説明

部品実装装置

【課題】搬送用治具に貼り付けたフレキシブル基板に膨張・収縮が生じたとしても、該基板上の電極パッドと電子部品の電極とを確実に半田接合できるようにする。
【解決手段】部品実装装置において、予め用意された搬送用治具8を、搬送装置5A、5Bにより搬送し、搭載位置に位置決め可能とすると共に、任意のフレキシブル基板Sを所定位置へ供給する基板供給手段9と、供給されたフレキシブル基板を保持し、前記搬送用治具上に搭載する基板搭載手段7と、搭載されたフレキシブル基板の電極パッドに半田ペーストを塗布する塗布手段10と、搭載された前記フレキシブル基板の位置ずれを検出する検出手段11と、検出された位置ずれ量に基づいて補正した電極パッド上に、前記塗布手段を移動させる移動手段2A、2B、3とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装装置、特に搬送装置により搬送される搬送用治具上へのフレキシブル基板を搭載する機能と、搭載されたフレキシブル基板の電極パッドに半田を塗布する機能と、半田が塗布されたフレキシブル基板等に電子部品を搭載する機能とを兼備する部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話や腕時計等の小型電子機器には、薄い樹脂シートに配線や電極を形成した、いわゆるフレキシブル基板に電子部品を実装した実装基板が採用されている。
【0003】
このようなフレキシブル基板に電子部品を実装可能とするために、該フレキシブル基板を搬送用治具に貼り付けて部品実装システムの下流側に搬送し、途中に配置されているスクリーン印刷機により半田ペーストを印刷することにより、該フレキシブル基板に電子部品を搭載(実装)するための電極パッドに半田を塗布する技術が特許文献1に開示されている。
【0004】
このようにスクリーン印刷で半田を塗布するためには、搬送用治具に正確にフレキシブル基板を位置決めして搭載する必要がある。
【0005】
そこで、特許文献1では、ヘッドユニットによりフレキシブル基板を吸着し、その吸着状態を画像認識して吸着位置の誤差を修正した後、該フレキシブル基板を搬送用治具に位置決めして搭載する、フレキシブル基板の貼り付けを行なっている。
【0006】
又、フレキシブル基板の搬送用治具への貼り付けは、手作業でも一般的に行なわれている。この場合の貼り付けは、位置出し用治具に設置されたガイドピンに、予め形成されているガイド孔を合せてフレキシブル基板を配置した後、ガイド用ピンを避ける位置に穴が開いている粘着物質の付いた搬送用治具を粘着面を下にして上方より押し付けて粘着させ、次いで、上下反転して上向きにしたフレキシブル基板の電極位置に半田印刷を施すという方法を採っている。そのため、この場合には適宜変更されるフレキシブル基板の種類(形状)に合わせて位置出し治具、搬送用治具、半田スクリーンを毎回製作する必要があった。特許文献2には同様の技術が開示されている。
【0007】
以上のいずれの方法を採用する場合でも、フレキシブル基板に対する電子部品(素子)の搭載においては、電子部品自体の搭載のためにも、その前に行なう半田印刷のためにも、フレキシブル基板を搬送用治具に対して平面(X,Y)方向にも、回転(θ)方向にも正確な位置に貼り付ける必要があった。
【0008】
【特許文献1】特開2005−210003号公報
【特許文献2】特開2003−142897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、フレキシブル基板は、材質が樹脂のフィルムからなるため、温度変化の影響を受けて膨張・収縮し易いため、搬送用治具の正確な位置に貼り付けたとしても、印刷時にフレキシブル基板の温度が変化する場合には、半田の印刷位置が対象の電極パッドからずれてしまうことが起こり、この場合はフレキシブル基板上の電極パッドと、その後搭載される電子部品の電極との半田接合に欠陥が生じることになるという問題があった。
【0010】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、フレキシブル基板を搬送用治具に貼り付けた後、温度変化に伴なって該基板が膨張・収縮したとしても、その上の電極パッドに確実に半田を塗布することができることから、搭載される電子部品の電極との半田接合を確実に実現することができる部品実装装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基板を搬送し、所定の搭載位置に位置決めする搬送装置と、電子部品をピックアップ位置へ供給する部品供給装置と、供給された部品をピックアップ位置から保持し、位置決めされた前記基板に実装する実装ヘッドと、該実装ヘッドを平面方向に移動させる平面移動装置を備えた部品実装装置において、予め用意された搬送用治具を、前記搬送装置により搬送し、前記搭載位置に位置決め可能とすると共に、任意のフレキシブル基板を所定位置へ供給する基板供給手段と、供給されたフレキシブル基板を保持し、前記搭載位置に位置決めされた搬送用治具上に搭載する基板搭載手段と、搭載されたフレキシブル基板の電極パッドに半田ペーストを塗布する塗布手段と、搭載された前記フレキシブル基板の位置ずれを検出する検出手段と、検出された位置ずれ量に基づいて補正した電極パッド上に、前記塗布手段を移動させる移動手段とを備えたことにより、前記課題を解決したものである。
【0012】
本発明においては、前記フレキシブル基板を搭載する基板搭載手段が、電子部品を実装する実装ヘッドと兼用になっているようにしてもよく、又、前記塗布手段を移動させる移動手段が、実装ヘッドを移動させる平面移動装置と兼用になっているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通常の部品実装機能を有する部品実装装置に、搭載位置に位置決めされた搬送用治具にフレキシブル基板を搭載する機能と、搭載された該フレキシブル基板の位置ずれを補正してその上の電極パッドに半田を塗布する機能とを追加したので、温度変化によるフレキシブル基板の膨張・収縮に影響されることなく、半田を電極パッドに正確に付着させることが可能となるため、実装される電子部品の電極と電極パッドとの半田による電気的接続を確実にとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る一実施形態の部品実装装置の概要を示す平面図である。この部品実装装置は、通常の部品実装機能と共に、フレキシブル基板の搭載機能と半田塗布機能とを併有している。
【0016】
本実施形態の部品実装装置は、ベース1上に固定された2本のY軸フレーム2A、2BにX軸フレーム3が架設され、該X軸フレーム3がリニアガイドを介してY方向へサーボモータ(図示せず)により平行に移動可能であると共に、Y方向の到着位置が制御装置(図示せず)にフィードバックされるようになっている。
【0017】
又、上記X軸フレーム3には、ヘッドベース4がリニアガイドを介して取り付けられ、同様にX方向へサーボモータにより移動可能になっていると共に、X方向の到着位置が制御装置にフィードバックされるようになっている。
【0018】
本実施形態の部品実装装置は、図示しないプリント基板を搬送し、所定の搭載位置に位置決めする搬送レール5A、5B(搬送装置)と、位置決めされたプリント基板に実装する電子部品をピックアップ位置へ供給する複数列のテープフィーダからなる部品供給装置6とを備えている。
【0019】
又、前記ヘッドベース4には、部品供給装置6により供給された部品を所定のピックアップ位置で吸着保持して前記プリント基板と共に、後述するフレキシブル基板に実装する吸着ヘッド(実装ヘッド)7が取り付けられ、該ヘッドベース4と一体でXY(平面)方向に移動可能になっている。従って、Y軸フレーム2A、2BとX軸フレーム3とから、実装ヘッド7をXY方向へ移動させる平面移動装置が構成されている。
【0020】
本実施形態においては、予め用意された搬送用治具8を、前記搬送レール5A、5Bにより搬送し、図示されている搭載位置に位置決め可能となっている。
【0021】
又、種々の形状からなる任意のフレキシブル基板Sをベース1上の所定位置へ供給するためのトレイ(基板供給手段)9と、該トレイ9により供給されたフレキシブル基板Sを保持し、前記搭載位置に位置決めされた搬送用治具8上に搭載する基板搭載手段(後述する)と、搭載されたフレキシブル基板Sの電極パッド(図示せず)に半田ペーストを塗布する半田塗布ヘッド(塗布手段)10と、搭載された前記フレキシブル基板Sの位置ずれを検出するカメラ(検出手段)11とを備えている。
【0022】
そして、前記半田塗布ヘッド10は、前記カメラ11と共に、前記ヘッドベース4に取り付けられ、前記吸着ヘッド7と同様に前記Y軸フレーム2A、2B及びX軸フレーム3からなる移動手段により、検出された位置ずれ量に基づいて位置補正された電極パッド上に移動可能になっている。
【0023】
本実施形態では、前記基板搭載手段が、基板上に電子部品を実装する前記吸着ヘッド7と兼用になっている。従って、吸着ヘッド7に装着される吸着ノズルが、フレキシブル基板Sを搭載する場合と、電子部品を実装する場合とで、吸着に適した吸着面の形状や構造が異なる場合がある。そのため、適宜変更できるように吸着ノズル自動交換装置12がベース1上に配設され、無人で吸着ノズルを自動交換することが可能になっている。
【0024】
このように、フレキシブル基板Sの形状にあった吸着ノズルに自動交換することが可能であるため、1つの搬送用治具8に複数種類のフレキシブル基板Sを搭載することも可能である。
【0025】
又、本実施形態の部品実装装置においては、前記搬送用治具8の代わりに通常のリジッドなプリント基板を搬送し、位置決めした後、吸着ヘッド7により電子部品を吸着し、その吸着位置ずれをベース1上に配設されている部品認識カメラ13により検出し、位置ずれを補正した電子部品を該基板に実装することもできるようになっている。
【0026】
以下、図2に示すフローチャートに従って、本実施形態の作用を説明する。
【0027】
まず、搬送用治具8を搬送レール5A、5BによりX方向に搬送し、図示されている搭載位置に停止させ、位置決めする(ステップ1)。次いで、該搬送用治具8の所定位置に付けられている位置基準マークをヘッドベース4に搭載されているカメラ11により撮像し、マーク認識が行なわれる(ステップ2)。その撮像時におけるヘッドベース4の位置座標(エンコーダ出力)に基づいて決定される搬送用治具8の位置情報が図示しない制御装置にフィードバックされる。
【0028】
なお、ここで取得される位置情報は、プリント基板の場合は該基板上に電子部品を直接実装するため必須であるが、搬送用治具8の場合は搭載されたフレキシブル基板Sの位置ずれをその後検出して補正するため、必ずしも行なわなくても良い。
【0029】
次いで、ヘッドベース4をXY移動させ、前記トレイ9に載置されているフレキシブル基板Sを吸着ヘッド8により吸着し(ステップ3)、吸着位置の誤差を修正することなく、搬送用治具8の所定位置に搭載する(ステップ4)。
【0030】
この吸着・搭載動作を繰り返し、必要なフレキシブル基板Sを全てそれぞれ所定位置に搭載した後(ステップ5)、搭載された個々のフレキシブル基板Sについて、搭載時の吸着位置の誤差によって(X,Y,θ)の各方向に生じた位置ずれをヘッドベース4に搭載されている前記カメラ11により認識する(ステップ6)。
【0031】
このフレキシブル基板Sの位置認識は、予め教示しておいた電極(少なくとも2箇所)の位置を検出するか、又は特徴ある部分の画像を予め登録しておき、パターンマッチングした際の位置ずれ量を検出することにより行なうことができる。但し、専用のマークを設けておいても良いことは言うまでもない。
【0032】
ステップ6による搭載後のフレキシブル基板Sに対する位置ずれ補正が終了した後、該フレキシブル基板S上の正確な電極座標を算出し(ステップ7)、次いでヘッドベース4をXY移動させ、前記半田塗布ヘッド10をフレキシブル基板Sの適切な電極パッド位置に一致させ、半田塗布を行なう(ステップ8)。その際、算出された位置ずれ補正データを保持する。
【0033】
以上の基板認識から半田塗布までの処理を全てのフレキシブル基板Sについて行なった後(ステップ9)、部品供給装置6のピックアップ位置から電子部品(素子)を吸着ヘッド7により吸着し(ステップ10)、部品認識カメラ13で吸着部品の位置ずれを検出し(ステップ11)、その位置ずれを補正した部品を、前記フレキシブル基板S上へ搭載し(ステップ12)、ステップ10〜12の動作を繰り返して全部品の搭載を行なう(ステップ13)。
【0034】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0035】
(1)温度により伸縮するフレキシブル基板に対し、フレキシブル基板上の電極パッドに対し正確に半田塗布を行なうことができ、且つ該半田付けを行なった電極に電子部品を正確に搭載することができるため、半田接合部分の信頼性を向上することができる。
【0036】
(2)装置内にフレキシブル基板の搭載機能と半田塗布機能と電子部品の実装機能とを併せ持つようにしたことにより、半田印刷機の配列関係を考慮することなく、該部品実装装置からなるフレキシブル基板の貼付機を、実装基板製造工程(部品実装システム)内の任意の位置に自由に配置することが可能となる。
【0037】
(3)通常のリジッドなプリント基板の生産と、フレキシブル基板の生産が何時でも行うことができる製造ラインを構築でき、しかもフレキシブル基板の搭載機を電子部品の実装機としても機能させることができるため、汎用性のある部品実装装置として提供でき、設備の有効稼働率を向上することができる。
【0038】
(4)本実施形態の部品実装装置より下流側に他の部品実装装置を配設する場合、下流側の装置においても、取得したフレキシブル基板の位置情報や半田塗布の位置情報を活用して電子部品を搭載することが可能であるため、1台の部品実装装置では賄い切れない場合でも、下流側に任意の部品実装装置を配設することにより、電子部品の搭載能力の増大を図ることが可能となる。
【0039】
(5)フレキシブル基板を搭載した後、搭載位置を検出し補正するようにしたので、吸着した基板を画像認識し、位置補正する時間が不要となるため、電子部品の基板への搭載時間を短縮することができる。
【0040】
(6)半田印刷をしないでフレキシブル基板の電極パッドに半田を塗布することが可能となるため、半田スクリーンの制作費、製作時間を排除することが可能となり、実装基板の製造にかかる費用を削減できる上に、準備時間を短縮することができる。
【0041】
なお、前記実施形態では、基板搭載手段を、部品を吸着する吸着ヘッドと兼用するようにしたが、これに限定されず、専用の搭載手段を備えるようにしても良く、又、半田塗布ヘッドを移動させる専用の移動手段を備えるようにしてもよい。
【0042】
また、前記実施形態では、対象基板がフレキシブル基板である場合を説明したが、治具ボードにより搬送するようなリジット基板(円形基板・小型基板等)を対象としてもよく、この技術を採用することにより、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る一実施形態の部品実装装置の概要を示す平面図
【図2】本実施形態の作用を示すフローチャート
【符号の説明】
【0044】
1…ベース
2A、2B…Y軸フレーム
3…X軸フレーム
4…ヘッドベース
5A、5B…搬送レール
6…部品供給装置
7…吸着ヘッド
8…搬送用治具
9…トレイ
10…半田塗布ヘッド
11…カメラ
12…吸着ノズル自動交換装置
13…部品認識カメラ
S…フレキシブル基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送し、所定の搭載位置に位置決めする搬送装置と、電子部品をピックアップ位置へ供給する部品供給装置と、供給された部品をピックアップ位置から保持し、位置決めされた前記基板に実装する実装ヘッドと、該実装ヘッドを平面方向に移動させる平面移動装置を備えた部品実装装置において、
予め用意された搬送用治具を、前記搬送装置により搬送し、前記搭載位置に位置決め可能とすると共に、
任意のフレキシブル基板を所定位置へ供給する基板供給手段と、
供給されたフレキシブル基板を保持し、前記搭載位置に位置決めされた搬送用治具上に搭載する基板搭載手段と、
搭載されたフレキシブル基板の電極パッドに半田ペーストを塗布する塗布手段と、
搭載された前記フレキシブル基板の位置ずれを検出する検出手段と、
検出された位置ずれ量に基づいて補正した電極パッド上に、前記塗布手段を移動させる移動手段とを備えたことを特徴とする部品実装装置。
【請求項2】
前記フレキシブル基板を搭載する基板搭載手段が、電子部品を実装する実装ヘッドと兼用になっていることを特徴とする請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
前記塗布手段を移動させる移動手段が、実装ヘッドを移動させる平面移動装置と兼用になっていることを特徴とする請求項1に記載の部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−218697(P2008−218697A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53933(P2007−53933)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】