説明

過流防止弁

【課題】過剰流出時に流体取出路を確実に遮断できながら、平常時は流量を安定させ、過流防止の誤作動の発生を抑制する。
【解決手段】ハウジング(4)内に入口路(5)と過流防止弁室(6)と出口路(7)を順に形成する。過流防止弁室(6)に臨む出口路(7)開口の周囲に過流防止弁座(8)を形成する。過流防止弁室(6)内に挿入した過流防止部材(14)を、過流防止弁座(8)から離隔した開弁姿勢(Y)と、過流防止弁座(8)に当接した閉弁姿勢とに切換える。過流防止部材(14)の先端に形成した棒状部(23)を出口路(7)内に突入する。棒状部(23)の外周面と出口路(7)の内周面との間に、流体流量を制限する最小開口流通部(27)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体取出路に接続された機器類の破損等により流体が多量に流出する異常時に、この流体取出路を遮断して過剰な流体の流出を防止する過流防止弁に関し、さらに詳しくは、過剰流出時に流体取出路を確実に遮断できながら、平常時は流量を安定させ、過流防止の誤作動の発生を抑制した過流防止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染の少ない、水素ガスを燃料とする車両の開発が進められている。この水素ガスの貯蔵容器は、大容量化と小形化が望まれており、従って、貯蔵ガス圧も、例えば70MPaなどの高圧化が望まれている。
【0003】
上記のガス容器からの取出流量は、配管からガスが漏洩する等の異常が発生すると所定量以上に増大する。そこでこのガス容器からのガス取出路には、通常、例えば容器弁などに過流防止弁が設けられ、取出流量が異常増大するとこの過流防止弁を閉じて、上記のガス取出路を遮断するように構成されている。
従来、取出流量が異常に増大した際にガス取出路を遮断する過流防止弁としては、過流防止弁室に過流防止部材を挿入し、この過流防止部材を開弁バネで弾圧して過流防止弁座から離隔させた開弁姿勢と、取出し流量の増大に伴って過流防止弁座に当接させた閉弁姿勢とに切換え可能に構成した過流防止弁がある(特許文献1参照)。
【0004】
即ち、例えば図4に示すように、この過流防止弁(50)には、ハウジング(51)に入口路(52)と過流防止弁室(53)と出口路(54)とを順に備えるガス取出路(59)を形成して、この過流防止弁室(53)に過流防止弁座(55)を形成し、過流防止弁室(53)に過流防止部材(56)を挿入してこの過流防止部材(56)を開弁バネ(57)で上記の過流防止弁座(55)から離隔する開弁方向へ弾圧してある。
【0005】
上記の過流防止部材(56)は、平常時にあっては、開弁バネ(57)で弾圧されて過流防止弁座(55)から所定寸法だけ離隔している。従って、ガス容器(58)から上記のガス取出路(59)を経て貯蔵ガスを取出す際、この過流防止部材(56)と過流防止弁座(55)との間隙を通過する所定流量のガスが取り出される。
【0006】
一方、上記のガス取出し時に過流を生じた場合には、上記の出口路(54)の内圧が入口路(52)の内圧に比べ所定差圧以上に低下するので、その差圧により過流防止部材(56)が開弁バネ(57)の弾圧力に抗して閉弁側へ移動し、過流防止弁座(55)に当接してガス取出路(59)が遮断される。
【0007】
【特許文献1】特開2003−314798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の過流防止弁では、開弁姿勢における取出路中で最も開口面積の小さい最小開口流通部が、過流防止弁座とこれに対面する過流防止部材との間に形成され、この最小開口流通部の開口面積やその開口形状により、過流防止弁を経て取り出されるガス流量が決定される。このとき、水素ガスのように分子量の小さなガスにあっては、この最小開口流通部の僅かな開口面積の相違や、その開口形状により流量が大きく変わる。
【0009】
しかしながら、上記の過流防止部材の進退移動は、開弁バネの付勢力や出口路の内圧などのバランスに依存しているため、出口路の内圧の変化によりこの過流防止部材が進退方向へ偏位し易く、この過流防止部材が進退方向へ僅かに偏位すると、過流防止弁座と過流防止部材との間に形成された上記の最小開口流通部は、開口面積や開口形状が変動しやすく、これらを安定させるのが容易でない問題がある。
【0010】
また、過流発生時に過流防止部材が円滑に作動するよう、この過流防止部材と過流防止弁室内面との接触部分は少なく形成してあり、例えばこの過流防止部材の後端寄り部の1箇所のみが過流防止弁室の内面に摺動・支持してある。このため、過流防止部材は過流防止弁座と対面する先端側がぶれ易く、上記の最小開口流通部の開口面積や開口形状が安定し難い問題もある。
これらの結果、上記従来の過流防止弁にあっては、最小開口流通部を通過するガス流量が安定せず、この流量変動に起因して出口路の内圧が低下し過流防止の誤作動を生じる虞があった。
【0011】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、過剰流出時に流体取出路を確実に遮断できながら、平常時は出口路から流出する流量を安定させ、過流防止の誤作動の発生を抑制した過流防止弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の課題を解決するため、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図3に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明は過流防止弁に関し、ハウジング(4)内に入口路(5)と過流防止弁室(6)と出口路(7)を順に形成して、上記の過流防止弁室(6)に臨む出口路(7)開口の周囲に過流防止弁座(8)を形成し、上記の過流防止弁室(6)内に過流防止部材(14)を、上記の過流防止弁座(8)に対し接離可能に挿入し、上記の過流防止部材(14)を、開弁バネ(13)で弾圧して過流防止弁座(8)から離隔させた開弁姿勢(Y)と、上記の入口路(5)の内圧とこれよりも低い出口路(7)の内圧との所定圧以上の差圧により開弁バネ(13)の弾圧力に抗して過流防止弁座(8)に当接させた閉弁姿勢(X)とに、切換え可能に構成した過流防止弁であって、上記の過流防止部材(14)の先端に棒状部(23)を形成して、この棒状部(23)を上記の出口路(7)内に突入させ、この棒状部(23)の外周面と出口路(7)の内周面との間に、流体流量を制限する最小開口流通部(27)を形成したことを特徴とする。
【0013】
平常状態にあっては、上記の過流防止部材は開弁バネの弾圧力で過流防止弁座から離隔した開弁姿勢に保持され、流体は過流防止部材と過流防止弁座との隙間および最小開口流通部を順に経て出口路から所定の流量で流出する。このとき、上記の最小開口流通部が、過流防止部材先端の棒状部の外周面と、出口路の内周面との間に形成されているので、この過流防止部材が進退方向へ僅かに偏位しても、最小開口流通部は常に一定の開口面積に維持され、従って、上記の出口路から流出する流体は、開口面積に応じた所定の流量に安定よく維持される。そして万一、流体機器の破損などにより過流が発生すると、出口路の内圧が低下して過流防止部材が前進する。このとき、最小開口流通部は一定の開口面積に維持されるが、過流防止部材は前進により過流防止弁座に当接し、これにより流路が遮断されて流体の流出が停止する。
【0014】
上記の棒状部の外周面と出口路の内周面との間に形成される最小開口流通部は、例えば棒状部の外周面に環状の突部を形成して、この環状突部と出口路の内周面との間に最小流通部を形成してもよい。しかし、上記の出口路の内面に環状突部を形成し、この環状突部の内面と上記の棒状部の外周面との間に形成すると、最小開口流通部の形成が容易であるうえ、棒状部の外形を変更するだけでその最小開口流通部を所定の開口面積や開口形状に設定でき、好ましい。
【0015】
また、上記の過流防止部材は、先端寄り部と後端寄り部の2箇所を、それぞれ過流防止弁室の内面に摺動させて支持すると、この過流防止部材の先端部に形成した棒状部が芯ぶれを生じる虞がなく、開口形状が一定に維持されるので好ましい。
【0016】
上記の過流防止部材は、筒状のスリーブとその内部へ進退可能に挿入した軸部とから構成することができる。即ち、上記のスリーブを上記の過流防止弁座へ接離可能に構成するとともに、上記の棒状部を上記の軸部先端に形成して、この棒状部を上記のスリーブの先端開口から突出させ、上記の軸部の前寄り部と後寄り部の2箇所を上記のスリーブの内周面に摺動させて支持させ、上記のスリーブの内周面に、上記の軸部が前進した位置で封止接当する第2弁座を形成し、上記の軸部を上記の第2弁座側へ付勢する付勢手段を備え、この付勢手段の付勢力に抗して軸部を後退させると、上記の棒状部が移動して上記の最小開口流通部の開口面積が大きくなるように構成する。
【0017】
このように構成すると、平常時の流体取出し時にあっては、上記の軸部が前進して第2弁座に当接するとともに、棒状部の外周面と出口路内周面との間に形成された最小開口流通部の開口面積に応じた流量が取出される。これに対し、逆方向から流体を充填する場合は、その充填圧力で上記の軸部が付勢バネの弾圧力に抗して後方へ押圧され、これにより、上記の最小開口流通部の開口面積が大きくなって、これを通過する流量を大きくして高速に充填できるので、好ましい。
【0018】
この場合、上記の棒状部の先端側に小径の復帰用押し棒を形成し、上記の軸部が前進して閉弁姿勢に切換えられたときに、この復帰用押し棒の先端を復帰手段と連係可能に構成し、上記の軸部が上記の開弁姿勢からさらに後退したときに、上記の最小開口流通部を形成する出口路の内周面にこの復帰用押し棒の外周面を対面させると、上記の復帰用押し棒の先端に、例えば閉止弁の閉止部材など、復帰手段を連係させることで閉弁姿勢から平常状態へ容易に復帰できるうえ、この復帰用押し棒が小径であることから、充填時にはこの軸部を開弁姿勢からさらに後退させて、この小径の復帰用押し棒の外周面を上記の出口路内周面と対面させることで、上記の最小開口流通部の開口面積を容易に大きくすることができ、好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
万一、流体機器の破損などにより過流が発生すると、過流防止部材が前進して過流防止弁座に当接し、これにより流路を遮断して流体の流出を確実に停止することができる。しかも、平常状態にあっては、最小開口流通部が過流防止部材先端の棒状部の外周面と出口路の内周面との間に形成されているので、過流防止部材が進退方向へ僅かに偏位することがあってもこの最小開口流通部を常に一定の開口面積に維持できる。この結果、上記の出口路から流出する流体を所定の流量に安定よく維持させることができ、過流防止の誤作動の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は本発明の第1実施形態を示し、図1は平常時における過流防止弁の断面図、図2は過流防止弁の作動説明図であり、図2(a)は過流作動時における過流防止弁の断面図、図2(b)はガス充填時における過流防止弁の断面図である。
【0021】
図1に示すように、この過流防止弁(1)はガス容器(2)に付設されたバルブ装置(3)に組み込まれており、ハウジング(4)内に入口路(5)と過流防止弁室(6)と出口路(7)を順に備えるガス取出路(18)が形成してある。この過流防止弁室(6)に臨む出口路(7)開口の周囲には、過流防止弁座(8)が形成してある。上記の入口路(5)は上記のガス容器(2)内に連通してあり、上記の出口路(7)は閉止弁(9)の閉止弁室(10)を経てガス取出口(11)に連通してある。
【0022】
上記の過流防止弁室(6)は、ハウジング(4)に螺着固定された受止部材(12)で密封してあり、この過流防止弁室(6)内に過流防止部材(14)が、上記の過流防止弁座(8)に対し進退可能に挿入してある。この過流防止部材(14)は、両端が開口した筒状のスリーブ(15)とその内部へ進退可能に挿入した軸部(16)とからなり、このスリーブ(15)は、上記の過流防止弁座(8)から離隔して上記の受止部材(12)に受け止められた開弁姿勢(Y)と、この過流防止弁座(8)に当接した閉弁姿勢(X)とに切換えられる。
【0023】
上記の過流防止部材(14)は先端寄り部(14a)と後端寄り部(14b)の2箇所が、それぞれ過流防止弁室(6)の内面へ摺動可能に支持させてあり、この過流防止部材(14)と過流防止弁室(6)の内面との間に配設した開弁バネ(13)で、過流防止弁座(8)から離隔する方向へ弾圧してある。またこの過流防止部材(14)のうち、上記のスリーブ(15)の先端側には上記の過流防止弁座(8)に対面させてシール部材(19)が付設してあり、上記の開弁バネ(13)の弾圧力に抗してこの過流防止部材(14)が前進すると、このシール部材(19)が過流防止弁座(8)へ保密状に当接される。
【0024】
一方、上記の軸部(16)は、小径の前寄り部(16a)とこれよりも大径の後寄り部(16b)からなり、それぞれ上記のスリーブ(15)の内周面に摺動させて支持させてある。またこの後寄り部(16b)前端の段部には第2シール部材(20)が付設してあり、これと対面する位置で上記のスリーブ(15)の内周面に第2弁座(21)が形成してある。そして、この軸部(16)と前記の受止部材(12)との間に、上記の開弁バネ(13)より弾圧力の弱い付勢バネ(22)が配置してあり、この付勢バネ(22)により上記の軸部(16)を第2弁座(21)側へ付勢してある。
【0025】
上記の軸部(16)の小径の前寄り部(16a)は、先端を上記のスリーブ(15)の先端開口から突出させて、この突出した部位を棒状部(23)に形成して前記の出口路(7)内へ突入させてある。この棒状部(23)の先端には小径の復帰用押し棒(24)が形成してあり、棒状部(23)即ち軸部(16)が前記のスリーブ(15)とともに前進して上記の閉弁姿勢(X)に切換わると、この復帰用押し棒(24)の先端が前記の閉止弁室(10)内へ突入するように構成してある。この閉止弁室(10)内に挿入した閉止部材(25)は復帰手段を構成しており、閉止弁室(10)内に突入した上記の復帰用押し棒(24)の先端と連係するようにしてある。
【0026】
上記の出口路(7)の内面には環状突部(26)が形成してあり、この環状突部(26)の内面と上記の棒状部(23)の外周面との間に、入口路(5)から出口路(7)に至るガス取出路(18)中で最も開口面積の狭い、最小開口流通部(27)が形成してある。即ち、この最小開口流通部(27)の開口面積は、開弁姿勢(Y)における上記の過流防止弁座(8)とスリーブ(15)先端のシール部材(19)との間の開口面積よりも狭く、従って、上記のガス取出路(18)を流れるガス流量は、この最小開口流通部(27)の開口面積や開口形状により制限される。
【0027】
次に、図1と図2に基づき、上記の過流防止弁の作動について説明する。
(1)平常時におけるガス取出し時
図1に示すように、上記の過流防止部材(14)は上記の開弁バネ(13)に弾圧されており、過流防止弁座(8)から離隔した開弁姿勢(Y)に維持される。この状態で上記の閉止弁(9)の閉止部材(25)を開き操作すると、ガス容器(2)内の貯蔵ガスが入口路(5)と過流防止弁室(6)と出口路(7)と閉止弁室(10)とを順に経てガス取出口(11)から取り出される。このとき、上記の最小開口流通部(27)の開口面積はガス取出路(18)中で最も開口面積が狭いので、上記の過流防止弁室(6)から出口路(7)へ流出する取出ガスは、この最小開口流通部(27)により流量が設定される。
【0028】
上記の最小開口流通部(27)は、上記の棒状部(23)の外周面と環状突部(26)の内面との間に形成されている。しかも、過流防止部材(14)は先端寄り部(14a)と後端寄り部(14b)の2箇所がそれぞれ過流防止弁室(6)の内面へ摺動可能に支持させてあり、また上記の軸部(16)は、小径の前寄り部(16a)と大径の後寄り部(16b)の2箇所がスリーブ(15)の内周面にそれぞれ支持させてある。この結果、軸部(16)先端の棒状部(23)が芯ぶれを生じる虞を低減でき、この棒状部(23)やこれを形成した過流防止部材(14)が進退方向へ僅かに偏位しても、上記の最小開口流通部(27)は常に一定の開口面積と開口形状に維持される。
【0029】
(2)過流発生時
一方、このバルブ装置(3)の下流側に付設したガス機器が万一破損する等して過流が発生すると、ガスの過剰流出とともに出口路(7)の内圧が低下して、過流防止部材(14)は入口路(5)から過流防止弁室(6)内へ流入するガス圧により過流防止弁座(8)側へ押圧される。そして、上記の入口路(5)の内圧と低い出口路(7)の内圧との間に所定圧以上の差圧が生じると、過流防止部材(14)は開弁バネ(13)の弾圧力に抗して前進し、図2(a)に示すように、上記の過流防止弁座(8)に当接した閉弁姿勢(X)に切換えられる。このとき、上記の最小開口流通部(27)は一定の開口面積に維持されているが、過流防止部材(14)が過流防止弁座(8)に当接するとガス取出路(18)が遮断され、これにより出口路(7)へのガスの流出が停止する。
【0030】
この閉弁姿勢(X)では、図2(a)に示すように、上記の棒状部(23)先端に形成した復帰用押し棒(24)の先端が、閉止弁室(10)内へ突入して前記の閉止部材(25)に対面している。この状態で閉止部材(25)を閉じ操作すると、上記の復帰用押し棒(24)が閉止部材(25)に押圧され、過流防止部材(14)が過流防止弁座(8)から離隔する。これにより、閉止弁室(10)よりも上流側の出口路(7)と過流防止弁室(6)と入口路(5)とが等圧となり、過流防止部材(14)が上記の開弁バネ(13)の弾圧力により、図1に示す開弁姿勢(Y)に戻される。そして上記の過剰流出を生じた原因が解消されたのち、上記の閉止弁(9)が開弁されると、前記の平常時と同様、ガス容器(2)内の貯蔵ガスが、入口路(5)と過流防止弁室(6)と出口路(7)と閉止弁室(10)とを順に経て、ガス取出口(11)から取り出される。
【0031】
(3)ガス充填時
上記のガス容器(2)にガスを充填する場合は、上記のガス取出口(11)に図外の充填装置が接続され、閉止弁(9)が開弁される。上記の過流防止部材(14)は過流防止弁座(8)から離隔しているので、フレッシュガスは閉止弁室(10)と出口路(7)と過流防止弁室(6)と入口路(5)とを順に経て、ガス容器(2)内へ充填される。
【0032】
このとき、上記の軸部(16)は充填ガス圧力に押圧されるので、図2(b)に示すように、上記の付勢バネ(22)の弾圧力に抗して後退する。この軸部(16)の後退により、上記の棒状部(23)は環状突部(26)と対面する位置から外れ、棒状部(23)先端に形成した小径の復帰用押し棒(24)の外周面がこの環状突部(26)と対面する。このため、この環状突部(26)の内側に形成されていた上記の最小開口流通部(27)の開口面積が大きくなり、フレッシュガスの流量を大きくしてガス容器(2)内へ迅速に充填させることができる。
【0033】
図3は本発明の第2実施形態を示す、過流防止弁の断面図である。
この第2実施形態では、過流防止部材(14)の先端に棒状部(23)が一体に形成してある。なお、この第2実施形態では、ハウジング(4)内にガス取出路(18)とは別の図示しない充填路が設けてある。
【0034】
この第2実施形態では、過流防止部材(14)の先端寄り部(14a)と後端寄り部(14b)との2箇所が、それぞれ過流防止弁室(6)の内周面に摺動させて支持してあり、上記の棒状部(23)がこの過流防止部材(14)の先端に一体形成してあるので、出口路(7)内面に形成した環状突部(26)に対し、一層安定良く芯ぶれの発生を防止することができ、この出口路(7)から流出する取出ガスを所定の流量に安定よく維持することができる。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0035】
上記の各実施形態で説明した過流防止弁は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、過流防止部材や、開弁バネ、最小開口流通部、スリーブと軸部、復帰用押し棒、復帰手段など、各部材の形状や構造、配置等を、これらの実施形態等に限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものであり、また、取り扱うガスも特定の種類に限定されないことはいうまでもない。
【0036】
例えば上記の各実施形態では、出口路の内面に環状突部を形成したが、これに代えて棒状部の外周面に環状突部を形成してもよく、さらに、この棒状部の外径と出口路の内径によっては、この環状突部を省略することも可能である。
また、上記の各実施形態では閉止部材を復帰手段に構成し、棒状部の先端に復帰用押し棒を形成したが、本発明では復帰手段を別に設けても良く、上記の復帰用押し棒はこの復帰手段の構成に応じて形成され、その形成位置は過流防止部材の先端側に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の過流防止弁は、過剰流出時に流体取出路を確実に遮断できながら、平常時は流量を安定させ、過流防止の誤作動の発生を抑制できることから、例えば水素供給装置に用いられるガス容器の容器弁に特に好適であるが、他のバルブ装置や配管途中にも好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、平常時における過流防止弁の断面図である。
【図2】第1実施形態の過流防止弁の作動を示し、図2(a)は過剰流出時における過流防止弁の断面図、図2(b)は充填時における過流防止弁の断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す、平常時における過流防止弁の断面図である。
【図4】従来技術を示す、過流防止弁の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…過流防止弁
4…ハウジング
5…入口路
6…過流防止弁室
7…出口路
8…過流防止弁座
13…開弁バネ
14…過流防止部材
14a…先端寄り部
14b…後端寄り部
15…スリーブ
16…軸部
16a…前寄り部
16b…後寄り部
21…第2弁座
22…付勢手段(付勢バネ)
23…棒状部
24…復帰用押し棒
25…復帰手段(閉止部材)
26…環状突部
27…最小開口流通部
X…閉弁姿勢
Y…開弁姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(4)内に入口路(5)と過流防止弁室(6)と出口路(7)とを順に形成して、上記の過流防止弁室(6)に臨む出口路(7)開口の周囲に過流防止弁座(8)を形成し、
上記の過流防止弁室(6)内に過流防止部材(14)を、上記の過流防止弁座(8)に対し接離可能に挿入し、
上記の過流防止部材(14)を、開弁バネ(13)で弾圧して過流防止弁座(8)から離隔させた開弁姿勢(Y)と、上記の入口路(5)の内圧とこれよりも低い出口路(7)の内圧との所定圧以上の差圧により開弁バネ(13)の弾圧力に抗して過流防止弁座(8)に当接させた閉弁姿勢(X)とに、切換え可能に構成した過流防止弁であって、
上記の過流防止部材(14)の先端に棒状部(23)を形成して、この棒状部(23)を上記の出口路(7)内に突入させ、
この棒状部(23)の外周面と出口路(7)の内周面との間に、流体流量を制限する最小開口流通部(27)を形成したことを特徴とする、過流防止弁。
【請求項2】
上記の出口路(7)の内周面に環状突部(26)を形成し、この環状突部(26)の内面と上記の棒状部(23)の外周面との間に上記の最小開口流通部(27)を形成した、請求項1に記載の過流防止弁。
【請求項3】
上記の過流防止部材(14)は、先端寄り部(14a)と後端寄り部(14b)の2箇所を、それぞれ過流防止弁室(6)の内周面に摺動させて支持した、請求項1または請求項2に記載の過流防止弁。
【請求項4】
上記の過流防止部材(14)を、筒状のスリーブ(15)とその内部へ進退可能に挿入した軸部(16)とから構成し、このスリーブ(15)を上記の過流防止弁座(8)へ接離可能に構成するとともに、上記の棒状部(23)を上記の軸部(16)先端に形成して、この棒状部(23)を上記のスリーブ(15)の先端開口から突出させ、
上記の軸部(16)の前寄り部(16a)と後寄り部(16b)の2箇所を上記のスリーブ(15)の内周面に摺動させて支持し、
上記のスリーブ(15)の内周面に、上記の軸部(16)が前進した位置で封止接当する第2弁座(21)を形成し、
上記の軸部(16)を上記の第2弁座(21)側へ付勢する付勢手段(22)を備え、この付勢手段(22)の付勢力に抗して軸部(16)を後退させると、上記の棒状部(23)が移動して上記の最小開口流通部(27)の開口面積が大きくなるように構成した、請求項1から3のいずれか1項に記載の過流防止弁。
【請求項5】
上記の棒状部(23)の先端側に小径の復帰用押し棒(24)を形成し、上記の軸部(16)が前進して閉弁姿勢(X)に切換えられたときに、この復帰用押し棒(24)の先端を復帰手段(25)と連係可能に構成し、上記の軸部(16)が開弁姿勢(Y)からさらに後退したときに、上記の最小開口流通部(27)を形成する出口路(7)の内周面にこの復帰用押し棒(24)の外周面を対面させた、請求項4に記載の過流防止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−278484(P2007−278484A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109382(P2006−109382)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(591038602)株式会社ネリキ (54)
【Fターム(参考)】