説明

通信指令装置および通信指令方法

【課題】
事件発生時、犯人の逃走方向を加味した逃走可能範囲を算出することにより、より現実的な逃走可能範囲の表示を行なうことができる通信指令装置を提供する。
【解決手段】
通信指令装置1は、事件の発生場所,発生時刻,犯人の逃走手段や天候を入力する事件情報入力部10と、犯人の逃走手段,天候の係数を設定する係数設定部201と逃走範囲を算出する逃走範囲算出部202を持つ逃走範囲処理部20と、算出結果を表示する逃走範囲表示部30と結果を指示指揮する指示指揮部40と交通管制機関2との通信を行なう交通情報取得部50と標準旅行速度等の道路情報を持つ地図道路情報データベース60とで構成され、更に犯人の逃走方向に関する係数を係数設定部201にて設定し、この係数を加味して犯人の逃走範囲を算出する逃走範囲算出部202が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は警察や警備等の指令業務において、警察業務車両や警備にあたる車両等の特定車両を管理拠点にて指示指揮する通信指令装置および通信指令方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犯人の逃走範囲を算出するために、特許文献1によれば、事件データ入力手段から発生位置,発生時刻,犯人逃走手段の条件を、また交通管制センタから規制や渋滞の動的な交通情報取得を、そして実際に配備についた車両位置を通行止め情報として入力し、逃走可能範囲算出手段にて範囲算出している。
【0003】
【特許文献1】特許第3364373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、事件データ入力手段に犯人の逃走方向に関する条件がないため、犯人がどちらの方向に逃走しているかが確実にわかっている場合においても発生位置からあらゆる方向に対して同条件で逃走可能範囲を算出するため、逃走可能範囲がより広く算出されてしまい、現実的な逃走可能範囲を算出できないおそれがある。
【0005】
そこで本発明では、逃走可能範囲の算出時に犯人の逃走方向を考慮してより現実的な逃走可能範囲を算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、係数設定部に犯人の逃走方向を係数として設定し、逃走可能範囲を算出する条件に加味したものである。逃走方向は東,西,南,北の4方向と北東,東南,南西,北西を加えた8方向に分割し、逃走可能範囲を算出する際にこれら8方向にそれぞれ係数を付加することにより、より現実的な逃走可能範囲の算出を行なう。
【0007】
本発明は、具体的には事件の発生場所,発生時刻,犯人の逃走手段や天候を入力する事件情報入力部と、犯人の逃走手段,天候の係数を設定する係数設定部と逃走範囲を算出する逃走範囲算出部を持つ逃走範囲算出部と、算出結果を表示する逃走範囲表示部と、外部の通信装置に対して指示指揮情報を発する指示指揮部と交通管制機関の通信装置とで交通情報の通信を行なう交通情報取得部と、道路環境情報を持つ地図道路情報データベースとで構成される通信指令装置において、前記逃走範囲算出部に犯人の逃走方向に依存した係数を設定する係数設定部と、この係数を事件情報,交通情報および道路環境情報に加味して犯人の逃走範囲を算出する逃走範囲算出部とを設けて構成した通信指令装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、これまでの逃走可能範囲算出条件である、発生時刻,発生場所,逃走手段からの事件情報,交通管制機関からの動的な交通情報,地図道路DBからの道路環境情報のほかに、逃走方向を加味することにより、発生場所からあらゆる方向に一様に逃走可能範囲が算出されるのではなく、逃走方向側に重きを置いた逃走可能範囲が算出され、より現実的な逃走可能範囲を提供することが可能となる。
【0009】
このことにより、指揮者は指揮手段によってより絞られた範囲内に効率的に車両を配置するを可能とする指揮情報を発することにより、的確な犯人確保指示を情報発することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例は、事件の発生場所,発生時刻,犯人の逃走手段や天候を入力する事件情報入力部と、犯人の逃走手段,天候の係数を設定する係数設定部と逃走範囲を算出する逃走範囲算出部を持つ逃走範囲処理部と、算出結果を表示する逃走範囲表示部と、外部の通信装置に対して指示指揮情報を発する指示指揮部と交通管制機関の通信装置とで交通情報の通信を行なう交通情報取得部と、道路環境情報を持つ地図道路情報データベースとで構成される通信指令装置あるいは当該通信指令装置による通信指令方法において、前記係数設定部を前記逃走範囲算出部に犯人の逃走方向に依存した係数を設定する係数設定部となし、前記逃走範囲算出部を前記係数を事件情報,交通情報および道路環境情報に加味して犯人の逃走範囲を算出する逃走範囲算出部となす構成とし、前記逃走範囲表示部は、前記係数を加味して算出された逃走範囲を事件の発生場所を中心とした地図上に表示する通信指令装置あるいは当該通信指令装置による通信指令方法を構成する。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施例の形態を示した構成図である。図1において事件が発生した場合、事件の発生場所,発生時刻,犯人の逃走手段や逃走方向,天候を管理者が入力する事件情報入力部10と、管理者が犯人の逃走可能範囲の算出を必要としたとき逃走方向の係数を設定する係数設定部201とこれらの情報を基に逃走範囲を算出する逃走範囲算出部202を持つ逃走範囲処理部20と、その結果を表示する逃走範囲表示部(表示装置)30と、それらの情報を無線などで連絡する指示指揮部40と、その指示指揮に従い活動する車両群の通信装置群3と、交通管制機関の通信装置2から渋滞情報や規制情報を受信する交通情報取得部50と、道路の旅行速度情報,交差点間距離情報等の地図道路情報を格納する地図道路情報DB60で通信指令装置1が構成されている。
【0013】
逃走可能範囲を算出する逃走範囲処理部20内の逃走範囲算出部202では、算出条件に交通管制機関の通信装置2からの渋滞情報や規制情報、また情報入力部10で入力された発生場所,逃走手段,現在時刻から発生時刻の差などの事件情報を考慮し、また、地図道路情報DB60に格納された旅行速度情報,交差点間距離情報等の道路環境情報を基に算出を行う。必要に応じて他の情報,時刻経過による時間情報を加えてもよい。また、逃走範囲可能範囲の算出を行う。その場合の逃走範囲表示部への表示方法について以下、説明する。本実施例ではその算出条件に係数設定部201で設定した逃走方向の係数を加味することを行う。図2は逃走方向の係数の加味方法を表わしている。逃走方向を北,東,南,西,北東,南東,南西,北西の8方向に分割し、それぞれの方向に係数kからkまで持たせる。逃走方向の分割数については、12分割,16分割といったそれ以上の分割方法も考えられるが、計算時間やデータ入力者の管理を考慮し、8分割とすることが望ましい。各係数は事件情報入力部10で入力された逃走方向によって自動的に設定されるが、逃走範囲処理部20において管理者がマンマシンにて修正でき、状況に応じて変更できる。図3は逃走方向が不明な場合や従来の算出方法における係数の設定例である。各係数kからkまでの値を同一値1.0としたものであり、その逃走範囲算出結果として図4のように発生場所から各方面に対して一様な逃走可能範囲となる。算出されたこの逃走可能範囲が事件の発生場所と共に逃走範囲表示部30に表示される。図示されるように、係数を大きくした方向に大きな逃走範囲が逃走範囲表示部30の地図上に事件の発生場所を中心として重ね合わせて表示されることになる。この表示情報を参照した指示指揮が指示指揮部40からなされる。図5は逃走方向が判明している場合の各係数値の設定例である。図5に示す設定例では、係数の範囲を0.2〜1.2としている。逃走方向であるkについては通常旅行速度より早く逃げる可能性があることと車両を重点的に向かわせることを考慮し1.2とし、次にその方向に近い方向の係数k,kを1.0に、逃走方向から逆方向に向かうに従い係数値を小さく設定している。この設定例での逃走可能範囲の算出結果として図6のように逃走方向により大きく逃走可能範囲を算出し、逃走方向と逆方向については逃走可能範囲が小さく算出されていることがわかる。より逃走方向を重視した逃走可能範囲を算出したい場合には、逃走方向の係数値を1.2から更に大きくすればよい。この方法により逃走方向を考慮したより現実的な逃走可能範囲の算出を行なうことが可能となる。
【0014】
以上のように、事件の発生場所,発生時刻,犯人の逃走手段や天候を入力する事件情報入力部10と、犯人の逃走手段,天候の係数を設定する係数設定部201と逃走範囲を算出する逃走範囲算出部202を持つ逃走範囲処理部20と、算出結果を表示する逃走範囲表示部30と、外部の通信装置に対して指示指揮情報を発する指示指揮部40と交通管制機関の通信装置とで交通情報の通信を行なう交通情報取得部50と、道路環境情報を持つ地図道路情報データベースとで構成される通信指令装置において、前記係数設定部201を逃走範囲算出部に犯人の逃走方向に依存した係数を設定する係数設定部となし、かつ前記逃走範囲算出部202を前記係数を事件情報,交通情報および道路環境情報に加味して犯人の逃走範囲を算出する逃走範囲算出部となす構成とした通信指令装置が構成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態における構成図である。
【図2】本発明の実施の形態における逃走方向の係数の持たせ方を表わした模式図である。
【図3】本発明の実施の形態における逃走方向を考慮しない場合の係数値の設定例である。
【図4】本発明の実施の形態における逃走方向を考慮しない場合の逃走範囲算出結果図である。
【図5】本発明の実施の形態における逃走方向を考慮した場合の係数値の設定例である。
【図6】本発明の実施の形態における逃走方向を考慮した場合の逃走範囲算出結果図である。
【符号の説明】
【0016】
1…通信指令装置、2…交通管制機関、3…車両群、10…事件情報入力部、20…逃走範囲処理部、30…逃走範囲表示部、40…指示指揮部、50…交通情報取得部、60…地図道路情報DB、201…係数設定部、202…逃走範囲算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
事件の発生場所,発生時刻,犯人の逃走手段や天候を入力する事件情報入力部と、犯人の逃走手段,天候の係数を設定する係数設定部と逃走範囲を算出する逃走範囲算出部を持つ逃走範囲処理部と、算出結果を表示する逃走範囲表示部と、外部の通信装置に対して指示指揮情報を発する指示指揮部と交通管制機関の通信装置とで交通情報の通信を行なう交通情報取得部と、道路環境情報を持つ地図道路情報データベースとで構成される通信指令装置において、前記係数設定部を逃走範囲算出部に犯人の逃走方向に依存した係数を設定する係数設定部となし、かつ前記逃走範囲算出部を前記係数を事件情報,交通情報および道路環境情報に加味して犯人の逃走範囲を算出する逃走範囲算出部となす構成としたことを特徴とする通信指令装置。
【請求項2】
請求項1において、前記逃走範囲表示部は、前記係数を加味して算出された逃走範囲を事件の発生場所を中心とした地図上に表示することを特徴とする通信指令装置。
【請求項3】
事件の発生場所,発生時刻,犯人の逃走手段や天候を入力する事件情報入力部と、犯人の逃走手段,天候の係数を設定する係数設定部と逃走範囲を算出する逃走範囲算出部を持つ逃走範囲処理部と、算出結果を表示する逃走範囲表示部と、外部の通信装置に対して指示指揮情報を発する指示指揮部と交通管制機関の通信装置とで交通情報の通信を行なう交通情報取得部と、道路環境情報を持つ地図道路情報データベースとで構成される通信指令装置による通信指令方法において、前記逃走範囲処理部によって、犯人の逃走方向に依存した係数を設定し、この係数を事件情報,交通情報および道路環境情報に加味して犯人の逃走範囲を算出し、逃走範囲表示部に前記逃走範囲を事件の発生場所を中心として地図上に表示することを特徴とする通信指令方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−119731(P2006−119731A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304444(P2004−304444)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【Fターム(参考)】