説明

遠隔監視システム

【課題】本発明は、運転プログラムの改良更新が容易に行うことができるとともに、更新プログラムで実運転をした際に発生するトラブルに対してプラントの稼動を停止させることなく運転が継続できる遠隔監視システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、監視装置と、監視装置から離れた遠隔機場に置かれるプラントと、プラントを制御する制御装置と、遠隔機場に設けられ、制御装置に接続されるとともに公衆回線もしくは専用回線等の通信回線を介して監視装置に接続される現場装置を有し、現場装置に蓄積されるプラント情報を遠隔地から察知することによりプラントの運転状況を監視する遠隔監視システムであって、現場装置は、実運転機能部と、シミュレーション試行機能部と、実運転とシミュレーション試行を切替える切替え機能手段と、実運転に用いてプラントの制御・監視をする運転用プログラムが退避される運転用プログラム退避エリアとを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公共上下水道等のプラントを監視する遠隔監視システムであり、特に公衆回線、専用線等を含む通信回線を使用して現場装置を遠隔でメンテナンスする遠隔監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
公共向け上下水道等の設備の運転状態を監視する監視システムでは、中央監視室に設けられた中央監視装置または携帯端末から、公衆回線、専用線等の通信回線を介して、現場装置に接続し、浄水場、下水処理場、ポンプ場等の遠隔機場等を監視するようにしている。
【0003】
これらの監視システムでは、運転の改善や機能拡張のために保守を行う場合、中央監視装置と現場装置を同時に操作しなければならず、2人以上の保守作業員を必要としていた。
【0004】
特許文献1によれば、中央監視装置から現場端末の制御プログラムを修正し、変更後の信号のフィードバック、あるいは機器状態を監視する装置からの映像により修正内容を確認する手段を設けている。
【0005】
しかしながら、修正後のプラントの状態が正常か否かを遠隔地にあって判断するには、映像があったにしても容易ではなく、さらに遠隔地より誤った修正を施した場合、その復旧も困難であるため、保守作業員は変更にあたって緊張を強いられることになる。
【0006】
また、特許文献2によれば、中央監視装置の状態を別系統の通信手段により現場装置設置側から確認できるようになっている。
【0007】
しかしながら、保守作業実施毎に別系統の通信手段をセットアップしなければならず、さらに追加の通信手段を使用するための費用も余分に発生する問題がある。
【0008】
さらに、特許文献3によれば、現場装置の運転プログラムを改良更新する前に更新プログラムを現場装置でシミュレーションすることが記載されている。
【0009】
しかし、シミュレーションした更新プログラムで実運転をした際に発生するトラブルに対して対応が考慮されてなく、トラブルを解消するまでプラントの稼動を停止することになる。
【0010】
【特許文献1】特開2000−112518号公報
【特許文献2】特開2003−6061号公報
【特許文献3】特開2003−91310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑み、運転プログラムの改良更新が容易に行うことができるとともに、更新プログラムで実運転をした際に発生するトラブルに対してプラントの稼動を停止させることなく運転が継続できる遠隔監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、監視装置と、監視装置から離れた遠隔機場に置かれるプラントと、プラントを制御する制御装置と、遠隔機場に設けられ、制御装置に接続されるとともに公衆回線もしくは専用回線等の通信回線を介して監視装置に接続される現場装置を有し、現場装置に蓄積されるプラント情報を遠隔地から察知することによりプラントの運転状況を監視する遠隔監視システムであって、現場装置は、実運転機能部と、シミュレーション試行機能部と、実運転とシミュレーション試行を切替える切替え機能手段と、実運転に用いてプラントの制御・監視をする運転用プログラムが退避される運転用プログラム退避エリアとを備えたことを特徴とする。
【0013】
そして、現場装置は、シミュレーション試行後にシミュレーション用プログラムが実運転機能部に移され、更新用プログラムとして実運転に供される際に、先に使用していた運転用プログラムを運転用プログラム退避エリアに格納する機能と、実運転機能部に移された更新用プログラムによる実運転に支障が生じたら運転用プログラム退避エリアに格納されていた先の運転用プログラムを実運転機能部に戻して前の実運転に戻す機能とを有する。
【0014】
このため、更新用プログラムによる実運転に支障が生じたときには、前の運転用プログラムの運転に移行するので、プラントを止めずに継続運転が行われる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、運転プログラムの改良更新が容易に行われ、更新プログラムで実運転をした際に発生するトラブルに対してもプラントの稼動を停止させることなく運転を継続でき、信頼性、保全性の向上が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1、図2を引用して本発明の実施例を説明する。
【0017】
図1は、遠隔監視システムの概要を示す図、図2は現場装置の機能ブロックを示す図である。
【0018】
まず、図1を引用して遠隔監視システムの概要について説明する。
【0019】
現場装置7は、遠隔機場に設置され、制御機器8を介してプラント9を制御、監視する。また、モデム6を介して通信回線5に接続されている。通信回線5は、公衆回線や専用回線等を含む。
【0020】
監視装置である中央監視装置1は、中央監視室に設置され、モデム2を介して通信回線5に接続されている。中央監視装置1は遠隔機場に設置された複数の現場装置7を監視する。
【0021】
携帯端末3は自由に持ち運び可能で、プロバイダ4を介して、通信回線5に接続されている。この携帯端末3も監視装置として機能する。
【0022】
図2を引用して現場装置について説明する。
【0023】
現場装置7は、モデム6を介して通信回線5に接続される通信部7−1と、プラント9の制御装置8に接続される入出力部7−11を有する。
【0024】
また、現場装置7は、実運転機能部70と、シミュレーション試行機能部71を有する。実運転機能部70は、運転用データファイル7−5と、運転用プログラムファイル7−6、制御部7−4を備える。
【0025】
シミュレーション試行機能部71は、シミュレーション用データファイル7−9、シミュレーション用プログラムファイル7−10、シミュレーション用実行部7−8を備える。
【0026】
更に、現場装置7は、切替部(切替え機能手段)7−2、表示部7−3、プログラム退避エリア7−7を有する。
【0027】
切替部(切替え機能手段)7−2は、中央監視装置1の指示により、実運転機能部70の実運転とシミュレーション試行機能部71によるシミュレーション試行の切替が行われる。
【0028】
表示部7−3は、実運転機能部70による実運転と、シミュレーション試行が表示される。この表示は中央監視装置1や携帯端末3にも表示される。
【0029】
プログラム退避エリア7−7は、運転用プログラムファイル7−6の運転用プログラムを格納する。プログラム退避エリア7−7への格納は、切替部(切替え機能手段)7−2が実運転機能部70の実運転とシミュレーション試行機能部71によるシミュレーション試行の切替が行われる際に行われる。
【0030】
シミュレーション試行機能部71でシミュレーション試行が行われた更新用プログラムは、制御部7−4を介して実運転機能部70の運転用データファイル7−5に上書きされるように移され、実運転に供される。
【0031】
この上書きが行われる前に、運転用プログラムファイル7−6に存在した先の運転用プログラムはプログラム退避エリア7−7に移されて保存される。
【0032】
次に、通常運転時の動作について説明する。
【0033】
作業員は、中央監視装置1または携帯端末3により、現場装置7の切替部7−2を運転に切替える。
【0034】
現場装置7の制御部7−4は運転用プログラムファイル7−6に格納されている運転用プログラムを実行し、運転用データファイル7−5に格納されている出力データを入出力部7−11を介して制御機器8に出力する。
【0035】
これにより、現場装置7はプラント9を制御し、制御装置8からの入力データを入出力部7−11を介して運転用データファイル7−5に格納することにより、プラント9を監視する。
【0036】
中央監視装置1および携帯端末3には、通信回線5を介して現場装置7の運転用データファイル7−5のプラント信号データが表示される。作業員は中央監視装置1および携帯端末3により、現場装置7の運転用データファイル7−5のプラント信号データを確認/察知することにより、プラント9を監視できる。
【0037】
次に、プログラム変更時の動作について説明する。
【0038】
作業員は、中央監視装置1または携帯端末3により、現場装置7の切替部7−2をシミュレーションに切替える。
【0039】
現場装置7は運転用プログラムファイル7−6に格納されている運転用プログラムをプログラム退避エリア7−7に格納し、シミュレーションの試行動作に切替える。
【0040】
現場装置7のシミュレーション実行部7−8はシミュレーション用プログラムファイル7−10に格納されているシミュレーション用プログラムを実行する。
【0041】
作業員が、中央監視装置1または携帯端末3により、現場装置7のシミュレーション用プログラムファイル7−10のプログラムを変更すると、現場装置7のシミュレーション実行部7−8はシミュレーション用プログラムファイル7−10の変更プログラムを実行する。
【0042】
中央監視装置1または携帯端末3によりシミュレーション用データファイル7−9に擬似的に出力が与えられ、シミュレーション実行部7−8によりシミュレーションが行われ、入力がシミュレーション用データファイル7−9に格納される。
【0043】
シミュレーション用データファイル7−9には実運転の経験上のデータも格納されており、シミュレーション試行時に反映することで、実運転に近いシミュレーション結果を得ることができる。
【0044】
例えば、プラントのバルブに対し、バルブ開信号を出力してからバルブ開完了信号が入力されるまでの時間が登録されていて、シミュレーション試行時に、シミュレーション用データファイル7−9に擬似的にバルブ開信号を出力してから、登録された時間経過後、シミュレーション実行部7−8はシミュレーション用データファイル7−9にバルブ開完了信号の入力を与える。
【0045】
中央監視装置1および携帯端末3は通信回線5を介して現場装置7のシミュレーション用データファイル7−5のシミュレーションデータを表示する。
【0046】
作業員は中央監視装置1および携帯端末3に表示されるシミュレーションデータを確認することにより、改良変更する更新プログラムのシミュレーション結果を得ることができ、同時に中央監視装置1および携帯端末3と現場装置7との通信の確認を行うことができる。
【0047】
このように、作業員は遠隔地の現場装置7から離れた中央監視装置1に居てシミュレーションに至る一連の作業ができるので、新しい更新プログラムの変更が容易である。
【0048】
次に、作業員は現場装置7が設置されている遠隔機場に移動し、現場装置7の切替部7−2を運転に切替える。作業員が現場装置7のところに移って、更新プログラムによる実運転の切替をするのは、多義項目の確認や不具合等に対する対応が容易に迅速にできるからである。
【0049】
現場装置7はシミュレーション用プログラムファイル7−10に格納されている変更プログラムを運転用プログラムファイル7−6に格納し、制御部7−4は運転用プログラムファイル7−6に格納されている変更プログラムを実行し、入出力部7−11を介して制御機器8を制御し、プラント信号データを運転用データファイル7−5に格納する。
【0050】
表示部7−3、中央監視装置1および携帯端末3は運転用データファイル7−5のプラント信号データを表示する。
【0051】
遠隔機場において、表示部7−3または携帯端末3に表示されるプラント信号データを確認することにより、変更後プログラムのプラントでの動作確認を行うことができる。
【0052】
変更後の更新プログラムの不備が確認された場合、シミュレーション試行前にプログラム退避エリア7−7に退避しておいた変更前プログラムを運転用プログラムファイル7−6に戻す。制御部7−4は、変更前のプログラムによる運転に戻すことにより、プラントの稼動を停止させることなく、継続運転ができる。
【0053】
すなわち、現場装置7は、シミュレーション試行後にシミュレーション用プログラムが実運転機能部70に移され、更新用プログラムとして実運転に供される際に、先に使用していた運転用プログラムを運転用プログラム退避エリア7−7に格納する機能と、実運転機能部70に移された更新用プログラムによる実運転に支障が生じたら運転用プログラム退避エリア7−7に格納されていた先の運転用プログラムを実運転機能部に戻して前の実運転に戻す機能と、を有する。
【0054】
これにより、更新プログラムによる実運転に移行した際にトラブルが発生してもプラントの稼動を停止させることなく運転が継続できる。監視装置システムの信頼性、保全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例に係わるもので、監視装置システムの概要を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係わるもので、現場装置の機能ブロックを示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1…中央監視装置、2…モデム、3…携帯端末、4…プロバイダ、5…通信回線、6…モデム、7…現場装置、7−1…通信部、7−2…切替部、7−3…表示部、7−4…制御部、7−5…運転用データファイル、7−6…運転用プログラムファイル、7−7…プログラム退避エリア、7−8…シミュレーション実行部、7−9…シミュレーション用データファイル、7−10…シミュレーション用プログラムファイル、7−11…入出力部、8…制御機器、9…プラント、70…実運転機能部、71…シミュレーション試行機能部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視装置と、前記監視装置から離れた遠隔機場に置かれるプラントと、プラントを制御する制御装置と、前記遠隔機場に設けられ、前記制御装置に接続されるとともに公衆回線もしくは専用回線等の通信回線を介して前記監視装置に接続される現場装置を有し、
前記現場装置に蓄積されるプラント情報を遠隔地から察知することにより前記プラントの運転状況を監視する遠隔監視システムであって、
前記現場装置は、実運転機能部と、シミュレーション試行機能部と、実運転とシミュレーション試行を切替える切替え機能手段と、前記実運転に用いて前記プラントの制御・監視をする運転用プログラムが退避される運転用プログラム退避エリアとを備え、
前記現場装置は、
シミュレーション試行後にシミュレーション用プログラムが実運転機能部に移さ れ、更新用プログラムとして実運転に供される際に、先に使用していた前記運転用 プログラムを前記運転用プログラム退避エリアに格納する機能と、
前記実運転機能部に移された前記更新用プログラムによる実運転に支障が生じた ら前記運転用プログラム退避エリアに格納されていた先の前記運転用プログラムを 前記実運転機能部に戻して前の実運転に戻す機能と、
を有することを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項2】
請求項1記載の遠隔監視システムにおいて、
前記実運転機能部は、前記運転用プログラムが記録される運転用プログラムファイルと、運転用データが記録される運転用データファイルを備え、
前記シミュレーション試行機能部は、前記シミュレーション用プログラムが記録されるシミュレーション用プログラムファイルと、シミュレーション用データファイルを備えることを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項3】
請求項1記載の遠隔監視システムにおいて、
前記運転用プログラム退避エリアへの前記運転用プログラムの退避は、前記切替え機能手段の前記実運転から前記シミュレーション試行への切替わりにともない実行されることを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項4】
請求項1記載の監視装置システムにおいて、
前記監視装置は、前記遠隔機場に設けられた複数の前記現場装置をまとめて監視できる中央監視装置であることを特徴とする遠隔監視システム。
【請求項5】
請求項1記載の監視装置システムにおいて、
前記監視装置は、外出先においても前記現場装置を監視できる携帯端末を含むことを特徴とする遠隔監視システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−112329(P2008−112329A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295262(P2006−295262)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】