説明

遊星歯車機構の支持構造

【課題】プラネタリキャリアの軸ずれを抑制しつつ、プラネタリギヤのいずれか一方にスペースを確保することのできる遊星歯車機構の支持構造を提供する。
【解決手段】複数のプラネタリギヤ22Aを回転自在に支持するプラネタリキャリア23Aは、プラネタリギヤ22Aを回転可能に支持するピニオンシャフト230と、このピニオンシャフト230を保持する内側腕部231及び外側腕部232とを備える。プラネタリキャリア23Aは、ピニオンシャフト230の一端側を径方向に支持する軸受33Aと、ピニオンシャフト230の他端側を径方向に支持する軸受19A及び軸受34Aとによりケース11Lに支持される。軸受33A、軸受19A及び軸受34Aは、軸心方向でプラネタリギヤ22Aの一方側に配置され、軸心方向でプラネタリギヤ22Aの他方側には、ケース11Lに対しプラネタリキャリア23Aを支持する軸受を備えていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンギヤと、リングギヤと、サンギヤ及びリングギヤに噛合された複数のプラネタリギヤを回転自在に支持するプラネタリキャリアと、を同一軸心に備え、ケース内に配置された遊星歯車機構の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図6に示すように、左後輪(図示せず)と該左後輪を駆動する電動機102Aとの動力伝達経路上に減速機として遊星歯車機構112Aが設けられ、右後輪(図示せず)と該右後輪を駆動する電動機102Bとの動力伝達経路上に変速機として遊星歯車機構112Bが設けられた車両用駆動装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、図7に示すように、電動機202と車輪(図示せず)との動力伝達経路上に減速機として遊星歯車機構212が設けられ、これにより、電動機202からの動力が、ロータ回転軸207およびサンギヤ221から、これに噛み合う大径ピニオン部分226、これに一体の小径ピニオン227に伝達され、小径ピニオン227が固定のリングギヤ224の内周に沿って転動することによりプラネタリキャリア223から減速回転が出力軸210を経て車輪へ伝達され得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−235051号公報
【特許文献2】特開2008−037355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の両遊星歯車機構112A、112Bでは、それぞれのプラネタリキャリア123A、123Bの一端側が軸受133A、133Bでケース111に支持されているが、他端側には一方向クラッチ150のスプラグ153が配置されておりケース111には支持されていないので、プラネタリキャリア123A、123Bに荷重が作用した場合には、軸ずれが生じ、プラネタリキャリア123A、123Bが回転軸線に対して傾いてしまうおそれがあった。
【0006】
また、特許文献2に記載の遊星歯車機構212は、プラネタリキャリア223の一端側は複列軸受234で支持され、他端側はロータ回転軸207を介して別のロータ軸受233で支持されている。そのため、プラネタリギヤ222の一方側と他方側の両方に軸受を配置する空間が必要だった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、プラネタリキャリアの軸ずれを抑制しつつ、プラネタリギヤのいずれか一方にスペースを確保することのできる遊星歯車機構の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
サンギヤ(例えば、後述の実施形態のサンギヤ21A、21B)と、リングギヤ(例えば、後述の実施形態のリングギヤ24A、24B)と、前記サンギヤ及び前記リングギヤに噛合された複数のプラネタリギヤ(例えば、後述の実施形態のプラネタリギヤ22A、22B)を回転自在に支持するプラネタリキャリア(例えば、後述の実施形態のプラネタリキャリア23A、23B)と、を同一軸心に備え、ケース(例えば、後述の実施形態のケース11)内に配置された遊星歯車機構(例えば、後述の実施形態の第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12B)の支持構造であって、
前記プラネタリキャリアは、軸心方向に延設され、前記プラネタリギヤを回転可能に支持する回転軸(例えば、後述の実施形態のピニオンシャフト230)と、径方向に延設され、前記回転軸を保持する腕部(例えば、後述の実施形態の内側腕部231、外側腕部232)と、を備え、
前記プラネタリキャリアは、前記回転軸の一端側を径方向に支持する第1軸受(例えば、後述の実施形態の軸受33A、33B)と、前記回転軸の他端側を径方向に支持する第2軸受(例えば、後述の実施形態の軸受19A、19B、軸受34A、34B)とにより前記ケースに径方向に支持されており、
前記第1及び第2軸受は、前記軸心方向で前記プラネタリギヤの一方側(例えば、後述の実施形態の軸方向外側)に配置され、
前記軸心方向で前記プラネタリギヤの他方側(例えば、後述の実施形態の軸方向内側)には、前記ケースに対し前記プラネタリキャリアを径方向に支持する軸受を備えていないことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、
前記第2軸受は、前記サンギヤと一体的に回転する他の回転軸(例えば、後述の実施形態の円筒軸16A、16B)を径方向に支持する軸受であって、該他の回転軸を介して前記回転軸の他端側を支持することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加えて、
前記他の回転軸は、前記サンギヤよりも前記回転軸の他端側に延びる延出部(例えば、後述の実施形態の延出部13A、13B)を備え、
前記第2軸受は、前記延出部を介して前記回転軸の他端側を径方向に支持することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加えて、
前記プラネタリギヤは、大径ギヤ(例えば、後述の実施形態の第1ピニオン26A、26B)と小径ギヤ(例えば、後述の実施形態の第2ピニオン27A、27B)とが軸線方向に連設された2段ピニオンギヤであり、
前記サンギヤは、前記大径ギヤと噛合し、
前記リングギヤは、前記小径ギヤと噛合し、
前記延出部と前記小径ギヤとは軸心方向にオーバーラップすることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記リングギヤは、前記プラネタリキャリアを介して前記第2軸受に径方向に支持されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記ケースは、前記プラネタリギヤの一方側に径方向に延びる壁部(例えば、後述の実施形態の隔壁18A、18B)を備え、
前記壁部に、前記第1及び第2軸受が設けられることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記遊星歯車機構は、車両の駆動源(例えば、後述の実施形態の第1及び第2電動機2A、2B)と車輪(例えば、後述の実施形態の左後輪LWr、右後輪RWr)との動力伝達経路上に配置され、
前記駆動源と前記遊星歯車機構とを接続する動力伝達軸(例えば、後述の実施形態の円筒軸16A、16B)と、前記遊星歯車機構と前記車輪とを接続する他の動力伝達軸(例えば、後述の実施形態の車軸10A、10B)と、を備え、
前記動力伝達軸は中空構造を有し、
前記他の動力伝達軸は、前記動力伝達軸の内部に挿入され、
前記遊星歯車機構に対し、前記軸心方向で一方側に前記駆動源と前記車輪とが配置されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の構成に加えて、
前記ケースは、前記他の動力伝達軸を径方向に支持する第3軸受(例えば、後述の実施形態の軸受20A、20B)を備え、
前記第3軸受は、前記軸心方向で前記プラネタリギヤの一方側に配置され、
前記ケースは、前記プラネタリギヤの他方側に前記他の動力伝達軸を径方向に支持する軸受を備えていないことを特徴とする。
【0016】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記遊星歯車機構の前記サンギヤ、前記プラネタリキャリア、又は前記リングギヤのいずれかには、一方向動力伝達手段(例えば、後述の実施形態の一方向クラッチ50)又は動力断接手段(例えば、後述の実施形態の油圧ブレーキ60)が接続され、
前記一方向動力伝達手段又は動力断接手段は、前記軸心方向で前記プラネタリギヤの他方側に配置されることを特徴とする。
【0017】
また、請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の構成に加えて、
前記遊星歯車機構は、互いに隣接して鏡面対称に配置される2つの遊星歯車機構を含み、
前記ケースは、前記2つの遊星歯車機構の間に、それぞれのプラネタリキャリアを径方向に支持する軸受を備えていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、プラネタリキャリアの両端を支持する第1及び第2軸受がプラネタリギヤの一方側に集中配置されるので、プラネタリキャリアの軸ずれを抑制しつつ、プラネタリギヤの他方側にスペースを確保することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、第2軸受は、サンギヤと一体的に回転する他の回転軸を介して回転軸の他端側を支持するので、プラネタリキャリアと他の回転軸とを支持するための軸受を共通化することができ、部品点数を削減できるとともに遊星歯車機構の支持構造を小型化することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、サンギヤと一体的に回転する他の回転軸の軸方向の幅をかせぐことで、プラネタリキャリアを安定して支えることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、2段ピニオンのデッドスペースに延出部を配置することで、プラネタリギヤが軸方向に長大化することを抑制することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、リングギヤを支持するための軸受を別途ケースに設ける必要がない。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、第1及び第2軸受を支持する壁部が1つでよいので、別個に形成する場合に比べて遊星歯車機構の支持構造を小型化することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、2つの動力伝達軸を同一軸線上に配置することができ、径方向の小型化が可能となる。また、遊星歯車機構の片側に駆動源と車輪とを集中配置することで軸方向の長大化を抑制できる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、プラネタリキャリアを支持する軸受に加え、他の動力伝達軸を支持する第3の軸受も、プラネタリギヤの一方側に集中配置されるので、プラネタリギヤの他方側にスペースを確保することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、プラネタリギヤの他方側の、回転軸心近傍に一方向動力伝達手段又は動力断接手段を設けることができるので、径方向の小型化が可能となる。
【0027】
請求項10に記載の発明によれば、第1及び第2軸受が配置される側の反対側に2つの空間が形成されることで、より大きなスペースを確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る遊星歯車機構の支持構を搭載可能な車両の一実施形態であるハイブリッド車両の概略構成を示すブロック図である。
【図2】後輪駆動装置の縦断面図である。
【図3】図2に示す後輪駆動装置の上部部分の拡大断面図である。
【図4】プラネタリキャリアに鉛直方向下方の重が作用した際の図2に示す後輪駆動装置の左側部分の拡大断面図である。
【図5】プラネタリキャリアに鉛直方向上方の荷重が作用した際の図2に示す後輪駆動装置の左側部分の拡大断面図である。
【図6】特許文献1に記載の車両用駆動装置の縦断面図である。
【図7】特許文献2に記載の車両用駆動装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る遊星歯車機構の支持構造を搭載する車両用駆動装置は、例えば、図1に示すような駆動システムの車両に用いられる。以下の説明では車両用駆動装置を後輪駆動用として用いる場合を例に説明するが、前輪駆動用に用いてもよい。
図1に示す車両3は、内燃機関4と電動機5とが直列に接続された駆動装置6(以下、前輪駆動装置と呼ぶ。)を車両前部に有するハイブリッド車両であり、この前輪駆動装置6の動力がトランスミッション7を介して前輪Wfに伝達される一方で、この前輪駆動装置6と別に車両後部に設けられた駆動装置1(以下、後輪駆動装置と呼ぶ。)の動力が後輪Wr(RWr、LWr)に伝達されるようになっている。前輪駆動装置6の電動機5と後輪Wr側の後輪駆動装置1の第1及び第2電動機2A、2Bとは、バッテリ9に接続され、バッテリ9からの電力供給と、バッテリ9へのエネルギー回生が可能となっている。図1中、符号8は車両全体を制御するための制御装置である。
【0030】
先ず、本発明に係る遊星歯車機構の支持機構を搭載する一実施形態の車両用駆動装置について、図2及び図3に基づいて説明する。
図2は、後輪駆動装置1の全体の縦断面図を示すものであり、図3は、図2の上部部分拡大断面図である。同図において、符号11は、後輪駆動装置1のケースであり、ケース11は、車幅方向略中央部に配置される中央ケース11Mと、中央ケース11Mを挟むように中央ケース11Mの左右に配置される側方ケース11A、11Bと、から構成され、全体が略円筒状に形成される。ケース11の内部には、後輪Wr用の車軸10A、10Bと、車軸駆動用の第1及び第2電動機2A、2Bと、この両電動機2A、2Bの駆動回転を減速する第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bとが、同一軸線上にそれぞれ並んで配置されている。この車軸10A、第1電動機2A及び第1遊星歯車式減速機12Aは左後輪LWrを駆動制御し、車軸10B、第2電動機2B及び第2遊星歯車式減速機12Bは右後輪RWrを駆動制御する。車軸10A、第1電動機2A及び第1遊星歯車式減速機12Aと、車軸10B、第2電動機2B及び第2遊星歯車式減速機12Bとは、ケース11内で車幅方向に左右対称に配置されている。左後輪LWrは、第1電動機2Aに対して第1遊星歯車式減速機12Aと反対側に位置し、右後輪RWrも、第2電動機2Bに対して第2遊星歯車式減速機12Bと反対側に位置する。
【0031】
側方ケース11A、11Bの中央ケース11M側には、それぞれ径方向内側に延びる隔壁18A、18Bが設けられ、側方ケース11A、11Bと隔壁18A、18Bとの間には、それぞれ第1及び第2電動機2A、2Bが配置される。また、中央ケース11Mと隔壁18A、18Bとに囲まれた空間には、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bが配置されている。図2及び図3中の矢印は、後輪駆動装置1が車両に搭載された状態における位置関係を示している。
【0032】
後輪駆動装置1には、ケース11の内部と外部を連通するブリーザ装置40が設けられ、内部の空気が過度に高温・高圧とならないように内部の空気をブリーザ室41を介して外部に逃がすように構成される。ブリーザ室41は、ケース11の鉛直方向上部に配置され、中央ケース11Mの外壁と、中央ケース11M内に左側方ケース11A側に略水平に延設された第1円筒壁43と、右側方ケース11B側に略水平に延設された第2円筒壁44と、第1及び第2円筒壁43、44の内側端部同士をつなぐ左右分割壁45と、第1円筒壁43の左側方ケース11A側先端部に当接するように取り付けられたバッフルプレート47Aと、第2円筒壁44の右側方ケース11B側先端部に当接するように取り付けられたバッフルプレート47Bと、により形成された空間により構成される。
【0033】
ブリーザ室41の下面を形成する第1及び第2円筒壁43、44と左右分割壁45は、第1円筒壁43が第2円筒壁44より径方向内側に位置し、左右分割壁45が、第2円筒壁44の内側端部から縮径しつつ屈曲しながら第1円筒壁43の内側端部まで延設され、さらに径方向内側に延設されて略水平に延設された第3円筒壁46に達する。第3円筒壁46は、第1円筒壁43と第2円筒壁44の両外側端部より内側に且つその略中央に位置している。
【0034】
中央ケース11Mには、バッフルプレート47A、47Bが、第1円筒壁43と中央ケース11Mの外壁との間の空間又は第2円筒壁44と中央ケース11Mの外壁との間の空間を第1遊星歯車式減速機12A又は第2遊星歯車式減速機12Bからそれぞれ区画するように固定されている。また、中央ケース11Mには、ブリーザ室41と外部とを連通する外部連通路49がブリーザ室41の鉛直方向上面に接続される。
【0035】
第1及び第2電動機2A、2Bは、ステータ14A、14Bがそれぞれ側方ケース11A、11Bに固定され、このステータ14A、14Bの内周側に環状のロータ15A、15Bが回転可能に配置されている。ロータ15A、15Bの内周部には車軸10A、10Bの外周を囲繞する円筒軸16A、16Bが結合され、この円筒軸16A、16Bが車軸10A、10Bと同軸上に相対回転可能となるように側方ケース11A、11Bの端部壁17A、17Bと隔壁18A、18Bとにそれぞれ軸受19A、19B、軸受34A、34Bを介して径方向に支持されている。円筒軸16A、16Bの軸方向内側には、後述する第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bのサンギヤ21A、21Bが一体に形成され、サンギヤ21A、21Bよりもさらに軸方向内側に延出部13A、13Bが形成される。また、円筒軸16A、16Bを支持する軸受19A、19Bの軸方向外側には、側方ケース11A、11Bの端部壁17A、17Bに対し車軸10A、10Bを径方向に支持する軸受20A、20Bが設けられており、車軸10A、10Bの軸方向内側には、車軸10A、10Bを支持する軸受は設けられていない。
【0036】
ステータ14A、14B、及びロータ15A、15Bを含む第1及び第2電動機2A、2Bは、同一半径を有し、第1及び第2電動機2A、2Bは互いに鏡面対称に配置される。また、車軸10A及び円筒軸16Aは、第1電動機2A内を貫通して、第1電動機2Aの両端部から延出しており、車軸10B及び円筒軸16Bも、第2電動機2B内を貫通して、第2電動機2Bの両端部から延出している。
【0037】
また、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bは、サンギヤ21A、21Bと、このサンギヤ21A、21Bに噛合される複数のプラネタリギヤ22A、22Bを回転自在に支持するプラネタリキャリア23A、23Bと、プラネタリギヤ22A、22Bの外周側に噛合されるリングギヤ24A、24Bと、を同一軸心に備え、サンギヤ21A、21Bにそれぞれ第1及び第2電動機2A、2Bの駆動力が入力され、減速された駆動力がプラネタリキャリア23A、23Bを通して車軸10A、10Bに出力されるようになっている。なお、この第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの軸心は、車軸10A、10B及び円筒軸16A、16Bの軸心と同一であり、軸心方向は軸方向と一致する。
【0038】
サンギヤ21A、21Bは円筒軸16A、16Bに一体に形成されている。また、プラネタリギヤ22A、22Bは、サンギヤ21A、21Bに直接噛合される大径の第1ピニオン26A、26Bと、この第1ピニオン26A、26Bよりも小径の第2ピニオン27A、27Bを有する2連ピニオンであり、これらの第1ピニオン26A、26Bと第2ピニオン27A、27Bとが同軸にかつ軸方向にオフセットした状態で一体に形成されている。第2ピニオン27A、27Bは、円筒軸16A、16Bの延出部13A、13Bと軸方向でオーバーラップする位置に配置される。このプラネタリギヤ22A、22Bはニードルベアリング31A、31Bを介してプラネタリキャリア23A、23Bのピニオンシャフト230に支持される。
【0039】
プラネタリキャリア23A、23Bは、軸方向に延設されたピニオンシャフト230の内側端部が、内側腕部231に保持される。内側腕部231は、径方向に延設されたキャリアプレート231aと、キャリアプレート231aの内径側に一体に取り付けられて車軸10A、10Bと一体回転可能にスプライン嵌合するキャリアベース231bとから構成される。キャリアベース231bは、円筒軸16A、16Bの延出部13A、13Bと軸方向でオーバーラップするように延出部13A、13B側に延びており、延出部13A、13Bに軸受71A、71Bを介して支持される。さらに、キャリアベース231bは、後述するリングギヤ24A、24Bの小径部29A、29Bと軸方向でオーバーラップするように延出部13A、13Bとは反対側にも延びている。
【0040】
一方、ピニオンシャフト230の外側端部は、外側腕部232により軸受33A、33Bを介して隔壁18A、18Bに径方向に支持されている。
【0041】
リングギヤ24A、24Bは、その内周面が小径の第2ピニオン27A、27Bに噛合されるギヤ部28A、28Bと、ギヤ部28A、28Bより小径でケース11の中間位置で互いに対向配置される小径部29A、29Bと、ギヤ部28A、28Bの軸方向内側端部と小径部29A、29Bの軸方向外側端部を径方向に連結する連結部30A、30Bとを備えて構成されている。
【0042】
ギヤ部28A、28Bは、中央ケース11Mの左右分割壁45の内径側端部に形成された第3円筒壁46を挟んで軸方向に対向している。小径部29A、29Bは、その外周面がそれぞれ後述する一方向クラッチ50のインナーレース51とスプライン嵌合し、リングギヤ24A、24Bは一方向クラッチ50のインナーレース51と一体回転するように互いに連結されて構成されている。また、小径部29A、29Bは、その内周面がキャリアベース231bに軸受72A、72Bを介して相対回転可能に支持される。連結部30A、30Bとキャリアプレート231aとの間にも、軸受73A、73Bが配置される。
【0043】
第2遊星歯車式減速機12B側であって、ケース11を構成する中央ケース11Mの第2円筒壁44とリングギヤ24Bのギヤ部28Bとの間には、リングギヤ24Bに対する制動手段を構成する油圧ブレーキ60が第1ピニオン26Bと径方向でオーバーラップし、第2ピニオン27Bと軸方向でオーバーラップするように配置されている。油圧ブレーキ60は、第2円筒壁44の内周面にスプライン嵌合された複数の固定プレート35と、リングギヤ24Bのギヤ部28Bの外周面にスプライン嵌合された複数の回転プレート36とが軸方向に交互に配置され、これらのプレート35,36が環状のピストン37によって締結及び解放操作されるようになっている。ピストン37は、中央ケース11Mの左右分割壁45と第3円筒壁46間に形成された環状のシリンダ室に進退自在に収容されており、さらに第3円筒壁46の外周面に設けられた受け座38に支持される弾性部材39によって、常時、固定プレート35と回転プレート36とを解放する方向に付勢される。
【0044】
また、さらに詳細には、左右分割壁45とピストン37の間はオイルが直接導入される作動室Sとされ、作動室Sに導入されるオイルの圧力が弾性部材39の付勢力に勝ると、ピストン37が前進(右動)し、固定プレート35と回転プレート36とが相互に押し付けられて締結することとなる。また、弾性部材39の付勢力が作動室Sに導入されるオイルの圧力に勝ると、ピストン37が後進(左動)し、固定プレート35と回転プレート36とが離間して解放することとなる。なお、油圧ブレーキ60は電動オイルポンプ70(図1参照)に接続されている。
【0045】
この油圧ブレーキ60の場合、固定プレート35がケース11を構成する中央ケース11Mの左右分割壁45から伸びる第2円筒壁44に支持される一方で、回転プレート36がリングギヤ24Bのギヤ部28Bに支持されているため、両プレート35、36がピストン37によって押し付けられると、両プレート35、36間の摩擦締結によってリングギヤ24Bに制動力が作用し固定される。その状態からピストン37による締結が解放されると、リングギヤ24Bの自由な回転が許容される。なお、上述したように、リングギヤ24A、24Bは互いに連結されているため、油圧ブレーキ60が締結することによりリングギヤ24Aにも制動力が作用し固定され、油圧ブレーキ60が解放することによりリングギヤ24Aも自由な回転が許容される。
【0046】
また、軸方向で対向するリングギヤ24A、24Bの連結部30A、30B間にも空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24A、24Bに対し一方向の動力のみを伝達し他方向の動力を遮断する一方向クラッチ50が配置されている。一方向クラッチ50は、インナーレース51とアウターレース52との間に多数のスプラグ53を介在させたものであって、そのインナーレース51がスプライン嵌合によりリングギヤ24A、24Bの小径部29A、29Bと一体回転するように構成されている。またアウターレース52は、第3円筒壁46により位置決めされるとともに、回り止めされている。
【0047】
一方向クラッチ50は、車両3が第1及び第2電動機2A、2Bの動力で前進する際に係合してリングギヤ24A、24Bの回転をロックするように構成されている。より具体的に説明すると、一方向クラッチ50は、第1及び第2電動機2A、2B側の順方向(車両3を前進させる際の回転方向)の回転動力が車輪Wr側に入力されるときに係合状態となるとともに第1及び第2電動機2A、2B側の逆方向の回転動力が車輪Wr側に入力されるときに非係合状態となり、車輪Wr側の順方向の回転動力が第1及び第2電動機2A、2B側に入力されるときに非係合状態となるとともに車輪Wr側の逆方向の回転動力が第1及び第2電動機2A、2B側に入力されるときに係合状態となる。
【0048】
このように本実施形態の後輪駆動装置1では、第1及び第2電動機2A、2Bと車輪Wrとの動力伝達経路上に一方向クラッチ50と油圧ブレーキ60とが並列に設けられている。なお、油圧ブレーキ60は、車両の走行状態や一方向クラッチ50の係合・非係合状態に応じて、オイルポンプ70から供給されるオイルの圧力により、解放状態、締結状態に制御される。例えば、車両発進時等、車両3が少なくとも第1及び第2電動機2A、2Bの力行駆動により前進する時(後輪駆動又は四輪駆動時)は、一方向クラッチ50が係合するため動力伝達可能な状態となるため、典型的には油圧ブレーキ60が解放状態に制御される。また、車両3が内燃機関4及び/又は電動機5の力行駆動により前進する時(前輪駆動時)であってモータ制限車速を越えるときは、一方向クラッチ50が非係合となりさらに油圧ブレーキが解放状態に制御されることで、第1及び第2電動機2A、2Bの過回転が防止される。一方、車両3の後進時や回生時には、一方向クラッチ50が非係合となるため油圧ブレーキ60が締結状態に制御されることで、第1及び第2電動機2A、2B側からの逆方向の回転動力が車輪Wr側に出力され、又は車輪Wr側の順方向の回転動力が第1及び第2電動機2A、2B側に入力される。
【0049】
このように構成された後輪駆動装置1における、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの支持構造について以下に詳細に説明する。
サンギヤ21A、21Bは、一体に形成される円筒軸16A、16Bが軸受19A、19B及び軸受34A、34Bを介して電動機2A、2Bを挟んで両側に位置する端部壁17A、17Bと隔壁18A、18Bとに径方向に支持されることにより、軸受19A、19B及び軸受34A、34Bを介して端部壁17A、17Bと隔壁18A、18Bとに径方向に支持される。また、リングギヤ24A、24Bは、小径部29A、29Bの内周面がキャリアベース231bに軸受72A、72Bを介して相対回転可能に径方向に支持される。
【0050】
キャリアベース231bを介してリングギヤ24A、24Bを支持するプラネタリキャリア23A、23Bは、ピニオンシャフト230の軸方向外側が外側腕部232を介して軸受33A、33Bにより隔壁18A、18Bに径方向に支持され、ピニオンシャフト230の軸方向内側(キャリアベース231b)が、軸受19A、19Bと軸受34A、34Bを介して端部壁17A、17Bと隔壁18A、18Bとに支持される円筒軸16A、16Bの延出部13A、13Bに軸受71A、71Bを介して径方向に支持される。即ち、プラネタリキャリア23A、23Bは、ピニオンシャフト230の両側が軸受33A、33B、軸受19A、19B及び軸受34A、34Bを介してケース11に径方向に支持される。
【0051】
これらの軸受33A、33B、軸受19A、19B及び軸受34A、34Bは、いずれもプラネタリギヤ22A、22Bの軸方向外側に配置され、プラネタリギヤ22A、22Bの軸方向内側にはケース11に対しプラネタリキャリア23A、23Bを支持する軸受は設けられていない。なお、プラネタリキャリア23A、23Bの軸方向内側を支持する軸受として、軸受19A、19Bと軸受34A、34Bの2つが設けられているが、いずれか一方が設けられていればよい。このように、プラネタリキャリア23A、23Bの軸方向外側と軸方向内側を支持する少なくとも2つの軸受がプラネタリギヤ22A、22Bの軸方向外側に集中配置されるので、プラネタリギヤ22A、22Bの軸方向内側にスペースを確保することができる。
【0052】
上記実施形態の後輪駆動装置1では、2つの遊星歯車機構の間、即ち第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの軸方向内側に、一方向クラッチ50が配置されている。第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの内側に形成されるスペースに一方向クラッチ50を配置することで、径方向の小型化が可能となる。
【0053】
図4はプラネタリキャリアに鉛直方向下方の荷重が作用した際の図2に示す後輪駆動装置の左側部分の拡大断面図であり、図5はプラネタリキャリアに鉛直方向上方の荷重が作用した際の図2に示す後輪駆動装置の左側部分の拡大断面図である。
図4及び図5に示すように、プラネタリキャリア23A、23Bに鉛直方向下方又は上方の荷重が作用した場合には、図中白抜きの矢印で示すように、ピニオンシャフト230の外側が軸受33A、33Bを介して隔壁18A、18Bに径方向に支持され、ピニオンシャフト230の内側が軸受34A、34Bを介して隔壁18A、18Bに径方向に支持されるとともに軸受19A、19Bを介して端部壁17A、17Bに径方向に支持される。従って、本実施形態によれば、プラネタリキャリア23A、23Bは、ピニオンシャフト230の両端がケース11に径方向に支持されるため、荷重が作用した場合でも軸ずれの発生が抑制される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、プラネタリキャリア23A、23Bは、ピニオンシャフト230の軸方向外側を径方向に支持する軸受33A、33Bと、ピニオンシャフト230の軸方向内側を径方向に支持する軸受19A、19B及び軸受34A、34Bとによりケース11に径方向に支持されており、軸受33A、33B、軸受19A、19B及び軸受34A、34Bは、プラネタリギヤ22A、22Bの軸方向外側に配置され、プラネタリギヤ22A、22Bの軸方向内側には、ケース11に対しプラネタリキャリア23A、23Bを径方向に支持する軸受を備えていないので、プラネタリキャリア23A、23Bの軸ずれを抑制しつつ、プラネタリギヤ22A、22Bの軸方向内側にスペースを確保することができる。
【0055】
また、軸受19A、19B及び軸受34A、34Bは、サンギヤ21A、21Bと一体的に回転する円筒軸16A、16Bを径方向に支持する軸受であって、円筒軸16A、16Bを介してピニオンシャフト230の軸方向内側を支持するので、プラネタリキャリア23A、23Bと円筒軸16A、16Bとを支持するための軸受を共通化することができ、部品点数を削減できるとともに遊星歯車式減速機12A、12Bの支持構造を小型化することができる。
【0056】
また、円筒軸16A、16Bは、サンギヤ21A、21Bよりもピニオンシャフト230の軸方向内側に延びる延出部13A、13Bを備え、軸受19A、19B及び軸受34A、34Bは、延出部13A、13Bを介してピニオンシャフト230の軸方向内側を支持するので、サンギヤ21A、21Bと一体的に回転する円筒軸16A、16Bの軸方向の幅をかせぐことで、プラネタリキャリア23A、23Bを安定して支えることができる。
【0057】
また、プラネタリギヤ22A、22Bは、大径の第1ピニオン26A、26Bと小径の第2ピニオン27A、27Bとが軸線方向に連設された2段ピニオンギヤであり、サンギヤ21A、21Bは、第1ピニオン26A、26Bと噛合し、リングギヤ24A、24Bは、第2ピニオン27A、27Bと噛合し、延出部13A、13Bと第2ピニオン27A、27Bとは軸方向にオーバーラップするので、2段ピニオンのデッドスペースに延出部13A、13Bを配置することで、プラネタリギヤ22A、22Bが軸方向に長大化することを抑制することができる。
【0058】
また、リングギヤ24A、24Bは、プラネタリキャリア23A、23Bを介して軸受19A、19B及び軸受34A、34Bに径方向に支持されるので、リングギヤ24A、24Bを支持するための軸受を別途ケース11に設ける必要がない。
【0059】
また、ケース11は、プラネタリギヤ22A、22Bの軸方向外側に径方向に延びる隔壁18A、18Bを備え、隔壁18A、18Bに、軸受33A、33Bと軸受34A、34Bとが設けられるので、軸受33A、33Bと軸受34A、34Bとを支持する壁部が1つでよいので、別個に形成する場合に比べて遊星歯車式減速機12A、12Bの支持構造を小型化することができる。
【0060】
また、遊星歯車式減速機12A、12Bは、それぞれ車両3の駆動源として第1及び第2電動機2A、2Bと後輪Wrとの動力伝達経路上に配置され、第1及び第2電動機2A、2Bと遊星歯車式減速機12A、12Bとを接続する円筒軸16A、16Bと、遊星歯車式減速機12A、12Bと後輪Wrとを接続する車軸10A、10Bと、を備える。円筒軸16A、16Bは中空構造を有し、車軸10A、10Bは、円筒軸16A、16Bの内部に挿入され、遊星歯車式減速機12Aに対し、軸方向外側に第1電動機2Aと左後輪LWrとが配置され、遊星歯車式減速機12Bに対し、軸方向外側に第2電動機2Bと右後輪RWrとが配置されるので、車軸10A、10Bと円筒軸16A、16Bの2つの動力伝達軸を同一軸線上に配置することができ、径方向の小型化が可能となる。また、第1及び第2電動機2A、2Bの間に遊星歯車式減速機12A、12Bを隣接して集中配置可能であるので軸方向の長大化を抑制できる。
【0061】
また、ケース11は、車軸10A、10Bを径方向に支持する軸受20A、20Bを備え、軸受20A、20Bは、プラネタリギヤ22A、22Bの軸方向外側に配置され、ケース11は、プラネタリギヤ22A、22Bの軸方向内側に車軸10A、10Bを支持する軸受を備えていないので、プラネタリキャリア23A、23Bを支持する軸受に加え、車軸10A、10Bを支持する軸受も、プラネタリギヤ22A、22Bの軸方向外側に集中配置されるので、プラネタリギヤ22A、22Bの軸方向内側にスペースを確保することができる。
【0062】
また、リングギヤ24A、24Bには、一方向クラッチ50が接続され、一方向クラッチ50は、プラネタリギヤ22A、22Bの軸方向内側に配置されるので、プラネタリギヤ22A、22Bの軸方向内側の、回転軸心近傍に一方向クラッチ50を設けることができ、径方向の小型化が可能となる。なお、一方向クラッチ50の代わりに、油圧ブレーキ60を設けてもよい。さらに、サンギヤ21A、21Bに一方向クラッチ50又は油圧ブレーキ60を設け、リングギヤ24A、24Bに第1及び第2電動機2A、2Bを接続してもよい。
【0063】
また、遊星歯車機構は、互いに隣接して鏡面対称に配置される2つの第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bを含み、ケース11は、2つの第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの間に、それぞれのプラネタリキャリア23A、23Bを径方向に支持する軸受を備えていないので、軸受19A、19B、軸受33A、33Bと軸受34A、34Bとが配置される側の反対側に2つの空間が形成されることで、より大きなスペースを確保することが可能となる。
【0064】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
車両の駆動源と車輪との動力伝達経路上に配置された遊星歯車機構であれば、任意の構成に採用することができる。
例えば、駆動源としては、電動機に関わらずエンジンであってもよく、前輪駆動装置に組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0065】
2A 第1電動機(駆動源)
2B 第2電動機(駆動源)
10A、10B 車軸(他の動力伝達軸)
12A、12B 第1及び第2遊星歯車式減速機(遊星歯車機構)
13A、13B 延出部
16A、16B 円筒軸(他の回転軸、動力伝達軸)
18A、18B 隔壁(壁部)
20A、20B 軸受(第3軸受)
21A、21B サンギヤ
22A、22B プラネタリギヤ
23A、23B プラネタリキャリア
24A、24B リングギヤ
26A、26B 第1ピニオン(大径ギヤ)
27A、27B 第2ピニオン(小径ギヤ)
33A、33B 軸受(第1軸受)
19A、19B 軸受(第2軸受)
34A、34B 軸受(第2軸受)
50 一方向クラッチ(一方向動力伝達手段)
60 油圧ブレーキ(動力断接手段)
230 ピニオンシャフト(回転軸)
231 内側腕部
232 外側腕部
LWr 左後輪(車輪)
RWr 右後輪(車輪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンギヤと、リングギヤと、前記サンギヤ及び前記リングギヤに噛合された複数のプラネタリギヤを回転自在に支持するプラネタリキャリアと、を同一軸心に備え、ケース内に配置された遊星歯車機構の支持構造であって、
前記プラネタリキャリアは、軸心方向に延設され、前記プラネタリギヤを回転可能に支持する回転軸と、径方向に延設され、前記回転軸を保持する腕部と、を備え、
前記プラネタリキャリアは、前記回転軸の一端側を径方向に支持する第1軸受と、前記回転軸の他端側を径方向に支持する第2軸受とにより前記ケースに径方向に支持されており、
前記第1及び第2軸受は、前記軸心方向で前記プラネタリギヤの一方側に配置され、
前記軸心方向で前記プラネタリギヤの他方側には、前記ケースに対し前記プラネタリキャリアを径方向に支持する軸受を備えていないことを特徴とする遊星歯車機構の支持構造。
【請求項2】
前記第2軸受は、前記サンギヤと一体的に回転する他の回転軸を径方向に支持する軸受であって、該他の回転軸を介して前記回転軸の他端側を支持することを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車機構の支持構造。
【請求項3】
前記他の回転軸は、前記サンギヤよりも前記回転軸の他端側に延びる延出部を備え、
前記第2軸受は、前記延出部を介して前記回転軸の他端側を径方向に支持することを特徴とする請求項2に記載の遊星歯車機構の支持構造。
【請求項4】
前記プラネタリギヤは、大径ギヤと小径ギヤとが軸線方向に連設された2段ピニオンギヤであり、
前記サンギヤは、前記大径ギヤと噛合し、
前記リングギヤは、前記小径ギヤと噛合し、
前記延出部と前記小径ギヤとは軸心方向にオーバーラップすることを特徴とする請求項3に記載の遊星歯車機構の支持構造。
【請求項5】
前記リングギヤは、前記プラネタリキャリアを介して前記第2軸受に径方向に支持されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の遊星歯車機構の支持構造。
【請求項6】
前記ケースは、前記プラネタリギヤの一方側に径方向に延びる壁部を備え、
前記壁部に、前記第1及び第2軸受が設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の遊星歯車機構の支持構造。
【請求項7】
前記遊星歯車機構は、車両の駆動源と車輪との動力伝達経路上に配置され、
前記駆動源と前記遊星歯車機構とを接続する動力伝達軸と、前記遊星歯車機構と前記車輪とを接続する他の動力伝達軸と、を備え、
前記動力伝達軸は中空構造を有し、
前記他の動力伝達軸は、前記動力伝達軸の内部に挿入され、
前記遊星歯車機構に対し、前記軸心方向で一方側に前記駆動源と前記車輪とが配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の遊星歯車機構の支持構造。
【請求項8】
前記ケースは、前記他の動力伝達軸を径方向に支持する第3軸受を備え、
前記第3軸受は、前記軸心方向で前記プラネタリギヤの一方側に配置され、
前記ケースは、前記プラネタリギヤの他方側に前記他の動力伝達軸を径方向に支持する軸受を備えていないことを特徴とする請求項7に記載の遊星歯車機構の支持構造。
【請求項9】
前記遊星歯車機構の前記サンギヤ、前記プラネタリキャリア、又は前記リングギヤのいずれかには、一方向動力伝達手段又は動力断接手段が接続され、
前記一方向動力伝達手段又は動力断接手段は、前記軸心方向で前記プラネタリギヤの他方側に配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の遊星歯車機構の支持構造。
【請求項10】
前記遊星歯車機構は、互いに隣接して鏡面対称に配置される2つの遊星歯車機構を含み、
前記ケースは、前記2つの遊星歯車機構の間に、それぞれのプラネタリキャリアを径方向に支持する軸受を備えていないことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の遊星歯車機構の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−53737(P2013−53737A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194287(P2011−194287)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】