説明

遊技機

【課題】回胴演出を行う遊技機において、電源投入直後の回胴の動きが不安定になることを防止する。
【解決手段】回胴回転停止時(励磁パターン更新停止時)の励磁パターンを記憶し、電源断の際にバックアップしておく。電源投入直後において、回胴演出を行う際は記憶した励磁パターンを参照し、当該励磁パターンに対応する励磁パターンを開始位置とし、そこから励磁パターンの切り替えを開始する。記憶した励磁パターンを読み出せないときは回胴演出を禁止するが、遊技を行うための前記回胴の回転は許可する。これにより、回胴演出時に回胴の動きが不安定になることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回胴(リール)とそれを回転駆動するステッピングモータを備えるスロットマシンなどの遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から外周面に図柄が配列された複数の回胴を備えた遊技機(回胴式遊技機、スロットマシン)が知られている。この種の遊技機は、遊技媒体(メダル)に対して一定の遊技価値を付与し、このような遊技媒体を獲得するための遊技を行うものである。また、この種の遊技機は、遊技者の回転開始操作を契機として、内部抽選を行うとともに複数の回胴の回転を開始させ、遊技者の停止操作を契機として、内部抽選の結果に応じた態様で複数の回胴を停止させる制御を行っている。そして、遊技の結果は、複数の回胴が停止した状態における入賞判定ライン上に表示された図柄組合せによって判定され、遊技の結果に応じてメダル等の払い出しなどが行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スロットマシンの中には、内部当選を報知する際に回胴を動かすものがある。通常、回胴はスタートスイッチの押下による遊技の開始で回転し、ストップスイッチの押下で停止するものであるが、回胴による演出機能を備えるスロットマシンでは、スタートスイッチ押下からストップボタン押下までの期間、より正確に言えばスタートスイッチ押下から回胴が定常回転になるまでの期間において、各回胴を不規則に上下に動かすなどの特殊な動作を行うことで、内部当選を報知することがある(通常遊技における回胴の動きは一方向かつ一定速度の規則的なものであるから、演出による回胴の動きとは容易に区別することができる)。このようなリールの動作は、回胴演出と呼ばれる。
なお、全ての回胴が停止した後から次回遊技に係るメダル投入受け付け開始までの間に上記回胴演出が行われるようにすることもできる。
【0004】
回胴の動き(回転)は、具体的には所定の励磁パターンでステッピングモータを駆動することで実現される(詳細は後述する)。励磁パターンとモータの回転位置(ロータの位置)の間には特定の関係があり、この関係に従って予め定められた励磁パターンを使用する。
【0005】
ところで、停止していた回胴を再び回転させるために所定の励磁パターンでモータを駆動する際において、停止時の励磁パターンと回転開始時の励磁パターンが一致しないとモータがスムーズに動かない。ステッピングモータにおいて、負荷が大きすぎたり、パルス周波数が高すぎると同期が外れて制御が乱れる、いわゆる「脱調」現象が知られている。つまり、励磁パターンの変化とステッピングモータのロータの回転とが一致していればスムーズに動くが、不一致であるとスムーズに動かなくなる。これは、ステッピングモータの制御回路はフィードバック回路を備えずオープンループ制御を行っており、励磁パターンとロータの位置に不一致が生じてもこれを知ることができないためである。同様に、起動の際に、停止状態において本来与えられるべき励磁パターンと実際の与えられた励磁パターンが不一致であると、動きに乱れが生じてスムーズに動かないのである。
【0006】
例えば、前回の回胴の停止時において図12(a)のステップ6の励磁パターンであるときに、回胴演出の開始時において同図(b)のステップ4の励磁パターンが選択されるのであればモータはスムーズに起動するが、他の励磁パターンが選択され、それが回転開始時の励磁パターンであると、モータがぶるぶると震えるようになりスムーズに起動しない。時間が経過して励磁パターンが順次切り替えられるといずれ同図(b)の4の励磁パターンになり、やがて回転開始するので回胴が起動しない、ということはない。しかし、その間において回胴が回転しないように見えるため、遊技者に不審に思われるおそれがある。ひいては興趣が失われることになりかねない。
【0007】
従来の回胴演出を行わない遊技機においては、回胴制御を行う処理はひとつ(遊技に関する回胴制御プログラム)だけであったので、直前の停止の際の励磁パターンからスタートして回胴を回転させることは容易であった。しかし、回胴演出を行う遊技機においては、回胴制御を行う処理は、遊技に関する回胴制御プログラムと回胴演出プログラムの複数存在する(図12に示すように複数の励磁パターン群が存在する)。これらの処理においてそれぞれ任意の励磁パターンから回胴の回転を開始するようにするとそれは停止時の励磁パターンと必ずしも一致せず、上述のような問題が生じることになる。つまり、遊技機が回胴演出を行うようになって、上記の回胴起動時の問題が生じるようになった。このような現象は、例えば電源投入の直後においてバックアップデータの異常が判明したときなどに生じる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、回胴演出を行う遊技機において、遊技開始時及び/又は回胴演出開始時の回胴の動きをスムーズにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、複数の回胴を含むリールユニットと、前記複数の回胴をそれぞれ回転させる複数のモータと、前記複数の回胴の回転を開始させるためのスタートスイッチと、前記複数のモータにそれぞれ予め定められた励磁パターンの駆動信号を与えて前記複数の回胴を回転させる回胴制御手段と、前記スタートスイッチからのスタート信号に基づいて役の当否を決定する内部抽選を行う内部抽選手段と、を備える遊技機において、
前記回胴制御手段は、遊技を行うために前記複数の回胴を回転させるとともに、前記回胴の動作態様により所定の演出を行う回胴演出を行うものであり、
予め定められた遊技用の励磁パターンを記憶する遊技用励磁パターン記憶部と、
予め定められた前記回胴演出用の励磁パターンを記憶する回胴演出用励磁パターン記憶部と、
前記回胴の停止時の励磁パターンを記憶する停止時励磁パターン記憶部とを備え、
前記回胴制御手段は、
前記停止時励磁パターン記憶部から前記励磁パターンを読み出し、読み出した当該励磁パターンに基づき前記回胴演出を行うか、又は、遊技を行うために当該励磁パターンに基づき前記回胴を回転させ、
前記停止時励磁パターン記憶部から励磁パターンを読み出せないときは、前記回胴演出を禁止するが、遊技を行うための前記回胴の回転は許可することを特徴とするものである。
【0010】
少なくとも、前記停止時励磁パターン記憶部は、遊技機の電源断時において記憶内容が保持されるものであり、
電源投入時において、少なくとも前記停止時励磁パターン記憶部の記憶内容が検査され、当該検査の結果、前記記憶内容に異常があったときは前記停止時励磁パターン記憶部から前記励磁パターンを読み出せないとするようにしてもよい。
【0011】
前記回胴制御手段は、
(1)前記回胴演出を行うときに、前記停止時励磁パターン記憶部から励磁パターンを読み出し、読み出した当該励磁パターンと一致する励磁パターンを前記回胴演出用励磁パターン記憶部から検索し、検索した当該励磁パターンを開始位置として前記回胴演出用の励磁パターンに基づき前記モータを駆動して前記回胴を回転させ、
(2)遊技を行うために前記回胴を回転させるときに、前記停止時励磁パターン記憶部から励磁パターンを読み出し、読み出した当該励磁パターンと一致する励磁パターンを前記遊技用励磁パターン記憶部から検索し、検索した当該励磁パターンを開始位置として前記遊技用の励磁パターンに基づき前記モータを駆動して前記回胴を回転させるようにしてもよい。
【0012】
前記遊技用励磁パターン記憶部に含まれる励磁パターンと前記回胴演出用励磁パターン記憶部に含まれる励磁パターンの対応関係を予め記憶している励磁パターン変換テーブルを備え、
前記停止時励磁パターン記憶部は、前記回胴の停止時の励磁パターンの識別情報を記憶し、
前記回胴制御手段は、
(1’)前記回胴演出を行うときに、前記停止時励磁パターン記憶部から前記識別情報を読み出し、読み出した当該識別情報に基づき前記励磁パターン変換テーブルを参照して前記回胴演出用励磁パターン記憶部の励磁パターンを特定し、特定した当該励磁パターンを開始位置として前記回胴演出用の励磁パターンに基づき前記モータを駆動して前記回胴を回転させ、
(2’)遊技を行うために前記回胴を回転させるときに、前記停止時励磁パターン記憶部から前記識別情報を読み出し、読み出した当該識別情報に基づき前記励磁パターン変換テーブルを参照して前記遊技用励磁パターン記憶部の励磁パターンを特定し、特定した当該励磁パターンを開始位置として前記遊技用の励磁パターンに基づき前記モータを駆動して前記回胴を回転させるようにしてもよい。
【0013】
前記回胴演出用励磁パターン記憶部の励磁パターンは、前記遊技用励磁パターン記憶部による前記モータの回転とは逆方向の回転を行わせる励磁パターンを含んでもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、回胴回転停止時のモータの励磁パターンを記憶し、回胴を再度回転させる際に、停止時の励磁パターンに対応する励磁パターンを開始位置とし、そこから励磁パターンの切り替えを開始するとともに、停止時の励磁パターンを読み出せないときには回胴演出を禁止するので、回胴演出の回転開始時に回胴の動きが不自然になることがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】前扉を閉めた状態を示すスロットマシンの正面図である。
【図2】前扉を180度開いた状態を示すスロットマシンの正面図である。
【図3】スロットマシンのブロック図である。
【図4】メイン基板のハードウエア構成の説明図である。
【図5】発明の実施の形態に係る回胴停止時の励磁パターン記憶処理と、メモリバックアップ処理の説明図である。
【図6】発明の実施の形態に係る遊技機の動作フローチャートである。
【図7】設定変更処理フローチャートである。
【図8】スロットマシンのリールユニットを示す斜視図である。
【図9】スロットマシンのリールユニットを構成する回胴の構造を示す斜視図である。
【図10】スロットマシンのステッピングモータの駆動回路のブロック図である。
【図11】発明の実施の形態に係る励磁パターン制御部のブロック図である。
【図12】図12(a)は発明の実施の形態に係る遊技用励磁パターン、(b)は発明の実施の形態に係る回胴演出用励磁パターンの説明図である。
【図13】遊技処理の概要を示すフローチャートである。
【図14】発明の実施の形態に係る回胴演出処理のフローチャート(図13のS4のサブルーチン)である。
【図15】発明の実施の形態に係る遊技用回胴回転処理のフローチャートである。図15(a)は図13のS5のサブルーチン、図15(b)は図13のS6のサブルーチンである。
【図16】発明の実施の形態に係る他の励磁パターン制御部のブロック図である。
【図17】発明の実施の形態に係る他の励磁パターン制御部の励磁パターン変換テーブルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は前扉を閉めた状態を示すスロットマシンの正面図、図2は前扉を180度開いた状態を示すスロットマシンの正面図を示す。
【0017】
図1及び図2中、100はスロットマシンを示すもので、このスロットマシン100は、図1に示すように、スロットマシン本体120と、このスロットマシン本体120の前面片側にヒンジ等により開閉可能に取り付けられた前扉130とを備えている。前記前扉130の前面には、図1に示すように、ほぼ中央にゲーム表示部131を設け、ゲーム表示部131の右下隅部に、遊技者がメダルを投入するためのメダル投入口132を設け、メダル投入口132の下側には、メダル投入口132から投入され、詰まってしまったメダルをスロットマシン100外に強制的に排出するためのリジェクトボタン133が設けられている。
【0018】
また、前記ゲーム表示部131の左下方には、ゲームを開始するためのスタートスイッチ134を設けてあり、3つの回胴のそれぞれに対応して3つのストップスイッチ140を設けてある。前扉の下端部中央には、メダルの払出し口135を設けてある。前記ゲーム表示部131の上側には、液晶表示装置LCDが設けてある。
【0019】
スロットマシン本体120の内部には、図2に示すように、その内底面に固定され、内部に複数のメダルを貯留して、貯留したメダルを前扉130の前面に設けた払出し口135に1枚ずつ払い出すためのホッパ装置121が設置されている。このホッパ装置121の上部には、上方に向けて開口し、内部に複数のメダルを貯留するホッパタンク122を備えている。スロットマシン本体120の内部には、前扉130を閉めたときにゲーム表示部131が来る位置に三個の回胴からなるリール(回胴)ユニット203が設置されている。リールユニット203は、外周面に複数種類の図柄が配列されている3つの回胴(第1回胴〜第3回胴)を備えている。ゲーム表示部131には開口部が設けられていて、それを通して遊技者が前記リールユニット203の各回胴の図柄を見ることができるようになっている。ホッパ装置121の左側には電源部205が設けられている。
【0020】
前記前扉130の裏面には、図2に示すように、メダル(コイン)セレクタ1が、前扉130の前面に設けられたメダル投入口132の裏側に取り付けられている。このメダルセレクタ1は、メダル投入口132から投入されたメダルの通過を検出しながら、当該メダルをホッパ装置121に向かって転動させ、外径が所定寸法と違う異径メダルや、鉄又は鉄合金で作製された不正メダルを選別して排除するとともに、1ゲームあたりに投入可能な所定枚数以上のメダルを選別して排除するための装置である。
【0021】
また、メダルセレクタ1の下側には、図2に示すように、その下部側を覆って前扉130の払出し口135に連通する導出路136が設けられている。メダルセレクタ1により振り分けられたメダルは、この導出路136を介して払出し口135から遊技者に返却される。
【0022】
図3は発明の実施の形態に係るスロットマシン100の機能ブロック図を示す。
この図において電源系統についての表示は省略されている。図示しないが、スロットマシンは商用電源(AC100V)から直流電源(+5Vなど)を発生するための電源部を備える。
【0023】
スロットマシン100は、その主要な処理装置としてメイン基板(処理部)10とこれからコマンドを受けて動作するサブ基板20とを備える。なお、少なくともメイン基板10は、外部から接触不能となるようにケース内部に収容され、これら基板を取り外す際に痕跡が残るように封印処理が施されている。
【0024】
メイン基板10は、遊技者の操作を受けて内部抽選を行ったり、回胴の回転・停止やメダルの払い出しなどの処理を行うためのものである。メイン基板10は、予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うCPUと、前記プログラムを記憶する記憶手段であるROMおよび処理結果などを一時的に記憶するRAMを含む。
【0025】
サブ基板20は、メイン基板10からコマンド信号を受けて内部抽選の結果を報知したり各種演出を行うためのものである。サブ基板20は、前記コマンド信号に応じた予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うCPUと、前記プログラムを記憶する記憶手段であるROMおよび処理結果などを一時的に記憶するRAMを含む。コマンドの流れはメイン基板10からサブ基板20への一方のみであり、逆にサブ基板20からメイン基板10へコマンド等が出されることはない。
【0026】
メイン基板10には、ベットスイッチBET、スタートスイッチ134,ストップボタン140、設定変更キースイッチ2054、設定変更スイッチ2055などのスイッチ類が接続されている。
設定変更キースイッチ2054は設定変更を行うためのスイッチであり、設定変更スイッチ2055は設定値を変更したり、装置をリセットするためのスイッチである。設定変更キースイッチ2054と設定変更スイッチ2055は、電源部205の操作パネルに設けられている。
また、リール(回胴)ユニット203、ホッパ駆動部80、ホッパ81及びホッパ81から払い出されたメダルの枚数を数えるためのメダル検出部82(これらは前述のホッパ装置121を構成する)が接続されている。サブ基板20には液晶表示装置の制御用の液晶制御基板200、スピーカ基板201、LED基板202などの周辺基板(ローカル基板)が接続されている。
【0027】
メイン基板10には、さらに、メダルセレクタ1のメダルセンサS1及びS2が接続されている。
【0028】
メダルセレクタ1には、メダルを計数するためのメダルセンサS1及びS2が設けられている。メダルセンサS1及びS2は、メダルセレクタ1に設けられた図示しないメダル通路の下流側(出口近傍)に設けられている(メダル通路の上流側はメダル投入口132に連通している)。2つのメダルセンサS1とS2は、メダルの進行方向に沿って所定間隔を空けて並べて設けられている。メダルセンサS1、S2は、例えば、互いに対向した発光部と受光部とを有して断面コ字状に形成され、その検出光軸をメダル通路内に上方から臨ませて位置するフォトインタラプタである。各フォトインタラプタにより、途中で阻止されずに送られてきたメダルの通過が検出される。なお、フォトインタラプタを2つ隣接させたのは、メダル枚数を検出するだけでなく、メダルの通過が正常か否かを監視するためである。すなわち、フォトインタラプタを2つ隣接させて設けることにより、メダルの通過速度や通過方向を検出することができ、これによりメダル枚数だけでなく、逆方向に移動する不正行為を感知することができる。
【0029】
ホッパ駆動部80は、ホッパ81の図示しない回転ディスクを回転駆動して、メイン基板10によって指示された払出数のメダルを払い出す動作を行う。遊技機は、メダルを1枚払い出す毎に作動するメダル検出部82を備えており、メイン基板10は、メダル検出部82からの入力信号に基づいてホッパ81から実際に払い出されたメダルの数を管理することができる。
【0030】
投入受付部(投入受付手段)1050は、メダルセレクタ1のメダルセンサS1とS2の出力を受け、遊技毎にメダルの投入を受け付けて、規定投入数に相当するメダルが投入されたことに基づいて、スタートスイッチ134に対する第1回胴〜第3回胴の回転開始操作を許可する処理を行う。なお、スタートスイッチ134の押下操作が、第1回胴〜第3回胴の回転を開始させる契機となっているとともに、内部抽選を実行する契機となっている。また、遊技状態に応じて規定投入数を設定し、通常状態およびボーナス成立状態では規定投入数を3枚に設定し、ボーナス状態では規定投入数を1枚に設定する。
【0031】
メダルが投入されると、遊技状態に応じた規定投入数を限度として、投入されたメダルを投入状態に設定する。あるいは、遊技機にメダルがクレジットされた状態で、ベットスイッチBETが押下されると、遊技状態に応じた規定投入数を限度して、クレジットされたメダルを投入状態に設定する。メダルの投入を受け付けるかどうかは、メイン基板10が制御する。スタートスイッチ134が押下され各回胴の回転が開始した時点(遊技開始時点)から3つのストップスイッチ140が押下され各回胴の回転が停止した時点(入賞した場合はメダル払い出しが完了した時点)(遊技終了時点)の間であって、メダルの投入を受け付ける状態になっていないときは(許可されていないときは)、メダルを投入してもメダルセンサS1、S2でカウントされず、そのまま返却される。同様に、メイン基板10は、メダルの投入を受け付ける状態か否かに応じて、ベットスイッチBETの有効/無効を制御する。また、前記遊技終了時点から前記遊技開始時点までの間でベットスイッチBETは有効となるが、これ以外の期間においては(BETスイッチの押下が許可されていないときは)、ベットスイッチBETを押下しても、それは無視される。
【0032】
メイン基板10は、乱数発生手段1100を内蔵する。乱数発生手段1100は、抽選用の乱数値を発生させる手段である。乱数値は、例えば、インクリメントカウンタ(所定のカウント範囲を循環するように数値をカウントするカウンタ)のカウント値に基づいて発生させることができる。なお本実施形態において「乱数値」には、数学的な意味でランダムに発生する値のみならず、その発生自体は規則的であっても、その取得タイミング等が不規則であるために実質的に乱数として機能しうる値も含まれる。
【0033】
内部抽選手段1200は、遊技者がスタートスイッチ134からのスタート信号に基づいて、役の当否を決定する内部抽選を行う。すなわち、メイン基板10のメモリ(図示せず)に記憶されている抽選テーブル(図示せず)を選択する抽選テーブル選択処理、乱数発生手段1100から得た乱数の当選を判定する乱数判定処理、当選の判定結果で大当たりなどに当選したときにその旨のフラグを設定する抽選フラグ設定処理などを行う。
【0034】
抽選テーブル選択処理では、図示しない記憶手段(ROM)に格納されている複数の抽選テーブル(図示せず)のうち、いずれの抽選テーブルを用いて内部抽選を行うかを決定する。抽選テーブルでは、複数の乱数値(例えば、0〜65535の65536個の乱数値)のそれぞれに対して、リプレイ、小役(ベル、チェリー)、レギュラーボーナス(RB:ボーナス)、およびビッグボーナス(BB:ボーナス)などの各種の役が対応づけられている。また、遊技状態として、通常状態、ボーナス成立状態、およびボーナス状態が設定可能とされ、さらにリプレイの抽選状態として、リプレイ無抽選状態、リプレイ低確率状態、リプレイ高確率状態が設定可能とされる。
【0035】
乱数判定処理では、スタートスイッチ134からのスタート信号に基づいて、遊技毎に前記乱数発生手段(図示せず)から乱数値(抽選用乱数)を取得し、取得した乱数値について前記抽選テーブルを参照して役に当選したか否かを判定する。
【0036】
抽選フラグ設定処理では、乱数判定処理の結果に基づいて、当選したと判定された役の抽選フラグを非当選状態(第1のフラグ状態、オフ状態)から当選状態(第2のフラグ状態、オン状態)に設定する。2種類以上の役が重複して当選した場合には、重複して当選した2種類以上の役のそれぞれに対応する抽選フラグが当選状態に設定される。抽選フラグの設定情報は、記憶手段(RAM)に格納される。
【0037】
入賞するまで次回以降の遊技に当選状態を持ち越し可能な抽選フラグ(持越可能フラグ)と、入賞の如何に関わらず次回以降の遊技に当選状態を持ち越さずに非当選状態にリセットされる抽選フラグ(持越不可フラグ)とが用意されていることがある。この場合、前者の持越可能フラグが対応づけられる役としては、レギュラーボーナス(RB)およびビッグボーナス(BB)があり、それ以外の役(例えば、小役、リプレイ)は後者の持越不可フラグに対応づけられている。すなわち抽選フラグ設定処理では、内部抽選でレギュラーボーナスに当選すると、レギュラーボーナスの抽選フラグの当選状態を、レギュラーボーナスが入賞するまで持ち越す処理を行い、内部抽選でビッグボーナスに当選すると、ビッグボーナスの抽選フラグの当選状態を、ビッグボーナスが入賞するまで持ち越す処理を行う。このときメイン基板10は、内部抽選機能により、レギュラーボーナスやビッグボーナスの抽選フラグの当選状態が持ち越されている遊技でも、レギュラーボーナスおよびビッグボーナス以外の役(小役およびリプレイ)についての当否を決定する内部抽選を行っている。すなわち抽選フラグ設定処理では、レギュラーボーナスの抽選フラグの当選状態が持ち越されている遊技において、内部抽選で小役あるいはリプレイが当選した場合には、既に当選しているレギュラーボーナスの抽選フラグと内部抽選で当選した小役あるいはリプレイの抽選フラグとからなる2種類以上の役に対応する抽選フラグを当選状態に設定し、ビッグボーナスの抽選フラグの当選状態が持ち越されている遊技において、内部抽選で小役あるいはリプレイが当選した場合には、既に当選しているビッグボーナスの抽選フラグと内部抽選で当選した小役あるいはリプレイの抽選フラグとからなる2種類以上の役に対応する抽選フラグを当選状態に設定する。
【0038】
リプレイ処理手段1600は、所定条件下で内部抽選におけるリプレイの当選確率を変動させる制御を行うことがある。例えば、ストップボタン140の操作によってリールを停止させた際に所定の出目が表示されるとリプレイの当選確率が変動する。リプレイ処理手段1600については、後に再度説明を加える。リプレイの抽選状態として、リプレイが内部抽選の対象から除外されるリプレイ無抽選状態、リプレイの当選確率が約1/7.3に設定されるリプレイ低確率状態、およびリプレイの当選確率が約1/6に設定されるリプレイ高確率状態という複数種類の抽選状態を設定可能とされている。リプレイの抽選状態を変化させることにより、内部抽選におけるリプレイの当選確率を変動させる。
【0039】
回胴制御手段1300は、遊技者のスタートスイッチ134の押下操作(回転開始操作)によるスタート信号に基づいて、第1回胴〜第3回胴をステッピングモータにより回転駆動させ、第1回胴〜第3回胴の回転速度が所定速度(約80rpm:1分間あたり約80回転となる回転速度)に達した状態において回転中の回胴にそれぞれ対応する3つのストップボタン140の押下操作(停止操作)を許可する制御を行うとともに、ステッピングモータにより回転駆動されている第1回胴〜第3回胴を抽選フラグの設定状態(内部抽選の結果)に応じて停止させる制御を行う。
【0040】
また、回胴制御手段1300は、3つのストップボタン140に対する押下操作(停止操作)が許可(有効化)された状態において、遊技者が3つのストップボタン140を押下することにより、その回胴停止信号に基づいて、リールユニット203のステッピングモータへの駆動パルス(モータ駆動信号)の供給を停止することにより、第1回胴〜第3回胴の各回胴を停止させる制御を行う。
【0041】
すなわち、回胴制御手段1300は、3つのストップボタン140の各ボタンが押下される毎に、第1回胴〜第3回胴のうち押下されたボタンに対応する回胴の停止位置を決定して、決定された停止位置で回胴を停止させる制御を行っている。具体的には、記憶手段(ROM)に記憶されている停止制御テーブル(図示せず)を参照して3つのストップボタンの押下タイミングや押下順序等(停止操作の態様)に応じた第1回胴〜第3回胴の停止位置を決定し、決定された停止位置で第1回胴〜第3回胴を停止させる制御を行う。
【0042】
ここで停止制御テーブルでは、ストップボタン140の作動時点における第1回胴〜第3回胴の位置(押下検出位置)と、第1回胴〜第3回胴の実際の停止位置(または押下検出位置からの滑りコマ数)との対応関係が設定されている。抽選フラグの設定状態に応じて、第1回胴〜第3回胴の停止位置を定めるための停止制御テーブルが用意されることもある。
【0043】
遊技機では、リールユニット203がフォトセンサからなるインデックスセンサを備えており、回胴制御手段1300は、回胴が1回転する毎にインデックスセンサで検出される基準位置信号に基づいて、回胴の基準位置(インデックスセンサによって検出されるコマ)からの回転角度(ステップモータの回転軸の回転ステップ数)を求めることによって、現在の回胴の回転状態を監視することができるようになっている。すなわち、メイン基板10は、ストップスイッチ140の作動時における回胴の位置を、回胴の基準位置からの回転角度を求めることにより得ることができる。
【0044】
回胴制御手段1300は、いわゆる引き込み処理と蹴飛ばし処理とを回胴を停止させる制御として行っている。引き込み処理とは、抽選フラグが当選状態に設定された役に対応する図柄が有効な入賞判定ライン上に停止するように(当選した役を入賞させることができるように)回胴を停止させる制御処理である。一方蹴飛ばし処理とは、抽選フラグが非当選状態に設定された役に対応する図柄が有効な入賞判定ライン上に停止しないように(当選していない役を入賞させることができないように)回胴を停止させる制御処理である。すなわち本実施形態の遊技機では、上記引き込み処理及び蹴飛ばし処理を実現させるべく、抽選フラグの設定状態、ストップボタン140の押下タイミング、押下順序、既に停止している回胴の停止位置(表示図柄の種類)などに応じて各回胴の停止位置が変化するように停止制御テーブルが設定されている。このように、メイン基板10は、抽選フラグが当選状態に設定された役の図柄を入賞の形態で停止可能にし、一方で抽選フラグが非当選状態に設定された役の図柄が入賞の形態で停止しないように第1回胴〜第3回胴を停止させる制御を行っている。
【0045】
遊技機では、第1回胴〜第3回胴が、ストップボタン140が押下された時点から190ms以内に、押下されたストップボタンに対応する回転中の回胴を停止させる制御状態に設定されている。すなわち回転している各回胴の停止位置を決めるための停止制御テーブルでは、ストップボタン140の押下時点から各回胴が停止するまでに要するコマ数が0コマ〜4コマの範囲(所定の引き込み範囲)で設定されている。
【0046】
入賞判定手段1400は、第1回胴〜第3回胴の停止態様に基づいて、役が入賞したか否かを判定する処理を行う。具体的には、記憶手段(ROM)に記憶されている入賞判定テーブルを参照しながら、第1回胴〜第3回胴の全てが停止した時点で入賞判定ライン上に表示されている図柄組合せが、予め定められた役の入賞の形態であるか否かを判定する。
【0047】
入賞判定手段1400は、その判定結果に基づいて、入賞時処理を実行する。入賞時処理としては、例えば、小役が入賞した場合にはホッパ81を駆動してメダルの払出制御処理が行われるか、あるいはクレジットの増加され(規定の最大枚数例えば50枚まで増加され、それを超えた分だけ実際にメダル払い出される)、リプレイが入賞した場合にはリプレイ処理が行われ、ビッグボーナスやレギュラーボーナスが入賞した場合には遊技状態を移行させる遊技状態移行制御処理が行われる。
【0048】
払出制御手段1500は、遊技結果に応じたメダルの払い出しに関する払出制御処理を行う。具体的には、小役が入賞した場合に、役毎に予め定められている配当に基づいて遊技におけるメダルの払出数を決定し、決定された払出数に相当するメダルを、ホッパ駆動部80でホッパ81を駆動して払い出させる。この際に、ホッパ81に内蔵される図示しないモータに電流が流れることになる。
【0049】
メダルのクレジット(内部貯留)が許可されている場合には、ホッパ81によって実際にメダルの払い出しを行う代わりに、記憶手段(RAM)のクレジット記憶領域(図示省略)に記憶されているクレジット数(クレジットされたメダルの数)に対して払出数を加算するクレジット加算処理を行って仮想的にメダルを払い出す処理を行う。
【0050】
リプレイ処理手段1600は、リプレイが入賞した場合に、次回の遊技に関して遊技者の所有するメダルの投入を要さずに前回の遊技と同じ準備状態に設定するリプレイ処理(再遊技処理)を行う。リプレイが入賞した場合には、遊技者の手持ちのメダル(クレジットメダルを含む)を使わずに前回の遊技と同じ規定投入数のメダルが自動的に投入状態に設定される自動投入処理が行われ、遊技機が前回の遊技と同じ入賞判定ラインを有効化した状態で次回の遊技における回転開始操作(遊技者によるスタートスイッチ134の押下操作)を待機する状態に設定される。
【0051】
また、メイン基板10は、通常状態、ボーナス成立状態、およびボーナス状態の間で遊技状態を移行させる制御を行うことがある(遊技状態移行制御機能)。遊技状態の移行条件は、1の条件が定められていてもよいし、複数の条件が定められていてもよい。複数の条件が定められている場合には、複数の条件のうち1の条件が成立したこと、あるいは複数の条件の全てが成立したことに基づいて、遊技状態を他の遊技状態へ移行させることができる。
【0052】
通常状態は、複数種類の遊技状態の中で初期状態に相当する遊技状態で、通常状態からはボーナス成立状態への移行が可能となっている。ボーナス成立状態は、内部抽選でビッグボーナスあるいはレギュラーボーナスに当選したことを契機として移行する遊技状態である。ボーナス成立状態では、通常状態における内部抽選でビッグボーナスが当選した場合、ビッグボーナスが入賞するまでビッグボーナスに対応する抽選フラグが当選状態に維持され、通常状態における内部抽選でレギュラーボーナスが当選した場合、レギュラーボーナスが入賞するまでレギュラーボーナスに対応する抽選フラグが当選状態に維持される。ボーナス状態では、ボーナス遊技によって払い出されたメダルの合計数により終了条件が成立したか否かを判断し、入賞したボーナスの種類に応じて予め定められた払出上限数を超えるメダルが払い出されると、ボーナス状態を終了させて、遊技状態を通常状態へ復帰させる。
【0053】
リールユニット203は、3つの回胴40a〜40cを備える(図8参照)が、3つの回胴40a〜40cそれぞれにひとつづつステッピングモータ155a〜155cが取り付けられている(図9及びその説明参照)。また、回胴の位置をそれぞれ検出する回胴位置検出器(インデックスセンサ)159a〜159cを備える。なお、ステッピングモータ155a〜155cを単にモータ155あるいはモータと記すことがある。
【0054】
回胴制御手段1300は、回胴40a〜40cそれぞれが1回転する毎にインデックスセンサ159で検出される基準位置信号に基づいて、回胴40の基準位置(リールインデックスによって検出されるコマ)からの回転角度を求める(ステップモータの回転軸の回転ステップ数をカウントする)ことによって、現在の回胴40の回転状態を監視することができるようになっている。すなわち、メイン基板10は、回胴40の基準位置からの回転角度を求めることにより、ストップボタン140の作動時における回胴40の位置を得ることができる。
【0055】
ステッピングモータ155は、回転子(ロータ)として歯車状の鉄心あるいは永久磁石を備え、固定子(ステータ)として複数の巻線(コイル)を備え、電流を流す巻線を切り替えることによって回転動作させるものである。すなわち、固定子の巻線に電流を流して磁力を発生させ、回転子を引きつけることで回転するものである。回転軸を指定された角度で停止させることが可能なことから、スロットマシンの回胴の回転駆動に使用されている。複数の巻線がひとつの相を構成する。相の数として、例えば、2つ(二相)、4つ(4相)、5つ(5相)のものもある。
【0056】
ステッピングモータは、各相の巻線への電流の与え方を変えることにより、特性を変えることができる(励磁モードが変わる)。二相型については次の通りである。
【0057】
・一相励磁
常に巻線一相のみに電流を流す。位置決め精度は良い。
【0058】
・二相励磁
二相に電流を流す。一相励磁の約2倍の出力トルクが得られる。位置決め精度は良く、停止したときの静止トルクが大きいため、停止位置を確実に保持できる。
【0059】
・一−二相励磁
一相と二相を交互に切り替えて電流を流す。一相励磁・二相励磁の場合のステップ角度の半分にすることができるので、滑らかな回転を得られる。
【0060】
なお、ステッピングモータを「駆動する」とは、当該モータを上記励磁により回転させることとともに、所望の位置で停止させその位置を保持するために各相を励磁することも含むものとする。
【0061】
スロットマシンでは、例えば、4相の基本ステップ角度1.43度のステッピングモータを使用し、パルスの出力方法として一−二相励磁を採用している。
【0062】
図4は、メイン基板10のハードウエア構成の説明図である。図3のメイン基板10は、実際には図4のハードウエア構成で実現される。すなわち、複数のビット(配線)からなるバスBUSに、CPU(処理装置)、ROM(不揮発性記憶部)、メモリM(読み出し及び書き込み可能なメモリ、RWM)及びI/O(入出力装置)が接続されている。なお、CPU、I/Oなどはひとつのチップに形成され、ひとつのユニット(IC)としてまとめられていることもある。メモリMは、少なくともその一部についてはバッテリバックアップがなされているか、フラッシュメモリのような不揮発性メモリであり、電源断においても記憶内容が保持されるものである。以下の説明においては、特に断らない限り、「メモリM」は電源断においても記憶内容が保持されるものを指す。
【0063】
図4のI/Oには、スタートスイッチ134やストップスイッチ140などのスイッチ類が接続されている。したがって、CPUは、I/Oを通じて各種スイッチの信号を受け取ることができる。
【0064】
次に、発明の実施の形態に係る遊技機の動作について説明を加える。
なお、以下の説明に出てくる、回胴演出処理、及び、遊技用回胴回転処理、並びにこれらを実行するための構成については、後に詳しく説明を加える(図8乃至図17及びその説明を参照されたい)。
【0065】
発明の実施の形態に係る遊技機の回胴制御手段1300は、遊技を行うために複数の回胴40a乃至40cを回転させるとともに、これら3つの回胴の動作態様により所定の報知を行う回胴演出を行う。そして、回胴制御手段1300は、予め定められた遊技用の励磁パターンを記憶する遊技用励磁パターン記憶部と、予め定められた回胴演出用の励磁パターンを記憶する回胴演出用励磁パターン記憶部と、回胴の停止時の励磁パターンを記憶する停止時励磁パターン記憶部とを備える(遊技用の励磁パターン、回胴演出用の励磁パターンについては、図11及び図12その説明を参照されたい)。
【0066】
「回胴の停止時の励磁パターンを記憶する」について、図5を参照して説明を加える。これには、2つのパターンがある。
【0067】
まず、回胴演出終了時において回胴停止時の励磁パターンを記憶するパターンである(S30)。この具体的な処理は図14に示している。その詳細については後述する。
【0068】
次に、遊技終了時において回胴停止時の励磁パターンを記憶するパターンである(S31)。この具体的な処理は図15に示している。その詳細については後述する。
【0069】
このように、回胴の停止時の励磁パターンを記憶し、読み出した励磁パターンに基づき回胴演出処理、及び、遊技用回胴回転処理を行うのは、回胴の回転開始の動作が不安定になることを避けるためである。これは特に、回胴演出において問題となる。
【0070】
すなわち、停止していた回胴を再び回転させるために所定の励磁パターンでモータを駆動する際において、停止時の励磁パターンと回転開始時の励磁パターンが一致しないとモータがスムーズに動かない。起動の際に、停止状態において本来与えられるべき励磁パターンと実際の与えられた励磁パターンが不一致であると、動きに乱れが生じてスムーズに動かない。これは、ステッピングモータの制御回路はフィードバック回路を備えずオープンループ制御を行っており、励磁パターンとロータの位置に不一致が生じてもこれを知ることができないためである。
【0071】
例えば、工場出荷時やバックアップエラー(後述)の発生時においては、回胴停止時の励磁パターンを読み出せないことにより、上述のように動作が不安定になるという問題が生じる。
【0072】
そこで、発明の実施の形態に係る遊技機の回胴制御手段1300は、停止時励磁パターン記憶部から励磁パターンを読み出し、読み出した当該励磁パターンに基づき回胴演出を行うとともに、遊技を行うために前記回胴を回転させ、停止時励磁パターン記憶部から励磁パターンを読み出せないときは、回胴演出を禁止するが、遊技を行うための回胴の回転は許可する。具体的には、少なくとも1回の遊技を行う(許可)することで、その遊技の終了時の回胴の停止時の励磁パターンが記憶される(図5のS31)ので、これ以降は回胴演出を自然に行うことができるようになる。なお、遊技のために回胴を回転させる際においては、停止時励磁パターンを読み出せなくてもさほど問題はない。遊技における回胴回転は一定方向に一定速度で回転させるという単純な制御であるので、遊技者にとって不自然な動作は生じないからである。
【0073】
「停止時励磁パターン記憶部から励磁パターンを読み出せない」とは、次のようなケースのことである。
【0074】
(1)電源投入時のチェック(検査)において、バックアップ異常が検知された。
電源断時には、図5のS40、S41に示すようなバックアップ処理が行われる。すなわち、公知の電源断予告信号を受けて割り込み処理を行い、そのときの当選フラグなどのメモリの内容をバッテリバックアップされたメモリあるいは不揮発性メモリに書き込み(S40)、その後に電源が切断される(電源電圧が低下する)(S41)。電源断になってもこの処理を行う間は電源電圧は低下せず、所定のバックアップ処理の実行が可能になっている。バックアップ異常とは、電源断時に行われたメモリバックアップ処理(図5のS40)でバックアップされた内容と、電源投入時に読み出された内容が一致しないことを意味する。例えば、メモリバックアップ処理S40においてバックアップした内容全部についてチェックサムを求め、これを併せて保存し(バックアップし)、電源投入時にバックアップされた内容全部についてチェックサムを求め、これを保存されたチェックサムと比較し、これらが不一致であるとき、バックアップ異常と判断する。バックアップ処理は、このように、電源断時のメモリM(バッテリバックアップされていないもの)の所定の領域の内容を、バッテリバックアップされているメモリMへコピーするとともに、そのチェックサムを求め記憶するという処理である。
【0075】
バックアップ異常の場合、電源断時にバックアップした回胴の停止時の励磁パターンが失われている可能性があるから、上述のように、回胴演出を禁止するが、遊技を行うための回胴の回転は許可する。
【0076】
(2)工場出荷後の最初の電源投入時
工場出荷時においてはメモリ内容がクリアされているので、回胴の停止時の励磁パターンが記憶されていない。
【0077】
この場合、そもそも回胴の停止時の励磁パターンが書き込まれていないから、上述のように、回胴演出を禁止するが、遊技を行うための回胴の回転は許可する。なお、この場合でもバックアップ異常が検知される。
【0078】
(3)メモリが壊れた、配線が切れた、などの故障時
何らかの理由でメモリやその配線に故障などのトラブルが生じていれば、停止時励磁パターン記憶部から励磁パターンを読み出せない。
【0079】
遊技中に突然メモリが壊れたような場合は、当該メモリに対する読み書き異常として検知することができる。
【0080】
励磁パターンを読み出せたが、これが記憶時の励磁パターンと違っていることが判明した(例えば記憶させた励磁パターンの各ビットのパリティを記憶しておき、読み出した励磁パターンのパリティと比較することにより判定する)ときも「停止時励磁パターン記憶部から励磁パターンを読み出せない」としてもよい。
【0081】
発明の実施の形態に係る遊技機の動作について、図6のフローチャートを参照して説明を加える。同図は、上記(1)のケースに相当する典型例である。
【0082】
S50:バックアップ異常かどうか判定する。
電源投入の直後にバックアップ異常かどうか判定する。具体的には、上述のようにチェックサムを検査する。
バックアップ異常であれば(YES)、S55に進み、そうでなければ、S51に進む。
【0083】
S51:設定変更切替条件を満たしているかどうか判定する。
例えば、設定変更キースイッチ2054がオンであれば設定変更切替条件を満たしているとする。
【0084】
メイン基板10のROM内には例えば設定値1〜6にそれぞれ対応する複数の抽選テーブル(図示しない)が格納されており、設定変更によって設定された設定値に対応した抽選テーブルを用いて抽選処理が行われる。設定値とは、予め用意された複数の抽選テーブルのそれぞれに対応付けられたものであり、これら複数の抽選テーブルのいずれかを選択するためのものである。設定変更とは、前記設定値を変更することである。テーブルの種類によって当選・入賞の確率が変わる。設定変更手順については、後述する。
設定変更切替条件を満たしていれば、S53に進んで設定変更を行い、そうでなければS52に進んで状態復帰処理を行い、通常の遊技ができるようにする。
【0085】
S52:状態復帰処理
状態復帰処理は、バックアップされているデータを遊技処理で通常使用するメモリ領域に展開し、電源断直前の状態に戻すための処理である。
なお、S52以降においては、回胴演出は禁止されていない。
【0086】
S53:設定変更処理
後述の図7の処理を行い、設定値を変更(設定)する。
【0087】
S54:回胴演出プロテクト
設定変更処理が行われた後は、回胴演出がプロテクト(禁止)される。なお、このプロテクトは、遊技が1回行われると(励磁パターンを読み出せるようになったら)自動的に解除される。
【0088】
S55:コールドスタート処理
コールドスタート処理とは、エラー報知か設定変更のいずれかのみを行うことができ、設定変更を経ずに遊技機を遊技可能な状態にはできないモードの処理をいう。具体的には、S53,S54,S56、S57の処理である。
【0089】
S56:設定変更切替条件を満たしているかどうか判定する。
これは、S51の処理と同じである。
設定変更切替条件を満たしているときはS53に進み、そうでないときはS57に進む。
【0090】
S57:バックアップエラー
エラー報知を行う。エラー状態では遊技することはできない。
【0091】
なお、S50のバックアップ異常の判断で「異常」と判断された後にエラー報知(S57)されない場合は、必ずS54の処理を行う。したがって、バックアップ異常の場合において、遊技可能な状態になるときは、必ず回胴演出が禁止され、1ゲーム後にそれが解除されることになる。なお、エラー報知(S57)の場合はそもそも遊技不能であるので、上述の回胴の動きが不安定になるという問題は生じない。
【0092】
以上の処理を行うことにより、停止時の励磁パターンを読み出せるときは、停止時の励磁パターンに対応する励磁パターンを開始位置とし、そこから励磁パターンの切り替えを開始するとともに、停止時の励磁パターンを読み出せないときには回胴演出を禁止し、停止時の励磁パターンが記憶された後に回胴演出の禁止を解除するので、回胴演出の回転開始時に回胴の動きが不自然になることがない。
【0093】
次に、設定変更処理について説明を加える。
図7は、設定変更状態での処理(設定変更手順)のフローチャートである。
【0094】
S60:設定変更スイッチ(設定変更スイッチ2055)が押下されたかどうか判断する。押下されたら(S60でYES)、S61の処理を行う。
【0095】
S61:設定値を変更する。
具体的には、設定変更スイッチ2055が1回押下されるごとに、設定値に+1を加算する。設定値は1〜6の整数であり、設定値=6の状態で設定変更スイッチが押下されると、設定値=1に戻る。
【0096】
S62:スタートスイッチ134が押下されたかどうか判断する。押下されたら(S62でYES)、S63の処理を行う。
なお、スタートスイッチ134が押下されても設定値が確定されるだけであり、既にメダルがベットされていたとしてもリールは回転しない(言うまでもなく、設定変更が終了した後においてスタートスイッチ134が押下されればリールが回転し遊技が開始する)。
【0097】
S63:設定値を確定する。
これで設定値は固定される。もはや、設定変更スイッチが押下されても設定値は変更されない。
【0098】
S64:設定キースイッチ2054がオフになったかどうか判断する。オフになったら(S64でYES)、図7の処理を終了する。
【0099】
次に、回胴演出処理、及び、遊技用回胴回転処理、並びにこれらを実行するための構成について説明を加える。
【0100】
図8は、リールユニット203を示す斜視図である。
各回転リール(回胴)40a〜40cがリールユニット203の主要部である。各回転リール(回胴)40a〜40cは、フレーム151にブラケット152を介して取り付けられている。各回転リール(回胴)40a〜40cはそれぞれドラム153の外周に帯154が貼られたものである。帯154の外周面には21個の図柄(図示せず)が描かれている。また、各ブラケット152にはステッピングモータ155が設けられており、各回転リール(回胴)40a〜40cはこれらステッピングモータ155a〜155cで駆動されて回転する。
【0101】
図9(a)は、回胴40a〜40cの構造を示す斜視図である。
帯154の背後のドラム153内部にはランプケース156が設けられており、このランプケース156の3個の各部屋にはそれぞれバックランプ157a,157b,157cが取り付けられている。これらバックランプ157a〜157cは図9(b)に示すように基板158に実装されており、この基板158がランプケース156の背面側に取り付けられている。また、ブラケット152にはフォトインタラプタ(インデックスセンサ)159が取り付けられている。フォトインタラプタとは、1つのケースの中に発光素子(発光ダイオードなど)と受光素子(フォトトランジスタ、フォトダイオードなど)を対向配置し、その間に検出用の溝を設け、当該検出溝間を物体が通過したことを非接触で検知するものである。このフォトインタラプタ159は、ドラム153に設けられたインデックス(遮蔽板)160がドラム153の回転に伴ってフォトインタラプタ159を通過するのを検出する。
【0102】
各バックランプ157a〜157cは図示しないランプ駆動回路によって個別に点灯制御される。各バックランプ157a〜157cの点灯により、帯154に描かれた図柄のうち、各バックランプ157の前部に位置する3個の図柄が背後から個別に照らし出され、図柄表示窓131にそれぞれ3個ずつの図柄が映し出される。
【0103】
なお、本明細書の説明において、任意のひとつ又は複数の回胴を示すときは符号40を使用し、3つの回胴をそれぞれ区別して示すときは符号40a〜40cを使用することにする。
【0104】
図10は、スロットマシンのステッピングモータの駆動回路のブロック図である。この図では、説明を簡単にするために2相のモータを示しているが、4相の場合でも同様である。なお、図10では、各回胴の位置を検出するためのインデックスなど要素は省略している。
【0105】
同図において、1310−1〜3はステッピングモータ203M−1〜3のコイル203(A相のコイル)A−1〜3とコイル(B相のコイル)203B−1〜3のオンオフ(電流を流すかどうか)を切り替える駆動回路である。1320−1〜3は、駆動回路1310−1〜3の出力に従いコイル203A−1〜3と203B−1〜3へ電流を流す励磁回路である。なお、コイル203A−2、3と203B−2、3の表示は省略している。
【0106】
コイル203A−1〜3はA相のコイルであり、Aと/Aの2種類のコイルを含む。各相は、A端子と/A端子の他に共通端子COMを含むが、その図示は省略している。コイル203B−1〜3はB相のコイルであり、Bと/Bの2種類のコイルを含む。A相のコイルとB相のコイルは、例えば、A、B、/A、/B、・・・のように交互に配置されている。A→B→・・・の順に励磁するとモータは正回転し、B→A→・・・の順に励磁すると逆回転を行う。各相の励磁を切り替える間隔を短くすればモータは速く回り、間隔を長くすると遅く回る。ここで励磁する相を切り替えずに同じステータに電流を流し続けると、ロータが同じステータの位置に固定され、モータが現在の位置を保持しつづけることになる。
【0107】
図12(a)は、スロットマシンのステッピングモータの駆動方法の説明図である。同図は一−二相励磁の例を示している。同図の表の○はコイルに電流を流していることを示す。同図の表のステップ1、2、・・・、8の順番でコイルに電流を流すとモータは回転し、逆の順番にするとモータは逆回転する。
【0108】
ステップ1、2、・・・、8によるコイルの電流のオンオフのパターンを励磁パターンと呼ぶことにする。図12(a)の例は8つの励磁パターンの組み合わせを示し、図12(b)はやはり8個の励磁パターンの組み合わせを示すが、これは図12(a)とはモータの回転が逆となる。
【0109】
回胴を所望の位置に停止させる際は、所望の位置になった時点あるいはその直前で電流を流すコイルの切替を停止する。これで回胴は停止するが、前述のように、二相に電流を流すことで一相励磁の約2倍の出力トルクが得られるから、停止位置を確実に保持するために二相に電流を流すことがある。多相の場合は全ての相(コイル)に電流を流すとよいが、全ての相のうちの2以上の相に電流を流しても、停止位置を確実に保持する点で一定の効果を奏する。以下、このことを、多数の相を備える場合においてその2以上の相に電流を流すことを含めて(全ての相に電流を流さず一部の相にのみ電流を流す場合を含む)、全相励磁と呼ぶ。全相励磁では、多くのコイルに電流を流すので、ステッピングモータの消費電流は最大になる。回胴停止後、一定時間はステッピングモータに電流が流され続けている。
【0110】
図11は、発明の実施の形態に係る励磁パターン制御部300のブロック図である。励磁パターン制御部300は、例えば、回胴制御手段1300の一部であり、メモリやコントローラなどのハードウエア又はプログラムによるソフトウエアで実現される。
【0111】
301は、内部抽選結果などに基づいて励磁パターンを選択し、指令信号として出力する励磁パターン読出部である。励磁パターン読出部301は、内部抽選結果が回胴演出を行うべきものであるときは回胴演出用励磁パターン303を選択し、そうでないときは遊技用励磁パターン記憶部302を選択する。
【0112】
励磁パターン読出部301が回胴演出用励磁パターン303を選択するのは、(1)前記内部抽選手段による内部抽選の結果が出たことの報知を行う際(そのときの回胴演出は当該抽選の結果に対応する)、(2)メイン基板10で行われるAT(アシストタイム)のゲーム数を決定するための抽選の結果が出たことの報知を行う際(そのときの回胴演出は当該抽選の結果に対応する)、などである。メイン基板10によって予め定められている回胴演出を実行する旨の命令を受けた際(そのときの回胴演出は、当該タイミングにおいて実行された回胴演出パターンを決定するための抽選の結果に対応する)にも同様に処理することがある。
【0113】
302は、遊技用励磁パターンを予め記憶する遊技用励磁パターン記憶部である。遊技用励磁パターンは、例えば、図12(a)に示すようなものである。
【0114】
303は、回胴演出用励磁パターンを予め記憶する回胴演出用励磁パターン記憶部である。回胴演出用励磁パターンは、例えば、図12(b)に示すようなものである。これは、通常遊技における回胴の回転とは逆の回転を行うもので、速度や回転方向の変化のない、最も単純なものである。実際の回胴演出用励磁パターンは、図12(b)にさらに図12(a)のパターンが付加されたものであったり、その途中でモータが停止する(励磁パターンが変化しない)ようになっているなど、もっと複雑なものである。しかし、発明の実施の形態の動作の点で、回胴演出用励磁パターンが単純なものであるか、複雑であるかは違いがないので、説明の便宜上最も簡単な励磁パターンの例である図12(b)を参照することにする。
【0115】
304は、回胴停止時の励磁パターンを記憶する停止時励磁パターン記憶部である。停止時励磁パターン記憶部304は、通常遊技の回胴回転、回胴演出の回転を問わず、停止の際の励磁パターンを記憶する。なお、通常遊技と回胴演出のそれぞれについて固有の停止時励磁パターン記憶部を設けるようにしてもよい。
【0116】
なお、励磁パターンテーブル302、303及び停止時励磁パターン記憶部304は、回胴制御手段1300又は駆動回路1310に設けられるか、あるいは、これらとは独立に設けられる。
【0117】
図13は、遊技機のメインループの処理フローチャートである。この図は遊技処理の概要を示すものであり、その基本動作のみを示している(リプレイ処理などの表示は省略している)。
【0118】
S1:遊技メダル投入、スタートスイッチ処理
この処理は、投入受付手段1050が行う処理に相当する。遊技メダルの投入を受けてスタートスイッチ134を有効化する。
【0119】
S2:内部抽選処理
この処理は、乱数発生手段1100及び内部抽選手段1200が行う処理に相当する。スタートスイッチ134の押下を受けて、内部抽選処理を行う。
S2b:回胴演出がプロテクトされているかどうか?
プロテクトされていないとき(NO)S3に進み、プロテクトされているとき(YES)S5に進む(このとき回胴演出は行われない)。
「YES」の場合は、前述の(1)前記内部抽選手段による内部抽選の結果が出たことの報知を行う際、(2)メイン基板10で行われるAT(アシストタイム)のゲーム数を決定するための抽選の結果が出たことの報知を行う際であっても、回胴演出は行われない。抽選で回胴演出を行うかどうか決定している場合は、当該抽選そのものを行わなくてもよいし、当該抽選によって回胴演出を行うことが決定された場合でも回胴演出を行わないようにしてもよい。
【0120】
S3:回胴演出発生か?
回胴演出発生が発生したら(YES)、回胴制御手段1300はS4の処理を行う。
内部抽選処理の結果に基づき、回胴演出を行うかどうか判定する。内部当選役が予め定められた結果(例えば「大当たり」の場合)、回胴演出を行う(YES)ものとする。
YESのときS4を実行し、NO(回胴演出を行わないとき)はS4をスキップして、S5の処理を実行する。
【0121】
S4:回胴演出処理を行う。
回胴演出の内容は予め定められている。例えば、回胴を上下に繰り返し動かし、その後に停止するなどの演出を行う。この演出の内容に応じてステッピングモータを制御する。
具体的には図14の処理を行うが、同図の説明は後述する。回胴演出の内容は回胴演出用励磁パターン記憶部303の記憶内容に従う。
【0122】
S5:遊技用回胴回転処理を行う。
予め定められた方向に3つの回胴を一斉に回胴させる。これは通常遊技用の回胴回転である。
具体的には図15の処理を行うが、同図の説明は後述する。
【0123】
S6:回胴停止処理を行う。
3つのストップスイッチ140のいずれかが押下されたとき、回胴制御手段1300は対応する回胴を停止させる。同じことを3つ全ての回胴について行う。具体的には、図15(b)の処理を行う。同図の説明は後述する。
【0124】
S7:入賞判定を行う。
入賞判定部1400が、内部抽選の結果と回胴の停止出目に基づき入賞の有無及びその種類を判定する。
【0125】
S8:払出処理
入賞したときは、払出制御手段1500が払い出しを行う。
【0126】
図14を参照して、回胴演出処理について説明する。
【0127】
S10:前回回胴停止時の励磁パターンを取得する。
停止時励磁パターン記憶部304から記憶されている励磁パターンを取得する。
例えば、取得したパターンが、図12(a)のステップ6であったとする。
【0128】
S11:回胴演出用励磁パターン記憶部303から取得した励磁パターンに一致するパターンを検索する。
取得した図12(a)のステップ6のパターンと同じものを、回胴演出用の図12(b)から検索すると、同図のステップ4が同じものである。
【0129】
S12:一致したパターンを励磁の開始位置とする。
上記例によれば、図12(b)のステップ4が開始位置となる。
【0130】
S13:回胴演出用励磁パターン記憶部303に基づき励磁パターンを順次切り替える。
例えば、図12(b)のステップ4、5、6、7、8、1、・・・のように励磁パターンを切り替える。これによりステッピングモータが回転する。
【0131】
なお、回胴演出用励磁パターンは任意であり、例えば、4、5、6、7、6、5、4、・・・のようなパターンを予め用意しておくことにより回胴を上下に繰り返し動かすことができるし、4、5、6、7、7、7、7、・・・のようなパターンであれば一定角度回転した後に停止するという動作を行わせることができる。
【0132】
S14:回胴演出が終了したかどうか判定する。
例えば、図示しないタイマーにより回胴演出開始から一定時間経過したときに回胴演出を終了する。あるいは、図12(b)のような励磁パターンを予め定められた回数繰り返した時点で回胴演出終了と判定してもよい。
【0133】
S15:回胴を停止する。
回胴演出の終了時(S14でYES)、励磁パターンの切り替えを停止する。これにより回胴は停止する。
なお、回胴演出から通常遊技の回胴回転は(遊技者が認識できる)停止を介さずに連続して行われることがある。例えば、上記停止の中には遊技者から見て回胴の停止を視認できない程度の僅かな停止(励磁パターンの切り替えを停止しても回胴の回転速度がゼロにならないこと)も含む。S15の処理は回胴処理の終了を意味するものであり、回胴の停止はその典型例であって、発明の実施の形態の遊技機の動作はこれに限定されない。停止を回胴演出と通常遊技の回胴回転の境界にしないのであれば、S15はなくてもよい。
【0134】
S16:停止時の励磁パターンを記憶する。
例えば、図12(b)のステップ8の励磁パターンで停止したとき、当該励磁パターンを停止時励磁パターン記憶部304に記憶する。
上記「停止」は、S15で説明したことを意味する。もし、S15がないときは、S14でYES(回胴演出終了)と判定されたときの励磁パターンを記憶する。
【0135】
図15(a)を参照して、通常遊技における回胴回転処理について説明する。3つの回胴それぞれについて回胴回転処理が実行される。
【0136】
S20:前回回胴停止時の励磁パターンを取得する。
停止時励磁パターン記憶部304から記憶されている励磁パターンを取得する。
例えば、取得したパターンが、図12(b)のステップ8であったとする。
【0137】
S21:遊技用励磁パターン記憶部302から取得した励磁パターンに一致するパターンを検索する。
取得した図12(b)の8のパターンと同じものを、回胴演出用の図12(a)から検索すると、同図のステップ2が同じものである。
【0138】
S22:一致したパターンを励磁の開始位置とする。
上記例によれば、図12(a)のステップ2が開始位置となる。
【0139】
S23:遊技用励磁パターン記憶部302に基づき励磁パターンを順次切り替える。
例えば、図12(a)の2、3、4、5、6、7、8、1、・・・のように励磁パターンを切り替える。これによりステッピングモータが一定方向に回転する。
通常遊技時の回転は、回胴演出時とは異なり一定方向への一定速度の回転であり、規則的である。したがって、どの遊技機も図12(a)と同じ又は相当する励磁パターンを持っている。
【0140】
図15(b)を参照して、回胴停止処理について説明する。
S24:ストップスイッチ140が押下されたかどうか判定する。
3つのストップスイッチ140のいずれかが押下されたとき(YES)、S25に進む。
【0141】
S25:回胴を停止する。
3つのストップスイッチ140のいずれかが押下されたときS24でYESとなり、対応する回胴の回転を停止させる。すなわち当該回胴のステッピングモータの励磁パターンの切り替えを停止する。
【0142】
S26:停止時の励磁パターンを記憶する。
例えば、図12(a)のステップ6の励磁パターンで停止したとき、当該励磁パターンを停止時励磁パターン記憶部304に記憶する。
S27:全回胴が停止したかどうか判断する。
全回胴が停止していれば(YES)図15(b)の処理を終了し、停止していない回胴(押されていないストップスイッチ140があれば)(NO)、S24の判断を繰り返す。
【0143】
この発明の実施の形態によれば、回胴回転停止時(励磁パターン更新停止時)の励磁パターンを記憶し、記憶した停止時の励磁パターンで、回胴を再度回転させる際に使用する励磁パターン群を参照し、当該停止時の励磁パターンに対応する励磁パターンを開始位置とし、そこから励磁パターンの切り替えを開始するので、回転開始時の回胴の動きをスムーズにすることができる。
【0144】
これにより、回転開始時の回胴のブレを軽減でき、脱調等の不具合を防止することができる。
【0145】
上述した例では、停止時の励磁パターンそのものを記憶し、これに基づき回転開始時の始動励磁パターンを検索していた。励磁パターンそのものに代えて、励磁パターンの識別情報を記憶するようにしてもよい。
【0146】
この構成の例を図16に示す。図11と比較してその相違点について説明する。
【0147】
301aは、遊技用励磁パターンを回胴演出用励磁パターンに変換するとともに、逆に回胴演出用励磁パターンを遊技用励磁パターンに変換するための励磁パターン変換テーブルである。励磁パターン変換テーブル301aは、遊技用励磁パターンに含まれる励磁パターンと回胴演出用励磁パターンに含まれる励磁パターンの対応関係(互いに一致するもの)を予め記憶しているものである。
なお、回胴演出を行わない場合には(例えば図13のS4がバイパスされるとき)、記憶されているパターンは遊技用のY1〜Y8であり、使用するパターンもY1〜Y8であって同じであるから、励磁パターン変換テーブル301aによる変換を行わないようにしてもよい。
【0148】
例えば、励磁パターン変換テーブル301aの内容は、図17に示すようなものである。同図においてY1〜Y8は遊技用励磁パターンを示す記号(識別情報)であり、Y1〜Y8はそれぞれ図12(a)のステップ1〜8に対応する。また、E1〜E8は回胴演出用励磁パターンを示す記号(識別情報)であり、E1〜E8はそれぞれ図12(b)のステップ1〜8に対応する。図17において、Y1とE1、Y2とE8、・・・が対応しているが、これは図12(a)(b)を参照すると、図17は図12(a)と(b)で互いに一致する励磁パターン同士を対応付けたものであることが理解できる。したがって、図17を参照することで図14のS10,S11、図15のS20,S21と同等の処理を行うことができる。すなわち、図16の構成によれば、励磁パターンを直接比較する必要はない。
【0149】
304’は、回胴停止時の励磁パターンの識別情報を記憶する停止時励磁パターン識別情報記憶部である。停止時励磁パターン識別情報記憶部304’は、通常遊技の回胴回転、回胴演出の回転を問わず、停止の際の励磁パターンを記憶するが、停止時励磁パターン記憶部304とは異なり励磁パターンそのものではなく、その識別情報を記憶する。
【0150】
遊技用励磁パターン記憶部302を用いて回胴を回転させた後に停止した場合は、その停止時の励磁パターンに対応する識別情報Y1〜Y8のいずれかを停止時励磁パターン識別情報記憶部304’に記憶する。例えば、停止時の励磁パターンが図12(a)のステップ8であればY8を記憶する。
【0151】
回胴演出用励磁パターン記憶部303を用いて回胴を回転させた後に停止した場合は、その停止時の励磁パターンに対応する識別情報E1〜E8のいずれかを停止時励磁パターン識別情報記憶部304’に記憶する。例えば、停止時の励磁パターンが図12(b)の6であればE6を記憶する。
【0152】
図16及び図17の装置の動作は、前述した図14、図15とほぼ同じである。これらとの相違点について説明を加える。
【0153】
まず図14との相違点について説明する。S10〜S12に代えて、下記のS10’〜S12’の処理を行う。
【0154】
S10’:前回回胴停止時の励磁パターンの識別情報を取得する。
停止時励磁パターン識別情報記憶部304’から前回停止時の励磁パターンに対応する識別情報を読み出す。
【0155】
S11’:励磁パターン変換テーブル301aを参照して回胴演出用励磁パターン記憶部303の励磁パターンに対応する識別情報を検索する。
【0156】
S12’:一致した識別情報に対応する励磁パターンを開始位置とする。
【0157】
読み出した識別情報がY6であれば、励磁パターン変換テーブル301aに基づきE4を得る。これは回胴演出用励磁パターン記憶部303の4(図12(b)のステップ4)である。これを励磁の開始位置とし、S13以降の処理を行う。
【0158】
次に図15(a)との相違点について説明する。S20〜S22に代えて、下記のS20’〜S22’の処理を行う。
【0159】
S20’:前回回胴停止時の励磁パターンの識別情報を取得する。
停止時励磁パターン識別情報記憶部304’から前回停止時の励磁パターンに対応する識別情報を読み出す。
【0160】
S21’:励磁パターン変換テーブル301aを参照して遊技用励磁パターン記憶部302の励磁パターンに対応する識別情報を検索する。
【0161】
S22’:一致した識別情報に対応する励磁パターンを開始位置とする。
【0162】
読み出した識別情報がE8であれば、励磁パターン変換テーブル301aに基づきY2を得る。これは遊技用励磁パターン記憶部302のステップ2(図12(a)のステップ2)である。これを励磁の開始位置とし、S23以降の処理を行う。
【0163】
図16及び図17の変形例も、上述の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0164】
図16及び図17の変形例は、励磁パターン変換テーブルを追加で設ける必要があるものの、励磁パターンの検索処理は簡単になり、CPUの処理負荷を軽減できるというメリットがある。
【0165】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0166】
40a〜40c 回胴
134 スタートスイッチ
140 ストップスイッチ
155、203M ステッピングモータ
203 リールユニット
301 励磁パターン読出部
301a 励磁パターン変換テーブル
302 遊技用励磁パターン記憶部
303 回胴演出用励磁パターン記憶部
304 停止時励磁パターン記憶部
304’ 停止時励磁パターン識別情報記憶部
1200 内部抽選手段
1300 回胴制御手段
1310 駆動回路
1320 励磁回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回胴を含むリールユニットと、前記複数の回胴をそれぞれ回転させる複数のモータと、前記複数の回胴の回転を開始させるためのスタートスイッチと、前記複数のモータにそれぞれ予め定められた励磁パターンの駆動信号を与えて前記複数の回胴を回転させる回胴制御手段と、前記スタートスイッチからのスタート信号に基づいて役の当否を決定する内部抽選を行う内部抽選手段と、を備える遊技機において、
前記回胴制御手段は、遊技を行うために前記複数の回胴を回転させるとともに、前記回胴の動作態様により所定の演出を行う回胴演出を行うものであり、
予め定められた遊技用の励磁パターンを記憶する遊技用励磁パターン記憶部と、
予め定められた前記回胴演出用の励磁パターンを記憶する回胴演出用励磁パターン記憶部と、
前記回胴の停止時の励磁パターンを記憶する停止時励磁パターン記憶部とを備え、
前記回胴制御手段は、
前記停止時励磁パターン記憶部から前記励磁パターンを読み出し、読み出した当該励磁パターンに基づき前記回胴演出を行うか、又は、遊技を行うために当該励磁パターンに基づき前記回胴を回転させ、
前記停止時励磁パターン記憶部から励磁パターンを読み出せないときは、前記回胴演出を禁止するが、遊技を行うための前記回胴の回転は許可することを特徴とする遊技機。
【請求項2】
少なくとも、前記停止時励磁パターン記憶部は、遊技機の電源断時において記憶内容が保持されるものであり、
電源投入時において、少なくとも前記停止時励磁パターン記憶部の記憶内容が検査され、当該検査の結果、前記記憶内容に異常があったときは前記停止時励磁パターン記憶部から前記励磁パターンを読み出せないとすることを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記回胴制御手段は、
(1)前記回胴演出を行うときに、前記停止時励磁パターン記憶部から励磁パターンを読み出し、読み出した当該励磁パターンと一致する励磁パターンを前記回胴演出用励磁パターン記憶部から検索し、検索した当該励磁パターンを開始位置として前記回胴演出用の励磁パターンに基づき前記モータを駆動して前記回胴を回転させ、
(2)遊技を行うために前記回胴を回転させるときに、前記停止時励磁パターン記憶部から励磁パターンを読み出し、読み出した当該励磁パターンと一致する励磁パターンを前記遊技用励磁パターン記憶部から検索し、検索した当該励磁パターンを開始位置として前記遊技用の励磁パターンに基づき前記モータを駆動して前記回胴を回転させる、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の遊技機。
【請求項4】
前記遊技用励磁パターン記憶部に含まれる励磁パターンと前記回胴演出用励磁パターン記憶部に含まれる励磁パターンの対応関係を予め記憶している励磁パターン変換テーブルを備え、
前記停止時励磁パターン記憶部は、前記回胴の停止時の励磁パターンの識別情報を記憶し、
前記回胴制御手段は、
(1’)前記回胴演出を行うときに、前記停止時励磁パターン記憶部から前記識別情報を読み出し、読み出した当該識別情報に基づき前記励磁パターン変換テーブルを参照して前記回胴演出用励磁パターン記憶部の励磁パターンを特定し、特定した当該励磁パターンを開始位置として前記回胴演出用の励磁パターンに基づき前記モータを駆動して前記回胴を回転させ、
(2’)遊技を行うために前記回胴を回転させるときに、前記停止時励磁パターン記憶部から前記識別情報を読み出し、読み出した当該識別情報に基づき前記励磁パターン変換テーブルを参照して前記遊技用励磁パターン記憶部の励磁パターンを特定し、特定した当該励磁パターンを開始位置として前記遊技用の励磁パターンに基づき前記モータを駆動して前記回胴を回転させる、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の遊技機。
【請求項5】
前記回胴演出用励磁パターン記憶部の励磁パターンは、前記遊技用励磁パターン記憶部による前記モータの回転とは逆方向の回転を行わせる励磁パターンを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれかに記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−161383(P2012−161383A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22185(P2011−22185)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(390031772)株式会社オリンピア (2,719)
【Fターム(参考)】