説明

遊技機

【課題】遊技機の設計の自由度を低下させることなく良好な音響を得ること。
【解決手段】所定の遊技を行うことが可能とされ、該遊技に関連する遊技関連音を出力する複数の音出力部27R、27L、27a、27bを有する遊技機1であって、遊技関連音の音データを記憶する音データ記憶手段174と、該記憶されている音データに基づく遊技関連音を音出力部から出力する制御を行う音出力制御手段86と、各音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の音圧が所定の適正音圧となるように補正するための出力音圧補正データを記憶する補正データ記憶手段174と、該出力音圧補正データに基づいて、音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の音圧を、各音出力部毎に個別に補正する音圧補正手段205と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の遊技を行うことが可能とされ、該遊技に関連する遊技関連音を出力する遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遊技に関連する遊技関連音を出力する遊技機においては、遊技関連音の音響効果、例えば、音が発生していると遊技者が感じる位置(音像位置)を変化させる等の音響効果により、遊技者の臨場感を高めることが実施されており、これら音像位置を変化させる場合において、遊技者が実際に聞き取る音により定位する音像位置が適切な位置となるように、各スピーカを遊技者の頭部位置からの距離がほぼ等しくなるように、同心円状に配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−178778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら特許文献1にあっては、遊技者の頭部位置から各スピーカとの距離をほぼ等しくできるので、遊技者が実際に聴取する音の音圧等の特性を向上させることができるため、各スピーカから出力する遊技関連音の音データを、遊技機における各スピーカとの距離の違いや、出力特性の違いに応じて大きく変更する必要が生じないものの、スピーカの位置や向きやスピーカ表面の意匠等を大きく変更することができず、遊技機の設計の自由度が著しく低下してしまうという問題があった。
【0005】
また、遊技機の設計の自由度を優先して遊技機を異なる意匠とした場合にあって、これら異なる意匠を有する各種の遊技機のそれぞれについて良好な音響を得ようとすると、個々の意匠の遊技機毎に、当該遊技機にて使用される多くの遊技関連音の各音データを、遊技者が良好に聴取できる良好な音響となるように全て補正しなければならず、これら各音データを補正する作業に非常に多くの労力を要してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、遊技機の設計の自由度を低下させることなく良好な音響を得ることができるとともに、遊技関連音の音データの補正に要する労力も低減することのできる遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の遊技機は、
所定の遊技(パチンコ玉を用いた遊技)を行うことが可能な遊技機(パチンコ機1)であって、
該遊技機の筐体の所定位置に設けられ、遊技に関連する遊技関連音(遊技における演出に伴う各種のBCMや効果音)を出力する複数の音出力部(スピーカ27R、27L、27a、27b)と、
前記遊技関連音を出力するための複数種類の音データを記憶する音データ記憶手段(外部ROM174)と、
前記音データ記憶手段にて記憶されている音データに基づく遊技関連音を前記音出力部から出力する制御を行う音出力制御手段(演出制御用CPU86)と、
複数の音出力部が予め定められた基準の遊技機の筐体(周波数特性が最適化された基準筐体)に設けられたときに該音出力部から出力された遊技関連音の所定の聴聞位置(図13に示す測定用マイクの配置位置)における各周波数帯(チャンネルCH1〜CH9)の音圧(図12(a)に示す基準筐体振幅特性の音圧)を適正音圧として、該遊技機の筐体の前記各音出力部から出力された遊技関連音の前記聴聞位置における各周波数帯の音圧が前記適正音圧となるように、前記各音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の音量を補正するための出力音量補正データ(図7の周波数特性補正データ)を記憶する補正データ記憶手段(外部ROM17、内部RAM203)と、
前記補正データ記憶手段に記憶されている出力音量補正データに基づいて、前記音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の音量を、各音出力部毎に個別に補正する音圧補正手段(音声処理IC173、第1DSP部205)と、
を備える
ことを特徴としている。
この特徴によれば、音出力部の位置や向きや音出力部表面の意匠等を設計において異なるものとしても、これら設計が異なる各音出力部についての出力音量補正データを補正データ記憶手段に記憶することにより、各音出力部から出力される各周波数帯の音圧が、補正データ記憶手段に記憶されている出力音量補正データに基づいて各音出力部毎に補正されることで、各音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の音圧が適正音圧となるので、遊技機の設計の自由度を低下させることなく良好な音響を得ることができるとともに、遊技関連音の音データが補正されていなくても、これら補正されていない音データに基づいて各音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の音圧が出力音量補正データに基づいて適正音圧に補正されるので、遊技関連音の音データの補正に要する労力も低減することができる。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の遊技機は、
所定の遊技(パチンコ玉を用いた遊技)を行うことが可能な遊技機(パチンコ機1)であって、
該遊技機の筐体の所定位置に設けられ、遊技に関連する遊技関連音(遊技における演出に伴う各種のBCMや効果音)を出力する複数の音出力部(スピーカ27R、27L、27a、27b)と、
前記遊技関連音を出力するための複数種類の音データを記憶する音データ記憶手段(外部ROM174)と、
前記音データ記憶手段にて記憶されている音データに基づく遊技関連音を前記音出力部から出力する制御を行う音出力制御手段(演出制御用CPU86)と、
複数の音出力部が予め定められた基準の遊技機の筐体(位相特性が最適化された基準筐体)に設けられたときに該音出力部から出力された遊技関連音の所定の聴聞位置における各周波数帯(チャンネルCH1〜CH9)の位相(図11に示す基準筐体の位相特性の位相)を適正位相として、該遊技機の筐体の前記各音出力部から出力された遊技関連音の前記聴聞位置における各周波数帯の位相が前記適正位相となるように、前記各音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の位相を補正するための出力位相補正データ(図6の位相特性補正データ)を記憶する補正データ記憶手段(外部ROM17、内部RAM203)と、
前記補正データ記憶手段に記憶されている出力位相補正データに基づいて、前記音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の位相を、各音出力部毎に個別に補正する位相補正手段(音声処理IC173、第1DSP部205)と、
を備える
ことを特徴としている。
この特徴によれば、音出力部の位置や向きや音出力部表面の意匠等を設計において異なるものとしても、これら設計が異なる各音出力部についての出力位相補正データを補正データ記憶手段に記憶することにより、各音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の位相が、補正データ記憶手段に記憶されている出力位相補正データに基づいて各音出力部毎に補正されることで、各音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の位相が所定の聴聞位置において適正位相となるので、遊技機の設計の自由度を低下させることなく良好な音響を得ることができるとともに、遊技関連音の音データが補正されていなくても、これら補正されていない音データに基づいて各音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の位相が適正位相に補正されるので、遊技関連音の音データの補正に要する労力も低減することができる。
【0009】
本発明の手段1の遊技機は、請求項1に記載の遊技機であって、
3以上の前記音出力部(4つのスピーカ27R、27L、27a、27b)を有し、
前記補正データ記憶手段(外部ROM17、内部RAM203)には、各音出力部(スピーカ27R、27L、27a、27b)に対応する出力音量補正データ(周波数特性補正データ)であって、当該音出力部以外の他の音出力部からの遊技関連音の出力音量(レベルA〜Nの組合せパターン)に対応付けられた出力音量補正データ(補正利得)が記憶され、
前記音圧補正手段は、各音出力部から出力する遊技関連音の各周波数帯の音量を、当該音出力部以外の他の音出力部における出力音量に対応付けて前記補正データ記憶手段に記憶されている出力音量補正データを用いて補正する(振幅補正処理のステップSb4の部分)
ことを特徴としている。
この特徴によれば、前記音出力部が3以上、つまり、音圧補正手段が補正の対象とする音出力部以外に複数の音出力部が存在する場合には、これら複数の他の音出力部から出力される遊技関連音の相互干渉等により、単純に補正の対象とする音出力部からの出力音量のみを補正しても、遊技者が聴聞する音圧が適切に補正されない場合があるのに対し、他の音出力部からの遊技関連音の出力音量に対応付けられた出力音量補正データを用いて補正することで、これら相互干渉を加味した補正を行うことが可能となるので、3以上の前記音出力部を有していても適切な音圧の補正を実施できる。
【0010】
本発明の手段2の遊技機は、請求項1〜3または手段1のいずれかに記載の遊技機であって、
前記周波数帯(チャネルCH1〜CH9)が、周波数が高くなるに従って累進的に広い周波数範囲(チャンネルCH1が31〜62Hz、チャンネルCH2が63〜125Hz、チャンネルCH3が126〜250Hz、チャンネルCH4が251〜500Hz、チャンネルCH5が501〜1000Hz、チャンネルCH6が1001〜2000Hz、チャンネルCH7が2001〜4000Hz、チャンネルCH8が4001〜8000Hz、チャンネルCH9が8001〜16000Hz)となるように設定する
ことを特徴としている。
この特徴によれば、周波数が高くなるに従って累進的に広い周波数範囲とすることで、周波数にかかわらずに均一の周波数範囲とした場合に比較して、補正を行う対象とする周波数帯の総数を低減することができるので、これら各周波数帯毎に補正を行うための補正データのデータ容量を低減することができる。
【0011】
本発明の手段3の遊技機は、請求項1〜3、手段1、手段2のいずれかに記載の遊技機であって、
前記補正データ記憶手段(外部ROM17、内部RAM203)は、前記音圧補正手段および/または前記位相補正手段として機能する電子デバイス(音声処理IC173)の外部に設けられた不揮発性外部メモリ(外部ROM174)と、前記電子デバイスの内部に設けられた揮発性内部メモリ(内部RAM203)とから構成され、
電源投入時において、前記不揮発性外部メモリに記憶されているデータを読み出して前記揮発性内部メモリに格納することで、該格納したデータを前記音圧補正手段および/または前記位相補正手段が利用可能に設定する(音声処理IC173が図14の起動処理のステップSk8を実施する部分)
ことを特徴としている。
この特徴によれば、音圧補正手段および/または位相補正手段として機能する電子デバイス内に、補正データが不揮発データとして記憶されていないので、これら補正データが異なる遊技機についても、これら音圧補正手段および/または位相補正手段として機能する電子デバイスを共通して使用することが可能となる。
【0012】
本発明の手段4の遊技機は、請求項1〜3または手段1〜手段3のいずれかに記載の遊技機であって、
前記音圧補正手段および/または前記位相補正手段により補正された補正済みの音又は補正済みの音データ(第1DSP部205にて補正された音ストリームデータ)に対して所定の音響効果を付加する音響効果付加手段(第2DSP部206)を備える
ことを特徴としている。
この特徴によれば、音響効果付加手段においては、音圧補正手段および/または位相補正手段により補正された補正済みの音又は補正済みの音データに対して音響効果が付加されるので、これら付加される音響効果の再現性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が適用された実施例の遊技機であるパチンコ機を示す正面図である。
【図2】パチンコ機を示す背面図である
【図3】パチンコ機の回路構成例を示すブロック図である。
【図4】演出制御基板における回路構成例を示すブロック図である。
【図5】音声処理ICの構成例を示すブロック図である。
【図6】実施例に用いた位相特性補正データを示す図である。
【図7】実施例に用いた周波数特性補正データを示す図である。
【図8】音声処理ICにて実施される位相補正処理の処理内容を示す図である。
【図9】音声処理ICにて実施される振幅補正処理の処理内容を示す図である。
【図10】(a)は、位相補正処理を実施しない場合における各スピーカから出力される音の位相状態を示す図であり、(b)は、位相補正処理を実施した場合における各スピーカから出力される音の位相状態を示す図である。
【図11】位相補正処理を実施した場合と実施しない場合の位相特性を示す図である。
【図12】(a)は、筐体の周波数特性を示す図であり、(b)は、振幅補正を実施しない場合にスピーカから出力される音の周波数特性を示す図であり、(c)は、振幅補正を実施した場合にスピーカから出力される音の周波数特性を示す図である。
【図13】(a)、(b)は、位相特性補正データ並びに周波数特性補正データを作成するための測定方法を示す図である。
【図14】電源投入時において音声処理ICにて実施される起動処理の処理内容を示す図である。
【図15】その他の形状の筐体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る遊技機を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0015】
まず、本発明の遊技機の一例であるパチンコ遊技機の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1(以下、パチンコ機1と略称する)を正面からみた正面図であり、図2はパチンコ機1を示す背面図である。尚、以下の説明において、図1の手前側(遊技者側)をパチンコ機1の前面側、奥側を背面側として説明する。尚、本実施例におけるパチンコ機1の前面とは、遊技者側からパチンコ機1を見たときに該遊技者と対向する対向面である。
【0016】
パチンコ機1は、縦長の方形状に形成された外枠100(図2参照)と、外枠100に開閉可能に取り付けられた前面枠101(図2参照)と、で主に構成されている。前面枠101の前面には、ガラス扉枠102及び下扉枠103がそれぞれ一側を中心に開閉可能に設けられている。
【0017】
図1に示すように、ガラス扉枠102の下方に取り付けられた下扉枠103の前面上部には、遊技媒体(遊技球)としてのパチンコ球(打球)を貯留可能な遊技球貯留部としての打球供給皿(上皿とも言う)3が上面に形成された上皿部3aが、パチンコ機1の前方(パチンコ機1の前面方向)に向けて突設されている。また、この上皿部3aの下方には、後述する操作レバー600が揺動自在に軸支されるとともに、上面に余剰球貯留皿(下皿とも言う)4が形成された下皿部4a(突出部)が、パチンコ機1の前方(パチンコ機1の前面方向)に向けて突設されている。その右側方には、パチンコ球を発射する打球操作ハンドル(操作ノブ)5が設けられている。
【0018】
操作レバー600は、遊技者が把持する操作桿を含み、操作桿の所定位置(例えば遊技者が操作桿を把持したときに操作手の人差し指が掛かる位置など)には、トリガースイッチが内設されたトリガボタンが設けられている。トリガボタンは、遊技者が操作レバー600の操作桿を操作手(例えば左手など)で把持した状態において、所定の操作指(例えば人差し指など)で押引操作することなどにより所定の指示操作ができるように構成されていればよい。操作レバー600の下部における下皿4aの本体内部などには、操作桿に対する傾倒操作を検知するために四方向に配置されたレバースイッチ510a〜510dが設けられていればよい。
【0019】
また、上皿3を形成する部材には、例えば上皿3本体の上面における手前側の所定位置(例えば操作レバー600の上方)などに、遊技者が押下操作などにより所定の指示操作を可能な操作ボタン516が設けられている。操作ボタン516は、遊技者からの押下操作などによる所定の指示操作を、機械的、電気的、あるいは、電磁的に、検出できるように構成されていればよい。操作ボタン516の設置位置における上皿の本体内部などには、操作ボタン516に対してなされた遊技者の操作行為を検知するボタンスイッチ516a(図3を参照)が設けられていればよい。
【0020】
ガラス扉枠102の背面には、前面枠101に対して着脱可能に取り付けられた透明な遊技盤6が配置されている。尚、遊技盤6は、それを構成する板状体と、その板状体に取り付けられた種々の部品とを含む構造体である。また、遊技盤6の前面には遊技領域7が形成されている。
【0021】
遊技領域7の中央付近には、それぞれが演出用の飾り図柄を変動表示する複数の変動表示領域を含む変動表示装置(飾り図柄表示装置)9が、透明な遊技盤6を透して目視できるように、該遊技盤6の背面に設けられている。また、遊技盤6の所定箇所には、各々を識別可能な複数種類の識別情報としての特別図柄を変動表示する特別図柄表示器(特別図柄表示装置)8(図3参照)が設けられている。変動表示装置9には、例えば「左」、「中」、「右」の3つの変動表示領域(図柄表示エリア)がある。変動表示装置9は、特別図柄表示器8による特別図柄の変動表示期間中に、装飾用(演出用)の図柄であって、各々を識別可能な複数種類の識別情報としての飾り図柄の変動表示を行う。変動表示装置9は、後述する演出制御基板80に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータ81(図3参照)等の各デバイスによって制御される。
【0022】
特別図柄表示器8は、例えば0〜9の数字を変動表示可能な簡易で小型の表示器(例えば7セグメントLED)で実現されている。特別図柄表示器8には、第1識別情報としての第1特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器(第1可変表示手段)8aと、第2識別情報としての第2特別図柄を可変表示する第2特別図柄表示器(第2可変表示手段)8bが設けられている。
【0023】
第1特別図柄の可変表示は、可変表示の実行条件である第1始動条件が成立(例えば、遊技球が後述する第1始動口15aに入賞したこと)した後、可変表示の開始条件(例えば、保留記憶数が0でない場合であって、第1特別図柄の可変表示が実行されていない状態であり、かつ、大当り遊技が実行されていない状態)が成立したことにもとづいて開始され、可変表示時間(変動時間)が経過すると表示結果(停止図柄)を導出表示する。また、第2特別図柄の可変表示は、可変表示の実行条件である第2始動条件が成立(例えば、遊技球が後述する第2始動口15bに入賞したこと)した後、可変表示の開始条件(例えば、保留記憶数が0でない場合であって、第2特別図柄の可変表示が実行されていない状態であり、かつ、大当り遊技が実行されていない状態)が成立したことにもとづいて開始され、可変表示時間(変動時間)が経過すると表示結果(停止図柄)を導出表示する。なお、入賞とは、入賞口などのあらかじめ入賞領域として定められている領域に遊技球が入ったことである。また、表示結果を導出表示するとは、図柄(識別情報の例)を最終的に停止表示させることである。
【0024】
また、変動表示装置9は、画像(映像)を表示可能な画像用液晶パネルよりなる画像表示装置で実現されている。変動表示装置9は、特別図柄表示器8による特別図柄の変動表示期間中に、飾り図柄の変動表示を行う。
【0025】
なお、本実施例においては、変動表示装置9は、画像用液晶パネルを用いた例について説明するが、これに限らず、画像用液晶パネルのデバイスとしては、CRT(Cathode Ray Tube)、FED(Field Emission Display)、PDP(Plasma Display Panel)、ドットマトリクスLED、有機或いは無機のエレクトロルミネッセンス(EL)パネル等のその他の画像表示形態の表示装置により構成されてもよい。
【0026】
変動表示装置9の下方には、パチンコ球を受け入れ可能な入賞領域としての第1始動口15aおよび第2始動口15bを有する始動入賞装置15が設けられている。始動入賞装置15では、上部に第1始動口15aが設けられ、その下部に第2始動口15bが設けられている。第2始動口15bの左右には、開閉動作をすることが可能な態様で一対の可動片13、13が設けられている。第1始動口15aは、上方を向いて開口しており、常にパチンコ球の進入(受け入れ)が可能な状態となっている。一方、第2始動口15bは、上方に第1始動口15aの周囲の構造物が設けられ、左右に可動片13、13が設けられているため、可動片13、13が閉状態であるときにパチンコ球の進入(受け入れ)が不可能な状態となり、可動片13、13が開状態であるときにパチンコ球の進入(受け入れ)が可能な状態となる。このように、第1始動口15aは入賞のしやすさが変化せず、第2始動口15bは可動片13、13の開閉動作によって入賞のしやすさが変化する。
【0027】
尚、始動入賞装置15は、可動片13、13が閉状態になっている状態において、第2始動口15bに入賞はしづらいものの、入賞することは可能である(すなわち、パチンコ球が入賞しにくい)ように構成されていても良い。また、始動入賞装置15は、始動口として、入賞のしやすさが変化しない第1始動口15aのみが設けられたものであっても良く、可動片13、13の開閉動作によって入賞のしやすさが変化する第2始動口15bのみが設けられたものであっても良い。
【0028】
始動入賞装置15の可動片13、13は、後述する開放条件が成立したときに、ソレノイド16によって駆動されることにより、閉状態から所定期間開状態とされた後、閉状態とされる。始動入賞装置15の可動片13、13が開状態となることにより、パチンコ球が第2始動口15bに入賞し易くなり(始動入賞し易くなり)、遊技者にとって有利な状態(第1の状態)となる。一方、始動入賞装置15の可動片13、13が閉状態となることにより、パチンコ球が第2始動口15bに入賞しなくなり(始動入賞しにくくなり)、遊技者にとって不利な状態(第2の状態)となる。第1始動口15aに入った入賞球は、遊技盤6の背面に導かれ、第1始動口スイッチ14aによって検出される。また、第2始動口15bに入った入賞球は、遊技盤6の背面に導かれ、第2始動口スイッチ14bによって検出される。
【0029】
遊技盤6の所定箇所には、第1始動口スイッチ14aまたは第2始動口スイッチ14bに入った有効入賞球の記憶数すなわち保留記憶(始動記憶または始動入賞記憶ともいう)数を表示する4つの特別図柄保留記憶表示器18(図3参照)が設けられている。特別図柄保留記憶表示器18は、保留記憶数を入賞順に4個まで表示する。特別図柄保留記憶表示器18は、第1始動口15aまたは第2始動口15bに始動入賞があるごとに、保留記憶の記憶データが1増えて、点灯状態のLEDの数を1増やす。そして、特別図柄保留記憶表示器18は、特別図柄表示器8で変動表示が開始されるごとに、保留記憶の記憶データが1減って、点灯状態のLEDの数を1減らす(すなわち1つのLEDを消灯する)。具体的には、特別図柄保留記憶表示器18は、特別図柄表示器8で変動表示が開始されるごとに、点灯状態をシフトする。尚、この例では、第1始動口15aまたは第2始動口15bへの入賞による保留記憶数に上限数(4個まで)が設けられている。しかし、これに限らず、保留記憶数の上限数は、4個以上の値にしても良く、4個よりも少ない値にしても良い。
【0030】
始動入賞装置15の下部には、ソレノイド21によって開閉される開閉板を用いた特別可変入賞球装置20が設けられている。特別可変入賞球装置20は、開閉板によって開閉される大入賞口が設けられており、大当り遊技状態において開閉板が遊技者にとって有利な開状態(第1の状態)に制御され、大当り遊技状態以外の状態において開閉板が遊技者にとって不利な閉状態(第2の状態)に制御される。このように、特別可変入賞球装置20は、大当り遊技状態となるときに開放条件が成立する。特別可変入賞球装置20に入賞し遊技盤6の背面に導かれた入賞球のうち一方(V入賞領域:特別領域)に入った入賞球及び他方の領域に入ったパチンコ球は、そのままカウントスイッチ23で検出される。遊技盤6の背面には、大入賞口内の経路を切り換えるためのソレノイド21a(図3参照)も設けられている。
【0031】
パチンコ球がゲート32を通過しゲートスイッチ32aで検出されると、複数種類の識別情報としての普通図柄を変動表示する普通図柄表示器10における変動表示が開始される。この実施例では、図示しない左右のLED(点灯時に図柄が視認可能になる)が交互に点灯することによって変動表示が行なわれ、例えば、変動表示の終了時に左側のLEDが点灯すれば当りになる。そして、普通図柄表示器10における停止図柄が所定の図柄(当り図柄)となったときに、始動入賞装置15の可動片13、13の開放条件が成立し、始動入賞装置15における可動片13、13が所定回数、所定時間だけ開状態になる。普通図柄表示器10の近傍には、ゲート32を通過した有効通過球の記憶数、すなわち、始動通過記憶数を表示する4つのLEDによる表示部を有する普通図柄保留記憶表示器41(図3参照)が設けられている。ゲート32へのパチンコ球の通過があるごとに、始動通過記憶の記憶データが1増えて、普通図柄保留記憶表示器41は点灯するLEDを1増やす。そして、普通図柄表示器10における変動表示が開始されるごとに、始動通過記憶の記憶データが1減って、点灯するLEDを1減らす。
【0032】
遊技盤6には、パチンコ球を受け入れて入賞を許容する入賞装置の入賞領域として、第1通常入賞口29、第2通常入賞口30よりなる複数の通常入賞口が設けられる。第1通常入賞口29へのパチンコ球の入賞は、第1入賞口スイッチ29aによって検出される。第2通常入賞口30へのパチンコ球の入賞は、第2入賞口スイッチ30aによって検出される。尚、第1始動口15a、第2始動口15b、および、大入賞口も、パチンコ球を受け入れて入賞を許容する入賞装置の入賞領域を構成する。また、遊技領域7の左右周辺には、遊技中に点滅表示される装飾LED25aが内蔵される装飾発光部25L、25Rが設けられ、下部には、入賞しなかったパチンコ球を回収するアウト口26がある。
【0033】
遊技領域7の外側の左右上部には、効果音を発する2つのスピーカ27L、27Rが設けられ、左右下部には、効果音を発する2つのスピーカ27a、27bが設けられている。尚、以下の説明では、スピーカ27L、27R、27a、27bと総称してスピーカ27と表記する場合がある。
【0034】
遊技領域7の外周には、回転体用LED等の各種LEDが内蔵される天ランプモジュール530と、左枠LED28b(図3参照)が内蔵される左発光部28Lおよび右枠LED28c(図3参照)が内蔵される右発光部28Rが設けられている。さらに、遊技領域7における各構造物(大入賞口等)の周囲には装飾LEDが設置されている。これら回転体用LED、左枠LED28bおよび右枠LED28cおよび装飾用LEDは、パチンコ機1に設けられている装飾発光体の一例である。
【0035】
そして、この例では、左発光部28Lの所定箇所に、賞球払出中に点灯する賞球LED51が設けられ、右枠LED28cの所定箇所に、補給球が切れたときに点灯する球切れLED52が設けられている。
【0036】
賞球LED51、球切れLED52、装飾LED25a、左枠LED28b、右枠LED28c、天ランプモジュール530内の各LED等の各種発光手段は、主基板31から出力される演出制御コマンドに基づき演出制御用マイクロコンピュータ81から出力されるシリアル信号に基づいて点灯制御(LED制御)される。また、スピーカ27L、27R、27a、27bからの音発生制御(音制御)も、演出制御用マイクロコンピュータ81により実施される。
【0037】
遊技者の打球操作ハンドル5の操作により図示しない打球発射装置から発射されたパチンコ球は、打球誘導レール(図示略)を通って遊技領域7に入り、その後、遊技領域7に立設された遊技釘に当接して進路を変更しながら該遊技領域7を下りてくる。パチンコ球が、第1始動口15aに入り第1始動口スイッチ14aで検出されるか、または、第2始動口15bに入り第2始動口スイッチ14bで検出されると、特別図柄の変動表示を開始できる状態であれば、特別図柄表示器8において特別図柄が変動表示を始める。特別図柄の変動表示を開始できる状態でなければ、保留記憶数を1増やす。
【0038】
特別図柄表示器8における特別図柄の変動表示は、変動表示が行なわれるごとに設定された変動表示時間が経過したときに停止する。停止時の特別図柄(停止図柄)が特定表示結果としての大当り図柄(大当り表示結果ともいう)であると、大当りとなり、大当り遊技状態に移行する。大当り遊技状態においては、特別可変入賞球装置20が、一定時間経過するまで、または、所定個数(例えば10個)のパチンコ球が入賞するまで開放する。そして、特別可変入賞球装置20の開放中にパチンコ球がV入賞領域に入賞しカウントスイッチ23で検出されると、継続権が発生し特別可変入賞球装置20の開放が再度行なわれる。継続権の発生は、例えば15ラウンドのような所定回数を上限値として許容される。このような制御は、繰返し継続制御と呼ばれる。繰返し継続制御において、特別可変入賞球装置20が開放されている状態がラウンドと呼ばれる。
【0039】
停止時の特別図柄表示器8における特別図柄が大当り図柄のうちの予め定められた特別な大当り図柄(確変大当り図柄)である場合には、大当り遊技状態後に大当りとすると判定される確率(大当り確率)が、大当り遊技状態と異なる通常状態である通常遊技状態よりも高くなる確率変動状態(以下、確変状態と呼ぶ)という遊技者にとってさらに有利な状態になる。以下、確変状態は、高確率状態(高確状態と略称で呼ぶ場合もある)ともいう。また、非確変状態は、低確率状態(低確状態と略称で呼ぶ場合もある)ともいう。
【0040】
また、特別図柄表示器8での変動表示の停止時における特別図柄の表示結果が、確変大当り図柄である場合には、大当り遊技状態後に変動時間短縮状態である時短状態に所定期間に亘り制御される。時短状態とは、通常遊技状態に比べて、特別図柄表示器8、変動表示装置9、および、普通図柄表示器10のそれぞれの変動表示時間(変動開始時から表示結果の導出表示時までの時間)を短縮して早期に表示結果を導出表示させる制御状態をいう。さらに、時短状態中には、普通図柄表示器10における停止図柄が当り図柄になる確率が高められるとともに、始動入賞装置15の可動片13、13の開放時間が長くされ、開放回数が増加させられる。時短状態中では、図柄の変動表示時間が短縮されるので、後述する保留記憶数が早期に消化され、保留記憶数の上限(例えば「4」)を超えて発生した始動入賞が無効になってしまう状態を減少でき、短期間に頻繁に表示結果を導出表示して早期に大当り表示結果を導出表示しやすくなるので、時間効率的な観点で変動表示の表示結果が大当り図柄の表示結果となりやすくなり、遊技者にとって有利な遊技状態となる。このように、確変大当りAの場合は、大当り遊技状態の終了後の所定期間において、高確率状態かつ時短状態に制御されることとなる。大当り遊技状態の終了後の所定期間に亘る時短状態は、次の大当り遊技状態が発生するか、または、特別図柄および飾り図柄の変動表示が所定回数(100回)行なわれるまでの、いずれか早い方の条件が成立するまで継続される。
【0041】
また、入賞に応じたパチンコ球の払出しの面から考えると、時短状態は、非時短状態と比べて、普通図柄の変動表示時間が短縮され、普通図柄表示器10における停止図柄が当り図柄になる確率が高められ、当り時における始動入賞装置15の可動片13、13の開放時間が長くされ、当り時における始動入賞装置15の可動片13、13の1度の開放回数が多くされることに基づいて、通常遊技状態と比べて始動入賞装置15の可動片13、13が開放状態となりやすい。したがって、時短状態では、第2始動口15bへの入賞(始動入賞が有効である場合と無効である場合との両方を含む)が生じやすくなるため、遊技領域7へ打込んだパチンコ球数(打込球数)に対して、入賞に応じた賞球として払出されるパチンコ球数(払出球数)の割合が、通常遊技状態と比べて多くなる。一般的に、発射球数に対する入賞による賞球の払出球数の割合は、「ベース」と呼ばれる。例えば、100球の打込球数に対して40球の払出球数があったときには、ベースは40(%)となる。この実施例の場合では、例えば通常遊技状態のような非時短状態よりもベースが高い時短状態を高ベース状態と呼び、逆に、そのような高ベース状態と比べてベースが低い通常遊技状態のような非時短状態を低ベース状態と呼ぶ。
【0042】
このように、発射球数に対する入賞による賞球の払出球数の割合が一般的に「ベース」と呼ばれるが、例えば1分間等の単位時間におけるパチンコ球の最大発射数は、一定数に制限されている。このため、「ベース」は、単位時間において、遊技領域に設けられた複数の入賞口への入賞による賞球の払出球数の合計値によっても示すことができる。例えば、単位時間におけるパチンコ球の最大発射数を100球とすると、単位時間における入賞による賞球の払出球数の合計値は、一般的な「ベース」の値と一致することとなる。このような関連性に基づいて、本実施形態では、第1始動口15a、第2始動口15b、第1通常入賞口29、第2通常入賞口30のそれぞれを異常監視対象入賞口としており、該異常監視対象入賞口の入賞による賞球の払出球数の合計値は、ベースと呼ばれ、入賞に関する異常監視の対象として用いられる。
【0043】
確変状態(高確率状態)と非確変状態(低確率状態)とのどちらの状態であるかは、確変状態においてセットされるフラグである確変フラグがセットされているか否かに基づいて判断される。また、時短状態(高ベース状態)と非時短状態(低ベース状態)とのどちらの状態であるかは、時短状態においてセットされるフラグである時短フラグがセットされているか否かに基づいて判断される。
【0044】
また、前述の時短状態に制御されていない状態においては、特別図柄の保留記憶数が所定個数以上となるごとに、特別図柄および飾り図柄の変動表示時間を短縮する記憶変動短縮状態に制御する記憶変動短縮制御が行なわれる。記憶変動短縮制御は、特別図柄の保留記憶数が所定個数未満となった段階で終了する。したがって、時短状態に制御されていない状態においても、特別図柄および飾り図柄の変動表示時間が短縮される場合がある。
【0045】
変動表示装置9において変動表示される飾り図柄は、特別図柄表示器8における特別図柄の変動表示の装飾効果を高めるために、特別図柄の変動表示と所定の関係を有して変動表示される装飾的な意味合いがある図柄である。このような図柄についての所定の関係には、例えば、特別図柄の変動表示が開始されたときに飾り図柄の変動表示が開始する関係、および、特別図柄の変動表示の終了時に特別図柄の表示結果が導出表示されるときに飾り図柄の表示結果が導出表示されて飾り図柄の変動表示が終了する関係等が含まれる。特別図柄表示器8により予め定められた大当り図柄が表示結果として導出表示されるときには、変動表示装置9により、左、中、右図柄がゾロ目となる大当り図柄の組合せが表示結果として導出表示される。このような特別図柄による大当り図柄の表示結果および飾り図柄による大当り図柄の組合せの表示結果は、大当り表示結果という。
【0046】
特別図柄表示器8と変動表示装置9とは変動表示結果が前述したような対応関係になるため、以下の説明においては、これらをまとめて変動表示部と呼ぶ場合がある。
【0047】
次に、リーチ表示態様(リーチ)について説明する。本実施形態におけるリーチ表示態様(リーチ)とは、停止した図柄が大当り図柄の一部を構成しているときに未だ停止していない図柄については変動表示が行なわれていること、および、すべてまたは一部の図柄が大当り図柄のすべてまたは一部を構成しながら同期して変動表示している状態である。
【0048】
例えば、変動表示装置9において、図柄が停止することで大当りとなる有効ライン(本実施例の場合は横1本の有効ライン)が予め定められ、その有効ライン上の一部の表示領域に予め定められた図柄が停止しているときに未だ停止していない有効ライン上の表示領域において変動表示が行なわれている状態(例えば、変動表示装置9における左、中、右の変動表示領域のうち左、右の表示領域に同一の図柄が停止表示されている状態で中の表示領域は未だ変動表示が行なわれている状態)、および、有効ライン上の表示領域のすべてまたは一部の図柄が大当り図柄のすべてまたは一部を構成しながら同期して変動表示している状態(例えば、変動表示装置9における左、中、右の表示領域のすべてに変動表示が行なわれており、常に同一の図柄が揃っている状態で変動表示が行なわれている状態)をリーチ表示態様またはリーチという。
【0049】
また、リーチの際に、通常と異なる演出がLEDや音で行なわれることがある。この演出をリーチ演出という。また、リーチの際に、キャラクタ(人物等を模した演出表示であり、図柄(飾り図柄等)とは異なるもの)を表示させたり、変動表示装置9の背景画像の表示態様(例えば、色等)を変化させたりすることがある。このキャラクタの表示や背景の表示態様の変化をリーチ演出表示という。また、リーチの中には、それが出現すると、通常のリーチに比べて、大当りが発生しやすいように設定されたものがある。このような特別(特定)のリーチをスーパーリーチという。
【0050】
また、変動表示装置9については、大当りを発生させる契機となる変動表示において、大当りとなる可能性がある旨を報知する擬似連等の大当り予告演出が行なわれる場合がある。
【0051】
この実施例の場合は、大当りとして、後述するように通常大当りCおよび確変大当りAというような複数種類の大当りが設けられている。以下の説明においては、大当りの種類を特定せずに単に「大当り」と示すときは、これら複数種類の大当りを代表して示す場合である。
【0052】
通常大当りCは、大当り遊技状態の終了後に確変状態にならず、かつ、時短状態にならないことにより、低確率状態、かつ、低ベース状態となる大当り(非確変大当り)である。このような、低確率状態かつ低ベース状態となった状態は、低確低ベース状態と呼ばれる。確変大当りAは、大当り遊技状態の終了後に確変状態になり、かつ、所定期間に亘り時短状態になる高確率状態、かつ、高ベース状態となる大当りである。このような、高確率状態かつ高ベース状態となった状態は、高確高ベース状態と呼ばれる。確変大当りとなった後においては、所定期間が経過すると時短状態が終了し、高確率状態、かつ、低ベース状態になる。このような、高確率状態かつ低ベース状態となった状態は、高確低ベース状態と呼ばれる。
【0053】
次に、パチンコ機1の背面(裏面)の構造について図2を参照して説明する。図2は、パチンコ機を示す背面図である。
【0054】
図2に示すように、パチンコ機1裏面側では、変動表示装置9を制御する演出制御用マイクロコンピュータが搭載された演出制御基板80を含む変動表示制御ユニット49、遊技制御用マイクロコンピュータ等が搭載された遊技制御基板(主基板)31、音声出力基板70、LEDドライバ基板(図示省略)、および、球払出制御を行う払出制御用マイクロコンピュータ等が搭載された払出制御基板37等の各種基板が設置されている。
【0055】
さらに、パチンコ機1裏面側には、DC30V、DC21V、DC12VおよびDC5V等の各種電源電圧を作成する電源回路が搭載された電源基板960や発射制御基板91Aが設けられている。電源基板960は、発射制御基板91Aの背面側に取り付けられ、その背面側に払出制御基板37が重なっているが、払出制御基板37に重なることなく外部から視認可能に露出した露出部分には、パチンコ機1における主基板31および各電気部品制御基板(演出制御基板80および払出制御基板37)やパチンコ機1に設けられている各電気部品(電力が供給されることによって動作する部品)への電力供給を実行あるいは遮断するための電力供給許可手段としての電源スイッチが設けられている。さらに、露出部分における電源スイッチの内側(基板内部側)には、交換可能なヒューズが設けられている。
【0056】
尚、電気部品制御基板には、電気部品制御用マイクロコンピュータを含む電気部品制御手段が搭載されている。電気部品制御手段は、遊技制御手段等からのコマンドとしての指令信号(制御信号)にしたがってパチンコ機1に設けられている電気部品(遊技用装置:球払出装置97、変動表示装置9、LEDなどの発光体、スピーカ27L、27R、27a、27b等)を制御する。以下、主基板31を電気部品制御基板に含めて説明を行うことがある。その場合には、電気部品制御基板に搭載される電気部品制御手段は、遊技制御手段と、遊技制御手段等からの指令信号にしたがってパチンコ機1に設けられている電気部品を制御する手段とのそれぞれを指す。また、主基板31以外のマイクロコンピュータが搭載された基板をサブ基板ということがある。
【0057】
パチンコ機1裏面において、上方には、各種情報をパチンコ機1外部に出力するための各端子を備えたターミナル基板(図示略)が設置されている。ターミナル基板には、少なくとも、球切れ検出スイッチ167の出力を導入して外部出力するための球切れ用端子、賞球情報(賞球個数信号)を外部出力するための賞球用端子および球貸し情報(球貸し個数信号)を外部出力するための球貸し用端子が設けられている。また、中央付近には、主基板31からの各種情報をパチンコ機1外部に出力するための各端子を備えた情報端子基板(情報出力基板)36が設置されている。
【0058】
図示しない遊技機設置島から供給される球を貯留可能な球タンク38に貯留されたパチンコ球は、タンクレールを通り、カーブ樋を経てケースカバーで覆われた球払出装置97に至る。球払出装置97の上方の球経路761には、通路内に球がない旨を検出する遊技媒体切れ検出手段としての球切れ検出スイッチ167が設けられている。球切れ検出スイッチ167が球切れを検出すると、球払出装置97の払出動作が停止する。球切れ検出スイッチ167はパチンコ球通路内のパチンコ球の有無を検出するスイッチである。球切れ検出スイッチ167がパチンコ球の不足を検知すると、遊技機設置島に設けられている補給機構からパチンコ機1に対してパチンコ球の補給が行なわれる。
【0059】
入賞に基づく景品としてのパチンコ球や球貸し要求に基づくパチンコ球が多数払出されて上皿3が満杯になると、パチンコ球は後述する溢れ球通路を経て下皿4に導かれる。さらにパチンコ球が払出されると、スイッチ片(図示略)が貯留状態検出手段としての満タンスイッチ19(図3参照)を押圧して、貯留状態検出手段としての満タンスイッチ19がオンする。その状態では、球払出装置内の払出モータの回転が停止して球払出装置の動作が停止するとともに打球発射装置の駆動も停止する。
【0060】
図3は、主基板31における回路構成の一例を示すブロック図である。尚、図3には、パチンコ機1に搭載されている払出制御基板37、中継基板77、及び、演出制御基板80も示されている。主基板(遊技制御基板)31には、プログラムにしたがってパチンコ機1を制御する基本回路(遊技制御手段に相当)となる遊技制御用マイクロコンピュータ156と、ゲートスイッチ32a、第1始動口スイッチ14a、第2始動口スイッチ14b、カウントスイッチ23、第1入賞口スイッチ29a、第2入賞口スイッチ30aからの信号の他、電源断信号およびクリア信号等の各種信号を遊技制御用マイクロコンピュータ156に与える入力回路58と、始動入賞装置15の可動片13、13を開閉するソレノイド16、特別可変入賞球装置20を開閉するソレノイド21、および、大入賞口内の経路を切り換えるためのソレノイド21aを遊技制御用マイクロコンピュータ156からの指令にしたがって駆動する出力回路59と、が搭載されている。
【0061】
遊技制御用マイクロコンピュータ156は、ゲーム制御(遊技進行制御)用のプログラム等を記憶するROM54、ワークメモリとして使用される記憶手段(変動データを記憶する変動データ記憶手段)としてのRAM55、およびプログラムにしたがって制御動作を行うプロセッサであるCPU56、および、I/Oポート57を含む。遊技制御用マイクロコンピュータ156は、1チップマイクロコンピュータである。
【0062】
遊技制御用マイクロコンピュータ156においては、CPU56がROM54に格納されているプログラムにしたがって制御を実行する。したがって、以下に説明するような遊技制御用マイクロコンピュータ156が実行する(または、処理を行う)ということは、具体的にはCPU56がプログラムにしたがって制御を実行することである。このことは、主基板31以外の他の基板に搭載されているマイクロコンピュータについても同様である。また、遊技制御手段は、CPU56を含む遊技制御用マイクロコンピュータ156で実現されている。
【0063】
また、遊技制御用マイクロコンピュータ156は、クロック信号を発生させるクロック回路、システムリセット手段として機能するリセットコントローラ、乱数回路、および、CPU56に割込要求信号を送出するCTCを内蔵する。
【0064】
乱数回路は、特別図柄および飾り図柄の変動表示の表示結果により大当りとするか否かを判定するための判定用の乱数を発生するために用いられるハードウェア回路である。この乱数回路は、初期値(例えば、0)と上限値(例えば、65535)とが設定された数値範囲内で、数値データを、設定された更新規則にしたがって更新させていき、ランダムなタイミングで発生する始動入賞時が数値データの読出(抽出)時であることに基づいて、読出される数値データが乱数値となる乱数発生機能を有する。
【0065】
遊技制御用マイクロコンピュータ156は、第1始動口スイッチ14aまたは第2始動口スイッチ14bへの始動入賞が生じたときに乱数回路から数値データを乱数値R1として読出し、その数値データに基づいて特定の表示結果としての大当り表示結果にするか否か、すなわち、大当りとするか否かを判定する。そして、大当りとすると判定したときに、遊技状態を遊技者にとって有利な特定遊技状態としての大当り遊技状態に移行させる。尚、大当りとするか否かの判定は、実際には特別図柄および飾り図柄の変動表示の開始時に、始動入賞時に抽出した乱数値に基づいて実行される。また、乱数回路が発生させた乱数は、確変とするか否かを決定するための確変判定用乱数や、特別図柄の変動パターンを決定する変動パターン決定用乱数など、大当りとするか否かの判定以外の判定用乱数として用いても良い。
【0066】
クロック回路は、システムクロック信号をCPU56に出力し、このシステムクロック信号を分周して生成した所定の周期の基準クロック信号CLKを、各乱数回路に出力する。リセットコントローラは、ローレベルの信号が一定期間入力されたとき、CPU56および各乱数回路に所定の初期化信号を出力して、遊技制御用マイクロコンピュータ156をシステムリセットする。
【0067】
また、RAM55は、その一部または全部が電源基板960において作成されるバックアップ電源によってバックアップされている揮発性記憶手段としてのバックアップRAMである。すなわち、パチンコ機1に対する電源電力の供給が停止したときである電源断時でも、所定期間(バックアップ電源としてのコンデンサが放電してバックアップ電源が電力供給不能になるまで)は、RAM55の一部または全部の内容は保存される。特に、少なくとも、遊技の制御状態に応じたデータ(特別図柄プロセスフラグ等)と未払出賞球数を示すデータとは、バックアップデータとして、RAM55に保存される。制御状態に応じたデータとは、停電等が生じた後に復旧した場合に、そのデータに基づいて、制御状態を停電等の発生前に復旧させるために必要なデータである。
【0068】
さらに、電源基板960からの電源電圧が所定値以下に低下したことを示す電源断信号が入力回路58に入力される。電源断信号は、入力回路58を介して、遊技制御用マイクロコンピュータ156の入力ポートに入力される。また、遊技制御用マイクロコンピュータ156の入力ポートには、RAMの内容をクリアすることを指示するためのクリアスイッチが操作されたことを示すクリア信号が入力回路58に入力される。クリア信号は、入力回路58を介して、遊技制御用マイクロコンピュータ156の入力ポートに入力される。
【0069】
また、複数のスイッチのそれぞれは、入力回路58を介して、遊技制御用マイクロコンピュータ156の入力ポートに接続されている。これにより、遊技制御用マイクロコンピュータ156は、複数のスイッチのそれぞれから各スイッチの入力状態を示す入力検出信号を受ける。
【0070】
また、遊技制御用マイクロコンピュータ156が搭載する出力回路78は、CPU56が出力する演出制御コマンドを、中継基板77を介して演出制御基板80に送信する。また、出力回路78は、CPU56が出力する制御信号を、中継基板77を介して特別図柄表示器8や特別図柄保留記憶表示器18、普通図柄表示器10、普通図柄保留記憶表示器41に出力し、中継基板77を介して特別図柄表示器8や特別図柄保留記憶表示器18、普通図柄表示器10、普通図柄保留記憶表示器41に供給される。尚、特別図柄表示器8や特別図柄保留記憶表示器18、普通図柄表示器10、普通図柄保留記憶表示器41を、中継基板77を介さずに主基板31に直接接続するようにしても良い。
【0071】
遊技制御用マイクロコンピュータ156は、演出制御基板80に表示制御、音制御、および、LED制御を含む演出制御を指令するための制御信号としての演出制御コマンド(演出制御信号)を送信する。
【0072】
遊技制御用マイクロコンピュータ156が演出制御基板80に対して送信する演出制御コマンドには、客待ちデモ指定コマンドや可変表示コマンドが含まれる。
【0073】
客待ちデモ指定コマンドは、遊技制御用マイクロコンピュータ156が客待ちデモンストレーション時の表示を指定する演出制御コマンド(客待ちデモ指定コマンド)であり、特別図柄の変動が終了してから所定時間が経過したことに応じて送出され、該客待ちデモ指定コマンドが演出制御基板80に対して送出されたときには、変動表示装置9に所定の客待ちデモ画面が表示される。つまり、通常においては、遊技者が交替するときには、遊技者が不在となる期間が存在するので、これら客待ちデモ指定コマンドは、遊技者が交替することで遊技者が不在となったと想定されるときに出力される。
【0074】
また、可変表示コマンドは、特別図柄の可変表示に対応して変動表示装置9において可変表示される飾り図柄の変動パターンを指定するために、変動開始時に送信される演出制御コマンドであり、変動開始を指定するためのコマンドである。
【0075】
演出制御基板80には、中継基板77を介して遊技制御用マイクロコンピュータ156からの演出制御コマンドを受信し、変動表示装置9での演出表示の表示制御や、本発明における遊技関連音となる演出に係わる効果音(演出音)の出力制御を行う演出制御用マイクロコンピュータ81等の電気部品制御手段が搭載されている。
【0076】
この実施例では、演出制御基板80に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータ81が、中継基板77を介して遊技制御用マイクロコンピュータ156からの演出制御コマンドを受信し、飾り図柄を可変表示する変動表示装置9の表示制御やスピーカ27L、27R、27a、27bからの音出力制御を行う。
【0077】
また、演出制御基板80に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータ81が、レバースイッチ510a〜510dやボタンスイッチ516aからの検出信号を検知することで、操作レバー600の操作や操作ボタン516の遊技者による操作を検知する。
【0078】
また、演出制御用マイクロコンピュータ81は、遊技盤6に設けられているステージLED25bの表示制御を行うとともに、枠側に設けられている賞球LED51、球切れLED52、左枠LED28b、右枠LED28c、並びに天ランプモジュール530内の各LEDの点灯制御を行う。
【0079】
図4に示すように、演出制御基板80は、演出制御用CPU86、RAM85を含む演出制御用マイクロコンピュータ81を搭載している。演出制御基板80において、演出制御用CPU86は、図示しない内蔵のROMに格納されたプログラムに従って動作し、入力回路260を介して演出制御コマンドを受信する。
【0080】
また、演出制御用CPU86は、演出制御コマンドにもとづいて、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)262に、変動表示装置9に表示する画像生成等の変動表示装置9の表示制御を行わせる表示制御処理を実施する。
【0081】
VDP262は、演出制御用マイクロコンピュータ81とは独立したアドレス空間を有し、そこにVRAMをマッピングする。VRAMは、画像データを展開するためのバッファメモリである。そして、VDP262は、VRAM内の画像データを、フレームメモリを介して変動表示装置9に出力する。
【0082】
演出制御用CPU86は、受信した演出制御コマンドに従ってCGROM(図示せず)から必要なデータを読み出すための指令をVDP262に出力する。CGROMは、変動表示装置9に表示されるキャラクタ画像データや動画像データ、具体的には、人物、文字、図形や記号等(飾り図柄を含む)、および背景画像のデータをあらかじめ格納しておくためのROMである。VDP262は、演出制御用CPU86の指令に応じて、CGROMから画像データを読み出す。そして、VDP262は、読み出した画像データにもとづいて表示制御を実行する。
【0083】
また、この実施の形態では、演出制御用マイクロコンピュータ81(演出制御用CPU86)と共動して、各スピーカ27R、27L、27a、27bから出力する音を生成する音声処理IC173とD/AコンバータIC177並びに該D/AコンバータIC177にてアナログ信号に変換された音信号(生成音)を増幅するデジタルアンプ175が演出制御基板80に搭載されており、演出制御用CPU86は、主基板31からの演出制御コマンドにもとづいて音番号(ID)データを音声処理IC173に出力して、該音番号(ID)データに対応する音を音声処理IC173に生成させる。
【0084】
音声処理IC173は、演出制御用マイクロコンピュータ81から音番号データが入力されると、該入力された音番号データに応じた音声や効果音を、各スピーカ27R、27L、27a、27b毎に個別に生成しデジタルアンプ175に出力する。デジタルアンプ175は、D/AコンバータIC177の出力レベルを、演出制御用マイクロコンピュータ81(演出制御用CPU86)により設定されている音量レベルに応じた音量に増幅して各スピーカ27R、27L、27a、27bに出力する。
【0085】
音声処理IC173には、図4、図5に示すように、外部ROM174がローカルに接続されている。この外部ROM174には、音番号(ID)データに対応付けて該音番号(ID)データが該当する演出コマンドにより実施される各種演出に対応した音を出力するための各スピーカ27R、27L、27a、27b毎の音制御データが格納されている。つまり、これら音制御データは、演出期間(例えば飾り図柄の変動期間)において各スピーカ27R、27L、27a、27bから出力する効果音または音声の出力態様(音量レベル、音像を定位される位置、エコー等のエフェクトの有無等)が時系列的に音源データとともに記述されたデータの集まりである。
【0086】
また、本実施例の外部ROM174には、上記した音源データを含む音制御データとともに、図5に示すように周波数特性補正データや位相特性補正データが格納(記憶)されている。
【0087】
ここで、本実施例に用いた音声処理IC173の構成について、図5に基づき説明すると、本実施例の音声処理IC173は、具体的には、各種のデジタルフィルタ等をプログラムにて形成可能なデジタルシグナルプロセッサ(DSP)にて構成されている。
【0088】
音声処理IC173の内部には、図5に示すように、システムバスが設けられており、システムバスにはCPUインターフェイス201を介して演出制御用マイクロコンピュータ81のCPU86と接続されている。
【0089】
システムバスには、CPUインターフェイス201とともに、音声処理IC173における処理をコントロールするためのコントロールプロセッサ200、外部ROM174が接続されるメモリインターフェイス(I/F)202、高速動作可能な揮発性メモリから成る内部RAM203、外部ROM174に記憶されている音源データをデコードして生成音の波形に対応する音ストリームデータを生成するデコーダ204と、デコーダ204にて生成された音(音ストリームデータ)の位相を補正する位相補正処理(図8)や振幅を補正する振幅補正処理(図9)を実施する第1DSP部205、第1DSP部205において補正された音(音ストリームデータ)に各種のエフェクトを付加する第2DSP部206が接続されている。
【0090】
よって、コントロールプロセッサ200は、システムバスを通じてデコーダ204、第1DSP部205、第2DSP部206に、各種の指示(コマンド)を出力することで、これらデコーダ204における音(音ストリームデータ)の生成や、第1DSP部205、第2DSP部206における各種のフィルタ処理をコントロールすることが可能とされている。
【0091】
尚、第2DSP部206には、該第2DSP部206にて処理された音(音ストリームデータ)をD/AコンバータIC177に出力する音データ出力インターフェイス(I/F)207がローカルに接続されている。
【0092】
また、内部RAM203には、図5に示すように、CPUインターフェイス201を介して演出制御用マイクロコンピュータ81(演出制御用CPU86)から入力される指示コマンドが順次格納されるコマンドレジスタや、音制御データに含まれる制御データに基づく制御を行うための各種制御フラグ等が格納されるシステムレジスタが設けられているとともに、後述するように起動処理において外部ROM174から読み出された周波数特性補正データ並びに位相特性補正データとが記憶されており、第1DSP部205がシステムバスを介してこれら周波数特性補正データ並びに位相特性補正データにアクセスして、該周波数特性補正データ並びに位相特性補正データの読み出しを実施できるようになっている。
【0093】
デコーダ204は、所定のデータ圧縮方式にて圧縮されている音源データから、音の波形に対応した例えばPCMデータ等のストリームデータを生成するものであり、使用するデータ圧縮方式のデータをデコードできるものを使用すれば良い。
【0094】
第1DSP部205は、プログラムに従って信号処理を高速にて行うDSPコアが内蔵されており、図5に示すように、予め書き込み記憶されている帯域分割(イコライザ)フィルタプログラム、有限インパルス応答(FIR)フィルタプログラム、振幅補正フィルタプログラム、帯域統合(ミキサ)フィルタプログラムを実行することで、各種のフィルタ機能をデジタル信号処理にて提供可能とされている。
【0095】
帯域分割(イコライザ)フィルタプログラムを実行することで形成される帯域分割(イコライザ)フィルタは、デコーダ204で生成された音ストリームデータに基づき特定される音波形を、図6に示すCH1〜CH9までの各周波数帯の9つのチャンネルについての波形成分のストリームデータに分割する機能を有するフィルタであり、これら帯域分割を各スピーカ27R、27L、27a、27bの各音について実施する。
【0096】
有限インパルス応答(FIR)フィルタプログラムを実行することで形成されるFIRフィルタは、公知の無限インパルス応答(IIR)フィルタと同様に、信号遅延を行うためのフィルタであり、CH1〜CH9までの各周波数帯の音信号を位相特性補正データに基づいて信号遅延させることにより、各チャンネルの音を基準筐体における適正位相(図11参照)にて遊技者に到達するようにするためのフィルタである
【0097】
尚、本実施例では、これら遅延フィルタをデジタル信号処理によるデジタルフィルタにて形成することで、回路の小型化と安定した処理を可能としている。
【0098】
つまり、従来のアナログフィルタにおいてカットオフ周波数や遅延特性等を変化させるには、これらアナログフィルタを構成するコンデンサ、抵抗、オペアンプ等の構成分品の静電容量や抵抗値等を可変させる必要があるために回路規模も大きくなり、また部品自体のバラツキや経年変化によりカットオフ周波数や遅延特性が変化して適切なフィルタ処理ができなくなってしまうのに対し、これらのフィルタをDSPにおける信号処理によるデジタルフィルタとすることで、回路の小型化と安定した処理を実施できるようになる。
【0099】
尚、本実施例では、これらデジタルフィルタとしてFIR型(Finite・Impulse・Response:有限インパルス応答)のフィルタを使用することで、各チャンネルの位相補正を高精度で実施できるようになっている。つまり、IIR型(Infinite・Impulse・Response:無限インパルス応答)のフィルタは、従来の一般的なアナログフィルタと動作的にはほぼ同じであって、定減衰特性(例えば-12dB/oct)を有しており、各周波数成分における遅延時間が異なるので、これらの違いを考慮してフィルタを使用する必要があるのに対し、FIR型(Finite・Impulse・Response:有限インパルス応答)のフィルタは、従来のアナログフィルタでは近似的にしか実現できなかった、位相特性がどの周波数に対しても直線となるリニアフェーズ(定遅延)特性が実現できる、つまり、全ての周波数成分が同じ時間だけ遅延するので、周波数の違いで波形が乱れることなく忠実な波形の再現ができる。
【0100】
よって、本実施例のように、異なる周波数帯のCH1〜CH9に対して遅延処理を行う場合には、処理するチャンネルの周波数を考慮することなく単純に遅延処理を行うことが可能となるので、これらFIR型(Finite・Impulse・Response:有限インパルス応答)のフィルタを用いることが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、使用する音の周波数帯域の範囲に応じて、IIR型(Infinite・Impulse・Response:無限インパルス応答)のフィルタを使用するようにしても良い。
【0101】
振幅補正フィルタプログラムを実行することで形成される振幅補正フィルタは、音の振幅を増減する公知のアナログフィルタと同様の機能を有するフィルタであり、後述する周波数特性補正データに基づいてCH1〜CH9の周波数成分の振幅(音量)を補正することで、筐体等による各スピーカ27R、27L、27a、27bの周波数特性を、各種の演出音の出力に最適化した基準筐体の周波数特性に補正するためのフィルタである。
【0102】
帯域統合(ミキサ)フィルタプログラムを実行することで形成される帯域統合(ミキサ)フィルタは、補正処理されたCH1〜CH9の各周波数成分のストリームデータに基づく波形を混成して1つのストリームデータに統合するためのフィルタである。
【0103】
また、第2DSP部206にも第1DSP部205と同様に、プログラムに従って信号処理を高速にて行うDSPコアが内蔵されており、図5に示すように、予め書き込み記憶されている各種エフェクト用フィルタプログラム、具体的には、音像の定位位置を変化させるための音像変位フィルタプログラムやエコー効果を付与するためのエコーフィルタプログラム等を実行することで、各種のフィルタ機能をデジタル信号処理にて提供可能とされている。
【0104】
尚、本実施例では、これら各種エフェクト用フィルタによる処理を第1DSP部205にて位相や振幅が補正された音ストリームデータに対して実施するようにしており、このようにすることは、これら各種エフェクト用フィルタにより音像変位の効果やエコー効果が付与された音ストリームデータを補正する場合に比較して、これら補正により、付与された音像変位の効果やエコー効果が低下してしまうことを回避でき、良好なエフェクトを再現性良く得ることができることから好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら各種エフェクト用フィルタプログラムによる処理を第1DSP部205にて実施し、位相や振幅の補正処理を第2DSP部206にて実施するようにしても良い。
【0105】
また、図5においては、FIRフィルタや振幅補正フィルタを模式的に1つのみ記載しているが、実際には、高速処理を実施することで、各スピーカ27R、27L、27a、27bから出力される音のCH1〜CH9の周波数成分についてリアルタイムにて処理がなされていくので、実質的には、スピーカ数(4)×チャンネル数(9)=36のFIRフィルタや振幅補正フィルタが設けられていることと等価である。
【0106】
尚、本実施例では、これらCH1〜CH9の周波数としては、図6に示すように、周波数が高くなるに従って累進的に広い周波数範囲となるように設定されている。
【0107】
具体的には、チャンネルCH1は31〜62Hzの周波数範囲とされ、チャンネルCH2は63〜125Hzの周波数範囲とされ、チャンネルCH3は126〜250Hzの周波数範囲とされ、チャンネルCH4は251〜500Hzの周波数範囲とされ、チャンネルCH5は501〜1000Hzの周波数範囲とされ、チャンネルCH6は1001〜2000Hzの周波数範囲とされ、チャンネルCH7は2001〜4000Hzの周波数範囲とされ、チャンネルCH8は4001〜8000Hzの周波数範囲とされ、チャンネルCH9は8001〜16000Hzの周波数範囲とされている。
【0108】
本実施例では、1オクターブ周期で周波数が倍となるのと同様に、各チャンネルの周波数の上限値を下限値のほぼ倍の周波数とすることで、周波数が高いチャンネルほど累進的に広い周波数範囲となるようにしており、このようにすることは、周波数にかかわらずに均一の周波数範囲、例えば、周波数範囲を一律に100Hz幅とした場合には、16000Hzまでの周波数範囲において約160のチャンネルが必要となるのに比較して、補正を行う対象とする周波数帯の総数を9と著しく低減することができるので、これら各周波数帯毎に補正を行うための補正データのデータ容量を低減することができるようになる。
【0109】
ここで、本実施例における位相特性補正データについて図6を用いて説明する。本実施例の位相特性補正データには、図6に示すように、チャンネルCH1〜CH9に対応する遅延時間となる補正値(マイクロ秒;μs)が、スピーカ27L(Sp1が該当)、スピーカ27R(Sp2が該当)、スピーカ27a(Sp3が該当)、スピーカ27b(Sp4が該当)毎に格納(記憶)されており、例えば、スピーカ27L(Sp1)から出力される音のチャンネルCH1の位相を補正する場合には、「CH1」と「Sp1」とに対応する補正値(μs)を用いて補正を行えば良く、スピーカ27b(Sp4)から出力される音のチャンネルCH9の位相を補正する場合には、「CH9」と「Sp4」とに対応する補正値(μs)を用いて補正を行えば良い。
【0110】
尚、これらの補正値は、実測した各周波数の位相と、音響性能が最適化された基準筐体による各周波数の位相(適正位相)との差分から作成された値が使用されており、これらデータは、図13に示すように、無音室内に実際のパチンコ機1と日本人の標準体格(男性)を有するマネキンを、実際の遊技状態における遊技者の位置、具体的には、変動表示装置9の水平方向の中心とマネキンの中心線とが一致するとともに、マネキンの目の高さ位置が変動表示装置9の垂直方向の中心位置と一致し、パチンコ機1の前面からのマネキンの耳までの水平方向距離が、遊技者とパチンコ機1の前面との平均距離である40センチメートルとなるように配置して、該マネキンの耳に測定用マイクを設けて測定される。尚、基準筐体についての各周波数の適正位相についても、パチンコ機1と同じく、図13に示すように基準筐体とマネキンを配置して測定したデータである。
【0111】
これら位相の測定は、例えば、スピーカ27L(Sp1)であれば、該スピーカ27L(Sp1)から各チャンネルCH1〜CH9の周波数帯域の音を、順次、所定音量にて実際に出力させ、該スピーカ27L(Sp1)に近い、マネキン(遊技者)の左側の耳に設けたマイクにて時間軸上における振幅の変化を測定して、音の到達時間や到達時の位相のデータを収集し、該収集したデータと基準筐体における適正位相のデータとから、各スピーカ27R、27L、27a、27bからの同一チャンネルの音が、基準筐体における当該チャンネルの適正位相にて揃って到達するようにするための遅延時間を各チャンネルCH1〜CH9のそれぞれについて特定し、該特定した各チャンネルCH1〜CH9の遅延時間が各チャンネルCH1〜CH9の補正値とされた補正データが生成されて外部ROM174に記憶される。
【0112】
これら位相特性補正データと同様に、本実施例における周波数特性補正データも、図13の測定によって作成される。
【0113】
尚、周波数特性は、スピーカ27R、27L、27a、27bが設置される筐体が特定の周波数の振動を目標とする基準筐体よりも吸収し易いことで、実際にスピーカ27R、27L、27a、27bから出力される振幅(音量)が目標とする基準筐体の場合の振幅よりも小さく(音量が小さく)なったり、逆に特定の周波数の振動と共鳴し易いことで、出力される振幅(音量)が目標とする基準筐体の場合の振幅よりも大きく(音量が大きく)なることにより、最適化された基準筐体よりも音質が低下してしまうことを示す特性であるが、これらの特性は、スピーカが2つまでの場合には、他のスピーカから出力される音が1つだけであるので、干渉によって一部の周波数の音だけが相対的に振幅が小さくなったり、一部の周波数の音だけが相対的に振幅が大きくなったりすることは小さいのに対し、スピーカが3つ以上の場合には、他のスピーカから出力される音が複数となるので、他のスピーカから出力される複数の音の干渉等により、一部の周波数の音だけが相対的に振幅(音量)が小さくなったり、一部の周波数の音だけが相対的に振幅(音量)が大きくなって、見かけ上周波数特性が低下してしまう事態が発生し得る。
【0114】
よって、例えば、単純に、スピーカ27L(Sp1)からだけ各チャンネルの音のみを振幅(音量)を変化させて出力し、該振幅が基準筐体における同じ振幅(音量)の場合との違いを測定して、これらの違いを補正値(補正利得)としても、他のスピーカ27R、27a、27bから出力される音の出力状況(音量)によっては、補正をしたにもかかわらず、見かけ上周波数特性が低下してしまうことが考えられるので、これら補正対象のスピーカ27L(Sp1)と、対象外の他の27R、27a、27bの音の出力状態(音量)に合致した補正を実施する必要がある。
【0115】
よって、本実施例では、スピーカ27R、27L、27a、27bからの出力(音量)のレベルを、最低のAdBから最大のNdBの13段階に区分けして、これら出力レベルA〜Nの組合せ全てについて測定して補正値(補正利得)を作成している。
【0116】
つまり、スピーカ27L(Sp1)の出力レベル(印加レベル)をAdB(レベルA)とし、他のスピーカ27R(Sp2)とスピーカ27a(Sp3)の出力レベル(印加レベル)をAdB(レベルA)、他のスピーカ27b(Sp4)の出力レベル(印加レベル)を0dB(レベル0)とした場合においてマネキン(測定用マイク)に到達する音の音圧レベルを測定し、該到達した音圧が、基準筐体の同条件における測定音圧である目標の音圧レベルよりも低い場合には、該低くなっている音圧レベルを目標の音圧レベルとするために余分に出力する必要のある音圧レベル(音量)を補正利得とする一方、目標の音圧レベルよりも高い場合には、該高くなっている音圧レベルを目標の音圧レベルとするために低減する必要のある音圧レベル(音量)を補正利得として、該補正利得を、スピーカ27L(Sp1)の出力レベル「A」並びに他のスピーカの出力パターン「A.A.0」に対応する補正値として補正データを作成し、周波数特性補正データとして外部ROM174に記憶する。
【0117】
これら出力パターンは、図7に示すように、スピーカ27L(Sp1)の出力レベル「A」に対して、「A.A.0」〜「N.N.N」の組合せが存在し、これらの組合せ全てについて測定を実施して補正データを作成する。
【0118】
同様の測定を他のチャンネルCH2〜CH9についても実施し補正データを作成することにより、図7に示す本実施例の周波数特性補正データを得ることができる。
【0119】
尚、図7には、便宜上、スピーカ27L(Sp1)のみの周波数特性補正データを示しているが、外部ROM174の周波数特性補正データには、スピーカ27R(Sp2)、スピーカ27a(Sp3)、スピーカ27b(Sp4)の周波数特性補正データも記憶されている。
【0120】
次に、これら周波数特性補正データや位相特性補正データに基づいて第1DSP部205のFIRフィルタや振幅補正フィルタにおいて実施される位相補正処理と振幅補正処理について図8、図9を用いて説明する。
【0121】
まず、FIRフィルタにて実施される位相補正処理について説明すると、該位相補正処理においては、図8に示すように、位相の補正を実施する対象の音ストリームデータが、帯域分割(イコライザ)フィルタにて分割された補正対象のチャンネル(CH1〜CH9のいずれか)と出力対象のスピーカ(Sp1〜Sp4のいずれか)であるか、つまり、補正対象とする音ストリームデータのチャンネルとスピーカとを特定する(ステップSp1)。
【0122】
そして、特定した出力対象のスピーカ(Sp1〜Sp4)とチャンネル(CH1〜CH9)とに対応する補正値(遅延時間)を内部メモリに記憶されている位相特定補正データから読み出し(ステップSp2)、読み出した補正値である遅延時間の期間分だけ、位相の時間軸を移動させるための遅延処理を実施し、当該補正対象としているチャンネルの音ストリームデータに基づく音が、他のスピーカの同じチャンネルの音ストリームデータに基づく音とともに、適正位相にて揃って遊技者に到達するように補正する(ステップSp3)。
【0123】
そして、位相を補正した当該チャンネルの音ストリームデータを振幅補正フィルタに出力する。
【0124】
尚、この位相補正処理は、4つの各スピーカ27R、27L、27a、27bについての全てのチャンネルCH1〜CH9について並行実施される。
【0125】
これら位相補正処理が実施された場合の1つのチャンネルの波形について例示すると、図10に示すように、位相補正処理を実施しない場合には、図10(a)に示すように、各スピーカ27R、27L、27a、27bの配置位置の違いに基づく所定の聴聞位置からの距離の違いにより、各スピーカ27R、27L、27a、27bから同時に同位相の音を出力しても、所定の聴聞位置に到達する時期に微小な時間差が生じるとともに到達する地点における位相も揃っていないため、不自然な音質となる。
【0126】
これに対し、位相補正処理を実施した場合には、図10(b)に示すように、各スピーカ27R、27L、27a、27bから出力される音が、所定の聴聞位置にほぼ同時に、位相が所定の適正位相に揃った状態にて到達するので、実際に点音源から発生する音を聴聞する場合と同じようになるので、自然な音質とすることができる。
【0127】
図11は、位相補正処理をCH1〜CH9に実施した場合と、実施しない場合の1のスピーカにおける位相特性を示すグラフである。
【0128】
図11において1点鎖線は、基準筐体における位相特性を示し、2点鎖線は位相補正処理を実施しない場合におけるパチンコ機1の筐体による位相特性を示している。位相補正処理を実施しない場合においてパチンコ機1の位相特性は、目標とする基準筐体における位相特性と大きくずれている(特に、低温域や高温域)ことが解る。
【0129】
これに対し、位相補正処理を実施した場合の位相特性は、波線にて示すように、基準筐体における位相特性にほぼ沿った位相特性となり、これら基準筐体における位相特性である適正位相との位相差は、グラフ中の実線にて示すように、ほぼ全周波数帯域で0となり、位相補正処理を実施することで、各周波数成分の位相が適正位相に補正されていることが解る。
【0130】
これら図11には、1のスピーカの位相特性を示し、その他のスピーカの位相特性を示していないが、補正前の各周波数成分における位相特性は、個々のスピーカで大きく異なっているが、位相補正処理を実施することで、これら各周波数成分における位相特性が大きく異なっていても、図11に示すように、各スピーカ27R、27L、27a、27bの位相特性が適正位相に補正される。
【0131】
次に、これら位相補正処理が実施された音ストリームデータに対して振幅補正フィルタにて実施される位相補正処理について説明すると、位相補正処理においては、図9に示すように、振幅の補正を実施する対象の音ストリームデータのチャンネルとスピーカとを特定する(ステップSb1)。
【0132】
更に、補正対象のチャンネル、例えばCH1の出力音量(例えば、XdB)と他のスピーカの同一チャンネルであるCH1における出力音量を特定する(ステップSb2)。
【0133】
そして、特定した出力音量の組合せに対応する補正値(補正利得)を内部RAM203に記憶されている周波数特性補正データから読み出す(ステップSb3)。
【0134】
具体的には、補正対象のスピーカがSp1(スピーカ27L)であって、補正対象のチャンネルCH1の出力音量がX1dBであれば、レベルA〜Nの中から該X1dBに最も近いレベル、例えばレベルDを特性する。同様に、他のスピーカであるSp2(スピーカ27R)のチャンネルCH1における出力音量がX2dBであれば、レベルA〜Nの中から該X2dBに最も近いレベル、例えばレベルAを特性し、他のスピーカであるSp3(スピーカ27a)のチャンネルCH1における出力音量がX3dBであれば、レベルA〜Nの中から該X3dBに最も近いレベル、例えばレベルBを特性し、他のスピーカであるSp3(スピーカ27b)のチャンネルCH1における出力音量がX4dBであれば、レベルA〜Nの中から該X4dBに最も近いレベル、例えばレベルCを特性し、特定した音量レベルの組合せであるSp1がD、出力パターンが「A.B.C」に対応する補正値(補正利得)を周波数特性補正データから読み出す。
【0135】
そして、該読み出した補正値(補正利得)に基づいて、FIRフィルタから出力された当該補正対象チャンネルCH1の音ストリームデータの振幅が、当該補正値(補正利得)分だけ増大または低減するように、例えば、音ストリームデータの振幅値データに、該振幅値データの最大値が対応する最大利得によって補正値(補正利得)を除した割合に1を加算した値(補正値が正の値でれば、補正値が最大振幅利得に占める割合分だけ1より多い値となり、補正値が負の値でれば、補正値が最大振幅利得に占める割合分だけ1より少ない値となる)を乗じることにより補正する(ステップSb4)。
【0136】
そして、該振幅を補正した当該チャンネルの音ストリームデータを帯域統合(ミキサ)フィルタに対して出力する(ステップSb5)。これにより、振幅補正処理後の各CH1〜CH9の音ストリームデータが混成されてCH1〜CH9の全周波数成分を含む音ストリームデータに統合されて第2DSP部206に出力される。
【0137】
図12は、これらチャンネルCH1〜CH9の各周波数帯域について振幅補正処理を実施することによるスピーカ27R、27L、27a、27bの周波数特性の変化を示すグラフである。
【0138】
図12は、本実施例のパチンコ機1の筐体についての各周波数における振幅特性から成る周波数特性の測定結果と、各周波数における振幅特性を最適化した基準筐体における周波数特性(振幅特性)とを示すグラフであり、本実施例の筐体においては、低音の音の吸収が基準筐体よりも大きい(利得が低)く、中音位域についても、やや吸収が高い(利得が低い)領域があるとともに、中高音域にかけて共振等により基準筐体に比較してやや音圧(利得)が高い領域があることが解る。
【0139】
この筐体にスピーカ27R、27L、27a、27bをセットして実際の使用状態とした状態において、1のスピーカであるスピーカ27Lについて周波数特性を測定した結果が図12(b)であり、図12(a)と比較して解るように、基準筐体の周波数特性と比較して、筐体による吸収等の影響による考えられる低音の音圧低下や中温位置での音圧低下や、中高音域にかけての音圧上昇が見られる。
【0140】
これに対し、振幅補正処理を実施した場合には、図12(c)に示すように、吸収等により利得が低下している領域については、測定により作成された補正利得により出力音量が増大されて到達音圧が大きくなることにより、基準筐体の周波数特性の該当音圧(適正音圧)との差が0dB、つまり該適正音圧に近づき、共振等により利得が増加している領域については、測定により作成された補正利得により出力音量が低減されて到達音圧が小さくなることにより、基準筐体の周波数特性の該当音圧(適正音圧)との差が0dB、つまり該適正音圧に近づくことで、低音から高音までの各周波数成分についてほぼ目標とする適正音圧に近い周波数特性が得られることで、最適化された基準筐体と同様の周波数特性が得られていることが解る。
【0141】
次に、これら位相補正処理や振幅補正処理に使用される位相特性補正データや周波数特性補正データが、外部ROM174から内部RAM203に記憶される、音声処理IC173が実施する起動処理について、図14を用いて説明する。
【0142】
音声処理IC173は、電源投入に応じて図14の起動処理を実施する。この起動処理において音声処理IC173(コントロールプロセッサ200)は、まず、システムチェックを実施する(ステップSk1)。
【0143】
このシステムチェックは、システムバスに接続されている各部が正常に動作可能であるかを確認する。
【0144】
そして、システムチェックにおいてシステム異常があるか否かを判定し(ステップSk2)、システム異常がある場合には、ステップSk20に進んで演出制御用マイクロコンピュータ81(演出制御用CPU86)に対しエラー通知を出力するエラー通知処理を実施する。
【0145】
一方、システム異常がない場合には、ステップSk3に進んで内部RAM203へのアクセスを禁止した後、該内部RAM203のメモリチェックを実施する(ステップSk4)。
【0146】
そして、該メモリチェックにおいてメモリ異常があるか否かを判定し、メモリ異常がある場合には、ステップSk20に進んでエラー通知処理を実施し、メモリ異常がない場合には、ステップSk6に進んで外部ROM174へのアクセスを実施する。
【0147】
そして、外部ROM174へのアクセスが可能であるか否かを判定し(ステップSk7)、外部ROM174へのアクセスが可能である場合には、ステップSk8に進んで、外部ROM174に記憶されている位相特性補正データや周波数特性補正データを読み出して内部RAM203に格納した後、該格納した位相特性補正データや周波数特性補正データのチェック処理を実施する(ステップSk9)。
【0148】
具体的に、このチェック処理においては、位相特性補正データに関しては、4スピーカ×9チャンネル=36個の全ての補正値が存在するかとともに、該補正値(遅延時間)が、適正範囲内の正常値であるか否かを判定する。また、周波数特性補正データに関しても、全てのスピーカ27R、27L、27a、27bに対応するデータとして所定数の補正値を含むデータが存在するかとともに、該補正値(補正利得)が、所定の適正範囲内の正常値であるか否かを判定する。
【0149】
そして、チェック処理において位相特性補正データや周波数特性補正データに異常があるか否かを判定し、異常がない場合には、ステップSk11に進んで、ステップSk6にて実施した内部RAM203へのアクセス禁止を解除して当該処理を終了する一方、異常がある場合には、ステップSk30に進んで、位相特性補正データや周波数特性補正データとして、FIRフィルタや振幅補正フィルタが実施する補正を無効として、補正がされていない音ストリームデータが各FIRフィルタや振幅補正フィルタから出力されるようにするための補正無効化データ(例えば補正値が0のデータ等)に、異常な位相特性補正データや周波数特性補正データを更新して当該処理を終了する。
【0150】
また、データ損傷やハードの不具合等により外部ROM174へのアクセスが不能であるためにステップSk7の判定において「No」と判定された場合にもステップSk30に進んで、補正無効化データを格納して当該処理を終了する。
【0151】
このように、外部ROM174へのアクセスが不能で、位相特性補正データや周波数特性補正データを内部RAM203に格納できない場合や、格納した位相特性補正データや周波数特性補正データが正常ではない場合には、FIRフィルタや振幅補正フィルタが実施する補正を無効として、補正されない音ストリームデータが第1DSP部205から出力されるようにするための補正無効化データが内部RAM203に格納されるので、これら外部ROM174へのアクセスが不能である場合や、格納した位相特性補正データや周波数特性補正データが正常ではない場合において、第1DSP部205におけるFIRフィルタや振幅補正フィルタの処理が実施されないことで、スピーカ27R、27L、27a、27bから音が出力されなくなってしまうことを防止できるようになっている。
【0152】
以上、本実施例によれば、音出力部であるスピーカ27R、27L、27a、27bの位置や向き、或いは音出力部表面の意匠、例えば、図15に示す他の筐体のパチンコ機1’におけるスピーカ27R’、27L’、27a’、27b’のように、スピーカの手前側に保護や装飾用の覆いやメッシュメタル等があるもののように、これら音出力部を設計において異なるものとしても、これら設計が異なる各音出力部についての周波数特性補正データ(出力音量補正データ)や位相特性補正データ(出力位相補正データ)を補正データ記憶手段となる外部ROM174に記憶することにより、各スピーカ27R、27L、27a、27bから出力される各チャンネルCH1〜CH9の音量や位相が、外部ROM174から複写記憶された内部RAM203に記憶されている周波数特性補正データ(出力音量補正データ)や位相特性補正データ(出力位相補正データ)に基づいて各スピーカ27R、27L、27a、27b毎に補正されることで、各音出力部から出力される遊技関連音である、遊技における演出に伴う各種のBCMや効果音等の演出音について、各周波数帯のチャンネルCH1〜CH9の音圧が適正音圧や適正位相に補正されるので、パチンコ機1の設計の自由度を低下させることなく良好な音響を得ることができるとともに、遊技関連音である各種のBGMや効果音のそれぞれの音データが補正されていなくても、これら補正されていない音データに基づいて各スピーカ27R、27L、27a、27bから出力される遊技関連音の各周波数帯の音圧や位相が周波数特性補正データ(出力音量補正データ)や位相特性補正データ(出力位相補正データ)に基づいて適正音圧並びに適正位相に補正されるので、遊技関連音の音データの補正に要する労力も低減することができる。
【0153】
つまり、従来においては、各種のBCMや効果音のそれぞれについて、パチンコ機1のスピーカ27R、27L、27a、27bから各種のBGMや効果音を実際に音を個別に出し、その時の聞こえ方に基づいて音データ自体を補正することで、当該音を良好に聴くことができるようにすることが多く実施されているが、この場合には、遊技機の興趣向上のための演出の多様化に伴い、使用されるBGMや効果音の種類が非常に多くなってきており、これら多数のBGMや効果音のそれぞれについて音データ自体を補正することが、非常に大きな労力と時間を要してしまうとともに、遊技においては、複数の演出、例えば、キャラクタの演出におけるBGMと、遊技者による操作レバー600の操作に基づくキャラクタのセリフ音声とが同時に出力される場合においては、セリフ音声がBGMとの同時出力によって聞こえ難くなってしまう場合があり、これら同時出力に関する補正を行う必要が生じるところ、出力されるタイミングが遊技者による操作等によるものである場合には、同時に出力されるタイミングが不定であるが故に、補正を実施することが困難となってしまうのに対し、本発明によれば、どのようなタイミングで同時に出力される場合であっても、同時に出力される音が適正音圧や適正位相に補正されるので、これら同時出力に伴う補正等についても音データに対して実施しなくても、良好な音響を得ることができるので、これら音データの補正に要する労力を著しく低減することが可能となる。
【0154】
尚、前記実施例では、振幅補正処理と位相補正処理とを共に実施するようにしており、このようにすることは、位相補正処理を実施することにより、各スピーカ27R、27L、27a、27bから聴聞位置に到達する各チャンネルの音の位相が同一チャンネルにおいて揃うことで、これら位相が異なる、例えば180度ずれていることにより、相互の音の振幅が相殺されてしまい当該チャンネルの音の音圧が著しく低下してしまう等のような現象の発生を回避でき、振幅補正が複雑化してしまうことを防止することが可能となるという相乗効果を得ることができることから好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、振幅補正処理または位相補正処理のいずれか一方のみを実施するようにしても良い。
【0155】
尚、これら振幅補正処理のみを実施する場合にあっては、本実施例のように、他のスピーカからの音の出力状態に応じた周波数特性補正データ(出力音量補正データ)を用いるようにすることで、上述したように、聴聞位置に到達する各チャンネルの音の位相が異なることによる問題が発生することを低減することができるようになる。つまり、本実施例のように、音出力部となるスピーカ27R、27L、27a、27bが3以上の4つである場合、すなわち、振幅補正フィルタにおける補正の対象とするスピーカ以外に2以上の複数のスピーカが存在する場合には、これら複数の他のスピーカから出力される遊技関連音の相互干渉等により、単純に補正の対象とするスピーカからの振幅(出力音量)のみを補正しても、遊技者が聴聞する音圧が適切に補正されず、周波数特性が改善されない場合があるのに対し、他のスピーカからの振幅(出力音量)に対応付けられた周波数特性補正データ(出力音量補正データ)を用いて補正することで、これら相互干渉を加味した補正を行うことが可能となるので、3以上のスピーカ27R、27L、27a、27bを有していても適切な振幅(音圧)の補正を実施できる。
【0156】
また、前記実施例においては、前述したように、各チャンネルCH1〜CH9を、その周波数が高くなるに従って累進的に広い周波数範囲とすることで、周波数にかかわらずに均一の周波数範囲とした場合に比較して、補正を行う対象とするチャンネル(周波数帯)の総数を低減することができるので、これら各周波数帯毎に補正を行うための周波数特性補正データ(出力音量補正データ)や位相特性補正データ(出力位相補正データ)のデータ容量を低減することができる。
【0157】
また、前記実施例では、周波数特性補正データ(出力音量補正データ)や位相特性補正データ(出力位相補正データ)が、音データとともに外部ROM174に記憶されており、これら外部ROM174に記憶された周波数特性補正データ(出力音量補正データ)や位相特性補正データ(出力位相補正データ)を起動時に内部ROM203に読み込むようにすることで、音声処理IC173内に、これら周波数特性補正データ(出力音量補正データ)や位相特性補正データ(出力位相補正データ)が不揮発データとして記憶されていないので、これら音声処理IC173をパチンコ機1の機種に固有化する必要がなく、これら周波数特性補正データ(出力音量補正データ)や位相特性補正データ(出力位相補正データ)が異なるたの機種のパチンコ機1についても、これら音声処理IC173を共通して使用することが可能となるため、コストの低減を図ることができる。
【0158】
また、前記実施例では、音声処理IC173内に第2DSP部206を設け、該第2DSP部206において、第1DSP部205にて位相や振幅を補正した音ストリームデータに対して、各種のエフェクトを付加する処理を実施するようにしており、このようにすることは、これら各種のエフェクトを付加する処理を、位相や振幅の補正前に実施する場合に比較して、これら補正により、付与された音像変位の効果やエコー効果が低下してしまうことを回避でき、良好なエフェクトを再現性良く得ることができる。
【0159】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0160】
例えば、前記実施例では、所定の聴聞位置として図13に示す形態を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら所定の聴聞位置としては、変動表示装置9の有無や大きさや配置位置等の遊技機の仕様等により、実際の遊技者の遊技位置に対応した位置となるように決定すれば良い。
【0161】
また、前記実施例では、スピーカの数を4つとした形態を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらスピーカの数は少なくと2以上であれば良く、2つや3つ、或いは6つとしても良い。
【0162】
また、前記実施例では、遊技機として、遊技媒体であるパチンコ玉が払い出されるパチンコ機1を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら遊技媒体としてメダルを使用するスロットマシンや、これら遊技媒体が、遊技機内部に内封され、貸し出されたパチンコ玉やメダルの数や、入賞に応じて付与されたパチンコ玉やメダルの数が加算される一方、遊技に使用されたパチンコ玉やメダルの数が減算されて記憶される封入式遊技機や、パチンコ玉やメダルを用いずに、例えば貸出要求に応じて貸し出されたポイントや点数等の価値や入賞に応じて付与されたポイントや点数等の価値を全てクレジットとして記憶し、クレジットとして記憶された価値のみを使用して遊技を行うことが可能な遊技機であっても良い。尚、この場合には、これらポイントや点数等が遊技媒体に相当し、クレジットが遊技用価値となる。
【符号の説明】
【0163】
1 パチンコ機
6 遊技盤
8 特別図柄表示器
9 変動表示装置
10 普通図柄表示器
13 可動片
31 主基板
80 演出制御基板
81 演出制御用マイクロコンピュータ
86 演出制御用CPU
156 遊技制御用マイクロコンピュータ
173 音声処理IC
174 外部ROM
175 デジタルアンプ
200 コントロールプロセッサ
201 CPUインターフェイス
202 メモリインターフェイス(I/F)
203 内部RAM
204 デコーダ
205 第1DSP部
206 第2DSP部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の遊技を行うことが可能な遊技機であって、
該遊技機の筐体の所定位置に設けられ、遊技に関連する遊技関連音を出力する複数の音出力部と、
前記遊技関連音を出力するための複数種類の音データを記憶する音データ記憶手段と、
前記音データ記憶手段にて記憶されている音データに基づく遊技関連音を前記音出力部から出力する制御を行う音出力制御手段と、
複数の音出力部が予め定められた基準の遊技機の筐体に設けられたときに該音出力部から出力された遊技関連音の所定の聴聞位置における各周波数帯の音圧を適正音圧として、該遊技機の筐体の前記各音出力部から出力された遊技関連音の前記聴聞位置における各周波数帯の音圧が前記適正音圧となるように、前記各音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の音量を補正するための出力音量補正データを記憶する補正データ記憶手段と、
前記補正データ記憶手段に記憶されている出力音量補正データに基づいて、前記音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の音量を、各音出力部毎に個別に補正する音圧補正手段と、
を備える
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
所定の遊技を行うことが可能な遊技機であって、
該遊技機の筐体の所定位置に設けられ、遊技に関連する遊技関連音を出力する複数の音出力部と、
前記遊技関連音を出力するための複数種類の音データを記憶する音データ記憶手段と、
前記音データ記憶手段にて記憶されている音データに基づく遊技関連音を前記音出力部から出力する制御を行う音出力制御手段と、
複数の音出力部が予め定められた基準の遊技機の筐体に設けられたときに該音出力部から出力された遊技関連音の所定の聴聞位置における各周波数帯の位相を適正位相として、該遊技機の筐体の前記各音出力部から出力された遊技関連音の前記聴聞位置における各周波数帯の位相が前記適正位相となるように、前記各音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の位相を補正するための出力位相補正データを記憶する補正データ記憶手段と、
前記補正データ記憶手段に記憶されている出力位相補正データに基づいて、前記音出力部から出力される遊技関連音の各周波数帯の位相を、各音出力部毎に個別に補正する位相補正手段と、
を備える
ことを特徴とする遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−297(P2013−297A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133607(P2011−133607)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000144153)株式会社三共 (5,148)
【Fターム(参考)】