説明

選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置および方法

【課題】半導体デバイスの信頼性を改善するという結果をもたらす望ましい大きさおよび距離を有したウェハー表面上にエピタキシャルの小島の製造を容易化できる選択場所にエピタキシャル膜を成長させるための装置および方法を提供すること。
【解決手段】選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置は、イオン銃3、イオンの方向とエネルギを制御する制御手段4b、ウェハーホルダ2、ガス導入口5、および排気ポート6を備えるウェハーパターニングチャンバ1と、別置きのエピタキシャル膜成長チャンバから構成されている。当該装置において、ウェハーパターニングチャンバにおけるイオン銃は予め定められた直径およびイオンエネルギのイオンビームを放射し、その結果、ウェハー表面上の衝突イオンはウェハー表面に原子間のいくつかの結合を破壊しまたは転位することによってダメージを与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置および方法に関し、特に、ナノテクノロジを用いて特別な表面上に選択的に処理された微細な場所の上に機能的な膜を作るための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの異なる膜のエピタキシャル成長は半導体デバイス製造技術において本質的なステップである。基本的に、ホモエピタキシーとヘテロエピタキシーと呼ばれる2つのタイプのエピタキシャル成長がある。ホモエピタキシーにおいては、エピタキシャル膜は同じ物質で成長するのに対し、ヘテロエピタキシーにおいてはエピタキシャル膜は異なる物質の上で成長する。一般的に、ヘテロエピタキシャル膜がホモエピタキシャル膜よりも半導体デバイス製造ではより通常的なものである。エピタキシャル膜はIII−V族化合物、IV−IV族化合物、およびII−VI族化合物の製造において広く採用されている。例えばGaAs、SiGe、およびCaTeは、それぞれ、前述したグループに提供されるものである。これらのエピタキシャル膜は広く赤外線検出器、光放射ダイオード、半導体レーザ、ヘテロ結合型バイポーラトランジスタ(HBT)などの製造において用いられている。エピタキシャル膜の成長は、固体相、液体相、および気体相において達成することができる。気体相のエピタキシャル成長は、エピタキシャル膜を作ることにおいて、はるかにもっとも受け入られてきた方法である。
【0003】
同じ物質または異なる物質のいずれかの上でのエピタキシャル膜成長のメカニズムを図11を参照して説明する。図11は従来のエピタキシャル膜成長装置の簡素化された構成を示している。この装置は、ウェハーホルダ101、ガス導入口102、およびガス排気ポート103を備えた反応容器100から構成されている。通常、ウェハーホルダ101はヒータ104によって加熱されている。このヒータ104は電力源104から供給される電力によって動作する。処理されるべきウェハー105はウェハーホルダの上に配置されている。ウェハーホルダ101上のウェハー105はエピタキシャル膜を成長させるために処理される。
【0004】
ウェハーホルダ101の温度は1000℃程度に高くすることができ、実際の温度はエピタキシャル膜のタイプに依存する。例えばエピタキシャルシリコン(Si)の成長は500〜900℃の範囲で実行される。
【0005】
エピタキシャル膜はウェハー105上で次のステップ(1)〜(5)によって成長させられる。
(1) ガス導入口102を通して反応容器100の中にプロセスガスを導入すること。
(2) ウェハー105の表面上に気体相で生成されたプロセスガスおよび/または反応性を有する種(Species)を移すこと。
(3) ウェハー105の表面におけるプロセスガスまたは反応性を有する種を吸収すること。
(4) ウェハー105の表面における適当な場所を選択すること、反応および膜の成長を初期化すること。
(5) 残存する副生成物を気体相にして取り除くこと、および排気ポート103を通して真空排気すること。
【0006】
前述した第4のステップ(4)は膜成長工程において重要である。膜成長工程は「小島生成(核成長):Nucleation」と「成長(膜成長):Growth」と呼ばれる2つのステップに従う。この小島生成はウェハー表面上の気体相において開始される。気体相の小島生成は「ホモジーニアスの小島生成(Homogenous Nucleation)」と呼ばれるのに対して、ウェハー表面での小島生成は「ヘテロジーニアスの小島生成(Heterogenous Nucleation)」と呼ばれる。もし小島生成が気体相で始まったとするならば、新しい物質の小さな量が反応ガスの反応によって気相において形成され、それからウェハー表面上の適当な場所で合体が形成される。ヘテロジーニアスの小島生成では、反応性のある種は第1にウェハー105の表面上で適当な場所に吸収され、そして膜を形成するように反応する。一般的に、ヘテロジーニアスの小島生成は、ホモジーニアスの小島生成よりも良い濡れ特性を与える。それ故に、エピタキシャル膜成長の大部分においてヘテロジーニアスの小島成長が採用されている。
【0007】
一般的に、格子表面のアブラプト(Abrupt)終端のためにウェハー表面上には多くのダングリングボンド(Dangling Bond:未結合手)が存在している。さらに、ウェハー表面上における格子の転位、不純物、および格子のダメージが原因で不完全な結合が存在している可能性もある。ウェハー表面上で吸収された反応性を有する種は最初にダングリングボンドまたは不完全結合(Incomplete Bonds)が存在するところの場所に固く結合する。それ故に、小島生成のプロセスはこれらの場所で始まる。それからエピタキシャル膜はこれらの小島生成の場所でそれらを核としながら成長する。最初、これらの小島成長の場所はお互いに離れており、エピタキシャル膜の多くの数の分離した小さな島を形成するように導く。これらの分離したエピタキシャルの小島は、同様にまた、「ナノ結晶」と呼ばれる。これらの小島生成の場所においてエピタキシャル膜が成長するに従ってエピタキシャルの小島の大きさは次第に大きくなり、最後にはウェハー表面上でエピタキシャル膜の単層を作るように互いに結合する。
【0008】
或る種の半導体デバイスの製造については、これらのエピタキシャルの小島(ナノ結晶)は、それらが単層を形成するように結合する前の段階で利用される。例えば、シリコン(Si)のナノ結晶は記憶装置およびスイッチング装置で使用される。
【0009】
従来のエピタキシャル膜成長の手順において、ウェハーはエピタキシャル膜成長の前の段階で洗浄される。例えば、シリコンウェハーは、シリコンエピタキシャル膜がシリコンウェハー上で成長する前にHCL気相で洗浄される。この洗浄プロセスはウェハー表面上の自然に存するSiO2を取り除き、ウェハー表面上にダングリングボンドを作り出す。ウェハー表面上のダングリングボンドの数およびそれらの分布は、多くは、洗浄の手順に依存して決まる。もしデバイスの量産の間に各ウェハーについて同じ洗浄の手順が維持されるのであれば、各ウェハーの表面にはダングリングボンドの同じ数密度を得ることができる。しかしながら、洗浄の手順でわずかな変動があった場合には、ウェハー上のダングリングボンドの数密度を変化させることになる。これはウェハー上でのエピタキシャルの小島の数密度を異ならせることになり、そのことは反対にデバイスの信用性に影響を与えることになる。
【0010】
さらに従来の手順において、ウェハー表面上でダングリングボンドを選択すること困難である。何故ならばダングリングボンドの場所は洗浄のプロセスの間ウェハー表面上でランダムに形成されるからである。こうして、従来の技術はデバイスの製造またはその他の分野においてその応用が限定されていた。
【0011】
加えて、本発明に関連する文献としては、次のような特許文献1,2が存在する。
【特許文献1】特開平3−20887号公報
【特許文献2】特開平9−110586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、半導体デバイスの信頼性を改善するという結果をもたらす望ましい大きさおよび距離を有したウェハー表面上にエピタキシャルの小島の製造を容易化できる選択場所にエピタキシャル膜を成長させるための装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るエピタキシャル膜を成長させるための装置および方法は、前述の目的を達成するため、次のように構成させる。
【0014】
本発明に係る装置および方法は、前述の目的を達成するため、以下のように構成される。本発明に係る選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置は、イオン銃、イオンの方向とエネルギを制御する制御手段、ウェハーホルダ、ガス導入口、および排気ポートを備えるウェハーパターニングチャンバと、ウェハーホルダ、ガス導入口、およびガス排出口を有するエピタキシャル膜成長チャンバと、から構成されている。当該装置において、ウェハーパターニングチャンバにおけるイオン銃は予め定められた直径および予め定められたイオンエネルギのイオンビームを放射し、その結果、ウェハー表面上の衝突イオンはウェハー表面に原子間のいくつかの結合を破壊しまたは転位することによってダメージを与える。
【0015】
上記の選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置において、好ましくは、ウェハーパターニングチャンバとエピタキシャル膜成長チャンバとは、エピタキシャル膜成長チャンバにイオン銃と制御手段を取り付けることによって、同じものとなる。
【0016】
上記の選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置において、好ましくは、イオン銃から放射されたイオンビームは、イオンビーム案内装置を用いることによってウェハー表面の全面を走査するように移動する。
【0017】
上記の選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置において、好ましくは、イオン銃はパルス化されたイオンビームを放射する。
【0018】
選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置において、それはアーティクル(Article:生成対象物)を分離するために用いられるものであり、第1に、ウェハーは、イオンビームによって、ダメージの間で予め定められた距離を有するようにダメージを与えられ、第2に、適当な物質のエピタキシャル膜の小さな島がダメージを受けた場所に成長し、最後に、液体、気体、または固体の状態のアーティクルがウェハーの表面に流され、その結果、適当な長さと、物理的および化学的な属性とを有するアーティクルの終端がエピタキシャルの小島と結合を作り、他方、異なる長さ、および/または、物理的および化学的な属性を有する他のアーティクルは流されるか、吹き飛ばされるか、または真空排気される。
【0019】
本発明に係る少なくとも2つの異なる物質のエピタキシャル膜の小島を成長する方法は、次のステップからなる。第1の膜のエピタキシャルの小島を成長させるためウェハーの上での選択場所にダメージサイトを作るステップと、第1の物質の当該エピタキシャルの小島を成長させるステップと、第2の物質のエピタキシャルの小島を成長させるためウェハー上の選択場所にダメージサイトを作るステップと、第2の物質のエピタキシャル膜の小島を成長させるステップである。
【0020】
異なる物質のエピタキシャル膜の小島を成長させる上記方法において、好ましくは、異なる物質の数は2以上であり、各物質について、ダメージサイトを作るステップと、エピタキシャルの小島を成長させるステップとが繰り返される。
【0021】
異なる物質のエピタキシャル膜の小島を成長させる方法において、好ましくは、異なる化学的および物理的な属性を有した2つまたはいくつかのレジェンド(Legend:記銘要素、関係付け要素)を有するアーティクルを分離するように採用され、そこでは異なる物質のエピタキシャルの小島は、適当なレジェンドで結合を作るように採用される。
【0022】
異なる物質のエピタキシャル膜の小島を成長させる上記方法において、好ましくは、アーティクルは有機分子または無機分子、生物学的細胞、生物学的細胞と人工的分子の複合構造、または植物、動物もしくは人間の抽出物である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の装置および方法によれば、発明された技術は、基板の表面上で望ましい大きさと距離を有したエピタキシャルの小島の製造を容易に行うことができ、それは半導体デバイスの信頼性の改善という結果をもたらす。さらに、これらのエピタキシャルの小島の製造の技術は、選択された分子、細胞、またはアーティクルの混合物からの類似したアーティクルを分離したり結合したりするのに用いることができる。このことは、いくつかの分野、特にバイオテクノロジーの分野において驚くべき利点を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、好ましい実施形態が図面に従って説明される。実施形態の説明を通して本発明の詳細が明らかにされる。
[実施形態1]
【0025】
予め定められた寸法またはサイズを有する予め定められた場所の上にエピタキシャルの小島を成長させるための第1実施形態の装置と方法は、図1,2,3を参照して説明される。この技術は、2つの段階から構成されている。第1の段階ではウェハーまたは基板の上の選択された場所において小島生成場所(Nucleation Sites)が作られ、第2の段階では作られた場所においてエピタキシャル膜が成長させられる。
【0026】
図1はウェハー上に小島(Islet)生成場所を形成するために用いられる装置の縦断面図を示す。この装置は、ウェハーホルダ2、イオン銃3、ガス導入口5、および真空排気ポート6が備えられた反応容器1から構成されている。イオン銃3はイオン源4aとイオンビーム案内装置4bを備えている。イオン源4aはウェハー7の方向に向かうようになっており、この方向は、説明の容易可能の観点で、Z軸として仮定される。イオン銃3から放射されたイオンビームはウエハー7の方向に向かって進み、イオンビーム案内装置4bを用いて適当にXおよびYの方向に移動させられる。イオン源4aのタイプは重要な事項ではなく、いかなるイオン源であってもよい。例えばイオン源4aは、プラズマを生成するDC(直流)もしくはrf(高周波)の電力結合、または加熱フィラメントを有する。イオン銃(3)は、同様にまた、望ましいエネルギを有するイオンを得るために必要な電気的または電子的な回路を含む。このことは、原理的に、Z軸方向における電界によってイオンを加速することによって達成することができる。このイオンビームは連続的なものであることもできるし、またはパルス化されたものであることもできる。もしイオンビームがパルス化されたものであるならば、パルス化されたイオンビームを得るためにシャッタまたは電気的機構が採用される。パルス化されたイオンビームおよび連続的なイオンビームの両方共に、本発明の技術において採用することができる。
【0027】
動作中、ウェハー7はウェハーホルダ2上に配置され、反応容器1は真空排気されている。代表的にウェハー7はウェハーホルダ2に配置する前に不活性の状態にされている。当該不活性にする目的は、ウェハー7の表面上の初期のダングリングボンドを少なくするためである。反応容器1の内部圧力が適当な圧力に低減されているとき、イオン銃3は適当なガス、代表的にはアルゴン(Ar)で活性化されている。十分なエネルギを有したイオンがウェハーの表面に衝突するとき、基板物質のいくつかの結合が破壊されるか、または転位される。これらの場所は、これ以後「ダメージサイト(Damaged-Sites)」と呼ばれる。イオンのエネルギは増加され、ウェハー表面の十分なダメージを有するように制御され、これにより実際のイオンエネルギはウェハーの物質のタイプに依存する。通常、イオンエネルギは10eV〜100eVまでの範囲に存する。
【0028】
装置作動中、パルス化されたイオンビームが採用される。代表的には、連続イオンビームに適当な機械的技術を適用してパルスビームが作られる。イオンビームの半径、パルスの存続期間、およびイオンエネルギは適当に制御される。パルス化されたイオンビームはウェハー7の表面に向けられる。ウェハー表面上のダメージサイトの位置は、パルス幅およびX−Y偏向回路を含むイオンビーム案内装置4bによって正確に制御される。
【0029】
図2は、ウェハー7上のダメージサイト8の概略的な平面図を示す。図3は、ウェハー7上のダメージサイト8の部分的に拡大された図を示す。図3において“I”と“W”として符号が付されたウェハー7の表面におけるダメージサイト8の距離は任意に選択することができる。一般的にダメージサイト8の寸法は数nm(ナノメータ)から数μm(マイクロメータ)の範囲で変り得る。ダメージサイト8の間の距離は、同様にまた、ナノメータからマイクロメータの範囲に存在する。従って、ウェハー7の上でより高いダメージサイトの密度を得ることができる。もしダメージサイト8の直径が5nmでありダメージサイト8の間の距離が10nmであるならば、ウェハー7の表面上で1012cm-2個のダメージサイト8が存在することになる。
【0030】
表面がダメージを受けたウェハー7は、その後、エピタキシャル膜成長反応容器(図示されず)に移送される。エピタキシャル反応容器の構成は、本発明にとっては重要な事項ではない。こうして、いかなる種類の反応容器、例えば背景技術の箇所における図1で示された反応容器が用いられる。エピタキシャル膜成長方法は、同様にまた、従来の方法と同じである。反応性を有するガスが反応容器内に導入され、それから、これらのガスはウェハー7のダメージサイト8の上で吸収される。何故ならば、これらのダメージサイト8では反応性ガスとの結合を容易に作ることのできる多数のダングリングボンドが存在するからである。反応性ガスを吸収した表面はエピタキシャル膜の小さな島を形成しつつ反応する。小島の形成は、いったんそれらが臨界的な寸法に成長するまで、およびそれらが単層の膜を作るように共に結合しつつあるその前まで続き、その後停止する。このことは、初歩的な実験によって膜の成長速度を知った後に行われる。従ってエピタキシャル膜12の小島は予め定められたパターンおよび距離でウェハー表面上に作られる。
【0031】
ウェハー7上にダメージサイトを作ることにおいて他の方法がある。この方法は図4を参照して説明される。この方法においては次の手順が実行される。
【0032】
(1)マスク11、代表的に有機物質で作られたフォトレジストがウェハー7の表面に作られる(図4における(A))。
(2)マスク11はそれから半導体製造産業において用いられる従来の技術を用いることにより適当なデザインを有するようパターンが形成される(図4における(B))。
(3) マスク11のパターン化された場所17が取り除かれる(図4における(C))。
(4) ウェハー7はイオンビームに晒される。この場合において連続イオンビームが用いられる(図4における(D))。
(5) マスク11を除去する(図4における(E))。
【0033】
前述した方法においては他の重要な特徴がある。この方法において、前述したごとくイオンビームを用いることは必ずしも必要ではない。その代わりに、プラズマ、例えばイオン源として容量結合型または誘導結合型のプラズマを用いることができる。もし当該プラズマが用いられるのであれば、ウェハーホルダには、プラズマにおいてイオンをウェハー表面に加速するために、必要な負のバイアス電圧を生成するためのrf電力が与えられるべきである。
【0034】
いったんウェハー表面がダメージを受けると、前述したごとくエピタキシャルの小島が成長することになる。
[実施形態2]
【0035】
第2実施形態は第1実施形態を拡張したものである。ここでは、第1実施形態に説明された操作手順に関連して操作の手順のみが変更される。
【0036】
第2実施形態において、図5に示されるごとくウェハーの表面上にダメージサイトのライン(並び)を作るため連続的イオンビームおよび/またはパルス化されたイオンビームが使用される。ダメージサイトは必ずしも対称的なパターンである必要はない。ウェハー表面が非対称的なパターンにてダメージを受けたときには、例えば図5の(A),(B)および(C)に示されるごとく、エピタキシャルの小島12には、同様にまた、同じパターンを発生させる。長いラインまたは短いラインにおけるエピタキシャル膜の製作は、同様にまた、半導体産業または他の産業において応用することができる。対称な小島生成場所の応用についての例は、次の第3実施形態において説明される。
[実施形態3]
【0037】
この第3実施形態において、分子、バイオ分子、生きている細胞または死んだ細胞等であるアーティクル(Article:生成対象物)を選択する、または整理する前述の技術の応用は、図6と7を参照して説明される。
【0038】
第1に、ウェハー7の表面は、第1実施形態または第2実施形態で説明されたように、イオンビームを用いてダメージを受ける。ダメージサイトの間の距離は、分離されることが必要なアーティクルの寸法を適当に決めるように選択される。それ故に、ダメージサイトの間の距離は数オングストロームから数百または数千オングストロームまで変わり得る。ウェハー表面上のこれらのダメージサイトの製作の後に、エピタキシャルの小島12が第1実施形態で説明したごとく成長する。ウェハーの物質とエピタキシャルの物質は、アーティクルの物理的および化学的な属性を考慮することによって、さらに、期待される応用を考慮することによって、選択される。エピタキシャルの小島12の寸法は、同様にまた、アーティクルの化学的および物理的な属性および期待される応用を考慮することによって選択される。いったんエピタキシャルの小島がウェハー表面に形成されると、ウェハーは、気体、液体または固体の相の状態にある異なるアーティクルの混合物の流れに晒される。それから適当な大きさと化学的および物理的な属性とを有するアーティクル16は、図6に示されるように、エピタキシャルの小島12に結合される。
【0039】
残存する結合されなかったアーティクルは、洗浄すること、吹き飛ばすこと、真空排気すること、または他の技術でウェハー表面から取り除かれる。この段階は、模式的に図6に示されている。従って、適切なる物質を用いて、適切なる寸法および距離でエピタキシャルの小島を作ることによって、要求されるアーティクルは、異なるアーティクルの混合物から取り出され、並べられる。
【0040】
この技術には他の利点がある。この技術は1つの方向に向けられたアーティクルを得ることに用いることができる。もしエピタキシャルの小島12が等しい距離で作られているならば、ウェハー表面の上に残されるアーティクルは図6に示すごとく2つの異なる方向を有する。しかしながら、図7に示すごとく、列と行において異なる距離を有する小島12を製作することによって、アーティクル16は同じ方向に並べることが可能となる。
【0041】
さらに、異なる物質において交互にエピタキシャルの小島12a,12bを製作することによって異なる形状を有したアーティクル16を同じ方向に向けることができる。これは図8に示されている。
【0042】
上記の説明において2つの終端を示すアーティクル16が考慮される。しかしながら、この技術は多数の終端を有するアーティクルに関して拡張することができる。唯一の条件は適当な距離を持った適当な材料のエピタキシャルの小島12を作ることである。エピタキシャルの小島12の間の距離を制御することによってアーティクル16は適当に方向付けることができる。例えば、図9は同じ方向付けにおける3つの終端を有するアーティクル16を示しているのに対し、図10は鏡面像の方向付けにおける同じアーティクル16を示している。
【0043】
ウェハー表面上のエピタキシャルの小島は、同じ物質から製作されなければならないということはない。アーティクル(Article)のレジェンド(Legend:記銘要素または関係付け要素)の化学的および物理的な属性に依存して、異なる物質においてエピタキシャルの小島を形成することができる。この場合において、第1のウェハーは、物質の1つのタイプのため、ダメージサイトを製作する目的でイオン銃に晒される。それからエピタキシャルの小島はこれらのダメージサイトの上で成長する。次に、ウェハーは、再び他のエピタキシャルの小島のため、ダメージサイトを製作する目的でイオン銃に晒される。その後、第2の物質のエピタキシャルの小島はウェハー上で成長する。それから、このウェハーはアーティクルの混合物に晒される。当該混合物では、要求されたアーティクルが含まれ、または異なる方向付けを有した要求されるアーティクルの混合物が含まれる。アーティクルを並べ直した後の図式的な構成図を図9および図10に示す。
【0044】
アーティクルの分離技術は分子エレクトロニクスにおいては極めて重要であり、そこでは電子回路の製作において単一の分子が基本要素として用いられる。例えば、単一の分子は、当該分子が2つの電極に接続されるとき、整流器として働くためのアクセプタおよびドナーの属性を有することができる。ここで、2つの電極は2つのエピタキシャルの小島を意味している。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、ウェハー表面の上にエピタキシャルの小島を容易に作るために用いられ、このエピタキシャルの小島は、選択された分子、細胞または類似したアーティクルを分離し並べるのに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この図は、ウェハー表面ダメージ付与装置の縦断面図である。
【図2】この図は、イオンビームによってダメージが与えられたウェハーの上面図を示す。
【図3】この図は、ダメージサイトを部分的に拡大した図を示す。
【図4】この図は、基板の表面にダメージを与えるためのステップからなる方法として他の技術を示す。
【図5】この図は、ウェハーにダメージを与えるための他の可能なパターンを示す。
【図6】この図は、小島が等しい距離で存在するところのエピタキシャルの小島にアーティクルを取り付けた後のウェハー表面を示す。
【図7】この図は、方向付けアーティクルを得るため小島が均等に分離されているエピタキシャルの小島にアーティクルを取り付けた後のウェハー表面を示す。
【図8】この図は、同じ方向に方向付けられたアーティクルを得るため小島の交互の列の各々が異なる物質で作られるエピタキシャルの小島にアーティクルを取り付けた後のウェハー表面を示す。
【図9】この図は、3つの集団を有するアーティクルがエピタキシャルの小島に取り付けられた後のウェハー表面を示す。
【図10】この図は、3つの終端を有するアーティクルがエピタキシャルの小島に取り付けられた後の他のウェハーの表面を示す。
【図11】この図は、ウェハーの上にエピタキシャルの膜を成長させることにおいて従来の反応容器の縦断面図を示す。
【符号の説明】
【0047】
1 反応容器
2 ウェハーホルダ
3 イオン銃
4 イオンビーム案内装置
7 ウェハー
8 ウェハー上のダメージを受けたサイト
12 エピタキシャルの小島
16 アーティクル
100 反応容器
101 ウェハーホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン銃と、イオンの方向およびエネルギを制御する制御手段と、ガス導入口および排気ポートを備えるウェハーパターニングチャンバと、
ウェハーホルダと、ガス導入口およびガス排出口を備えるエピタキシャル膜成長チャンバを備え、
前記ウェハーパターニングチャンバの前記イオン銃は予め定められた直径とイオンエネルギのイオンビームを放射し、ウェハー表面に衝突するイオンは、当該ウェハー表面を、原子間の結合を破壊するかまたは転位させることによってダメージを与えるようにする、選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置。
【請求項2】
前記ウェハーパターニングチャンバと前記エピタキシャル膜成長チャンバは、前記イオン銃と前記制御手段を前記エピタキシャル膜成長チャンバに取り付けることによって、同じものになる請求項1記載の選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置。
【請求項3】
前記イオン銃から放射されるイオンビームは、イオンビーム案内装置を用いることによって、ウェハー表面の全面を走査するよう移動する請求項1記載の選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置。
【請求項4】
前記イオン銃はパルス化されたイオンビームを放射する請求項1記載の選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置。
【請求項5】
アーティクル(Article)を分離するために用いられるものであり、第1に、イオンビームによってウェハーは、ダメージとダメージの間、予め定められた距離を有するようにダメージを与えられ、第2に、ダメージの場所に適当な物質のエピタキシャル膜の小島を成長させ、最後に、ウェハーの表面上に液体、気体、または固体の状態のアーティクルが流され、その結果、適当な長さと、物理的および化学的な属性とを備えたアーティクルの結合手が前記エピタキシャルの小島との間で結合を作り、他方、異なる長さおよび/または物理的および化学的な属性を有する他のアーティクルは洗い流されるか、吹き飛ばされるか、または排気される請求項1〜4いずれか1項記載の選択場所にエピタキシャル膜を成長させる装置。
【請求項6】
第1の物質のエピタキシャルの小島(islets)を成長させるためウェハー上の選択場所にダメージサイトを作るステップと、
第1の物質のエピタキシャルの小島を成長させるステップと、
第2の物質のエピタキシャルの小島を成長させるため前記ウェハー上の選択場所上にダメージサイトを作るステップと、
第2の物質のエピタキシャルの小島を成長させるステップと、
から成る少なくとも2つの異なる物質のエピタキシャル膜の小島を成長させる方法。
【請求項7】
前記異なる物質の数は2以上であり、各物質について、前記ダメージサイトを作るステップと、前記エピタキシャルの小島を成長させるステップとが繰り返される請求項6記載の異なる物質のエピタキシャル膜の小島を成長させる方法。
【請求項8】
異なる化学的および物理的な属性を有する2つまたはいくつかのレジェンド(Legend)を有するアーティクルを分離するために採用され、異なる物質のエピタキシャルの小島は適当なレジェンドを有した結合を作るように採用される請求項6または7記載の異なる物質のエピタキシャル膜の小島を成長させる方法。
【請求項9】
前記アーティクルは有機分子または無機の分子、生物学的細胞、生物学的細胞および人工的分子の複合構造、または植物、動物もしくは人間の抽出物である請求項6または7記載の異なる物質のエピタキシャル膜の小島を成長させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−114613(P2006−114613A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2004−298824(P2004−298824)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】