説明

過給器を備えた内燃機関の故障検出装置

【課題】ディフューザベーンに異常が生じていることを検出すると共に、その異常の種類を特定する。
【解決手段】ディフューザベーンの角度を変更する可変ディフューザをコンプレッサ部に有する過給器を備えた内燃機関の故障検出装置において、内燃機関の吸入空気量が第1所定値よりも小さなときのコンプレッサ効率と、内燃機関の吸入空気量が第1所定値よりも大きな第2所定値よりも大きなときのコンプレッサ効率と、に基づいてディフューザベーンの異常の状態を判定する判定手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給器を備えた内燃機関の故障検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関においては、該内燃機関から排出される排気のエネルギを利用して駆動されるターボチャージャを設けると、燃焼室の充填効率を高めて機関出力をより大きくすることができる。
【0003】
そして、可変ディフューザを有するターボチャージャは、ディフューザベーンの開度(以下、VGD開度ともいう。)を変えることにより過給圧を変えることができる。ここで、機関回転数やコンプレッサ出口の圧力(過給圧)に基づいて、ディフューザベーンの開度を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、実際のVGD開度(以下、実VGD開度ともいう。)が目標のVGD開度(以下、目標VGD開度ともいう。)からずれる異常、またはディフューザベーンの一部が破損若しくは脱落する異常が生じると、コンプレッサ効率が変化する。ここで、実VGD開度が目標VGD開度からずれる異常が生じた場合には、ディフューザベーンを基準位置に戻して、その位置を学習(記憶)させることにより、この異常を解消することができる。しかし、ディフューザベーンの一部が破損若しくは脱落する異常が生じた場合には、内燃機関の出力を抑える制御をすると共に、この異常を運転者に警告する必要がある。このように、ディフューザベーンの開度が目標からずれる異常と、ディフューザベーンが欠損する異常と、では対処法が異なるため、どのような異常が生じているのか判定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−132232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ディフューザベーンに異常が生じていることを検出すると共に、その異常の種類を特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために本発明による過給器を備えた内燃機関の故障検出装置は、
ディフューザベーンの角度を変更する可変ディフューザをコンプレッサ部に有する過給器を備えた内燃機関の故障検出装置において、
前記内燃機関の吸入空気量が第1所定値よりも小さなときのコンプレッサ効率と、前記内燃機関の吸入空気量が前記第1所定値よりも大きな第2所定値よりも大きなときのコンプレッサ効率と、に基づいて前記ディフューザベーンの異常の状態を判定する判定手段を備える。
【0008】
第1所定値は、ディフューザベーンの開度が50%よりも閉じ側となるような吸入空気量である。第1所定値は、ディフューザベーンの開度が変化する範囲の中心よりも開度が小さな側における吸入空気量としてもよい。これは、吸入空気量が比較的少ないとき、またはディフューザベーンの開度が比較的小さいときとすることができる。また、第2所定
値は、ディフューザベーンの開度が50%よりも開き側となるような吸入空気量である。第2所定値は、ディフューザベーンの開度が変化する範囲の中心よりも開度が大きな側における吸入空気量としてもよい。これは、吸入空気量が比較的多いとき、またはディフューザベーンの開度が比較的大きいときとすることができる。なお、第1所定値と第2所定値とを同じ値とすることもできる。そして、吸入空気量が多いときと少ないときとでコンプレッサ効率を夫々求め、このコンプレッサ効率に基づいてディフューザベーンの異常を判定する。すなわち、ディフューザベーンの開度のずれと、ディフューザベーンの欠損とで、吸入空気量が多いときと少ないときとのコンプレッサ効率の変化の仕方が異なるため、該コンプレッサ効率に基づいてディフューザベーンの異常を判定することができる。
【0009】
本発明においては、前記判定手段は、前記内燃機関の吸入空気量が前記第1所定値よりも小さなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも大きく、且つ前記内燃機関の吸入空気量が前記第2所定値よりも大きなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも小さい場合に、前記ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも閉じ側にずれていると判定することができる。
【0010】
ここで、ディフューザベーンが正常の場合には、内燃機関の吸入空気量が第1所定値よりも小さなときのコンプレッサ効率及び内燃機関の吸入空気量が第2所定値よりも大きなときのコンプレッサ効率が、夫々、正常範囲に収まる。コンプレッサ効率の正常範囲は、ディフューザベーンに異常がないときのコンプレッサ効率が取り得る範囲であり、実験等により求めても良い。なお、正常範囲は、吸入空気量毎に異なり、誤差などの影響を考慮してある程度の幅を持たせてもよい。
【0011】
しかし、ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも閉じ側にずれていると、正常時と比較して吸入空気量が制限される。ここで、吸入空気量が少ない運転状態のときには、ディフューザベーンの開度が比較的小さくされるが、このときに、ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも閉じ側にずれていると、コンプレッサ効率は正常時よりも高くなる。すなわち、吸入空気量が少ないときには、ディフューザベーンの開度を小さくすることによりコンプレッサ効率が高まるため、ディフューザベーンの開度が閉じ側にずれることでコンプレッサ効率がより高くなる。
【0012】
一方、吸入空気量が多い運転状態のときには、ディフューザベーンの開度が比較的大きくされるが、このときに、ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも閉じ側にずれていると、コンプレッサ効率は正常時よりも低くなる。すなわち、吸入空気量が多いときには、ディフューザベーンの開度を大きくすることによりコンプレッサ効率が高まるため、ディフューザベーンの開度がずれにより小さくなるとコンプレッサ効率が低くなる。
【0013】
これらの関係をまとめると、内燃機関の吸入空気量が第1所定値よりも小さなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも大きく、且つ内燃機関の吸入空気量が第2所定値よりも大きなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも小さい場合に、ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも閉じ側にずれていると判定することができる。
【0014】
なお、本発明においては、前記判定手段により前記ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも閉じ側にずれていると判定された場合に該ディフューザベーンの位置を学習する学習手段を備えることができる。
【0015】
たとえば、ディフューザベーンの開度の変化量を積算して現時点での開度を算出する場合には、誤差が蓄積されるため、算出される開度と実際の開度との差が次第に大きくなっ
ていく。これに対し、ディフューザベーンをたとえば全開または全閉とすれば、その後は、全開又は全閉からの開度の変化量を積算すれば良い。すなわち、ディフューザベーンをたとえば全開または全閉としてその位置を記憶した後は、それまでに蓄積された誤差の影響を受けずに開度を算出することができるため、ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも閉じ側にずれる異常を解消することができる。
【0016】
本発明においては、前記判定手段は、前記内燃機関の吸入空気量が前記第1所定値よりも小さなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも小さく、且つ前記内燃機関の吸入空気量が前記第2所定値よりも大きなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも大きい場合に、前記ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも開き側にずれているか又は前記ディフューザベーンが欠損したと判定することができる。
【0017】
ディフューザベーンが欠損することには、ディフューザベーンの一部が脱落または破損することを含む。ディフューザベーンが欠損した場合には、ベーンの間隔が広くなり吸気の抵抗が小さくなるので、ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも開き側にずれている場合と同じようにコンプレッサ効率が変化する。
【0018】
ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも開き側にずれているか又はディフューザベーンが欠損した場合には、正常時と比較して吸入空気の抵抗が小さくなる。ここで、吸入空気量が少ない運転状態のときには、ディフューザベーンの開度が比較的小さくされるが、このときに、ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも開き側にずれていると、コンプレッサ効率は正常時よりも低くなる。すなわち、吸入空気量が少ないときには、ディフューザベーンの開度を小さくすることによりコンプレッサ効率が高まるため、ディフューザベーンの開度が開き側にずれることでコンプレッサ効率がより低くなる。これは、ディフューザベーンが欠損した場合も同じである。
【0019】
一方、吸入空気量が多い運転状態のときには、ディフューザベーンの開度が比較的大きくされるが、このときに、ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも開き側にずれていると、コンプレッサ効率は正常時よりも高くなる。すなわち、吸入空気量が多いときには、ディフューザベーンの開度を大きくすることによりコンプレッサ効率が高まるため、ディフューザベーンの開度がずれにより大きくなるとコンプレッサ効率が高くなる。これは、ディフューザベーンが欠損した場合も同じである。
【0020】
これらの関係をまとめると、内燃機関の吸入空気量が第1所定値よりも小さなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも小さく、且つ内燃機関の吸入空気量が第2所定値よりも大きなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも大きい場合に、ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも開き側にずれているか又はディフューザベーンが欠損したと判定することができる。
【0021】
なお、本発明においては、前記判定手段により前記ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも開き側にずれているか又は前記ディフューザベーンが欠損したと判定された場合に該ディフューザベーンの位置を学習する学習手段を備え、
前記判定手段は、前記学習手段により前記ディフューザベーンの位置を学習した後においても、前記内燃機関の吸入空気量が前記第1所定値よりも小さなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも小さく、且つ前記内燃機関の吸入空気量が前記第2所定値よりも大きなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも大きい場合には、前記ディフューザベーンが欠損したと判定することができる。
【0022】
ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも開き側にずれているか又はディフ
ューザベーンが欠損した場合には、どちらも吸気の抵抗が小さくなるために、コンプレッサ効率が同じように変化する。ここで、ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも開き側にずれている場合には、学習手段によりディフューザベーンの位置を学習すれば、その後は、ディフューザベーンの開度を目標に合わせることができる。したがって、学習手段による学習後にコンプレッサ効率が正常範囲内となれば、それ以前は、ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも開き側にずれていたと判定できる。一方、学習手段による学習後にコンプレッサ効率が正常範囲に入らないのであれば、ディフューザベーンが欠損したと判定できる。ディフューザベーンが欠損した場合には、たとえばフェールセーフモードに移行して内燃機関の出力を抑えるようにすることで、それ以降のディフューザベーンの脱落や破損を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ディフューザベーンに異常が生じていることを検出すると共に、その異常の種類を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例に係る内燃機関とその吸・排気系の概略構成を示す図である。
【図2】ディフューザベーンの作動状態を示す図である。
【図3】可変ディフューザの構成を説明するための図である。
【図4】VGD開度が50%よりも閉じ側のときの吸入空気量と圧力比との関係を示した図である。
【図5】VGD開度が50%よりも開き側のときの吸入空気量と圧力比との関係を示した図である。
【図6】実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じている場合におけるVGD開度が50%よりも閉じ側の所定開度のときの吸入空気量とコンプレッサ効率との関係を示した図である。
【図7】実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じている場合におけるVGD開度が50%よりも開き側の所定開度のときの吸入空気量とコンプレッサ効率との関係を示した図である。
【図8】実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じている場合の閉側コンプレッサ効率差と開側コンプレッサ効率差との関係を示した図である。
【図9】実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じている場合におけるVGD開度が50%よりも閉じ側の所定開度のときの吸入空気量とコンプレッサ効率との関係を示した図である。
【図10】実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じている場合におけるVGD開度が50%よりも開き側の所定開度のときの吸入空気量とコンプレッサ効率との関係を示した図である。
【図11】実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じている場合の閉側コンプレッサ効率差と開側コンプレッサ効率差との関係を示した図である。
【図12】他の異常が生じている場合におけるVGD開度が50%よりも閉じ側の所定開度のときの吸入空気量とコンプレッサ効率との関係を示した図である。
【図13】他の異常が生じている場合におけるVGD開度が50%よりも開き側の所定開度のときの吸入空気量とコンプレッサ効率との関係を示した図である。
【図14】他の異常が生じている場合の閉側コンプレッサ効率差と開側コンプレッサ効率差との関係を示した図である。
【図15】実施例に係る故障検出のフローを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る過給器を備えた内燃機関の故障検出装置の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本実施例に係る内燃機関1とその吸・排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、4つの気筒2を有する水冷式の4サイクル・ディーゼル機関である。
【0027】
内燃機関1には、吸気通路3及び排気通路4が接続されている。吸気通路3は吸気ポート2Aを介して気筒2と接続されており、排気通路4は排気ポート2Bを介して気筒2と接続されている。
【0028】
また、本実施例による内燃機関1は可変ディフューザ付きターボチャージャ50(以下、単に「ターボチャージャ50」という。)を備えている。このターボチャージャ50は、コンプレッサハウジング51、タービンハウジング52、及びセンタハウジング53を備えて構成されている。コンプレッサハウジング51は吸気通路3の途中に設けられ、該コンプレッサハウジング51の内部は吸気通路3の一部を構成している。また、タービンハウジング52は排気通路4の途中に設けられ、該タービンハウジング52の内部は排気通路4の一部を構成している。そして、コンプレッサハウジング51とタービンハウジング52とは、センタハウジング53を介して連結されている。
【0029】
コンプレッサハウジング51内には複数の羽根をもったコンプレッサインペラ54が備えられ、タービンハウジング52内には複数の羽根を持ったタービンインペラ55が備えられている。コンプレッサインペラ54とタービンインペラ55とは、ロータシャフト56を介して連結されている。コンプレッサハウジング51には、後述するディフューザベーン61を回転させるためのアクチュエータ57が、リンクロッド58を介して接続されている。
【0030】
図2は、ディフューザベーン61の作動状態を示す図である。図2において実線は、ディフューザベーン61が全閉の状態を示し、破線は、ディフューザベーン61が全開の状態を示している。図3は、可変ディフューザ60の構成を説明するための図である。
【0031】
コンプレッサハウジング51内の空気通路におけるコンプレッサインペラ54の下流側に、可変ディフューザ60が配置されている。
【0032】
コンプレッサインペラ54の外周には、可変ディフューザ60のディフューザベーン61が複数個配置されている。それぞれのディフューザベーン61は、コンプレッサハウジング51に固定されたドーナツ盤状のベースプレート62に、回動軸63を介して回動可能に取り付けられている。回動軸63は、当該コンプレッサインペラ54と同心状に等角度間隔で配置されている。
【0033】
可変ディフューザ60は、上記複数のディフューザベーン61の開度を一斉に変更させるための構成を備えている。ベースプレート62には、内周側に複数の半円状の切欠部64aを有するユニゾンリング64が配置されている。また、ディフューザベーン61の回動軸63には、従動アーム65の一端が固定されている。
【0034】
従動アーム65の他端は、円状に形成されており、ユニゾンリング64の切欠部64aに係合されている。ユニゾンリング64の内周は、ユニゾンリング64がベースプレート62に対して同心を保ちながら回動できるように、ベースプレート62に付設された複数のガイドローラ66によって案内されている。
【0035】
ユニゾンリング64に設けられた突起部64bには、リンクロッド58の一端が回動自
在に取り付けられている。リンクロッド58の他端は、アクチュエータ57に接続されている。
【0036】
以上の構成によれば、ECU10によってアクチュエータ57に駆動指令が与えられることにより、リンクロッド58が図3中に示す矢印方向に駆動される。このリンクロッド58の運動により、ユニゾンリング64が図3中の矢印方向に回転操作されるようになる。そして、ユニゾンリング64の回転運動が従動アーム65を介して伝達されることにより、すべてのディフューザベーン61の開度が一斉に変更される。このように、ECU10の駆動指令に基づいて、ディフューザベーン61の開度を図2中の実線から破線の間の任意の開度に調整することが可能となる。
【0037】
なお、ベースプレート62にはユニゾンリング64の回転を規制するためのストッパー70が設けられている。このストッパー70は、ユニゾンリング64に設けられた突起部64bが該ストッパー70に当たった状態で、ディフューザベーン61が全閉の位置となるように設置されている。
【0038】
以上述べたように構成された内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御ユニットであるECU10が併設されている。このECU10は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて該内燃機関1を制御するユニットである。
【0039】
ECU10には、アクチュエータ57が電気配線を介して接続され、該アクチュエータ57をECU10により制御することが可能になっている。
【0040】
また、コンプレッサハウジング51よりも上流側の吸気通路3には、吸気の圧力を測定する入口側圧力センサ11及び吸気の温度を測定する入口側温度センサ12が取り付けられている。また、コンプレッサハウジング51よりも下流側の吸気通路3には、吸気の圧力を測定する出口側圧力センサ13、吸気の温度を測定する出口側温度センサ14、及び吸気の流量を測定するエアフローメータ15が取り付けられている。これらセンサは、ECU10と電気配線を介して接続され、これらセンサの出力信号がECU10に入力される。
【0041】
また、ECU10には、上記センサの他、機関回転数を検知するクランクポジションセンサ16が電気配線を介して接続され、これら各種センサの出力信号がECU10に入力される。
【0042】
そして、ECU10は、内燃機関1の始動時に、ユニゾンリング64の突起部64bをストッパー70に当てた状態で、ディフューザベーン61の位置を学習(記憶)している。このときのディフューザベーン61の位置を基準位置とする。すなわち、ユニゾンリング64の突起部64bをストッパー70に当てた状態では、ディフューザベーン61が全閉となっているため、このときの位置をディフューザベーン61の全閉の位置として記憶しておく。このようにディフューザベーン61の基準位置を学習する。そして、基準位置からディフューザベーン61がどれだけ動いたのかをアクチュエータ57の作動状況から算出することで、現時点でのVGD開度を算出している。
【0043】
しかし、アクチュエータ57の作動状況から得られるVGD開度の変化量には誤差が含まれているため、内燃機関1が作動している時間が長くなると、VGD開度の算出値と実際の値とにずれが生じることがある。そうすると、VGD開度の実際の値(以下、実VGD開度とする。)が目標値(以下、目標VGD開度とする。)からずれてしまい、コンプレッサ効率が目標値から外れる虞がある。また、ディフューザベーン61が欠損した場合にも、コンプレッサ効率が目標値から外れる虞がある。これらの異常が生じても過給圧の
変化は小さいために、これらの異常は検出し難い。また、VGD開度の算出値と実際の値とにずれが生じたのであれば、ディフューザベーン61の基準位置を再度記憶させれば良いが、ディフューザベーン61が欠損した場合には運転者への警告などが必要となる。このため、両者を区別する必要がある。なお、目標VGD開度は、たとえば機関回転数や過給圧に応じて設定される。
【0044】
そこで本実施例では、コンプレッサ効率に基づいてこれらの異常を判別する。なお、ターボチャージャ50以外の機器には異常がないことを予め他の周知の技術により確認しておいてもよい。ここで、コンプレッサ効率ηcは以下の式により算出する。
ηc=T0×{(P3/P0)0.286−1}/(T3−T0)
ただし、T0はコンプレッサ入口温度(入口側温度センサ12により得られる温度)、T3はコンプレッサ出口温度(出口側温度センサ14により得られる温度)、P0はコンプレッサ入口圧力(入口側圧力センサ11により得られる圧力)、P3はコンプレッサ出口圧力(出口側圧力センサ13により得られる圧力)である。
【0045】
そして、VGD開度が50%よりも閉じ側のときの所定の吸入空気量GaAのときにおけるコンプレッサ効率ηcAr(以下、閉側実コンプレッサ効率ηcArとする。)を求める。同様に、VGD開度が50%よりも開き側のときの所定の吸入空気量GaBのときにおけるコンプレッサ効率ηcBr(以下、開側実コンプレッサ効率ηcBrとする。)を求める。なお、VGD開度は、ディフューザベーン61が全閉のときを0%とし、全開のときを100%とする。そして、全閉から全開までの間の中心の開度が50%となる。なお、開度は、回動軸63の角度に基づいて設定しても良く、隣り合うディフューザベーン61で囲まれる通路の断面積に基づいて設定しても良い。すなわち、回動軸63の回動範囲の中心をディフューザベーン61の開度の50%としても良く、前記通路の断面積の変化範囲の中心をディフューザベーン61の開度の50%としても良い。また、VGD開度が50%よりも閉じ側のときの所定の吸入空気量GaAは、アイドル運転時の吸入空気量としても良い。さらに、「VGD開度が50%よりも閉じ側のとき」とは、ディフューザベーン61が全閉のときとしても良く、「VGD開度が50%よりも開き側のとき」とは、ディフューザベーン61が全開のときとしても良い。
【0046】
また、閉側実コンプレッサ効率ηcAr及び開側実コンプレッサ効率ηcBrの基準値を予め実験等により求めておく。この基準値は、ディフューザベーン61が正常であるときのコンプレッサ効率である。なお、閉側実コンプレッサ効率ηcArの基準値を閉側基準コンプレッサ効率ηcAとし、開側実コンプレッサ効率ηcBrの基準値を開側基準コンプレッサ効率ηcBとする。また、閉側実コンプレッサ効率ηcArと閉側基準コンプレッサ効率ηcAとの差(ηcAr−ηcA)を、閉側コンプレッサ効率差ΔηcAとし、開側実コンプレッサ効率ηcBrと開側基準コンプレッサ効率ηcBとの差(ηcBr−ηcB)を、開側コンプレッサ効率差ΔηcBとする。
【0047】
そして、ディフューザベーン61の異常の状態によって、閉側コンプレッサ効率差ΔηcA及び開側コンプレッサ効率差ΔηcBが変わるため、これらの値に基づいてディフューザベーン61の異常の状態を判定する。
【0048】
ここで、図4は、VGD開度が50%よりも閉じ側のときの吸入空気量と圧力比との関係を示した図である。また、図5は、VGD開度が50%よりも開き側のときの吸入空気量と圧力比との関係を示した図である。なお、圧力比とは、コンプレッサハウジング51よりも下流側の圧力P3を、コンプレッサハウジング51よりも上流側の圧力P0で除した値(P3/P0)である。実線は効率等高線を示し、一点鎖線はサージ限界を示している。サージ限界よりも右側の領域は、サージによる影響を受けずに安定してターボチャージャ50を作動させることのできる領域である。また、サージ限界よりも左側の領域は、
サージによる影響でターボチャージャ50の作動が不安定となる領域である。また、効率等高線よりも内側の領域のほうが、外側の領域よりもコンプレッサ効率は高い。
【0049】
また、VGD開度が50%よりも閉じ側のときの所定の吸入空気量GaAのときにおける圧力比を、閉側実圧力比πcAとする。同様に、VGD開度が50%よりも開き側のときの所定の吸入空気量GaBのときにおける圧力比を、開側実圧力比πcBとする。閉側実圧力比πcAは、開側実圧力比πcBよりも小さい。
【0050】
図4と図5を比較すれば分かるように、VGD開度に応じてコンプレッサ効率の高い領域が変化し、VGD開度が閉じ側のほうが開き側よりもコンプレッサ効率の高い領域が狭い。
【0051】
ここで、実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じている場合において、吸入空気量が少ない領域では、実VGD開度が閉じ側となることによりコンプレッサ効率が高くなると考えられる。一方、実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じている場合において、吸入空気量が多い領域では、吸気の流量が制限されるためにコンプレッサ効率が低くなると考えられる。
【0052】
図6は、実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じている場合におけるVGD開度が50%よりも閉じ側の所定開度のときの吸入空気量とコンプレッサ効率との関係を示した図である。また、図7は、実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じている場合におけるVGD開度が50%よりも開き側の所定開度のときの吸入空気量とコンプレッサ効率との関係を示した図である。実線は基準値(目標値としても良い)を示し、破線は実測値を示している。図6は、吸入空気量が比較的少ない場合の関係を示し、図7は、吸入空気量が比較的多い場合の関係を示しているといえる。また、図6を見れば分かるように、VGD開度が50%よりも閉じ側のときの所定の吸入空気量GaAは、そのときのVGD開度のときのコンプレッサ効率が最大となる吸入空気量よりも小さな値に設定される。同様に、図7を見れば分かるように、VGD開度が50%よりも開き側のときの所定の吸入空気量GaBは、そのときのVGD開度のときのコンプレッサ効率が最大となる吸入空気量よりも大きな値に設定される。たとえば、VGD開度が0%のときに最もコンプレッサ効率が高くなる吸入空気量よりも少ない吸入空気量を所定の吸入空気量GaAとすることができる。また、たとえば、VGD開度が100%のときに最もコンプレッサ効率が高くなる吸入空気量よりも多い吸入空気量を所定の吸入空気量GaBとすることができる。
【0053】
図6及び図7に示されるように、実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じている場合には、吸入空気量が制限されるために、コンプレッサ効率の実測値は、基準値に対して、図6及び図7の左側にずれる。すなわち、実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じている場合に、実VGD開度が50%よりも閉じ側(図6参照)では、所定の吸入空気量GaAのときにおける閉側コンプレッサ効率差ΔηcAは正の値となる。また、実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じている場合に、実VGD開度が50%よりも開き側(図7参照)では、所定の吸入空気量GaBのときにおける開側コンプレッサ効率差ΔηcBは負の値となる。
【0054】
ここで、図8は、実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じている場合の閉側コンプレッサ効率差ΔηcAと開側コンプレッサ効率差ΔηcBとの関係を示した図である。斜線の領域は、実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じている場合における閉側コンプレッサ効率差ΔηcA及び開側コンプレッサ効率差ΔηcBが取り得る値を示している。なお、正常といえる範囲にはある程度の幅を持たせており、閉側コンプレッサ効率差ΔηcA及び開側コンプレッサ効率差ΔηcBが、それぞ
れ「−D」から「+D」の範囲内であれば正常の範囲内であるとしている。このDは、正常の範囲を規定する値として予め実験等により求めておく。
【0055】
一方、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じている場合において、吸入空気量が少ない領域では、実VGD開度が開き側となることにより、コンプレッサ効率が低くなると考えられる。一方、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じている場合において、吸入空気量が多い領域では、吸気の抵抗が少なくなるためにコンプレッサ効率が高くなると考えられる。
【0056】
図9は、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じている場合におけるVGD開度が50%よりも閉じ側の所定開度のときの吸入空気量とコンプレッサ効率との関係を示した図である。また、図10は、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じている場合におけるVGD開度が50%よりも開き側の所定開度のときの吸入空気量とコンプレッサ効率との関係を示した図である。実線は基準値(目標値としても良い)を示し、破線は実測値を示している。図9は、吸入空気量が比較的少ない場合の関係を示し、図10は、吸入空気量が比較的多い場合の関係を示しているといえる。
【0057】
図9及び図10に示されるように、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じている場合には、吸入空気量がより多くなるために、コンプレッサ効率の実測値は、基準値に対して、図9及び図10の右側にずれる。すなわち、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じている場合に、実VGD開度が50%よりも閉じ側(図9参照)では、所定の吸入空気量GaAのときにおける閉側コンプレッサ効率差ΔηcAは負の値となる。また、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じている場合に、実VGD開度が50%よりも開き側(図10参照)では、所定の吸入空気量GaBのときにおける開側コンプレッサ効率差ΔηcBは正の値となる。
【0058】
ここで、図11は、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じている場合の閉側コンプレッサ効率差ΔηcAと開側コンプレッサ効率差ΔηcBとの関係を示した図である。斜線の領域は、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じている場合における閉側コンプレッサ効率差ΔηcA及び開側コンプレッサ効率差ΔηcBが取り得る値を示している。Dの値は図8の場合と同じである。
【0059】
なお、ディフューザベーン61の一部が脱落したり又は破損したりした場合には、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じた場合と同様に、吸入空気量がより多くなる。このため、図9,10,11に示される関係は、ディフューザベーン61が欠損した場合にも当てはまる。
【0060】
また、コンプレッサ効率が全領域で低下した場合には、上述の異常とは異なる他の異常が生じていると考えられる。図12は、他の異常が生じている場合におけるVGD開度が50%よりも閉じ側の所定開度のときの吸入空気量とコンプレッサ効率との関係を示した図である。また、図13は、他の異常が生じている場合におけるVGD開度が50%よりも開き側の所定開度のときの吸入空気量とコンプレッサ効率との関係を示した図である。実線は基準値(目標値としても良い)を示し、破線は実測値を示している。そして、図14は、他の異常が生じている場合の閉側コンプレッサ効率差ΔηcAと開側コンプレッサ効率差ΔηcBとの関係を示した図である。斜線の領域は、他の異常が生じている場合における閉側コンプレッサ効率差ΔηcA及び開側コンプレッサ効率差ΔηcBが取り得る値を示している。Dの値は図8の場合と同じである。
【0061】
このように、他の異常が生じている場合に、実VGD開度が50%よりも閉じ側(図12参照)では、所定の吸入空気量GaAのときにおける閉側コンプレッサ効率差ΔηcA
は負の値となる。また、他の異常が生じている場合に、実VGD開度が50%よりも開き側(図13参照)では、所定の吸入空気量GaBのときにおける開側コンプレッサ効率差ΔηcBは負の値となる。
【0062】
このように、ディフューザベーン61の異常の種類によって、閉側コンプレッサ効率差ΔηcA及び開側コンプレッサ効率差ΔηcBが変わるため、これらの値に基づいてディフューザベーン61のどこに故障があるのかを判定することができる。
【0063】
図15は、本実施例に係る故障検出のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、ECU10により所定の時間毎に実行される。なお、本実施例では図15に示すフローを実行するECU10が、本発明における判定手段に相当する。
【0064】
ステップS101では、閉側コンプレッサ効率差ΔηcAが算出される。また、ステップS102では、開側コンプレッサ効率差ΔηcBが算出される。
【0065】
ステップS103では、閉側コンプレッサ効率差ΔηcAが「0+所定値D」よりも大きく、且つ開側コンプレッサ効率差ΔηcBが「0−所定値D」よりも小さいか否か判定される。所定値Dは、ディフューザベーン61が正常であるときの閉側コンプレッサ効率差ΔηcAおよび開側コンプレッサ効率差ΔηcBの範囲を示す値として実験等により求められる値である。すなわち、本ステップでは、VGD開度が50%よりも閉じ側のときの所定の吸入空気量GaAのときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも大きく、且つVGD開度が50%よりも開き側のときの所定の吸入空気量GaBのときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも小さいか否か判定している。ステップS103で肯定判定がなされた場合にはステップS104へ進み、実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じていると判定される。一方、ステップS103で否定判定がなされた場合には、ステップS105へ進む。
【0066】
ステップS105では、閉側コンプレッサ効率差ΔηcAが「0−所定値D」よりも小さく、且つ開側コンプレッサ効率差ΔηcBが「0+所定値D」よりも大きいか否か判定される。すなわち、本ステップでは、VGD開度が50%よりも閉じ側のときの所定の吸入空気量GaAのときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも小さく、且つVGD開度が50%よりも開き側のときの所定の吸入空気量GaBのときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも大きいか否か判定している。ステップS105で肯定判定がなされた場合にはステップS106へ進み、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じているか又はディフューザベーン61が欠損したと判定される。一方、ステップS105で否定判定がなされた場合には、ステップS107へ進む。
【0067】
ステップS107では、閉側コンプレッサ効率差ΔηcAが「0−所定値D」よりも小さく、且つ開側コンプレッサ効率差ΔηcBが「0−所定値D」よりも小さいか否か判定される。すなわち、本ステップでは、VGD開度が50%よりも閉じ側のときの所定の吸入空気量GaAのときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも小さく、且つVGD開度が50%よりも開き側のときの所定の吸入空気量GaBのときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも小さいか否か判定している。ステップS107で肯定判定がなされた場合には、コンプレッサ効率が低下する他の異常が生じていると判定される。一方、ステップS107で否定判定がなされた場合には、ディフューザベーン61は正常であり、本ルーチンを終了させる。
【0068】
なお、実VGD開度が目標VGD開度よりも閉じ側となる異常が生じていると判定された場合(ステップS104が実行された場合)には、その後に、実VGD開度を目標VG
D開度に合わせる基準位置学習制御を実行する。すなわち、ユニゾンリング64の突起部64bがストッパー70に当たるまで、アクチュエータ57を作動させ、このときの位置を記憶させる。このときには、ディフューザベーン61が全閉となっているため、このときの位置をディフューザベーン61の全閉の位置として記憶しておく。これ以降は、新たに記憶された位置に基づいてVGD開度を制御する。なお、本実施例では基準位置学習制御を行うECU10が、本発明における学習手段に相当する。
【0069】
また、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じているか又はディフューザベーン61が欠損したと判定された場合(ステップS106が実行された場合)には、まず、実VGD開度を目標VGD開度に合わせる基準位置学習制御を実行する。すなわち、ユニゾンリング64の突起部64bがストッパー70に当たるまで、アクチュエータ57を作動させ、このときの位置を記憶させる。このときには、ディフューザベーン61が全閉となっているため、このときの位置をディフューザベーン61の全閉の位置として記憶しておく。これ以降は、新たに記憶された位置に基づいてVGD開度を制御する。そして、この後に、再度、図15に示すフローを実行し、この結果、ディフューザベーン61に異常がない場合には、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じていたが、基準位置学習制御により異常が解消されたと考えられる。一方、図15に示すフローを再度実行したときにも、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じているか又はディフューザベーン61が欠損したと判定された場合には、ディフューザベーン61が欠損したと判定される。すなわち、基準位置学習制御によっては異常が解消されないため、実VGD開度が目標VGD開度よりも開き側となる異常が生じているのではなく、ディフューザベーン61が欠損したと考えられる。この場合には、運転者などに異常を知らせるために、たとえば警告灯を点灯させる。このときには、内燃機関1の出力を抑制するフェールセーフモードに移行する。フェールセーフモードでは、内燃機関1への燃料供給量を制限したり、過給圧を制限したりする。
【0070】
ところで、本実施例では、VGD開度が50%よりも閉じ側のときの所定の吸入空気量GaAと、VGD開度が50%よりも開き側のときの所定の吸入空気量GaBと、の2つの吸入空気量が得られる運転状態となれなければ故障検出を行うことができない。これに対し、他の運転状態のときに得られる吸入空気量に基づいて故障検出を行うことができるように、判定基準となる所定の吸入空気量をより多く設定しても良い。それぞれの吸入空気量においてコンプレッサ効率の基準値を予め求めておけば、故障検出をより広い運転領域で行うことができる。
【0071】
以上説明したように本実施例によれば、コンプレッサ効率に基づいてディフューザベーン61の異常の種類を判別することができる。これにより、適切な処置を施すことができる。
【符号の説明】
【0072】
1 内燃機関
2 気筒
2A 吸気ポート
2B 排気ポート
3 吸気通路
4 排気通路
10 ECU
11 入口側圧力センサ
12 入口側温度センサ
13 出口側圧力センサ
14 出口側温度センサ
15 エアフローメータ
16 クランクポジションセンサ
50 ターボチャージャ
51 コンプレッサハウジング
52 タービンハウジング
53 センタハウジング
54 コンプレッサインペラ
55 タービンインペラ
56 ロータシャフト
57 アクチュエータ
58 リンクロッド
60 可変ディフューザ
61 ディフューザベーン
62 ベースプレート
63 回動軸
64 ユニゾンリング
64a 切欠部
64b 突起部
65 従動アーム
66 ガイドローラ
70 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディフューザベーンの角度を変更する可変ディフューザをコンプレッサ部に有する過給器を備えた内燃機関の故障検出装置において、
前記内燃機関の吸入空気量が第1所定値よりも小さなときのコンプレッサ効率と、前記内燃機関の吸入空気量が前記第1所定値よりも大きな第2所定値よりも大きなときのコンプレッサ効率と、に基づいて前記ディフューザベーンの異常の状態を判定する判定手段を備えることを特徴とする過給器を備えた内燃機関の故障検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記内燃機関の吸入空気量が前記第1所定値よりも小さなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも大きく、且つ前記内燃機関の吸入空気量が前記第2所定値よりも大きなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも小さい場合に、前記ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも閉じ側にずれていると判定することを特徴とする請求項1に記載の過給器を備えた内燃機関の故障検出装置。
【請求項3】
前記判定手段により前記ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも閉じ側にずれていると判定された場合に該ディフューザベーンの位置を学習する学習手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の過給器を備えた内燃機関の故障検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記内燃機関の吸入空気量が前記第1所定値よりも小さなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも小さく、且つ前記内燃機関の吸入空気量が前記第2所定値よりも大きなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも大きい場合に、前記ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも開き側にずれているか又は前記ディフューザベーンが欠損したと判定することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の過給器を備えた内燃機関の故障検出装置。
【請求項5】
前記判定手段により前記ディフューザベーンの実際の開度が目標の開度よりも開き側にずれているか又は前記ディフューザベーンが欠損したと判定された場合に該ディフューザベーンの位置を学習する学習手段を備え、
前記判定手段は、前記学習手段により前記ディフューザベーンの位置を学習した後においても、前記内燃機関の吸入空気量が前記第1所定値よりも小さなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも小さく、且つ前記内燃機関の吸入空気量が前記第2所定値よりも大きなときのコンプレッサ効率が該コンプレッサ効率の正常範囲よりも大きい場合には、前記ディフューザベーンが欠損したと判定することを特徴とする請求項4に記載の過給器を備えた内燃機関の故障検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−247181(P2011−247181A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121377(P2010−121377)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】