説明

運動失調症の処置または予防のための、アザビシクロアルキル誘導体またはピロリジン−2−オン誘導体の使用

本発明は、運動失調症の処置、予防または進行の遅延のための、アザビシクロアルキル誘導体またはピロリジン−2−オン誘導体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意のアザビシクロアルキル誘導体またはピロリジン−2−オン誘導体の医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
運動失調症は、患者が随意運動を行うための筋肉の協調ができない、中枢神経系の障害である;T Klockgether, 2007(T Klockgether, Parkinsonism and Related Disorders, 13, S391−S394, 2007)を参照のこと。運動失調症の典型的な症状は、歩行障害、均衡失調、四肢の協調運動障害および失調失語(altered speech)である。ほとんどの運動失調障害において、運動失調症は、小脳皮質およびその求心性または遠心性線維結合の変性に起因する。典型的な脳障害領域は、小脳、後索、錐体路および大脳基底核である。運動失調症は、低下した運動ニューロン機能をもたらし得る。運動失調症は、一般的に遺伝性および非遺伝性運動失調症に分類される。
【0003】
遺伝性運動失調症はさらに、常染色体劣性および常染色体優性運動失調症に分類される。常染色体劣性運動失調症は、例えば、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、毛細血管拡張性運動失調症(AT)、眼球運動失行を伴う常染色体劣性運動失調症1型、眼球運動失行を伴う常染色体劣性運動失調症2型、軸索神経障害を伴う脊髄小脳運動失調症、無βリポタンパク血症、分離されたビタミンE欠乏症を伴う運動失調症、レフサム病および脳腱黄色腫である。常染色体優性運動失調症は、例えば、脊髄小脳失調症(SCA)であり、それは、飜訳されたCAG反復配列の伸張と関係する運動失調症(SCA1、2、3、6、7および17))、非コーディング領域中の飜訳されない反復配列の伸張と関係する運動失調症(SCA8、10および12)、点変異と関係する運動失調症(SCA5、13、14および27)にさらに分類され得る。SCA3はまた、マシャド・ジョセフ病としても公知である。
【0004】
非遺伝性運動失調症は、変性性および後天性運動失調症にさらに分類され得る。変性性運動失調症は、例えば、多系統萎縮性運動失調症および散発性成人発症性運動失調症である。後天性運動失調症は、例えば、アルコール性/毒性の小脳変性症または傍腫瘍性小脳変性症と関係し得る。
【0005】
運動失調症は、遺伝的(例えば、FRDAは、大部分の患者で、フラタキシン遺伝子の同型接合性のイントロンのGAA反復配列の伸張によって引き起こされ、それはフラタキシンの低レベル発現をもたらし、結果としてミトコンドリアへの鉄の蓄積をもたらす)または環境的(例えば、毒素によって引き起こされる小脳変性を伴う運動失調症)な広範囲の根本原因に起因し得て、多くの可能性のある治療法が臨床分野で議論されている。運動失調症のための可能性のある治療に関係のある概説は、T Klockgether, 2007に記載されている。FRDAに関して、例えば、イデベノン、短鎖コエンザイムQ10類縁体または細胞膜透過性の経口用鉄キレート剤であるデフェリプロンでの治療は、臨床試験で効果が示された(T Klockgether, 2007;WO2007095728)。さらに、複合Ca2+、ZN2+またはMg2+イオンを含むポルフィリン化合物での治療は、前臨床モデルにおいて有益な効果が示された(WO2007085036)。
【0006】
近年、TA Zesiewiczは、喫煙依存症を処置するための薬剤であるバレニクリン(7,8,9,10−テトラヒドロ−6,10−メタノ−6H−ピラジノ−(2,3−h)(3)−ベンズアゼピン)の臨床試験における数名の患者で見られた運動失調症の改善に関する情報を報告した。1日当たり0.5mg/kg用量のバレニクリンを経口投与したFRDAの患者2名(TA Zesiewicz et al, J Clinical Neuromuscular Disease, 10(4), 191−193, 2009)およびSCA3/SCA14の患者2名(TA Zesiewicz et al, Clinical Neuropharmacology, 31(6), 363−365, 2008)の全員が、症状の改善を示した。
【0007】
バレニクリンは、アルファ−4/ベータ−2 ニコチン性アセチルコリン受容体(α4β2−nAChR;卵母細胞におけるK:0.4nM)の部分的アゴニストおよびα7−nAChR(卵母細胞におけるK:125nM)の完全アゴニストとして作用し得るが、その機能的挙動は、用量によって変わる。バレニクリンは、低用量で受容体を脱感作し、高用量でのみ、(部分的に)受容体活性化をもたらす。バレニクリンは、ヒトにおいて0.5mg/kgで、両受容体を脱感作し、すなわち機能的アンタゴニストであると考えられている(H Rollema et al, Biochemical Pharmacology, 78, 813−824, 2009)。
【0008】
バレニクリンの臨床的使用中に、悪心、睡眠障害、便秘、明晰夢(vivid dreams)、腹部膨満および嘔吐のような副作用が報告されている。さらに、該副作用により、バレニクリンでの喫煙依存症の処置は、最大24週間に制限される可能性があり;一方、運動失調症では、一生涯続く治療が示唆され得る。
【0009】
いくつかの利点が上記臨床試験/前臨床モデルで見出されているが、患者に利用可能であって、副作用が許容され得る運動失調症の効果的処置はない。それ故に、運動失調症の処置のための医薬を提供する必要性がある。
【発明の概要】
【0010】
運動失調症の処置、予防または進行の遅延に用いるための化合物として、
(A)遊離塩基形または薬学的に許容される酸付加塩形態の、式(I)
【化1】

[式中、
は、−CH−であり;Lは、−CH−または−CH−CH−であり;Lは、−CH−または−CH(CH)−であるか;または
は、−CH−CH−であり;Lは、−CH−であり;Lは、−CH−CH−であり;
は、
【化2】


(式中、アスタリスクを付した結合は、アザビシクロアルキル部分に結合する。)
から選択される基であり;
は、水素またはC1−4アルキルであり;
は、−O−または−NH−であり;
【0011】
は、
【化3】


(式中、アスタリスクを付した結合は、Xに結合する。)
から選択され;
は、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る5員ないし10員の単環式または縮合多環式芳香環系であって、該環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、Rにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではなく;
は、それぞれ独立して、C1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、ハロゲン、シアノまたは芳香族性の飽和または部分的飽和であり得て、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る3員ないし6員の単環式環系であり、各環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、そしてC1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、ハロゲンまたはシアノにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではないか;
または、隣接環原子の2個のRは、C3−4アルキレン基を形成し、ここで、1−2個の炭素原子は、Xで置換されていてよく、C3−4アルキレン基は、Rで1回または2回以上置換されていてよく;
は、それぞれ独立して、−O−または−N(R)−であり;
は、それぞれ独立して、水素またはC1−6アルキルであり;そして
は、それぞれ独立して、ハロゲンまたはC1−6アルキルである。]
で示される化合物;および
【0012】
(B)遊離塩基形または薬学的に許容される酸付加塩形態の、式(II)
【化4】


[式中、
は、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る5員ないし10員の単環式または縮合多環式芳香環系であって、該環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、Rにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではなく;
は、それぞれ独立して、C1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、ハロゲン、シアノ、アミノまたは芳香族性の飽和または部分的飽和であり得て、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る3員ないし6員の単環式環系であり、各環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、そしてC1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、ハロゲンまたはシアノにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではないか;
または、隣接環原子の2個のRは、C3−4アルキレン基を形成し、ここで、1−2個の炭素原子は、Xで置換されていてよく、C3−4アルキレン基は、Rで1回または2回以上置換されていてよく;
は、それぞれ独立して、−O−または−N(R)−であり;
は、それぞれ独立して、水素またはC1−6アルキルであり;そして
は、それぞれ独立して、ハロゲンまたはC1−6アルキルである。]
で示される化合物
からなる群から選択される化合物を見出した。
【0013】
従って、本発明の第一の側面は、運動失調症の処置(治療的または予防的のどちらか)、予防または進行の遅延のための、式(I)の化合物または式(II)の化合物の使用に関する。
【0014】
式(I)の化合物または式(II)の化合物は、α7−nAChRアゴニストである。これらの化合物およびそれらの医薬としての使用は、WO2001/85727、WO2004/022556、WO2005/118535、WO2005/123732、WO2006/005608、WO2007/045478、WO2007/068476およびWO2007/068475に記載される。α7−nAChRは、中枢神経系(CNS)の全体を通じて広く記載され、神経精神疾患、例えば、認知機能障害のようなCNS疾患のための可能性のある標的である(SL Cincotta et al, Current Opinion in Investigational Drugs, 9(1), 47−56, 2008; LM Broad et al, Drugs of the Future, 32(2), 161−170, 2007)。さらに、α7−nAChRの活性化は、培養した脊髄運動ニューロンの生存を促進することが見出された(ML Messi, FEBS Letters, 411, 32−38, 1997)。
【0015】
本発明のさらなる側面は、かかる処置を必要とする対象における、運動失調症の処置、予防または進行の遅延のための方法であって、該対象に治療的有効量の式(I)の化合物または式(II)の化合物を投与することを含む方法に関する。
【0016】
本発明のさらなる側面は、運動失調症の処置、予防または進行の遅延のための、式(I)の化合物または式(II)の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0017】
本発明のさらなる側面は、運動失調症の処置、予防または進行の遅延のための医薬の製造のための、式(I)の化合物または式(II)の化合物の使用に関する。
【0018】
本発明のさらなる側面は、運動失調症の処置、予防または進行の遅延のための、式(I)の化合物または式(II)の化合物に関する。
【0019】
特に、本発明の好ましい化合物は、胃腸管からよく吸収され、代謝的に安定で、好ましい薬物動態学的特性を有するべきである。
【0020】
本発明のさらに好ましい化合物は、インビボでα7−nAChRに強く結合するが、他の受容体、とりわけXXX、YYYおよびZZZにはほとんど親和性を示さない。
【0021】
本発明のさらに好ましい化合物は、血液脳関門を効率よく通過する。
本発明の好ましい化合物は、非毒性であり、副作用がほとんどないことが示される。
さらに、本発明の好ましい化合物は、安定で、非吸湿性で、剤形化が容易な物理的形態で存在し得る。
【0022】
他に特記しない限り、本明細書中で用いる表現は以下の意味を有する:
“アルキル”は、直鎖または分枝鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−もしくはイソ−プロピル、n−、イソ−、sec−もしくはtert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルを意味し;C1−6アルキルは、好ましくは、直鎖または分枝鎖C1−4アルキルを意味し、特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピルおよびtert−ブチルである。
【0023】
“アルコキシ”、“ハロゲンアルキル”等の各アルキル部分は、とりわけ線形性および選択的サイズに関して、上記の“アルキル”に記載のものと同様の意味を有し得る。
【0024】
“1回または2回以上”置換される置換基は、例えばAは、好ましくは1ないし3個の置換基で置換される。
【0025】
ハロゲンは、一般的に、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり;好ましくは、フッ素、塩素または臭素である。ハロゲンアルキル基は、好ましくは、1ないし4個の炭素原子の鎖長を有し、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−フルオロエチル、2−クロロエチル、ペンタフルオロエチル、1,1−ジフルオロ−2,2,2−トリクロロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルまたは2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルであり;好ましくは、−CF、−CHF、−CHF、−CHF−CH、−CFCH、または−CHCFである。
【0026】
本明細書中、“隣接環原子の2個のRは、C3−4アルキレン基を形成し、ここで、1−2個の炭素原子は、Xで置換されていてよく”または“隣接環原子の2個のRは、C3−4アルキレン基を形成し、ここで、1−2個の炭素原子は、Xで置換されていてよく”なる記載は、−CH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−、−O−CH−O−、−O−CH−CH−O−および−CH−CH−NH−を包含する。置換基の例は、−CH−CH−N(CH)−である。
【0027】
本明細書中、“5員ないし10員の単環式または縮合多環式芳香環系”なるAまたはAの定義は、C−またはC10−芳香族炭化水素基または5員ないし10員のヘテロ環式芳香環系を包含する。“多環式”は、好ましくは二環式を意味する。
【0028】
本明細書中、“3員ないし6員の単環式環系”なるRの定義は、C−芳香族炭化水素基、5員ないし6員のヘテロ環式芳香環系および3員ないし6員の単環式脂肪族もしくはヘテロ環式環系を包含する。
【0029】
−またはC10−芳香族炭化水素基は、典型的に、フェニルまたはナフチルであり、とりわけフェニルである。
【0030】
好ましくは、置換基の定義にもよるが、“5員ないし10員のヘテロ環式芳香環系”は、1−3個の環原子がヘテロ原子である、5個ないし10個の環原子からなる。かかるヘテロ環式芳香環系は、単環系または二環式もしくは三環式環系として存在し得る;好ましくは、単環系またはベンズ縮合(annelated)環系である。二環式または三環式環系は、2個またはそれ以上の環の縮合により形成され得るか、または架橋原子、例えば酸素、硫黄、窒素により形成され得る。ヘテロ環式環系の例は、イミダゾ[2,1−b]チアゾール、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾール、トリアゾリン、トリアゾリジン、テトラゾール、フラン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、フラザン(オキサジアゾール)、ジオキソラン、チオフェン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサゾリジン、イソオキサゾール、イソキサゾリン、イソキサゾリジン、チアゾール、チアゾリン、チアゾリジン、イソチアゾール、イソチアゾリン、イソチアゾリジン、チアジアゾール、チアジアゾリン、チアジアゾリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリダジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、ピラン、テトラヒドロピラン、チオピラン、テトラヒドロチオピラン、オキサジン、チアジン、ジオキシン、モルホリン、プリン、プテリジン、および対応するベンズ縮合ヘテロ環、例えばインドール、イソインドール、クマリン、イソキノリン、キノリンなどである。好ましいヘテロ環は、イミダゾ[2,1−b]チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ピロール、フラン、テトラヒドロフラン、ピリジン、ピリミジン、イミダゾールまたはピラゾールである。
【0031】
本明細書中、3員ないし6員の単環式脂肪族環系は、典型的に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。
【0032】
式(I)の化合物または式(II)の化合物の酸付加塩形は、薬学的に許容される塩である。かかる塩類は、当技術分野で公知である(例えば、S.M. Berge, et al, “Pharmaceutical Salts”, J. Pharm. Sd., 1977, 66:1−19; and “Handbook of Pharmaceutical Salts, Properties, Selection, and Use”, Stahl, RH., Wermuth, C.G., Eds.; Wiley−VCH and VHCA: Zurich, 2002)。“薬学的に許容される塩”は、式(I)または式(II)で示される化合物の遊離塩基の塩を意味することを意図し、それは毒性ではなく、生物学的に非許容ではなく、また生物学的に望ましくないこともない。好ましい薬学的に許容される塩は、薬理学的に有効で、毒性、炎症性またはアレルギー性応答を引き起こすことなく、患者の組織と接触するのに好適なものである。
【0033】
式(I)の化合物または式(II)の化合物およびそれらの製造法は、WO2001/85727、WO2004/022556、WO2005/118535、WO2005/123732、WO2006/005608、WO2007/045478、WO2007/068476およびWO2007/068475から公知であるか、または該文献と同様の方法で製造され得る。WO2001/85727、WO2004/022556、WO2005/118535、WO2005/123732、WO2006/005608、WO2007/045478、WO2007/068476およびWO2007/068475は、引用により本明細書中に包含させる。
【0034】
式(I)の化合物および式(II)の化合物に存在し得る不斉炭素原子(複数もある)のために、化合物は、光学的活性形態または光学異性体の混合物形態、例えばラセミ混合物形態またはジアステレオマー混合物形態で存在し得る。全ての光学異性体およびラセミ混合物を含むそれらの混合物は、本発明の一部である。
【0035】
本発明の一態様において、式(I)の化合物を用いる。
本発明の一態様において、式(I)
【化5】

[式中、
は、−CH−であり;Lは、−CH−CH−であり;Lは、−CH−または−CH(CH)−であり;
は、
【化6】


(式中、アスタリスクを付した結合は、アザビシクロアルキル部分に結合する。)
から選択される基であり;
は、水素またはC1−4アルキルであり;
は、−O−または−NH−であり;
は、
【化7】


(式中、アスタリスクを付した結合は、Xに結合する。)
から選択され;
は、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る5員ないし10員の単環式または縮合多環式芳香環系であって、該環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、Rにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではなく;
は、それぞれ独立して、C1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシまたはハロゲンである。]
で示される化合物を用いる。
【0036】
本発明の一態様において、式(I)
【化8】


[式中、
は、−CH−であり;Lは、−CH−CH−であり;Lは、−CH−であり;
は、
【化9】


(式中、アスタリスクを付した結合は、アザビシクロアルキル部分に結合する。)
から選択される基であり;
は、水素またはC1−4アルキルであり;
は、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る5員ないし10員の単環式または縮合多環式芳香環系であって、該環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、Rにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではなく;
は、それぞれ独立して、C1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシまたはハロゲンである。]
で示される化合物を用いる。
【0037】
本発明の一態様において、式(I)
【化10】

[式中、
は、−CH−であり;Lは、−CH−CH−であり;Lは、−CH−または−CH(CH)−であり;
は、
【化11】


(式中、アスタリスクを付した結合は、アザビシクロアルキル部分に結合する。)
から選択される基であり;
は、−O−または−NH−であり;
は、
【化12】


(式中、アスタリスクを付した結合は、Xに結合する。)
から選択され;
は、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る5員ないし10員の単環式または縮合多環式芳香環系であって、該環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、Rにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではなく;
は、それぞれ独立して、C1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシまたはハロゲンである。]
で示される化合物を用いる。
【0038】
本発明の一態様において、式(I)
【化13】

[式中、
は、−CH−CH−であり;Lは、−CH−であり;Lは、−CH−CH−であり;
は、
【化14】


(式中、アスタリスクを付した結合は、アザビシクロアルキル部分に結合する。)
から選択される基であり;
は、−O−または−NH−であり;
は、
【化15】


(式中、アスタリスクを付した結合は、Xに結合する。)
から選択され;
は、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る5員ないし10員の単環式または縮合多環式芳香環系であって、該環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、Rにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではなく;
は、それぞれ独立して、C1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシまたはハロゲンである。]
で示される化合物を用いる。
【0039】
本発明の一態様において、式(II)
【化16】


[式中、
は、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る5員ないし10員の単環式または縮合多環式芳香環系であって、該環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、Rにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではなく;
は、それぞれ独立して、C1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、アミノまたはハロゲンである。]
で示される化合物を用いる。
【0040】
本発明の一態様において、式(I)の化合物は、以下からなる群から選択される化合物である:
A−1: (S)−(1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル)−カルバミン酸 (S)−1−(2−フルオロ−フェニル)−エチルエステル;
A−2: (R)−(1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル)−カルバミン酸 (R)−1−(2−クロロ−フェニル)−エチルエステル;
A−3: (S)−(1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル)−カルバミン酸 (S)−1−フェニル−エチルエステル;
B−1: (R)−3−(5−フェニル−ピリミジン−2−イルオキシ)−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−2: (R)−3−(5−p−トリル−ピリミジン−2−イルオキシ)−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−3: (R)−3−(5−(2−フルオロ−4−メチル−フェニル)−ピリミジン−2−イルオキシ)−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−4: (R)−3−(5−(3,4−ジメチル−フェニル)−ピリミジン−2−イルオキシ)−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−5: (R)−3−(6−p−トリル−ピリジン−3−イルオキシ)−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−6: (R)−3−(6−フェニル−ピリジン−3−イルオキシ)−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−7: (R)−3−(6−(3,4−ジメチル−フェニル)−ピリジン−3−イルオキシ)−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−8: (R)−3−[6−(2−フルオロ−4−メチル−フェニル)−ピリダジン−3−イルオキシ]−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−9: (R)−3−[6−(4,5−ジメチル−2−フルオロ−フェニル)−ピリダジン−3−イルオキシ]−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−10: (R)−3−[6−(3,4−ジメチル−フェニル)−ピリダジン−3−イルオキシ]−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−11: (R)−3−[6−(4−メチル−フェニル)−ピリダジン−3−イルオキシ]−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−12: (R)−3−[6−(2,5−ジフルオロ−4−メチル−フェニル)−ピリダジン−3−イルオキシ]−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−13: (2S,3R)−3−[6−(1H−インドール−5−イル)−ピリダジン−3−イルオキシ]−2−メチル−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−14: (2R,3S)−3−[6−(1H−インドール−5−イル)−ピリダジン−3−イルオキシ]−2−メチル−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−15: (2S,3R)−3−[5−(1H−インドール−5−イル)−ピリミジン−2−イルオキシ]−2−メチル−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−16: (2R,3S)−3−[5−(1H−インドール−5−イル)−ピリミジン−2−イルオキシ]−2−メチル−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−17: 3−[6−(1H−インドール−5−イル)−ピリジン−3−イルオキシ]−2−メチル−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−18: (2S,3R)−2−メチル−3−[6−(5−メチル−チオフェン−2−イル)−ピリダジン−3−イルオキシ]−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−19: 3−[6−(2,3−ジメチル−1H−インドール−5−イル)−ピリダジン−3−イルオキシ]−2−メチル−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン;
B−20: トランス−2−メチル−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル)−(6−フェニル−ピリジン−3−イル)−アミン;
B−21:トランス−[6−(1H−インドール−5−イル)−ピリジン−3−イル]−(2−メチル−1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル)−アミン;
【0041】
C−1: (4S,5R)−4−[5−(1H−インドール−5−イル)−ピリミジン−2−イルオキシ]−1−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン;
C−2: 5−{2−[(4S,5R)−(1−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−4−イル)オキシ]−ピリミジン−5−イル}−1,3−ジヒドロ−インドール−2−オン;
C−3: (4S,5R)−4−[6−(1H−インドール−5−イル)−ピリジン−3−イルオキシ]−1−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン;
C−4: (4S,5R)−4−[5−(1H−インドール−5−イル)−ピリジン−2−イルオキシ]−1−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン;
C−5: (4S,5R)−4−[6−(1H−インドール−5−イル)−ピリダジン−3−イルオキシ]−1−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン;
C−6: 5−{6−[(4S,5R)−(1−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−4−イル)オキシ]−ピリダジン−3−イル}−1,3−ジヒドロ−インドール−2−オン;
C−7: (1−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−4−イル)−[5−(1H−インドール−5−イル)−ピリジン−2−イル]−アミン;
C−8: (1−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−4−イル)−[5−(1H−インドール−5−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミン;
C−9: (1−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−4−イル)−[6−(1H−インドール−5−イル)−ピリジン−3−イル]−アミン;
C−10: (1−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−4−イル)−[6−(1H−インドール−5−イル)−ピリジン−3−イル]−アミン;
C−11: (1−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−4−イル)−[5−(1H−インドール−4−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミン;
C−12: (1−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−4−イル)−[6−(1H−インドール−5−イル)−ピリダジン−3−イル]−アミン;
【0042】
D−1: 5−ベンゾフラン−5−イルエチニル−1−メチル−3−ピペリジン−1−イルメチル−ピロリジン−2−オン;
D−2: 1−メチル−5−フェニルエチニル−3−ピペリジン−1−イルメチル−ピロリジン−2−オン;
D−3: 1−メチル−5−(1−メチル−1H−インドール−5−イルエチニル)−3−ピペリジン−1−イルメチル−ピロリジン−2−オン;および
D−4: 5−(3−アミノ−フェニルエチニル)−1−メチル−3−ピペリジン−1−イルメチル−ピロリジン−2−オン。
【0043】
本発明の一態様において、式(I)の化合物は、化合物A−1、A−2およびA−3からなる群から選択される化合物である。
【0044】
本発明の一態様において、式(I)の化合物は、化合物B−1、B−2、B−3、B−4、B−5、B−6、B−7、B−8、B−9、B−10、B−11、B−12、B−13、B−14、B−15、B−16、B−17、B−18、B−19、B−20およびB−21からなる群から選択される化合物である。
【0045】
本発明の一態様において、式(I)の化合物は、化合物C−1、C−2、C−3、C−4、C−5、C−6、C−7、C−8、C−9、C−10、C−11およびC−12からなる群から選択される化合物である。
【0046】
本発明の一態様において、式(II)の化合物は、化合物D−1、D−2、D−3およびD−4からなる群から選択される化合物である。
【0047】
一態様において、式(I)の化合物または式(II)の化合物は、運動失調症の処置用である。
【0048】
一態様において、式(I)の化合物または式(II)の化合物は、運動失調症の予防用である。
【0049】
一態様において、式(I)の化合物または式(II)の化合物は、運動失調症の進行遅延用である。
【0050】
処置は、運動失調症と関係する症状の軽減、例えば、それに限定されないが、歩行障害、均衡失調、四肢の協調運動障害および/または失調失語(altered speech)の改善;または運動失調症の発現する間隔の延長を含み得る。
【0051】
予防的処置の場合、式(I)の化合物または式(II)の化合物は、運動失調症の発現を遅延または阻害するために用いられ得る。
【0052】
一態様において、式(I)の化合物または式(II)の化合物は、遺伝性運動失調症の処置、予防または進行の遅延用である。
【0053】
一態様において、式(I)の化合物または式(II)の化合物は、常染色体劣性運動失調症の処置、予防または進行の遅延用である。
【0054】
一態様において、式(I)の化合物または式(II)の化合物は、フリードライヒ運動失調症の処置、予防または進行の遅延用である。
【0055】
一態様において、式(I)の化合物または式(II)の化合物は、脊髄小脳性運動失調症の処置、予防または進行の遅延用である。
【0056】
一態様において、式(I)の化合物または式(II)の化合物は、脊髄小脳性運動失調症1型、2型、3型、6型、7型または17型、とりわけ脊髄小脳性運動失調症3型(マシャド・ジョセフ疾患)の処置、予防または進行の遅延用である。
【0057】
一態様において、式(I)の化合物または式(II)の化合物は、脊髄小脳性運動失調症8型、10型または12型の処置、予防または進行の遅延用である。
【0058】
一態様において、式(I)の化合物または式(II)の化合物は、脊髄小脳性運動失調症5型、13型、14型または27型、とりわけ脊髄小脳性運動失調症14型の処置、予防または進行の遅延用である。
【0059】
上記の疾患(状態および障害)に関して、好適な投与量は、例えば、用いる化合物、宿主、投与経路ならびに処置すべき疾患の性質および重症度によって変わり得る。しかしながら、一般的に、動物における満足のいく結果は、約0.01ないし約100mg/kg体重、好ましくは約0.1ないし約10mg/kg体重、例えば1mg/kgの1日投与量で得られることが示されている。より大型の哺乳動物、例えばヒトにおいては、示した1日投与量は、例えば、1日4回までの分割用量で都合よく投与される、約0.1ないし約1000mg、好ましくは約1ないし約400mg、最も好ましくは、約10ないし約100mgの式(I)の化合物または式(II)の化合物である。
【0060】
本発明における使用に関して、式(I)の化合物または式(II)の化合物は、単一の活性成分としてか、または他の活性成分と組み合わせて、例えば錠剤またはカプセル剤形態で例えば経口投与などで、または、例えば注射用溶液または懸濁液の形態で非経腸的に、または例えばパッチ形態で経皮的に、いずれかの常套経路により投与され得る。
【0061】
一態様において、投与方法は、例えば錠剤またはカプセル剤形態の経口投与である。
一態様において、投与方法は、例えばパッチ形態での経皮投与である。
【0062】
さらに、本発明は、運動失調症の処置、予防または進行の遅延のための、少なくとも1種の薬学的担体または希釈剤と共に式(I)の化合物または式(II)の化合物を含む医薬組成物を提供する。かかる組成物は、常套方法で製造され得る。単位投与量形態は、例えば、約2.5ないし約25mgの1種以上の式(I)の化合物または式(II)の化合物を含む。
【0063】
本発明の医薬組成物は、有効用量の薬理学的活性成分を単独でまたは相当量の薬学的に許容される担体と共に含む、温血動物(ヒトおよび動物)に、直腸または経口投与のような経腸投与;または、静脈内、経鼻的または経皮的(例えばパッチによる)のような非経腸投与するための組成物である。活性成分の用量は、温血動物種、体重、年齢および個々の状態、個々の薬物動態学的データ、処置すべき疾患および投与方法によって変わる。
【0064】
該医薬組成物は、約1%ないし約95%、好ましくは約20%ないし約90%の活性成分を含む。本発明の医薬組成物は、例えば、アンプル剤、バイアル剤、坐剤、糖衣錠、錠剤またはカプセル剤のような単位投与量形態である。
【0065】
本発明の医薬組成物は、それ自体公知の方法、例えば、慣用的溶解、凍結乾燥、混合、造粒または糖衣法で製造される。かかる方法は、WO2005/079802、WO2003/047581、WO2004/000316、WO2005/044265、WO2005/044266、WO2005/044267、WO2006/114262およびWO2007/071358中に例示されている。
【0066】
経皮投与用組成物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th Edition Mack; Sucker, Fuchs and Spieser, Pharmazeutische Technologie, 1st Edition, Springerに記載されている。
【実施例】
【0067】
上記の疾患の処置における式(I)の化合物または式(II)の化合物の有用性は、以下に記載の試験を含む標準的試験で確認され得る。
【0068】
1.インビトロ試験
1.1.α7−nAChRでの活性、α4β2−nAChRに対する選択性
以下に示す活性/選択性データに基づき、該化合物がα7−nAChRの選択的アゴニストであることが結論づけられる。
【表1】

【0069】
アッセイ:α7−nAChR活性を評価するために、ヒトα7−nAChRを組み換え的に発現するGH3細胞を用いて機能的アッセイを行った。実験の72時間前に、1ウェル当たり5x10細胞を黒色96ウェルプレート(Costar)に播種し、37℃で、湿式雰囲気(5%CO/95%空気)下でインキュベートした。実験の日に、培地をプレートから除去し、2.5mM プロベネシド(Sigma)を添加した、2mM Fluo−4(Molecular Probes)を含む増殖培地100μlに置換えた。細胞を、37℃で、湿式雰囲気(5%CO/95%空気)下で1時間インキュベートした。プレートから過剰なFluo−4を除去し、Hepes緩衝生理食塩溶液(NaCl 130mM、KCl 5.4mM、CaCl 2mM、MgSO 0.8mM、NaHPO 0.9mM、グルコース 25mM、Hepes 20mM、pH7.4;HBS)で2回洗浄し、適切であれば、アンタゴニストを含むHBS100μlを再び添加する。アンタゴニストの存在下でのインキュベーションを、3−5分継続する。プレートを、FLIPR装置(蛍光イメージングプレート読取装置、Molecular Devices, Sunnyvale, CA, USA)のセルプレートステージ上に置く。ベースラインの記録後(レーザー:1Wで励起 488nm、0.4秒のシャッター開放のCCDカメラ)、アゴニスト(50μl)を細胞プレートにFLIPR 96−チップピペッターを用いて添加し、同時に蛍光を記録した。カルシウム動的データを、α7−nAChRの完全アゴニストであるエピバチジンにより誘導される最大応答に対して標準化した。4つのパラメーターのヒル(Hill)方程式を、濃度−応答に適合させた。Emax値(エピバチジン応答と比較した最大効果(%))およびEC50値(最大効果の半分をもたらす濃度(μM))は、この適合値から導かれた。
【0070】
アッセイは、D Feuerbach et al, Neuropharmacology (2005), 48, 215−227に記載される。
ヒト神経nAChR α4β2に対する本発明の化合物の活性を評価するために、同様の機能的アッセイを、ヒトα4β2サブタイプを安定に発現するヒト上皮細胞株を用いて行う(Michelmore et al., Naunyn−Schmiedeberg’s Arch. Pharmacol. (2002) 366, 235)。
【0071】
2.インビボ前臨床試験
2.1.マウスにおける経口バイオアベイラビリティおよび脳透過性
以下に示す薬物動態学的データに基づき、マウスにおける該化合物の脳内濃度が、用量30μmol/kgの急性経口投与後少なくとも4時間、α7−nAChRで該化合物のEC50を超える(または、少なくとも等しい)ことが結論づけられる。
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
アッセイ:化合物を経口投与した(30μmol/kg)。オスマウス(30−35g、OF1/IC株)を、経口投与後の示した時点で屠殺した。循環血(Trunk−blood)を、EDTA含有チューブに集め、脳を取り出し、直ちに氷上で凍結させた。
100μlの血漿に対して10μlの内部標準(試験化合物と同様の溶解特性およびイオン化特性を有する化合物1.0pmol)を添加し、500μlのジクロロメタンで3回抽出した。その後、合わせた抽出物を窒素流下で乾燥させ、100μlのアセトニトリル/水(70%アセトニトリル)に再溶解した。脳を計量し、水中でホモジナイズした(1:5w/v)。2つの各ホモジネート100μlのアリコート+10μlの内部標準(血漿サンプルに用いたものと同じ標準)を、500μlのジクロロメタンで3回抽出し、血漿サンプルと同様にさらに処理した。サンプルを、自動サンプラーを備えるBeckmann 高速液体クロマトグラフィー装置システム(Gilson 233XL)で分けた。10分の線形勾配(10−70%)の0.5%(v/v)ギ酸を含むアセトニトリルを用いて、化合物をNucleosil CC−125/2 C18 逆相(Machery & Nagel) カラムから溶出した。
【0075】
検出限界(LOD)を、シグナル対ノイズが〜3までの抽出した標準サンプルの最低濃度と定義した。
【0076】
2.2.マウスにおける機能性読み出し(read−out)(社会性認識試験(Social Recognition Test))
以下に示す機能的インビボデータに基づき、関連濃度の該化合物の経口用量が、α7−nAChRと関連して特定の効果(すなわち、マウスでの社会性認識試験における認識の増強)をもたらすことが結論づけられる。
【表5】

【0077】
アッセイ:2匹の実験動物の社会的交流は、その親密さの程度に影響される:互いによく知っているほど、各会合で互いの吟味に要する時間は少ない。ラットで報告されたデータと一致して(Mondadori et al., 1993)、本発明者らは、(i)成熟マウスは、2匹のマウスが短い間隔(例えば、1時間)内で再び一緒にされるとき、同種の若いマウスよりも短い吟味時間を示すこと、(ii)この時間短縮が、記憶過程によるものであること:親しい若いパートナーを、2回目には未知の(親しくない)若いマウスに置き換えるときはその短縮が起こらないこと、および(iii)以前に吟味した若いパートナーに関する成熟マウスの記憶は時間の経過とともに、すなわち24時間後に消え、吟味に要する時間が、最初の会合時と同程度かかることを見出した。記憶増強剤(すなわち、オキシラセタム)は、以前に会合した(親しい)パートナーを24時間後も記憶する程度まで学習を促進するが、ビークル処置した対照動物において、記憶は、通常、1時間未満(Thor and Holloway, 1982)または2−3時間後に消える。
【0078】
ベースライン試験:1匹の成熟マウスおよび1匹の若いマウスからなるペアを、実験群および対照群に無作為に割り当てた。各ペアで、成熟マウスのみを、試験の1時間前にビークルまたは試験化合物で経口処理した。成熟マウスと若いマウスの能動接触時間を、以下の行動的、アプローチ関連事項を含む、3分間に手作業で記録した:臭いを嗅ぐ(sniffing)、鼻をこする(nosing)、毛繕い(grooming)、舐める(licking)、触れる(pawing)および遊ぶ(playing)、肛門部分の調査および若いマウスに対する順応;故に、順応は、若いマウスの体からおよそ1cm未満の距離の成熟マウスの鼻尖として定義した。
【0079】
再試験:ベースライン試験の24時間後、各処理群の成熟マウスを、以前に遭遇した(親しい)パートナーに再び遭遇させたが、成熟マウスの半数は、以前に遭遇した(親しい)パートナーと共に置き、他の半数は、別の(親しくない)若いマウスと一緒にした。再び、能動接触時間を、3分間記録した。再試験の前に、経口注入はされなかった。表中、0時点での親しいパートナーと比較して、24時点での親しいパートナーの調査時間の短縮が得られる(0は、時間短縮を示さない)。
【0080】
2.3.動物モデルにおける運動失調改善作用の評価
方法:“プルキニエ細胞変性”マウス(pcdマウス)は、小脳運動失調症の有効なマウスモデルと考えられる。Pcdマウスは、軸索切断により引き起こされる推定亜鉛プロテアーゼのNna1遺伝子中に変異を有する(A Fernandez−Gonzalez et al, Science, 295: 1904−1906, 2002)。これらのマウスはまた、1年齢で始まる網膜の光受容体変性と共に他の脳部分の遅れた変性を示す。付随するプルキンエ細胞死および光受容体変性はまた、Spino−Cerebellar Ataxia−7(SCA7)でも見出される。
【0081】
評価:運動能力を、回連ロッド上に乗せて定量する(“rota−rod”試験:AM Fernandez et al, Proc Natl Acad Sci USA, 95: 1253−1258, 1998を参照)。ビークル対象および式(I)の化合物または式(II)の化合物の急性/反復投与で得られたマウスを分析する。
【0082】
プロトコール:マウスを、異なる月齢で試験する。マウスの1つの群は、有効用量の式(I)の化合物または式(II)の化合物で処理し、対照群はビークルのみで処理する。式(I)の化合物または式(II)の化合物を、急性および反復投与後に、回転ロッド上での運動神経に関して試験する。
【0083】
3.臨床試験:改善試験
式(I)の化合物または式(II)の化合物の臨床試験は、例えば、以下の実験デザインの1つで行われ得る。当業者である医師は、患者の行動および能力の多くの局面を見ることができる。彼/彼女らは、本研究がガイドラインと見なされ、本研究の任意の局面が、例えば、状況および環境によって修正され、再定義され得ることを理解し得る。
【0084】
3.1 試験A:正常な患者集団
正常対照である1つの患者集団は、1日1回投与して、一週間またはそれ以上の間試験される。試験は、改善を可能にするように設計され、すなわち機能障害の測定可能なパラメーターの増加がある。患者は、投与期間の初めと終わりに試験され、結果を比較および分析する。
【0085】
3.2 試験B:障害集団(Deficit population)
運動失調症と関連する障害を有する患者集団は、1日1回投与して、一週間またはそれ以上の間試験される。試験は、改善を可能にするように設計され、すなわち機能障害の測定可能なパラメーターの増加がある。患者は、投与期間の初めと終わりに試験され、結果を比較および分析する。
【0086】
3.3 試験設計への考察
・試験を設計するとき、当業者は、最低および最高効果の両方を検証する必要を理解し得る。言い換えれば、試験設計は、認識を相当に高くか、または低くすべきである。
・人為的に機能障害、例えば認識の障害を起こす条件は、その機能の増強を試験する1つの方法である。かかる条件は、例えば、睡眠不足および薬理的暴露である。
・プラセボ対照は、全ての試験に必要である。
・データの評価において、繰り返しの評価からの学習および訓練の効果の可能性の評価がなされるべきである。偽陽性を生じるデータを混入するかかる効果の可能性は、試験を設計するとき考慮に入れられるべきであり、例えば試験は、同一(例えば、記憶への同じ単語リストを約束する)であるべきではなく、同じメカニズムを試験するために設計されるべきである。他の解決策は、試験の最後のみに単一の試験を含み得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動失調症の処置、予防または進行の遅延に用いるための、
(A)遊離塩基形または薬学的に許容される酸付加塩形態の、式(I)
【化1】


[式中、
は、−CH−であり;Lは、−CH−または−CH−CH−であり;Lは、−CH−または−CH(CH)−であるか;または
は、−CH−CH−であり;Lは、−CH−であり;Lは、−CH−CH−であり;
は、
【化2】


(式中、アスタリスクを付した結合は、アザビシクロアルキル部分に結合する。)
から選択される基であり;
は、水素またはC1−4アルキルであり;
は、−O−または−NH−であり;
は、
【化3】


(式中、アスタリスクを付した結合は、Xに結合する。)
から選択され;
は、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る5員ないし10員の単環式または縮合多環式芳香環系であって、該環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、Rにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではなく;
は、それぞれ独立して、C1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、ハロゲン、シアノまたは芳香族性の飽和または部分的飽和であり得て、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る3員ないし6員の単環式環系であり、各環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、そしてC1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、ハロゲンまたはシアノにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではないか;
または、隣接環原子の2個のRは、C3−4アルキレン基を形成し、ここで、1−2個の炭素原子は、Xで置換されていてよく、C3−4アルキレン基は、Rで1回または2回以上置換されていてよく;
は、それぞれ独立して、−O−または−N(R)−であり;
は、それぞれ独立して、水素またはC1−6アルキルであり;そして
は、それぞれ独立して、ハロゲンまたはC1−6アルキルである。]
で示される化合物;および
(B)遊離塩基形または薬学的に許容される酸付加塩形態の、式(II)
【化4】


[式中、
は、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る5員ないし10員の単環式または縮合多環式芳香環系であって、該環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、Rにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではなく;
は、それぞれ独立して、C1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、ハロゲン、シアノ、アミノまたは芳香族性の飽和または部分的飽和であり得て、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る3員ないし6員の単環式環系であり、各環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、そしてC1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、ハロゲンまたはシアノにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではないか;
または、隣接環原子の2個のRは、C3−4アルキレン基を形成し、ここで、1−2個の炭素原子は、Xで置換されていてよく、C3−4アルキレン基は、Rで1回または2回以上置換されていてよく;
は、それぞれ独立して、−O−または−N(R)−であり;
は、それぞれ独立して、水素またはC1−6アルキルであり;そして
は、それぞれ独立して、ハロゲンまたはC1−6アルキルである。]
で示される化合物
からなる群から選択される化合物。
【請求項2】
運動失調症の処置、予防または進行の遅延に用いるための、遊離塩基形または薬学的に許容される酸付加塩形態の、式(I)
【化5】


[式中、
は、−CH−であり;Lは、−CH−または−CH−CH−であり;Lは、−CH−または−CH(CH)−であるか;または
は、−CH−CH−であり;Lは、−CH−であり;Lは、−CH−CH−であり;
は、
【化6】


(式中、アスタリスクを付した結合は、アザビシクロアルキル部分に結合する。)
から選択される基であり;
は、水素またはC1−4アルキルであり;
は、−O−または−NH−であり;
は、
【化7】


(式中、アスタリスクを付した結合は、Xに結合する。)
から選択され;
は、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る5員ないし10員の単環式または縮合多環式芳香環系であって、該環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、Rにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではなく;
は、それぞれ独立して、C1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、ハロゲン、シアノまたは芳香族性の飽和または部分的飽和であり得て、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る3員ないし6員の単環式環系であり、各環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、そしてC1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、ハロゲンまたはシアノにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではないか;
または、隣接環原子の2個のRは、C3−4アルキレン基を形成し、ここで、1−2個の炭素原子は、Xで置換されていてよく、C3−4アルキレン基は、Rで1回または2回以上置換されていてよく;
は、それぞれ独立して、−O−または−N(R)−であり;
は、それぞれ独立して、水素またはC1−6アルキルであり;そして
は、それぞれ独立して、ハロゲンまたはC1−6アルキルである。]
で示される化合物。
【請求項3】
運動失調症の処置、予防または進行の遅延に用いるための、遊離塩基形または薬学的に許容される酸付加塩形態の、式(II)
【化8】


[式中、
は、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る5員ないし10員の単環式または縮合多環式芳香環系であって、該環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、Rにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではなく;
は、それぞれ独立して、C1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、ハロゲン、シアノ、アミノまたは芳香族性の飽和または部分的飽和であり得て、窒素、酸素および硫黄から選択される1ないし4個のヘテロ原子を含み得る3員ないし6員の単環式環系であり、各環系は、2個以下の酸素原子および2個以下の硫黄原子を含み、そしてC1−6アルキル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロゲンアルコキシ、ハロゲンまたはシアノにより1回または2回以上置換され得て、ヘテロ環式環系の窒素上の置換基はハロゲンではないか;
または、隣接環原子の2個のRは、C3−4アルキレン基を形成し、ここで、1−2個の炭素原子は、Xで置換されていてよく、C3−4アルキレン基は、Rで1回または2回以上置換されていてよく;
は、それぞれ独立して、−O−または−N(R)−であり;
は、それぞれ独立して、水素またはC1−6アルキルであり;そして
は、それぞれ独立して、ハロゲンまたはC1−6アルキルである。]
で示される化合物。
【請求項4】
かかる処置の必要な対象における、運動失調症の処置、予防または進行の遅延のための方法であって、治療的有効量の請求項1記載の式(I)の化合物または式(II)の化合物を該対象に投与することを含む、方法。
【請求項5】
運動失調症の処置、予防または進行の遅延のための、請求項1記載の式(I)の化合物または式(II)の化合物を含む、医薬組成物。

【公表番号】特表2012−533601(P2012−533601A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521032(P2012−521032)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060571
【国際公開番号】WO2011/009890
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】