説明

連続視聴的メディアデータのコンテンツ暗号化/復号装置、データ構造及びプログラム

【課題】連続視聴的メディアデータを必ず連続的に視聴させることができる連続視聴的メディアデータのコンテンツ暗号化/復号装置、データ構造及びプログラムを提供する。
【解決手段】コンテンツ暗号化装置について、連続視聴的メディアデータを、複数のユニットに分割するユニット分割手段と、ユニット毎に、鍵情報を生成する鍵情報生成手段と、第1のユニットに対する第1の鍵情報を用いて、第1のユニットのメディアデータをスクランブルするスクランブル処理手段と、スクランブルされた第1のユニットのメディアデータに、第2のユニットに対する第2の鍵情報を埋め込む電子透かし挿入手段とを有し、複数のユニットを連続的に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続視聴的メディアデータのコンテンツ暗号化/復号装置、データ構造及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来技術におけるシステム構成図である。
【0003】
図1のシステムは、サービス提供設備のコンテンツ配信サーバ1と、自宅に設置されるセットトップボックス(通信端末装置)2とが、インターネットのようなネットワーク5を介して接続されている。セットトップボックス2には、テレビ3及びオーディオ装置4等(再生装置)が接続されている。
【0004】
コンテンツ配信サーバ1は、ユーザによって視聴・閲覧できる連続視聴的なメディアデータを配信する。連続視聴的なメディアデータは、例えば音声(音楽)、静止画像、動画像(映像)のデータである。メディアデータは、コンテンツが所定方式(例えばMPEG(Moving Picture Experts Group))によってデジタル化されたものであり、コンテンツ配信サーバ1に蓄積されている。
【0005】
自宅の利用者は、セットトップボックス2を用いて、所望のメディアデータをコンテンツ配信サーバ1へ要求する。このとき、コンテンツ配信サーバ1は、例えば乱数によって鍵情報を生成し、その鍵情報を用いてメディアデータをスクランブルする。
【0006】
スクランブルとは、メディアデータの少なくとも一部又は全部を、認識不可能な状態にする技術をいう。従って、スクランブルされた状態のメディアデータは、そのままでは視聴・閲覧できないので、商品価値が無い。但し、一部がスクランブルされたメディアデータについては、その他の部分の視聴・閲覧が可能であってもよい。スクランブルは、可逆処理であって、鍵情報を用いて完全に元のメディアデータを復元することができる。
【0007】
コンテンツ配信サーバ1は、スクランブル・メディアデータを、ネットワーク5を介してセットトップボックス2へ送信する。このとき、コンテンツ配信サーバ1は、スクランブルを解除する鍵情報も、セットトップボックス2へ送信する。鍵情報は、そのメディアデータの著作権保護の役割も有するために、秘匿性が確保された通信方式によって転送されなければならない。
【0008】
セットトップボックス2は、スクランブル・メディアデータと、鍵情報とを、コンテンツ配信サーバ1から受信する。そして、セットトップボックス2は、その鍵情報を用いて、メディアデータのスクランブルを解除する。これによって、セットトップボックス2は、復号されたメディアデータを、テレビ3又はオーディオ装置4へ出力することができる。
【0009】
【特許文献1】特開2003−195759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術によれば、1つの連続視聴的メディアデータに対して1つの鍵情報を取得すれば、そのメディアデータにおけるいずれの部分のスクランブルも解除できる。一方、コンテンツ配信事業者としては、連続視聴的メディアデータに対して、必ず連続的に視聴してほしい場合もある。例えば、連続テレビドラマや、講演、講義等によるコンテンツである。また、テレビ番組のようなコンテンツの場合、挿入されるコマーシャル部分が視聴されなければ、その後のメディアデータを再生できないようにしたい場合もある。
【0011】
現在では、コンテンツは、インターネットを介して様々な著作権者から流通する。そうすると、メディアデータの鍵情報の扱いやスクランブルの方式は、コンテンツを作成するコンテンツ作成者によって管理されるべきものとなってきている。
【0012】
従って、本発明は、連続視聴的メディアデータを必ず連続的に視聴させることができる連続視聴的メディアデータのコンテンツ暗号化/復号装置、データ構造及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、連続視聴的メディアデータをスクランブルし、そのスクランブル・メディアデータを送信するコンテンツ暗号化装置であって、
連続視聴的メディアデータを、複数のユニットに分割するユニット分割手段と、
ユニット毎に、鍵情報を生成する鍵情報生成手段と、
第1のユニットに対する第1の鍵情報を用いて、第1のユニットのメディアデータをスクランブルするスクランブル処理手段と、
スクランブルされた第1のユニットのメディアデータに、第2のユニットに対する第2の鍵情報を埋め込む電子透かし挿入手段と
を有し、複数のユニットを連続的に送信することを特徴とする。これを、第1の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置とする。
【0014】
本発明によれば、連続視聴的メディアデータをスクランブルし、そのスクランブル・メディアデータを送信するコンテンツ暗号化装置であって、
連続視聴的メディアデータを、複数のユニットに分割するユニット分割手段と、
ユニット毎に、鍵情報を生成する鍵情報生成手段と、
第1のユニットのメディアデータに、第2のユニットに対する第2の鍵情報を埋め込む電子透かし挿入手段と、
第1のユニットに対する第1の鍵情報を用いて、第1のユニットのメディアデータをスクランブルするスクランブル処理手段と
を有し、複数のユニットを連続的に送信することを特徴とする。これを、第2の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置とする。
【0015】
本発明のコンテンツ暗号化装置における他の実施形態によれば、
メディアデータは、MPEG(Moving Picture Experts Group)符号化データであり、
電子透かし挿入手段は、
MPEG符号化データから、テンプレートに応じて、ブロックを選択する手段と、
選択されたブロックを復号し、逆量子化し、テンプレートに応じて埋め込み位置を抽出する手段と、
抽出された埋め込み位置に、鍵情報を埋め込む手段と、
鍵情報が埋め込まれたブロックを、量子化し、符号化する手段と
を有することも好ましい。
【0016】
本発明によれば、第1の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置から送信された、連続視聴的メディアデータを受信するコンテンツ復号装置であって、
ユニット毎に、メディアデータから鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
第1のユニットのメディアデータから抽出された第2の鍵情報を用いて、第2のユニットのメディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と
を有し、連続視聴的メディアデータを出力することを特徴とする。これを、第1の実施形態に基づくコンテンツ復号装置とする。
【0017】
本発明によれば、第2の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置から送信された、連続視聴的メディアデータを受信するコンテンツ復号装置であって、
第1のユニットのメディアデータから抽出された第2の鍵情報を用いて、第2のユニットのメディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、
ユニット毎に、スクランブルが解除されたメディアデータから鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
を有し、連続視聴的メディアデータを出力することを特徴とする。これを、第2の実施形態に基づくコンテンツ復号装置とする。
【0018】
本発明のコンテンツ復号装置における他の実施形態によれば、
メディアデータは、MPEG符号化データであり、
電子透かし抽出手段は、
MPEG符号化データから、テンプレートに応じて、ブロックを選択する手段と、
選択されたブロックを復号し、逆量子化し、テンプレートに応じて埋め込み位置を抽出する手段と、
抽出された埋め込み位置から、鍵情報を抽出する抽出手段と、
を有することも好ましい。
【0019】
本発明によれば、第1の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置と、第1の実施形態に基づくコンテンツ復号装置との間で転送される連続視聴的メディアデータのデータ構造であって、
連続視聴的メディアデータは、複数のユニットに分割されており、
第1のユニットのメディアデータは、第1の鍵情報を用いてスクランブルされており、
第2のユニットのメディアデータは、第2の鍵情報を用いてスクランブルされており、
スクランブルされた第1のユニットのメディアデータには、第2の鍵情報が電子透かしによって埋め込まれている
ことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、第2の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置と、第2の実施形態に基づくコンテンツ復号装置との間で転送される連続視聴的メディアデータのデータ構造であって、
連続視聴的メディアデータは、複数のユニットに分割されており、
第1のユニットのメディアデータには、第2の鍵情報が電子透かしによって埋め込まれており、
第2の鍵情報が埋め込まれた第1のユニットのメディアデータは、第1の鍵情報を用いてスクランブルされており、
第2のユニットのメディアデータは、第2の鍵情報を用いてスクランブルされている
ことを特徴とする。
【0021】
本発明の連続視聴的メディアデータのデータ構造における他の実施形態によれば、
ユニットは、所定時間長毎、所定データ長毎、又は不定長の意味的単位毎に、分割されていることも好ましい。
【0022】
本発明の連続視聴的メディアデータのデータ構造における他の実施形態によれば、
複数のユニット毎に、スクランブルのための鍵情報が異なっていることも好ましい。
【0023】
本発明によれば、連続視聴的メディアデータを送信する装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ暗号化プログラムであって、
連続視聴的メディアデータを、複数のユニットに分割するユニット分割手段と、
ユニット毎に、鍵情報を生成する鍵情報生成手段と、
第1のユニットに対する第1の鍵情報を用いて、第1のユニットのメディアデータをスクランブルするスクランブル処理手段と、
スクランブルされた第1のユニットのメディアデータに、第2のユニットに対する第2の鍵情報を埋め込む電子透かし挿入手段と
してコンピュータを機能させ、複数のユニットを連続的に送信することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、連続視聴的メディアデータを送信する装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ暗号化プログラムであって、
連続視聴的メディアデータを、複数のユニットに分割するユニット分割手段と、
ユニット毎に、鍵情報を生成する鍵情報生成手段と、
第1のユニットのメディアデータに、第2のユニットに対する第2の鍵情報を埋め込む電子透かし挿入手段と、
第1のユニットに対する第1の鍵情報を用いて、第1のユニットのメディアデータをスクランブルするスクランブル処理手段と
してコンピュータを機能させ、複数のユニットを連続的に送信することを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、第1の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置から送信された、連続視聴的メディアデータを受信する装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ復号プログラムであって、
ユニット毎に、メディアデータから鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
第1のユニットのメディアデータから抽出された第2の鍵情報を用いて、第2のユニットのメディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と
してコンピュータを機能させ、連続視聴的メディアデータを出力することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、第2の実施形態に基づくコンテンツ暗号化装置から送信された、連続視聴的メディアデータを受信する装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ復号プログラムであって、
第1のユニットのメディアデータから抽出された第2の鍵情報を用いて、第2のユニットのメディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、
ユニット毎に、スクランブルが解除されたメディアデータから鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
してコンピュータを機能させ、連続視聴的メディアデータを出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の連続視聴的メディアデータのコンテンツ暗号化/復号装置、データ構造及びプログラムによれば、連続視聴的メディアデータについて、先のストリーミングデータに、後のストリーミングデータの鍵情報が埋め込まれているので、必ず連続的に視聴させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下では、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0029】
図2は、本発明におけるスクランブルと鍵情報との第1の関係を表す説明図である。
【0030】
(S201)最初に、連続視聴的メディアデータを、複数のユニットに分割する。例えば、所定時間長毎、所定データ長毎、又は不定長の意味的単位毎に、分割されていてもよい。具体的には、MPEG符号化データのGOP(Group Of Picture)単位に分割してもよい。また、テレビ番組本編部分、コマーシャル部分、シーンカット部分のような意味的部分単位毎に、分割してもよい。講義録であれば、各章毎であってもよい。S201によれば、第1のユニットの最初の部分を検出する。
(S202)次に、第1のユニット対する第1の鍵情報が生成される。これは、乱数によって生成されるものでもよい。
(S203)次に、第1の鍵情報を用いて、第1のユニットのメディアデータがスクランブルされる。これにより、第1のユニットのメディアデータは、秘匿性を確保する。
(S204)第1の鍵情報は、最初に、従来技術と同じ方法によって送信される。
【0031】
(S205)次に、第2のユニットを検出する。
(S206)次に、第2のユニットに対する第2の鍵情報が生成される。
(S207)次に、第2の鍵情報を用いて、第2のユニットのメディアデータがスクランブルされる。これにより、第2のユニットのメディアデータは、秘匿性を確保する。
(S208)次に、第2の鍵情報は、電子透かしによって、第1のユニットのスクランブルされたメディアデータに埋め込まれる。
【0032】
(S209)次に、第3のユニットを検出する。
(S210)次に、第3のユニットに対する第3の鍵情報が生成される。
(S211)次に、第3の鍵情報を用いて、第3のユニットのメディアデータがスクランブルされる。これにより、第3のユニットのメディアデータは、秘匿性を確保する。
(S212)次に、第3の鍵情報は、電子透かしによって、第2のユニットのスクランブルされたメディアデータに埋め込まれる。
【0033】
(S213〜S216)以後、前述したフローを繰り返す。
【0034】
(S217)他の実施形態として、複数のユニット毎に、スクランブルのための鍵情報が異なっていてもよい。即ち、1つの鍵情報が、後続の複数のユニットに対する鍵情報であってもよい。
【0035】
(S218)更に、他の実施形態として、例えば複数のシナリオを含む映像コンテンツの場合、シナリオの分岐点に当たるユニットに、複数の鍵を埋め込むこともできる。これにより、分岐したどのユニットの再生でも可能なように連鎖させることもできる。
【0036】
図3は、本発明における第1のシステム構成図である。
【0037】
図3のシステムは、図1と比較して、コンテンツ配信サーバ1へメディアデータを送信するコンテンツ暗号化装置6と、セットトップボックス(通信端末装置)2に接続されるコンテンツ復号装置7とを備えている。コンテンツ配信サーバ1及びセットトップボックス2は、通信事業者によって提供されるのに対し、コンテンツ暗号化装置6及びコンテンツ復号装置7は、コンテンツ作成事業者(著作権者)によって管理されるものであってもよい。
【0038】
コンテンツ暗号化装置6に対して、連続視聴的な原メディアデータが入力される。原メディアデータは、例えばMPEG方式に基づく。コンテンツ暗号化装置6は、ユニット分割部61と、鍵情報生成部62と、スクランブル処理部63と、電子透かし挿入部64と、メディアデータ送信部65とを有する。これら機能部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ暗号化プログラムを実行することによって実現できる。
【0039】
ユニット分割部61は、連続視聴的メディアデータを、複数のユニットに分割する。
【0040】
鍵情報生成部62は、ユニット毎に、乱数を用いて鍵情報を生成する。複数の鍵情報は、スクランブル処理部63及び電子透かし挿入部64に通知される。ここで、後のユニットにおける鍵情報は、先のユニットにおける鍵情報と異なる。
【0041】
乱数生成の際に用いるシードとして、具体的には、乱数値生成時点での時刻を用いることによって、異なる乱数値を生成する方法がある。又は、鍵付きハッシュ関数HMACを用いる方法もある。この方法は、そのHMACへの入力として、先のユニットの鍵情報から生成した乱数値を入力し、ユニット毎に高度にランダム化された鍵情報を生成することができる。
【0042】
スクランブル処理部63は、ユニット毎に、鍵情報生成部62から通知された鍵情報を用いて、原メディアデータをスクランブルする。スクランブル処理部63は、ユニット毎のスクランブル・メディアデータを、電子透かし挿入部64へ出力する。
【0043】
電子透かし挿入部64は、先のユニットのスクランブル・メディアデータに、後のユニットにおける鍵情報を、電子透かしで埋め込む。電子透かしとは、メディアデータに別の情報を埋め込む技術であって、一般に、人間の認識特性を活用して、人間に認識できないように埋め込まれる。
【0044】
メディアデータがMPEG符号化データである場合、電子透かし挿入部64は、テンプレートに応じてブロックを選択し、そのブロックを復号し、逆量子化し、そのテンプレートに応じて埋め込み位置を抽出するものであってもよい。テンプレートで限定的な数のマクロブロック及びその位置に、鍵情報を埋め込むために、透かしデータの埋め込み及び抽出についての演算量を少なくすることができる。鍵情報が埋め込まれたブロックは、更に、量子化し、符号化されて、メディアデータ送信部65へ出力される。
【0045】
尚、連続視聴的なメディアデータであるので、後のユニットの再生が開始される前までの所定時間を確保して、先のユニットの前方部分に鍵情報を埋め込む。所定時間とは、コンテンツ復号装置について、鍵情報を抽出し、後のユニットにおけるスクランブル解除の用意ができるまでの時間である。
【0046】
メディアデータ送信部65は、連続視聴的なスクランブル・メディアデータをコンテンツ配信サーバ1へ送信する。尚、コンテンツ暗号化装置6は、ネットワーク5に接続されている場合、そのネットワーク5を介してコンテンツ配信サーバ1へ、鍵情報が埋め込まれたスクランブル・メディアデータを送信するように構成されていてもよい。
【0047】
コンテンツ復号装置7は、電子透かし抽出部71と、スクランブル解除部72と、メディアデータ出力部73とを有する。これら機能部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ復号プログラムを実行することによって実現できる。
【0048】
電子透かし抽出部71は、セットトップボックス2から、連続視聴的なスクランブル・メディアデータを受信する。このスクランブル・メディアデータは、圧縮データである。電子透かし抽出部71は、スクランブル・メディアデータから、ユニット毎に、電子透かしによって鍵情報を抽出する。第1のユニットのメディアデータからは、第2のユニットの第2の鍵情報が抽出される。電子透かし抽出部71は、抽出した鍵情報を、スクランブル解除部72へ出力する。
【0049】
スクランブル解除部72は、セットトップボックス2からのスクランブル・メディアデータを受信する。また、スクランブル解除部72には、電子透かし抽出部71から、ユニット毎の鍵情報が入力される。そして、スクランブル解除部72は、スクランブル・メディアデータのユニット毎に、異なる鍵情報を用いて、スクランブルを解除する。即ち、第2のユニットのメディアデータは、先にスクランブルが解除された第1のユニットに埋め込まれていた第2の鍵情報を用いて、スクランブルが解除される。スクランブルが解除された原メディアデータは、メディアデータ出力部73へ出力される。
【0050】
メディアデータ出力部73は、原メディアデータを、テレビ3及びオーディオ装置4のような再生装置へ出力する。
【0051】
ここで、スクランブル解除部72は、鍵情報が埋め込まれたユニットのスクランブル・メディアデータに対して、鍵情報を用いてスクランブルを解除する。従って、コンテンツ暗号化装置6のスクランブル処理部63に入力された原メディアデータと、スクランブル解除部72から出力された原メディアデータとは、鍵情報が透かしで挿入された部分について100%完全に復元されない。しかしながら、透かしで挿入されているために、テレビ3及びオーディオ装置4のような再生装置で再生される際に、人間には認識されない。
【0052】
図4は、本発明におけるスクランブルと鍵情報との第2の関係を表す説明図である。
【0053】
図4によれば、第1の原メディアデータに、第2の鍵情報を電子透かしによって埋め込んだ後、そのメディアデータ全体を第1の鍵情報によってスクランブルしている。即ち、図2は、原メディアデータをスクランブルした後に、鍵情報を埋め込んでいるのに対し、図4は、原メディアデータに鍵情報を埋め込んだ後に、メディアデータ全体をスクランブルしている。
【0054】
(S401〜S406)図2のS201〜S206と全く同様である。
(S407)次に、第2の鍵情報が、電子透かしによって、第1のユニットの原メディアデータに埋め込まれる。
(S408)次に、第1の鍵情報を用いて、第2の鍵情報が埋め込まれた第1のユニットのメディアデータがスクランブルされる。これにより、第1のユニットのメディアデータは、秘匿性を確保する。
【0055】
(S409)次に、第3のユニットを検出する。
(S410)次に、第3のユニットに対する第3の鍵情報が生成される。
(S411)次に、第3の鍵情報が、電子透かしによって、第2のユニットの原メディアデータに埋め込まれる。
(S412)次に、第2の鍵情報を用いて、第3の鍵情報が埋め込まれた第2のユニットのメディアデータがスクランブルされる。これにより、第2のユニットのメディアデータは、秘匿性を確保する。
【0056】
(S413〜S416)以後、前述したフローを繰り返す。
【0057】
図5は、本発明における第2のシステム構成図である。
【0058】
図5によれば、図3と比較して、コンテンツ暗号化装置6におけるスクランブル処理部63及び電子透かし挿入部64が、入れ替わっている。図3は、スクランブル処理部63によって原メディアデータをスクランブルした後に、電子透かし挿入部64によって鍵情報を埋め込んでいる。これに対し、図5は、電子透かし挿入部64によって原メディアデータに鍵情報を埋め込んだ後に、スクランブル処理部63によってメディアデータ全体をスクランブルしている。
【0059】
同様に、図5によれば、図3と比較して、コンテンツ復号装置7における電子透かし抽出部71及びスクランブル解除部72が、入れ替わっている。図3は、電子透かし抽出部71によって鍵情報を取得した後に、スクランブル解除部72によってスクランブルを解除している。これに対し、図5は、スクランブル解除部72によってスクランブルを解除した後に、電子透かし抽出部71によって鍵情報を取得している。
【0060】
図6は、本発明におけるコンテンツ暗号化装置の電子透かし挿入部の機能構成図である。
【0061】
図6によれば、電子透かし挿入部64は、メモリ部641と、マクロブロック抽出部642と、テンプレート部643と、可変長復号部644と、逆量子化部645と、DCT(Discrete Cosine Transform)係数抽出部646と、透かし埋め込み部647と、量子化部648と、可変長符号化部649とを有する。これら機能部は、コンテンツ暗号化装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現できる。
【0062】
メディアデータから、例えばMPEG符号化されたフレームFn-1,Fn,Fn+1,・・・が順次読み出され、複数のフレームが、メモリ部641に一時的に蓄積される。
【0063】
マクロブロック抽出部642は、テンプレート部643からの指示に基づいて、メモリ部641から、透かしデータを埋め込むべきブロック(マクロブロック)を抽出する。テンプレート部643には、マクロブロックを抽出するパターンが複数用意されており、フレーム毎に異なるマクロブロック抽出パターンが適用される。そのパターンの適用が一巡した場合には、再度同じパターンをサイクリックに適用することができる。
【0064】
可変長復号部644は、抽出されたマクロブロックを可変長復号する。次に、逆量子化部645は、復号されたブロックを逆量子化し、DCT係数を再生する。DCT係数とは、画像のマクロブロックデータに離散コサイン変換(周波数分解)した数値をいう。
【0065】
DCT係数抽出部646は、透かしデータを埋め込む位置のDCT係数を、テンプレート部643の指示に応じて抽出する。DCT係数の中で、冗長な成分(削除しても画質等に影響を与えない高周波成分)の部分を抽出する。
【0066】
透かし埋め込み部647は、抽出されたDCT係数に、鍵情報を透かしデータとして埋め込む。DCT係数の中で、冗長な成分の部分に、鍵情報を埋め込むために、人間に認識されにくい。
【0067】
埋め込み対象のDCT係数値の量子化ステップサイズがΔであるとき、そのΔを埋め込み対象のDCT係数値に絶対値が大きくなる方向に加算する。又は、変更した結果がより低ビットレートで符号化する際に適用される量子化ステップサイズがΔ’である場合には、そのΔ’を埋め込み対象のDCT係数値に絶対値が大きくなる方向に加算する。
【0068】
例えば、埋め込み対象のDCT係数値がAであるとき、その量子化レベル値A’の絶対値に、Δ又はΔ’を加算する。尚、「変更した結果がより低ビットレートの符号化をする際に適用される量子化ステップサイズがΔ’」とは、例えば光ファイバ通信路向けの高ビットレート画像データを電話回線向けの低ビットレート画像データに変換する場合の符号化処理が考えられる。
【0069】
量子化部648は、鍵情報が埋め込まれたメディアデータを再量子化する。次に、可変長符号化部649は、そのメディアデータを可変長符号化し、MPEGのビットストリームに整形して出力する。
【0070】
図7は、本発明におけるコンテンツ復号装置の電子透かし抽出部の機能構成図である。
【0071】
図7によれば、電子透かし抽出部71は、メモリ部711と、マクロブロック抽出部712と、テンプレート部713と、可変長復号部714と、逆量子化部715と、DCT係数抽出部716と、透かし抽出部717とを有する。これら機能部は、コンテンツ復号装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現できる。
【0072】
メモリ部711と、マクロブロック抽出部712と、テンプレート部713と、可変長復号部714と、逆量子化部715と、DCT係数抽出部716とは、前述した図6の説明と同様の処理をする。即ち、コンテンツ復号装置7のテンプレート部713と、コンテンツ暗号化装置6のテンプレート部643とは、同じテンプレートを用いるために、鍵情報が埋め込まれたマクロブロック及びDCT係数を特定することができる。透かし抽出部717は、抽出されたDCT係数から、鍵情報を透かしデータとして抽出する。即ち、透かし抽出部717は、コンテンツ暗号化装置6の透かし埋め込み部647と逆の処理をする。
【0073】
図6及び図7によれば、テンプレートで限定的な数のマクロブロック及びDCT係数に、鍵情報を埋め込むだけであるので、透かしデータの埋め込み及び抽出についての演算量を少なくすることができる。
【0074】
以上、詳細に説明したように、本発明の連続視聴的メディアデータのコンテンツ暗号化/復号装置、データ構造及びプログラムによれば、連続視聴的メディアデータについて、先のストリーミングデータに、後のストリーミングデータの鍵情報が埋め込まれているので、必ず連続的に視聴させることができる。
【0075】
前述した本発明における種々の実施形態によれば、本発明の技術思想及び見地の範囲における種々の変更、修正及び省略を、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】従来技術におけるシステム構成図である。
【図2】本発明におけるスクランブルと鍵情報との第1の関係を表す説明図である。
【図3】本発明における第1のシステム構成図である。
【図4】本発明におけるスクランブルと鍵情報との第2の関係を表す説明図である。
【図5】本発明における第2のシステム構成図である。
【図6】本発明におけるコンテンツ暗号化装置の電子透かし挿入部の機能構成図である。
【図7】本発明におけるコンテンツ復号装置の電子透かし抽出部の機能構成図である。
【符号の説明】
【0077】
1 コンテンツ配信サーバ
2 セットトップボックス
3 テレビ
4 オーディオ装置
5 ネットワーク
6 コンテンツ暗号化装置
61 ユニット分割部
62 鍵情報生成部
63 スクランブル処理部
64 電子透かし挿入部
641 メモリ部
642 マクロブロック抽出部
643 テンプレート部
644 可変長復号部
645 逆量子化部
646 DCT係数抽出部
647 透かし埋め込み部
648 量子化部
649 可変長符号化部
65 メディアデータ送信部
7 コンテンツ復号装置
71 透かし抽出部
711 メモリ部
712 マクロブロック抽出部
713 テンプレート部
714 可変長復号部
715 逆量子化部
716 DCT係数抽出部
717 透かし抽出部
72 スクランブル解除部
73 メディアデータ出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続視聴的メディアデータをスクランブルし、そのスクランブル・メディアデータを送信するコンテンツ暗号化装置であって、
前記連続視聴的メディアデータを、複数のユニットに分割するユニット分割手段と、
前記ユニット毎に、鍵情報を生成する鍵情報生成手段と、
第1のユニットに対する第1の鍵情報を用いて、第1のユニットのメディアデータをスクランブルするスクランブル処理手段と、
スクランブルされた第1のユニットのメディアデータに、第2のユニットに対する第2の鍵情報を埋め込む電子透かし挿入手段と
を有し、前記複数のユニットを連続的に送信することを特徴とするコンテンツ暗号化装置。
【請求項2】
連続視聴的メディアデータをスクランブルし、そのスクランブル・メディアデータを送信するコンテンツ暗号化装置であって、
前記連続視聴的メディアデータを、複数のユニットに分割するユニット分割手段と、
前記ユニット毎に、鍵情報を生成する鍵情報生成手段と、
第1のユニットのメディアデータに、第2のユニットに対する第2の鍵情報を埋め込む電子透かし挿入手段と、
第1のユニットに対する第1の鍵情報を用いて、第1のユニットのメディアデータをスクランブルするスクランブル処理手段と
を有し、前記複数のユニットを連続的に送信することを特徴とするコンテンツ暗号化装置。
【請求項3】
前記メディアデータは、MPEG(Moving Picture Experts Group)符号化データであり、
前記電子透かし挿入手段は、
前記MPEG符号化データから、テンプレートに応じて、ブロックを選択する手段と、
選択された前記ブロックを復号し、逆量子化し、前記テンプレートに応じて埋め込み位置を抽出する手段と、
抽出された前記埋め込み位置に、前記鍵情報を埋め込む手段と、
前記鍵情報が埋め込まれたブロックを、量子化し、符号化する手段と
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンテンツ暗号化装置。
【請求項4】
請求項1に記載のコンテンツ暗号化装置から送信された、前記連続視聴的メディアデータを受信するコンテンツ復号装置であって、
前記ユニット毎に、メディアデータから鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
第1のユニットのメディアデータから抽出された第2の鍵情報を用いて、第2のユニットのメディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と
を有し、連続視聴的メディアデータを出力することを特徴とするコンテンツ復号装置。
【請求項5】
請求項2に記載のコンテンツ暗号化装置から送信された、前記連続視聴的メディアデータを受信するコンテンツ復号装置であって、
第1のユニットのメディアデータから抽出された第2の鍵情報を用いて、第2のユニットのメディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、
前記ユニット毎に、スクランブルが解除されたメディアデータから鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
を有し、連続視聴的メディアデータを出力することを特徴とするコンテンツ復号装置。
【請求項6】
前記メディアデータは、MPEG符号化データであり、
前記電子透かし抽出手段は、
前記MPEG符号化データから、テンプレートに応じて、ブロックを選択する手段と、
選択された前記ブロックを復号し、逆量子化し、前記テンプレートに応じて埋め込み位置を抽出する手段と、
抽出された前記埋め込み位置から、前記鍵情報を抽出する抽出手段と、
を有することを特徴とする請求項4又は5に記載のコンテンツ復号装置。
【請求項7】
請求項1に記載のコンテンツ暗号化装置と、請求項4に記載のコンテンツ復号装置との間で転送される連続視聴的メディアデータのデータ構造であって、
前記連続視聴的メディアデータは、複数のユニットに分割されており、
第1のユニットのメディアデータは、第1の鍵情報を用いてスクランブルされており、
第2のユニットのメディアデータは、第2の鍵情報を用いてスクランブルされており、
スクランブルされた第1のユニットのメディアデータには、第2の鍵情報が電子透かしによって埋め込まれている
ことを特徴とする連続視聴的メディアデータのデータ構造。
【請求項8】
請求項2に記載のコンテンツ暗号化装置と、請求項5に記載のコンテンツ復号装置との間で転送される連続視聴的メディアデータのデータ構造であって、
前記連続視聴的メディアデータは、複数のユニットに分割されており、
第1のユニットのメディアデータには、第2の鍵情報が電子透かしによって埋め込まれており、
第2の鍵情報が埋め込まれた第1のユニットのメディアデータは、第1の鍵情報を用いてスクランブルされており、
第2のユニットのメディアデータは、第2の鍵情報を用いてスクランブルされている
ことを特徴とする連続視聴的メディアデータのデータ構造。
【請求項9】
前記ユニットは、所定時間長毎、所定データ長毎、又は不定長の意味的単位毎に、分割されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の連続視聴的メディアデータのデータ構造。
【請求項10】
複数の前記ユニット毎に、前記スクランブルのための鍵情報が異なっていることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の連続視聴的メディアデータのデータ構造。
【請求項11】
連続視聴的メディアデータを送信する装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ暗号化プログラムであって、
前記連続視聴的メディアデータを、複数のユニットに分割するユニット分割手段と、
前記ユニット毎に、鍵情報を生成する鍵情報生成手段と、
第1のユニットに対する第1の鍵情報を用いて、第1のユニットのメディアデータをスクランブルするスクランブル処理手段と、
スクランブルされた第1のユニットのメディアデータに、第2のユニットに対する第2の鍵情報を埋め込む電子透かし挿入手段と
してコンピュータを機能させ、前記複数のユニットを連続的に送信することを特徴とするコンテンツ暗号化プログラム。
【請求項12】
連続視聴的メディアデータを送信する装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ暗号化プログラムであって、
前記連続視聴的メディアデータを、複数のユニットに分割するユニット分割手段と、
前記ユニット毎に、鍵情報を生成する鍵情報生成手段と、
第1のユニットのメディアデータに、第2のユニットに対する第2の鍵情報を埋め込む電子透かし挿入手段と、
第1のユニットに対する第1の鍵情報を用いて、第1のユニットのメディアデータをスクランブルするスクランブル処理手段と
してコンピュータを機能させ、前記複数のユニットを連続的に送信することを特徴とするコンテンツ暗号化プログラム。
【請求項13】
請求項1から3のいずれか1項に記載のコンテンツ暗号化装置から送信された、前記連続視聴的メディアデータを受信する装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ復号プログラムであって、
前記ユニット毎に、メディアデータから鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
第1のユニットのメディアデータから抽出された第2の鍵情報を用いて、第2のユニットのメディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と
してコンピュータを機能させ、連続視聴的メディアデータを出力することを特徴とするコンテンツ復号プログラム。
【請求項14】
請求項4から6のいずれか1項に記載のコンテンツ暗号化装置から送信された、前記連続視聴的メディアデータを受信する装置に搭載されたコンピュータを機能させるコンテンツ復号プログラムであって、
第1のユニットのメディアデータから抽出された第2の鍵情報を用いて、第2のユニットのメディアデータのスクランブルを解除するスクランブル解除手段と、
前記ユニット毎に、スクランブルが解除されたメディアデータから鍵情報を抽出する電子透かし抽出手段と、
してコンピュータを機能させ、連続視聴的メディアデータを出力することを特徴とするコンテンツ復号プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−278391(P2008−278391A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122115(P2007−122115)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】