説明

過給機の可変ノズル装置

【課題】装置を複雑にすることなく、ノズルベーンを駆動するための回転力を伝達する伝達機構の駆動シャフトとブッシュとの間への異物の噛み込みを抑える可変ノズル装置を提供する。
【解決手段】過給機の可変ノズル装置は、複数のノズルベーンの開度を変更させるリンク機構を備える。開度を変更させるために、アクチュエータの駆動力に基づく回転力を駆動シャフト5bを介してリンク機構に伝達する伝達機構255を備える。圧入により固定部材(センターハウジング17)に取り付けられ、且つ伝達機構255の回転軸である駆動シャフト5bを回転自在な状態で保持するブッシュ257を備える。駆動シャフト5bは、少なくとも一部がブッシュ257の圧入部分に囲まれる細径部5b1と、ブッシュ257の非圧入部分に囲まれ且つ細径部5b1よりも径が太い太径部5b3とを有する。細径部5b1の軸方向長さは、圧入部分の軸方向長さ以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機の可変ノズル装置に関し、特にノズルベーンを駆動するための回転力を伝達する伝達機構における駆動シャフトとブッシュの間における異物による噛み込みを抑えた可変ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンに可変ノズルが設けられた過給機が提案されている。可変ノズル装置は、過給機におけるタービンホイールへの排気流路の開口面積を変動させることにより、タービンホイールに吹き付けられる排気の流速を変更させる装置であり、かかる可変ノズル装置により、タービンホイールの回転速度が調整され、エンジン本体に送り込まれる空気の量や過給圧が調整される。
【0003】
可変ノズル装置は、ノズルベーンを駆動するための回転力を、駆動シャフトを介して伝達する伝達機構を有する。かかる伝達機構において、高温で且つ高圧の排気ガスが、駆動シャフトと駆動シャフトを回転自在に保持するブッシュとの間の微小隙間を通り、大気に漏れ出るおそれがある。排気ガスには、燃焼で発生するカーボンデポジットなどの異物が含まれ、異物が駆動シャフトとブッシュとの間の微小隙間に侵入した場合、異物による噛み込みが発生し、駆動シャフトの摺動不良が発生するおそれがある。
【0004】
特許文献1は、タービンハウジングと可変ノズル装置の駆動リンク室との間に、排気ガスの駆動リンク室への流れを抑えるシール部材を有し、これにより伝達機構の駆動シャフトとブッシュとの間への異物による噛み込みを抑える可変ノズル装置を開示する。
【特許文献1】特開2005−42588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置は、過給機、可変ノズル装置に加えて別途シール部材を用意する必要があり、組み立て工数の増加やコストアップの問題があった。
【0006】
したがって本発明の目的は、装置を複雑にすることなく、ノズルベーンを駆動するための回転力を伝達する伝達機構の駆動シャフトとブッシュとの間への異物による噛み込みを抑える可変ノズル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る過給機の可変ノズル装置は、複数のノズルベーンの開度を変更させるリンク機構と、開度を変更させるために、アクチュエータの駆動力に基づく回転力を駆動シャフトを介してリンク機構に伝達する伝達機構と、圧入により固定部材に取り付けられ、且つ伝達機構の回転軸である駆動シャフトを回転自在な状態で保持するブッシュとを備え、駆動シャフトは、少なくとも一部がブッシュの圧入部分に囲まれる細径部と、ブッシュの非圧入部分に囲まれ且つ細径部よりも径が太い太径部とを有し、細径部の軸方向長さは、圧入部分の軸方向長さ以上である。
【0008】
ブッシュの圧流部分は、非圧入部分に比べて内径が細くなるが、細径部があるために、ブッシュと駆動シャフトとの間隔は、ブッシュの圧入部分と細径部との間隔、及びブッシュの非圧入部分と駆動シャフトの太径部との間隔とが同程度に出来る。従って、駆動シャフトに細径部を設けない形態に比べて、ブッシュと駆動シャフトとの間で、カーボンデポジットなどの異物が、集中して堆積する箇所が出来にくくなり、異物による噛み込みが発生する可能性を低くすることが可能になる。
【0009】
また、ブッシュの圧入部分の内径が細くなることを考慮して、圧入が行われる前のブッシュの内径をあらかじめ大きく設定しておく形態に比べて、ブッシュと駆動シャフトとの間隔を小さく出来るため、異物の侵入の防止及び可変ノズル装置の作動がたつきを小さくすることが可能になる。
【0010】
また、ブッシュと駆動シャフトとの間への異物の侵入を避けるガスのシール性向上のためには、別途シール部材を設ける形態、及び駆動リンク部の周辺部分を大気圧よりも高い状態にする形態が考えられるが、いずれも通常の可変ノズル装置に別の部材を加える必要があり、組み付け工数が増加したりコストが上がる問題を有する。本発明は、これらの形態に比べて、装置を複雑にすることなく、簡単にブッシュと駆動シャフトとの間への異物の侵入による摺動不良を抑えることが可能になる。
【0011】
なお、ブッシュと駆動シャフトとの間には、長期間の使用で異物の堆積は避けられないが、駆動シャフトの細径部の軸方向長さをブッシュの圧入部分の軸方向長さ以上に設定されているため、細径部の両端部と非圧入部分との間に、駆動シャフトとブッシュとの間隔が大きい空間を設けることが可能になる。かかる空間には、他の駆動シャフトとブッシュとの間隔が狭い空間に比べて、異物が有る程度堆積しても駆動シャフトの摺動不良を発生させない効果を有するため、異物による駆動シャフトの摺動不良が発生するまでの時間を延ばすことが可能になる。
【0012】
また、好ましくは、伝達機構は、駆動シャフトの一方の端部に取り付けられ、アクチュエータの駆動力を受ける駆動リンク部と、駆動シャフトの他方の端部に取り付けられ、リンク機構に係合して、回転力をリンク機構に伝達する駆動アーム部とを有し、細径部は、駆動シャフトの駆動リンク部が取り付けられる部分、及び駆動シャフトの駆動アーム部が取り付けられる部分の少なくとも一方よりも太い径を有する。
【0013】
これにより、細径部の径を駆動アーム部が取り付けられる部分などよりも細い径を有する場合にくらべて、駆動シャフトの強度を確保することが可能になる。
【0014】
また、好ましくは、固定部材におけるブッシュの非圧入部分に対向する部分の内径が、ブッシュの圧入部分に接触する部分の内径、及びブッシュの非圧入部分の外径よりも太い。
【0015】
この場合、固定部材のブッシュを取り囲む部分の軸方向長さが長くても、ブッシュの非圧入部分に対向する部分の内径を太くすることにより、ブッシュに非圧入部分を設けることが可能になる。
【0016】
また、好ましくは、細径部と太径部との間にはテーパーが形成される。
【0017】
これにより、圧入により変形するブッシュの圧入部分の形状に合わせて、駆動シャフトを形成することが可能になり、異物が侵入したとしても堆積にしにくくなるメリットを有する。
【0018】
また、好ましくは、細径部の径と太径部の径との差異は、ブッシュの非圧入部分の内径と圧入部分の内径との差異と同等以上になるように設定される。
【0019】
これにより、駆動シャフトは、細径部の太径部がブッシュの非圧入部分と回転自在に保持される。従って、細径部は、ブッシュとは接触しないため、細径部を設けたことによって、可変ノズル装置の作動がたつきが大きくなることはない。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、装置を複雑にすることなく、ノズルベーンを駆動するための回転力を伝達する伝達機構の駆動シャフトとブッシュとの間への異物の噛み込みを抑える可変ノズル装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図を用いて説明する。内燃機関1は、制御部10、過給機13、エンジン本体30、コンプレッサ入口側吸気通路51、コンプレッサ出口側吸気通路52、吸気マニホールド55、排気マニホールド71、タービン入口側排気通路72、タービン出口側排気通路73、及び排気浄化装置80を備える。
【0022】
制御部10は、CPU、制御プログラムを格納したROM、及び各種データを格納するRAM等を有し、各種センサからの信号が入力され、また、アクチュエータ等に制御信号を出力して内燃機関1を含む車両の各部を制御する。制御部10は、特に、アクチュエータを介して、過給機13に取り付けられた可変ノズル装置25を駆動し、ノズルベーン250の開度を調整する。
【0023】
内燃機関1の運転中、エンジン本体30の各シリンダーの燃焼室には、コンプレッサ入口側吸気通路51、コンプレッサ出口側吸気通路52、及び吸気マニホールド55を介して、空気が吸入される(図1の吸気通路内の実線矢印参照)。インジェクタから噴射された燃料は、吸入された空気と混ざって混合気を形成する。制御部10からの点火信号に基づく点火プラグの点火によって、混合気は燃焼する。混合気の燃焼による爆発力に応じたピストンの往復運動により、クランクシャフト(不図示)が回転する。燃焼により発生した排気ガスは、排気マニホールド71、タービン入口側排気通路72、及びタービン出口側排気通路73を介して排出される(図1の破線矢印参照)。
【0024】
次に、過給機13を中心に、内燃機関1の各部の構成を説明する。過給機13は、ノズルベーン250の開度を制御可能な可変ノズルターボチャージャーであり、タービンハウジング14、タービンホイール15、センターハウジング17、ロータシャフト18、コンプレッサハウジング20、コンプレッサホイール21、及び可変ノズル装置25を有する。
【0025】
タービンハウジング14、及びコンプレッサハウジング20は、センターハウジング17の両側に設けられ、3つのハウジングによって過給機13の外形が形成される。タービンハウジング14の内部には、タービンホイール15に排気を流入させるスクロール通路14aが形成される。スクロール通路14aは、巻き始めから巻き終わりにかけて流路面積が徐々に小さくなり、タービンホイール15に圧縮された排気を吹き付けることが可能な構成となっている。
【0026】
タービンホイール15は、ロータシャフト18を介して、コンプレッサホイール21と一体回転可能な状態で連結される。過給機13は、エンジン本体1からの排気が吹き付けられてタービンホイール15が回転する。この回転は、ロータシャフト18を介して、コンプレッサホイール21に伝達される。その結果、内燃機関1では、ピストンの移動に伴いエンジン本体30に発生する負圧によって空気がシリンダー内に取り込まれるだけでなく、その空気がコンプレッサホイール21の回転によって強制的にシリンダー内に送り込まれる、すなわち過給される。このようにして、燃焼室への空気の充填効率が高められる。
【0027】
タービンハウジング14の入口側は、排気マニホールド71に連通されたタービン入口側排気通路72と接続する。タービンハウジング14の出口側は、排気浄化装置80に連通されたタービン出口側排気通路73と接続する。
【0028】
コンプレッサハウジング20の入口側は、コンプレッサ入口側吸気通路51と接続する。コンプレッサ入口側吸気通路51には、エアクリーナ、及びエアフローメータ(不図示)が設けられる。コンプレッサハウジング20の出口側は、吸気マニホールド55に連通されたコンプレッサ出口側吸気通路52と接続する。コンプレッサ出口側吸気通路52には、インタークーラ、及びスロットルバルブ(不図示)が設けられる。
【0029】
可変ノズル装置25は、スクロール通路14aのタービンホイール15への排気流路の開口面積を調整することにより、タービンホイール15に吹き付けられる排気の流速を変更させる装置である。かかる可変ノズル装置25により、タービンホイール15の回転速度が調整され、エンジン本体30に送り込まれる空気の量や過給圧が調整される。
【0030】
可変ノズル装置25は、タービンホイール15への排気の流入部に配置された複数のノズルベーン250、ノズルベーン250をノズルベーン軸251を介して揺動可能に保持するノズルプレート252、ノズルベーン軸251の端部に固定されたアーム253、アーム253と係合しアーム253を介してノズルベーン軸251を回転させるユニゾンリング254、ノズルベーン250を駆動するための回転力を駆動シャフト5bを介して伝達するレバーユニット(伝達機構)255、リンク室256、及びレバーユニット255の駆動シャフト5bを回転自在に保持するブッシュ257を有する。
【0031】
ユニゾンリング254が回転せしめられると、ユニゾンリング254と係合するアーム253がノズルベーン軸251を中心に揺動し、ノズルベーン軸251の回転によってノズルベーン250の開度が変わる。ノズルプレート252、ノズルベーン軸251、アーム253、及びユニゾンリング254は、ノズルベーン250の開度を変更させるリンク機構を構成し、タービンハウジング15またはセンターハウジング17の内部、またはこれらに挟まれた空間に設けられたリンク室256に収納される。
【0032】
ユニゾンリング254の回転は、レバーユニット255を介してタービンハウジング15またはセンターハウジング17の外部に設けられたアクチュエータ(不図示)からの駆動力に基づく回転力が伝達されることにより行われる。レバーユニット255は、アクチュエータの駆動力を受ける駆動リンク部5a、一方の端部が駆動リンク部5aに固定された駆動シャフト5b、及び駆動シャフト5bの他方の端部に固定され且つユニゾンリング254に係合する駆動アーム5cを有する。アクチュエータの駆動力に基づく回転力により駆動リンク部5aが、駆動シャフト5bを軸に回転せしめられると、駆動シャフト5b、及び駆動アーム5cも一緒に回転せしめられ、駆動アーム5cに係合したユニゾンリング254も一緒に回転せしめられる。
【0033】
図3に示されるように、レバーユニット255を駆動して駆動アーム5cを点線矢印に示すように揺動させると、これに伴ってユニゾンリング254も同じ方向、すなわち図3では反時計回りに、図4では時計回りに回転する。ユニゾンリング254の回転によって、ノズルベーン軸251が実線矢印に示すように図3では反時計回りに、図4では時計回りに回転する。これによりノズルベーン250の開度は閉じる方向に制御される。
【0034】
駆動シャフト5bは、ブッシュ257に回転自在な状態で保持される。ブッシュ257は、中空円筒形状の軸受筒であり、軸方向の中央部分(圧入部分)だけセンターハウジング17などの固定部材に圧入により取り付けられる。すなわち、軸方向の端部(非圧入部分)はセンターハウジング17に接触しない状態で取り付けられる。ブッシュ257は、圧入前は中空円筒形状であるが、圧入後は、圧入部分が径方向内側に撓み、非圧入部分に比べて、内径が細くなる(図5参照)。
【0035】
なお、センターハウジング17のブッシュ257を圧入する部分の形状は、圧入によりブッシュ257の中央部分の内径がブッシュ257の端部の内径よりも細くすることができれば、別の形状であってもよい。例えば、センターハウジング17におけるブッシュ257の非圧入部分と径方向で対向する部分17bの内径が、センターハウジング17におけるブッシュ257の圧入部分と接触する部分17aの内径や、ブッシュ257の外径よりも太めに設定する形態が考えられる(図6参照)。この場合、センターハウジング17のブッシュ257を取り囲む部分の軸方向長さが長くても、ブッシュ257の非圧入部分に対向する部分の内径を太くすることにより、ブッシュ257の端部に非圧入部分を設けることが可能になり、設計自由度を高くすることが可能になる。
【0036】
駆動シャフト5bは、少なくとも一部(中心部分)がブッシュ257の圧入部分に囲まれる細径部5b1、細径部5bの両端に配置され軸方向で且つ端部方向に向かって径が太くなるテーパーを形成するテーパー部5b2、ブッシュ257の非圧入部分に囲まれる太径部5b3、及び駆動リンク部5aまたは駆動アーム5cと嵌合する嵌合部5b4を有する。太径部5b3とテーパー部5b2の径が最も太い部分とはほぼ同じ径d3を有し、細径部5b1とテーパー部5b2の径が最も細い部分とはほぼ同じ径d1を有する。細径部5b1の径d1と太径部5b3の径d3との差異は、ブッシュ257の非圧入部分の内径と圧入部分との内径の差異と同等以上になるように設定される。テーパー部5b2の傾斜度合いは、ブッシュ257の圧入部分の端部に形成されたテーパー部分の傾斜度合いと同程度になるように設定される。これにより、駆動シャフト5bとブッシュ257との間隔が、細径部5b1、テーパー部5b2、及び太径部5b3でほぼ同程度に設定される。
【0037】
なお、駆動シャフト5bの強度を確保するため、細径部5b1の径d1は、嵌合部5b4の径d4よりも太い径を有することが望ましい(d4<d1<d3)。
【0038】
また、太径部5b3の径d3と細径部5b1の径d1との差異は、ブッシュ257の非圧入部分の内径と圧入部分の内径の差異と同等以上に設定されため、駆動シャフト5bは、細径部5b1の両端に配置された太径部5b3がブッシュ257の非圧入部分と回転自在に保持される。従って、細径部5b1は、ブッシュ257とは接触しないため、細径部5b1を設けたことによって、細径部5b1を設けない形態に比べて、可変ノズル装置25の作動がたつきが大きくなることはない。
【0039】
また、細径部5b1の軸方向長さは、ブッシュ257の圧入部分の軸方向長さ以上に設定される。
【0040】
本実施形態のように、過給機13に可変ノズル装置25が取り付けられた内燃機関1では、高温で且つ高圧排気ガスがスクロール通路14aを通過する際に、ノズルベーン軸251とノズルプレート252の間のクリアランスC1、またはノズルプレート252とタービンハウジング14と間のクリアランスC2に侵入し、リンク室256に侵入することが考えられる(図2参照)。リンク室256は、大気圧の駆動リンク部5a周辺部分に比べて圧力が高いため、リンク室256から排気ガスが、駆動シャフト5bとブッシュ257との間の微小隙間に侵入するおそれがある。排気ガスには、燃焼で発生するカーボンデポジットなどの異物が含まれ、異物が駆動シャフト5bとブッシュ257との間の微小隙間に侵入した場合、異物により噛み込みが発生し、駆動シャフト5bの摺動不良が発生するおそれがある。
【0041】
本実施形態では、ブッシュ257の圧入部分と駆動シャフト5bの細径部5b1との間隔を、ブッシュ257の非圧入部分と駆動シャフト5bの太径部5b3との間隔と同等以上に出来る。このため、駆動シャフト5bに細径部5b1を設けず、ブッシュ257の圧入部分と駆動シャフト5bとの間隔が、ブッシュ257の非圧入部分と駆動シャフト5bとの間隔より小さくなる形態(図7参照)に比べて、ブッシュ257と駆動シャフト5bとの間で、カーボンデポジットなどの異物が、集中して堆積する箇所が出来にくくなり、異物による噛み込みが発生する可能性を低くすることが可能になる。
【0042】
また、図7の形態における異物噛み込み発生の問題を解決するため、ブッシュ257の圧入部分の内径が細くなることを考慮して、圧入が行われる前のブッシュ257の内径をあらかじめ大きく設定しておく形態が考えられる。本実施形態では、かかる形態に比べて、ブッシュ257と駆動シャフト5bとの間隔を小さく出来るため、異物の侵入の防止及び可変ノズル装置25の作動がたつきを小さくすることが可能になる。
【0043】
また、駆動シャフト5bにテーパー部5b2を設けることにより、圧入により変形するブッシュ257の圧入部分の形状に合わせて、駆動シャフト5bを形成することが可能になり、異物が侵入したとしても堆積にしにくくなるメリットを有する。
【0044】
なお、ブッシュ257と駆動シャフト5bとの間には、長期間の使用で異物の堆積は避けられないが、本実施形態では、駆動シャフト5bの細径部5b1の軸方向長さをブッシュ257の圧入部分の軸方向長さ以上に設定されているため、細径部5b1の両端部と非圧入部分との間に、駆動シャフト5bとブッシュ257との間隔が大きい空間を設けることが可能になる。かかる空間には、他の駆動シャフト5bとブッシュ257との間隔が狭い空間に比べて、異物が有る程度堆積しても駆動シャフト5bの摺動不良を発生させない効果を有するため、異物による駆動シャフト5bの摺動不良が発生するまでの時間を延ばすことが可能になる。
【0045】
また、ブッシュ257と駆動シャフト5bとの間への異物の侵入を避けるガスのシール性向上のためには、別途シール部材を設ける形態、及び駆動リンク部5aの周辺部分を大気圧よりも高い状態にする形態が考えられるが、いずれも通常の可変ノズル装置に別の部材を加える必要があり、組み付け工数が増加したりコストが上がる問題を有する。本実施形態は、これらの形態に比べて、装置を複雑にすることなく、簡単にブッシュ257と駆動シャフト5bとの間への異物による摺動不良を抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態における内燃機関の構成図である。
【図2】過給機の概略構成を示す断面図である。
【図3】ノズルプレートのコンプレッサ側の構成を示す図である。
【図4】ノズルプレートのタービン側の構成を示す図である。
【図5】駆動シャフトの周辺部分の構成を示す断面図である。
【図6】圧入の別形態を示す駆動シャフトの周辺部分の構成を示す断面図である。
【図7】駆動シャフトに細径部を設けない場合の駆動シャフトの周辺部分を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 内燃機関
5a 駆動リンク部
5b 駆動シャフト
5c 駆動アーム
10 制御部
13 過給機
14 タービンハウジング
14a スクロール通路
15 タービンホイール
17 センターハウジング
18 ロータシャフト
20 コンプレッサハウジング
21 コンプレッサホイール
25 可変ノズル装置
250 ノズルベーン
251 ノズルベーン軸
252 ノズルプレート
253 アーム
254 ユニゾンリング
255 レバーユニット
256 リンク室
257 ブッシュ
30 エンジン本体
51 コンプレッサ入口側吸気通路
52 コンプレッサ出口側吸気通路
55 吸気マニホールド
71 排気マニホールド
72 タービン入口側排気通路
73 タービン出口側排気通路
80 排気浄化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルベーンの開度を変更させるリンク機構と、
前記開度を変更させるために、アクチュエータの駆動力に基づく回転力を駆動シャフトを介して前記リンク機構に伝達する伝達機構と、
圧入により固定部材に取り付けられ、且つ前記伝達機構の回転軸である前記駆動シャフトを回転自在な状態で保持するブッシュとを備え、
前記駆動シャフトは、少なくとも一部が前記ブッシュの圧入部分に囲まれる細径部と、前記ブッシュの非圧入部分に囲まれ且つ前記細径部よりも径が太い太径部とを有し、
前記細径部の軸方向長さは、前記圧入部分の軸方向長さ以上であることを特徴とする過給機の可変ノズル装置。
【請求項2】
前記伝達機構は、前記駆動シャフトの一方の端部に取り付けられ、前記アクチュエータの駆動力を受ける駆動リンク部と、前記駆動シャフトの他方の端部に取り付けられ、前記リンク機構に係合して、前記回転力を前記リンク機構に伝達する駆動アーム部とを有し、
前記細径部は、前記駆動シャフトの前記駆動リンク部が取り付けられる部分、及び前記駆動シャフトの前記駆動アーム部が取り付けられる部分の少なくとも一方よりも太い径を有することを特徴とする請求項1に記載の可変ノズル装置。
【請求項3】
前記固定部材における前記ブッシュの前記非圧入部分に対向する部分の内径が、前記ブッシュの前記圧入部分に接触する部分の内径、及び前記ブッシュの非圧入部分の外径よりも太いことを特徴とする請求項1に記載の可変ノズル装置。
【請求項4】
前記細径部と前記太径部との間にはテーパーが形成されることを特徴とする請求項1に記載の可変ノズル装置。
【請求項5】
前記細径部の径と前記太径部の径との差異は、前記ブッシュの非圧入部分の内径と圧入部分の内径との差異と同等以上になるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の可変ノズル装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−167855(P2009−167855A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5203(P2008−5203)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】