過電流保護装置及び過電流保護システム
【課題】同一の電源に接続された複数の過電流保護装置どうしで、リトライ動作を実行するタイミングに時間差を持たせることが可能な過電流保護装置、及び過電流保護システムを提供する。
【解決手段】IC回路51-1のFET(Q1)をオンとした際に、バッテリ電圧VBAが閾値電圧以下となった場合には、各IC回路のFET(Q1)を全てオフとし、更に、FET(Q1)のオンからバッテリ電圧VBAが閾値電圧以下となるまでの時間を計時する。この時間が400μsec未満であれば、カウント値Nをインクリメントする。その後、ランダムに設定された待機時間Tpが経過した後、再度FET(Q1)をオンとする動作を繰り返し、カウント値Nが7に達した時点で、IC回路51-1のFET(Q1)をオフ状態に保持する。従って、デッドショートの発生している負荷駆動用の回路のみを確実に停止させ、それ以外の負荷駆動用の回路の駆動を継続させることができる。
【解決手段】IC回路51-1のFET(Q1)をオンとした際に、バッテリ電圧VBAが閾値電圧以下となった場合には、各IC回路のFET(Q1)を全てオフとし、更に、FET(Q1)のオンからバッテリ電圧VBAが閾値電圧以下となるまでの時間を計時する。この時間が400μsec未満であれば、カウント値Nをインクリメントする。その後、ランダムに設定された待機時間Tpが経過した後、再度FET(Q1)をオンとする動作を繰り返し、カウント値Nが7に達した時点で、IC回路51-1のFET(Q1)をオフ状態に保持する。従って、デッドショートの発生している負荷駆動用の回路のみを確実に停止させ、それ以外の負荷駆動用の回路の駆動を継続させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数系統設けられ、負荷、電子スイッチ、電線からなる負荷駆動用の回路に過電流が流れた際に、過電流発生源となる負荷駆動用の回路の電子スイッチを遮断して該負荷駆動用の回路に設けられる電子スイッチ、及び電線を保護する過電流保護装置、及び過電流保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されるランプやモータ等の負荷は、電子スイッチ(例えば、MOSFET等)を介してバッテリに接続されており、電子スイッチのオン、オフを切り替えることによりその駆動、停止が制御される。また、負荷にショート故障等が発生して負荷駆動用の回路に過電流が流れた場合には、負荷、及び接続用のハーネスが発熱により損傷することがあるので、従来より、過電流保護装置を搭載し、負荷駆動用の回路に過電流が発生した場合にはいち早く電子スイッチを遮断して、回路に設けられる電子スイッチ、及び電線を過電流から保護するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生した場合には、配線のインピーダンスに起因する逆起電力が発生して電源側の電圧が急激に低下するので、負荷電流と基準電流との比較結果に基づいて過電流の発生を検出する方式では、電源電圧がオペアンプの動作範囲電圧以下に低下した場合に過電流検出回路自体が機能しなくなり、電子スイッチを正常に作動させることができなくなる場合がある。
【0004】
そこで、特許文献2に記載されているように、逆起電力の発生により電源電圧が予め設定した下限値を下回った場合に、この電源に接続されている複数の負荷駆動用の回路の各電子スイッチを即時に遮断すると共に、所定時間経過後に再度各電子スイッチをオンとするリトライ動作を実行する手法が提案されている。この手法では、電圧低下の原因がデッドショート以外である場合には、リトライ動作の実行により、電源電圧が定常状態に復帰するので、そのまま電子スイッチをオン状態に維持することができ、他方、いずれかの回路でデッドショートが発生している場合には、リトライ動作の実行によりデッドショートの発生原因となる回路の電子スイッチをオフ状態にラッチすることができるので、電子スイッチ、及び電線を過熱から保護することができる。
【0005】
また、リトライ動作の実行時には、各電子スイッチをオンとするタイミングがそれぞれ時間差を持つように(各電子スイッチが同時にオンとならないように)制御して、各負荷駆動用の回路に流れる突入電流が重畳することを回避することが示されている。つまり、リトライ動作の実行時には、各電子スイッチを同時にオンとするのではなく、時間差を持たせてオンとすることにより、デッドショートが発生した回路を特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−48498号公報
【特許文献2】特開2009−231969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1に記載された従来例では、デッドショート発生時のように、電源電圧が著しく低下してオペアンプが正常に作動しなくなった場合について考慮されていない。
【0008】
また、特許文献2に記載された従来例では、一つの過電流保護装置を用いて、複数の負荷駆動用の回路の電子スイッチを制御し、且つ過電流発生時に各回路の電子スイッチを遮断して回路に設けられた電子スイッチ及びこれに接続される電線を保護する構成であるので、リトライ動作の実行時において各電子スイッチをオンとするタイミングに時間差を持たせることができる。従って、デッドショートが発生した回路を容易に判別できる。
【0009】
ところが、昨今において、1〜2個の負荷駆動用の回路に対して1つの過電流保護装置を設け、各過電流保護装置毎に個別に過電流の発生を検出して過電流保護を行う回路が多く用いられるようになっており、このような場合には、リトライ動作を実行する際に各回路の電子スイッチをオンとするタイミングに時間差を持たせることが容易でない。
【0010】
このため、電源電圧の低下が各過電流保護装置で同時に検出されて各回路に設けられた電子スイッチをオフとし、その後リトライ動作が実行される場合に、各電子スイッチが同一のタイミングで(時間差を持たずに)オンとされる場合があり、このような場合には、電子スイッチのオンと同時に逆起電力が発生した場合に、どの回路が原因であるかを特定することができないという問題が発生していた。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、同一の電源に接続された複数の過電流保護装置どうしで、リトライ動作を実行するタイミングに時間差を持たせることが可能な過電流保護装置、及び過電流保護システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の過電流保護装置は、直流電源と、電子スイッチ、電線、及び負荷を有する負荷駆動用の回路を過電流から保護する過電流保護装置において、前記直流電源の出力電圧(VBA)を検出する電圧検出手段と、前記電子スイッチをオンとした後の経過時間を計時する計時手段と、前記直流電源の出力電圧が予め設定した閾値電圧以下に低下した場合に、前記電子スイッチをオフとし、所定の待機時間が経過した後に、該電子スイッチを再度オンとするスイッチ制御手段と、前記出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して、前記電子スイッチがオフとされた際に、前記所定の待機時間を、ランダムに決定する待機時間決定手段と、前記電子スイッチをオンとしてから、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧に低下するまでの所要時間が予め設定した閾値時間(例えば、400μsec)以下である場合に、この発生回数をカウントするカウント手段と、を有し、前記スイッチ制御手段は、前記カウント手段によるカウント値が所定のカウント閾値(例えば、7回)に達した場合には、前記所定の待機時間の経過に関わらず前記電子スイッチのオフ状態を保持することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記カウント手段は、前記発生回数がカウントされた後、第1の所定時間が経過するまで次回のカウントが発生しなかった場合に、前記カウント値をリセットすることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記スイッチ制御手段は、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して前記電子スイッチをオフとした後、出力電圧が前記閾値電圧まで上昇した時点から、前記待機時間の経過を計時することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の過電流保護システムは、電子スイッチ、電線及び負荷を有する複数の負荷駆動用の回路と、前記各負荷駆動用の回路に接続された唯一の直流電源とを備えた駆動制御回路の電線を、過電流から保護する過電流保護システムにおいて、前記各負荷駆動用の回路は、それぞれ過電流保護装置を有し、一の負荷駆動用の回路に設けられる前記過電流保護装置は、前記直流電源の出力電圧(VBA)を検出する電圧検出手段と、前記一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオンとした後の経過時間を計時する計時手段と、前記直流電源の出力電圧が予め設定した閾値電圧以下に低下した場合に、一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオフとし、所定の待機時間が経過した後に、前記電子スイッチを再度オンとするスイッチ制御手段と、前記出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して、前記一の負荷駆動用の回路の電子スイッチがオフとされた際に、前記所定の待機時間を、他の負荷駆動用の回路に設けられた過電流保護装置の待機時間と相違するように決定する待機時間決定手段と、前記一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオンとしてから、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧に低下するまでの所要時間が予め設定した閾値時間(例えば、400μsec)以下である場合に、この発生回数をカウントするカウント手段と、を有し、前記スイッチ制御手段は、前記カウント手段によるカウント値が所定のカウント閾値(例えば、7回)に達した場合には、前記所定の待機時間の経過に関わらず前記電子スイッチのオフ状態を保持することを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、一の負荷駆動用の回路の前記カウント手段は、前記発生回数がカウントされた後、第1の所定時間が経過するまで次回のカウントが発生しなかった場合に、前記カウント値をリセットすることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記スイッチ制御手段は、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して前記電子スイッチをオフとした後、出力電圧が前記閾値電圧まで上昇した時点から、前記待機時間の経過を計時することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明では、電圧検出手段により直流電源の出力電圧が検出され、検出した出力電圧が閾値電圧(例えば、3.3V)以下に低下した場合に、電子スイッチをオフとし、その後、ランダムに決められた待機時間が経過した後に電子スイッチをオンとする動作を繰り返す。そして、電子スイッチをオンとしてから出力電圧が閾値電圧以下に低下するまでの所要時間が閾値時間(例えば、400μsec)以下である場合に、この回数をカウントし、カウント値がカウント閾値(例えば、7回)に達した場合に、電子スイッチをオフ状態に保持する。従って、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生した場合には、これをいち早く検出して回路をオフ状態に保持することができ、回路に設けられる電子スイッチ及び電線をデッドショートによる発熱から保護することができる。
【0019】
また、待機時間がランダムに決定されるので、一つの直流電源に対して複数の過電流保護装置が並列的に接続されるような場合には、一つの回路にてデッドショートが発生して、直流電源の出力電圧が低下した場合に、他の過電流保護装置では電子スイッチがオフとなるものの、待機時間が経過して再度オンとされた場合に、その後閾値時間以内に直流電源の出力電圧は閾値電圧以下に低下しないので、カウント値はインクリメントされず、カウント閾値に達しない。従って、デッドショートの発生していない回路を継続して駆動させることができる。
【0020】
即ち、待機時間がランダムに設定されるので、デッドショートが発生している負荷駆動用の回路を容易に特定することができ、このデッドショートが発生している回路のみを遮断し、その他の回路の駆動を継続させることができる。
【0021】
請求項2の発明では、第1の所定時間が経過するまでの間に、カウント値がカウント閾値に達しなかった場合には、このカウント値をリセットするので、デッドショート以外の理由で出力電圧が閾値電圧以下となるような場合に、負荷駆動用の回路を誤遮断することを防止することができる。
【0022】
請求項3の発明では、直流電源の出力電圧が閾値電圧以下に低下して電子スイッチがオフとされ、その後、再度上昇して閾値電圧を上回った時点で待機時間の計時が開始されるので、待機時間の計時を開始する時刻を正確に決めることができる。
【0023】
請求項4の発明では、一の負荷駆動用の回路に接続される過電圧保護装置の電圧検出手段により直流電源の出力電圧が検出され、検出した出力電圧が閾値電圧(例えば、3.3V)以下に低下した場合に、一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオフとし、その後、各過電流保護装置毎にランダムに決められた待機時間が経過した後に電子スイッチをオンとする動作を繰り返す。そして、一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオンとしてから出力電圧が閾値電圧以下に低下するまでの所要時間が閾値時間(例えば、400μsec)以下である場合に、この回数をカウントし、カウント値がカウント閾値(例えば、7回)に達した場合に、一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオフ状態に保持する。従って、一の負荷駆動用の回路にデッドショートが発生した場合には、これをいち早く検出してこの回路をオフ状態に保持することができ、回路に設けられる電子スイッチ及び電線をデッドショートによる発熱から保護することができる。
【0024】
また、待機時間が各過電流保護装置毎にランダムに決定されるので、一の負荷駆動用の回路にてデッドショートが発生して、共通とされた直流電源の出力電圧が低下した場合に、他の過電流保護装置では電子スイッチがオフとなるものの、待機時間が経過して再度オンとされた場合に、その後閾値時間以内に直流電源の出力電圧は閾値電圧以下に低下しないので、カウント値はインクリメントされず、カウント閾値に達しない。従って、デッドショートの発生していない回路を継続して駆動させることができる。
【0025】
即ち、待機時間がランダムに設定されるので、デッドショートが発生している回路を容易に特定することができ、このデッドショートが発生している回路のみを遮断し、その他の回路の駆動を継続させることができる。
【0026】
請求項5の発明では、一の負荷駆動用の回路に設けられた過電流保護装置において、第1の所定時間が経過するまでの間に、カウント値がカウント閾値に達しなかった場合には、このカウント値をリセットするので、デッドショート以外の理由で出力電圧が閾値電圧以下となるような場合に、回路を誤遮断することを防止することができる。
【0027】
請求項6の発明では、直流電源の出力電圧が閾値電圧以下に低下して電子スイッチがオフとされ、その後、再度上昇して閾値電圧を上回った時点で待機時間の計時が開始されるので、各過電流保護装置で、待機時間の計時を開始する時刻を一致させることができ、正確に待機時間を計時することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置が複数接続された過電流保護システムの構成を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置、及び過電流保護装置が接続される負荷駆動用の回路の回路図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の処理動作を示すフローチャートの、第1の分図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の処理動作を示すフローチャートの、第2の分図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の、電子スイッチをオンとした直後での過電流と判定する電圧及び経過時間の関係を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の、過電流と判定する電圧及び経過時間の関係を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の、過電流と判定する電圧及び経過時間の関係を示すタイミングチャートである。
【図8】車両に搭載されるホーンを駆動する場合の、負荷電流の変動を示す特性図である。
【図9】車両に搭載されるホーンを駆動する場合の、負荷電流の変化と基準電圧Vref1、2倍電圧Vref2との関係を示す特性図である。
【図10】車両に搭載されるホーンを駆動する場合の、負荷電流の変化と基準電圧Vref1、2倍電圧Vref2との関係を示す特性図である。
【図11】車両に搭載されるホーンを駆動する場合の、負荷電流の変化と基準電圧Vref1の関係を示す特性図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の、VBAモニタ回路の処理動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態に係る各過電流保護装置の、VBAモニタ回路の出力信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図14】本発明の一実施形態に係る各過電流保護装置の、VBAモニタ回路の詳細な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る過電流保護システムの構成図であり、例えば、車両に搭載されるランプ、モータ、ホーン等の各負荷RL(RL1〜RL3)を駆動する負荷駆動用の回路(VB、Q1a、RL1及びこれらを接続する電線からなる回路)に搭載され、過電流が流れた際には負荷駆動用の回路を遮断して回路に設けられる電子スイッチ(Q1a)、及び電線を過熱から保護する機能を備える。なお、本実施形態では、一例として3系統の負荷駆動用の回路を保護する保護システムについて説明するが、本発明は3系統に限定されるものではない。
【0030】
図1に示すように、この過電流保護システムは、3個のIC回路51-1〜51-3を備えており、各IC回路51-1〜51-3は、端子D1及び大電流フューズFuを介してバッテリ(直流電源)VBに接続されている。また、各IC回路51-1〜51-3は、端子D5〜D7を介して負荷RL(RL1〜RL3)に接続され、各負荷RLの駆動、停止を制御する。
【0031】
更に、各IC回路51-1〜51-3は、入力I/F54〜56を介して端子D2〜D4に接続され、各端子D2〜D4より駆動信号が入力されるようになっている。
【0032】
図2は、図1に示したIC回路51-1の詳細な構成を示す回路図である。なお、3個のIC回路51-1〜51-3は同一構成を有するので、以下IC回路51-1の構成について説明する。図2に示すようにIC回路51-1は、過電流保護装置100と、マルチソースFET(Q1;以下単に「FET」(Q1)という)とに大別して構成されている。なお、本実施形態では、FET(Q1)としてN型MOSFETを用いているが、P型MOSFETを用いることも可能である。
【0033】
FET(Q1)は、端子D1を介して接続されるバッテリVBと、端子D5を介して接続される負荷RL1との間に設けられ、メインFET(Q1a;電子スイッチ、以下単に「FET(Q1a)」という)と、サブFET(Q1b;以下単に「FET(Q1b)」という)の2個のFETを備えるマルチソース型のMOSFETであり、それぞれのドレイン、ゲートが共通とされている。そして、FET(Q1a)のオン、オフを切り替えることにより、負荷RL1の駆動、停止を制御する。
【0034】
過電流保護装置100は、アンド回路AND1と、該アンド回路AND1の出力端子に接続されたバッファ11とを有し、該バッファ11の出力端子は、FET(Q1)のゲートに接続されている。また、バッファ11には、チャージポンプ13が接続されている。
【0035】
更に、アンド回路AND1の一方の入力端子は端子D2に接続され、他方の入力端子はフリップフロップ回路12のQ出力に接続されている。従って、端子D2にHレベルの信号が供給されると、フリップフロップ回路12の出力信号は通常時においてHレベルであるから、アンド回路AND1の出力信号がHレベルとなり、更に、バッファ11にてこのHレベルの信号に所定レベルの電圧が加えられてFET(Q1)のゲートに供給されるので、該FET(Q1)がオンとなり、負荷RL1を駆動させることができる。
【0036】
また、過電流保護装置100は、アンプAMP1を備えており、該アンプAMP1のマイナス側入力端子はFET(Q1a)のソース(電圧Vs)に接続され、プラス側入力端子はFET(Q1b)のソースに接続されている。アンプAMP1の出力端子は、N型のMOSFET(Q2)のゲートに接続され、MOSFET(Q2)のドレインは、FET(Q1b)のソースに接続され、MOSFET(Q2)のソースは、電流検出抵抗Risの一端に接続され、該電流検出抵抗Risの他端はグランドに接続されている。従って、電流検出抵抗Risの一端には、負荷電流I0に比例した電圧(以下、これを「参照電圧Vp」という)が発生することになる。
【0037】
更に、過電流保護装置100は、5個の比較器CMP1〜CMP5を備えており、このうち、比較器CMP5は、プラス側入力端子が電源Vtfに接続され、マイナス側入力端子はFET(Q1a)のソースに接続される。従って、FET(Q1a)のドレイン・ソース間電圧(VB−Vs)が電源Vtfの出力電圧を上回った際に、比較器CMP5の出力信号はLレベルからHレベルに変化する。この出力信号は、Vds検出回路16、及びオン故障検出回路17にそれぞれ出力される。
【0038】
また、4個の比較器CMP1〜CMP4は、負荷駆動用の回路に流れる過電流の度合いに応じた判定結果を出力するために設けており、比較器CMP2〜CMP4のプラス側入力端子は、MOSFET(Q2)のソースに接続され、比較器CMP1のプラス側入力端子は、抵抗Rcfを介してMOSFET(Q2)のソースに接続されている。更に、比較器CMP1のプラス側入力端子は、コンデンサCfの一端に接続され、該コンデンサCfの他端はグランドに接続されている。従って、抵抗RcfとコンデンサCfで時定数回路が形成され、該時定数回路により上述の参照電圧Vpは平滑化されて、低速追随電圧Vcが生成される。また、低速追随電圧Vcが必要のない負荷を接続する場合には、コンデンサCfを接続しない。
【0039】
比較器CMP1の出力端子、及び比較器CMP2の出力端子は、オア回路OR1の入力端子に接続されている。
【0040】
また、比較器CMP1のマイナス側入力端子には、予め設定した基準電圧Vref1が供給され、比較器CMP2のマイナス側入力端子には、基準電圧Vref1を2倍した2倍電圧Vref2が供給され、比較器CMP3のマイナス側入力端子には、基準電圧Vref1を4倍した4倍電圧Vref4が供給され、更に、比較器CMP4のマイナス側入力端子には、基準電圧Vref1を8倍した8倍電圧Vref8が供給される。
【0041】
また、オア回路OR1の出力端子はロジック回路14のIN-1に接続され、比較器CMP2の出力端子はロジック回路14のIN-2に接続され、比較器CMP3の出力端子はロジック回路14のIN-4に接続され、比較器CMP4の出力端子はロジック回路14のIN-8に接続されている。
【0042】
ロジック回路14には、前述した各比較器CMP2〜CMP4の出力信号、及びオア回路OR1の出力信号以外に、過電圧検出信号、クロック信号、及び端子D2より入力されるFET(Q1)の駆動信号が供給される。
【0043】
ロジック回路14は、後述するように、タイマ機能(T1〜T4)、及びカウント機能(Ct)を備えており、過電流が発生した場合に、過電流の継続時間、及び過電流が発生した回数をカウントする機能を備えている。更に、ロジック回路14の出力端子(OUT)はオア回路OR2が有する3つの入力端子のうちの一つに接続され、出力端子(OUT)の出力信号がHレベルとなった場合に、FET(Q1)の駆動信号をHレベルとする。
【0044】
また、ロジック回路14は、発振器18に接続され、該発振器18よりクロック信号が供給される。発振器18は、コンデンサCoscの一端に接続され、その他端はグランドに接続されている。更に、ロジック回路14は、過電圧検出器19に接続され、バッテリVBの出力電圧VBAが過電圧となって過電流遮断が発生しても、バッテリVBAの電圧が正常に戻れば、負荷駆動用の回路の遮断を解除する。
【0045】
また、オア回路OR2の2つ目の入力端子はVBAモニタ回路15に接続され、3つ目の入力端子はVds検出回路16に接続されている。また、オア回路OR2の出力端子は、フリップフロップ回路12のリセット入力端子に接続されている。
【0046】
VBAモニタ回路15は、バッテリVBの電圧を監視する回路であり、バッテリVBの電圧が予め設定した閾値電圧(例えば、3.3V)以下に低下した場合に、IC回路51を正常に駆動することができないと判断して、フリップフロップ回路12のリセット入力に電圧異常信号を出力し、FET(Q1)をオフとして負荷RL1の駆動を停止させる。
【0047】
そして、VBAモニタ回路15は、図14に示すように、バッテリ電圧VBAを検出する電圧検出手段15aと、FET(Q1)をオンとした後の経過時間を計時する計時手段15bと、バッテリ電圧VBAが予め設定した閾値電圧(例えば、3.3V)以下に低下した場合に、FET(Q1)をオフとし、所定の待機時間(Tp)が経過した後に、FET(Q1)を再度オンとするスイッチ制御手段15cと、バッテリ電圧VBAが閾値電圧以下に低下して、FET(Q1)がオフとされた際に、所定の待機時間(Tp)をランダムに決定する待機時間決定手段15dと、FET(Q1)をオンとしてから、バッテリ電圧VBAが閾値電圧以下に低下するまでの所要時間が、予め設定した閾値時間(例えば、400μsec)以下である場合に、この発生回数をカウントするカウント手段15eを備えている。なお、VBAモニタ回路15の詳細な動作については後述する。
【0048】
Vds検出回路16は、比較器CMP5でFET(Q1a)のソース電圧Vsが基準電圧Vtfを超えたと判断された際に、FET(Q1)のドレイン・ソース間電圧Vdsが異常であると判断し、FET(Q1)をオフとして負荷RL1の駆動を停止させる。
【0049】
オン故障検出回路17は、比較器CMP5の出力信号に基づいてFET(Q1)がオン故障したか否かを判定し、オン故障が発生した場合にはオン故障検出信号を出力する。
【0050】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る負荷駆動用の回路の保護装置の動作について、図3、図4に示すフローチャートを参照して説明する。ここで、図3、図4でステップS11〜S32までの処理は、電源投入時の動作であり、ステップS33〜S58までの処理は、定常時の動作である。
【0051】
始めに、端子D2にFET(Q1)の駆動信号が供給されると、この駆動信号によりアンド回路AND1の出力はHレベルとなるので、バッファ11を介してFET(Q1)のゲートに、バッテリVBの電圧にチャージポンプ13の出力電圧が加算された駆動電圧が供給される。その結果、FET(Q1)がオンとなり(ステップS11)、FET(Q1a)を介して負荷RL1に負荷電流I0が流れ、負荷RL1が駆動する。
【0052】
また、負荷RL1に負荷電流I0が流れると、アンプAMP1は、FET(Q1a)のソース電圧Vsと、FET(Q1b)のソース電圧が等しくなるようにFET(Q1b)に参照電流Irを流すので、この参照電流Irは、負荷電流I0に比例した大きさの電流となる。更に、この参照電流Irは電流検出抵抗Risを介してグランドに流れるので(Ris≪Rcf)、電流検出抵抗Risに生じる参照電圧Vpは、負荷電流I0に比例した大きさの電圧となる。本実施形態では、この参照電圧Vpと4種類の基準電圧Vref1、2倍電圧Vref2、4倍電圧Vref4、8倍電圧Vref8を対比することにより、過電流の大きさを判定する。そして、過電流の大きさと継続時間に応じて負荷駆動用の回路を遮断するか否かを決定する。
【0053】
ロジック回路14は、FET(Q1)の駆動信号が供給されると、時間T4を計時するT4タイマを作動させる(ステップS12)。なお、時間T4は、例えば突入電流の発生時間(例えば、2秒)に設定する。
【0054】
次いで、ロジック回路14は、比較器CMP1の出力信号、または比較器CMP2の出力信号の少なくとも一方がHレベルになったか否かを判断する。換言すれば、負荷電流I0に比例した参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を上回ったか、或いは参照電圧Vpを平滑化した電圧(低速追随電圧)Vcが基準電圧Vref1を上回ったか否かを判定する(ステップS13)。なお、以下ではステップS13の判定がYESとなることを「過電流判定を満たす」と称し、NOとなることを「過電流判定を満たさない」と称する。
【0055】
そして、負荷電流I0が過電流判定を満たさない場合(各比較器CMP1、CMP2の出力信号が共にLレベルである場合)には(ステップS13でNO)、ロジック回路14による時間T4の計時が終了したか否かが判定され(ステップS14)、時間T4が経過した場合には(ステップS14でYES)、後述するステップS33(図4)に処理を進める。また、時間T4が経過しない場合には(ステップS14でNO)、ステップS13の処理に戻る。
【0056】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たす場合(各比較器CMP1、CMP2の出力信号のうち少なくとも一方がHレベルである場合)には(ステップS13でYES)、負荷駆動用の回路に過電流が発生しているものと判断し、時間T1(T1<T4)を計時するT1タイマを作動させる(ステップS15)。
【0057】
ここで、例えば車両に搭載されるホーンを駆動する負荷駆動用の回路を例に挙げると、ホーンを駆動する際に負荷駆動用の回路に流れる電流は、図8の曲線q1に示すように、短時間に上下方向に大きく変動する波形となり、電流検出抵抗Risに生じる参照電圧Vpも同様に、曲線q1のように変化する。また、時定数回路を通過して得られる低速追随電圧Vcは、曲線q2に示すように、平滑化された波形となる。そして、曲線q1が2倍電圧Vref2を超えた場合、または、曲線q1が基準電圧Vref1を超えた場合に、オア回路OR1の出力信号がHレベルとなる(図3のステップS13の判定がYESとなる)。
【0058】
次いで、負荷電流I0に比例した参照電圧Vpと、8倍電圧Vref8を比較する(ステップS16)。その結果、参照電圧Vpが8倍電圧Vref8を超えていると判断した場合には(ステップS16でYES)、ロジック回路14はオア回路OR2に停止信号(Hレベルの信号)を出力し、該停止信号によりFET(Q1)の駆動信号をオフとする(ステップS32)。即ち、8倍電圧Vref8を超える程度の過大な負荷電流I0が負荷駆動用の回路に流れた場合には、即時にFET(Q1)を遮断して負荷駆動用の回路を保護する。つまり、負荷駆動用の回路をオンとした直後(FET(Q1)のオン直後)には、該負荷駆動用の回路に定常電流の8倍程度の突入電流が流れるので、基準電圧Vref1の8倍電圧Vref8を超えた場合には、短絡電流が流れているものと判断して、時間T1の経過を待たず即時に負荷駆動用の回路を遮断する。
【0059】
他方、参照電圧Vpが8倍電圧Vref8を超えていないと判断した場合には(ステップS16でNO)、時間T1が経過したか否かを判断する(ステップS17)。つまり、過電流が発生しているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが8倍電圧Vref8に達していない程度である場合には、時間T1が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0060】
そして、時間T1が経過した場合には(ステップS17でYES)、前述したステップS13と同様に、ロジック回路14は負荷電流I0が過電流判定を満たすか否かを判断する(ステップS18)。つまり、時間T1が経過した後に、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0061】
そして、過電流判定を満たさないと判断した場合には(ステップS18でNO)、負荷電流I0は定常電流に戻ったものと判断し、ロジック回路14による時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS19)、時間T4が経過した場合には(ステップS19でYES)、ステップS33(図4)に処理を進める。また、時間T4が経過しない場合には(ステップS19でNO)、ステップS18の処理に戻る。
【0062】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たすと判断した場合には(ステップS18でYES)、参照電圧Vpは8倍電圧Vref8よりも低いものの、依然として負荷駆動用の回路に過電流が発生しているものと判断し、時間T2(既定時間;T1<T2<T4)を計時するT2タイマを作動させる(ステップS20)。
【0063】
その後、参照電圧Vpと4倍電圧Vref4とを比較する(ステップS21)。その結果、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えていると判断した場合には(ステップS21でYES)、ロジック回路14は、FET(Q1)の駆動信号をオフとして該FET(Q1)を遮断する(ステップS32)。即ち、FET(Q1)をオンとした直後であっても、4倍電圧Vref4を超える程度の過電流が時間T1を超えて継続して負荷駆動用の回路に流れた場合には、FET(Q1)を遮断して負荷駆動用の回路を保護する。
【0064】
他方、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えていないと判断した場合には(ステップS21でNO)、時間T2が経過したか否かを判断する(ステップS22)。つまり、負荷電流I0が過電流判定を満たしているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが4倍電圧Vref4に達していない大きさである場合には、時間T2が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0065】
そして、時間T2が経過した場合には(ステップS22でYES)、前述したステップS13、S18と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たすか否かを判断する(ステップS23)。つまり、FET(Q1)のオン後、時間(T1+T2)が経過した後に、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0066】
そして、負荷電流I0が過電流判定を満たさない場合には(ステップS23でNO)、負荷電流I0は定常電流に戻ったものと判断し、ロジック回路14による時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS24)、時間T4が経過した場合には(ステップS24でYES)、ステップS33(図4)に処理を進める。また、時間T4が経過しない場合には(ステップS24でNO)、ステップS23の処理に戻る。
【0067】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たす場合には(ステップS23でYES)、参照電圧Vpは4倍電圧Vref4よりも低いものの、依然として負荷駆動用の回路に過電流が発生しているものと判断し、時間T3(既定時間;T2<T3<T4)を計時するT3タイマを作動させ、且つ、カウント値Ct=0にセットする(ステップS25)。
【0068】
次いで、参照電圧Vpと2倍電圧Vref2を比較する(ステップS26)。その結果、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えていると判断した場合には(ステップS26でYES)、ロジック回路14はFET(Q1)の駆動信号をオフとして該FET(Q1)を遮断する(ステップS32)。即ち、2倍電圧Vref2を超える程度の過電流が時間(T1+T2)を超えて継続して負荷駆動用の回路に流れた場合には、FET(Q1)を遮断して負荷駆動用の回路を保護する。
【0069】
他方、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えていないと判断した場合には(ステップS26でNO)、時間T3が経過したか否かを判断する(ステップS27)。つまり、過電流が発生しているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが2倍電圧Vref2に達していない程度である場合には、時間T3が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0070】
そして、時間T3が経過した場合には(ステップS27でYES)、前述したステップS13、S18、S23と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(ステップS28)。つまり、FET(Q1)のオン後、時間(T1+T2+T3)が経過した後に、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0071】
そして、負荷電流I0が過電流判定を満たさない場合には(ステップS28でNO)、負荷電流I0は定常電流に戻ったものと判断し、ロジック回路14による時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS29)、時間T4が経過した場合には(ステップS29でYES)、ステップS33(図4)に処理を進める。また、時間T4が経過しない場合には(ステップS29でNO)、ステップS28の処理に戻る。
【0072】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たす場合には(ステップS28でYES)、参照電圧Vpは2倍電圧Vref2よりも低いものの、依然として負荷駆動用の回路に過電流が発生しているものと判断し(この場合は、CMP1の出力信号がHレベル、CMP2の出力信号がLレベルである)、カウント値Ct=4であるか否かを判断する(ステップS30)。そして、Ct≠4の場合には(ステップS30でNO)、カウント値Ctをインクリメントし(Ct=Ct+1とし)、且つ、T3タイマを作動させ(ステップS31)、ステップS26に処理を戻す。
【0073】
その後、ステップS30の処理でカウント値Ct=4(既定回数)となった場合には、FET(Q1)を遮断する(ステップS32)。つまり、ステップS26〜S31の処理では、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2よりも小さく、且つ負荷電流I0が過電流判定を満たす条件、即ち、比較器CMP1の出力信号のみがHレベルとなった場合に、この状態が時間T3だけ継続する回数が5回(Ct=0〜4の5回)に達した際に、FET(Q1)を遮断して負荷駆動用の回路を保護する。また、カウント値Ct=4に達する前に時間T4が経過した場合には、ステップS33(図4)に処理を進める。
【0074】
ここまでの処理をまとめると、以下の通りである。
(a)FET(Q1)をオンとした後、負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、参照電圧Vpが8倍電圧Vref8を超えた場合には、即時にFET(Q1)をオフとする。図5は時間経過に対する参照電圧Vpの変化を示すタイミングチャートであり、図5に示す時刻t0でFET(Q1)をオンとし、時刻t0〜t1の時間帯でVpがVref8を超えた場合に、FET(Q1)をオフとする。
【0075】
(b)FET(Q1)をオンとした後、負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、過電流判定を満たしてから時間T1が経過した際に、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えている場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、図5に示す時刻t1〜t2の時間帯でVpがVref4を超えた場合に、FET(Q1)をオフとする。
【0076】
(c)上記の時間T1が経過し、更に時間T2が経過した際に、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えている場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、図5に示す時刻t2〜t3の時間帯でVpがVref2を超えた場合に、FET(Q1)をオフとする。
【0077】
(d)上記の時間T1が経過し、更に時間T2が経過した際に、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を下回っており、且つ負荷電流I0が過電流判定を満たしている時間がT3に達し、この回数が5回となった場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、図5に示す時刻t2〜t5の時間帯(t3〜t4を除く)で、過電流判定を満たし、且つVpがVref2を下回る時間がT3に達し、更にこれが5回繰り返された場合に、FET(Q1)をオフとする。なお、途中で過電流判定を満たさない時間帯(t3〜t4)が存在しても、FET(Q1)をオンとしてからの経過時間がT4に達していなければ、カウント値Ctはリセットされないので、時刻t5までカウント値Ctのカウントが継続される。
【0078】
こうして、FET(Q1)をオンとした直後において、負荷電流I0の大きさと、その継続時間に応じてFET(Q1)をオフとするか否かを判断することにより、FET(Q1)のオン時に生じる突入電流による誤遮断を防止し、且つ、短絡事故等に起因して過電流が発生した場合には、FET(Q1)をオフとしてFET(Q1)、及び電線を保護することができる。
【0079】
一方、FET(Q1)がオンとされてから時間T4(例えば、2秒)が経過すると、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(図4の、ステップS33)。つまり、FET(Q1)のオン後、時間T4が経過した後に、過電流が発生しているか否かを判断する。
【0080】
そして、過電流判定を満たさないと判断した場合には(ステップS33でNO)、負荷電流I0は定常電流であるものと判断し、ロジック回路14によるT4タイマが作動中であるか否かを判断し(ステップS34)、作動中でなければT4タイマを作動させた後(ステップS36)、ステップS33の処理に戻る。他方、T4タイマが作動中である場合には、時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS35)、ステップS33の処理に戻る。即ち、ステップS33〜S36の処理では、FET(Q1)をオンとしてから時間T4が経過した後に(突入電流が収束して定常電流となった場合に)、再度T4タイマを作動させて時間T4の計時を開始し、過電流が発生しなければ(ステップS33でNOの状態が継続されれば)、ステップS33〜S36の処理が繰り返される。つまり、負荷駆動用の回路が定常電流で動作しているときには、この処理が繰り返されることで、FET(Q1)のオン状態が保持される。
【0081】
また、負荷電流I0が過電流判定を満たす場合には(ステップS33でYES)、ロジック回路14のT5タイマ(T5<T4)を作動させ、且つ、T4タイマをリセットする。更に、カウント値Ct=0に設定する(ステップS37)。
【0082】
次いで、負荷電流I0に比例した参照電圧Vpと4倍電圧Vref4とを比較する(ステップS38)。その結果、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えていると判断した場合には(ステップS38でYES)、ロジック回路14はオア回路2に停止信号を出力し、該停止信号によりFET(Q1)の駆動信号をオフとして該FET(Q1)を遮断する(図3の、ステップS32)。即ち、FET(Q1)をオンとしてしばらく時間が経過し、突入電流が収束した状態において、4倍電圧Vref4を超えるような過大な電流が負荷駆動用の回路に流れた場合には、即時にFET(Q1)を遮断してFET(Q1)、及び電線を保護する。
【0083】
また、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えていないと判断した場合には(ステップS38でNO)、時間T5(既定時間)が経過したか否かを判断する(ステップS39)。つまり、負荷電流I0が過電流判定を満たしているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を上回らない程度である場合には、時間T5が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0084】
そして、時間T5が経過した場合には(ステップS39でYES)、前述したステップS33と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(ステップS40)。つまり、時間T5が経過した後に、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0085】
そして、過電流判定を満たしていないと判断した場合には(ステップS40でNO)、負荷電流I0は定常電流であるものと判断し、ロジック回路14によるT4タイマが作動中であるか否かを判断し(ステップS41)、作動中でなければT4タイマを作動させた後(ステップS43)、ステップS40の処理に戻る。他方、T4タイマが作動中である場合には、時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS42)、時間T4が経過している場合には(ステップS42でYES)、ステップS33の処理に戻る。また、時間T4が経過していない場合には(ステップS42でNO)、ステップS40の処理に戻る。この処理では、過電流が発生していないと判定されていても、時間T4が経過していない場合にはカウント値Ct(後述のS44参照)の値を維持し、時間T4が経過した場合にはカウント値Ctをリセットすることになる。
【0086】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たしている場合には(ステップS40でYES)、カウント値Ct=1であるか否かを判断し(ステップS44)、初期的にはCt=0であるから(ステップS44でNO)、カウント値Ctをインクリメントし、且つ、T5タイマを作動させる(ステップS45)。その後、ステップS38に処理を戻す。
【0087】
その後、ステップS38〜S44の処理を繰り返し、ステップS40の処理でYESと判定した場合には、カウント値Ct=1(既定回数)となるので、ステップS44の処理がYES判定となる。つまり、負荷電流I0が過電流判定を満たし、且つ、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4に達しない状態が時間T5だけ継続され、更に、その回数が2回に達した場合には、ステップS44でYES判定となる。
【0088】
ステップS44でYES判定とされた場合には、前述したステップS33、S40と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(ステップS46)。つまり、カウント値Ct=1となった後、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0089】
そして、過電流判定を満たさない場合には(ステップS46でNO)、負荷電流I0は定常電流であるものと判断し、ロジック回路14によるT4タイマが作動中であるか否かを判断し(ステップS47)、作動中でなければT4タイマを作動させた後(ステップS49)、ステップS46の処理に戻る。他方、T4タイマが作動中である場合には(ステップS47でYES)、時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS48)、時間T4が経過している場合には(ステップS48でYES)、ステップS33の処理に戻る。また、時間T4が経過していない場合には(ステップS48でNO)、ステップS46の処理に戻る。この処理では、過電流が発生していないと判定されていても、時間T4が経過していない場合にはカウント値Ctの値を維持し、時間T4が経過した場合にはカウント値Ctをリセットすることになる。
【0090】
他方、過電流判定を満たす場合には(ステップS46でYES)、T5タイマを作動させ、T4タイマをリセットし、カウント値Ct=0とする(ステップS50)。つまり、4倍電圧Vref4を下回る程度の過電流が時間T5だけ継続し、これが2回繰り返されてもなお過電流が発生している場合には、再度T5タイマを作動させ、且つ、T4タイマをリセットし、カウント値Ctをリセットする。
【0091】
その後、参照電圧Vpと2倍電圧Vref2を比較する(ステップS51)。その結果、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を上回っていると判断した場合には(ステップS51でYES)、ロジック回路14はオア回路OR2に停止信号を出力し、該停止信号によりFET(Q1)の駆動信号をオフとして該FET(Q1)を遮断する(図3の、ステップS32)。即ち、4倍電圧Vref4を下回る程度の過電流が時間T5の2回分の時間だけ継続し、その後、なお2倍電圧Vref2を超える程度の過電流が発生している場合には、FET(Q1)を遮断してFET(Q1)、及び電線を保護する。
【0092】
他方、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えていないと判断した場合には(ステップS51でNO)、時間T5が経過したか否かが判断される(ステップS52)。つまり、過電流が発生しているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を下回る程度である場合には、時間T5が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0093】
そして、時間T5が経過した場合には(ステップS52でYES)、前述したステップS33、S40、S46と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(ステップS53)。
【0094】
その結果、過電流判定を満たさない場合には(ステップS53でNO)、負荷電流I0は定常電流であるものと判断し、ロジック回路14によるT4タイマが作動中であるか否かを判断し(ステップS54)、作動中でなければT4タイマを作動させた後(ステップS56)、ステップS53の処理に戻る。他方、T4タイマが作動中である場合には(ステップS54でYES)、時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS55)、時間T4が経過している場合には(ステップS55でYES)、ステップS33の処理に戻る。また、時間T4が経過していない場合には(ステップS55でNO)、ステップS53の処理に戻る。この処理では、過電流が発生していないと判断されていても、時間T4が経過していない場合にはカウント値Ctの値を維持し、時間T4が経過した場合にはカウント値Ctをリセットすることになる。
【0095】
他方、過電流判定を満たす場合には(ステップS53でYES)、カウント値Ct=4であるか否かを判断し、Ct=4でない場合には(ステップS57でNO)、カウント値Ctをインクリメントし、且つ、T5タイマを作動させて(ステップS58)、ステップS51の処理に戻る。
【0096】
また、カウント値Ct=4(既定回数)であると判断した場合には(ステップS57でYES)、FET(Q1)を遮断して負荷駆動用の回路を保護する(ステップS32)。
【0097】
ここで、図4に示すステップS33以降の処理をまとめると、以下の(e)〜(g)のようになる。
【0098】
(e)突入電流が収束している状態で負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えた場合には、即時にFET(Q1)をオフとする。図6は突入電流の収束後においての、時間経過に対する参照電圧Vpの変化を示すタイミングチャートであり、図6に示す時刻t0で過電流が発生し、VpがVref4を超えた場合には、即時にFET(Q1)をオフとする。
【0099】
(f)負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を下回る程度の過電流が時間T5だけ継続し、更にこれが2回繰り返され、その後、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超える場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、図6に示す時刻t0〜t1の時間帯(時間T5が2回繰り返される時間)でVpがVref4を下回り、その後(時刻t1の後)VpがVref2を超える場合には、FET(Q1)をオフとする。
【0100】
(g)負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を下回る程度の過電流が時間T5だけ継続し、更にこれが5回(Ct=0〜4の5回)繰り返された場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、例えば、図6に示す時刻t1〜t2の時間帯で過電流の発生する時間T5が3回繰り返され、その後、時刻t2〜t3の時間帯で定常電流に戻り、更に、時刻t3から過電流の発生する時間T5が2回繰り返された場合(但し、時刻t2〜t3の時間Tqは、Tq<T4)には、この時刻t4でカウント値Ct=4となって、FET(Q1)をオフとする。他方、図7に示すように、時刻t2で定常電流に戻り、再度過電流が検出される時刻t5までの経過時間TqがTq>T4である場合には、図4のステップS55の処理でステップS33の処理に戻るので、カウント値Ctがリセットされる。従って、時刻t5〜t6の時間帯(時間T5が7回繰り返された時間)で過電流が検出された場合に、FET(Q1)をオフとする。
【0101】
こうして、負荷駆動用の回路に流れる突入電流が収束した後において、負荷電流I0の大きさ及びその継続時間に応じて、FET(Q1)のオフとするか否かを判断することにより、負荷駆動用の回路に生じる短絡事故等に起因して過電流が発生した場合には、FET(Q1)をオフとしてFET(Q1)、及び電線を保護することができる。
【0102】
次に、オア回路OR1の出力信号を用いて過電流判定を行うことによる作用について、図9〜図11を参照して詳細に説明する。
【0103】
前述したように、本実施形態では参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えた場合に比較器CMP2の出力信号がHレベルとなり、参照電圧Vpを平滑化して得られる低速追随電圧Vcが基準電圧Vref1を超えた場合に比較器CMP1の出力信号がHレベルとなる。更に、これらのうちの少なくとも一方がHレベルになると、オア回路OR1の出力信号がHレベルとなって、過電流判定を満たすことになる。
【0104】
つまり、図9に示す曲線q11のように脈動する負荷電流I0が流れた場合には、参照電圧Vpのピーク値は2倍電圧Vref2を超えないので、比較器CMP2の出力信号はLレベルである。
【0105】
他方、低速追随電圧Vcは、曲線q12に示すように平滑化されるので、負荷電流I0の脈動の影響が軽減され、基準電圧Vref1を超えず、比較器CMP1の出力信号はLレベルとなり、オア回路OR1の出力信号は継続してLレベルとなる。即ち、過電流判定を満たさないことになる。従って、このような場合には、FET(Q1)は遮断されることなく、負荷RLの駆動が継続されることになる。
【0106】
これに対して、時定数回路を使用せずに、直接参照電圧Vpを比較器CMP1の入力端子(+端子)に供給し、基準電圧Vref1と比較するように構成すると(つまり、参照電圧Vpが基準電圧Vref1を超えることを過電流判定の条件に設定すると)、図9に示す時刻t2〜t3間では比較器CMP1の出力信号はLレベルとなるが、時刻t1〜t2の間では比較器CMP1の出力信号はHレベルとなり、過電流判定を満たしてしまい、FET(Q1)が遮断されてしまう。
【0107】
この問題を回避するためには、図11に示すように、基準電圧Vref1を大きい値とし、図9に示した2倍電圧Vref2と同等のレベルに設定しなければならない。この場合には、図11に示す符号q13のように、基準電圧Vref1を若干下回る程度の電流が継続して流れた場合には、FET(Q1)は遮断されないが、負荷駆動用の回路の電線温度が上昇して過熱するというトラブルが発生してしまう。
【0108】
即ち、本発明では、比較器CMP1、CMP2の出力のうち少なくとも一方がHレベルとなった場合に、過電流判定を満たすので、図8の符号q1に示したような脈動電流が継続して流れた場合でも、FET(Q1)を誤遮断することがなく、また、低めの過電流が継続して流れた場合には、これを検出してFET(Q1)を遮断することができる。
【0109】
更に、図10に示すように、時刻t4の時点で負荷駆動用の回路にデッドショートが発生した場合には、負荷駆動用の回路に短絡電流が流れるので、図10に示す曲線q12(低速追随電圧Vc)は時定数をもって緩やかに上昇するのに対して、曲線q11(参照電圧Vp)は急激に上昇し、瞬時に2倍電圧Vref2を上回り、更に、4倍電圧Vref4を上回る。即ち、低速追随電圧Vcが基準電圧Vref1を超えるよりも早く、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を上回るので、瞬時に過電流判定が満たされることになり、その後4倍電圧Vref4を上回った時点で、FET(Q1)を遮断してFET(Q1)、及び電線を保護することができる。
【0110】
次に、本発明の特徴的な構成であるVBAモニタ回路15の動作について、図12に示すフローチャート、及び図13に示すタイミングチャートを参照して説明する。図13において、(a)はバッテリVBの出力電圧VBAの変化を示す特性図、(b)はIC回路51-1(CH1)に設けられるVBAモニタ回路15に入力される信号、(c)はその出力信号、(d)はIC回路51-2(CH2)に設けられるVBAモニタ回路15の出力信号、(e)はIC回路51-3に設けられるVBAモニタ回路15の出力信号を示している。なお、図13(c)〜(e)に示す出力信号は、その出力信号が図2に示すオア回路OR2に出力されることから、「ON」がLレベルの信号、「OFF」がHレベルの信号である。
【0111】
前述したように、VBAモニタ回路15は、バッテリVBの出力電圧VBAを監視し、バッテリ電圧VBAが所定の電圧(例えば、3.3V)以下に低下した場合には、FET(Q1)を遮断する動作を複数回(例えば、7回)繰り返し、バッテリ電圧VBAが通常の電圧に戻らない場合には、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生しているものと見なしてFET(Q1)をオフ状態に保持し、負荷駆動用の回路を保護する機能を備える。
【0112】
始めに、VBAモニタ回路15は、図13に示す時刻t11で端子D1からの駆動信号の入力を検出すると(ステップS71)、ターンオン時間Tdonだけ待機し(ステップS72)、その後、時刻t12でFET(Q1)をオンとする信号を出力する(ステップS73)。即ち、Lレベルの出力信号をオア回路OR2に出力する。これにより、FET(Q1)はオンとなり、負荷RL1が駆動する。
【0113】
次いで、VBAモニタ回路15は、FET(Q1)がオンとなってからの第1経過時間Txの計時を開始する(ステップS74)。更に、第2経過時間Trの計時を開始する(ステップS75)。ここで、第1経過時間Txは、FET(Q1)がオンとされてからバッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下するまでの時間を計時するために使用し、第2経過時間Trは、FET(Q1)がオンとされてから予め設定したインターバル時間Tc(第1の所定時間、例えば0.2秒)が経過したか否かを判断するために使用する。
【0114】
VBAモニタ回路15は、第2経過時間Trがインターバル時間Tc未満であるか否かを判定する(ステップS76)。そして、第2経過時間Trがインターバル時間Tc以上である場合には(ステップS76でNO)、FET(Q1)がオフとされた回数を示すカウント値Nを0にリセットする(ステップS77)。
【0115】
他方、第2経過時間Trがインターバル時間Tc未満である場合には(ステップS76でYES)、バッテリ電圧VBAが所定電圧として設定した3.3V未満であるか否かを判断する(ステップS78)。この処理では、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生しているか否かを判定しており、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生している場合には、FET(Q1)をオンとした際に負荷駆動用の回路に逆起電力が生じて、バッテリ電圧VBAが急激に低下するので、3.3V未満に低下することになる。
【0116】
そして、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生しておらず、バッテリ電圧VBAが3.3V以上である場合には(ステップS78でNO)、ステップS76〜S78の処理が繰り返されて、FET(Q1)のオン状態が保持される。
【0117】
他方、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生し、バッテリ電圧VBAが3.3V未満になった場合には(図13の時刻t13)、VBAモニタ回路15は、FET(Q1)をオフとする(ステップS79)。即ち、VBAモニタ回路15の出力信号をHレベルとしてオア回路OR2の出力信号をHレベルとし、フリップフロップ回路12の出力をLレベルとして、FET(Q1)をオフとする。
【0118】
その後、VBAモニタ回路15は、乱数値によりランダムに決定される待機時間Tpを設定する(ステップS80)。この乱数値は、例えば、図2に示したチャージポンプ13のデータラッチ(0,1,2,3)に基づいて、任意の数値に設定することができ、待機時間Tpはランダムな時間に設定されることになる。
【0119】
次いで、VBAモニタ回路15は、ステップS74の処理で計時した第1経過時間Txが予め設定した閾値時間400μsec未満であるか否かを判断する(ステップS81)。即ち、IC回路51-1において、FET(Q1)をオンとしてからバッテリ電圧VBAが低下して3.3Vを下回るまでの第1経過時間Txが、閾値時間として設定した400μsec未満であるか否かが判断される。
【0120】
そして、400μsec未満である場合には(ステップS81でYES)、FET(Q1)がオフとされた回数を示すカウント値Nをインクリメント(N=N+1)して(ステップS82)、ステップS83に処理を進める。他方、400μsec以上である場合には(ステップS81でNO)、カウント値Nをインクリメントせずに、ステップS83に処理を進める。この処理では、FET(Q1)のオン後、極めて早く(400μsec以内で)バッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下した場合には、デッドショートが発生している可能性が極めて高いのでカウント値Nをインクリメントし、そうでない場合にはカウント値Nをインクリメントしない。
【0121】
その後、VBAモニタ回路15は、カウント値Nの値が0であるか否かを判断し(ステップS83)、N=0である場合には(ステップS83でYES)、カウント値Nを1に設定する(ステップS84)。この処理では、デッドショートの発生していない負荷駆動用の回路に接続されたIC回路51-1、51-3で処理されるカウント値NをN=1に維持する。
【0122】
他方、N=0でないと判断された場合(ステップS83でNO)、或いはステップS84の処理でN=1に設定された場合には、カウント値Nがカウント閾値として設定した「7」であるか否かを判断する(ステップS85)。そして、N=7であると判断した場合には(ステップS85でYES)、駆動信号の出力をLレベルにラッチしてFET(Q1)のオフ状態を保持する(ステップS88)。つまり、FET(Q1)がオフとされた後、再度オンとするリトライ動作を7回繰り返してもなお逆起電力に起因するバッテリ電圧VBAの低下が継続される場合には、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生しているものと判断して、FET(Q1)をオフ状態に保持して負荷RL1の駆動を停止させる。
【0123】
また、カウント値Nが7に達していない場合には(ステップS85でNO)、バッテリ電圧VBAが閾値電圧として設定した3.3Vを上回ったか否かを判断し(ステップS86)、バッテリ電圧VBAが3.3Vを上回らない場合には(ステップS86でNO)、バッテリ電圧VBAが3.3Vを上回るまで待機する。その後、図13の時刻t14でバッテリ電圧VBAが3.3Vを上回った場合には(ステップS86でYES)、ステップS80の処理で決定した待機時間Tpだけ待機し、その後、ステップS73の処理に戻って再度FET(Q1)をオンとする。
【0124】
次に、上記の動作を、図13に示すタイミングチャートを参照して、より詳細に説明する。いま、図1に示した3個のIC回路51-1(CH1)、51-2(CH2)、51-3(CH3)のうち、IC回路51-1に接続した負荷駆動用の回路にデッドショートが発生しているものとすると、IC回路51-1のFET(Q1)をオンとした時刻(t12)の直後に負荷駆動用の回路に逆起電力が発生するので、時間y1が経過した時刻t13にてバッテリ電圧VBAは3.3V未満に低下して該FET(Q1)はオフとされる。
【0125】
この際、図13(d)、(e)に示すように、他の2個のIC回路51-2(CH2)、51-3(CH3)のVBAモニタ回路15においても、バッテリ電圧VBAの低下が検出されるので、それぞれのFET(Q1)をオフとしてFET(Q1)、及び電線を保護する。つまり、時刻t13の時点で全てのIC回路51-1〜51-3のFET(Q1)がオフとされる。
【0126】
また、IC回路51-1ではデッドショートが発生しているのでFET(Q1)をオンとしてから時間y1が経過した後に(y1は400μsec未満)バッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下し、カウント値NがインクリメントされてN=1となる(図12のステップS82参照)。
【0127】
その後、各IC回路51-1〜51-3に接続された各負荷RL1〜RL3は全てオフとなるので、バッテリ電圧VBAは上昇を開始し、時刻t14でバッテリ電圧VBAが3.3V以上に戻ると、待機時間Tpの計時が開始され、待機時間Tpが経過した後に、再度各IC回路51-1〜51-3のFET(Q1)がオンとされる(図12のステップS87参照)。この際、図12のステップS80の処理では乱数値に基づいて待機時間Tpがランダムに設定されるので、各IC回路51-1〜51-3毎に待機時間Tpが相違することになる。つまり、各IC回路51-1〜51-3に設けられるFET(Q1)は、時刻t13で同時にオフとされた後、同時にオンとされるのではなく、時間差をもってオンとされる。例えば、図13(c)に示すようにIC回路51-1では待機時間がTp1、Tp4、Tp6に設定され、IC回路51-2では待機時間がTp2(>Tp1)、Tp7に設定され、IC回路51-3では待機時間がTp3(<Tp3)、Tp5、Tp8に設定される。
【0128】
従って、IC回路51-2のFET(Q1)は、図13(d)に示すように、IC回路51-1のFET(Q1)が再度オンとされる時刻t15よりも遅い時刻t16で再度オンとされる。また、IC回路51-3のFET(Q1)は、図13(e)に示すように、IC回路51-1のFET(Q1)が再度オンとされる時刻t15よりも早い時刻t17で再度オンとされる。
【0129】
その結果、各IC回路51-1〜51-3のFET(Q1)がオンなるタイミングは一致せず同時にオンとならないので、突入電流が一致することはなく、各IC回路51-1〜51-3での突入電流が重複することを回避できる。
【0130】
また、IC回路51-1は、時間Tp1が経過した時刻t15にてFET(Q1)が再度オンとされるが、デッドショートが発生しているので、時間y2(400μsec未満)が経過した時刻t18でFET(Q1)は再度オフとなる。従って、カウント値Nがインクリメントされて、N=2となる。そして、上記の処理が繰り返され、カウント値NがN=7となった時点で、IC回路51-1の出力信号がオフ状態に保持され(図12のステップS88参照)、IC回路51-1に接続された負荷駆動用の回路の駆動が停止される。
【0131】
この際、デッドショートの発生していないIC回路51-2では、FET(Q1)がオンとされてから、次回オンとされるまでの所要時間y5、y8は400μsec以上であるので、カウント値はインクリメントされず、N=1が維持される。同様に、IC回路51-3では、FET(Q1)がオンとされてから、次回オンとされるまでの所要時間y3、y6、y9は400μsec以上であるので、カウント値はインクリメントされず、N=1が維持される。従って、オフ状態にラッチされることはなく、オン状態が保持される。更に、デッドショートの発生源であるIC回路51-1がオフとされた後には、バッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下することはないので、正常に動作しているIC回路51-2、51-3のFET(Q1)がオンとなった後はこのオン状態が保持されて負荷RL2、RL3の駆動が継続されることになる。
【0132】
また、図13(c)の時刻t19〜t20の区間で示すように、時刻t19でFET(Q1)がオンとされ、バッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下するまでの所要時間y4が400μsec以上であった場合には、時刻t20でFET(Q1)はオンとなるものの、カウント値Nはインクリメントされず、この時点でのNの値(N=1)が保持されることになる。そして、次回FET(Q1)をオンとした後、400μsec以内にバッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下した場合には、カウント値NはN=1から再度インクリメントされる。その結果、時間y7、y10でカウント値Nがインクリメントされ、N=7になると、IC回路51-1はオフ状態に保持される。
【0133】
更に、IC回路51-1のFET(Q1)を最初にオンとした後、図12のステップS76で設定したインターバル時間Tcが経過した場合には、カウント値Nがリセットされる。従って、バッテリ電圧VBAの低下が連続して発生しなければ、インターバル時間Tcの経過後にカウント値Nはリセットされるので、デッドショート以外の理由によりバッテリ電圧VBAが低下したような場合に、負荷駆動用の回路をオフ状態に保持するという誤動作を防止できる。
【0134】
このようにして、本実施形態に係る過電流保護装置では、FET(Q1)をオンとした後、バッテリ電圧VBAが閾値電圧として設定した3.3V未満に低下した場合に、各IC回路51-1〜51-3に設けられる各FET(Q1)をオフとして、各負荷駆動用の回路を遮断する。また、FET(Q1)をオンとしてからバッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下するまでの経過時間を計時し、閾値時間として設定した400μsec未満である場合には、カウント値Nをインクリメントする。そして、ランダムに設定した待機時間Tp(Tp1〜Tp8)が経過した後に、各IC回路51-1〜51-3のFET(Q1)をオンとする。
【0135】
従って、デッドショートが発生している負荷に接続したIC回路は、カウント値NがインクリメントされてN=7となり、オフ状態に保持される。また、デッドショートが発生していない負荷に接続したIC回路は、カウント値Nはインクリメントされず、カウント値Nは7に達しないので、オン状態が継続されることになる。その結果、デッドショートが発生している負荷駆動用の回路のみを停止させ、それ以外の負荷駆動用の回路の駆動を継続することができる。即ち、複数の過電流保護装置で、リトライ動作を行う際のタイミングがランダムに設定されるので、各負荷駆動用の回路に設けられたFET(Q1;電子スイッチ)が同時にオンとることを回避でき、デッドショートが発生している負荷駆動用の回路を容易に判別できる。
【0136】
また、カウント値Nはインターバル時間Tc(例えば、0.2秒)以内に7回に達しない場合にはリセットされるので、デッドショート以外の原因でバッテリ電圧VBAが低下するような場合に、負荷駆動用の回路が誤遮断されることを防止できる。
【0137】
更に、バッテリ電圧VBAが3.3V(閾値電圧)未満に低下してFET(Q1)がオフとされ、その後、再度上昇して3.3Vを上回った時点で、待機時間Tpの計時が開始されるので、各IC回路51-1〜51-3で、待機時間Tpの計時を開始する時刻を一致させることができ、正確に待機時間Tpを計時することができる。
【0138】
以上、本発明の過電流保護装置、及び過電流保護システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0139】
例えば、本実施形態では、3個IC回路51-1〜51-3を用いて3系統の負荷駆動用の回路を過電流から保護する構成について説明したが、本発明は3個のIC回路に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、車両に搭載される負荷を駆動するFET(Q1)、及び電線の過電流保護に利用することができる。
【符号の説明】
【0141】
11 バッファ
12 フリップフロップ回路
13 チャージポンプ
14 ロジック回路
15 VBAモニタ回路
16 Vds検出回路
17 オン故障検出器
18 発振器
19 過電圧検出器
51-1〜53-3 IC回路
VB バッテリ(直流電源)
Q1 マルチソースFET
Q1a メインFET
Q1b サブFET
CMP1〜CMP5 比較器
AMP1 アンプ
OR1 オア回路
OR2 オア回路
AND1 アンド回路
Ris 電流検出抵抗
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数系統設けられ、負荷、電子スイッチ、電線からなる負荷駆動用の回路に過電流が流れた際に、過電流発生源となる負荷駆動用の回路の電子スイッチを遮断して該負荷駆動用の回路に設けられる電子スイッチ、及び電線を保護する過電流保護装置、及び過電流保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されるランプやモータ等の負荷は、電子スイッチ(例えば、MOSFET等)を介してバッテリに接続されており、電子スイッチのオン、オフを切り替えることによりその駆動、停止が制御される。また、負荷にショート故障等が発生して負荷駆動用の回路に過電流が流れた場合には、負荷、及び接続用のハーネスが発熱により損傷することがあるので、従来より、過電流保護装置を搭載し、負荷駆動用の回路に過電流が発生した場合にはいち早く電子スイッチを遮断して、回路に設けられる電子スイッチ、及び電線を過電流から保護するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生した場合には、配線のインピーダンスに起因する逆起電力が発生して電源側の電圧が急激に低下するので、負荷電流と基準電流との比較結果に基づいて過電流の発生を検出する方式では、電源電圧がオペアンプの動作範囲電圧以下に低下した場合に過電流検出回路自体が機能しなくなり、電子スイッチを正常に作動させることができなくなる場合がある。
【0004】
そこで、特許文献2に記載されているように、逆起電力の発生により電源電圧が予め設定した下限値を下回った場合に、この電源に接続されている複数の負荷駆動用の回路の各電子スイッチを即時に遮断すると共に、所定時間経過後に再度各電子スイッチをオンとするリトライ動作を実行する手法が提案されている。この手法では、電圧低下の原因がデッドショート以外である場合には、リトライ動作の実行により、電源電圧が定常状態に復帰するので、そのまま電子スイッチをオン状態に維持することができ、他方、いずれかの回路でデッドショートが発生している場合には、リトライ動作の実行によりデッドショートの発生原因となる回路の電子スイッチをオフ状態にラッチすることができるので、電子スイッチ、及び電線を過熱から保護することができる。
【0005】
また、リトライ動作の実行時には、各電子スイッチをオンとするタイミングがそれぞれ時間差を持つように(各電子スイッチが同時にオンとならないように)制御して、各負荷駆動用の回路に流れる突入電流が重畳することを回避することが示されている。つまり、リトライ動作の実行時には、各電子スイッチを同時にオンとするのではなく、時間差を持たせてオンとすることにより、デッドショートが発生した回路を特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−48498号公報
【特許文献2】特開2009−231969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1に記載された従来例では、デッドショート発生時のように、電源電圧が著しく低下してオペアンプが正常に作動しなくなった場合について考慮されていない。
【0008】
また、特許文献2に記載された従来例では、一つの過電流保護装置を用いて、複数の負荷駆動用の回路の電子スイッチを制御し、且つ過電流発生時に各回路の電子スイッチを遮断して回路に設けられた電子スイッチ及びこれに接続される電線を保護する構成であるので、リトライ動作の実行時において各電子スイッチをオンとするタイミングに時間差を持たせることができる。従って、デッドショートが発生した回路を容易に判別できる。
【0009】
ところが、昨今において、1〜2個の負荷駆動用の回路に対して1つの過電流保護装置を設け、各過電流保護装置毎に個別に過電流の発生を検出して過電流保護を行う回路が多く用いられるようになっており、このような場合には、リトライ動作を実行する際に各回路の電子スイッチをオンとするタイミングに時間差を持たせることが容易でない。
【0010】
このため、電源電圧の低下が各過電流保護装置で同時に検出されて各回路に設けられた電子スイッチをオフとし、その後リトライ動作が実行される場合に、各電子スイッチが同一のタイミングで(時間差を持たずに)オンとされる場合があり、このような場合には、電子スイッチのオンと同時に逆起電力が発生した場合に、どの回路が原因であるかを特定することができないという問題が発生していた。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、同一の電源に接続された複数の過電流保護装置どうしで、リトライ動作を実行するタイミングに時間差を持たせることが可能な過電流保護装置、及び過電流保護システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の過電流保護装置は、直流電源と、電子スイッチ、電線、及び負荷を有する負荷駆動用の回路を過電流から保護する過電流保護装置において、前記直流電源の出力電圧(VBA)を検出する電圧検出手段と、前記電子スイッチをオンとした後の経過時間を計時する計時手段と、前記直流電源の出力電圧が予め設定した閾値電圧以下に低下した場合に、前記電子スイッチをオフとし、所定の待機時間が経過した後に、該電子スイッチを再度オンとするスイッチ制御手段と、前記出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して、前記電子スイッチがオフとされた際に、前記所定の待機時間を、ランダムに決定する待機時間決定手段と、前記電子スイッチをオンとしてから、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧に低下するまでの所要時間が予め設定した閾値時間(例えば、400μsec)以下である場合に、この発生回数をカウントするカウント手段と、を有し、前記スイッチ制御手段は、前記カウント手段によるカウント値が所定のカウント閾値(例えば、7回)に達した場合には、前記所定の待機時間の経過に関わらず前記電子スイッチのオフ状態を保持することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記カウント手段は、前記発生回数がカウントされた後、第1の所定時間が経過するまで次回のカウントが発生しなかった場合に、前記カウント値をリセットすることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記スイッチ制御手段は、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して前記電子スイッチをオフとした後、出力電圧が前記閾値電圧まで上昇した時点から、前記待機時間の経過を計時することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の過電流保護システムは、電子スイッチ、電線及び負荷を有する複数の負荷駆動用の回路と、前記各負荷駆動用の回路に接続された唯一の直流電源とを備えた駆動制御回路の電線を、過電流から保護する過電流保護システムにおいて、前記各負荷駆動用の回路は、それぞれ過電流保護装置を有し、一の負荷駆動用の回路に設けられる前記過電流保護装置は、前記直流電源の出力電圧(VBA)を検出する電圧検出手段と、前記一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオンとした後の経過時間を計時する計時手段と、前記直流電源の出力電圧が予め設定した閾値電圧以下に低下した場合に、一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオフとし、所定の待機時間が経過した後に、前記電子スイッチを再度オンとするスイッチ制御手段と、前記出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して、前記一の負荷駆動用の回路の電子スイッチがオフとされた際に、前記所定の待機時間を、他の負荷駆動用の回路に設けられた過電流保護装置の待機時間と相違するように決定する待機時間決定手段と、前記一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオンとしてから、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧に低下するまでの所要時間が予め設定した閾値時間(例えば、400μsec)以下である場合に、この発生回数をカウントするカウント手段と、を有し、前記スイッチ制御手段は、前記カウント手段によるカウント値が所定のカウント閾値(例えば、7回)に達した場合には、前記所定の待機時間の経過に関わらず前記電子スイッチのオフ状態を保持することを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、一の負荷駆動用の回路の前記カウント手段は、前記発生回数がカウントされた後、第1の所定時間が経過するまで次回のカウントが発生しなかった場合に、前記カウント値をリセットすることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記スイッチ制御手段は、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して前記電子スイッチをオフとした後、出力電圧が前記閾値電圧まで上昇した時点から、前記待機時間の経過を計時することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明では、電圧検出手段により直流電源の出力電圧が検出され、検出した出力電圧が閾値電圧(例えば、3.3V)以下に低下した場合に、電子スイッチをオフとし、その後、ランダムに決められた待機時間が経過した後に電子スイッチをオンとする動作を繰り返す。そして、電子スイッチをオンとしてから出力電圧が閾値電圧以下に低下するまでの所要時間が閾値時間(例えば、400μsec)以下である場合に、この回数をカウントし、カウント値がカウント閾値(例えば、7回)に達した場合に、電子スイッチをオフ状態に保持する。従って、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生した場合には、これをいち早く検出して回路をオフ状態に保持することができ、回路に設けられる電子スイッチ及び電線をデッドショートによる発熱から保護することができる。
【0019】
また、待機時間がランダムに決定されるので、一つの直流電源に対して複数の過電流保護装置が並列的に接続されるような場合には、一つの回路にてデッドショートが発生して、直流電源の出力電圧が低下した場合に、他の過電流保護装置では電子スイッチがオフとなるものの、待機時間が経過して再度オンとされた場合に、その後閾値時間以内に直流電源の出力電圧は閾値電圧以下に低下しないので、カウント値はインクリメントされず、カウント閾値に達しない。従って、デッドショートの発生していない回路を継続して駆動させることができる。
【0020】
即ち、待機時間がランダムに設定されるので、デッドショートが発生している負荷駆動用の回路を容易に特定することができ、このデッドショートが発生している回路のみを遮断し、その他の回路の駆動を継続させることができる。
【0021】
請求項2の発明では、第1の所定時間が経過するまでの間に、カウント値がカウント閾値に達しなかった場合には、このカウント値をリセットするので、デッドショート以外の理由で出力電圧が閾値電圧以下となるような場合に、負荷駆動用の回路を誤遮断することを防止することができる。
【0022】
請求項3の発明では、直流電源の出力電圧が閾値電圧以下に低下して電子スイッチがオフとされ、その後、再度上昇して閾値電圧を上回った時点で待機時間の計時が開始されるので、待機時間の計時を開始する時刻を正確に決めることができる。
【0023】
請求項4の発明では、一の負荷駆動用の回路に接続される過電圧保護装置の電圧検出手段により直流電源の出力電圧が検出され、検出した出力電圧が閾値電圧(例えば、3.3V)以下に低下した場合に、一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオフとし、その後、各過電流保護装置毎にランダムに決められた待機時間が経過した後に電子スイッチをオンとする動作を繰り返す。そして、一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオンとしてから出力電圧が閾値電圧以下に低下するまでの所要時間が閾値時間(例えば、400μsec)以下である場合に、この回数をカウントし、カウント値がカウント閾値(例えば、7回)に達した場合に、一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオフ状態に保持する。従って、一の負荷駆動用の回路にデッドショートが発生した場合には、これをいち早く検出してこの回路をオフ状態に保持することができ、回路に設けられる電子スイッチ及び電線をデッドショートによる発熱から保護することができる。
【0024】
また、待機時間が各過電流保護装置毎にランダムに決定されるので、一の負荷駆動用の回路にてデッドショートが発生して、共通とされた直流電源の出力電圧が低下した場合に、他の過電流保護装置では電子スイッチがオフとなるものの、待機時間が経過して再度オンとされた場合に、その後閾値時間以内に直流電源の出力電圧は閾値電圧以下に低下しないので、カウント値はインクリメントされず、カウント閾値に達しない。従って、デッドショートの発生していない回路を継続して駆動させることができる。
【0025】
即ち、待機時間がランダムに設定されるので、デッドショートが発生している回路を容易に特定することができ、このデッドショートが発生している回路のみを遮断し、その他の回路の駆動を継続させることができる。
【0026】
請求項5の発明では、一の負荷駆動用の回路に設けられた過電流保護装置において、第1の所定時間が経過するまでの間に、カウント値がカウント閾値に達しなかった場合には、このカウント値をリセットするので、デッドショート以外の理由で出力電圧が閾値電圧以下となるような場合に、回路を誤遮断することを防止することができる。
【0027】
請求項6の発明では、直流電源の出力電圧が閾値電圧以下に低下して電子スイッチがオフとされ、その後、再度上昇して閾値電圧を上回った時点で待機時間の計時が開始されるので、各過電流保護装置で、待機時間の計時を開始する時刻を一致させることができ、正確に待機時間を計時することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置が複数接続された過電流保護システムの構成を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置、及び過電流保護装置が接続される負荷駆動用の回路の回路図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の処理動作を示すフローチャートの、第1の分図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の処理動作を示すフローチャートの、第2の分図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の、電子スイッチをオンとした直後での過電流と判定する電圧及び経過時間の関係を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の、過電流と判定する電圧及び経過時間の関係を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の、過電流と判定する電圧及び経過時間の関係を示すタイミングチャートである。
【図8】車両に搭載されるホーンを駆動する場合の、負荷電流の変動を示す特性図である。
【図9】車両に搭載されるホーンを駆動する場合の、負荷電流の変化と基準電圧Vref1、2倍電圧Vref2との関係を示す特性図である。
【図10】車両に搭載されるホーンを駆動する場合の、負荷電流の変化と基準電圧Vref1、2倍電圧Vref2との関係を示す特性図である。
【図11】車両に搭載されるホーンを駆動する場合の、負荷電流の変化と基準電圧Vref1の関係を示す特性図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る過電流保護装置の、VBAモニタ回路の処理動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態に係る各過電流保護装置の、VBAモニタ回路の出力信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図14】本発明の一実施形態に係る各過電流保護装置の、VBAモニタ回路の詳細な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る過電流保護システムの構成図であり、例えば、車両に搭載されるランプ、モータ、ホーン等の各負荷RL(RL1〜RL3)を駆動する負荷駆動用の回路(VB、Q1a、RL1及びこれらを接続する電線からなる回路)に搭載され、過電流が流れた際には負荷駆動用の回路を遮断して回路に設けられる電子スイッチ(Q1a)、及び電線を過熱から保護する機能を備える。なお、本実施形態では、一例として3系統の負荷駆動用の回路を保護する保護システムについて説明するが、本発明は3系統に限定されるものではない。
【0030】
図1に示すように、この過電流保護システムは、3個のIC回路51-1〜51-3を備えており、各IC回路51-1〜51-3は、端子D1及び大電流フューズFuを介してバッテリ(直流電源)VBに接続されている。また、各IC回路51-1〜51-3は、端子D5〜D7を介して負荷RL(RL1〜RL3)に接続され、各負荷RLの駆動、停止を制御する。
【0031】
更に、各IC回路51-1〜51-3は、入力I/F54〜56を介して端子D2〜D4に接続され、各端子D2〜D4より駆動信号が入力されるようになっている。
【0032】
図2は、図1に示したIC回路51-1の詳細な構成を示す回路図である。なお、3個のIC回路51-1〜51-3は同一構成を有するので、以下IC回路51-1の構成について説明する。図2に示すようにIC回路51-1は、過電流保護装置100と、マルチソースFET(Q1;以下単に「FET」(Q1)という)とに大別して構成されている。なお、本実施形態では、FET(Q1)としてN型MOSFETを用いているが、P型MOSFETを用いることも可能である。
【0033】
FET(Q1)は、端子D1を介して接続されるバッテリVBと、端子D5を介して接続される負荷RL1との間に設けられ、メインFET(Q1a;電子スイッチ、以下単に「FET(Q1a)」という)と、サブFET(Q1b;以下単に「FET(Q1b)」という)の2個のFETを備えるマルチソース型のMOSFETであり、それぞれのドレイン、ゲートが共通とされている。そして、FET(Q1a)のオン、オフを切り替えることにより、負荷RL1の駆動、停止を制御する。
【0034】
過電流保護装置100は、アンド回路AND1と、該アンド回路AND1の出力端子に接続されたバッファ11とを有し、該バッファ11の出力端子は、FET(Q1)のゲートに接続されている。また、バッファ11には、チャージポンプ13が接続されている。
【0035】
更に、アンド回路AND1の一方の入力端子は端子D2に接続され、他方の入力端子はフリップフロップ回路12のQ出力に接続されている。従って、端子D2にHレベルの信号が供給されると、フリップフロップ回路12の出力信号は通常時においてHレベルであるから、アンド回路AND1の出力信号がHレベルとなり、更に、バッファ11にてこのHレベルの信号に所定レベルの電圧が加えられてFET(Q1)のゲートに供給されるので、該FET(Q1)がオンとなり、負荷RL1を駆動させることができる。
【0036】
また、過電流保護装置100は、アンプAMP1を備えており、該アンプAMP1のマイナス側入力端子はFET(Q1a)のソース(電圧Vs)に接続され、プラス側入力端子はFET(Q1b)のソースに接続されている。アンプAMP1の出力端子は、N型のMOSFET(Q2)のゲートに接続され、MOSFET(Q2)のドレインは、FET(Q1b)のソースに接続され、MOSFET(Q2)のソースは、電流検出抵抗Risの一端に接続され、該電流検出抵抗Risの他端はグランドに接続されている。従って、電流検出抵抗Risの一端には、負荷電流I0に比例した電圧(以下、これを「参照電圧Vp」という)が発生することになる。
【0037】
更に、過電流保護装置100は、5個の比較器CMP1〜CMP5を備えており、このうち、比較器CMP5は、プラス側入力端子が電源Vtfに接続され、マイナス側入力端子はFET(Q1a)のソースに接続される。従って、FET(Q1a)のドレイン・ソース間電圧(VB−Vs)が電源Vtfの出力電圧を上回った際に、比較器CMP5の出力信号はLレベルからHレベルに変化する。この出力信号は、Vds検出回路16、及びオン故障検出回路17にそれぞれ出力される。
【0038】
また、4個の比較器CMP1〜CMP4は、負荷駆動用の回路に流れる過電流の度合いに応じた判定結果を出力するために設けており、比較器CMP2〜CMP4のプラス側入力端子は、MOSFET(Q2)のソースに接続され、比較器CMP1のプラス側入力端子は、抵抗Rcfを介してMOSFET(Q2)のソースに接続されている。更に、比較器CMP1のプラス側入力端子は、コンデンサCfの一端に接続され、該コンデンサCfの他端はグランドに接続されている。従って、抵抗RcfとコンデンサCfで時定数回路が形成され、該時定数回路により上述の参照電圧Vpは平滑化されて、低速追随電圧Vcが生成される。また、低速追随電圧Vcが必要のない負荷を接続する場合には、コンデンサCfを接続しない。
【0039】
比較器CMP1の出力端子、及び比較器CMP2の出力端子は、オア回路OR1の入力端子に接続されている。
【0040】
また、比較器CMP1のマイナス側入力端子には、予め設定した基準電圧Vref1が供給され、比較器CMP2のマイナス側入力端子には、基準電圧Vref1を2倍した2倍電圧Vref2が供給され、比較器CMP3のマイナス側入力端子には、基準電圧Vref1を4倍した4倍電圧Vref4が供給され、更に、比較器CMP4のマイナス側入力端子には、基準電圧Vref1を8倍した8倍電圧Vref8が供給される。
【0041】
また、オア回路OR1の出力端子はロジック回路14のIN-1に接続され、比較器CMP2の出力端子はロジック回路14のIN-2に接続され、比較器CMP3の出力端子はロジック回路14のIN-4に接続され、比較器CMP4の出力端子はロジック回路14のIN-8に接続されている。
【0042】
ロジック回路14には、前述した各比較器CMP2〜CMP4の出力信号、及びオア回路OR1の出力信号以外に、過電圧検出信号、クロック信号、及び端子D2より入力されるFET(Q1)の駆動信号が供給される。
【0043】
ロジック回路14は、後述するように、タイマ機能(T1〜T4)、及びカウント機能(Ct)を備えており、過電流が発生した場合に、過電流の継続時間、及び過電流が発生した回数をカウントする機能を備えている。更に、ロジック回路14の出力端子(OUT)はオア回路OR2が有する3つの入力端子のうちの一つに接続され、出力端子(OUT)の出力信号がHレベルとなった場合に、FET(Q1)の駆動信号をHレベルとする。
【0044】
また、ロジック回路14は、発振器18に接続され、該発振器18よりクロック信号が供給される。発振器18は、コンデンサCoscの一端に接続され、その他端はグランドに接続されている。更に、ロジック回路14は、過電圧検出器19に接続され、バッテリVBの出力電圧VBAが過電圧となって過電流遮断が発生しても、バッテリVBAの電圧が正常に戻れば、負荷駆動用の回路の遮断を解除する。
【0045】
また、オア回路OR2の2つ目の入力端子はVBAモニタ回路15に接続され、3つ目の入力端子はVds検出回路16に接続されている。また、オア回路OR2の出力端子は、フリップフロップ回路12のリセット入力端子に接続されている。
【0046】
VBAモニタ回路15は、バッテリVBの電圧を監視する回路であり、バッテリVBの電圧が予め設定した閾値電圧(例えば、3.3V)以下に低下した場合に、IC回路51を正常に駆動することができないと判断して、フリップフロップ回路12のリセット入力に電圧異常信号を出力し、FET(Q1)をオフとして負荷RL1の駆動を停止させる。
【0047】
そして、VBAモニタ回路15は、図14に示すように、バッテリ電圧VBAを検出する電圧検出手段15aと、FET(Q1)をオンとした後の経過時間を計時する計時手段15bと、バッテリ電圧VBAが予め設定した閾値電圧(例えば、3.3V)以下に低下した場合に、FET(Q1)をオフとし、所定の待機時間(Tp)が経過した後に、FET(Q1)を再度オンとするスイッチ制御手段15cと、バッテリ電圧VBAが閾値電圧以下に低下して、FET(Q1)がオフとされた際に、所定の待機時間(Tp)をランダムに決定する待機時間決定手段15dと、FET(Q1)をオンとしてから、バッテリ電圧VBAが閾値電圧以下に低下するまでの所要時間が、予め設定した閾値時間(例えば、400μsec)以下である場合に、この発生回数をカウントするカウント手段15eを備えている。なお、VBAモニタ回路15の詳細な動作については後述する。
【0048】
Vds検出回路16は、比較器CMP5でFET(Q1a)のソース電圧Vsが基準電圧Vtfを超えたと判断された際に、FET(Q1)のドレイン・ソース間電圧Vdsが異常であると判断し、FET(Q1)をオフとして負荷RL1の駆動を停止させる。
【0049】
オン故障検出回路17は、比較器CMP5の出力信号に基づいてFET(Q1)がオン故障したか否かを判定し、オン故障が発生した場合にはオン故障検出信号を出力する。
【0050】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る負荷駆動用の回路の保護装置の動作について、図3、図4に示すフローチャートを参照して説明する。ここで、図3、図4でステップS11〜S32までの処理は、電源投入時の動作であり、ステップS33〜S58までの処理は、定常時の動作である。
【0051】
始めに、端子D2にFET(Q1)の駆動信号が供給されると、この駆動信号によりアンド回路AND1の出力はHレベルとなるので、バッファ11を介してFET(Q1)のゲートに、バッテリVBの電圧にチャージポンプ13の出力電圧が加算された駆動電圧が供給される。その結果、FET(Q1)がオンとなり(ステップS11)、FET(Q1a)を介して負荷RL1に負荷電流I0が流れ、負荷RL1が駆動する。
【0052】
また、負荷RL1に負荷電流I0が流れると、アンプAMP1は、FET(Q1a)のソース電圧Vsと、FET(Q1b)のソース電圧が等しくなるようにFET(Q1b)に参照電流Irを流すので、この参照電流Irは、負荷電流I0に比例した大きさの電流となる。更に、この参照電流Irは電流検出抵抗Risを介してグランドに流れるので(Ris≪Rcf)、電流検出抵抗Risに生じる参照電圧Vpは、負荷電流I0に比例した大きさの電圧となる。本実施形態では、この参照電圧Vpと4種類の基準電圧Vref1、2倍電圧Vref2、4倍電圧Vref4、8倍電圧Vref8を対比することにより、過電流の大きさを判定する。そして、過電流の大きさと継続時間に応じて負荷駆動用の回路を遮断するか否かを決定する。
【0053】
ロジック回路14は、FET(Q1)の駆動信号が供給されると、時間T4を計時するT4タイマを作動させる(ステップS12)。なお、時間T4は、例えば突入電流の発生時間(例えば、2秒)に設定する。
【0054】
次いで、ロジック回路14は、比較器CMP1の出力信号、または比較器CMP2の出力信号の少なくとも一方がHレベルになったか否かを判断する。換言すれば、負荷電流I0に比例した参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を上回ったか、或いは参照電圧Vpを平滑化した電圧(低速追随電圧)Vcが基準電圧Vref1を上回ったか否かを判定する(ステップS13)。なお、以下ではステップS13の判定がYESとなることを「過電流判定を満たす」と称し、NOとなることを「過電流判定を満たさない」と称する。
【0055】
そして、負荷電流I0が過電流判定を満たさない場合(各比較器CMP1、CMP2の出力信号が共にLレベルである場合)には(ステップS13でNO)、ロジック回路14による時間T4の計時が終了したか否かが判定され(ステップS14)、時間T4が経過した場合には(ステップS14でYES)、後述するステップS33(図4)に処理を進める。また、時間T4が経過しない場合には(ステップS14でNO)、ステップS13の処理に戻る。
【0056】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たす場合(各比較器CMP1、CMP2の出力信号のうち少なくとも一方がHレベルである場合)には(ステップS13でYES)、負荷駆動用の回路に過電流が発生しているものと判断し、時間T1(T1<T4)を計時するT1タイマを作動させる(ステップS15)。
【0057】
ここで、例えば車両に搭載されるホーンを駆動する負荷駆動用の回路を例に挙げると、ホーンを駆動する際に負荷駆動用の回路に流れる電流は、図8の曲線q1に示すように、短時間に上下方向に大きく変動する波形となり、電流検出抵抗Risに生じる参照電圧Vpも同様に、曲線q1のように変化する。また、時定数回路を通過して得られる低速追随電圧Vcは、曲線q2に示すように、平滑化された波形となる。そして、曲線q1が2倍電圧Vref2を超えた場合、または、曲線q1が基準電圧Vref1を超えた場合に、オア回路OR1の出力信号がHレベルとなる(図3のステップS13の判定がYESとなる)。
【0058】
次いで、負荷電流I0に比例した参照電圧Vpと、8倍電圧Vref8を比較する(ステップS16)。その結果、参照電圧Vpが8倍電圧Vref8を超えていると判断した場合には(ステップS16でYES)、ロジック回路14はオア回路OR2に停止信号(Hレベルの信号)を出力し、該停止信号によりFET(Q1)の駆動信号をオフとする(ステップS32)。即ち、8倍電圧Vref8を超える程度の過大な負荷電流I0が負荷駆動用の回路に流れた場合には、即時にFET(Q1)を遮断して負荷駆動用の回路を保護する。つまり、負荷駆動用の回路をオンとした直後(FET(Q1)のオン直後)には、該負荷駆動用の回路に定常電流の8倍程度の突入電流が流れるので、基準電圧Vref1の8倍電圧Vref8を超えた場合には、短絡電流が流れているものと判断して、時間T1の経過を待たず即時に負荷駆動用の回路を遮断する。
【0059】
他方、参照電圧Vpが8倍電圧Vref8を超えていないと判断した場合には(ステップS16でNO)、時間T1が経過したか否かを判断する(ステップS17)。つまり、過電流が発生しているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが8倍電圧Vref8に達していない程度である場合には、時間T1が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0060】
そして、時間T1が経過した場合には(ステップS17でYES)、前述したステップS13と同様に、ロジック回路14は負荷電流I0が過電流判定を満たすか否かを判断する(ステップS18)。つまり、時間T1が経過した後に、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0061】
そして、過電流判定を満たさないと判断した場合には(ステップS18でNO)、負荷電流I0は定常電流に戻ったものと判断し、ロジック回路14による時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS19)、時間T4が経過した場合には(ステップS19でYES)、ステップS33(図4)に処理を進める。また、時間T4が経過しない場合には(ステップS19でNO)、ステップS18の処理に戻る。
【0062】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たすと判断した場合には(ステップS18でYES)、参照電圧Vpは8倍電圧Vref8よりも低いものの、依然として負荷駆動用の回路に過電流が発生しているものと判断し、時間T2(既定時間;T1<T2<T4)を計時するT2タイマを作動させる(ステップS20)。
【0063】
その後、参照電圧Vpと4倍電圧Vref4とを比較する(ステップS21)。その結果、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えていると判断した場合には(ステップS21でYES)、ロジック回路14は、FET(Q1)の駆動信号をオフとして該FET(Q1)を遮断する(ステップS32)。即ち、FET(Q1)をオンとした直後であっても、4倍電圧Vref4を超える程度の過電流が時間T1を超えて継続して負荷駆動用の回路に流れた場合には、FET(Q1)を遮断して負荷駆動用の回路を保護する。
【0064】
他方、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えていないと判断した場合には(ステップS21でNO)、時間T2が経過したか否かを判断する(ステップS22)。つまり、負荷電流I0が過電流判定を満たしているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが4倍電圧Vref4に達していない大きさである場合には、時間T2が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0065】
そして、時間T2が経過した場合には(ステップS22でYES)、前述したステップS13、S18と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たすか否かを判断する(ステップS23)。つまり、FET(Q1)のオン後、時間(T1+T2)が経過した後に、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0066】
そして、負荷電流I0が過電流判定を満たさない場合には(ステップS23でNO)、負荷電流I0は定常電流に戻ったものと判断し、ロジック回路14による時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS24)、時間T4が経過した場合には(ステップS24でYES)、ステップS33(図4)に処理を進める。また、時間T4が経過しない場合には(ステップS24でNO)、ステップS23の処理に戻る。
【0067】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たす場合には(ステップS23でYES)、参照電圧Vpは4倍電圧Vref4よりも低いものの、依然として負荷駆動用の回路に過電流が発生しているものと判断し、時間T3(既定時間;T2<T3<T4)を計時するT3タイマを作動させ、且つ、カウント値Ct=0にセットする(ステップS25)。
【0068】
次いで、参照電圧Vpと2倍電圧Vref2を比較する(ステップS26)。その結果、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えていると判断した場合には(ステップS26でYES)、ロジック回路14はFET(Q1)の駆動信号をオフとして該FET(Q1)を遮断する(ステップS32)。即ち、2倍電圧Vref2を超える程度の過電流が時間(T1+T2)を超えて継続して負荷駆動用の回路に流れた場合には、FET(Q1)を遮断して負荷駆動用の回路を保護する。
【0069】
他方、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えていないと判断した場合には(ステップS26でNO)、時間T3が経過したか否かを判断する(ステップS27)。つまり、過電流が発生しているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが2倍電圧Vref2に達していない程度である場合には、時間T3が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0070】
そして、時間T3が経過した場合には(ステップS27でYES)、前述したステップS13、S18、S23と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(ステップS28)。つまり、FET(Q1)のオン後、時間(T1+T2+T3)が経過した後に、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0071】
そして、負荷電流I0が過電流判定を満たさない場合には(ステップS28でNO)、負荷電流I0は定常電流に戻ったものと判断し、ロジック回路14による時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS29)、時間T4が経過した場合には(ステップS29でYES)、ステップS33(図4)に処理を進める。また、時間T4が経過しない場合には(ステップS29でNO)、ステップS28の処理に戻る。
【0072】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たす場合には(ステップS28でYES)、参照電圧Vpは2倍電圧Vref2よりも低いものの、依然として負荷駆動用の回路に過電流が発生しているものと判断し(この場合は、CMP1の出力信号がHレベル、CMP2の出力信号がLレベルである)、カウント値Ct=4であるか否かを判断する(ステップS30)。そして、Ct≠4の場合には(ステップS30でNO)、カウント値Ctをインクリメントし(Ct=Ct+1とし)、且つ、T3タイマを作動させ(ステップS31)、ステップS26に処理を戻す。
【0073】
その後、ステップS30の処理でカウント値Ct=4(既定回数)となった場合には、FET(Q1)を遮断する(ステップS32)。つまり、ステップS26〜S31の処理では、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2よりも小さく、且つ負荷電流I0が過電流判定を満たす条件、即ち、比較器CMP1の出力信号のみがHレベルとなった場合に、この状態が時間T3だけ継続する回数が5回(Ct=0〜4の5回)に達した際に、FET(Q1)を遮断して負荷駆動用の回路を保護する。また、カウント値Ct=4に達する前に時間T4が経過した場合には、ステップS33(図4)に処理を進める。
【0074】
ここまでの処理をまとめると、以下の通りである。
(a)FET(Q1)をオンとした後、負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、参照電圧Vpが8倍電圧Vref8を超えた場合には、即時にFET(Q1)をオフとする。図5は時間経過に対する参照電圧Vpの変化を示すタイミングチャートであり、図5に示す時刻t0でFET(Q1)をオンとし、時刻t0〜t1の時間帯でVpがVref8を超えた場合に、FET(Q1)をオフとする。
【0075】
(b)FET(Q1)をオンとした後、負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、過電流判定を満たしてから時間T1が経過した際に、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えている場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、図5に示す時刻t1〜t2の時間帯でVpがVref4を超えた場合に、FET(Q1)をオフとする。
【0076】
(c)上記の時間T1が経過し、更に時間T2が経過した際に、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えている場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、図5に示す時刻t2〜t3の時間帯でVpがVref2を超えた場合に、FET(Q1)をオフとする。
【0077】
(d)上記の時間T1が経過し、更に時間T2が経過した際に、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を下回っており、且つ負荷電流I0が過電流判定を満たしている時間がT3に達し、この回数が5回となった場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、図5に示す時刻t2〜t5の時間帯(t3〜t4を除く)で、過電流判定を満たし、且つVpがVref2を下回る時間がT3に達し、更にこれが5回繰り返された場合に、FET(Q1)をオフとする。なお、途中で過電流判定を満たさない時間帯(t3〜t4)が存在しても、FET(Q1)をオンとしてからの経過時間がT4に達していなければ、カウント値Ctはリセットされないので、時刻t5までカウント値Ctのカウントが継続される。
【0078】
こうして、FET(Q1)をオンとした直後において、負荷電流I0の大きさと、その継続時間に応じてFET(Q1)をオフとするか否かを判断することにより、FET(Q1)のオン時に生じる突入電流による誤遮断を防止し、且つ、短絡事故等に起因して過電流が発生した場合には、FET(Q1)をオフとしてFET(Q1)、及び電線を保護することができる。
【0079】
一方、FET(Q1)がオンとされてから時間T4(例えば、2秒)が経過すると、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(図4の、ステップS33)。つまり、FET(Q1)のオン後、時間T4が経過した後に、過電流が発生しているか否かを判断する。
【0080】
そして、過電流判定を満たさないと判断した場合には(ステップS33でNO)、負荷電流I0は定常電流であるものと判断し、ロジック回路14によるT4タイマが作動中であるか否かを判断し(ステップS34)、作動中でなければT4タイマを作動させた後(ステップS36)、ステップS33の処理に戻る。他方、T4タイマが作動中である場合には、時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS35)、ステップS33の処理に戻る。即ち、ステップS33〜S36の処理では、FET(Q1)をオンとしてから時間T4が経過した後に(突入電流が収束して定常電流となった場合に)、再度T4タイマを作動させて時間T4の計時を開始し、過電流が発生しなければ(ステップS33でNOの状態が継続されれば)、ステップS33〜S36の処理が繰り返される。つまり、負荷駆動用の回路が定常電流で動作しているときには、この処理が繰り返されることで、FET(Q1)のオン状態が保持される。
【0081】
また、負荷電流I0が過電流判定を満たす場合には(ステップS33でYES)、ロジック回路14のT5タイマ(T5<T4)を作動させ、且つ、T4タイマをリセットする。更に、カウント値Ct=0に設定する(ステップS37)。
【0082】
次いで、負荷電流I0に比例した参照電圧Vpと4倍電圧Vref4とを比較する(ステップS38)。その結果、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えていると判断した場合には(ステップS38でYES)、ロジック回路14はオア回路2に停止信号を出力し、該停止信号によりFET(Q1)の駆動信号をオフとして該FET(Q1)を遮断する(図3の、ステップS32)。即ち、FET(Q1)をオンとしてしばらく時間が経過し、突入電流が収束した状態において、4倍電圧Vref4を超えるような過大な電流が負荷駆動用の回路に流れた場合には、即時にFET(Q1)を遮断してFET(Q1)、及び電線を保護する。
【0083】
また、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えていないと判断した場合には(ステップS38でNO)、時間T5(既定時間)が経過したか否かを判断する(ステップS39)。つまり、負荷電流I0が過電流判定を満たしているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を上回らない程度である場合には、時間T5が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0084】
そして、時間T5が経過した場合には(ステップS39でYES)、前述したステップS33と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(ステップS40)。つまり、時間T5が経過した後に、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0085】
そして、過電流判定を満たしていないと判断した場合には(ステップS40でNO)、負荷電流I0は定常電流であるものと判断し、ロジック回路14によるT4タイマが作動中であるか否かを判断し(ステップS41)、作動中でなければT4タイマを作動させた後(ステップS43)、ステップS40の処理に戻る。他方、T4タイマが作動中である場合には、時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS42)、時間T4が経過している場合には(ステップS42でYES)、ステップS33の処理に戻る。また、時間T4が経過していない場合には(ステップS42でNO)、ステップS40の処理に戻る。この処理では、過電流が発生していないと判定されていても、時間T4が経過していない場合にはカウント値Ct(後述のS44参照)の値を維持し、時間T4が経過した場合にはカウント値Ctをリセットすることになる。
【0086】
他方、負荷電流I0が過電流判定を満たしている場合には(ステップS40でYES)、カウント値Ct=1であるか否かを判断し(ステップS44)、初期的にはCt=0であるから(ステップS44でNO)、カウント値Ctをインクリメントし、且つ、T5タイマを作動させる(ステップS45)。その後、ステップS38に処理を戻す。
【0087】
その後、ステップS38〜S44の処理を繰り返し、ステップS40の処理でYESと判定した場合には、カウント値Ct=1(既定回数)となるので、ステップS44の処理がYES判定となる。つまり、負荷電流I0が過電流判定を満たし、且つ、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4に達しない状態が時間T5だけ継続され、更に、その回数が2回に達した場合には、ステップS44でYES判定となる。
【0088】
ステップS44でYES判定とされた場合には、前述したステップS33、S40と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(ステップS46)。つまり、カウント値Ct=1となった後、なお過電流が発生しているか否かを判断する。
【0089】
そして、過電流判定を満たさない場合には(ステップS46でNO)、負荷電流I0は定常電流であるものと判断し、ロジック回路14によるT4タイマが作動中であるか否かを判断し(ステップS47)、作動中でなければT4タイマを作動させた後(ステップS49)、ステップS46の処理に戻る。他方、T4タイマが作動中である場合には(ステップS47でYES)、時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS48)、時間T4が経過している場合には(ステップS48でYES)、ステップS33の処理に戻る。また、時間T4が経過していない場合には(ステップS48でNO)、ステップS46の処理に戻る。この処理では、過電流が発生していないと判定されていても、時間T4が経過していない場合にはカウント値Ctの値を維持し、時間T4が経過した場合にはカウント値Ctをリセットすることになる。
【0090】
他方、過電流判定を満たす場合には(ステップS46でYES)、T5タイマを作動させ、T4タイマをリセットし、カウント値Ct=0とする(ステップS50)。つまり、4倍電圧Vref4を下回る程度の過電流が時間T5だけ継続し、これが2回繰り返されてもなお過電流が発生している場合には、再度T5タイマを作動させ、且つ、T4タイマをリセットし、カウント値Ctをリセットする。
【0091】
その後、参照電圧Vpと2倍電圧Vref2を比較する(ステップS51)。その結果、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を上回っていると判断した場合には(ステップS51でYES)、ロジック回路14はオア回路OR2に停止信号を出力し、該停止信号によりFET(Q1)の駆動信号をオフとして該FET(Q1)を遮断する(図3の、ステップS32)。即ち、4倍電圧Vref4を下回る程度の過電流が時間T5の2回分の時間だけ継続し、その後、なお2倍電圧Vref2を超える程度の過電流が発生している場合には、FET(Q1)を遮断してFET(Q1)、及び電線を保護する。
【0092】
他方、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えていないと判断した場合には(ステップS51でNO)、時間T5が経過したか否かが判断される(ステップS52)。つまり、過電流が発生しているものの、その過電流に対応する参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を下回る程度である場合には、時間T5が経過するまでFET(Q1)のオン状態を継続する。
【0093】
そして、時間T5が経過した場合には(ステップS52でYES)、前述したステップS33、S40、S46と同様に、ロジック回路14は、負荷電流I0が過電流判定を満たしているか否かを判断する(ステップS53)。
【0094】
その結果、過電流判定を満たさない場合には(ステップS53でNO)、負荷電流I0は定常電流であるものと判断し、ロジック回路14によるT4タイマが作動中であるか否かを判断し(ステップS54)、作動中でなければT4タイマを作動させた後(ステップS56)、ステップS53の処理に戻る。他方、T4タイマが作動中である場合には(ステップS54でYES)、時間T4の計時が終了したか否かを判断し(ステップS55)、時間T4が経過している場合には(ステップS55でYES)、ステップS33の処理に戻る。また、時間T4が経過していない場合には(ステップS55でNO)、ステップS53の処理に戻る。この処理では、過電流が発生していないと判断されていても、時間T4が経過していない場合にはカウント値Ctの値を維持し、時間T4が経過した場合にはカウント値Ctをリセットすることになる。
【0095】
他方、過電流判定を満たす場合には(ステップS53でYES)、カウント値Ct=4であるか否かを判断し、Ct=4でない場合には(ステップS57でNO)、カウント値Ctをインクリメントし、且つ、T5タイマを作動させて(ステップS58)、ステップS51の処理に戻る。
【0096】
また、カウント値Ct=4(既定回数)であると判断した場合には(ステップS57でYES)、FET(Q1)を遮断して負荷駆動用の回路を保護する(ステップS32)。
【0097】
ここで、図4に示すステップS33以降の処理をまとめると、以下の(e)〜(g)のようになる。
【0098】
(e)突入電流が収束している状態で負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を超えた場合には、即時にFET(Q1)をオフとする。図6は突入電流の収束後においての、時間経過に対する参照電圧Vpの変化を示すタイミングチャートであり、図6に示す時刻t0で過電流が発生し、VpがVref4を超えた場合には、即時にFET(Q1)をオフとする。
【0099】
(f)負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、参照電圧Vpが4倍電圧Vref4を下回る程度の過電流が時間T5だけ継続し、更にこれが2回繰り返され、その後、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超える場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、図6に示す時刻t0〜t1の時間帯(時間T5が2回繰り返される時間)でVpがVref4を下回り、その後(時刻t1の後)VpがVref2を超える場合には、FET(Q1)をオフとする。
【0100】
(g)負荷電流I0が過電流判定を満たし、更に、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を下回る程度の過電流が時間T5だけ継続し、更にこれが5回(Ct=0〜4の5回)繰り返された場合には、FET(Q1)をオフとする。即ち、例えば、図6に示す時刻t1〜t2の時間帯で過電流の発生する時間T5が3回繰り返され、その後、時刻t2〜t3の時間帯で定常電流に戻り、更に、時刻t3から過電流の発生する時間T5が2回繰り返された場合(但し、時刻t2〜t3の時間Tqは、Tq<T4)には、この時刻t4でカウント値Ct=4となって、FET(Q1)をオフとする。他方、図7に示すように、時刻t2で定常電流に戻り、再度過電流が検出される時刻t5までの経過時間TqがTq>T4である場合には、図4のステップS55の処理でステップS33の処理に戻るので、カウント値Ctがリセットされる。従って、時刻t5〜t6の時間帯(時間T5が7回繰り返された時間)で過電流が検出された場合に、FET(Q1)をオフとする。
【0101】
こうして、負荷駆動用の回路に流れる突入電流が収束した後において、負荷電流I0の大きさ及びその継続時間に応じて、FET(Q1)のオフとするか否かを判断することにより、負荷駆動用の回路に生じる短絡事故等に起因して過電流が発生した場合には、FET(Q1)をオフとしてFET(Q1)、及び電線を保護することができる。
【0102】
次に、オア回路OR1の出力信号を用いて過電流判定を行うことによる作用について、図9〜図11を参照して詳細に説明する。
【0103】
前述したように、本実施形態では参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を超えた場合に比較器CMP2の出力信号がHレベルとなり、参照電圧Vpを平滑化して得られる低速追随電圧Vcが基準電圧Vref1を超えた場合に比較器CMP1の出力信号がHレベルとなる。更に、これらのうちの少なくとも一方がHレベルになると、オア回路OR1の出力信号がHレベルとなって、過電流判定を満たすことになる。
【0104】
つまり、図9に示す曲線q11のように脈動する負荷電流I0が流れた場合には、参照電圧Vpのピーク値は2倍電圧Vref2を超えないので、比較器CMP2の出力信号はLレベルである。
【0105】
他方、低速追随電圧Vcは、曲線q12に示すように平滑化されるので、負荷電流I0の脈動の影響が軽減され、基準電圧Vref1を超えず、比較器CMP1の出力信号はLレベルとなり、オア回路OR1の出力信号は継続してLレベルとなる。即ち、過電流判定を満たさないことになる。従って、このような場合には、FET(Q1)は遮断されることなく、負荷RLの駆動が継続されることになる。
【0106】
これに対して、時定数回路を使用せずに、直接参照電圧Vpを比較器CMP1の入力端子(+端子)に供給し、基準電圧Vref1と比較するように構成すると(つまり、参照電圧Vpが基準電圧Vref1を超えることを過電流判定の条件に設定すると)、図9に示す時刻t2〜t3間では比較器CMP1の出力信号はLレベルとなるが、時刻t1〜t2の間では比較器CMP1の出力信号はHレベルとなり、過電流判定を満たしてしまい、FET(Q1)が遮断されてしまう。
【0107】
この問題を回避するためには、図11に示すように、基準電圧Vref1を大きい値とし、図9に示した2倍電圧Vref2と同等のレベルに設定しなければならない。この場合には、図11に示す符号q13のように、基準電圧Vref1を若干下回る程度の電流が継続して流れた場合には、FET(Q1)は遮断されないが、負荷駆動用の回路の電線温度が上昇して過熱するというトラブルが発生してしまう。
【0108】
即ち、本発明では、比較器CMP1、CMP2の出力のうち少なくとも一方がHレベルとなった場合に、過電流判定を満たすので、図8の符号q1に示したような脈動電流が継続して流れた場合でも、FET(Q1)を誤遮断することがなく、また、低めの過電流が継続して流れた場合には、これを検出してFET(Q1)を遮断することができる。
【0109】
更に、図10に示すように、時刻t4の時点で負荷駆動用の回路にデッドショートが発生した場合には、負荷駆動用の回路に短絡電流が流れるので、図10に示す曲線q12(低速追随電圧Vc)は時定数をもって緩やかに上昇するのに対して、曲線q11(参照電圧Vp)は急激に上昇し、瞬時に2倍電圧Vref2を上回り、更に、4倍電圧Vref4を上回る。即ち、低速追随電圧Vcが基準電圧Vref1を超えるよりも早く、参照電圧Vpが2倍電圧Vref2を上回るので、瞬時に過電流判定が満たされることになり、その後4倍電圧Vref4を上回った時点で、FET(Q1)を遮断してFET(Q1)、及び電線を保護することができる。
【0110】
次に、本発明の特徴的な構成であるVBAモニタ回路15の動作について、図12に示すフローチャート、及び図13に示すタイミングチャートを参照して説明する。図13において、(a)はバッテリVBの出力電圧VBAの変化を示す特性図、(b)はIC回路51-1(CH1)に設けられるVBAモニタ回路15に入力される信号、(c)はその出力信号、(d)はIC回路51-2(CH2)に設けられるVBAモニタ回路15の出力信号、(e)はIC回路51-3に設けられるVBAモニタ回路15の出力信号を示している。なお、図13(c)〜(e)に示す出力信号は、その出力信号が図2に示すオア回路OR2に出力されることから、「ON」がLレベルの信号、「OFF」がHレベルの信号である。
【0111】
前述したように、VBAモニタ回路15は、バッテリVBの出力電圧VBAを監視し、バッテリ電圧VBAが所定の電圧(例えば、3.3V)以下に低下した場合には、FET(Q1)を遮断する動作を複数回(例えば、7回)繰り返し、バッテリ電圧VBAが通常の電圧に戻らない場合には、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生しているものと見なしてFET(Q1)をオフ状態に保持し、負荷駆動用の回路を保護する機能を備える。
【0112】
始めに、VBAモニタ回路15は、図13に示す時刻t11で端子D1からの駆動信号の入力を検出すると(ステップS71)、ターンオン時間Tdonだけ待機し(ステップS72)、その後、時刻t12でFET(Q1)をオンとする信号を出力する(ステップS73)。即ち、Lレベルの出力信号をオア回路OR2に出力する。これにより、FET(Q1)はオンとなり、負荷RL1が駆動する。
【0113】
次いで、VBAモニタ回路15は、FET(Q1)がオンとなってからの第1経過時間Txの計時を開始する(ステップS74)。更に、第2経過時間Trの計時を開始する(ステップS75)。ここで、第1経過時間Txは、FET(Q1)がオンとされてからバッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下するまでの時間を計時するために使用し、第2経過時間Trは、FET(Q1)がオンとされてから予め設定したインターバル時間Tc(第1の所定時間、例えば0.2秒)が経過したか否かを判断するために使用する。
【0114】
VBAモニタ回路15は、第2経過時間Trがインターバル時間Tc未満であるか否かを判定する(ステップS76)。そして、第2経過時間Trがインターバル時間Tc以上である場合には(ステップS76でNO)、FET(Q1)がオフとされた回数を示すカウント値Nを0にリセットする(ステップS77)。
【0115】
他方、第2経過時間Trがインターバル時間Tc未満である場合には(ステップS76でYES)、バッテリ電圧VBAが所定電圧として設定した3.3V未満であるか否かを判断する(ステップS78)。この処理では、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生しているか否かを判定しており、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生している場合には、FET(Q1)をオンとした際に負荷駆動用の回路に逆起電力が生じて、バッテリ電圧VBAが急激に低下するので、3.3V未満に低下することになる。
【0116】
そして、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生しておらず、バッテリ電圧VBAが3.3V以上である場合には(ステップS78でNO)、ステップS76〜S78の処理が繰り返されて、FET(Q1)のオン状態が保持される。
【0117】
他方、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生し、バッテリ電圧VBAが3.3V未満になった場合には(図13の時刻t13)、VBAモニタ回路15は、FET(Q1)をオフとする(ステップS79)。即ち、VBAモニタ回路15の出力信号をHレベルとしてオア回路OR2の出力信号をHレベルとし、フリップフロップ回路12の出力をLレベルとして、FET(Q1)をオフとする。
【0118】
その後、VBAモニタ回路15は、乱数値によりランダムに決定される待機時間Tpを設定する(ステップS80)。この乱数値は、例えば、図2に示したチャージポンプ13のデータラッチ(0,1,2,3)に基づいて、任意の数値に設定することができ、待機時間Tpはランダムな時間に設定されることになる。
【0119】
次いで、VBAモニタ回路15は、ステップS74の処理で計時した第1経過時間Txが予め設定した閾値時間400μsec未満であるか否かを判断する(ステップS81)。即ち、IC回路51-1において、FET(Q1)をオンとしてからバッテリ電圧VBAが低下して3.3Vを下回るまでの第1経過時間Txが、閾値時間として設定した400μsec未満であるか否かが判断される。
【0120】
そして、400μsec未満である場合には(ステップS81でYES)、FET(Q1)がオフとされた回数を示すカウント値Nをインクリメント(N=N+1)して(ステップS82)、ステップS83に処理を進める。他方、400μsec以上である場合には(ステップS81でNO)、カウント値Nをインクリメントせずに、ステップS83に処理を進める。この処理では、FET(Q1)のオン後、極めて早く(400μsec以内で)バッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下した場合には、デッドショートが発生している可能性が極めて高いのでカウント値Nをインクリメントし、そうでない場合にはカウント値Nをインクリメントしない。
【0121】
その後、VBAモニタ回路15は、カウント値Nの値が0であるか否かを判断し(ステップS83)、N=0である場合には(ステップS83でYES)、カウント値Nを1に設定する(ステップS84)。この処理では、デッドショートの発生していない負荷駆動用の回路に接続されたIC回路51-1、51-3で処理されるカウント値NをN=1に維持する。
【0122】
他方、N=0でないと判断された場合(ステップS83でNO)、或いはステップS84の処理でN=1に設定された場合には、カウント値Nがカウント閾値として設定した「7」であるか否かを判断する(ステップS85)。そして、N=7であると判断した場合には(ステップS85でYES)、駆動信号の出力をLレベルにラッチしてFET(Q1)のオフ状態を保持する(ステップS88)。つまり、FET(Q1)がオフとされた後、再度オンとするリトライ動作を7回繰り返してもなお逆起電力に起因するバッテリ電圧VBAの低下が継続される場合には、負荷駆動用の回路にデッドショートが発生しているものと判断して、FET(Q1)をオフ状態に保持して負荷RL1の駆動を停止させる。
【0123】
また、カウント値Nが7に達していない場合には(ステップS85でNO)、バッテリ電圧VBAが閾値電圧として設定した3.3Vを上回ったか否かを判断し(ステップS86)、バッテリ電圧VBAが3.3Vを上回らない場合には(ステップS86でNO)、バッテリ電圧VBAが3.3Vを上回るまで待機する。その後、図13の時刻t14でバッテリ電圧VBAが3.3Vを上回った場合には(ステップS86でYES)、ステップS80の処理で決定した待機時間Tpだけ待機し、その後、ステップS73の処理に戻って再度FET(Q1)をオンとする。
【0124】
次に、上記の動作を、図13に示すタイミングチャートを参照して、より詳細に説明する。いま、図1に示した3個のIC回路51-1(CH1)、51-2(CH2)、51-3(CH3)のうち、IC回路51-1に接続した負荷駆動用の回路にデッドショートが発生しているものとすると、IC回路51-1のFET(Q1)をオンとした時刻(t12)の直後に負荷駆動用の回路に逆起電力が発生するので、時間y1が経過した時刻t13にてバッテリ電圧VBAは3.3V未満に低下して該FET(Q1)はオフとされる。
【0125】
この際、図13(d)、(e)に示すように、他の2個のIC回路51-2(CH2)、51-3(CH3)のVBAモニタ回路15においても、バッテリ電圧VBAの低下が検出されるので、それぞれのFET(Q1)をオフとしてFET(Q1)、及び電線を保護する。つまり、時刻t13の時点で全てのIC回路51-1〜51-3のFET(Q1)がオフとされる。
【0126】
また、IC回路51-1ではデッドショートが発生しているのでFET(Q1)をオンとしてから時間y1が経過した後に(y1は400μsec未満)バッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下し、カウント値NがインクリメントされてN=1となる(図12のステップS82参照)。
【0127】
その後、各IC回路51-1〜51-3に接続された各負荷RL1〜RL3は全てオフとなるので、バッテリ電圧VBAは上昇を開始し、時刻t14でバッテリ電圧VBAが3.3V以上に戻ると、待機時間Tpの計時が開始され、待機時間Tpが経過した後に、再度各IC回路51-1〜51-3のFET(Q1)がオンとされる(図12のステップS87参照)。この際、図12のステップS80の処理では乱数値に基づいて待機時間Tpがランダムに設定されるので、各IC回路51-1〜51-3毎に待機時間Tpが相違することになる。つまり、各IC回路51-1〜51-3に設けられるFET(Q1)は、時刻t13で同時にオフとされた後、同時にオンとされるのではなく、時間差をもってオンとされる。例えば、図13(c)に示すようにIC回路51-1では待機時間がTp1、Tp4、Tp6に設定され、IC回路51-2では待機時間がTp2(>Tp1)、Tp7に設定され、IC回路51-3では待機時間がTp3(<Tp3)、Tp5、Tp8に設定される。
【0128】
従って、IC回路51-2のFET(Q1)は、図13(d)に示すように、IC回路51-1のFET(Q1)が再度オンとされる時刻t15よりも遅い時刻t16で再度オンとされる。また、IC回路51-3のFET(Q1)は、図13(e)に示すように、IC回路51-1のFET(Q1)が再度オンとされる時刻t15よりも早い時刻t17で再度オンとされる。
【0129】
その結果、各IC回路51-1〜51-3のFET(Q1)がオンなるタイミングは一致せず同時にオンとならないので、突入電流が一致することはなく、各IC回路51-1〜51-3での突入電流が重複することを回避できる。
【0130】
また、IC回路51-1は、時間Tp1が経過した時刻t15にてFET(Q1)が再度オンとされるが、デッドショートが発生しているので、時間y2(400μsec未満)が経過した時刻t18でFET(Q1)は再度オフとなる。従って、カウント値Nがインクリメントされて、N=2となる。そして、上記の処理が繰り返され、カウント値NがN=7となった時点で、IC回路51-1の出力信号がオフ状態に保持され(図12のステップS88参照)、IC回路51-1に接続された負荷駆動用の回路の駆動が停止される。
【0131】
この際、デッドショートの発生していないIC回路51-2では、FET(Q1)がオンとされてから、次回オンとされるまでの所要時間y5、y8は400μsec以上であるので、カウント値はインクリメントされず、N=1が維持される。同様に、IC回路51-3では、FET(Q1)がオンとされてから、次回オンとされるまでの所要時間y3、y6、y9は400μsec以上であるので、カウント値はインクリメントされず、N=1が維持される。従って、オフ状態にラッチされることはなく、オン状態が保持される。更に、デッドショートの発生源であるIC回路51-1がオフとされた後には、バッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下することはないので、正常に動作しているIC回路51-2、51-3のFET(Q1)がオンとなった後はこのオン状態が保持されて負荷RL2、RL3の駆動が継続されることになる。
【0132】
また、図13(c)の時刻t19〜t20の区間で示すように、時刻t19でFET(Q1)がオンとされ、バッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下するまでの所要時間y4が400μsec以上であった場合には、時刻t20でFET(Q1)はオンとなるものの、カウント値Nはインクリメントされず、この時点でのNの値(N=1)が保持されることになる。そして、次回FET(Q1)をオンとした後、400μsec以内にバッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下した場合には、カウント値NはN=1から再度インクリメントされる。その結果、時間y7、y10でカウント値Nがインクリメントされ、N=7になると、IC回路51-1はオフ状態に保持される。
【0133】
更に、IC回路51-1のFET(Q1)を最初にオンとした後、図12のステップS76で設定したインターバル時間Tcが経過した場合には、カウント値Nがリセットされる。従って、バッテリ電圧VBAの低下が連続して発生しなければ、インターバル時間Tcの経過後にカウント値Nはリセットされるので、デッドショート以外の理由によりバッテリ電圧VBAが低下したような場合に、負荷駆動用の回路をオフ状態に保持するという誤動作を防止できる。
【0134】
このようにして、本実施形態に係る過電流保護装置では、FET(Q1)をオンとした後、バッテリ電圧VBAが閾値電圧として設定した3.3V未満に低下した場合に、各IC回路51-1〜51-3に設けられる各FET(Q1)をオフとして、各負荷駆動用の回路を遮断する。また、FET(Q1)をオンとしてからバッテリ電圧VBAが3.3V未満に低下するまでの経過時間を計時し、閾値時間として設定した400μsec未満である場合には、カウント値Nをインクリメントする。そして、ランダムに設定した待機時間Tp(Tp1〜Tp8)が経過した後に、各IC回路51-1〜51-3のFET(Q1)をオンとする。
【0135】
従って、デッドショートが発生している負荷に接続したIC回路は、カウント値NがインクリメントされてN=7となり、オフ状態に保持される。また、デッドショートが発生していない負荷に接続したIC回路は、カウント値Nはインクリメントされず、カウント値Nは7に達しないので、オン状態が継続されることになる。その結果、デッドショートが発生している負荷駆動用の回路のみを停止させ、それ以外の負荷駆動用の回路の駆動を継続することができる。即ち、複数の過電流保護装置で、リトライ動作を行う際のタイミングがランダムに設定されるので、各負荷駆動用の回路に設けられたFET(Q1;電子スイッチ)が同時にオンとることを回避でき、デッドショートが発生している負荷駆動用の回路を容易に判別できる。
【0136】
また、カウント値Nはインターバル時間Tc(例えば、0.2秒)以内に7回に達しない場合にはリセットされるので、デッドショート以外の原因でバッテリ電圧VBAが低下するような場合に、負荷駆動用の回路が誤遮断されることを防止できる。
【0137】
更に、バッテリ電圧VBAが3.3V(閾値電圧)未満に低下してFET(Q1)がオフとされ、その後、再度上昇して3.3Vを上回った時点で、待機時間Tpの計時が開始されるので、各IC回路51-1〜51-3で、待機時間Tpの計時を開始する時刻を一致させることができ、正確に待機時間Tpを計時することができる。
【0138】
以上、本発明の過電流保護装置、及び過電流保護システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0139】
例えば、本実施形態では、3個IC回路51-1〜51-3を用いて3系統の負荷駆動用の回路を過電流から保護する構成について説明したが、本発明は3個のIC回路に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、車両に搭載される負荷を駆動するFET(Q1)、及び電線の過電流保護に利用することができる。
【符号の説明】
【0141】
11 バッファ
12 フリップフロップ回路
13 チャージポンプ
14 ロジック回路
15 VBAモニタ回路
16 Vds検出回路
17 オン故障検出器
18 発振器
19 過電圧検出器
51-1〜53-3 IC回路
VB バッテリ(直流電源)
Q1 マルチソースFET
Q1a メインFET
Q1b サブFET
CMP1〜CMP5 比較器
AMP1 アンプ
OR1 オア回路
OR2 オア回路
AND1 アンド回路
Ris 電流検出抵抗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、電子スイッチ、電線、及び負荷を有する負荷駆動用の回路を過電流から保護する過電流保護装置において、
前記直流電源の出力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電子スイッチをオンとした後の経過時間を計時する計時手段と、
前記直流電源の出力電圧が予め設定した閾値電圧以下に低下した場合に、前記電子スイッチをオフとし、所定の待機時間が経過した後に、該電子スイッチを再度オンとするスイッチ制御手段と、
前記出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して、前記電子スイッチがオフとされた際に、前記所定の待機時間を、ランダムに決定する待機時間決定手段と、
前記電子スイッチをオンとしてから、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧に低下するまでの所要時間が予め設定した閾値時間以下である場合に、この発生回数をカウントするカウント手段と、を有し、
前記スイッチ制御手段は、前記カウント手段によるカウント値が所定のカウント閾値に達した場合には、前記所定の待機時間の経過に関わらず前記電子スイッチのオフ状態を保持することを特徴とする過電流保護装置。
【請求項2】
前記カウント手段は、前記発生回数がカウントされた後、第1の所定時間が経過するまで次回のカウントが発生しなかった場合に、前記カウント値をリセットすることを特徴とする請求項1に記載の過電流保護装置。
【請求項3】
前記スイッチ制御手段は、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して前記電子スイッチをオフとした後、出力電圧が前記閾値電圧まで上昇した時点から、前記待機時間の経過を計時することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の過電流保護装置。
【請求項4】
電子スイッチ及び負荷を有する複数の負荷駆動用の回路と、前記各負荷駆動用の回路に接続された唯一の直流電源とを備えた駆動制御回路の電線を、過電流から保護する過電流保護システムにおいて、
前記各負荷駆動用の回路は、それぞれ過電流保護装置を有し、一の負荷駆動用の回路に設けられる前記過電流保護装置は、
前記直流電源の出力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオンとした後の経過時間を計時する計時手段と、
前記直流電源の出力電圧が予め設定した閾値電圧以下に低下した場合に、一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオフとし、所定の待機時間が経過した後に、前記電子スイッチを再度オンとするスイッチ制御手段と、
前記出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して、前記一の負荷駆動用の回路の電子スイッチがオフとされた際に、前記所定の待機時間を、他の負荷駆動用の回路に設けられた過電流保護装置の待機時間と相違するように決定する待機時間決定手段と、
前記一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオンとしてから、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧に低下するまでの所要時間が予め設定した閾値時間以下である場合に、この発生回数をカウントするカウント手段と、を有し、
前記スイッチ制御手段は、前記カウント手段によるカウント値が所定のカウント閾値に達した場合には、前記所定の待機時間の経過に関わらず前記電子スイッチのオフ状態を保持することを特徴とする過電流保護システム。
【請求項5】
一の負荷駆動用の回路の前記カウント手段は、前記発生回数がカウントされた後、第1の所定時間が経過するまで次回のカウントが発生しなかった場合に、前記カウント値をリセットすることを特徴とする請求項4に記載の過電流保護システム。
【請求項6】
前記スイッチ制御手段は、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して前記電子スイッチをオフとした後、出力電圧が前記閾値電圧まで上昇した時点から、前記待機時間の経過を計時することを特徴とする請求項4または請求項5のいずれかに記載の過電流保護システム。
【請求項1】
直流電源と、電子スイッチ、電線、及び負荷を有する負荷駆動用の回路を過電流から保護する過電流保護装置において、
前記直流電源の出力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電子スイッチをオンとした後の経過時間を計時する計時手段と、
前記直流電源の出力電圧が予め設定した閾値電圧以下に低下した場合に、前記電子スイッチをオフとし、所定の待機時間が経過した後に、該電子スイッチを再度オンとするスイッチ制御手段と、
前記出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して、前記電子スイッチがオフとされた際に、前記所定の待機時間を、ランダムに決定する待機時間決定手段と、
前記電子スイッチをオンとしてから、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧に低下するまでの所要時間が予め設定した閾値時間以下である場合に、この発生回数をカウントするカウント手段と、を有し、
前記スイッチ制御手段は、前記カウント手段によるカウント値が所定のカウント閾値に達した場合には、前記所定の待機時間の経過に関わらず前記電子スイッチのオフ状態を保持することを特徴とする過電流保護装置。
【請求項2】
前記カウント手段は、前記発生回数がカウントされた後、第1の所定時間が経過するまで次回のカウントが発生しなかった場合に、前記カウント値をリセットすることを特徴とする請求項1に記載の過電流保護装置。
【請求項3】
前記スイッチ制御手段は、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して前記電子スイッチをオフとした後、出力電圧が前記閾値電圧まで上昇した時点から、前記待機時間の経過を計時することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の過電流保護装置。
【請求項4】
電子スイッチ及び負荷を有する複数の負荷駆動用の回路と、前記各負荷駆動用の回路に接続された唯一の直流電源とを備えた駆動制御回路の電線を、過電流から保護する過電流保護システムにおいて、
前記各負荷駆動用の回路は、それぞれ過電流保護装置を有し、一の負荷駆動用の回路に設けられる前記過電流保護装置は、
前記直流電源の出力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオンとした後の経過時間を計時する計時手段と、
前記直流電源の出力電圧が予め設定した閾値電圧以下に低下した場合に、一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオフとし、所定の待機時間が経過した後に、前記電子スイッチを再度オンとするスイッチ制御手段と、
前記出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して、前記一の負荷駆動用の回路の電子スイッチがオフとされた際に、前記所定の待機時間を、他の負荷駆動用の回路に設けられた過電流保護装置の待機時間と相違するように決定する待機時間決定手段と、
前記一の負荷駆動用の回路の電子スイッチをオンとしてから、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧に低下するまでの所要時間が予め設定した閾値時間以下である場合に、この発生回数をカウントするカウント手段と、を有し、
前記スイッチ制御手段は、前記カウント手段によるカウント値が所定のカウント閾値に達した場合には、前記所定の待機時間の経過に関わらず前記電子スイッチのオフ状態を保持することを特徴とする過電流保護システム。
【請求項5】
一の負荷駆動用の回路の前記カウント手段は、前記発生回数がカウントされた後、第1の所定時間が経過するまで次回のカウントが発生しなかった場合に、前記カウント値をリセットすることを特徴とする請求項4に記載の過電流保護システム。
【請求項6】
前記スイッチ制御手段は、前記直流電源の出力電圧が前記閾値電圧以下に低下して前記電子スイッチをオフとした後、出力電圧が前記閾値電圧まで上昇した時点から、前記待機時間の経過を計時することを特徴とする請求項4または請求項5のいずれかに記載の過電流保護システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−166872(P2011−166872A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24004(P2010−24004)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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