線モニタ装置内の前記無線モニタ制御手段は、前記一の指令台の無線モニタ制御手段の指示を受信し、同指示に従って前記無線モニタ装置内の前記無線モニタ手段から出力される前記モニタ音声の音量を制御してなることを特徴とする請求項4記載の通信指令システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−135828(P2008−135828A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318613(P2006−318613)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】