説明

過電圧保護回路

【課題】 入力部にサージ対策を施した電源装置の過電圧保護回路において、サージ電流の大きさに影響されることなく、適正なスイッチ素子及びヒューズを使用した過電圧保護回路を実現する。
【解決手段】 電源装置の過電圧保護回路に関し、更に詳しくは、入力部にサージ対策を施した電源装置の過電圧保護回路に関するものである。
入力ラインに設けられ、所定の電流が流れると入力ラインを遮断する第1の過電流遮断手段と、入力ライン間に接続され、所定の制限電圧以上になると導通電流を流して一定の電圧に制限する過電圧制限手段と、第1の過電流遮断手段及び過電圧制限手段の後段の入力ラインに設けられ、所定の電流が流れると入力ラインを遮断する第2の過電流遮断手段と、入力電圧と出力電圧の少なくともいずれか一方の過電圧を検出する過電圧検出手段と、第2の過電流遮断手段の後段の入力ライン間に接続され、過電圧検出手段の検出電圧に応じて開閉する開閉手段とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置の過電圧保護回路に関し、更に詳しくは、入力部にサージ対策を施した電源装置の過電圧保護回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電源装置の過電圧保護回路においては、出力に定格電圧を上回る過電圧が発生した場合に、入力ライン間を短絡状態にし、入力端子に接続されたヒューズを溶断することにより、出力を停止させるものがある。
【0003】
図6は、従来の過電圧保護回路の構成例を示す図である。
DC/DCコンバータ回路1において、入力端子IN+に接続されたヒューズF1と、入力ライン間に接続され、サージ電圧を一定電圧以下にクランプするサージ防護素子2と、DC/DCコンバータ回路1の出力電圧を入力し、過電圧の発生を検知して過電圧検知信号を出力する過電圧検出回路3と、過電圧検出回路3が出力する過電圧検知信号によりスイッチをON/OFFするスイッチ素子SW1から構成されている。
【0004】
DC/DCコンバータ回路1が故障し、出力に定格電圧を上回る過電圧が発生すると、過電圧検出回路3がこれを検出し、スイッチ素子SW1に過電圧検知信号を送る。スイッチ素子SW1は、この信号を受け取ると、スイッチがONして入力ライン間を短絡状態とする。その結果、大きな短絡電流がIN+端子からヒューズF1、スイッチ素子SW1、IN−端子の経路で流れることにより、ヒューズF1は溶断し、DC/DCコンバータ回路1の出力が停止することで、負荷は過電圧から保護される。
ここで、サージ防護素子2に素子の耐量を上回るサージ電圧が印加された場合には、サージ防護素子2が短絡故障する場合があるので、ヒューズF1はサージ防護素子2の上流側に設けられている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−102348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
入力ライン間にサージ電圧が印加されると、サージ電流は入力端子IN+からヒューズF1、サージ防護素子2、入力端子IN―の経路で流れる。この際、ヒューズF1が溶断してしまってはサージ対策を施した電源装置とはならないので、電源装置の仕様で定めたサージ電圧以下のサージ電圧が印加された場合は、ヒューズF1は溶断してはいけない。ヒューズF1のサージ耐量は、ジュール積分値Itで評価される。したがって、ヒューズF1のItは、サージ電圧が印加された際に流れるサージ電流のItよりも大きくなければならない。
【0007】
一方、出力に過電圧が検出された際には、スイッチ素子SW1のスイッチがONして、入力ラインを短絡することにより、大きな短絡電流が流れるが、このとき確実にヒューズF1を溶断させるためには、スイッチ素子SW1はヒューズF1が溶断する前に壊れてはいけない。
これらより、Itに関し、全ての時間領域で次の関係が成立している必要がある。
[サージ電流のIt]<[ヒューズF1のIt]<[スイッチ素子SW1のIt]
【0008】
一般にサージ電流のItは、かなり大きな値となるため、この関係を満足するスイッチ素子SW1は大形となってしまい、電源装置の小形化の妨げるとともに、コストも高くなるという問題点があった。
また、[サージ電流のIt]<[ヒューズF1のIt]の関係を満足するサージ耐量の大きなヒューズF1は、定格電流も大きくなるため、入力短絡といった極端に大きな入力電流が流れる故障に対しては、ヒューズが溶断するが、例えば、定格電流の2〜3倍程度の入力電流が流れる故障が発生しても、ヒューズは溶断せず、保護が働かないという問題があり、この傾向は、定格入力電流の小さい小形電源ほど顕著な問題となっていた。
【0009】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、入力部にサージ対策を施した電源装置の過電圧保護回路において、サージ電流の大きさに影響されることなく、適正なスイッチ素子及びヒューズを使用した過電圧保護回路を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を達成するために、本発明は次のとおりの構成になっている。
(1)電源装置の過電圧保護回路において、
入力ラインに設けられ、所定の電流が流れると入力ラインを遮断する第1の過電流遮断手段と、
入力ライン間に接続され、所定の制限電圧以上になると導通電流を流して一定の電圧に制限する過電圧制限手段と、
前記第1の過電流遮断手段及び前記過電圧制限手段の後段の入力ラインに設けられ、所定の電流が流れると入力ラインを遮断する第2の過電流遮断手段と、
入力電圧と出力電圧の少なくともいずれか一方の過電圧を検出する過電圧検出手段と、
前記第2の過電流遮断手段の後段の入力ライン間に接続され、前記過電圧検出手段の検出電圧に応じて開閉する開閉手段と、
を有することを特徴とする過電圧保護回路。
【0011】
(2)前記過電圧検出手段は、前記検出電圧が閾値に達しているかいないかを検出し、前記開閉手段は、前記検出電圧が閾値以上になると閉じることを特徴とする(1)記載の過電圧保護回路。
【0012】
(3)前記過電圧検出手段にツェナーダイオードを用い、ツェナー電圧を前記検出電圧の閾値とすることを特徴とする(1)又は(2)記載の過電圧保護回路。
【0013】
(4)前記開閉手段にサイリスタを用い、前記過電圧検出手段が入力電圧と出力電圧の少なくともいずれか一方の過電圧を検出した際にサイリスタのゲートにゲート電流を与えることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の過電圧保護回路。
【0014】
(5)前記開閉手段が閉状態のとき、前記第2の過電流遮断手段は遮断状態となり、前記第1の過電流遮断手段は遮断状態とならないことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の過電圧保護回路。
【0015】
(6)前記第1及び第2の過電流遮断手段はヒューズであり、第2の過電流遮断手段は第1の過電流遮断手段よりも小容量であることを特徴とする(1)乃至(5)いずれかに記載の過電圧保護回路。
【0016】
(7)前記過電圧制限手段はバリスタであることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の過電圧保護回路。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば次のような効果がある。
サージ電流の大きさに影響されることなく、小形のスイッチ素子を使用することができるので、実装面積及び部品コストを削減することができる。
また、ヒューズも最適化できるので、過電圧時のみならず、過電流時においても適正にヒューズを溶断して回路を安全に停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示す構成図である。前出の図と同一のものは同一符号を付ける。
DC/DCコンバータ回路1において、入力端子IN+に接続された第1の過電流遮断手段であるヒューズF1と、入力ライン間に接続され、サージ電圧を一定電圧以下にクランプする過電圧制限手段であるバリスタD1と、ヒューズF1及びバリスタD1の後段に接続された第2の過電流遮断手段であるヒューズF2と、DC/DCコンバータ回路1の出力電圧を入力し、過電圧の発生を検知する過電圧検出手段であるツェナーダイオードD2及び抵抗R1と、出力電圧が過電圧時に入力ライン間を短絡する開閉手段であるサイリスタD3から構成されている。
なお、抵抗R1は、ツェナーダイオードD2のリーク電流によりサイリスタD3が誤動作するのを防止するためのブリーダ抵抗である。
また、DC/DCコンバータ回路1の入出力には、それぞれ入出力電圧を平滑するための平滑コンデンサC1,C2を設けている。
【0019】
例えば、電源装置の仕様として、正常運転時において、入力端子IN+とIN−間に24VDCが印加され、VccとGND間に5VDCが出力されるものとし、VccとGND間に過電圧が発生した場合には、7VDCを超えないようにDC/DCコンバータ回路1を停止させるものとする。このため、ツェナーダイオードD2のツェナー電圧は6.8Vが選定される。
【0020】
DC/DCコンバータ回路1の故障等により、出力電圧が上昇し、6.8Vに達すると、ツェナーダイオードD2が導通し、サイリスタD3のゲートにゲート電流が流れ、サイリスタD3のアノードとカソード間が導通状態となり、入力ライン間を短絡状態とする。その結果、大きな短絡電流がIN+端子からヒューズF1、ヒューズF2、サイリスタD3、IN−端子の経路で流れることにより、ヒューズF2が溶断し、DC/DCコンバータ回路1が停止することで、負荷は過電圧から保護される。
【0021】
一方、入力ライン間にサージ電圧が印加されると、サージ電流は入力端子IN+からヒューズF1、バリスタD1、入力端子IN―の経路で流れ、ヒューズF2へは流れない。
よって、ヒューズF1は、電源装置の仕様で定めたサージ電圧以下のサージ電圧が印加された場合にも溶断しないサージ耐量の大きなものを使用し、ヒューズF2及びサイリスタD3については、サージ耐量に影響されることなく、出力電圧が過電圧時に溶断するような適正なヒューズF2及びサイリスタD3を使用することができる。これにより、電源装置の小型化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0022】
また、[サージ電流のIt]<[ヒューズF1のIt]の関係を満足するサージ耐量の大きなヒューズF1は、定格電流も大きくなるため、入力短絡といった極端に大きな入力電流が流れる故障に対しては、ヒューズF1が溶断するが、定格電流の2〜3倍程度の入力電流が流れる故障が発生しても、ヒューズF1は溶断せず、保護が働かない場合があるが、ヒューズF2を追加したことにより、ヒューズF2が溶断してDC/DCコンバータ回路1を安全に停止させることができる。
【0023】
図2は本発明の他の構成例を示した図である。突入電流の影響を排除してより感度の高いヒューズF2を使用する場合の例を示す。
電源投入時に、入力平滑コンデンサC1へ突入電流が流れるので、図1の場合、ヒューズF2は、この突入電流に耐えられるものでなければならない。
図2で、入力平滑コンデンサC1をヒューズF2より入力端子側に接続することにより、ヒューズF2には突入電流が流れなくなるので、ヒューズF2の定格電流は、DC/DCコンバータ回路1の最大入力電流まで下げることができ、速断型ヒューズも使用することができる。
【0024】
図3は本発明の他の構成例を示した図である。絶縁形のDC/DCコンバータに適用する場合の例を示す。
出力電圧の過電圧をDC/DCコンバータ回路1の2次側のツェナーダイオードD2で検出し、検出信号をフォトカプラPC1により1次側に伝達している。
【0025】
図4は本発明の他の構成例を示した図である。絶縁形のAC/DCコンバータに適用する場合の例を示す。
図3の絶縁形DC/DCコンバータの入力段に整流ブリッジD4を追加したものである。
【0026】
図5は本発明の他の構成例を示した図である。入力過電圧保護を追加する場合の例を示す。
サイリスタD3のアノードとゲート間にツェナーダイオードD4を追加したものであり、例えば、電源装置の定格入力電圧が12VDCの場合、ツェナーダイオードD4のツェナー電圧を20V程度に設定しておけば、誤って24VDCを入力された場合でも、ツェナーダイオードD4が導通してサイリスタD3にゲート電流が流れ、サイリスタD3が導通してヒューズF2が溶断してDC/DCコンバータ回路1は停止して保護が働く。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の他の構成例を示した図である。
【図3】本発明の他の構成例を示した図である。
【図4】本発明の他の構成例を示した図である。
【図5】本発明の他の構成例を示した図である。
【図6】従来の過電圧保護回路の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
F1 第1の過電流遮断手段
F2 第2の過電流遮断手段
D1 過電圧制限手段
D2 過電圧検出手段
D3 開閉手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置の過電圧保護回路において、
入力ラインに設けられ、所定の電流が流れると入力ラインを遮断する第1の過電流遮断手段と、
入力ライン間に接続され、所定の制限電圧以上になると導通電流を流して一定の電圧に制限する過電圧制限手段と、
前記第1の過電流遮断手段及び前記過電圧制限手段の後段の入力ラインに設けられ、所定の電流が流れると入力ラインを遮断する第2の過電流遮断手段と、
入力電圧と出力電圧の少なくともいずれか一方の過電圧を検出する過電圧検出手段と、
前記第2の過電流遮断手段の後段の入力ライン間に接続され、前記過電圧検出手段の検出電圧に応じて開閉する開閉手段と、
を有することを特徴とする過電圧保護回路。
【請求項2】
前記過電圧検出手段は、前記検出電圧が閾値に達しているかいないかを検出し、前記開閉手段は、前記検出電圧が閾値以上になると閉じることを特徴とする請求項1記載の過電圧保護回路。
【請求項3】
前記過電圧検出手段にツェナーダイオードを用い、ツェナー電圧を前記検出電圧の閾値とすることを特徴とする請求項1又は2記載の過電圧保護回路。
【請求項4】
前記開閉手段にサイリスタを用い、前記過電圧検出手段が入力電圧と出力電圧の少なくともいずれか一方の過電圧を検出した際にサイリスタのゲートにゲート電流を与えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の過電圧保護回路。
【請求項5】
前記開閉手段が閉状態のとき、前記第2の過電流遮断手段は遮断状態となり、前記第1の過電流遮断手段は遮断状態とならないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の過電圧保護回路。
【請求項6】
前記第1及び第2の過電流遮断手段はヒューズであり、第2の過電流遮断手段は第1の過電流遮断手段よりも小容量であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の過電圧保護回路。
【請求項7】
前記過電圧制限手段はバリスタであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の過電圧保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−43822(P2007−43822A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225213(P2005−225213)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】