説明

連続熱処理設備の冷却帯における鋼帯の冷却方法及び冷却装置

【課題】連続熱処理設備の冷却帯において、冷却効率の良い冷却速度を確保するとともに、酸化膜の生成を抑制する鋼帯の冷却方法及び冷却装置を提供する。
【解決手段】鋼帯1を連続的に通板させて熱処理する連続熱処理設備の冷却帯4にて脱気装置24により冷却水中の溶存酸素量を低減させた脱気水を使用して水冷却装置または気水冷却装置18により鋼帯を水冷却または気水冷却する連続熱処理設備の冷却帯における鋼帯の冷却方法。水冷却装置または気水冷却装置18の下流に水冷却または気水冷却した鋼帯に水素含有ガス吹き付け冷却装置25により水素含有ガスを吹き付けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続熱処理設備の冷却帯において溶存酸素を低減させた冷却水を用いて鋼帯を水冷却または気水冷却する鋼帯の冷却方法及び冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱問および/または冷間にて加工され鋼帯には焼鈍が施される。特許文献1には、鋼帯の切替式連続熱処理設備が開示されている。図2は鋼帯の切替式連続熱処理設備の一例を示す概略図である。
【0003】
図2において、溶融亜鉛めっき鋼帯の製造時には、鋼帯1は加熱帯2、均熱帯3、冷却帯4の順に通板させた後、スナウト5を経由して溶融亜鉛のめっきポット6に導入され、めっき付着量調節機7により所定のめっき厚みに調整され、必要により合金化装置8にて合金化処理された後、冷却装置9にて所定の温度以下になるように冷却され、トップロール10を経て、エアージエットクーラー式冷却装置11により冷却された後、最終冷却帯12で最終冷却される。
【0004】
また、溶融亜鉛めっきしない場合にはライン切替装置13で焼鈍ラインに切り替えられ、鋼帯1は、加熱帯2、均熱帯3、冷却帯4と過時効処理を行う過時効帯14、15、最終冷却帯12の順に通板される。
【0005】
連続熱処理設備で焼鈍された鋼帯は、表面に化成処理やめっきが施される。この場合に表面に酸化膜が生成していると、化成処理やめっきが十分になされず、その後の密着性や耐食性が損なわれる。そのために、化成処理やめっきが施される鋼帯では、焼鈍した鋼帯を無酸化で冷却する必要がある。鋼帯を無酸化で冷却する場合には、窒素等の非酸化性のガスで行われる。ガス内に酸素などの酸化性ガスが含まれると、鋼帯が酸化されるためである。
【0006】
鋼帯を水で冷却する場合には、水自体が酸化性であるために鋼帯の酸化を避けることはできない。したがって、鋼帯の厚みが厚いまたは比較的速い冷却速度が必要な場合には、ガスを用いた冷却では必要な冷却速度が得られず、水を用いた冷却が必要になる。この場合、鋼帯表面に生成した酸化膜を除去するために、焼鈍後に酸洗などの後処理が必要になる。
【特許文献1】特開2002−155318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鋼帯を無酸化で冷却する場合には、窒素等の非酸化性のガスを用いた冷却が行われ、連続焼鈍設備の冷却帯でもガスジエット冷却が行われている。しかし、ガスを用いた冷却では鋼帯の厚みが厚い場合または比較的速い冷却速度が必要な場合には、必要な冷却速度が得られないという課題が残る。
【0008】
本発明は、連続熱処理設備の冷却帯において、冷却効率の良い冷却速度を確保するとともに、酸化膜の生成を抑制する鋼帯の冷却方法及び冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の連続熱処理設備の冷却帯における鋼帯の冷却方法は、鋼帯を連続的に通板させて連続熱処理設備の冷却帯で冷却した後に引き続き溶融亜鉛めっき処理する際の連続熱処理設備の冷却帯における鋼帯の冷却方法において、脱気装置により冷却水中の溶存酸素量を低減させた脱気水を使用して鋼帯を水冷却または気水冷却することを特徴とする。
【0010】
前記構成において、水冷却または気水冷却した鋼帯に水素含有ガスを吹き付けて水素還元にて酸化膜を還元してもよい。
【0011】
また、本発明は、鋼帯を連続的に通板させて熱処理する連続熱処理設備の冷却帯における鋼帯の冷却方法において、脱気装置により冷却水中の溶存酸素量を低減させた脱気水を使用して鋼帯を水冷却または気水冷却し、水冷却または気水冷却した鋼帯に水素含有ガスを吹き付けて水素還元にて酸化膜を還元することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の連続熱処理設備の冷却帯における冷却装置は、鋼帯を連続的に通板させて連続熱処理設備の冷却帯で冷却した後に引き続き溶融亜鉛めっき処理する際の連続熱処理設備の冷却帯に、脱気装置により冷却水中の溶存酸素量を低減させた脱気水を使用して鋼帯を水冷却する水冷却装置または気水冷却する気水冷却装置を配設したことを特徴とする。
【0013】
前記構成において、水冷却装置または気水冷却装置の下流に水冷却または気水冷却した鋼帯に水素含有ガスを吹き付ける水素含有ガス吹き付け冷却装置を配設してもよい。
【0014】
また、本発明の連続熱処理設備の冷却帯における冷却装置は、鋼帯を連続的に通板させて熱処理する連続熱処理設備の冷却帯に脱気装置により冷却水中の溶存酸素量を低減させた脱気水を使用して鋼帯を水冷却する水冷却装置または気水冷却する気水冷却装置を配設し、水冷却装置または気水冷却装置の下流に気水冷却した鋼帯に水素含有ガスを吹き付ける水素含有ガス吹き付け冷却装置を配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による鋼帯の冷却では、鋼帯の水冷に冷却水中の溶存酸素を低減させた冷却水を用いた水冷却または気水冷却により、化成処理やめっき処理の妨げとならないように酸化膜の形成を抑制することができる。
【0016】
また、冷却水中の溶存酸素を低減させた冷却水とすることで、冷却水による冷却で酸化膜が僅かに生成されても、後工程の水素還元にて酸化膜をさらに抑えることができる。
【0017】
また、冷却能が大きいので、高張力鋼の製造にも適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の連続熱処理設備の冷却装置を示す図で、本実施例は連続熱処理設備の冷却帯に配設された例である。
【実施例1】
【0019】
図1において、図2に示す加熱帯2、均熱帯3を通過して所定の熱処理を終了した鋼帯1はデフレクタロール16で方向転換されて冷却帯4に入り上昇する。冷却帯4の入り側には、均熱帯3側と冷却帯4を熱的に遮断するため、気体を吹き付けるガスシール装置17が配置される。
【0020】
冷却帯4には、鋼帯1を水冷却する水冷却装置または気水冷却する気水冷却装置18が配置される。気水冷却装置18は気水噴射ノズルが配設され、鋼帯1に気水を噴霧する。気水冷却装置18には、気水を供給する気水供給配管19が接続され、気水供給配管19はブロワ20で気体を供給する気体供給配管21と、冷却水を供給する冷却水供給配管22が合流している。ブロワに供給する気体は、窒素等の不活性ガスを用いる。
【0021】
冷却水供給配管22にはポンブ23で供給される冷却水中の溶存酸素を低減させるための脱気装置24が配置される。冷却水中の溶存酸素量を低減させる脱気装置24にはNバブリング、気液分離膜(減圧)等を利用した公知の脱気装置を利用する。
【0022】
水冷却装置または気水冷却装置18の下流には、噴霧水が下流に向かわないように気体を吹き付けるガスシ−ル装置17が配置される。
【0023】
連続焼鈍設備で所定の熱処理を終了した鋼帯1は、冷却帯4において脱気装置24により冷却水中の溶存酸素を低減させた脱気水を気水供給配管19に供給して水冷却または気水冷却する。水冷却または気水冷却された鋼帯1は次の過時効帯14、冷却帯15、最終冷却帯12の順に通板されて熱処理される。
【0024】
溶融亜鉛めっき鋼帯の製造時には、鋼帯1はスナウト5を経由して溶融亜鉛のめっきポット6に導入され、従来と同様の工程を経て溶融亜鉛めっきされる。
【0025】
冷却帯4において、冷却水中の溶存酸素を低減させた脱気水により水冷却または気水冷却することによって、化成処理やめっき処理の妨げとならないように酸化膜の形成を抑制することができる。
【実施例2】
【0026】
本実施例は水冷却装置または気水冷却装置18の下流に、図1の点線で示すように、水素含有ガス吹き付け冷却装置25を配設した例である。水冷却または気水冷却の際、冷却水による冷却で酸化膜が生成されても、水素含有ガス吹き付け装置18で水素含有ガスを吹き付けて水素還元にて酸化膜を還元して抑えることができる。したがって、化成処理やめっき処理の妨げとならないように酸化膜の形成をより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の連続熱処理設備の冷却装置を示す図である。
【図2】鋼帯の切替式連続熱処理設備の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0028】
1:鋼帯
2:加熱帯
3:均熱帯
4:冷却帯
5:スナウト
6:めっきポット
7:めっき付着量調節機
8:合金化装置
9:冷却装置
10:トップロール
11:エアージエットクーラー式冷却装置
12:最終冷却帯
13:ライン切替装置
14:過時効帯
15:冷却帯
16:デフレクタロール
17:エアシール装置
18:気水冷却装置
19:気水供給配管
20:ブロワ
21:気体供給配管
22:冷却水供給配管
23:ポンプ
24:脱気装置
25:水素含有ガス吹き付け冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯を連続的に通板させて連続熱処理設備の冷却帯で冷却した後に引き続き溶融亜鉛めっき処理する際の連続熱処理設備の冷却帯における鋼帯の冷却方法において、
脱気装置により冷却水中の溶存酸素量を低減させた脱気水を使用して鋼帯を水冷却または気水冷却することを特徴とする鋼帯の冷却方法。
【請求項2】
水冷却または気水冷却した鋼帯に水素含有ガスを吹き付けて水素還元にて酸化膜を還元することを特徴とする請求項1記載の連続熱処理設備の冷却帯における鋼帯の冷却方法。
【請求項3】
鋼帯を連続的に通板させて熱処理する連続熱処理設備の冷却帯における鋼帯の冷却方法において、
脱気装置により冷却水中の溶存酸素量を低減させた脱気水を使用して鋼帯を水冷却または気水冷却し、水冷却または気水冷却した鋼帯に水素含有ガスを吹き付けて水素還元にて酸化膜を還元することを特徴とする連続熱処理設備の冷却帯における鋼帯の冷却方法。
【請求項4】
鋼帯を連続的に通板させて連続熱処理設備の冷却帯で冷却した後に引き続き溶融亜鉛めっき処理する際の連続熱処理設備の冷却帯に、脱気装置により冷却水中の溶存酸素量を低減させた脱気水を使用して鋼帯を水冷却する水冷却装置または気水冷却する気水冷却装置を配設したことを特徴とする連続熱処理設備の冷却帯における鋼帯の冷却装置。
【請求項5】
連続熱処理設備の冷却帯に、水冷却装置または気水冷却装置の下流に水冷却または気水冷却した鋼帯に水素含有ガスを吹き付ける水素含有ガス吹き付け冷却装置を配設したことを特徴とする請求項4記載の連続熱処理設備の冷却帯における鋼帯の冷却装置。
【請求項6】
鋼帯を連続的に通板させて熱処理する連続熱処理設備の冷却帯に脱気装置により冷却水中の溶存酸素量を低減させた脱気水を使用して鋼帯を水冷却する水冷却装置または気水冷却する気水冷却装置を配設し、水冷却装置または気水冷却装置の下流に気水冷却した鋼帯に水素含有ガスを吹き付ける水素含有ガス吹き付け冷却装置を配設したことを特徴とする連続熱処理設備の冷却帯における鋼帯の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−316345(P2006−316345A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29186(P2006−29186)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】