説明

過酸化水素バリア性フィルム、積層材、液体小袋および製造方法

【課題】ガスバリア性、過酸化水素保護特性に優れる過酸化水素バリア性フィルムなどを提供する。
【解決手段】基材フィルムの片面または両面にガスバリア層を設け、さらに該基材フィルムの片面または両面に過酸化水素保護膜を設けた過酸化水素バリア性フィルムであって、前記過酸化水素保護膜は、物理気相成長法によって形成された膜厚100Å〜1μmの無機酸化物の蒸着膜である。物理気相成長法によるため生産性が高く、かつ過酸化水素保護膜を有することで過酸化水素保護特性に優れるため、特に過酸化水素で殺菌を行う無菌充填方式で使用する包材として好適に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素バリア性フィルム、該フィルムにヒートシール層を積層した積層材、該積層材を使用した液体用小袋、該液体用小袋に内容物を充填した液体小袋包装体および前記過酸化水素バリア性フィルムの製造方法に関し、更に詳しくは、製造が容易で過酸化水素保護特性に優れる過酸化水素バリア性フィルムとその製造方法、および該フィルムを用いた積層材、液体用小袋および液体小袋包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品、化成品、雑貨品、その他を充填密封する包装用材料としては、内容物の変質、変色、その他を防止するために酸素ガス、水蒸気等の透過を遮断、阻止し、かつ内容物を透視できる種々の形態からなるバリア性積層材が開発され、提案されている。
【0003】
例えば、基材フィルムの一方の面に、プラズマ化学蒸着法による酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を設けた蒸着フィルムおよび、前記蒸着膜面に、ヒートシール性樹脂層を設けたことを特徴とする積層体がある(特許文献1)。特許文献1では、クラック、ピンホール等が発生しても、酸素ガス、水蒸気等に対するガスバリア性に優れ、種々の物品を充填密封するに適する包装用容器等を製造するのに有用な透明バリア性フィルムや積層体が提供されるという。
【0004】
また、醤油、ソース、出し汁、香辛料、料理用酒類、その他の液体ないし粘調体からなる調味料類、スープ類、果汁類、その他の各種の液状ないし粘体状の飲食物醤油、ソース等の液状の調味料を充填密封する液体用小袋は、ガスバリア性に加え、特に、堅牢性、耐薬品性が要求されるため、機械的強度に優れるポリアミドが基材フィルムとして使用される(特許文献2)。特許文献2は、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、および上記芳香族ポリアミドと上記脂肪族ポリアミドとの混合物との3層のうちいずれか2層を含むポリアミド系積層2軸延伸フィルムの少なくとも片面に、厚さ100〜3000Åの範囲で珪素酸化物薄膜層が形成されてなるガスバリア性の優れた透明積層プラスチックフィルムを提供するものである。ポリアミドを基材として使用するためガスバリア性と機械的強度が共に優れ、透明性が確保されたバリア性積層材となる、という。
【0005】
一方、上記液体用小袋などの包装製品の製造方法として、殺菌された環境下で、殺菌処理された包装用材料を使用し、かつ、内容物を常温で充填密封する無菌充填密封方式が提案されている。すなわち、無菌の環境下で無菌の内容物を、無菌の包装用材料を使用して充填密封するものである。無菌環境は、充填密封機内部を加熱、殺菌剤等で滅菌処理し、更に、クリーンエアーを導入し、外気と遮断することにより実施でき、無菌の内容物は、クリーンルーム等でスープ、めんつゆ等の内容物を作成することで実施でき、無菌の包装用材料は、予め無菌状態にした包装用材料を無菌充填密封機内に供給する方式や、無菌充填密封機内で包装用材料を殺菌処理し、次いで、これを供給してするインライン方式等により実施することができる。無菌充填密封法方式によれば、包装材の耐熱性が不要となるばかりでなく、加熱による殺菌処理を回避できるため内容物の味やにおいの変化を防止できる点で優れる。
【0006】
無菌充填密封方式における包装用材料の殺菌方式として過酸化水素等の殺菌効果のある薬剤を使用する方式等があり、例えば過酸化水素を加熱蒸気化した過酸化水素のミストを使用することで殺菌することができ、殺菌力が高く、かつ、必要な面に必要量だけ吹き付ければよいので乾燥工程も低温化できるなどの利点がある。
【0007】
過酸化水素は無菌充填密封法方式の殺菌方法として優れるが、包装材がポリアミド系樹脂フィルムなどの吸湿性の高いものの場合には、過酸化水を吸収するため、殺菌処理および乾燥後に包装用材料の表面層の劣化やその表面層に過酸化水素が残留する場合がある。また、ポリアミド系樹脂フィルムは酸に弱く加水分解しやすいため、過酸化水素ミストによって表面から加水分解を起こし白化現象(白っぽくなること)を生じる場合もある。
【0008】
これを解決するため、基材フィルムの片面または両面に、過酸化水素の吸着、浸透を阻止する耐過酸化水素保護膜を設けたことを特徴とする過酸化水素バリア性フィルムに関する技術がある(特許文献3)。特許文献3では、過酸化水素保護膜として、基材フィルム上に化学気相成長法による有機酸化珪素の蒸着膜を開示し、過酸化水素処理後の過酸化水素の残留濃度が3ppmであるという。
【特許文献1】特開平11−348171号公報
【特許文献2】特開平6−190961号公報
【特許文献3】特開2005−231042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、無菌充填密封法方式は、包装材の耐熱性が不要となるばかりでなく、加熱による殺菌処理を回避できるため内容物の味やにおいの変化を防止できる点で優れ、将来の発展が期待される分野であるが、このような用途に使用される包装用材料は大量に消費されるものであるから、過酸化水素バリア性フィルムなどの生産性をより向上させる技術開発の要請が強い。上記特許文献3記載の過酸化水素バリア性フィルムは、化学気相成長法によって有機酸化珪素の蒸着膜を調製する際に、フィルム基材を150m/minの速度で蒸着槽へ搬入し、有機酸化珪素の蒸着層を形成しているが、より高速で製造しうることが好ましく、更に、ガスバリア性や過酸化水素保護特性が向上できればなお好ましい。
【0010】
特に、基材フィルムとして使用されるポリアミド系樹脂フィルムは、機械的特定に優れ、特に突き刺し特性に優れるため、液体用小袋などの用途に好適に使用することができる。従って、各種基材フィルムの中でも特にポリアミド系樹脂フィルムにも生産性高く、過酸化水素保護能に優れるガスバリア性フィルムの製造方法の開発が望まれる。
【0011】
また、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルムは、機械的強度に優れ、安価であること、リサイクル性に優れるなどの点で多用される基材フィルムである。したがって、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルムを基材フィルムとした場合にも、過酸化水素保護特性、ガスバリア性に優れる過酸化水素バリア性フィルムを生産性高く製造する方法の開発が望まれる。
【0012】
そこで本発明は、機械的強度、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、過酸化水素保護特性に優れ、かつ大量生産に適する高速生産が可能な過酸化水素バリア性フィルムを提供することを目的とする。
【0013】
また、上記過酸化水素バリア性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
更に、上記過酸化水素バリア性フィルムからなる積層材、該積層材からなる液体用小袋、および液体小袋包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、無機酸化物蒸着膜による過酸化水素残存量を詳細に検討した結果、従来の酸化珪素の蒸着膜に代えて、酸化アルミニウムの蒸着膜が優れた過酸化水素保護特性を発揮しうることを見出した。酸化珪素の蒸着膜は化学気相成長法によって調製することができ、通常、化学気相成長法では、300m/minの基材フィルム搬入速度で蒸着を行うが、酸化アルミニウムの蒸着膜は物理気相成長法によって調製することでき、基材フィルム搬入速度300〜1000m/minで蒸着層を形成することができる。従って、物理気相成長法によれば化学気相成長法よりも高速で過酸化水素バリア性フィルムを製造しうるため、生産性高く過酸化水素バリア性フィルムを製造することができる。特に、物理気相成長法によれば、真空チャンバー内の真空度や電子ビーム電力を調整することで容易に蒸着層の膜厚を厚くして過酸化水素保護特性を向上させることができ、この結果、過酸化水素によって殺菌した後の過酸化水素の残留濃度をより効果的に低減しうると共にガスバリア性を向上させうることを見出した。本発明は、上記知見に基づいて完成されたものである。
【0016】
すなわち本発明は、基材フィルムの片面または両面にガスバリア層を設け、さらに該基材フィルムの片面または両面に過酸化水素保護膜を設けた過酸化水素バリア性フィルムであって、前記過酸化水素保護膜は、物理気相成長法によって形成された膜厚100Å〜1μmの無機酸化物の蒸着膜である、過酸化水素バリア性フィルムを提供するものである。
【0017】
また、本発明は、基材フィルムの一の面にガスバリア層が設けられ、他の面に過酸化水素保護膜が設けられた過酸化水素バリア性フィルムの製造方法であって、前記基材フィルムの一の面、または前記ガスバリア層を形成した基材フィルムの他の面に、物理気相成長法によってフィルム搬送速度300〜1000m/minで無機酸化物を厚さ100Å〜1μmに蒸着して前記過酸化水素保護膜を形成する工程を含む、過酸化水素バリア性フィルムの製造方法を提供するものである。
【0018】
更に本発明は、前記過酸化水素バリア性フィルムの、前記過酸化水素保護膜を最外層とし、最内層にヒートシール性樹脂層を積層したことを特徴とする積層材を提供するものである。
【0019】
加えて、本発明は、上記積層材を、そのヒートシール性樹脂層面を対向させて重ね合わせその外周周辺の端部をヒートシールしてヒートシール部を設けて袋体を構成したものである、液体用小袋を提供するものである。
【0020】
更に、上記液体用小袋に、その開口部から液体または粘調体を充填密封してなることを特徴とする液体小袋包装体を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の過酸化水素バリア性フィルムは、ガスバリア性、過酸化水素保護特性に優れ、かつ高速で過酸化水素保護膜を形成し得るため、生産性に優れる。
【0022】
本発明の過酸化水素バリア性フィルムは、更にヒートシール性樹脂層を積層して積層材とすることができ、該積層材を使用して、耐付き刺し性に優れる液体用小袋を製造することができる。
【0023】
本発明の過酸化水素バリア性フィルムは、過酸化水素保護特性に優れるため、ポリアミド系樹脂フィルムを基材フィルムとした場合でも、白化などを回避することができ、特に無菌充填方式で内容物を封入する液体用小袋として好適に使用することができる。
【0024】
本発明の過酸化水素バリア性フィルムは、過酸化水素による殺菌処理を好適に行うことができるため、無菌充填方式で使用すれば、ガンマー線による殺菌処理を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の第一は、基材フィルムの片面または両面にガスバリア層を設け、さらに該基材フィルムの片面または両面に過酸化水素保護膜を設けた過酸化水素バリア性フィルムであって、前記過酸化水素保護膜は、物理気相成長法によって形成された膜厚100Å〜1μmの無機酸化物の蒸着膜である、過酸化水素バリア性フィルムである。過酸化水素バリア性フィルムに設けられた物理気相成長法で形成された膜厚100Å〜1μmの無機酸化物の蒸着膜は基材フィルムの吸湿性を効率的に抑制するため、過酸化水素によって前記フィルムを殺菌処理した後にも、基材フィルムへの過酸化水素の残留を抑制することができる。
【0026】
本発明の過酸化水素バリア性フィルムの前記基材フィルムは、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム、2軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム、または、2軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムであることが好ましく、過酸化水素保護膜は、酸化アルミニウムの蒸着膜であり、前記ガスバリア層は、酸化珪素の蒸着膜であることが好ましい。
【0027】
また、前記過酸化水素バリア性フィルムは、過酸化水素残留濃度が5ppm以下であることが好ましく、
また、本発明の第二は、基材フィルムの一の面にガスバリア層が設けられ、他の面に過酸化水素保護膜が設けられた過酸化水素バリア性フィルムの製造方法であって、前記基材フィルムの一の面、または前記ガスバリア層を形成した基材フィルムの他の面に、物理気相成長法によってフィルム搬送速度300〜1000m/minで無機酸化物を蒸着して前記過酸化水素保護膜を形成する工程を含む、過酸化水素バリア性フィルムの製造方法である。前記無機酸化物の蒸着膜は、100Å〜1μmの膜厚に蒸着することが好ましく、物理気相成長法によって酸化アルミニウムを蒸着することがより好ましい。また、前記ガスバリア膜は、化学気相成長法による酸化珪素の蒸着膜からなることが好ましい。以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
(1)過酸化水素バリア性フィルムおよび積層材の構成
本発明で使用する過酸化水素バリア性フィルムは、図1に示すように、基材フィルム(10)の一の面に過酸化水素保護膜(20)を有し、他の面にガスバリア層(30)を有する。図2に示すように、前記過酸化水素保護膜(20)は、プラズマ処理層(40)を介して基材フィルム(10)の上に積層され、かつ過酸化水素保護膜(20)の上に更にプラズマ処理層(40)が設けられていてもよい。また、前記ガスバリア層(30)の上に更に過酸化水素保護膜(20)が設けられていてもよく、その際、図3に示すように、ガスバリア層(30)の上にプラズマ処理層(40)を介して過酸化水素保護膜(20)が設けられ、更に過酸化水素保護膜(20)の上にプラズマ処理層が設けられていてもよい。また、図示しないが、前記ガスバリア層(30)には印刷層が形成されていてもよい。
【0029】
前記過酸化水素バリア性フィルムは、過酸化水素残留濃度が5ppm以下であることが好ましい。なお、本発明における過酸化水素残留濃度は、後記する実施例で記載する方法で評価したものとする。
【0030】
また、本発明の積層材は、過酸化水素バリア性フィルムの前記ガスバリア層(30)または過酸化水素保護膜(20)の上に、ヒートシール性樹脂層が積層されたものである(図示せず)。ヒートシール性樹脂層は、溶融押し出しによって前記ガスバリア層(30)または過酸化水素保護膜(20)の上に形成されたものでもよく、ラミネート接着剤層を介して接着されたものであってもよい。なお、前記ガスバリア層(30)や過酸化水素保護膜(20)の上に印刷層が形成される場合には、該印刷層の上にヒートシール性樹脂層が形成されていてもよい。
【0031】
(2)基材フィルム
本発明で使用しうる基材フィルムとしては、化学的ないし物理的強度に優れ、無機酸化物の蒸着膜を製膜化する条件等に耐えうる樹脂フィルムを使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−プタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムを使用することができる。なお、基材フィルムは、上記樹脂の未延伸フィルムや一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムなどのいずれのものでも使用することができる。本発明においては、上記の樹脂のフィルムの中でも、特に、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム、2軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム、または、2軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムに好適に応用できる。過酸化水素バリア性フィルムが使用される包装材として好適に使用でき、かつ化学的ないし物理的強度に優れ、無機酸化物の蒸着膜を製膜化する条件等に耐え、その無機酸化物の蒸着膜の膜特性を損なうことなく良好に保持し得ることができるからである。より好ましくは2軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムである。過酸化水素保護特性を確保することで無機充填方式で使用する包装材として好適だからである。
【0032】
このようなポリアミドフィルムとしては、脂肪族ポリアミドであっても、芳香族ポリアミドであっても、これらを混合した組成物であってもよい。好ましいポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ‐ε‐アミノへプタン酸(ナイロン7)、ポリ‐ε‐アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2・6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4・6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6・6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8・6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10・6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10・10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12・12)、メタキシレンジアミン‐6ナイロン(MXD6)などを挙げることができ、これらを主成分とする共重合体であってもよく、その例としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、エチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体などを挙げることができる。これらのポリアミドには、フィルムの柔軟性改質成分として、芳香族スルホンアミド類、p‐ヒドロキシ安息香酸、エステル類などの可塑剤や低弾性率のエラストマー成分やラクタム類を配合することも有効である。
【0033】
本発明において、上記の各種の樹脂のフィルムとしては、例えば、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、押出法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化する方法、あるいは、2種以上の各種の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化する方法、更には、2種以上の樹脂を使用し、製膜化する前に混合して製膜化する方法等により、各種の樹脂のフィルムを製造し、更に、要すれば、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂のフィルムを使用することができる。
【0034】
本発明において、各種の樹脂のフィルムの膜厚としては、6〜100μm、より好ましくは、9〜50μmが望ましい。
【0035】
なお、上記基材フィルムの製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、離形性、難燃性、抗カビ性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0036】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0037】
(3)表面処理
本発明の過酸化水素バリア性フィルムは、上記基材フィルムの一方の面にガスバリア層が形成され、他の面に物理気相成長法によって形成された膜厚100Å〜1μmの無機酸化物の蒸着膜からなる過酸化水素保護膜が形成される。ガスバリア層や過酸化水素保護膜は、基材フィルムに直接形成されてもよいが、予め基材フィルムに表面処理をおこなってから無機酸化物を蒸着して過酸化水素保護膜を形成し、またはガスバリア層を形成してもよい。これによって基材フィルムと過酸化水素保護膜やガスバリア層との密着性を向上させることができる。
【0038】
このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。
【0039】
また、本発明で使用する基材フィルムの表面に、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤、あるいは、接着剤層、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理とすることもできる。なお、前記コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0040】
このような表面処理の中でも、特に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好適である。例えばプラズマ処理としては、気体をアーク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行なうプラズマ処理がある。プラズマガスとしては、上記のほかに、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができる。例えば、後記する化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成する直前に、インラインでプラズマ処理を行うことにより、基材フィルムの表面の水分、塵などを除去すると共にその表面の平滑化、活性化、その他等の表面処理を可能とすることができる。また、蒸着後に、プラズマ処理を行い、蒸着層とその上に積層される他の層との密着性を向上することもできる。なお、プラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他の条件を考慮してプラズマ放電処理を行うことが好ましい。また、プラズマを発生する方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電、その他の装置を使用することができる。また、大気圧プラズマ処理法によりプラズマ処理を行なうこともできる。
【0041】
(4)過酸化水素保護膜およびガスバリア層
本発明の過酸化水素バリア性フィルムにおける過酸化水素保護膜は、物理気相成長法によって形成された膜厚100Å〜1μmの無機酸化物の蒸着膜であり、また、酸化珪素の蒸着膜をガスバリア層とすることができる。過酸化水素保護膜とガスバリア層とを共に無機酸化物の蒸着膜で構成することで、透明性、ガスバリア性に優れ、かつ過酸化水素保護特性に優れる過酸化水素バリア性フィルムを簡便な製造工程で製造することができる。以下、無機酸化物の蒸着膜について記載する。
【0042】
(i)無機酸化物の蒸着膜
無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、化学気相成長法、物理気相成長法またはこれらを複合して、無機酸化物の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して製造することができる。
【0043】
(i−1)化学気相成長法
化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等がある。具体的には、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0044】
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。高活性の安定したプラズマが得られる点で、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
【0045】
上記の低温プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法の一例を低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である図4を用いて説明する。
【0046】
本発明では、プラズマ化学気相成長装置221の真空チャンバー222内に配置された巻き出しロール223から基材フィルム201を繰り出し、更に、該基材フィルム201を、補助ロール224を介して所定の速度で冷却・電極ドラム225周面上に搬送する。一方、ガス供給装置226、227および、原料揮発供給装置228等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスその他等を供給して蒸着用混合ガス組成物を調製し、これを原料供給ノズル229を通して真空チャンバー222内に導入する。該蒸着用混合ガス組成物を上記冷却・電極ドラム225周面上に搬送された基材フィルム201の上に供給し、グロー放電プラズマ230によってプラズマを発生させ照射し、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を製膜化する。次いで、上記で酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム201を補助ロール233を介して巻き取りロール234に巻き取れば、プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、冷却・電極ドラム225は、真空チャンバー222の外に配置されている電源231から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム225の近傍には、マグネット232を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で基材フィルムを一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、図4中、符号235は真空ポンプを表す。
【0047】
本発明では、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調整することが好ましい。
【0048】
原料揮発供給装置は、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバー内に導入させる。この際、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%、酸素ガスの含有量は10〜70%、不活性ガスの含有量は10〜60%の範囲とすることが好ましく、例えば、有機珪素化合物:酸素ガス:不活性ガスの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。
【0049】
一方、冷却・電極ドラムには、電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成され、このグロー放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態において、基材フィルムを一定速度で搬送させ、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、有機酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができるものである。
【0050】
なお、上記有機珪素化合物、不活性ガス、酸素ガスなどを供給する際の真空チャンバー内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは真空度1×10-1〜1×10-2Torrであることが好ましく、また、基材フィルムの搬送速度は、一般には300m/分である。このようにして得られる酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜の形成は、基材フィルムの上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOXの形で薄膜状に形成されるので、当該形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、緻密で隙間の少ない、可撓性に富む連続層となり、過酸化水素等の殺菌効果のある薬剤を使用して殺菌処理する方式において、過酸化水素ミストを吹き付ける面に耐過酸化水素保護膜として作用し、過酸化水素の基材フィルムへの接触、吸着、浸透等を阻害し、これによって、包装用材料の性能を損ねることなく、その表面を極めて良好に殺菌処理し得ることができるというものである。また、上記の有機酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、従来の真空蒸着法等によって形成される無機系の酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較して、耐過酸化水素保護膜として作用すると共にガスバリア性としても作用し、その性能は、はるかに高いものとなり、薄い膜厚でも十分にその機能を奏するとができるものである。
【0051】
また、SiOXプラズマにより基材フィルムの表面が清浄化され、基材フィルムの表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と基材フィルムとの密接着性が高いものとなる。更に、酸化珪素等の無機酸化物の連続膜の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torrであって、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrに比較して低真空度であるから、基材フィルムの原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく製膜プロセスも安定化する。
【0052】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される酸化珪素の蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルムの一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX(ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。上記酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX(ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。なお、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
【0053】
本発明において、酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。なお、上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。この際、上記の化合物が酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50質量%、好ましくは5〜20質量%である。含有率が0.1質量%未満であると、酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になる場合があり、一方、50質量%を越えるとバリア性が低下する場合がある。
【0054】
更に、本発明では、酸化珪素の蒸着膜において、上記の化合物の含有量が酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、基材フィルムとの界面では、上記化合物の含有量が少ないために基材フィルムと酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
【0055】
本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、酸化珪素の蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
【0056】
本発明において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。なお、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0057】
本発明において、上記酸化珪素の蒸着膜の膜厚は求める特性によって適宜選択することができる。また、酸化珪素の蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0058】
(i−2)物理気相成長法
物理気相成長法によっても無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。このような物理気相成長法として、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)などにより無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0059】
具体的には、金属または金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材フィルムの一方の上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材フィルムの一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。なお、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。物理気相成長法による無機酸化物の薄膜膜を形成する方法について、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図を示す図5を参照して説明する。
【0060】
まず、巻き取り式真空蒸着装置241の真空チャンバー242の中で、巻き出しロール243から繰り出す基材フィルム201は、ガイドロール244、245を介して、冷却したコーティングドラム246に案内される。上記の冷却したコーティングドラム246上に案内された基材フィルム201の上に、るつぼ247で熱せられた蒸着源248、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口249より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク250、250を介して、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を成膜化し、次いで、上記において、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム201を、ガイドロール251、252を介して送り出し、巻き取りロール253に巻き取ると物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、上記巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず第1層の無機酸化物の蒸着膜を形成し、次いで、その上に無機酸化物の蒸着膜を更に形成し、または、上記巻き取り式真空蒸着装置を2連に連接し、連続的に、無機酸化物の蒸着膜を形成して、2層以上の多層膜からなる無機酸化物の蒸着膜を形成してもよい。
【0061】
金属または無機酸化物の蒸着膜としては、基本的には、金属の酸化物を蒸着した薄膜であればよく、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましくは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。よって、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物と称することができ、その表記は、例えば、SiOX、AlOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。
【0062】
また、上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は0を超え2以下、アルミニウム(Al)は0を超え1.5以下、マグネシウム(Mg)は0を超え1以下、カルシウム(Ca)は0を超え1以下、カリウム(K)は0を超え0.5以下、スズ(Sn)は0を超え2以下、ナトリウム(Na)は0を超え0.5以下、ホウ素(B)は0を超え1、5以下、チタン(Ti)は0を超え2以下、鉛(Pb)は0を超え1以下、ジルコニウム(Zr)は0を超え2以下、イットリウム(Y)は0を超え1.5以下の範囲である。上記においてX=0の場合は完全な金属であり、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。本発明において、Mとしてケイ素やアルミニウムが好ましく、その際これらのXの値は、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲である。また、無機酸化物の蒸着膜としては、使用する金属または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0063】
本発明では、真空チャンバー内を真空ポンプにより適宜減圧し、電子ビームを照射する。本発明において、上記無機酸化物の蒸着膜の膜厚は求める特性によって適宜選択することができる。
【0064】
物理気相成長法は、高真空中で、アルミニウムなどの金属の円盤に高エネルギーの原子(アルゴンやそのイオン)をぶつけて、玉突きの要領でアルミニウムや珪素などの金属原子を吹き飛ばし、その金属原子を表面に層状に付着させるものである。従って、物理気相成長法で無機酸化物の蒸着膜の膜厚を変更するには、電子ビーム電力を増減したり、真空チャンバー内に真空度を増減したり、又は基材フィルムの搬送速度を増減することで調整することができる。
【0065】
更に、本発明では、例えば物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成し、ガスバリア層、または過酸化水素保護膜として使用することもできる。
【0066】
(ii)過酸化水素保護膜
本発明の過酸化水素バリア性フィルムの過酸化水素保護膜は、物理気相成長法によって形成された膜厚100Å〜1μmの無機酸化物の蒸着膜である。物理気相成長法に限定したのは、該方法によって形成される所定厚の酸化アルミニウムの蒸着膜は、過酸化水素保護特性に優れることが判明したこと、および蒸着チャンバー内の真空度の増減および電子ビーム電力の増減によって無機酸化物の蒸着膜の厚さを容易に調整することができるため、基材フィルムの搬送速度を高速にした場合にも所定厚さの無機酸化物の蒸着膜を形成することができるからである。
【0067】
本発明において、過酸化水素保護膜は、厚さ100Å〜1μmであることが好ましく、より好ましくは120〜350Å位である。100Åを下回ると過酸化水素による殺菌条件によっては基材フィルムの深層に過酸化水素が浸透する場合があり、水洗後の過酸化水素濃度を低減し得ない場合がある。また、1μmを超えても過酸化水素保護特性はそれ以上増加せず、無駄である。
【0068】
無機酸化物としては物理気相成長法によって形成されるものであれば特に制限はないが、前記したアルミニウム(Al)やケイ素(Si)の金属酸化物である。より好ましくは、膜厚100Å〜1μmの酸化アルミニウムの蒸着膜を過酸化水素保護膜として好ましく使用することができる。
【0069】
過酸化水素保護膜として上記膜厚の蒸着膜を形成するには、物理気相成長法において、基材フィルムの搬送速度を300〜1000m/分、好ましくは、500〜900m/分とする。前記したように、物理気相成長法では、電子ビーム電力の増減によって無機酸化物の蒸着量を調整でき、また、蒸着チャンバー内の真空度の増減によっても無機酸化物の蒸着量を調整できるため、基材フィルムの搬送速度を上記範囲に制御しても、ガスバリア性、過酸化水素保護特性に優れる上記膜厚の無機酸化物の蒸着膜を調製することができるからである。なお、化学気相成長法では上記したように10〜300m/分であるため、物理気相成長法で搬送速度600m/分で蒸着膜を調製すると、少なくとも単位時間あたり化学気相成長法の2倍量の過酸化水素バリア性フィルムを製造することができる。
【0070】
(iii)ガスバリア層
本発明の過酸化水素バリア性フィルムにおけるガスバリア層としては、内容物の品質保持を確保する観点から、酸素透過性、水蒸気透過性を低減しうるものを広く使用することができる。従って、アルミ箔や無機酸化物の蒸着膜などをガスバリア層とすることができる。この中でも、酸化珪素などの無機酸化物の蒸着膜は、透明性、ガスバリア性に優れるガスバリア層となる。
【0071】
本発明のガスバリア層が、無機酸化物の蒸着膜である場合には、蒸着方法を問わず、厚さ50〜4000Å、好ましくは、70〜300Åの無機酸化物の蒸着膜であり、上記膜厚の酸化珪酸の蒸着膜であることが好ましい。4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。
【0072】
蒸着方法は化学気相成長法でも物理気相成長法でも特に制限はないが、より好ましくは、化学気相成長法によるものである。化学気相成長法は、前記した1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンなどの有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、基材フィルムを10〜300m/分、より好ましくは150〜300m/分で搬送し、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOXの形で薄膜状に形成するため、緻密で隙間の少ない可撓性に富む連続層を基材フィルム上に形成することができ、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに薄い膜厚でバリア性の高いガスバリア層を形成することができるからである。
【0073】
一方、本発明のガスバリア層は、物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜であってもよく、無機酸化物として酸化アルミニウム、酸化珪素の蒸着膜であってもよい。酸素透過性、水蒸気透過性を、品質保持能の発揮に適する程度に低減することができる。
【0074】
本発明では、ガスバリア層として、無機酸化物の蒸着膜の1層だけでなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0075】
ガスバリア層が、異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜である場合には、まず、基材フィルムの上に、化学気相成長法により、緻密で柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設け、次いで、該無機酸化物の蒸着膜の上に、物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することが好ましいものである。上記とは逆くに、基材フィルムの上に、先に、物理気相成長法により、無機酸化物の蒸着膜を設け、次に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。なお、基材フィルム上にガスバリア性を有する無機酸化物の蒸着膜を形成し、更に、物理気相成長法によって厚さ100Å〜1μmの無機酸化物の蒸着膜を形成した場合であって、当該物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜が過酸化水素保護特性を有する場合には、基材フィルム上にガスバリア層と過酸化水素保護膜とが積層されたものとすることができる。
【0076】
(5)プラズマ処理
本発明では、表面処理として、基材フィルム上にプラズマ処理を行うことができ、更に、上記した物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜上にプラズマ処理を行うことができる。無機酸化物、例えば酸化アルミニウムの蒸着膜にプラズマ処理を行うことによって、蒸着膜の表面張力を向上させることができ、過酸化水素保護特性を向上させることができる。また、無機酸化物の蒸着膜がガスバリア層であり、このガスバリア層に更に印刷層を形成する場合には、ガスバリア層を構成する無機酸化物の蒸着膜にプラズマ処理を行うことで印刷適性を向上させることができる。
【0077】
プラズマ処理としては、プラズマガスとして、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができ、特に、酸素ガス、または、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスのように、酸素ガスを含む無機ガスをプラズマガスとして使用してプラズマ処理を行なうことが好ましい。また、より低い電圧でプラズマ処理を行なうことが可能である。上記プラズマ処理により蒸着膜の架橋密度等を高め、その湿度依存性等を改良し、酸素ガスに対するガスバリア性は勿論のこと、水蒸気に対するバリア性も向上させ、酸素ガス、水蒸気等に対する高いガスバリア性を安定して維持することを可能とし、更にまた、真空中で、酸素ガスを含む無機ガスからなるプラズマガスを使用してプラズマ処理を施してプラズマ処理層を形成することにより、該プラズマ処理層に、ラミネート接着剤層、アンカーコート層、ヒートシール性樹脂層、その他等の基材を積層する場合、その密接着性等を向上させ、その積層強度等を著しく高めることができる。
【0078】
具体的には、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを使用することが望ましく、そして、その酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスのガス圧としては、1×10-1〜10-10Torr位、より好ましくは、1×10-2〜1×10-8Torr位が望ましく、また、酸素ガスとアルゴンガスとの比率としては、分圧比で酸素ガス:アルゴンガス=100:0〜30:70位、より好ましくは、90:10〜70:30位が望ましく、更に、そのプラズマ出力としては、100〜2500W位、より好ましくは、500〜1500W位が望ましく、更にまた、その処理速度としては、100〜600m/min位、より好ましくは、200〜500m/min位が望ましい。上記の酸素ガスとアルゴンガスとの分圧比において、アルゴンガス分圧が高くなると、プラズマで活性化される酸素分子が少なくなり、アルゴンガスが還元性ガスとして働き、水酸基の導入が阻害されることから好ましくないものである。また、上記のプラズマ出力が、100W未満、更には、500W未満の場合には、酸素ガスの活性化が低下し、高活性の酸素原子が生成しにくいことから好ましくなく、また、1500Wを越えると、更には、2500Wを越えると、プラズマ出力が高すぎるので、蒸着膜等の劣化により、そのものの物性が低下するという問題を引き起こすことから好ましくないものである。
【0079】
更に、上記の処理速度が、100m/min未満、更には、250m/min未満であると、酸素プラズマ量が少なく、また、600m/minを越えてもそれ以上の効果の増加が少なく、無駄である。
【0080】
本発明において、プラズマ処理において、プラズマを発生させる方法としては、直流グロー放電、高周波(Audio Frequency:AF、Radio Frequency:RF)放電、マイクロ波放電等の3通りの装置を利用して行うことができる。本発明においては、3.56MHzの高周波(AF)放電装置を利用して行うことができる。
【0081】
(6)印刷層
本発明においては、上記過酸化水素バリア性フィルムを形成するいずれかの層間、特にガスバリア層や更にその上に形成されるプラズマ処理層上に所望の印刷層を形成してもよい。上記の印刷層としては、例えば、上記ガスバリア層、プラズマ処理層の上に、通常のグラビアインキ組成物、オフセットインキ組成物、凸版インキ組成物、スクリーンインキ組成物、その他のインキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、その他の印刷方式を使用し、例えば、文字、図形、絵柄、記号、その他からなる所望の印刷絵柄を形成することにより構成することができる。
【0082】
上記インキ組成物について、インキ組成物を構成するビヒクルとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化型ポリ(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルオキシエチルセルロースなどの繊維素系樹脂、塩化ゴム、環化ゴムなどのゴム系樹脂、石油系樹脂、ロジン、カゼインなどの天然樹脂、アマニ油、大豆油などの油脂類、その他の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。本発明において、上記のようなビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、染料・顔料などの着色剤の1種ないし2種以上を加え、さらに必要ならば、充填剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤、その他の添加剤を任意に添加し、溶剤、希釈剤などで充分に混練してなる各種の形態からなるインキ組成物を使用することができる。
【0083】
印刷層は、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄を表刷り印刷しても、あるいは裏刷り印刷してもよく、全面印刷でも、部分印刷でもよい。
【0084】
(7)ヒートシール層
ヒートシール層としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。
【0085】
ヒートシール層は、上記樹脂の1種からなる単層でも多層でもよく、ヒートシール層の厚さとしては、5〜300μmであり、より好ましくは10〜100μmである。5μmを下回ると無機酸化物の蒸着膜に擦り傷やクラックを発生する場合がある。
【0086】
(8)ラミネート用接着剤
本発明では、上記ガスバリア層、プラズマ処理層、印刷層の上にラミネート用接着剤を介してヒートシール性樹脂フィルムなどをドライラミネート積層法を用いて積層することができる。その他、いずれかの2層を積層する際に、ラミネート用接着剤を介してドライラミネート積層法により接着することができる。
【0087】
ラミネート用接着剤としては、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステルなどのホモポリマーもしくはこれらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体などからなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸などのモノマーとの共重合体などからなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂などからなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル酸系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどからなる無機系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラスなどからなる無機系接着剤、その他の接着剤を使用することができる。
【0088】
より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、無機酸化物からなる蒸着層に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、無機酸化物からなる蒸着層へのクラックなどの発生を回避することができる。上記ラミネート用接着剤からなるラミネート接着剤層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
【0089】
これらの接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型などのいずれの組成物形態でもよく、その性状はフィルム、シート状、粉末状、固形状などのいずれでもよい。更に、反応機構として、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶着型、熱圧型などのいずれでもよい。
【0090】
ラミネート用接着剤の使用量には特に限定はないが、一般には、0.1〜10g/m2(乾燥状態)である。上記ラミネート用接着剤は、ロールコート、グラビアコート、キスコートその他のコート法や印刷法によって行うことができる。
【0091】
(9)アンカーコート層
本発明では、前記ガスバリア層、プラズマ処理層、印刷層の上にヒートシールを押出し形成によって積層することができる。ヒートシール層を押出し形成する際には、前記ガスバリア層、プラズマ処理層、印刷層の上にアンカーコート剤を介してヒートシール層を形成することが好ましい。使用するアンカーコート剤としては、例えば、アルキルチタネート等の有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリプタジエン系、その他等の水性ないし油性の各種のアンカーコーティング剤が例示できる。より好ましくは、例えば、アルキルチタネートなどの有機チタン系アンカーコート剤、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、無機酸化物からなる蒸着膜に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、無機酸化物からなる蒸着膜へのクラックなどの発生を回避することができ、ガスバリア層、プラズマ処理層または印刷層とヒートシール層との密接着性を向上させ、無機酸化物からなる蒸着膜へのクラックの発生を防止し、ラミネート強度を向上させることができる。
【0092】
本発明においては、アンカーコート剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥して、本発明にかかるアンカーコート剤によるアンカーコート層を形成することができる。アンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)位が望ましい。また、上記アンカーコート剤からなるアンカーコート層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
【0093】
(10)積層材
本発明の積層材は、前記過酸化水素バリア性フィルムの前記過酸化水素保護膜を最外層とし、少なくとも最内層にヒートシール性樹脂層を積層したことを特徴とする積層材を提供するものである。ヒートシール性樹脂層は、ラミネート接着剤を介して積層されたものでもよく、アンカーコート剤を介して溶融押し出しによって積層されたものでもよい。すなわち、本発明の積層材は、上記過酸化水素バリア性フィルムを耐過酸化水素保護膜基材およびバリア性基材等として使用し、これと他のプラスチック基材、特殊プラスチック基材紙基材、セロハン、織布ないし不織布、ガラス板、その他等の種々の基材の1種ないし2種以上とを任意に積層してなる、種々の形態からなる積層材である。
【0094】
本発明の積層材は、本発明に係る過酸化水素バリア性フィルムを構成する各層間に所望の基材を任意に積層して種々の形態からなる積層材を製造し得るものであり、その使用目的、使用形態、用途、その他等によって、他の基材を任意に積層して、種々の形態の積層材を設計して製造することができるものである。上記のような積層を行う際に、積層面の基材面には、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、その他等の公知の前処理を任意に行うことができるものである。
【0095】
積層材を構成するプラスチック基材としては、機械的、物理的、化学的、その他等において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靱であり、かつ耐熱性を有する樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、その他等の強靱な樹脂のフィルムないしシート、その他等を使用することができる。上記樹脂のフィルムないしシートとしては、未延伸フィルム、あるいは、一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができる。なお、フィルムの厚さとしては、5μmないし100μm位、好ましくは、10μmないし50μm位が望ましい。なお、上記のような基材には、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄を通常の印刷法で表刷り印刷あるいは裏刷り印刷等が施されていてもよい。
【0096】
更に、特殊プラスチック基材として、水蒸気、水等のバリアー性を有する低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等の樹脂のフィルムないしシート、あるいは、酸素、水蒸気等に対するバリアー性を有するポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ナイロンMXD6樹脂等の樹脂のフィルムないしシート、樹脂に顔料等の着色剤を、その他、所望の添加剤を加えて混練してフィルム化してなる遮光性を有する各種の着色樹脂のフィルムないしシート等の1以上を単独で、または前記プラスチック基材と共に使用することができる。上記フィルム基材は、通常、5μmないし300μm位、更には、10μmないし100μm位が望ましい。
【0097】
本発明の積層材を構成する基材としては、紙基材であってもよい。紙基材としては、賦型性、耐屈曲性、剛性等を持たせるものであり、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙等の紙基材、その他等を使用することができる。紙基材は、坪量約80〜600g/m2位のもの、好ましくは、坪量約100〜450g/m2位のものを使用することが望ましい。なお、本発明においては、積層材を構成する基材として、紙基材とプラスチック基材、特殊プラスチック基材とを併用し、またはこれらの複合体、合成紙などを基材として使用することもできる。
【0098】
なお、積層材が各種の用途に適用される場合、物理的にも化学的にも過酷な条件におかれることから、上記の積層材に厳しい条件が要求され、変形防止強度、落下衝撃強度、耐ピンホール性、耐熱性、密封性、品質保全性、作業性、衛生性、その他等の種々の条件が要求される場合がある。物理的、化学的強度に優れる積層材としては、上記のような諸条件を充足する材料を任意に選択して使用することができ、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース、その他等の公知の樹脂から任意に選択して、その1種又は2種以上を単独で、または上記プラスチック基材と併用することができる。上記樹脂は、未延伸、一軸ないし二軸方向に延伸してフィルムやシートにされたもののほか、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等の方法で積層するものであってもよい。その厚さは、任意であるが、数μmから300μm位の範囲から選択して使用することができる。
【0099】
本発明の積層材は、上記基材の積層を行う際に、必要ならば、コロナ処理、オゾン処理等の前処理をフィルムに施すことができ、また、例えば、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジェン系、有機チタン系等のアンカーコート剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他等のラミネート用接着剤等の公知の前処理、アンカーコート剤、接着剤等を使用することができる。
【0100】
なお、本発明においては、上記の積層材を構成するいずれかの層間に所望の印刷模様層を形成してもよい。このような印刷層は、上記過酸化水素バリア性フィルムの高で記載したと同様の方法で形成することができる。
【0101】
上記に挙げた例は、本発明に係る積層材についての例示であり、本発明はこれによって限定されるものではなく、更に、その使用目的、充填包装する内容物、流通経路、販売形態、用途等によって、他の基材を任意に積層して、種々の形態の積層材を設計して製造することができる。
【0102】
本発明の積層材は、前記過酸化水素バリア性フィルムを使用するものであり、該フィルムは、後記する実施例で評価した場合に、過酸化水素残留濃度が5ppm以下であるから、該フィルムにヒートシール性樹脂層を積層した積層材も、過酸化水素残留濃度が5ppm以下となる。
【0103】
本発明の積層材は、包装用材料、包装用容器、光学部材、太陽電池モジュール用保護シート、有機ELディスプレイ用保護フィルム、フィルム液晶ディスプレイ用保護フィルム、ポリマーバッテリー用包材、または、アルミ包装材料、その他等の種々の用途に適用することができる。
【0104】
(11)包装用容器
本発明では、上記積層材を使用して包装用容器を製造することができる。
【0105】
例えば包装用容器が包装袋の場合、上記積層材を使用し、その最内層のヒートシール性樹脂層の面を対向させて、それを折り重ねるか、或いはその二枚を重ね合わせ、更にその周辺端部をヒートシールしてシール部を設けて袋体を構成することができる。
【0106】
その製袋方法としては、上記の積層材を、その内層の面を対向させて折り曲げるか、あるいはその二枚を重ね合わせ、更にその外周の周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールして、本発明にかかる種々の形態の包装用容器を製造することができる。
【0107】
その他、例えば、自立性包装袋(スタンディングパウチ)等も製造することが可能であり、更に、本発明においては、上記の積層材を使用してチューブ容器等も製造することができる。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。なお、本発明においては、上記のような包装用容器には、例えば、ワンピースタイプ、ツウーピースタイプ、その他等の注出口、あるいは開閉用ジッパー等を任意に取り付けることができる。
【0108】
包装用容器として、紙基材を含む液体充填用紙容器の場合、例えば、積層材として、紙基材を積層した積層材を製造し、これから所望の紙容器を製造するブランク板を製造し、しかる後該ブランク板を使用して胴部、底部、頭部等を製函して、例えば、ブリックタイプ、フラットタイプあるいはゲーベルトップタイプの液体用紙容器等を製造することができる。また、その形状は、角形容器、丸形等の円筒状の紙缶等のいずれのものでも製造することができる。
【0109】
(12)液体用小袋および液体小袋包装体
本発明では、上記積層材を使用して液体用小袋とすることができる。積層材としては、少なくとも過酸化水素バリア性フィルムのガスバリア層の上層にヒートシール性樹脂層をラミネート接着剤を介して、またはアンカーコート層を介して溶融押し出しにより積層してなる積層材であればよく、更に他の基材を積層したものであってもよい。
【0110】
液体用小袋は、上記積層材を、そのヒートシール性樹脂層を対向させて重ね合わせその外周周辺の端部をヒートシールしてヒートシール部を設けて袋体を構成したものである。過酸化水素保護特性に優れるため、たとえ基材フィルムがポリアミド系樹脂フィルムなどの酸に対する抵抗性が低いフィルムの場合でも、過酸化水素による無菌処理後に白化や過酸化水素の残留が少なく、特に無機充填用に好適に使用することができる。
【0111】
本発明の液体用小袋は、例えば、前記積層材の内層のヒートシール性樹脂層の面を対向させて、それを折り重ねるか、或いはその二枚を重ね合わせ、更にその周辺端部をヒートシールしてシール部を設けて製造することができる。より具体的には、上記の積層材を、その内層の面を対向させて折り曲げるか、あるいはその二枚を重ね合わせ、更にその外周の周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールして、本発明にかかる種々の形態の液体用小袋を製造することができる。また、例えば、ピロー包装形態、ガセット包装形態、スタンディング(自立性)パウチ包装形態、その他等の内容物に合った包装用袋形態等も製造することが可能である。
【0112】
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。なお、本発明においては、上記のような液体用小袋には、例えば、ワンピースタイプ、ツウーピースタイプ、その他等の注出口、あるいは開閉用ジッパー等を任意に取り付けることができる。また、その形状は、角形容器、丸形等の円筒状等のいずれのものでも製造することができる。
【0113】
本発明では、上記液体用小袋に、その開口部から液体または粘調体を充填密封してなることを特徴とする液体小袋包装体を製造することができる。本発明の液体小袋包装体は、上記液体用小袋に醤油、ソース、出し汁、香辛料、料理用酒類、その他等の液体ないし粘調体からなる調味料類、スープ類、果汁類、その他等の各種の液状ないし粘体状の飲食物を充填密封したものである。内容物としては、上記のような飲食品の他に、例えば、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品、その他等の種々の物品の充填密封に使用することができる。
【0114】
本発明の液体小袋包装体は、上記積層材を使用して成型されたものであり、上記積層材が耐付き指し性などの機械的強度に優れるポリアミドであり、無機酸化物の蒸着膜を積層することでガスバリア性と柔軟性とが確保され、更に過酸化水素保護膜の積層によってガスバリア性と過酸化水素保護特性とが確保されるため、得られる液体小袋包装体は、内容物の保存性に優れ、無菌充填方式での充填に好適に使用でき、かつ輸送時に発生する付き指しやピンホールに対して堅牢であり、その貯蔵・保管ないし流通中に内容物の風味および食味等を損なうことが少ない。
【0115】
(13)殺菌方法
本発明の積層材は、過酸化水素保護膜を有するため、過酸化水素による殺菌を行う用途に好適に使用することができる。例えば、走行する積層材を使用し、これを製袋して包装用袋を製造しながらその包装用袋内に内容物を充填し、しかる後、その内容物を充填した充填口をシールして包装製品を製造する殺菌充填包装方式において、殺菌充填包装機内の積層材を供給する上流側で、積層材を予備加熱し、次いで、過酸化水素水を加熱気化させた後に凝縮させて生成した過酸化水素ミストを上記の予備加熱した積層材の表面に供給して上記の積層材の表面に過酸化水素ミストを接触させ、しかる後、上記の過酸化水素ミストが接触した積層材を乾燥させて殺菌処理を行い、次いで、殺菌処理した積層材を使用して、殺菌充填包装機内で上記のように製袋、充填、包装等の工程を経て、包装製品を製造することができる。
【0116】
本発明において、上記のようにして製造した包装用容器は、種々の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品、ケミカルカイロ等の雑貨品、その他等の物品の充填包装に使用されるものである。その他、上記液体用小袋の他に、餅を充填包装する小袋、生菓子等を充填包装する軟包装用袋、あるいは、ボイルあるいはレトルト食品等を充填包装する軟包装用袋等の飲食物等を充填包装する包装用容器として有用なものである。
【実施例】
【0117】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0118】
(実施例1)
(1) 基材フィルムとして、厚さ15μmの二軸延伸ナイロン6フィルムを使用し、上記二軸延伸ナイロン6フィルムをプラズマ化学蒸着装置の送り出しロールに装着し、これを繰り出してその2軸延伸ナイロン6フィルムの外面側のコロナ処理面の上に、下記蒸着条件により、膜厚100Åの有機酸化珪素の蒸着膜を形成した。
【0119】
(蒸着条件)
反応ガス混合比;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:4.0:1.0(単位:slm)、
真空チヤンバー内の真空度;5.1Pa(0.03825Torr)、
蒸着チヤンバー内の真空度;7.5Pa(0.05625Torr)、
冷却・電極ドラム供給電力;15kw、
フィルムの搬送速度;150m/min、
蒸着面;コロナ処理面、
次いで、上記厚さ100Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その酸化珪素の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:Slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6.0×10-2mbar(0.045Torr)、処理速度150m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させてプラズマ処理面を形成して、ガスバリアフィルムを製造した。
【0120】
次いで、上記で製造したガスバリアフィルムを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着して上記蒸着処理を繰り出し、そのガスバリアフィルムの二軸延伸ナイロン6フィルムの未コロナ処理面に、マグネトロンスパッタリング装置を使用し、ライン速度600m/minで搬送し、アルゴンガス300sccmを導入し、出力10kWでプラズマ処理を行って、プラズマ処理面を形成し、次いで、そのプラズマ処理面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、下記の蒸着条件により、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
【0121】
(蒸着条件)
蒸着チヤンバー内の真空度;2×10-4mbar(1.5×10-4Torr)、
巻き取りチヤンバー内の真空度;2×10-2mbar(1.5×10-2Torr)、
電子ビーム電力;25kw、
フィルムの搬送速度;600m/min、
次いで、上記で厚さ200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した直後に、その酸化アルミニウムの蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:Slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6.0×10-2mbar(0.045Torr)、処理速度150m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化アルミニウムの蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させ、本発明に係る過酸化水素バリア膜を形成した。
【0122】
(2) 上記で製造した過酸化水素バリア性フィルムを構成する基材フィルムの酸化珪素の蒸着膜およびプラズマ処理を行った面に、通常のグラビアインキ組成物を使用し、グラビア印刷方式により、文字、図形、記号、絵柄、その他等からなる所定の印刷模様を印刷して印刷層を形成した。
【0123】
(3) 上記形成した印刷層の全面に、2液硬化型のポリウレタン系のドライラミネート用接着剤をグラビアロールコート法によりコーティングし、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ4.0g/m2(乾燥状態)のドライラミネート用接着剤層を形成した。次いで、上記で形成したドライラミネート用接着剤層の上に、厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム重ね合わせてドライラミネーション法を利用して積層して、本発明に係る積層材を製造した。
【0124】
(4) 上記で製造した積層材を構成する外面側のアルミ蒸着およびプラズマ処理面に、その10cm2当たり0.05mgの割合で35質量%の過酸化水素水を加熱気化させ、そのミストを吹き付け、次いで、加熱エアーをあてて乾燥し、滅菌処理を施した。
【0125】
(5) 上記の積層材を2枚用意し、その最内層に位置する無延伸ポリプロピレンフィルムの面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の三方をヒートシールして三方シール型の液体小袋を製造し、次いで、その開口部から、例えば、醤油、ソース、その他等の液状ないし粘体状の調味料を充填し、しかる後、その開口部をヒートシールして、本発明にかかる液体小袋包装体を製造した。
【0126】
(比較例1)
(1) 基材フィルムとして、厚さ15μmの二軸延伸ナイロン6フィルムを使用し、上記二軸延伸ナイロン6フィルムをプラズマ化学蒸着装置の送り出しロールに装着し、これを繰り出してその2軸延伸ナイロン6フィルムの外面側のコロナ処理面の上に、下記蒸着条件により、膜厚100Åの有機酸化珪素の蒸着膜を形成した。
【0127】
(蒸着条件)
反応ガス混合比;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:4.0:1.0(単位:slm)、
真空チヤンバー内の真空度;5.1Pa(0.03825Torr)、
蒸着チヤンバー内の真空度;7.5Pa(0.05625Torr)、
冷却・電極ドラム供給電力;15kw、
フィルムの搬送速度;150m/min、
蒸着面;コロナ処理面、
次いで、上記厚さ100Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その一方の酸化珪素の蒸着膜の面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:Slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6.0×10-2mbar(0.045Torr)、処理速度150m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成して、過酸化水素バリア性フィルムを製造した。
【0128】
(2) 上記で製造した過酸化水素バリア性フィルムを構成する基材フィルムの酸化珪素の蒸着膜およびプラズマ処理を行った面に、通常のグラビアインキ組成物を使用し、グラビア印刷方式により、文字、図形、記号、絵柄、その他等からなる所定の印刷模様を印刷して印刷層を形成した。
【0129】
(3) 上記形成した印刷層の全面に、2液硬化型のポリウレタン系のドライラミネート用接着剤をグラビアロールコート法によりコーティングし、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ4.0g/m2(乾燥状態)のドライラミネート用接着剤層を形成した。次いで、上記で形成したドライラミネート用接着剤層の上に、厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム重ね合わせてドライラミネーション法を利用して積層して、本発明に係る積層材を製造した。
【0130】
(4) 上記で製造した積層材を構成する外面側の2軸延伸ナイロン6フィルムの面に、その10cm2当たり0.05mgの割合で35質量%の過酸化水素水を加熱気化させ、そのミストを吹き付け、次いで加熱エアーによって乾燥し、滅菌処理を施した。
【0131】
(5) 上記の積層材を2枚用意し、その最内層に位置する無延伸ポリプロピレンフィルムの面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の三方をヒートシールして三方シール型の液体小袋を製造し、次いで、その開口部から、例えば、醤油、ソース、その他等の液状ないし粘体状の調味料を充填し、しかる後、その開口部をヒートシールして、本発明にかかる液体小袋包装体を製造した。
【0132】
(比較例2)
(1) 基材フィルムとして、厚さ15μmの二軸延伸ナイロン6フィルムを使用し、上記2軸延伸ナイロン6フィルムのコロナ処理面の上に、通常のグラビアインキ組成物を使用し、グラビア印刷方式により、文字、図形、記号、絵柄、その他等からなる所定の印刷模様を印刷して印刷層を形成した。
【0133】
(2) 上記形成した印刷層の全面に、2液硬化型のポリウレタン系のドライラミネート用接着剤をグラビアロールコート法によりコーティングし、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ4.0g/m2(乾燥状態)のドライラミネート用接着剤層を形成した。次いで、上記で形成したドライラミネート用接着剤層の上に、厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム重ね合わせてドライラミネーション法を利用して積層して、本発明に係る積層材を製造した。
【0134】
(3) 上記で製造した積層材を構成する外面側の2軸延伸ナイロン6フィルムの面に、その10cm2当たり0.05mgの割合で35質量%の過酸化水素水を加熱気化させ、そのミストを吹き付け、次いで、加熱エアーをあてて乾燥し、滅菌処理を施した。
【0135】
(4) 上記の積層材を2枚用意し、その最内層に位置する無延伸ポリプロピレンフィルムの面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の三方をヒートシールして三方シール型の液体小袋を製造し、次いで、その開口部から、例えば、醤油、ソース、その他等の液状ないし粘体状の調味料を充填し、しかる後、その開口部をヒートシールして、本発明にかかる液体小袋包装体を製造した。
【0136】
(比較例3)
(1) 基材フィルムとして、厚さ15μmの二軸延伸ナイロン6フィルムを使用し、上記二軸延伸ナイロン6フィルムをプラズマ化学蒸着装置の送り出しロールに装着し、これを繰り出してその2軸延伸ナイロン6フィルムの外面側のコロナ処理面の上に、下記蒸着条件により、膜厚100Åの有機酸化珪素の蒸着膜を形成した。
【0137】
(蒸着条件)
反応ガス混合比;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:4.0:1.0(単位:slm)、
真空チヤンバー内の真空度;5.1Pa(0.03825Torr)、
蒸着チヤンバー内の真空度;7.5Pa(0.05625Torr)、
冷却・電極ドラム供給電力;15kw、
フィルムの搬送速度;150m/min、
蒸着面;コロナ処理面、
次いで、上記厚さ100Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その一方の酸化珪素の蒸着膜の面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:Slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6.0×10-2mbar(0.045Torr)、処理速度150m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成して、ガスバリアフィルムを製造した。
【0138】
次いで、上記で製造したガスバリアフィルムを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着して上記蒸着処理を繰り出し、そのガスバリアフィルムの二軸延伸ナイロン6フィルムの未コロナ処理面に、マグネトロンスパッタリング装置を使用し、ライン速度600m/minで搬送し、アルゴンガス300sccmを導入し、出力10kWでプラズマ処理を行って、プラズマ処理面を形成し、次いで、そのプラズマ処理面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、下記の蒸着条件により、膜厚50Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
【0139】
(蒸着条件)
蒸着チヤンバー内の真空度;1×10-4mbar(7.5×10-7Torr)、
巻き取りチヤンバー内の真空度;2×10-2mbar(1.5×10-2Torr)、
電子ビーム電力;10kw、
フィルムの搬送速度;600m/min、
次いで、上記で厚さ50Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した直後に、その酸化アルミニウムの蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:Slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6.0×10-2mbar(0.045Torr)、処理速度600m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化アルミニウムの蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させ、過酸化水素バリア膜を形成した。
【0140】
(2) 上記で製造した過酸化水素バリア性フィルムを構成する基材フィルムの酸化珪素の蒸着膜およびプラズマ処理を行った面に、通常のグラビアインキ組成物を使用し、グラビア印刷方式により、文字、図形、記号、絵柄、その他等からなる所定の印刷模様を印刷して印刷層を形成した。
【0141】
(3) 上記形成した印刷層の全面に、2液硬化型のポリウレタン系のドライラミネート用接着剤をグラビアロールコート法によりコーティングし、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ4.0g/m2(乾燥状態)のドライラミネート用接着剤層を形成した。次いで、上記で形成したドライラミネート用接着剤層の上に、厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム重ね合わせてドライラミネーション法を利用して積層して、本発明に係る積層材を製造した。
【0142】
(4) 上記で製造した積層材を構成する外面側のアルミ蒸着およびプラズマ処理面に、その10cm2当たり0.05mgの割合で35質量%の過酸化水素水を加熱気化させ、そのミストを吹き付け、次いで、加熱エアーをあてて乾燥し、滅菌処理を施した。
【0143】
(5) 上記の積層材を2枚用意し、その最内層に位置する無延伸ポリプロピレンフィルムの面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の三方をヒートシールして三方シール型の液体小袋を製造し、次いで、その開口部から、例えば、醤油、ソース、その他等の液状ないし粘体状の調味料を充填し、しかる後、その開口部をヒートシールして、本発明にかかる液体小袋包装体を製造した。
【0144】
(比較例4)
(1) 基材フィルムとして、厚さ15μmの二軸延伸ナイロン6フィルムを使用し、上記二軸延伸ナイロン6フィルムをプラズマ化学蒸着装置の送り出しロールに装着し、これを繰り出してその2軸延伸ナイロン6フィルムの外面側のコロナ処理面の上に、下記蒸着条件により、膜厚100Åの有機酸化珪素の蒸着膜を形成した。
【0145】
(蒸着条件)
反応ガス混合比;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:4.0:1.0(単位:slm)、
真空チヤンバー内の真空度;5.1Pa(0.03825Torr)、
蒸着チヤンバー内の真空度;7.5Pa(0.05625Torr)、
冷却・電極ドラム供給電力;15kw、
フィルムの搬送速度;150m/min、
蒸着面;コロナ処理面、
更に、上記膜厚100Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した厚さ15μmの二軸延伸ナイロン6フィルムを、上記と同様にプラズマ化学蒸着装置の送り出しロールに装着し、上記蒸着処理を繰り出して前記2軸延伸ナイロン6フィルムの内面側の未コロナ処理面の上に膜厚100Åの酸化珪素の蒸着膜を形成し、2軸延伸ナイロン6フィルムの両面に酸化珪素の蒸着膜を形成した。
【0146】
次いで、上記厚さ100Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その一方の酸化珪素の蒸着膜の面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:Slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6.0×10-2mbar(0.045Torr)、処理速度150m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成して、本発明に係る過酸化水素バリア性フィルムを製造した。
【0147】
(2) 上記で製造した過酸化水素バリア性フィルムを構成する基材フィルムの酸化珪素の蒸着膜およびプラズマ処理を行った面に、通常のグラビアインキ組成物を使用し、グラビア印刷方式により、文字、図形、記号、絵柄、その他等からなる所定の印刷模様を印刷して印刷層を形成した。
【0148】
(3) 上記形成した印刷層の全面に、2液硬化型のポリウレタン系のドライラミネート用接着剤をグラビアロールコート法によりコーティングし、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ4.0g/m2(乾燥状態)のドライラミネート用接着剤層を形成した。次いで、上記で形成したドライラミネート用接着剤層の上に、厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム重ね合わせてドライラミネーション法を利用して積層して、本発明に係る積層材を製造した。
【0149】
(4) 上記で製造した積層材を構成する外面側の酸化珪素の蒸着膜の面に、その10cm2当たり0.05mgの割合で35質量%の過酸化水素水を加熱気化させ、そのミストを吹き付け、次いで、加熱エアーを分あてて乾燥し、滅菌処理を施した。
【0150】
(5) 上記の積層材を2枚用意し、その最内層に位置する無延伸ポリプロピレンフィルムの面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の三方をヒートシールして三方シール型の液体小袋を製造し、次いで、その開口部から、例えば、醤油、ソース、その他等の液状ないし粘体状の調味料を充填し、しかる後、その開口部をヒートシールして、本発明にかかる液体小袋包装体を製造した。
【0151】
【表1】

(実験例)
実施例1、比較例1〜4で製造した積層材について、下記のデータを測定した。
【0152】
(1) 酸素透過度の測定
温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OX−TRAN2/20)〕にて測定した。
【0153】
(2) 水蒸気透過度の測定
温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パーマトラン(PERMATRAN3/31)〕にて測定した。
【0154】
(3) 残留過酸化水素量の測定
実施例1、比較例1〜4で調製した積層材に、10cm2当たり0.05mgの割合で35質量%の過酸化水素水を加熱気化させそのミストを吹き付け、加熱エアーをあてて乾燥し、滅菌処理を施した。その後、その積層材10cm2を水100mlに浸漬し、その水に溶出した過酸化水素濃度を酸素電極法にて測定した。
【0155】
上記結果を表1に示す。なお、表1において、酸素透過度の単位は、〔cc/m2/day・23℃・90%RH〕であり、水蒸気透過度の単位は、〔g/m2/day・40℃・90%RH〕であり、残存過酸化水素量の単位は〔ppm〕である。
【0156】
(結果)
(1) 実施例1の積層材は、残留過酸化水素濃度が3.0ppmであり、酸化アルミ蒸着膜が過酸化水素保護膜として有用であることが示された。
【0157】
(2) 実施例1と比較例4とを比較すると、共に残留過酸化水素濃度が3.0ppmであり、層構成を比較すると、実施例1では酸化アルミ蒸着膜の膜厚が200Åであり、比較例4では酸化珪素蒸着膜の膜厚が100Åである。酸化アルミ蒸着膜はフィルム搬送速度600m/minで蒸着できるが、酸化珪素蒸着膜は150m/minのフィルム搬送速度であるから、同等の過酸化水素保護特性を有する過酸化水素バリア性フィルムを生産するために、実施例1の生産効率は比較例4の生産効率より4倍も優れることが示された。
【0158】
(3) 実施例1と比較例4のフィルムは、同等の過酸化水素保護特性を発揮するが、実施例1の過酸化水素保護膜(厚さ200Åの酸化アルミ蒸着膜)は、比較例4の過酸化水素保護膜(膜厚100Åの酸化珪素蒸着膜)と比較して、酸素透過度および水蒸気透過度が低く、ガスバリア性にも優れることが示された。
【0159】
(4) 実施例1と比較例3とを比較すると、共に物理気相酸化法による無機酸化物の蒸着膜であるが、厚さが50Å(比較例3)では残留過酸化水素濃度が47.2ppmであるのに対し、200Å(実施例2)では3.0ppmとなり、蒸着膜の厚さによって過酸化水素保護特性に差が生じることが示された。
【0160】
(5) 比較例1と比較例2とから、無機酸化物の蒸着膜が存在しない場合には、ポリアミド系樹脂フィルムからなる基材フィルムは過酸化水素の残留濃度が50.0ppmと極めて高値であることが示された。なお、比較例1は、酸化珪酸の蒸着膜をガスバリア層として積層するため、この積層体のガスバリア性は、酸素透過度および水蒸気透過度の双方において、比較例2の積層体よりも優れていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明に係る過酸化水素バリア性フィルムは、過酸化水素保護特性、ガスバリア性に優れ、かつ高生産性である。特に、無菌充填方式で使用する包装用材料として好適に使用することができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】図1は、本発明で使用する過酸化水素バリア性フィルムを説明する横断面図である(図1の上層から、過酸化水素保護膜/基材/ガスバリア)。
【図2】図2は、本発明で使用する過酸化水素バリア性フィルムを説明する横断面図である(図2の上層から、プラズマ処理層/過酸化水素保護膜/プラズマ処理層/基材/ガスバリア)。
【図3】図3は、本発明で使用する過酸化水素バリア性フィルムを説明する横断面図である(図3の上層から、プラズマ処理層/過酸化水素保護膜/プラズマ処理層/基材/ガスバリア/プラズマ処理層/過酸化水素保護膜/プラズマ処理層)。
【図4】図4は、低温プラズマ化学蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【図5】図5は、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【符号の説明】
【0163】
10・・・基材フィルム、
20・・・過酸化水素保護膜、
30・・・ガスバリア層、
40・・・プラズマ処理層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの片面または両面にガスバリア層を設け、さらに該基材フィルムの片面または両面に過酸化水素保護膜を設けた過酸化水素バリア性フィルムであって、
前記過酸化水素保護膜は、物理気相成長法によって形成された膜厚100Å〜1μmの無機酸化物の蒸着膜である、過酸化水素バリア性フィルム。
【請求項2】
前記基材フィルムが、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム、2軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム、または、2軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムからなることを特徴とする、上記の請求項1記載の過酸化水素バリア性フィルム。
【請求項3】
前記過酸化水素保護膜が酸化アルミニウムの蒸着膜であり、前記ガスバリア層は、酸化珪素の蒸着膜であることを特徴とする、請求項1または2記載の過酸化水素バリア性フィルム。
【請求項4】
前記過酸化水素バリア性フィルムは、過酸化水素残留濃度が5ppm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の過酸化水素バリア性フィルム。
【請求項5】
基材フィルムの一の面にガスバリア層が設けられ、他の面に過酸化水素保護膜が設けられた過酸化水素バリア性フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルムの一の面、または前記ガスバリア層を形成した基材フィルムの他の面に、物理気相成長法によってフィルム搬送速度300〜1000m/minで無機酸化物を厚さ100Å〜1μmに蒸着して前記過酸化水素保護膜を形成する工程を含む、過酸化水素バリア性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記無機酸化物の蒸着が、酸化アルミニウムの蒸着であることを特徴とする、請求項5記載の過酸化水素バリア性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ガスバリア膜が、化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜からなることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の過酸化水素バリア性フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記無機酸化物の蒸着膜が、酸化珪素の蒸着膜である、請求項7記載の過酸化水素バリア性フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の過酸化水素バリア性フィルム、または請求項5〜8のいずれかに記載の製造方法で製造された過酸化水素バリア性フィルムの、前記過酸化水素保護膜を最外層とし、最内層に、ヒートシール性樹脂層を積層したことを特徴とする積層材。
【請求項10】
請求項9記載の積層材を、そのヒートシール性樹脂層面を対向させて重ね合わせその外周周辺の端部をヒートシールしてヒートシール部を設けて袋体を構成したものである、液体用小袋。
【請求項11】
無機充填用に使用される、請求項10記載の液体用小袋。
【請求項12】
請求項10または請求項11記載の液体用小袋に、その開口部から液体または粘調体を充填密封してなることを特徴とする液体小袋包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−265252(P2008−265252A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115051(P2007−115051)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】