説明

部品位置決め装置

【課題】部品組付け対象物に部品を位置決めする際に、部品組付け対象物と部品の間に位置ずれが生じることがない部品位置決め装置を提供する。
【解決手段】車体に対して、サイドカーテンエアバッグを位置決めする部品位置決め装置であって、エアバッグをセットするセット治具2と、セット治具2を搬送するアシスト搬送手段4と、アシスト搬送手段4とセット治具2を連結するフローティング機構6を備え、セット治具2には車体の基準孔に位置決めピンを嵌合する位置決め機構5と、車体に対して位置決めピンの挿入方向と略逆方向に押圧する挟持手段31と、エアバッグの特定部位を車体の取付孔に押し込む押込手段32を設けた。フローティング機構6は、エアダンパを膨らませることによりロック状態にし、エアダンパを縮ませることによりフローティング状態にし、それらが切替自在である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体等の部品組付け対象物に、サイドカーテンエアバッグ等の部品を取付けるための部品位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体等の部品組付け対象物に、自走機により支持された部品を取付ける部品位置決め装置としては、自走機側に引出し・巻取り自在に設けられるワイヤの先端にターゲットマーカを設け、このターゲットマーカを車体の所定箇所に装着して、ワイヤの長さと、ワイヤの存在位置を第1と第2のセンサで検出すると共に、この検出値が基準値に一致するよう自走機を移動させて部品を車体の所定位置に位置決めするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−224894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術おいては、ワイヤの存在位置を検出するセンサが、一定の平面領域を通過するワイヤの横切った位置を検出するため、自走機に対するターゲットマーカの位置が狭く制限されるようになり、位置補正可能な自走機の位置が制約を受けるという問題がある。また、位置決め作業が、部品のクリップ等を車体の孔に挿入するだけなので、クリップ等の挿入反力によって車体と部品の間に位置ずれが生じ、部品を車体に取付けることができないという問題がある。
【0005】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品組付け対象物に部品を位置決めする際に、部品組付け対象物と部品の間に位置ずれが生じることがない部品位置決め装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、部品組付け対象物に対して、部品を位置決めする部品位置決め装置であって、部品を把持する把持手段と、この把持手段を搬送する搬送手段と、この搬送手段と前記把持手段を連結するフローティング機構を備え、前記把持手段には部品組付け対象物の基準孔に位置決めピンを嵌合する位置決め手段と、部品組付け対象物に対して前記位置決めピンの挿入方向と略逆方向に押圧する挟持手段と、部品の特定部位を部品組付け対象物の取付孔に押し込む押込手段を設けたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の部品位置決め装置において、前記フローティング機構は、エアダンパを膨らませることによりロック状態にし、エアダンパを縮ませることによりフローティング状態にし、それらを切替自在とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、フローティング機構が部品組付け対象物の孔位置の許容誤差内の位置ずれを吸収することができる。また、挟持手段と押込手段が相俟って部品を部品組付け対象物に確実に位置決めすることができる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、容易にロック状態とフローティング状態を切り替えることができる。また、エア圧を利用するので、柔軟なロック状態とフローティング状態を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係る部品位置決め装置が適用される自動車組立工程の平面図、図2は右側のサイドカーテンエアバッグ取付け状態の斜視図、図3は車体内のサイドカーテンエアバッグ取付け部の説明図、図4はサイドカーテンエアバッグの説明図、図5は車体にサイドカーテンエアバッグを取付ける状態を示す側面図、図6は本発明に係る部品位置決め装置の概要図である。
【0011】
図1に示すように、車体BにサイドカーテンエアバッグSを取付ける工程において、車体Bの搬送ラインLを挟んで左右両側に夫々、本発明に係る部品位置決め装置1が配置されている。部品位置決め装置1は、図2にも示すように、長手方向に沿って設けられ、サイドカーテンエアバッグSを保持するセット治具2を備えると共に、例えばハンガー方式のレール3に吊り下げられ、車体Bの搬送速度に同期して移動できるようになっている。そして、部品位置決め装置1は、セット治具2を位置決め制御して、セット治具2が保持するサイドカーテンエアバッグSを車体Bの組付位置に位置決めする。
【0012】
セット治具2に保持されるサイドカーテンエアバッグSは、最終的に図3に示すような車体B内側の側面上部の組付位置(ハッチングで示す部分)に組み付けられる。また、サイドカーテンエアバッグSは、図4と図5に示すように、一本のバッグ本体Saと、これを保持する三ヶ所のブラケットSbが一体化されたもので、各ブラケットSbの所定箇所には、長手方向に対して複数の仮止め用のクリップcが設けられている。そして、本発明の実施の形態では、クリップcの形状等はその位置によって異ならせている。また、車体B側にも、複数のクリップcの位置に合わせて、クリップ挿入用の取付孔hが設けられている。
【0013】
部品位置決め装置1は、図6に示すように、サイドカーテンエアバッグSを保持する前記したセット治具2の他に、セット治具2を搬送するアシスト搬送手段4と、セット治具2とアシスト搬送手段4を連結するフローティング機構6と、フローティング機構6に装着され同じ2個のセット治具2を原位置にて交互に自動交換して把持するオートツールチェンジャー(ATC)25を備えている。2個のセット治具2は、夫々原位置に設けられた作業台に載置されている。作業者は、部品位置決め装置1が自動運転中に、サイドカーテンエアバッグSを作業台に載置されたセット治具2にセットすることにより、次に搬送されてくる車体Bのための準備をすることができる。
【0014】
また、セット治具2は、長手方向に沿って一対設けられ車体Bの基準孔Ha,Hbに位置決めピン7,7を嵌合する位置決め機構5と、車体Bに対して位置決めピン7,7の挿入方向と略逆方向に押圧する複数の挟持手段31と、サイドカーテンエアバッグSに設けた複数のクリップcを夫々車体Bの取付孔hに押し込む複数の押込手段32をベース部材2aに設けている。セット治具2は、図2にも示すように、アシスト搬送手段4によって、例えば、車体Bのフロントガラス装着部分(この段階ではフロントガラスは未装着)から車内に搬入されるようになっている。
【0015】
アシスト搬送手段4は、図1に示すように、レール3に係合するスライダ4aと、スライダ4aに第1関節4bを介して連結する第1アーム4cと、第1アーム4cに第2関節4dを介して連結する第2アーム4eと、第2アーム4eに第3関節4fを介して連結する第3アーム4gと、スライダ4aに支持されたハンドル4hと、ハンドル4hの近傍に設けた作動スイッチ4iを備えている。スライダ4a、第1関節4b、第2関節4d、第3関節4fには、夫々アクチュエータ(不図示)が備えられ、これらのアクチュエータを制御することにより、セット治具2を所望な位置に位置決めすることができる。
【0016】
そして、作業者がハンドル4hを操作することにより、セット治具2を搬送する際の作業者に対する負荷を軽減(パワーアシスト)して、セット治具2を搬送することができる(手動モード)。また、アシスト搬送手段4は、後述する位置決め機構5を用いることにより、サイドカーテンエアバッグSを保持するセット治具2を、搬送ラインLを移動する車体Bにティーチング通り追従させて車体Bの所望な組付位置に自動で位置決めすることができる(自動モード)。アシスト搬送手段4の制御装置には、フローティング機構6、挟持手段31、押込手段32、後述する位置決め機構5の制御装置も設けられている。
【0017】
位置決め機構5は、図7及び図8に示すように、セット治具2側に固定される位置決め部としての位置決めピン7と、この位置決めピン7に連結可能な係合部材(ターゲットマーカ)10を備えており、係合部材10とセット治具2側の間には、線状部材としてのワイヤ8が連結されている。
【0018】
図3に示すサイドカーテンエアバッグSの装着箇所(ハッチングで示す部分)の近傍には、位置決め機構5の各係合部材10を装着する基準孔Ha,Hbが設けられており、各係合部材10を夫々の基準孔Ha,Hbに装着すると、ワイヤ8が引き出され、このワイヤ8の引出し長さと引出し方向を検知することによって、セット治具2側が自動的に基準位置に移動し、係合部材10と位置決めピン7が連結される。セット治具2側の移動を制御するため、係合部材10に対するセット治具2の基準位置からのずれを測定し、このずれをゼロに制御するようにしている。
【0019】
係合部材10は、図7及び図8に示すように、第1ケーシング12内に収納され、且つ先端の小径筒部13の切欠き孔13cから半径方向に拡縮自在な3本の爪部材14と、この爪部材14を揺動させるためのカムローラ16と、カムローラ16に係脱自在なカムピン17を備えており、カムピン17は、第1ケーシング12に対してピン軸方向に沿って所定ストローク移動可能な第2ケーシング18側に設けられている。そして、第1ケーシング12と第2ケーシング18が当接する状態(図7(a))になると、カムピン17とカムローラ16の作用により爪部材14が切欠き孔13cから外部に突出し、第1ケーシング12と第2ケーシング18が所定間隔離れる状態(図7(b))になると、カムピン17とカムローラ16の作用により爪部材14が切欠き孔13cから内部に没入するようにされている。
【0020】
そして、第2ケーシング18と第1ケーシング12が離れた時の相互間隔の規制はカムピン17で行うようにされており、一定量以上離れないようにしている。 また、第2ケーシング18の外周部には、円周方向に沿って溝mが設けられており、この溝mに、以下に述べる位置決めピン7側の環状部材20のプランジャ21の先端部が嵌合自在にされている。
【0021】
即ち、位置決めピン7の外周部には、第2ケーシング18の一端側筒部を嵌入せしめることのできる隙間を持って環状部20が形成されるとともに、この環状部20に複数のプランジャ21がねじ止めされており、図7(a)に示すように、位置決めピン7と係合部材10が連結されると、プランジャ21が溝mに嵌合するとともに、図7(b)に示すように、位置決めピン7が係合部材10から離脱する方向に後退すると、これに伴って、第2ケーシング18を第1ケーシング12から離脱させる方向に若干移動させることができるようにされている。そして、この位置決めピン7の後退により、爪部材14の先端が小径筒部13内に没入するようにされている。
【0022】
また、ワイヤ8は、図9,図10にも示すように、ワイヤ巻取り装置11によって引出し・巻取り自在にされるとともに、このワイヤ巻取り装置11には、ワイヤ8の引出し長さを測定することのできる第1センサ(不図示)が内蔵され、また、ワイヤ巻取り装置11近傍には、第2センサとしての力覚センサ9が設けられている。そして、ワイヤ巻取り装置11から巻き出されるワイヤ8は、力覚センサ9を経由して延出するようにされ、ワイヤ8にかかるテンションを、力覚センサ9によって3軸方向の分力に分けて測定できるようにされている。
【0023】
次に、係合部材10を車体B側に取付けて、ワイヤ8がある程度引き出された状態におけるワイヤ8の引出し長さや引出し方向から、係合部材10と位置決めピン7の位置ずれを検知し、この位置ずれをなくして両者を連結させるための具体的方策について図10乃至図12に基づき説明する。
【0024】
図10に示すように、ピン軸方向をX方向とし、これに直交する水平横方向をY方向とし、これに直交する縦方向をZ方向とした場合、係合部材10と位置決めピン7のピン軸を一致させ(Y方向のオフセット量ゼロ)、且つX方向のオフセット量L、Z方向のオフセット量Hの位置を第1次位置決め完了位置として設定する。そして、図10(a)は、第1次位置決め完了位置の側面図であり、図10(b)はその平面図である。
【0025】
これに対して、当初の段階では、係合部材10と位置決めピン7の相対位置はX、Y、Zすべての方向にずれているのが普通である。そして、図11(a)(b)は、第1次位置決め完了位置(点線で示す)に対する実際の位置決めピン7の位置の説明図で、(a)はその状態の側面図、(b)は同平面図であり、また図11(c)(d)はワイヤにかかる分力の説明図であるが、この状態のワイヤ長をW、Z方向(垂直方向)のワイヤ角度をθ2、Y方向(水平方向)のワイヤ角度をθ3、ワイヤにかかるX方向の分力をFx、Y方向の分力をFy、Z方向の分力をFzとすると、ワイヤ引出し角度θ2,θ3は、それぞれのワイヤの分力Fx〜Fzから、図11(c)(d)に記載される数式で求められる。
【0026】
また、係合部材の位置Pと位置決めピンの位置Qとの関係は、図12に示すような関係となり、下記の数式1が成立するため、X方向のずれ量をα、Y方向のずれ量をβ、Z方向のずれ量をγとすると、各方向のずれ量α,β,γは、それぞれワイヤの引出し長さP、X方向のオフセット量L、ワイヤの引出し角度θ2,θ3から、それぞれ下記の数式2に示されるように求められる。
【0027】
【数1】

【0028】
【数2】

【0029】
従って、図13に示すように、セット治具2を車体内に位置決めし、車体Bとセット治具2側を同期して移動させながら、係合部材10を位置決めピン7から離脱させて車体Bの基準孔Ha,Hbに装着すると、第1センサによりワイヤ8の長さが測定されるとともに、力覚センサ9の測定値によりワイヤ引出し角θ2,θ3が計算され、各方向のずれ量(α,β,γ)が求められる。その後、このずれ量をゼロにすべくセット治具2の移動制御が行われ、最終的に係合部材10と位置決めピン7を連結させることができる。
【0030】
フローティング機構6は、図14及び図15に示すように、互いに等間隔に配置された3個のエアダンパ61と、エアダンパ61へのエアの供給を制御するバルブ(不図示)と、3個のエアダンパ61を挟持する板状部材62,63と、板状部材63に開けられた3箇所の孔63aに固設され板状部材63と一体化したロックガイド部材64と、板状部材62に互いに等間隔に立設され、ロックガイド部材64に形成されたすり鉢状の貫通孔64aに遊挿又は嵌合する3個のストッパ部材65などを備えてなる。ストッパ部材65の端部は、逆円錐部65aに形成されている。
【0031】
そして、一方の板状部材62は、取付ブラケット66を介してアシスト搬送手段4の第3アーム4gに固定され、他方の板状部材63は、取付ブラケット67を介してATC25に固定されている。なお、図14(b)は、説明のため便宜上、通常はありえないエアダンパ61からエアを抜いた状態のロックガイド部材64とストッパ部材65の位置関係を示している。
【0032】
フローティング機構6がロック状態の時には、エアダンパ61に高圧のエアが供給されていてエアダンパ61が膨らみ、常にロックガイド部材64の上面64bが逆円錐部65aのボス部65bの下面65cを所定圧で押圧すると共に、逆円錐部65aの外周面65dがロックガイド部材64の内周面64cに当接している。この状態では、アシスト搬送手段4に取り付けられる板状部材62と、セット治具2がATC25を介して取り付けられる板状部材63が一体化した状態になる。
【0033】
一方、フローティング機構6がフローティング状態の時には、エアダンパ61にロック状態の時よりも低圧のエアが供給されていて、サイドカーテンエアバッグSやセット治具2にある程度の外力が掛かると、エアダンパ61が縮んで、上述したようなロックガイド部材64と逆円錐部65aの係合関係が解除される。この状態では、セット治具2がATC25を介して取り付けられる板状部材63が、アシスト搬送手段4に取り付けられる板状部材62に対し、所定の範囲(ロックガイド部材64と逆円錐部65aで形成される最大の間隙)内で、あらゆる方向に対して移動自在な状態になる。
【0034】
また、サイドカーテンエアバッグSやセット治具2に外力が掛からなくなると、ロックガイド部材64と逆円錐部65aは、ロック状態の時と同じ位置関係に戻る。即ち、ロックガイド部材64の上面64bが逆円錐部65aのボス部65bの下面65cに当接すると共に、逆円錐部65aの外周面65dがロックガイド部材64の内周面64cに当接する関係になる。
【0035】
挟持手段31は、図16に示すように、エアシリンダ33と、エアシリンダ33へのエアの供給を制御するバルブ(不図示)と、エアシリンダ33の前進後退動作により先端部34aが略円弧を描くアーム34と、アーム34の先端部34aに設けられ車体Bの外板面を所定の面圧で押圧する押圧部材35と、この押圧部材35が押圧する車体Bの外板面と所定距離だけ離れた車体Bの内側面に当接する面当てピン36などからなる。
【0036】
エアシリンダ33がセット治具2のベース部材2aに固設した取付ブラケット37に軸38aを介して支持され、アーム34の後端部34bがベース部材2aに固設した取付ブラケット39に軸38bを介して支持され、アーム34の中央部34cがピストンロッド33aの先端に軸38cを介して支持されている。そして、アーム34は、エアシリンダ33の前進後退動作により、軸38bを中心にして先端部34aが略円弧を描くように回動する。
【0037】
挟持手段31は、2箇所の基準孔Ha,Hbの近傍を押圧するため、2個設けられている(図16(b)は基準孔Haのみ示す)。押圧部材35による押圧力(面圧)は、車体Bの外板面の品質を損なわないように、押込手段32によるクリップcを車体Bの取付孔hに押し込む押込力と同等になるように設定されている。また、押圧部材35も車体Bの外板面の品質を損なわないように、ウレタンなどの樹脂製材料で形成されている。
【0038】
押込手段32は、図17に示すように、エアシリンダ40と、エアシリンダ40へのエアの供給を制御するバルブ(不図示)と、エアシリンダ40の駆動により前進後退する板状部材41と、板状部材41の前進後退動作を案内する一対のガイド部材42,42と、板状部材41に立設した一対のワークセット部材43,44などからなる。そして、押込手段32は、サイドカーテンエアバッグSに設けた複数のクリップcを押し込むため、複数設けられている。ワークセット部材43,44には、クリップcをセットする凹状のセット部43a,44aが形成されている。
【0039】
以上のように構成した部品位置決め装置1の動作について説明する。搬送ラインLに沿って車体Bがサイドカーテンエアバッグの仮止め工程に搬送されてくると、作業者(手動モード)のハンドル操作によってアシスト搬送手段4に装着されたセット治具2が、車体Bの移動方向と逆方向から車体Bの内部に投入され、車体Bと同期して移動を始める。その状態で、作業者が手作業でセット治具2から係合部材10を取り外して、車体Bの各基準孔Ha,Hbに挿入して取り付ける。
【0040】
即ち、係合部材10の第1ケーシング12と第2ケーシング18をある程度離した状態(図7(b)の状態)にし、爪部材14を没入させた状態にして基準孔Ha,Hbに挿入した後、第1ケーシング12と第2ケーシング18を当接させて(図7(a)の状態)爪部材14を突出させ、係合部材10が車体Bから抜け出ないような状態にする。セット治具2には、予め作業者によってサイドカーテンエアバッグSがセットされている。
【0041】
次いで、作業者がハンドルに設けた作動スイッチをオン状態にすると、アシスト搬送手段4は自動モードになり、係合部材10に固定されるワイヤ8がセット治具2側から引き出され、力覚センサ9によってワイヤ8にかかる引っ張り力の分力が測定されると共に、ワイヤ巻取り装置によってワイヤ8の引出し長さが測定される。この時、フローティング機構6はフローティング状態になっている。
【0042】
そして、ワイヤ8の引出し長さと、力覚センサ9の測定値に基づき、位置決めピン7の位置ずれ量が計算され、アシスト搬送手段4によってセット治具2は所望の組付位置に移動することにより、位置決めピン7と係合部材10とが連結される。この両者の連結時に、位置決めピン7が嵌合部材10に嵌合連結して位置決め機能を発揮しているため、別体の位置決め部材等が不要であり、装置構成が簡素に済む。
【0043】
位置決めピン7と係合部材10が連結される時、フローティング機構6はフローティング状態になっているので、基準孔Ha,Hbの許容誤差内の位置ずれが吸収され、2本の位置決めピン7,7は円滑に係合部材10を介して基準孔Ha,Hbに嵌合することができる。そして、位置決めピン7,7が基準孔Ha,Hbに嵌合すると、フローティング機構6はフローティング状態からロック状態に切り替わる。これにより、セット治具2の車体Bに対する位置決めが完了する。
【0044】
次いで、挟持手段31がエアシリンダ35の前進動作によってクランプ状態になり、押圧部材37が2箇所の基準孔Ha,Hbの近傍を所定の面圧で押圧すると共に、押圧部材37が押圧する車体Bの外板面と所定距離だけ離れた車体Bの内側面を面当てピン38が押圧する。
【0045】
次いで、押込手段32がエアシリンダ40の前進動作によってクリップ押付状態になり、各セット部43a,44aにセットされたクリップcが対応する車体Bの取付孔hに押し込まれる。すると、サイドカーテンエアバッグSが車体Bに仮止めされる。この時、挟持手段31が基準孔Ha,Hbの近傍をクランプしているので、クリップcを取付孔hに押し込む際に位置決めピン7,7が車体Bから浮くことがないので、セット治具2に車体Bに対する位置ずれが生じることがなく、クリップcを確実に取付孔hに押し込むことができる。
【0046】
そして、各クリップcが対応する車体Bの取付孔hに押し込まれると、押込手段32がエアシリンダ40の後退動作によってクリップ非押付状態になる。更に、挟持手段31がエアシリンダ35の後退動作によってアンクランプ状態になり、押圧部材37が押圧していた車体Bの外板面から離れる。次いで、フローティング機構6をロック状態からフローティング状態に切り替えて、アシスト搬送手段4によりセット治具2を車体Bから離す。
【0047】
クリップcによる仮止めが完了した後に、セット治具2を車体Bから離すと、位置決めピン7が後退する。すると、位置決めピン7の後退に伴って、最初のストロークでは第2ケーシング18も後退し、カムピン17とカムローラ16の作用によって爪部材14が小径筒部13内に没入し、係合部材10は車体Bから離脱可能になり、セット治具2側に連結された状態で一緒に後退する。そして、アシスト搬送手段4に装着されたセット治具2が車体Bの外に搬出され、原位置に戻ってサイドカーテンエアバッグSの仮止め作業の1サイクルが終了する。なお、サイドカーテンエアバッグSの正規の固定作業は後工程で行われる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
フローティング機構が部品組付け対象物の孔位置の許容誤差内の位置ずれを吸収することができ、また挟持手段と押込手段が相俟って部品を部品組付け対象物に確実に位置決めすることができるので、例えば車体に部品を組付ける自動車の組立工程等の広い分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る部品位置決め装置が適用される自動車組立工程の平面図
【図2】右側のサイドカーテンエアバッグ取付け状態の斜視図
【図3】車体内のサイドカーテンエアバッグ取付け部の説明図
【図4】サイドカーテンエアバッグの説明図
【図5】車体にサイドカーテンエアバッグを取付ける状態を示す側面図
【図6】本発明に係る部品位置決め装置の概要図
【図7】係合部材と位置決めピンの連結状態の説明図で、(a)は第1ケーシングと第2ケーシングの当接状態、(b)は第1ケーシングと第2ケーシングの離反状態
【図8】係合部材と位置決めピンの連結構造を示す斜視図
【図9】位置決め機構の動作説明図
【図10】線状部材の引出し長さと引出し角度により位置ずれを検出する方法の説明図のその1
【図11】線状部材の引出し長さと引出し角度により位置ずれを検出する方法の説明図のその2
【図12】線状部材の引出し長さと引出し角度により位置ずれを検出する方法の説明図のその3
【図13】位置決め機構のフローチャート
【図14】フローティング機構の説明図で、(a)は一部断面の側面図、(b)は要部拡大図
【図15】図14(a)のA方向矢視図
【図16】挟持手段の説明図で、(a)は側面図、(b)は作用図
【図17】押込手段の側面図で、(a)はサイドカーテンエアバッグのセット位置、(b)はサイドカーテンエアバッグの車体への押込み完了位置
【符号の説明】
【0050】
1…部品位置決め装置、2…セット治具(把持手段)、4…アシスト搬送手段(搬送手段)、5…位置決め機構(位置決め手段)、6…フローティング機構、7…位置決めピン、10…係合部材、31…挟持手段、32…押込手段、61…エアダンパ、B…車体、Ha,Hb…基準孔、h…取付孔、S…サイドカーテンエアバッグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品組付け対象物に対して、部品を位置決めする部品位置決め装置であって、部品を把持する把持手段と、この把持手段を搬送する搬送手段と、この搬送手段と前記把持手段を連結するフローティング機構を備え、前記把持手段には部品組付け対象物の基準孔に位置決めピンを嵌合する位置決め手段と、部品組付け対象物に対して前記位置決めピンの挿入方向と略逆方向に押圧する挟持手段と、部品の特定部位を部品組付け対象物の取付孔に押し込む押込手段を設けたことを特徴とする部品位置決め装置。
【請求項2】
前記フローティング機構は、エアダンパを膨らませることによりロック状態にし、エアダンパを縮ませることによりフローティング状態にし、それらが切替自在である請求項1記載の部品位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−142809(P2008−142809A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330757(P2006−330757)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】