説明

通信端末位置判定装置

【課題】より精度よく通信端末の位置を判定することができる通信端末位置判定装置を提供する。
【解決手段】運転席アンテナからの電波を電子キーが受信した際の運転席側受信強度Hdと、助手席アンテナからの電波を電子キーが受信した際の助手席側受信強度Hpとを、それぞれX軸とY軸としたX−Y直交座標系において、キー位置を判定する際の基準となる判定ラインLを、複数の直線式から構築したユニークなラインとする。そして、運転席側受信強度Hdと助手席側受信強度Hpとから決まる座標点Pが、この判定ラインLに対してどの位置をとるかを見ることによって、電子キーの位置を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末(通信機)の位置を判定する通信端末位置判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両キーとしての電子キーから無線によりIDコードを車両に送信してID照合を実行する電子キーシステムが広く使用されている。この電子キーシステムには、車両からIDコード返信要求としてリクエストを送信し、このリクエストに応答して電子キーが返信してきたIDコードによりID照合を行うキー操作スマートシステムがある。キー操作フリーシステムには、車外でID照合が成立すると、ドアロック施解錠が許可又は実行されるスマートエントリーシステムと、車内でID照合が成立すると、車内のエンジンスイッチの単なる押し操作のみでエンジン始動が可能となるワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。
【0003】
この電子キーシステムの一種には、図10に示すように、車両80の運転席ドア81側(車体右側)にアンテナ83を配置し、助手席ドア82側(車体左側)にアンテナ84を設置し、これらアンテナ83,84からの送信電波に対して電子キー85が返してきた応答の論理判定によってキー位置を判定する技術(特許文献1,2等)が考案されている。この論理判定キー位置検出方式は、車体右側の運転席アンテナ83と、車体左側の助手席アンテナ84とから順にリクエストを送信して、運転席アンテナエリア86と助手席アンテナエリア87とを順に形成し、これらリクエストに対して電子キー85が返信するIDコード、即ち応答の論理判定によってキー位置を判定する。
【0004】
例えば、運転席アンテナ83のリクエストに対して電子キー85からの応答があり、助手席アンテナ84のリクエストに対して電子キー85から応答がないと、電子キー85が車外に位置すると判定する。また、運転席アンテナ83のリクエストに対して電子キー85からの応答がなく、助手席アンテナ84からのリクエストに対して電子キー85の応答があれば、電子キー85が車外に位置すると判定する。さらに、運転席アンテナ83のリクエストと助手席アンテナ84のリクエストとに対して両方とも応答があれば、電子キー85が車内に位置していると判定する。
【0005】
図10に示す論理判定キー位置検出方式は、車体右側と車体左側とに設けた一対のアンテナで車外と車内との両方の位置を見ることができる。よって、論理判定キー位置検出方式は、例えば車外アンテナとして各ドアにアンテナを設置しつつ、更に車内アンテナとして車内に複数のアンテナを設置して電子キーの位置を検出する場合に比べて、アンテナを車体の左右にのみ設置すればよい分だけ、アンテナ本数を少なく抑えることができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−84406号公報
【特許文献2】特開2005−76329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、アンテナ83,84のアンテナエリア86,87は、必ずしもエリアの境界が車内及び車外の境界と一致する訳ではない。よって、論理判定キー位置判定方式では、図11に示すように、場合によって運転席アンテナ83のアンテナエリア86が助手席ドア82の外側に漏れたり、或いは、助手席アンテナ84のアンテナエリア87が運転席ドア81の外側に漏れたりする場合がある。こうなると、例えば電子キー85が運転席アンテナエリア86の助手席側の漏れエリア88に位置していた際に、電子キー85が助手席ドア82側に位置しているにも拘らず、電子キー85が運転席ドア81側にあると判定され、キー位置が誤判定されてしまう問題があった。
【0008】
ここで、運転席アンテナエリア86が助手席ドア82の外側に漏れ出したり、助手席アンテナエリア87が運転席ドア81の外側から漏れ出したりしないようにするためには、各アンテナエリア86,87を狭く設定すればよい。しかし、アンテナエリア86,87を狭く設定すると、今度は逆に車内にヌルエリアが発生してしまうので、車内に位置する電子キー85を正確に検出できなくなる問題が発生する。
【0009】
ここで、ヌルエリアが発生し易い場所としては、例えば車内のシート座面がある。シート座面は、電子キーが載置され易い場所であるが、シートには鉄製(磁性体製)のシートフレームが組み込まれているため、通信の際にやり取りあれる送信電波がシートフレームに吸収される可能性が高い。よって、シートフレームに影響を受けて、結果、通信エリアが制限され、これがヌルエリアとして発生してしまう問題に繋がっていた。また、この問題は、車内のフロア面でも同様に発生する。
【0010】
なお、この問題は、電子キーシステムに限るものではなく、2者が無線により通信を行う種々のシステムでも同様に言えることである。
本発明の目的は、より精度よく通信端末の位置を判定することができる通信端末位置判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信マスタからのID返信要求に応答して電子キーが返信してきたIDコードによりID照合を行う電子キーシステムのキー位置判定装置において、前記通信マスタの一アンテナ及び他アンテナから交互に電波が送信された際、前記一アンテナからの電波を前記電子キーが受信した際の第1受信強度と、前記他アンテナからの電波を前記電子キーが受信した際の第2受信強度とを算出する受信強度算出手段と、前記第1受信強度と前記第2受信強度との組み合わせ値を平面座標上でエリア分けするラインとして設けられ、前記平面座標の一軸側から見た場合、少なくとも異なる2点を繋ぐ線により形成された判定ラインと、前記判定ラインに対する前記組み合わせ値の大小により、前記電子キーの位置を判定する位置判定手段とを備えたことを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、一アンテナ及び他アンテナから交互に電波を送信させ、一アンテナからの電波を電子キーが受信した際の第1受信強度と、他アンテナからの電波を電子キーが受信した際の第2受信強度とを算出し、これら受信強度を座標値とした組み合わせ値を取得する。そして、単なる一直線上のラインではない判定ライン、即ちユニークな判定ラインに対し、組み合わせ値がどの位置をとるかを確認することにより、電子キーの位置を判定する。このため、単なる一直線上の判定ラインを使用してキー位置を見ていた際に、誤判定していた箇所を、ユニークな判定ラインで以て、正しくキー位置を見ることが可能となる。よって、より精度よく電子キーの位置を判定することが可能となる。
【0013】
本発明では、前記通信端末は、電子キーであり、前記無線システムは、前記通信マスタが前記電子キーとID照合する電子キーシステムであり、前記位置判定手段は、前記電子キーの位置を判定することを要旨とする。
この構成によれば、電子キーの位置を精度よく判定することが可能となる。
【0014】
本発明では、前記判定ラインには、前記電子キーの位置を室内外で区分けする室内外判定ラインが設けられ、前記位置判定手段は、前記室内外判定ラインに対する前記組み合わせ値の位置の大小を見ることにより、前記電子キーが室内及び室外のどちらに位置するのかを判定することを要旨とする。
この構成によれば、キー位置判定を室内外判定に使用したので、電子キーが室外及び室内のどちらに位置するのかを、より正確に判定することが可能となる。
【0015】
本発明では、前記判定ラインには、前記電子キーの位置を室内外で区分けする室内外判定ラインと、前記電子キーの位置を室外において区分けする室外位置判定ラインとが設けられ、前記電子キーの位置判定は、前記室内外判定ラインを使用して前記電子キーが室内外のどちらに位置するのかを見る室内外判定と、前記電子キーが室外に位置する際に、前記室外位置判定ラインを用いて前記電子キーが室外のどの位置に存在するのかを見る室外位置判定との2判定が実行されることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、電子キーが室内外のどちらに位置するのかを判定することが可能で、しかも電子キーが室外に存在する場合、電子キーの室外位置も判定することが可能となる。よって、電子キーの位置をより細分して判定可能となるで、より精度よく電子キーの位置を判定することが可能となる。
【0017】
本発明では、前記判定ラインには、中継器を使用して前記通信マスタと前記電子キーとを不正に通信成立させる行為を防止するための第2判定ラインが設けられていることを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、通信マスタの通信エリアに位置しない電子キーを、第三者が中継器を使用して通信マスタに勝手に繋げて通信を不正に成立させようとしても、第2判定ラインによって、この通信が不成立として処理される。よって、通信マスタと電子キーとのID照合を不正に成立させずに済むので、通信マスタの不正使用を防止することが可能となる。
【0019】
本発明では、前記判定ラインは、前記平面座標の原点を通る座標二等分線を中心として左右対称に形成され、当該座標二等分線の付近が、中継器を使用して前記通信マスタと前記電子キーとを不正に通信成立させる行為を防止する領域として設定されていることを要旨とする。
【0020】
この構成によれば、通信マスタの通信エリアに位置しない電子キーを、第三者が中継器を使用して通信マスタに勝手に繋げて通信を不正に成立させようとしても、この通信が不成立として処理される。よって、通信マスタと電子キーとのID照合を不正に成立させずに済むので、通信マスタの不正使用を防止することが可能となる。
【0021】
本発明では、前記判定ラインは、少なくとも繋ぐ前後で傾きが異なる複数の直線により形成されていることを要旨とする。
この構成によれば、判定ラインが複数の直線を繋げたラインから形成されるので、判定ラインの式を、一次関数という簡素な式で構築することが可能となる。
【0022】
本発明では、前記通信端末は、車両の各タイヤに取り付けられたタイヤ通信機であり、前記無線システムは、前記タイヤ通信機からタイヤ空気圧を無線により取得するタイヤ空気圧監視システムであり、前記位置判定手段は、前記タイヤ通信機の位置を判定することにより、タイヤの位置を特定することを要旨とする。
【0023】
この構成によれば、通信成立したタイヤ通信機がどのタイヤに設置されたものなのかを、精度よく判定することが可能となる。
【0024】
本発明では、前記通信端末としての電子キーとID照合する前記無線システムとしての電子キーシステムと、前記通信端末としてのタイヤ通信機から無線によりタイヤ空気圧を取得する前記無線システムとしてのタイヤ空気圧監視システムとは、1つの前記通信マスタを共用することを要旨とする。
この構成によれば、共通の部品を電子キーシステムとタイヤ空気圧監視システムとの両方で使用することが可能となるので、部品点数を削減することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、より精度よく通信端末の位置を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態におけるキー位置判定装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】車内外判定ラインのパターンを示すX−Y直交座標図。
【図3】車外位置判定ラインのパターンを示すX−Y直交座標図。
【図4】車両のアンテナエリアのイメージを示す概念図。
【図5】中継器使用照合不正成立行為のイメージを示す概念図。
【図6】スマート通信の通信シーケンスを示すタイミングチャート。
【図7】従来の判定ラインのパターンを示すX−Y直交座標図。
【図8】第2実施形態におけるタイヤ空気圧監視システムの概略を示す構成図。
【図9】タイヤ位置判定に使用する判定ラインのパターンを示すX−Y直交座標図。
【図10】従来における電子キーシステムの概略構成を示す模式図。
【図11】車両にアンテナの漏れエリアが形成された状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した通信端末位置判定装置の第1実施形態を図1〜図7に従って説明する。
【0028】
図1に示すように、車両1には、無線によりキー照合を行う電子キーシステムの一種として、電子キー2が車両1に近づくと自動でID(Identification)照合を実行するキー操作フリーシステム3が設けられている。このキー操作フリーシステム3には、実際のキー操作を行うことなくドア開閉の一連の操作過程の中でドアロックの施解錠が実行されるスマートエントリーシステムと、車内に設置されたプッシュ式のエンジンスイッチ4を押し操作するのみでエンジンを始動することが可能なワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。なお、電子キー2が通信端末を構成し、キー操作フリーシステム3が無線システム及び電子キーシステムを構成する。
【0029】
この場合、車両1には、電子キー2との間でID照合を実行するキー照合装置5と、ドアロック動作を管理するドアロック装置6と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置7とが設けられ、これらが車内バス8によって接続されている。キー照合装置5には、同装置5のコントロールユニットとして照合ECU(Electronic Control Unit)9が設
けられている。照合ECU9のメモリ(図示略)には、車両1と組みをなす電子キー2のIDコードが登録されている。なお、照合ECU9が通信マスタを構成する。
【0030】
照合ECU9には、運転席ドア10(図4参照)の周囲にLF(Low Frequency)帯の電波を発信する運転席側車外発信機(以降、運転席アンテナ11と記す)と、助手席ドア12(図4参照)の周囲にLF帯の電波を発信する助手席側車外発信機(以降、助手席アンテナ13と記す)と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信する車両チューナ14とが接続されている。これらアンテナ11,13は、例えば車体左右のピラーにそれぞれ設けられ、電子キー2に対するID返信要求としてリクエスト信号Srqを送信可能となっている。なお、運転席アンテナ11が一アンテナに相当し、助手席アンテナ13が他アンテナに相当する。
【0031】
図4に示すように、運転席アンテナ11は、運転席側車外及び車内に通信エリア(運転席アンテナエリアKd)を形成する送信強度で電波送信する。助手席アンテナ13は、助手席側車外及び車内に通信エリア(助手席アンテナエリアKp)を形成する送信強度で電波送信する。本例の場合、電子キー2の基本的な位置判定として、運転席アンテナ11からの電波を電子キー2が強く受信する際、電子キー2の位置が運転席側車外と判定され、助手席アンテナ13からの電波を電子キー2が強く受信する際、電子キー2の位置が運転席側車外と判定される。また、運転席アンテナ11からの電波と、助手席アンテナ13からの電波とを、同程度の強さで受信する際、電子キー2の位置が車内と判定される。
【0032】
図1に示すように、電子キー2には、電子キー2の動作を統括制御する通信制御部15が設けられている。通信制御部15のメモリ(図示略)には、キー固有のIDとしてIDコードが登録されている。通信制御部15には、LF帯の電波を受信可能なLF受信機16と、UHF帯の電波を送信可能なUHF送信機17とが接続されている。LF受信機16は、X軸アンテナとY軸アンテナとZ軸アンテナとを備えた3軸受信アンテナであって、各アンテナがコイルアンテナにより形成されている。電子キー2は、LF受信機16でリクエスト信号Srqを受信すると、IDコードを含むID信号SidをUHF送信機17によりUHF帯の電波で送信する。
【0033】
照合ECU9は、リクエスト信号Srqに対する応答として電子キー2からID信号Sidを受信すると、ID照合としてスマート照合を実行する。照合ECU9は、車外の電子キー2とスマート照合、即ち車外照合が成立することを確認すると、ドアロック装置6によるドアロック施解錠を実行又は許可する。また、照合ECU9は、車内の電子キー2とスマート照合、即ち車内照合が成立することを確認すると、エンジンスイッチ4のプッシュ操作によるエンジン始動及び電源遷移を許可する。
【0034】
本例のキー操作フリーシステム3には、スマート照合の際に、図2及び図3に示すような判定ラインLを使用して電子キー2の位置を判定するキー位置判定装置18が設けられている。本例のキー位置判定装置18は、運転席アンテナ11からの電波を電子キー2が受信した際の磁界強度Hx(運転席側磁界強度Hdと記す)と、助手席アンテナ13からの電波を電子キー2が受信した際の磁界強度Hx(助手席側磁界強度Hpと記す)とを算出し、これら磁界強度Hd,Hpが2次元上の判定ラインLに対してどの位置をとるのかを見ることにより、電子キー2の位置を判定する。なお、運転席側磁界強度Hdが第1受信強度に相当し、助手席側磁界強度Hpが第2受信強度に相当する。
【0035】
この場合、照合ECU9には、運転席アンテナ11及び助手席アンテナ13を交互に電波送信させる交互送信動作部19が設けられている。交互送信動作部19は、例えば最初に運転席アンテナ11からリクエスト信号Srqを送信して、運転席アンテナ11の周りに運転席アンテナエリアKdを形成し、続いて助手席アンテナ13からリクエスト信号Srqを送信して、助手席アンテナ13の周りに助手席アンテナエリアKpを形成する。そして、交互送信動作部19は、この交互送信を繰り返し実行する。
【0036】
通信制御部15には、電子キー2で受信した電波の受信強度(RSS I:Received Signal Strength Indicator)を、磁界強度Hxとして算出する磁界強度算出部20が設けられている。磁界強度算出部20は、運転席アンテナ11からのリクエスト信号Srqを電子キー2で受信した際、このときの磁界強度Hxを運転席側磁界強度Hdとして算出し、助手席アンテナ13からのリクエスト信号Srqを電子キー2で受信した際、このときの磁界強度Hxを助手席側磁界強度Hpとして算出する。また、磁界強度算出部20は、LF受信機16(3軸アンテナ)の3軸の受信強度のベクトル合成値を使用して、これら磁界強度Hd,Hpを算出する。なお、磁界強度算出部20が受信強度算出手段を構成する。
【0037】
通信制御部15には、電子キー2で受信した磁界強度Hd,Hpをスマート通信の過程で車両1に通知する磁界強度通知部21が設けられている。磁界強度通知部21は、電子キー2がリクエスト信号Srqに応答してID信号Sidを車両1に送信する際、このID信号Sidに磁界強度Hxのデータを含ませて送信する。即ち、ID信号Sidには、電子キー2のIDコードと、磁界強度Hxのデータ(デジタル値)とが含まれている。磁界強度通知部21は、運転席アンテナ11からのリクエスト信号Srqに応答してID信号Sidを返信する際、このID信号Sidに運転席側磁界強度Hdを乗せて車両1に通知し、助手席アンテナ13からのリクエスト信号Srqに応答してID信号Sidを返信する際、このID信号Sidに助手席側磁界強度Hpを乗せて車両1に通知する。なお、磁界強度通知部21が受信強度算出手段を構成する。
【0038】
照合ECU9には、スマート通信の際に電子キー2から磁界強度Hxを取得する磁界強
度取得部22が設けられている。磁界強度取得部22は、スマート通信の際、ID信号Sidに含まれる磁界強度Hxを参照して、磁界強度Hxを取得する。磁界強度取得部22は、運転席アンテナ11を車両送信アンテナとして使用したときの運転席側磁界強度Hdと、助手席アンテナ13を車両送信アンテナとして使用したときの助手席側磁界強度Hpとを取得する。なお、磁界強度取得部22が受信強度算出手段を構成する。
【0039】
照合ECU9のメモリ23には、図2及び図3に示す判定ラインLが登録されている。判定ラインLは、例えば運転席側磁界強度Hdの軸をX座標とし、助手席側磁界強度Hpの軸をY座標とした直交座標系(X−Y直交座標系)において、複数の判定線を組み合わせたユニークな線の群からなる。そして、運転席側磁界強度HdをX座標値とし、助手席側磁界強度HpをY座標値として、この座標点P(X−Y座標のプロット点)が、判定ラインLに対してX−Yの平面座標上のどの位置をとるのかを見ることによって、電子キー2の位置を判定する。また、判定ラインLは、例えばX軸又はY軸から見た場合、その見た側の座標系において少なくとも異なる2点を通る線により形成されている。なお、座標点Pが組み合わせ値に相当する。
【0040】
本例の判定ラインLには、電子キー2が車外(室外)と車内(室内)のどちらに位置しているのかを判定する車内外判定ラインLaが設けられている。車内外判定ラインLaは、複数の直線状の車内外単位判定ラインLa1,La2…を組み合わせたライン群から形成されている。車内外判定ラインLaは、7本の車内外単位判定ラインLa1〜La7から構成されている。車内外単位判定ラインLa1〜La7の線群は、X−Y直交座標系の原点0を通るとともに座標を二等分する傾きが「1」の一次関数の対角線Rkを基準として、左右対称に形成されている。これは、車体が左右対称形状をとるためである。なお、車内外判定ラインLaが室内外判定ラインに相当し、第6車内外単位判定ラインLa6及び第7車内外単位判定ラインLa7が第2判定ラインを構成し、対角線Rkが座標二等分線に相当する。
【0041】
車内外判定ラインLaには、電子キー2の車内外判定を行う際に使用する第1〜第5の5本の車内外単位判定ラインLa1〜La5が設けられている。第1車内外単位判定ラインLa1は、傾きが「−」をとるとともに、対角線Rkと交差する直線式となっている。第2車内外単位判定ラインLa2は、Y軸に沿う直線式となっている。第3車内外単位判定ラインLa3は、相対的に値の大きい「+」の傾きをとるとともに、y切片が相対的に小さな値をとる直線式となっている。第4車内外単位判定ラインLa4は、X軸に沿う直線式となっている。第5車内外単位判定ラインLa5は、相対的に値の小さい「+」の傾きをとるとともに、y切片が相対的に大きな値をとる直線式となっている。第2車内外単位判定ラインLa2及び第4車内外単位判定ラインLa4は、対角線Rkに対して対称となっている。また、第3車内外単位判定ラインLa3及び第5車内外単位判定ラインLa5は、対角線Rkに対して対称となっている。
【0042】
本例の場合、第1車内外単位判定ラインLa1〜第7車内外単位判定ラインLa7によって囲まれる略三角状の領域(以降、車内判定領域Eiと記す:図2の左下がり斜線領域)が、見かけ上、電子キー2が車内に存在すると認識可能な領域として設定されている。また、第1車内外単位判定ラインLa1〜第5車内外単位判定ラインLa5とX軸とY軸とによって囲まれる領域(以降、車外判定領域Eoと記す:図2の右下がり斜線領域)が、見かけ上、電子キー2が車外に存在すると認識可能な領域として設定されている。
【0043】
ここで、例えば電子キー2が運転席側車外や助手席側車外に位置する場合、電子キー2は、運転席アンテナ11及び助手席アンテナ13のうち、一方側に極端に近づく。このため、結果として、運転席側磁界強度Hd及び助手席側磁界強度Hpは、一方が他方に対して極端に大きな値をとる。よって、運転席側磁界強度Hd及び助手席側磁界強度Hpの一方が他方に対して大きな差をとること、即ち座標点Pが図2の車外判定領域Eoに位置することが確認できれば、電子キー2が車外に位置することが分かる。
【0044】
一方、電子キー2が車内に位置する場合、電子キー2は、運転席アンテナ11と助手席アンテナ13とに対して、ほぼ均等に近づく。このため、結果として、運転席側磁界強度Hd及び助手席側磁界強度Hpは、互いに似た様な値に落ち着く。よって、運転席側磁界強度Hd及び助手席側磁界強度Hpが近傍の値をとること、即ち座標点Pが図2の車内判定領域Eiに位置することが確認できれば、電子キー2が車内に位置していることが分かる。
【0045】
ところで、図5に示すように、車両盗難行為の一種として、中継器24を使用して車両盗難行為を謀る中継器使用照合不正成立行為というものがある。中継器使用照合不正成立行為は、例えばアンテナ11,13の通信エリアの外部に電子キー2が位置する際、通信エリア内に中継器24を置き、この中継器24により車両1をエリア外の電子キー2に接続して、ID照合を成立させてしまう行為である。中継器使用照合不正成立行為による車両盗難を受けると、ユーザが関与しないところで勝手にID照合が成立されてしまうので、盗難行為者によりドアロックが解錠されたり、エンジンを始動されたりする可能性に繋がる。
【0046】
そこで、車内外判定ラインLaには、中継器使用照合不正成立行為を防止するための第6及び第7の2本の車内外単位判定ラインLa6,La7が設けられている。第6車内外単位判定ラインLa6は、相対的に値の大きい「−」の傾きをとるとともに、y切片が相対的に大きな値をとる直線式となっている。また、第7車内外単位判定ラインLa7は、相対定期に値の小さい「−」の傾きをとるとともに、y切片が相対的に小さな値をとる直線式となっている。
【0047】
ここで、中継器24は、信号データをリピートすることが可能ではあるものの、電波強度まで中継することができない現状がある。よって、中継器使用照合不正成立行為によって電子キー2からの電波が車両1に伝達された際には、これが非常に大きな受信強度として表われる。よって、結果として、中継器使用照合不正成立行為による電波は、運転席側磁界強度Hd及び助手席側磁界強度Hpがともに高い値をとるはずである。このため、図2に示すように、第6車内外単位判定ラインLa6及び第7車内外単位判定ラインLa7以上の領域(以降、不正通信判定領域Eeと記す:図2の水平斜線領域)に座標点Pが位置することが分かれば、電子キー2が不正通信されたことが分かる。
【0048】
照合ECU9には、判定ラインLを使用して電子キー2の位置判定を実行する位置判定部25が設けられている。位置判定部25は、スマート通信の際にキー位置判定も実行し、実行中のスマート照合が車外照合であるのか、それとも車内照合であるのかを判定する。位置判定部25は、座標点Pを取得すると、この座標点Pが車外判定領域Eoと車内判定領域Eiと不正通信判定領域Eeとのうち、どの領域に位置するのかを確認することによって、キー位置の車内外判定を実行する。なお、位置判定部25が位置判定手段に相当する。
【0049】
位置判定部25は、座標点Pが図2に示す車内判定領域Ei内に位置することを確認すると、電子キー2が車内にあると判定する。位置判定部25は、座標点Pが図2に示す車外判定領域Eo内に位置していることを確認すると、電子キー2が車外にあると判定する。位置判定部25は、座標点Pが図2に示す不正通信判定領域Eeに位置していることを確認すると、電子キー2が不正通信されたと判定する。
【0050】
本例の判定ラインLには、電子キー2が車外に位置する際に、運転席側及び助手席側のどちらに位置しているのかを判定する車外位置判定ラインLbが設けられている。車外位置判定ラインLbも、複数の直線状の車外位置単位判定ラインLb1、Lb2…を組み合わせたライン群から形成されている。車外位置判定ラインLbは、8本の車外位置単位判定ラインLb1〜Lb8から構成されている。車外位置単位判定ラインLb1〜Lb8の線群も、X−Y直交座標系を対角に2分する傾きが「1」の一次関数の対角線Rkを基準として、左右対称に形成されている。なお、車外位置判定ラインLbが室外位置判定ラインに相当し、第4車外位置単位判定ラインLb4及び第8車外位置単位判定ラインLb8が第2判定ラインを構成する。
【0051】
車外位置判定ラインLbには、電子キー2が運転席側に位置しているのかを見る際に使用する4本の車外位置単位判定ラインLb1〜Lb4が設けられている。第1車外位置単位判定ラインLb1は、Y軸に沿う直線式である。第2車外位置単位判定ラインLb2は、対角線Rkと平行する傾きをとるとともに、対角線Rkよりもy切片が小さい値の直線式となっている。第3車外位置単位判定ラインLb3は、第2車外位置単位判定ラインLb2と平行する傾きをとるとともに、同ラインLb2よりもy切片が小さい値の直線式となっている。第4車外位置単位判定ラインLb4は、X軸に沿う直線式となっている。
【0052】
車外位置判定ラインLbには、電子キー2が助手席側に位置しているのかを見る際に使用する4本の車外位置単位判定ラインLb5〜Lb8が設けられている。第5車外位置単位判定ラインLb5は、X軸に沿う直線式である。第6車外位置単位判定ラインLb6は、対角線Rkと平行する傾きをとるとともに、対角線Rkよりもy切片が大きい値をとる直線式となっている。第7車外位置単位判定ラインLb7は、第6車外位置単位判定ラインLb6と平行する傾きをとるとともに、同ラインLb6よりもy切片が大きい値の直線式となっている。第8車外位置単位判定ラインLb8は、Y軸に沿う直線式となっている。
【0053】
本例の場合、4本の車外位置単位判定ラインLb1〜Lb4によって囲まれる略台形状の領域(以降、運転席側車外判定領域Edと記す:図3の左下がり斜線領域)が、見かけ上、電子キー2が運転席側車外に存在すると認識可能な領域として設定されている。これは、電子キー2が運転席側車外に位置する場合、電子キー2は助手席アンテナ13よりも運転席アンテナ11に接近するので、結果、助手席側磁界強度Hpよりも運転席側磁界強度Hdの方が大きな値をとるからである。よって、座標点Pが運転席側車外判定領域Edに位置することが確認できれば、電子キー2が運転席側車外に位置することが分かる。
【0054】
また、4本の車外位置単位判定ラインLb5〜Lb8によって囲まれる略台形状の領域(助手席側車外判定領域Edと記す:図3の右下がり斜線領域)が、見かけ上、電子キー2が助手席側車外に存在すると認識可能な領域として設定されている。これは、電子キー2が助手席側車外に位置する場合、電子キー2は運転席アンテナ11よりも助手席アンテナ13に接近するので、結果、運転席側磁界強度Hdよりも助手席側磁界強度Hpの方が大きな値をとるからである。よって、座標点Pが助手席側車外判定領域Epに位置することが確認できれば、電子キー2が助手席側車外に位置することが分かる。
【0055】
また、第4車外位置単位判定ラインLb4及び第8車外位置単位判定ラインLb8は、中継器使用照合不正成立行為の有無を判定するためのラインとしても使用されている。第4車外位置単位判定ラインLb4は、助手席側磁界強度Hpが高めの値をとるX軸平行線となっている。また、第8車外位置単位判定ラインLb8は、運転席側磁界強度Hdが高めの値をとるY軸平行線となっている。
【0056】
ここで、本例の場合、第4車外位置単位判定ラインLb4及び第8車外位置単位判定ラインLb8以上の領域(不正通信判定領域Er:図3の水平斜線領域)が、見かけ上、スマート通信を不正通信と判定する領域として設定されている。これは、前述したように、中継器使用照合不正成立行為の場合、電子キー2からの電波は、中継器24によって車両1に届かせることは可能であるものの、電波強度までは複製できず、結果、高い送信強度で車両1に届くからである。よって、座標点Pが不正通信判定領域Erに位置することが確認できれば、不正通信であると判定する。
【0057】
また、本例の場合、第2車外位置単位判定ラインLb2と第6車外位置単位判定ラインLb6とにより囲まれる領域、即ち対角線Rk付近の領域も、結果として、不正通信判定領域Erとなっている。これは、前述したように、中継器24によって車両1に送信される電波は、大きな磁界強度で以て車両1に届くので、結果として、同じ磁界強度Hxで運転席アンテナ11及び助手席アンテナ13に至る。このため、運転席側磁界強度Hdと助手席側磁界強度Hpとがほぼ同じ値をとるので、X−Y座標系の対角線Rkに乗る点は、中継器24による電波として判定できるからである。
【0058】
位置判定部25は、座標点Pが図3に示す運転席側車外判定領域Ed内に位置することを確認すると、電子キー2が運転席車外にあると判定する。位置判定部25は、座標点Pが図3に示す助手席側車外判定領域Ep内に位置することを確認すると、電子キー2が助手席側車外にあると判定する。位置判定部25は、座標点Pが図3に示す不正通信判定領域Er内に位置することを確認すると、電子キー2の電波が不正通信されたと判定する。
【0059】
次に、本例のキー位置判定装置18の動作を図6に従って説明する。
ここで、最初に、車両1が駐車状態(ドアロック施錠、エンジン停止)の際、運転者が運転席ドア10から乗車する場合を想定する。このとき、交互送信動作部19は、運転席ドアの車外ドアハンドルノブが運転者によってタッチ操作されたことを確認すると、待機状態をとる電子キー2を起動状態に切り換えるために、運転席アンテナ11及び助手席アンテナ13からウェイク信号26を交互送信する。このとき、交互送信動作部19は、まずは最初に運転席アンテナ11から第1ウェイク信号26aを送信する。
【0060】
電子キー2は、運転席アンテナエリアKd内に入っているので、第1ウェイク信号26aを受信可能である。電子キー2は、第1ウェイク信号26aを受信すると、この第1ウェイク信号26aによって起動状態に切り換わる。このとき、磁界強度算出部20は、第1ウェイク信号26aの受信強度、即ち運転席側磁界強度Hdを算出する。また、電子キー2は、起動状態に切り換わると、第1アック信号27を車両1に送信する。
【0061】
照合ECU9は、第1ウェイク信号26aを送信した際、制限時間内にアック応答を受信すると、車両周囲に電子キー2が存在すると認識する。照合ECU9は、車両周囲に電子キー2が存在することを確認すると、運転席アンテナ11からビークルID28を送信する。ビークルID28は、車両1の固有IDである。電子キー2は、ビークルID28を受信すると、ビークルID照合を実行し、このときの通信相手の車両1が正規通信相手か否かを確認する。電子キー2は、ビークルID照合が成立することを確認すると、第2アック信号29を車両1に送信する。
【0062】
照合ECU9は、ビークルID28の送信後の制限時間内に第2アック信号29を受信すると、続いてチャレンジ30を運転席アンテナ11から送信する。チャレンジ30には、電子キー2が何番目の登録キーかを問い合せるためのキー番号と、チャレンジレスポンス認証用のチャレンジコードとが含まれている。電子キー2は、チャレンジ30を受信すると、チャレンジ30内のキー番号で番号照合を実行し、番号照合が成立することを確認すると、チャレンジコードを自身の暗号鍵に通してレスポンスコードを演算する。電子キー2は、レスポンスコードの演算が完了すると、レスポンス31を車両1に送信する。レスポンス31には、電子キー2のIDコードと、演算したレスポンスコードとが含まれている。電子キー2は、レスポンス31の送信が完了すると、元の待機状態に戻る。
【0063】
また、電子キー2がレスポンス31を車両1に送信する際、磁界強度通知部21は、レスポンス31にIDコード及びレスポンスコードとともに、運転席側磁界強度Hdのデータを含ませて送信させる。即ち、レスポンス31として、IDコードとレスポンスコードと運転席側磁界強度Hdとが電子キー2から車両に送信される。
【0064】
照合ECU9は、チャレンジ30の送信の際、自身もチャレンジコードを自らの暗号鍵に通してレスポンスコードを演算する。そして、照合ECU9は、電子キー2からレスポンス31を受信すると、レスポンス31に含まれるレスポンスコードでレスポンス照合を行い、この照合が成立することを確認すると、レスポンス31に含まれるIDコードでIDコード照合を実行する。照合ECU9は、両照合がともに成立することを確認すると、スマート照合を成立として処理する。
【0065】
さらに、磁界強度取得部22は、スマート照合が成立することを確認すると、レスポンス31に含まれる運転席側磁界強度Hdを取得し、この運転席側磁界強度Hdを位置判定部25に出力する。即ち、磁界強度取得部22は、このときに受信したレスポンス31が、運転席アンテナ11からの問い合せに対する電子キー2の応答であると把握しているので、このレスポンス31に含まれる受信強度データを運転席側磁界強度Hdとして取り込み、これを位置判定部25に通知する。
【0066】
交互送信動作部19は、運転席アンテナ11によるスマート照合が完了することを確認すると、今度は助手席アンテナ13から第2ウェイク信号26bの送信を開始して、助手席アンテナ13を車両送信アンテナとして電子キー2とスマート通信する。電子キー2は、第2ウェイク信号26bを受信すると、この第2ウェイク信号26bによって再度起動状態に入る。このとき、磁界強度算出部20は、第2ウェイク信号26bの受信強度、即ち助手席側磁界強度Hpを算出する。
【0067】
また、電子キー2は、第2ウェイク信号26bにより起動状態に切り換わると、第3アック信号32を車両1に送信する。照合ECU9は、第2ウェイク信号26bを送信した際、制限時間内にアック応答を受信すると、助手席アンテナ13を車両送信アンテナとしたスマート通信を継続する。
【0068】
以降のスマート通信は、運転席アンテナ11を車両送信アンテナとしたときと同様の通信シーケンスにより実行される。即ち、第3アック信号32が車両1に届くと、助手席アンテナ13からビークルID33が送信され、ビークルID照合が実行される。そして、ビークルID照合成立通知として第4アック信号34が電子キー2から車両1に届くと、助手席アンテナ13からチャレンジ35が送信される。
【0069】
電子キー2は、チャレンジ35を受信すると、同チャレンジ35でキー番号照合と、レスポンスコード演算とを実行する。電子キー2は、レスポンスコード演算が完了すると、レスポンス36を車両1に送信する。このレスポンス36には、電子キー2のIDコードと、演算したレスポンスコードと、助手席側磁界強度Hpのデータとが含まれている。
【0070】
照合ECU9は、レスポンス36を受信すると、レスポンス認証とIDコード照合とを行い、これら両照合が成立することを確認すると、スマート照合を成立として処理する。また、磁界強度取得部22は、スマート照合が成立することを確認すると、このレスポンス36から助手席側磁界強度Hpを取得し、助手席側磁界強度Hpを位置判定部25に出力する。即ち、磁界強度取得部22は、このときに受信したレスポンス36が、助手席アンテナ13からの問い合せに対する電子キー2の応答であると把握しているので、このレスポンス36に含まれる受信強度を助手席側磁界強度Hpとして取り込み、これを位置判定部25に出力する。
【0071】
位置判定部25は、運転席側磁界強度Hdと助手席側磁界強度Hpとを取得すると、運転席側磁界強度HdをX座標値とし、助手席側磁界強度HpをY座標値として、座標点Pを算出する。そして、位置判定部25は、まず電子キー2が車外及び車内のどちらかを見る車内外判定を実行する。このとき、位置判定部25は、車両1が駐車状態に入っていることを認識しているので、電子キー2が車外に位置しているか否かを確認する車外判定を実行する。
【0072】
この場合、位置判定部25は、メモリ23から車内外判定ラインLaを読み出し、この車内外判定ラインLaから決まる領域Ei,Eo,Eeのうち、座標点Pが車外判定領域Eoに位置するか否かを確認することにより、駐車時車内外判定を実行する。ここでは、運転者が運転席ドア10側から乗車する場合を想定しているので、座標点Pは、図2に示すように、例えば車外判定領域Eoに座標点P1としてプロットされる。よって、位置判定部25は、座標点Pが車外判定領域Eoに位置することを以て、電子キー2が車外に存在すると認識する。
【0073】
続いて、位置判定部25は、車外に存在する電子キー2が、運転席側及び助手席側のどちらにあるのかを見る車外位置判定を実行する。このとき、位置判定部25は、メモリ23から車外位置判定ラインLbを読み出し、この車外位置判定ラインLbから決まる領域Ed,Ep,Erの中で、どの領域に座標点Pが位置するのかを見ることにより、電子キー2の車外位置を判定する。
【0074】
ここでは、運転者が運転席ドア10側から乗車する場合を想定しているので、座標点Pは、図3に示すように、例えば運転席側車外判定領域Edに座標点P2としてプロットされる。よって、位置判定部25は、座標点Pが運転席側車外判定領域Edに位置することを以て、電子キー2が運転席側車外に位置すると認識する。このため、照合ECU9は、電子キー2との間のスマート照合が成立し、かつ車外判定も正しいということを確認すると、ドアロック装置6にドアロックの解錠を実行させる。
【0075】
一方、位置判定部25は、車外判定の際、座標点Pが車外判定領域Eoに位置しないと、車外判定を不成立として、ドアロック解錠を不可とする。また、位置判定部25は、車外位置判定の際、座標点Pが車外判定領域Eoに位置して電子キー2が車外に存在すると認識できたとしても、座標点Pが運転席側車外判定領域Ed又は助手席側車外判定領域Epに正しく位置しないと、車外判定を不成立として、ドアロック解錠を不可とする。
【0076】
続いて、ドアロックの解錠後、運転者が車内に乗車した場合を想定する。照合ECU9は、運転者が車内に乗車したことを例えばカーテシスイッチ等により確認すると、ドアロックを解錠したときと同じ通信シーケンスで、同様のスマート通信を実行する。よって、この場合も、運転席アンテナ11を車両送信アンテナとして電子キー2とスマート通信を行ったときの電子キー2の受信強度を運転席側磁界強度Hdとして取得し、助手席アンテナ13を車両送信アンテナとして電子キー2とスマート通信を行ったときの電子キー2の受信強度を助手席側磁界強度Hpとして取得し、前述した座標点Pを算出する。
【0077】
位置判定部25は、車内照合時に座標点Pを取得すると、今度は電子キー2が車内に位置しているか否かの判定として、車内判定を実行する。このときも、位置判定部25は、メモリ23から車内外判定ラインLaを読み出し、この車内外判定ラインLaから決まる領域Ei,Eo,Eeのうち、座標点Pが車内判定領域Eiに位置するか否かを確認することにより、車内判定を実行する。
【0078】
このとき、電子キー2を所持した運転者が乗車すれば、座標点Pは、図2に示すように、例えば車内判定領域Eiに座標点P3としてプロットされる。よって、位置判定部25は、座標点Pが車内判定領域Eiに位置することを以て、電子キー2が車内に存在すると認識する。このため、照合ECU9は、電子キー2との間のスマート通信が成立し、かつ車内判定も成立することを確認すると、エンジン始動装置7による電源遷移操作及びエンジン始動操作を許可する。
【0079】
続いて、降車した運転者がドアロックを施錠する場合を想定する。照合ECU9は、車両1が停車状態(ドアロック解錠、エンジン停止)の際、運転席ドア10の車外ドアハンドルノブのロックボタン(図示略)が押し操作されたことを検出すると、前述した通信シーケンスと同様のスマート照合を実行する。このときも、運転席アンテナ11及び助手席アンテナ13により交互にスマート通信を実行して、運転席側磁界強度Hdと助手席側磁界強度Hpとを取得し、前述した座標点Pを算出する。
【0080】
位置判定部25は、車外照合時に座標点Pを取得すると、今度は電子キー2が車外に位置しているか否かの判定として、車外判定を実行する。このときも、位置判定部25は、メモリ23から車内外判定ラインLaを読み出し、この車内外判定ラインLaから決まる領域Ei,Eo,Eeのうち、座標点Pが車外判定領域Eoに位置するか否かを確認することにより、駐車時車内外判定を実行する。ここでは、運転者が運転席ドア10側からドアロックを施錠する場合を想定しているので、車外判定領域Eoに座標点Pがプロットされる。よって、位置判定部25は、座標点Pが車外判定領域Eoに位置することを以て、電子キー2が車外に存在すると認識する。
【0081】
そして、位置判定部25は、車外に存在する電子キー2が、運転席側及び助手席側のどちらにあるのかを見る車外位置判定を続けて実行する。このときも、位置判定部25は、メモリ23から車外位置判定ラインLbを読み出し、この車外位置判定ラインLbから決まる領域Ed,Ep,Erのうち、座標点Pが運転席側車外判定領域Edに位置するか否かを見ることにより、車外位置判定を実行する。
【0082】
ここでは、運転者が運転席ドア10側からドアロックを施錠する場合を想定しているので、運転席側車外判定領域Edに座標点Pがプロットされる。よって、位置判定部25は、座標点Pが運転席側車外判定領域Edに位置することを以て、電子キー2が運転席側車外に位置すると認識する。照合ECU9は、電子キー2とスマート通信が成立し、かつ車外判定も成立することを確認すると、ドアロック装置6にドアロック施錠を実行させる。
【0083】
なお、以上は、運転席ドア10から車両1に乗車する例を説明したが、助手席ドア12や後部右側ドアや左側ドアから乗降車する場合の動作も、基本的な動作は運転席ドア10から乗降車する場合と同様であるので、これらの具体例については詳細を省略する。
【0084】
ところで、運転席側磁界強度Hdと助手席側磁界強度Hpとの値から電子キー2の位置を判定する場合、例えば図7に示すように、運転席側磁界強度Hd及び助手席側磁界強度Hpに、各々1つずつの閾値H1、H2を設け、これら閾値H1,H2に対する座標点Pの大小関係を見ることで、電子キー2の位置を判定する方式をとることも想定される。この場合、例えば運転席側磁界強度Hdが閾値H1以上をとり、かつ助手席側磁界強度Hpが閾値H2以上をとれば、電子キー2が車内に位置すると判定し、運転席側磁界強度Hdが閾値H1よりも小さい、又は助手席側磁界強度Hpが閾値H2よりも小さければ、電子キー2が車外に位置すると判定する。しかし、この判定方式では、実測の結果から周知のように、図7の破線円内の座標点Pe,Pe…が、車外であるにも拘らず車内と判定されてしまい、キー位置が誤判定される問題があった。
【0085】
しかし、本例の場合、複数の直線式を組み合わせたユニークな判定ラインLを設け、この判定ラインLに対する座標点Pの大小を格にすることにより、電子キー2の位置を判定するので、前述した座標点Pe,Pe…も、問題なく車外として判定することが可能となる。よって、本例のようにユニークな判定ラインLでキー位置を判定すれば、より高い精度でキー位置を判定することが可能となる。
【0086】
また、第三者が中継器使用照合不正成立行為によってスマート照合を不正成立しようとした際には、このときに算出される座標点Pが、図2の不正通信判定領域Eeや図3の不正通信判定領域Erにプロットされる。よって、このときのスマート通信が成立として処理されず、車両1が動作しない。このため、もし仮に第三者が中継器24によって車両盗難行為を謀ろうとしても、車両1を動作させずに済むので、車両盗難に対するセキュリティ性も確保することが可能となる。
【0087】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)運転席側磁界強度Hdと助手席側磁界強度Hpとから決まるXY座標上の座標点Pが、判定ラインLに対してどの位置をとるかを見ることでキー位置を判定する本例のキー操作フリーシステム3において、位置判定の基準となる判定ラインLを、複数の直線式から構築したユニークなラインとした。このため、図7に示すような単なる一直線を閾値H1,H2としてキー位置を判定するものではないので、この方式では誤判定してしまった位置も正確に判定することが可能となる。よって、電子キー2を細分して位置判定することが可能となるので、より精度よく電子キー2の位置を判定することができる。
【0088】
(2)判定ラインLとして車内外判定ラインLaを設け、車内外判定ラインLaに対する座標点Pを見ることで、電子キー2の車内外判定を実行する。このため、判定精度の高い車内外判定ラインLaで以て電子キー2の車内外判定を行うので、電子キー2が車外及び車内のどちらに位置するのかを、より正確に判定することができる。
【0089】
(3)判定ラインLとして車内外判定ラインLaと車外位置判定ラインLbとを設け、車内外判定ラインLaで電子キー2の車内外判定を行うとともに、電子キー2が車外に位置する際には、車外位置判定ラインLbで以て、電子キー2が運転席側車外及び助手席側車外のどちらにあるのかの車外位置判定も行う。よって、精度よく車内外位置判定を実行することができ、しかも電子キー2が車外に位置する際には、電子キー2が運転席側車外及び助手席側車外のどちらに位置するのかも、より正確に判定することができる。
【0090】
(4)判定ラインLを複数の直線から構築するので、判定ラインLの式(判定式)を、一次関数(一次直線)という簡素な式によって構築することができる。
(5)車内外判定ラインLaの一ラインとして、中継器使用照合不正成立行為を識別可能な第6車内外単位判定ラインLa6及び第7車内外単位判定ラインLa7を設け、これらラインLa6,La7により形成される不正通信判定領域Eeに座標点Pが位置する場合には、通信を不成立として処理する。このため、第三者が中継器24を使用してスマート通信を不正に成立させようとしても、結果として通信が成立しないので、中継器24を使用した不正な車両操作を防止することができる。よって、車両盗難に対するセキュリティ性を向上することができる。なお、このことは、車外位置判定ラインLbの第4車外位置単位判定ラインLb4及び第8車外位置単位判定ラインLb8でも同様に言えることである。
【0091】
(6)車外位置判定ラインLbでキー位置を判定する際、直交座標系(X−Y直交座標系)の原点0を通る傾きが「1」の対角線Rkに座標点Pが乗る場合、中継器使用照合不正成立行為による通信とみなして、通信を不成立として処理する。このため、中継器24を使用した不正な車両操作を防止でき、結果、車両盗難に対するセキュリティ性を向上することができる。
【0092】
(7)運転席側磁界強度Hd及び助手席側磁界強度Hpを3軸アンテナのベクトル合成値から算出するので、これら磁界強度Hd,Hpを、より精度よく算出することができる。
【0093】
(8)電子キー2で算出した運転席側磁界強度Hd及び助手席側磁界強度Hpを車両1にデジタル値として送信し、最終的なキー位置判定を車両1側で実行する。ところで、電子キー2の通信制御部15よりも、車両1の照合ECU9の方が演算速度の速いコンピュータを使用する場合が多いので、キー位置判定を車両1側で行うようにすれば、より短時間でキー位置を判定することができる。
【0094】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図8及び図9に従って説明する。なお、本例は、本願発明の技術思想をタイヤ空気圧監視システム50に応用した実施例である。よって、第1実施形態と同一部分に関しては同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0095】
図8に示すように、車両1には、各タイヤ51に無線式のバルブ(タイヤセンサ)52を取り付けて各タイヤ51の空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム50が搭載されている。タイヤ空気圧監視システム50は、タイヤ空気圧が閾値よりも低いタイヤを検出すると、そのタイヤを例えば車内インストルメントパネル等で運転者に通知する。タイヤ51には、右前タイヤ51a、左前タイヤ51b、右後タイヤ51c、左後タイヤ51dがある。なお、タイヤ空気圧監視システム50が無線システムを構成する。
【0096】
各タイヤ51a〜51dには、タイヤ空気圧情報Stpを無線により送信可能なバルブ52(52a〜52d)が取り付けられている。本例のバルブ52には、LF電波を受信可能なLF受信機、UHF電波を送信可能なUHF送信機、タイヤ空気圧を検出する圧力センサ、タイヤ温度を検出する温度センサ、タイヤに加わる加速度を検出する加速度センサ、以上の部品を制御するマイクロコンピュータ等が搭載されている。また、各バルブ52のマイクロコンピュータには、前述したような磁界強度算出部20や磁界強度通知部21も設けられている。なお、バルブ52が通信端末及びタイヤ通信機を構成する。
【0097】
バルブ52は、アンテナ11,13からトリガ信号Strを受信したとき、タイヤ空気圧情報StpをUHF電波により送信する。タイヤ空気圧情報Stpには、例えばバルブ固有の識別ID、タイヤ空気圧、タイヤ温度、タイヤに付与されている加速度等の情報が含まれている。また、トリガ信号Strは、LF電波であって、バルブ52に電波送信を要求する動作実行要求が含まれている。トリガ信号Strは、車両走行中においてアンテナ11,13が電子キー2と通信を実行しない所定タイミングで送信される。
【0098】
照合ECU9のメモリ23には、タイヤ位置を特定可能な図9に示す判定ラインLが登録されている。本例の判定ラインLは、3本のLk1,Lk2,Lk3からなる。これら判定ラインLk1〜Lk3は、傾きが全て同じであり、y切片が異なっている。本例の場合、y切片が最も大きいものがLk1であり、y切片が次に大きいものがLk2であり、y切片が最も小さいものがLk3である。
【0099】
位置判定部25は、各バルブ52a〜52dの座標点Pが、判定ラインLk1〜Lk3により形成されるどの領域Et1〜Et4に位置するかを確認することでタイヤ位置を特定する。本例の場合、判定ラインLk1よりもX−Y座標領域において上側の領域Et1は、左前タイヤ51bと判定できる領域となり、判定ラインLk1,Lk2により囲まれる領域Et2は、左後タイヤ51dと判定できる領域となっている。また、判定ラインLk2,Lk3により囲まれる領域Et3は、右後タイヤ51cと判定できる領域となり、判定ラインLk3よりもX−Y座標領域において下側の領域Et4は、右前タイヤ51aと判定できる領域となっている。
【0100】
次に、本例のタイヤ空気圧監視システム50の動作を説明する。
照合ECU9は、例えば運転席アンテナ11、助手席アンテナ13の順でトリガ信号Strをそれぞれ異なるタイミングで送信する。各バルブ52a〜52dは、まず運転席アンテナ11から送信されたトリガ信号Strを受信すると、そのときのタイヤ空気圧等を算出する他に、運転席アンテナ11から送信されたトリガ信号Strの磁界強度、つまりHdを磁界強度算出部20にて算出する。そして、各バルブ52a〜52dは、この磁界強度Hdを含めたタイヤ空気圧情報StpをUHF電波により車両1に送信する。
【0101】
このとき、各バルブ52a〜52dのうち運転席側のバルブ52a,52cは、運転席アンテナ11に近いため、高い磁界強度Hdを得る。一方、助手席側のバルブ52b,52dは、運転席アンテナ11から遠いため、運転席側より低い磁界強度Hdを得る。
【0102】
続いて、各バルブ52a〜52dは、助手席アンテナ13から送信されたトリガ信号Strを受信する。各バルブ52a〜52dは、助手席アンテナ13から送信されたトリガ信号Strを受信すると、そのときのタイヤ空気圧等を算出する他に、助手席アンテナ13から送信されたトリガ信号Strの磁界強度、つまりHpを磁界強度算出部20にて算出する。そして、各バルブ52a〜52dは、この磁界強度Hpを含めたタイヤ空気圧情報StpをUHF電波により車両1に送信する。
【0103】
このとき、各バルブ52a〜52dのうち運転席側のバルブ52a,52cは、助手席アンテナ13から遠いため、低い磁界強度Hpを得る。一方、助手席側のバルブ52b,52dは、助手席アンテナ13に近いため、助手席側よい高い磁界強度Hpを得る。
【0104】
照合ECU9は、各アンテナ11,13からの応答としてタイヤ空気圧情報Stpを取得すると、タイヤ位置を特定する。このとき、位置判定部25は、それぞれのバルブ52a〜52dの識別ID1〜ID4において座標点Pを算出する。そして、位置判定部25は、どの識別IDがどの領域Et1〜Et4に位置するかを確認することによってタイヤ位置を特定する。
【0105】
このとき、例えば識別ID1の座標点Pが領域Et4に位置していれば、識別ID1のバルブ52aは右前タイヤ51aに取り付いていると判定され、識別ID2の座標点Pが領域Et1に位置していれば、識別ID2のバルブ52bは左前タイヤ51bに取り付いていると判定される。また、識別ID3の座標点Pが領域Et3に位置していれば、識別ID3のバルブ52cは右後タイヤ51cに取り付いていると判定され、識別ID4の座標点Pが領域Et2に位置していれば、識別ID4のバルブ52dは左後タイヤ51dに取り付いていると判定される。
【0106】
なお、判定ラインLk1〜Lk3は、所定車種において実験により導いたラインである。このため、判定ラインLk1〜Lk3の引き方は、車種によって異なる。判定ラインLk1〜Lk3は、理論的に求めることも可能であるが、車体は複雑な構造をとるため、論理的に求めることは現状として難しく、実際のところ実車測定によって求めることになる。
【0107】
また、運転席アンテナ11や助手席アンテナ13が車両前後方向において真ん中に配置されると、前後間で受信強度が同じとなるため、判定が難しくなる。この場合は、運転席アンテナ11や助手席アンテナ13の搭載位置、搭載角度を調整することにより、受信強度に差を持たせるとよい。
【0108】
本実施形態の構成によれば、前記実施形態に記載の(1)〜(8)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(9)各タイヤハウスにイニシエータを配置しなくてもタイヤ51a〜51dの位置を特定することが可能となるので、タイヤ空気圧監視システム50に必要な部品点数を少なく抑えることができる。また、タイヤ特定も精度よく行うことができる。
【0109】
(10)キー操作フリーシステム3における車体側の通信インフラ(主に照合ECU9、アンテナ11,13、車両チューナ12等)をタイヤ空気圧監視システム50にも共用するので、車両1に搭載される部品点数を削減することができる。
【0110】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1及び第2実施形態において、判定ラインLは、複数の直線からなるラインに限定されず、例えば曲線から形成されてもよい。また、判定ラインLは、直線と直線とを組み合わせたラインとしてもよい。
【0111】
・第1及び第2実施形態において、アンテナは、運転席アンテナ11と助手席アンテナ13とに限定されない。例えばラッゲージに搭載したトランクアンテナでもよい。
・第1及び第2実施形態において、位置判定(電子キー2、タイヤ51)は、一対のアンテナの組みを1つだけ設けて、位置を判定する形式に限定されない。例えば、一対のアンテナの組みを複数設けて、これら組みごとの判定結果を総合して、位置を割り出してもよい。
【0112】
・第1及び第2実施形態において、キー位置判定は、車内外又は車外位置を見ることに限定されない。即ち、電子キー2の位置を見るものであれば、位置判定の対象位置は特に限定しないものとする。
【0113】
・第1及び第2実施形態において、キー位置判定は、車内外及び車外位置の両方を見ることに限らず、どちらか一方でもよい。
・第1及び第2実施形態において、ウェイク信号26は、運転者の所定操作をトリガとして送信が開始されることに限定されない。例えば、車両1が駐車状態の際、車両1に近づく電子キー2を常に監視するために、常時送信としてもよい。
【0114】
・第1及び第2実施形態において、磁界強度Hd,Hpは、3軸のベクトル合成値を使用して算出されることに限らず、例えば3軸の中の最大値を使用してもよい。
・第1及び第2実施形態において、電子キー2やバルブ52の受信アンテナは、3軸アンテナに限定されず、例えば1軸アンテナでもよい。
【0115】
・第1及び第2実施形態において、磁界強度Hxの算出は、ウェイク信号26a,26bで行うことに限らず、例えばビークルID28,33やチャレンジ30,35により算出してもよい。
【0116】
・第1及び第2実施形態において、位置判定は、通信端末(電子キー2、バルブ52)から磁界強度Hxのデータを車両1が受け付けて、車両1側で行う形式に限定されない。例えば、位置判定までを全て通信端末側(電子キー2、バルブ52)で行い、その判定結果を車両1に通知する形式でもよい。
【0117】
・第1及び第2実施形態において、受信強度は、受信電波の磁界強度Hxに限定されず、電界強度としてもよい。
・第1及び第2実施形態において、リクエストは、ID返信要求であるリクエスト信号Srqに限らず、電子キー2に応答を求める信号であればよい。
【0118】
・第1及び第2実施形態において、スマート照合は、運転席アンテナ11及び助手席アンテナ13の両方で成立を条件とすることに限らず、どちらか一方のみとしてもよい。
・第1及び第2実施形態において、電子キー2は、車両キーに限定されず、種々の端末(携帯電話、ICカード等)が使用可能である。また、電子キー2は、必ずしもキー機能を持つものに限らず、広義として認証動作を行う通信端末(認証端末)を広く含むものとする。
【0119】
・第1及び第2実施形態において、キー操作フリーシステム3は、相互通信の往路と復路とで周波数が異なることに限定されず、同じ周波数としてもよい。また、キー操作フリーシステム3の通信周波数は、LFやUHFに限らず、例えばHF(High Frequency)等の他の周波数を使用してもよい。
【0120】
・第1及び第2実施形態において、無線システムや問い合せは、実施形態に述べた例に限定されず、本願思想の適用先に応じて適宜変更可能である。
・第1及び第2実施形態において、スマート通信の過程で車両1から電子キー2の電力電波を送信し、この電力電波により電子キー2を駆動させることで、電子キー2を電池レスとしてもよい。
【0121】
・第2実施形態において、車両チューナ14は、タイヤ位置特定に際して同じバルブ52から何度も同様の信号を得ることになるが、タイヤ空気圧の判定は、その中の特定の1つを採用すればよいし、平均値をとってもよい。
【0122】
・第2実施形態において、タイヤ空気圧監視システム50のコントロールユニットは、照合ECU9が兼ねることに限定されず、専用のECUを設けてもよい。
・第1又は第2実施形態において、キー操作フリーシステム3及びタイヤ空気圧監視システム50は、車体側の通信インフラが共用されることに限定されず、各システムで機能が独立していてもよい。また、本例の技術思想は、車両1に搭載されることに限らず、他の機器や装置に採用可能である。
【0123】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜9のいずれかにおいて、前記判定ラインは、前記平面座標の原点を通る傾き「1」の対角線を中心として、左右対称に形成されている。この構成によれば、対角線を中心としてX−Yを逆にした式を判定ラインとして用意すれば済むので、判定ラインの式を簡素化することが可能となる。
【0124】
(ロ)請求項1〜9、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記通信端末の受信アンテナは、複数軸アンテナにより形成され、前記受信強度算出手段は、前記複数軸アンテナのベクトル合成値を使用して前記受信強度を算出する。この構成によれば、より精度よく受信強度を算出することが可能となる。
【符号の説明】
【0125】
1…車両、2…通信端末を構成する電子キー、3…無線システム及び電子キーシステムを構成するキー操作フリーシステム、9…通信マスタとしての照合ECU、11…一アンテナとしての運転席アンテナ、13…他アンテナとしての助手席アンテナ、18…位置判定装置、20…受信強度算出手段を構成する磁界強度算出部、21…受信強度算出手段を構成する磁界強度通知部、22…受信強度算出手段を構成する磁界強度取得部、24…中継器、26…位置判定手段としての位置判定部、50…無線システムを構成するタイヤ空気圧監視システム、51(51a〜51d)…タイヤ、52(52a〜52d)…通信端末及びタイヤ通信機を構成するバルブ、Hd…第1受信強度としての運転席側磁界強度、Hp…第2受信強度としての助手席側磁界強度、P…組み合わせ値としての座標点、L…判定ライン、La…室内外判定ラインとしての車内外判定ライン、Lb…室外位置判定ラインとしての車外位置判定ライン、La6…第2判定ラインを構成する第6車内外単位判定ライン、La7…第2判定ラインを構成する第7車内外単位判定ライン、Lb4…第2判定ラインを構成する第4車外位置単位判定ライン、Lb8…第2判定ラインを構成する第8車外位置単位判定ライン、Lk1〜Lk3…判定ライン、0…原点、Rk…座標二等分線としての対角線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信マスタからの問い合せに通信端末が応答して、これらが双方向通信する無線システムに使用される通信端末位置判定装置において、
前記通信マスタの一アンテナ及び他アンテナから交互に電波が送信された際、前記一アンテナからの電波を前記通信端末が受信した際の第1受信強度と、前記他アンテナからの電波を前記通信端末が受信した際の第2受信強度とを算出する受信強度算出手段と、
前記第1受信強度と前記第2受信強度との組み合わせ値を平面座標上でエリア分けするラインとして設けられ、前記平面座標の一軸側から見た場合、少なくとも異なる2点を繋ぐ線により形成された判定ラインと、
前記判定ラインに対する前記組み合わせ値の大小により、前記通信端末の位置を判定する位置判定手段と
を備えたことを特徴とする通信端末位置判定装置。
【請求項2】
前記通信端末は、電子キーであり、
前記無線システムは、前記通信マスタが前記電子キーとID照合する電子キーシステムであり、
前記位置判定手段は、前記電子キーの位置を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末位置判定装置。
【請求項3】
前記判定ラインには、前記電子キーの位置を室内外で区分けする室内外判定ラインが設けられ、前記位置判定手段は、前記室内外判定ラインに対する前記組み合わせ値の位置の大小を見ることにより、前記電子キーが室内及び室外のどちらに位置するのかを判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の通信端末位置判定装置。
【請求項4】
前記判定ラインには、前記電子キーの位置を室内外で区分けする室内外判定ラインと、前記電子キーの位置を室外において区分けする室外位置判定ラインとが設けられ、
前記電子キーの位置判定は、前記室内外判定ラインを使用して前記電子キーが室内外のどちらに位置するのかを見る室内外判定と、前記電子キーが室外に位置する際に、前記室外位置判定ラインを用いて前記電子キーが室外のどの位置に存在するのかを見る室外位置判定との2判定が実行される
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の通信端末位置判定装置。
【請求項5】
前記判定ラインには、中継器を使用して前記通信マスタと前記電子キーとを不正に通信成立させる行為を防止するための第2判定ラインが設けられている
ことを特徴とする請求項2〜4のうちいずれか一項に記載の通信端末位置判定装置。
【請求項6】
前記判定ラインは、前記平面座標の原点を通る座標二等分線を中心として左右対称に形成され、当該座標二等分線の付近が、中継器を使用して前記通信マスタと前記電子キーとを不正に通信成立させる行為を防止する領域として設定されている
ことを特徴とする請求項2〜4のうちいずれか一項に記載の通信端末位置判定装置。
【請求項7】
前記判定ラインは、少なくとも繋ぐ前後で傾きが異なる複数の直線により形成されている
ことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の通信端末位置判定装置。
【請求項8】
前記通信端末は、車両の各タイヤに取り付けられたタイヤ通信機であり、
前記無線システムは、前記タイヤ通信機からタイヤ空気圧を無線により取得するタイヤ空気圧監視システムであり、
前記位置判定手段は、前記タイヤ通信機の位置を判定することにより、タイヤの位置を特定する
ことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の通信端末位置判定装置。
【請求項9】
前記通信端末としての電子キーとID照合する前記無線システムとしての電子キーシステムと、前記通信端末としてのタイヤ通信機から無線によりタイヤ空気圧を取得する前記無線システムとしてのタイヤ空気圧監視システムとは、1つの前記通信マスタを共用する
ことを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の通信端末位置判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−144625(P2011−144625A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214428(P2010−214428)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】