説明

部分アセタール化されたポリビニルアルコールをベースとするエンボシングされたフィルムの製造方法

【課題】技術水準の欠点を有しない、部分アセタール化されたポリビニルアルコールをベースとするフィルムをエンボシングする二段階の方法。
【解決手段】その都度独立してRz=20〜100μmの表面の粗さを有する部分アセタール化されたポリビニルアルコールをベースとする構造化されたフィルムを、相応して粗面化されたエンボシングロールe,hと特定のショアA硬さのプレッシングロールf,iとの間でフィルム面をエンボシングし、その場合にフィルム及びロールの温度は、構造の固定のために調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二段階のエンボシングにより調節された表面粗さを有する部分アセタール化されたポリビニルアルコールをベースとするフィルムの製造方法並びに複合ガラスラミネートを製造するための前記フィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のガラス板と、このガラス板を結合させ、部分アセタール化されたポリビニルアルコールをベースとする、好ましくはポリビニルブチラール(PVB)からなる1枚の粘着フィルムとからなる複合安全ガラス板は、特に自動車のフロントガラスとして使用され、その場合にガラス板は場合によりプラスチック板により置換されていてよい。建築分野においても、例えばウィンドウガラスとして又は中間壁として、そのようなケイ酸塩ガラス/ケイ酸塩ガラス−もしくはケイ酸塩ガラス/プラスチック−複合体が使用され、その場合に、それらの使用に応じて、例えば複合防弾ガラスとして、多層複合体、すなわち2つよりも多い支持層からなる複合体も場合により使用される。
【0003】
技術水準
安全複合ガラスを製造するための、部分アセタール化されたポリビニルアルコール、特にポリビニルブチラール(PVB)をベースとする可塑剤含有フィルムは、室温で既に極めて軟質であり、かつ粘着性である。高い粘着性は、確かに、複合ガラスにおけるガラス−フィルム−ガラスの複合体の結合にとって絶対に必要であるが、しかしながら輸送及びこれらのガラスへの加工プロセスのためには、粘着性は一時的に取り除かれなければならず、少なくとも抑制されなければならない。フィルムの固有粘着性は、特定の粗さにより低下されることができる。
【0004】
さらに、フィルムを複合安全ガラスに加工する際に、フィルムとガラスとの間にある空気が除去できなければならない。このために、フィルムの片面又は両面に粗面を設けることは一般に知られている。ガラスラミネートの製造の際に閉じ込められた空気は、粗面を経て逃げることができるので、気泡のないラミネートが得られる。
【0005】
通常、そのような中間フィルムの粗さの値は、DIN EN ISO 4287に従いRzとして測定され、8〜60μmである。粗面を有するフィルムの典型的な製造方法は、欧州特許(EP-B1)第0 185 863号明細書からメルトフラクチャー法として知られている。メルトフラクチャー法は、不規則な(確率論的な)粗面をもたらす。
【0006】
技術水準に記載された粗面を製造する別の方法はエンボシング法である。エンボシング法により製造される全てのフィルム表面の共通の特徴は、規則的な(確率論的でない)表面構造であり、前記構造は、とりわけ、減圧バッグ法を用いるガラスラミネートの製造プロセスにおいて良好な脱気挙動を示し、ひいては短いプロセス時間及び幅広い加工ウィンドウを可能にする。
【0007】
エンボシング法は、メルトフラクチャー法と比較して、得られた規則的な表面構造が、ラミネート製造の際により迅速でより単純な脱気を可能にするという利点を有する。
【0008】
欧州特許(EP-B1)第0 741 640号明細書には、2つのエンボシングロールを用いて、両面にエンボシングされた表面を製造するそのようなエンボシング法が記載されており、前記方法により、フィルムに規則的でのこ歯状のライン構造が設けられる。フィルムの各面でエンボシングにより導入されるラインは、>25°の角度で交差するので、複合ガラス中でのいわゆるモアレパターンが防止される。
【0009】
欧州特許出願公開(EP-A1)第1 233 007号明細書には、モアレ効果の回避のために、フィルムの各面に規則的で線状のエンボシング構造を生じさせるエンボシング法が開示されている。干渉の回避のために、双方のフィルム面のライン構造は、異なる繰り返し頻度を有する。
【0010】
米国特許(US)第5,972,280号明細書に記載されたその他の方法は、表面構造化のエンボシングのために、2つのエンボシングロールの代わりに、1つのみのロール及び前記ロール上にローリング及び圧縮空気を介して密着している構造化されたスチールベルトを使用し、その場合に、フィルムはエンボシング過程の間にエンボシングロールとスチールベルトとの間の間隙を経て送られる。
【0011】
米国特許(US)第4,671,913号明細書には、PVBフィルムのエンボシング法が開示されており、その場合に前記フィルムは、単一の作業過程において、構造化された2つのロールの間でエンボシングされる。前記ロールは[ひいてはエンボシングされたフィルムも]、10〜60μmの粗さRzを有する。
【0012】
前記の両面のエンボシング法は、フィルムの両面の一段階のエンボシングの場合にロール間隙中での僅かな滞留期間のみが達成できるという欠点を有する。それにより、エンボシングはエンボシング速度が増大する場合に著しく減少し、このことは工業的な生産プロセスにとって望ましくない。滞留時間を増大させるために、確かに、一方のフィルム面が、エンボシングロールに巻き付けられることができるので、このフィルム面は、他方の面よりも、エンボシングロールにより長く接触する。このことは、エンボシングの正確さを低下させるか、もしくは異なるエンボシング深さを有するフィルム面が得られる。
【0013】
フィルム両面が連続してエンボシングされることによる二段階の方法の場合に、この作用は生じない。しかしながら、ここでは、既にエンボシングされたフィルム面が第二のエンボシング工程において再び均等にされるか又は過度にエンボシングされるという危険が存在する。このことは、ロール表面及びエンボシング圧の相応する選択により抑制されることができる。例えば、米国特許出願公開(US)第2003/0022015号明細書、国際公開(WO)第01/72509号パンフレット、米国特許(US)第6077374号明細書及び米国特許(US)第60934741号明細書には、スチール製エンボシングロール及びゴムコーティングを有するプレッシングロールを用いるPVBフィルムのための一段階及び二段階のエンボシング法が記載されている。ゴムコーティング、もしくはロールの間でフィルム上へ適用される力は、より詳細に記載されていない。ロール表面が硬すぎる場合には小さなエンボシング帯域を生じ、これは事実上1つのラインに縮小されている。このことは、エンボシング帯域におけるフィルムの低い滞留期間、ひいては低いエンボシング速度をまねく。それに反して、軟らかすぎるロール表面が使用される場合には、フィルムに不十分な力のみが及ぼされうるに過ぎないので、エンボシング品質は低下する。
【0014】
現存の方法は、エンボシング性能に関して改善の余地がある。
【特許文献1】欧州特許(EP-B1)第0 185 863号明細書
【特許文献2】欧州特許(EP-B1)第0 741 640号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開(EP-A1)第1 233 007号明細書
【特許文献4】米国特許(US)第5,972,280号明細書
【特許文献5】米国特許(US)第4,671,913号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開(US)第2003/0022015号明細書
【特許文献7】国際公開(WO)第01/72509号パンフレット
【特許文献8】米国特許(US)第6077374号明細書
【特許文献9】米国特許(US)第60934741号明細書
【特許文献10】特許出願公開(DE-A1)第199 38 159号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
故に、本発明の課題は、これらの欠点を有しない、部分アセタール化されたポリビニルアルコールをベースとするフィルムをエンボシングする二段階の方法を開発することであった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
意外なことに、アセタール化されたポリビニルアルコールをベースとするフィルムのエンボシングが、十分な品質及びエンボシングロールと特定のショアA硬さのプレッシングロールとの間での十分な速度を伴って可能であることが見出された。
【0017】
発明の説明
その都度独立してRz=20〜100μm、好ましくはRz 30〜50μmの表面粗さを有する部分アセタール化されたポリビニルアルコールをベースとするフィルムのエンボシング法であって、次の処理工程
a.Rz=1〜70μm、好ましくは1〜40μm、特に1〜15μmの表面の粗さを有する部分アセタール化されたポリビニルアルコールをベースとするフィルムを準備する工程、
b.a)からのフィルムの片方の(ersten)表面を、相応して粗面化された80〜170℃の温度のエンボシングロールと、0〜60℃の温度のプレッシングロールとの間でエンボシングして、Rz=20〜100μmのエンボシングされた表面の粗さを有するフィルムを得る工程及び
c.b)からのフィルムのもう片方の(zweiten)表面を、相応して粗面化された80〜170℃の温度のエンボシングロールと、0〜60℃の温度のプレッシングロールとの間でエンボシングして、Rz=20〜100μmのエンボシングされた表面の粗さを有するフィルムを得る工程
によるものであり、その場合に双方のエンボシング段階のプレッシングロールは、50〜80の同じか又は異なるショアA硬さを有する。
【0018】
本発明による方法は、好ましくは、フィルムの確率論的でない粗さをもたらす。粗さの値Rzを有するフィルムの表面粗さの測定は、DIN EN ISO 4287及びDIN ISO 4288に従い行われる。表面粗さの測定に使用される測定装置は、EN ISO 3274に添わなければならない。使用されるプロフィールフィルターは、DIN EN ISO 11562に対応しなければならない。
【0019】
工程a)によるフィルムの表面構造もしくは粗さは、例えば、欧州特許(EP-B1)第0 185 863号明細書に相応して、いわゆるフロー−又はメルトフラクチャー法により適用されることができ、その内容についてここで明らかに指摘される。異なる粗さのレベルは、出口間隙の幅及びダイ出口で直接にダイリップ温度の変更により意図的に発生されることができる。
【0020】
フィルムを、メルトフラクチャーを用いずに押出しにより製造することも可能である。選択的に、フィルムは、例えば米国特許(US)第4,671,913号明細書による押出し及び冷却されたロールによる平滑化により、製造されることができる。本発明による方法において、できるだけ少ない粗さを有するフィルムの使用が好ましい、それというのも、粗い構造はより高いエンボシング費用を伴ってのみ過剰にエンボシングされうるからである。さらに、当初の粗さはプレコンポジット製造の際に再び調節されうるので、エンボシングされたフィルムの利点は、メルトフラクチャーによる粗面に比較して低下される。
【0021】
工程b)及びc)によるその後のエンボシング法において、前記フィルムに各面でその都度独立して、表面構造及びRz=20〜100μm、好ましくはRz=20〜80μm、特にRz=30μm〜50μmの粗さの深さが設けられる。
【0022】
本発明による方法は、構造化されたフィルムの面が異なる粗さの深さRzを有するように実施されることができる。このことは、例えば、異なる金型あるいはエンボシング金型もしくはプレッシングロールの温度により達成されることができる。
【0023】
エンボシング過程b)及びc)の前及び/又は後に、前記フィルムはその都度−10〜+20℃に冷却され、こうしてフィルムの表面構造は固定されることができる。前記冷却は、好ましくは、相応して温度調節されたチルロールを介して行われる。ここでは、いわゆる前面冷却が可能であり、すなわち処理工程b)及び/又はc)においてフィルムのエンボシングされた面が冷却される。選択的方法は、処理工程b)及び/又はc)においてフィルムのエンボシングされない面が冷却されることによる、いわゆる裏面冷却である。
【0024】
フィルムの冷却は、それらの表面に限定されていてもよい。例えば、フィルムのエンボシングされる面の表面温度は、処理工程c)の前に−10〜+20℃に調節されることができる。選択的に、フィルムのエンボシングされない表面は、工程b)及び/又はc)の前に、この温度に調節されることができる。
【0025】
エンボシングロールは、好ましくは金属製であり、かつ後でフィルム表面に存在する構造のネガのプロファイリングを有する表面を有する。本発明による方法において使用されるエンボシングロールは、フィルムの所期の粗さに相応する粗さを有していなければならない。一変法において、エンボシングされたフィルム及びエンボシングロールは、同じか又はほぼ同じ粗さを有する。プロセスパラメーターのフィルム温度、ライン圧、ロール温度、ロール速度又はフィルム速度に依存して、エンボシングされたフィルムの粗さは、エンボシングロールの粗さよりもかなり少なくてもよい。例えば、エンボシングロールの粗さRzは、このロールを用いてエンボシングされたフィルム表面の粗さRzに対して400%、好ましくは300%、特に100%であってよい。エンボシングロールの温度は、80〜170℃、好ましくは100〜150℃及び特に110〜140℃である。特に好ましくは、エンボシングロールは、フィルムの粘着を低下させるために、コーティングされたスチール表面(例えばPTFE)を有する。
【0026】
本発明による方法において、フィルムは、エンボシングロールと、反対方向に回転するプレッシングロールとの間に送られる。好ましくは、前記フィルムは、処理工程b)及び/又はc)のエンボシングロール及びプレッシングロールの間で20〜80N/mm、特に40〜65N/mmのライン圧に曝される。ライン圧は、処理工程b)及びc)において同じか又は異なっていてよい。ライン圧は、フィルム幅を基準としたロール対のプレス力であると理解される。
【0027】
プレッシングロールは、0〜60℃、好ましくは10〜40℃の温度を有し、すなわち、エンボシングロールに相対してアクティブに冷却される。プレッシングロールの温度は、処理工程b)及びc)において同じか又は異なっていてよい。
【0028】
プレッシングロールは、粗さを有しないか又は僅かな粗さのみを有し(Rz最大10μm)、かつ好ましくは、ゴム又はEPDMからなる表面を有する金属コアからなる。プレッシングロールの表面は、特に、60〜75のショアA硬さを有する。プレッシングロールは、フィルムをエンボシングロールの構造化された表面へ押しつけ、その際にエンボシングロールに軽く密着する。ライン圧の変更により、エンボシング帯域の面積、ひいてはロール間隙中のフィルムの滞留期間が変更されることができる。これは図1に略示的に示されており、その場合にa)がエンボシングすべきフィルムを示し、b)がエンボシングロールを示し、かつc)がプレッシングロールを示す。ここで示されたロールの周囲のフィルムの送りに加えて、ロール間隙を経るフィルムの単純な送りも、ロールに巻き付くことなく可能である。
【0029】
プロセスパラメーターのライン圧、フィルム温度及び/又はロール温度、ロール速度及びロール上のフィルムバーンの巻き付け角度の選択により、エンボシングロールの所定の粗さの深さでフィルムエンボシングの粗さの深さに影響を与えることができる。
【0030】
エンボシング過程の品質は、フィルム、ひいてはチルロール、プレッシングロール及びエンボシングロールの温度一定性にも依存する。故に、好ましくは、それらの幅及び範囲(Umfang)全体でのエンボシングロール及び/又はプレッシングロールの温度差は2℃未満、特に1℃未満に調節される。
【0031】
図2は、本発明による方法の一変法を略示的に示す。フィルムの走行方向は二重矢印で示されている。低い粗さが設けられたフィルム(a)は、場合によりロール対(d)中で温度調節され、エンボシングロール(e)とプレッシングロール(f)との間で片面でエンボシングされる。(e)及び(f)は既に記載されたように温度調節されている。引き続いて、こうして片面でエンボシングされたフィルムの温度は、ロール対(g)中で調節されることができる。フィルムのもう片方の表面は、再び温度制御されたエンボシングロール(h)及びプレッシングロール(i)を用いてエンボシングされる。図2で印をつけていないロールは、フィルムの送りに利用される。より良好な温度調節のために、ロール対d)及びg)はフィルムによって巻き付けられることもできるので、ロール上のフィルムの滞留時間は高められる。
【0032】
図3は、本発明による方法の別の一変法を示す。ここでは、フィルム(a)は、ロール対d′中での場合による温度調節後に、エンボシングロール(e)とプレッシングロール(f)との間で片面でエンボシングされ、引き続いて片面又は両面でロール対(g′)中で温度調節される。フィルムのもう片方の面は、引き続いてエンボシングロール(h′)及びプレッシングロール(i′)の間でエンボシングされる。表面構造はチルロール(j)を用いて固定される。
【0033】
ここでも、フィルムは、温度調節ロールのロール間隙を経て、直接的に、すなわち巻き付けることなく、送られることができる。
【0034】
部分アセタール化されたポリビニルアルコールとして、特にポリビニルブチラール(PVB)が、架橋された形又は架橋されていない形で、その都度少なくとも1つの可塑剤、染料、顔料、付着調整のための金属塩、有機添加剤及び/又は無機充填剤との混合物で使用されることができる。
【0035】
部分アセタール化されたポリビニルアルコール用の可塑剤として、一方では、技術水準に従いこのために知られた全ての可塑剤、特に、多価酸、多価アルコール又はオリゴエーテルグリコールのエステル、例えばアジピン酸エステル、セバシン酸エステル又はフタル酸エステル、特にジ−n−ヘキシルアジパート、ジブチルセバカート、ジオクチルフタラート、ジグリコール、トリグリコール又はテトラグリコールと線状又は分枝鎖状の脂肪族カルボン酸とのエステル及びこれらのエステルの混合物が適している。部分アセタール化されたポリビニルアルコール、特にポリビニルブチラール用の標準可塑剤として、好ましくは、脂肪族ジオールと長鎖脂肪族カルボン酸とのエステル、特にトリエチレングリコールと炭素原子6〜10個を含有する脂肪族カルボン酸、例えば2−エチル酪酸又はn−ヘプタン酸とのエステルが使用される。ジ−n−ヘキシルアジパート(DHA)、ジブチルセバカート(DBS)、ジオクチルフタラート(DOP)、ジグリコール、トリグリコール又はテトラグリコールと線状又は分枝鎖状の脂肪族カルボン酸とのエステル、特にトリエチレングリコール−ビス−2−エチルブチラート(3GH)、トリエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノアート(3G7)、トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノアート(3G8)、テトラエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノアート(4G7)からなる群からの1つ又はそれ以上の可塑剤が特に好ましい。
【0036】
本発明の特別な一実施態様において、エンボシング金型へのフィルムの付着は、フィルム材料に、付着力を減少させる物質が添加されたことによって、さらに減少されることができる。
【0037】
付着を減少させる有機添加剤として、例えば、式I
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4は、その都度同じか又は異なり、−CH2OH、−CH2OR5、−CH2OCOR5又は−CH2OCO−R6−COOR5の群の基を表し、かつR5、R6は炭素原子1〜26個を有し、飽和又は不飽和の、分枝鎖状又は非分枝鎖状の炭化水素基を表す]で示されるペンタエリトリトールを、全混合物に対して、0.01〜2質量%添加されることができる。
【0038】
任意の添加剤として使用されるペンタエリトリトールもしくはそれらのエステルは、ポリマー材料としての部分アセタール化されたポリビニルアルコールの使用の際に、しかしまた、例えばフィルムの改善された消音を生じさせる特殊可塑剤の使用も軽減し、独国特許出願公開(DE-A1)第199 38 159号明細書も参照、その内容についてこれにより全ての内容に関して関連づけられる。特殊可塑剤には、特に、次のものからなる可塑剤の群が含まれる:
・一般式HO−(R−O)n−Hのポリアルキレングリコール、ここでR=アルキレン及びn>5、
・一般式HO−(CH2−CH2−O)n−(CH2−CH(CH3)−O)m−Hのエチレングリコール及びプロピレングリコールからなるブロックコポリマー、ここでn>2、m>3及び(n+m)<25、
・一般式R1O−(CH2−CH2−O)n−(CH2−CH(CH3)−O)m−HもしくはHO−(CH2−CH2−O)n−(CH2−CH(CH3)−O)m−R1のエチレングリコール及びプロピレングリコールからなるブロックコポリマーの誘導体、ここでn>2、m>3及び(n+m)<25及びR1=有機基、
・一般式R1−O−(R2−O)n−Hのポリアルキレングリコールの誘導体、ここでR2=アルキレン及びn≧2であり、その場合にポリアルキレングリコールの双方の末端ヒドロキシ基の1つの水素は、有機基R1により置換されている、
・一般式R1−O−(R2−O)n−R3のポリアルキレングリコールの誘導体、ここでR2=アルキレン及びn>5であり、その場合に水素はポリアルキレングリコールの複数の末端ヒドロキシ基の場合に有機基R1もしくはR3により置換されている。
【0039】
これらの特殊可塑剤は、好ましくは、部分アセタール化されたポリビニルアルコール、ここでは特にPVBの場合に、1つ又はそれ以上の標準可塑剤との組合せで、可塑剤を基準とする0.1〜15質量%の含分で使用される。
【0040】
可塑化された部分アセタール化されたポリビニルアルコール樹脂は、樹脂100質量部に対して、好ましくは可塑剤25〜45質量部及び特に好ましくは30〜40質量部を含有する。
【0041】
部分アセタール化されたポリビニルアルコールは、加水分解されたポリビニルエステルのアセタール化によって、知られた方法で製造される。アルデヒドとして、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等、好ましくはブチルアルデヒドが使用されることができる。
【0042】
好ましいポリビニルブチラール樹脂は、ビニルアルコール基10〜25質量%、好ましくは17〜23質量%及び特に好ましくは19〜21質量%もしくはアセタート基0〜20質量%、好ましくは0.5〜2.5質量%を含有する。
【0043】
別の一変法において、ポリマーとして、国際公開(WO-A1)第2004/063231号パンフレットによる、ポリアルデヒド(特にグルタルアルデヒド)及びオキソカルボン酸(特にグリオキシル酸)で部分架橋されたPVBが使用される。そのような部分架橋されたPVBは、類似の架橋されないPVBに比較して、10〜50%だけ高められた粘度を有する。
【0044】
フィルムの含水量は、好ましくは0.15〜0.8質量%、特に0.3〜0.5質量%に調節される。
【0045】
本発明により製造されるフィルムは、特に、1つ又はそれ以上のガラス板及び/又は1つ又はそれ以上のプラスチック板及び少なくとも1つの構造化されたフィルムからなるラミネートの製造の際に使用されることができる。
【0046】
これらのラミネートの製造の際に、まず最初にガラス/プラスチック板とフィルムとから、プレス、減圧バッグ又は真空リップを用いてプレコンポジットが製造される。プレコンポジットラミネートは、通例、空気封入により依然として僅かに曇っている。ラミネートの最終的な製造は、オートクレーブ中で、例えば国際公開(WO)第03/033583号パンフレットに従って、行われる。
【実施例】
【0047】
PVB 72.5質量%、3G8 25.0質量%からなり、粘着防止剤としてのカリウム塩及びマグネシウム塩を有し、両面の粗さRz≦5μmを有する可塑剤含有PVBフィルムを図3による設備上でエンボシングした。双方のエンボシング段階のプレッシングロール及びエンボシングロールは、同一の性質を有していた。
【0048】
設備パラメーター:
エンボシングロール直径:245mm
ゴムロールの硬さ ショアA 70±5
ゴムロール直径:255mm
エンボシングロールの粗さ:約80μm
表面コーティング:PTFE
次のエンボシング特性を有するフィルムが得られた:
【表1】

【0049】
フィルム両面上で同じ粗さを達成するために、以下の例に示されるように、双方のエンボシング段階において異なるパラメーターを使用することも必要でありうる:
【表2】

【0050】
フィルムは、複合ガラス製造の際に良好な脱気特性を有し、かつ気泡のないラミネートへと加工されることができた。
【0051】
比較実験:
本発明によるショアA硬さを有するゴムロールの代わりに、スチールロールを使用した。
【0052】
2つのコーティングされたエンボシングロールの使用の場合でさえ、フィルムはロールの一つに粘着する傾向がある、それというのも、定義された取り外し点が存在していないからである。さらに、前記フィルムは既に約3m/minの速度から片面で平滑になる、それというのも、エンボシング間隙中の滞留期間が短すぎるからである。
【0053】
複合ガラス製造に使用可能なフィルムが得られなかったか、もしくは工業的な目的のためにはそのような方法は不適当である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】エンボシング帯域の面積、ひいてはロール間隙中のフィルムの滞留期間を示す略示図。
【図2】本発明による方法の一変法の略示図。
【図3】本発明による方法の別の一変法の略示図。
【符号の説明】
【0055】
a エンボシングすべきフィルム、 b エンボシングロール、 c プレッシングロール、 d ロール対、 e エンボシングロール、 f プレッシングロール、 g,g′ ロール対、 h,h′ エンボシングロール、 i,i′ プレッシングロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その都度独立してRz=20〜100μmの表面粗さを有する部分アセタール化されたポリビニルアルコールをベースとするフィルムをエンボシングする方法であって、次の処理工程:
a.Rz=1〜70μmの表面粗さを有する部分アセタール化されたポリビニルアルコールベースとするフィルムを準備する工程、
b.a)からのフィルムの片方の表面を、相応して粗面化された80〜170℃の温度のエンボシングロールと、0〜60℃の温度のプレッシングロールとの間でエンボシングして、Rz=20〜100μmのエンボシングされた表面の粗さを有するフィルムを得る工程及び
c.b)からのフィルムのもう片方の表面を、相応して粗面化された80〜170℃の温度のエンボシングロールと、0〜60℃の温度のプレッシングロールとの間でエンボシングして、Rz=20〜100μmのエンボシングされた表面の粗さを有するフィルムを得る工程
によってエンボシングする方法において、双方のエンボシング段階のプレッシングロールが50〜80の同じか又は異なるショアA硬さを有する
ことを特徴とする、フィルムをエンボシングする方法。
【請求項2】
フィルムが、処理工程b)及びc)のエンボシングロールとプレッシングロールとの間で20〜80N/mmのライン圧に曝されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
プレッシングロールの表面がゴム又はEPDMからなる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
エンボシングロールの温度差が、ロールの幅及び範囲全体で2℃未満である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
プレッシングロールの温度差が、ロールの幅及び範囲全体で2℃未満である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
エンボシングされるフィルムの表面がその都度独立して、20〜80μmの粗さRzを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
フィルムの温度を、処理工程b)及びc)の前及び/又は後に−10〜+20℃に調節する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
処理工程b)及び/又はc)において、フィルムのエンボシングされる面を冷却する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
処理工程b)及び/又はc)において、フィルムのエンボシングされない面を冷却する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
1つ又はそれ以上のガラス板及び/又は1つ又はそれ以上のプラスチック板及び請求項1から9までのいずれか1項記載の方法により製造された少なくとも1つの構造化されたフィルムからなる、ラミネート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−276475(P2007−276475A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97292(P2007−97292)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(507052393)クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Brueningstrasse 50, D−65926 Frankfurt , Germany
【Fターム(参考)】