説明

配管内面監視装置及び方法

【課題】検査員が配管の外部から配管内面の状態を容易に監視でき、超音波探傷試験による的確な配管減肉管理を行うことができる配管内面監視装置及び方法を提供することである。
【解決手段】配管内面を撮影するカメラを搭載して配管内を走行する配管内移動体12と、配管の表面を走行する配管表面走行体13と、配管表面走行体が配管内移動体に連動して走行するように配管表面走行体13と配管内移動体12との位置合わせを行う位置合わせ装置24と、配管表面走行体13に搭載されて配管内移動体12のカメラ23で撮影された影像を配管11の内面位置に対応する配管11の表面位置に映写するプロジェクタ25と、配管内移動体12及び配管表面走行体13の走行を制御するリモコン15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配管の外面から配管内部の状態を監視できる配管内面監視装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、発電プラントの配管の内部流体の流れが変化するような部位であるエルボ、T管、レジューサ、オリフィスなどにおいては、エロージョン、コロージョンなどにより、内部減肉が発生する場合がある。これらの事象に対し、配管肉厚の管理を行うために、配管外面からの超音波探傷試験が行われている。
【0003】
超音波探傷試験により配管の内部減肉の検査を行うものとして、配管肉厚部に超音波を放射し、配管不連続部からの反射波を解析して配管の全体の内面状態を万遍なく且つ効率良く検知可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−32466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、配管内面に発生する減肉としては、内面が一様に減肉する一様減肉の場合と、局部的に減肉する局部減肉の場合があり、一様減肉の場合には減肉範囲が広範囲であるため発見することは比較的容易であるが、局部減肉の場合には減肉範囲がスポット的であるために発見するのは容易ではない。現状では、ある程度、局部減肉の発生箇所は分かってきているものの局部減肉を完全に見つけるためには、詳細な探傷ピッチでの測定が必要となる。また、場合によっては全面探傷をする必要がある。
【0006】
局部減肉が発生していると予想される部位を配管外部から詳細な探傷ピッチで測定したり、全面探傷したりすることは、作業が大がかりとなる。
【0007】
本発明の目的は、検査員が配管の外部から配管内面の状態を容易に監視でき、超音波探傷試験による的確な配管減肉管理を行うことができる配管内面監視装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係わる配管内面監視装置は、配管内面を撮影するカメラを搭載し前記配管内を走行する配管内移動体と、前記配管の表面を走行する配管表面走行体と、前記配管表面走行体が前記配管内移動体に連動して走行するように前記配管表面走行体と前記配管内移動体との位置合わせを行う位置合わせ装置と、前記配管表面走行体に搭載され前記配管内移動体の前記カメラで撮影された影像を前記配管の内面位置に対応する前記配管の表面位置に映写するプロジェクタと、前記配管内移動体及び前記配管表面走行体の走行を制御するリモコンとを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明に係わる配管内面監視装置は、請求項1の発明において、前記位置合わせ装置は、前記配管内移動体に搭載され超音波を発信する超音波発信器と、前記配管表面走行体に搭載され前記超音波発信器から発信する超音波を受信する超音波受信器とからなり、前記超音波発信器からの超音波を前記超音波受信器で受信することにより、前記配管表面走行体と前記配管内移動体との位置合わせを行うことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係わる配管内面監視装置は、請求項1または2の発明において、前記配管内移動体は、配管内面に吸着脱可能で操舵可能な車輪を備えた複数の台車を連結して尺取り虫状に形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明に係わる配管内面監視方法は、配管内移動体及び配管表面走行体を配管の開放部に配置し、前記配管表面走行体と前記配管内移動体との位置合わせを行い、前記配管内移動体及び配管表面走行体を走行開始し、前記配管内移動体に搭載されたカメラで撮影した影像を前記配管の内面位置に対応する前記配管の表面位置に前記配管表面移動体に搭載されたプロジェクタで映写させつつ前記配管内移動体及び配管表面走行体を走行させ、前記プロジェクタで映写された影像を監視し、前記プロジェクタで映写された影像により局部減肉であると判断したときは前記配管内移動体及び配管表面走行体の走行を停止し、局部減肉であると判断した配管内面の位置を探触子で探傷することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配管内移動体に配管内面を撮影するカメラを搭載し、配管表面走行体にプロジェクタを搭載し、配管表面走行体と配管内移動体と連動して走行させ、カメラで撮影された影像をプロジェクタで配管の内面位置に対応する配管の表面位置に映写するので、検査員は配管の表面位置に映写された影像を見ることにより、配管の外部から配管内面の状態を容易に監視できる。これにより、局部減肉が発生していた場合、肉厚測定をするための範囲を絞り込むことができるので、超音波探傷試験による的確な配管減肉管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係わる配管内面監視装置の構成図。
【図2】本発明の実施の形態における配管内移動体の台車の車輪の取付面の一例を示す平面図。
【図3】本発明の実施の形態における配管内移動体の台車の車輪の取付面の他の一例を示す平面図。
【図4】本発明の実施の形態に係わる配管内面監視装置を用いて配管内面を監視する方法の工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に係わる配管内面監視装置の構成図である。配管内面監視装置10は、検査対象である配管11内を走行する配管内移動体12と、配管11の表面を走行する配管表面走行体13とから構成されている。配管内移動体12と配管表面走行体13とはケーブル14で接続され、配管内移動体12及び配管表面走行体13はリモコン15で走行制御される。
【0015】
配管内移動体12は、複数の台車16a〜16gを連結して尺取り虫状に形成され、各々の台車16a〜16gは、配管内面に吸着脱可能で操舵可能な車輪17を備えている。車輪17は、例えば磁性体で形成され、配管内面に吸着脱可能となっている。そして、車輪17は、各々の台車16a〜16gに内蔵された図示省略の電動機で駆動され、リモコン15により制御される。
【0016】
図2は、台車16の車輪17の取付面の一例を示す平面図であり、図2(a)は車輪17が直進方向に操舵された状態の平面図、図2(b)は左斜め方向に操舵された状態の平面図である。図2に示すように、台車16には前輪17aと後輪17bとが設けられ、前輪17a及び後輪17bは一体的に操舵される場合を示している。すなわち、前輪17a及び後輪17bは操舵部18の中心点19を中心にして回動し、直進方向や左右斜め方向に操舵される。
【0017】
図3は、台車16の車輪17の取付面の他の一例を示す平面図であり、図3(a)は車輪17が直進方向に操舵された状態の平面図、図3(b)は左斜め方向に操舵された状態の平面図である。図3に示すように、台車16には前輪17aと後輪17bとが設けられ、前輪17a及び後輪17bは個別に操舵される場合を示している。すなわち、前輪17a及び後輪17bは、車軸20の中心点21を中心にして個別に回動し、直進方向や左右斜め方向に操舵される。図2の場合と比較して、より細かな操舵ができる。
【0018】
図1に示すように、配管内移動体12の先頭の台車16aには、照明装置22、カメラ23、位置合わせ装置24aが搭載されている。照明装置22は配管内を照明するためのものであり、カメラ23は配管内面を撮影するものであり、位置合わせ装置24aは配管表面走行体13の位置合わせ装置24bに信号を送信して、配管内移動体12と配管表面走行体13との位置合わせを行うものである。カメラ23は、照明装置22で照らされた配管内面を撮影しケーブル14を介して撮影した影像データを配管表面走行体13のプロジェクタ25に送信する。
【0019】
配管表面走行体13は、位置合わせ装置24bとプロジェクタ25とを搭載している。そして、配管内移動体12の台車16と同じように、配管外面に吸着脱可能で操舵可能な車輪26を備えている。位置合わせ装置24bは、配管内移動体12の位置合わせ装置24aから信号を受信し、配管表面走行体13の位置合わせ装置24bの位置を特定する。位置合わせ装置24aである超音波発信器からの超音波を位置合わせ装置24bである超音波受信器で受信することにより、リモコン15は配管内移動体12と配管表面走行体13との位置合わせを行い、配管内移動体12及び配管表面走行体13を走行制御する。
【0020】
プロジェクタ25は、カメラ23で撮影された影像を配管11の表面位置に映写するものであり、リモコン15が位置合わせ装置24a、24bにより、配管内移動体12と配管表面走行体13との位置合わせを行った際に、カメラ23で撮影された影像が配管11の内面位置に対応する配管11の表面位置となる配管表面走行体13の位置に搭載される。これにより、リモコン15が配管内移動体12と配管表面走行体13との位置合わせを行って配管内移動体12及び配管表面走行体13を走行制御すると、カメラ23で撮影された影像が配管11の内面位置に対応する配管11の表面位置に映写されることになる。
【0021】
前述したように、配管内移動体12は、複数の台車16a〜16gを連結して尺取り虫状に形成されており、車輪17は配管内面に吸着脱可能で操舵可能に形成されている。従って、配管内移動体12は、配管内面の軸方向だけでなく周方向にも移動可能となっている。例えば、配管の軸方向に直進している状態で、先頭の台車16aの車輪17の回転をロックし、最後尾の台車16gの車輪17だけを回転させると、図1に示すように、配管内移動体12の中央部の台車16b〜16fの車輪17は配管内面から離脱し、尺取り虫状となる。このように、配管内移動体12は、配管内面を自在に移動することができる。
【0022】
図4は、本発明の実施の形態に係わる配管内面監視装置10を用いて配管内面を監視する方法の工程を示すフローチャートである。まず、配管内移動体12及び配管表面走行体13を配管11の開放部に配置する(S1)。配管11の開放部は、弁などの機器が配置された箇所で定期検査などで機器が取り外されている箇所である。配管内移動体12は配管の内面に配置し、配管表面走行体13は配管の外面に配置する。
【0023】
次に、配管内移動体12と配管表面走行体13との位置合わせを行う(S2)。これは、配管内移動体12の位置合わせ装置24aからの信号を配管表面走行体13の位置合わせ装置24bを受信して行う。例えば、位置合わせ装置24aが超音波送信器であり位置合わせ装置24bが超音波受信器である場合には、超音波信号が最も強い位置に配管表面走行体13を位置合わせする。
【0024】
そして、リモコン15により配管内移動体12及び配管表面走行体13を走行開始する(S3)。その際に、照明装置22を点灯しカメラ23で配管内面を撮影する。また、リモコン15によりプロジェクタ25を動作させ、カメラ23で撮影した影像を配管11の内面位置に対応する配管11の表面位置に映写させつつ、配管内移動体12及び配管表面走行体13を走行させる(S4)。
【0025】
検査員は、プロジェクタ25で映写された影像を監視し(S5)、プロジェクタ25で映写された影像により局部減肉であるかどうかを判断し(S6)、局部減肉ではない場合には、カメラ23で撮影した影像を配管11の内面位置に対応する配管11の表面位置に映写させつつ、配管内移動体12及び配管表面走行体13を走行させる(S4)。
【0026】
一方、検査員は、プロジェクタ25で映写された影像により局部減肉であると判断したときは、配管内移動体12及び配管表面走行体13の走行を停止し(S7)、局部減肉であると判断した配管内面の位置を探触子で探傷する(S8)。そして、局部減肉の探傷が終了すると、検査対象の配管内の監視領域をすべて走行したかどうかを判定し(S9)、すべての領域でない場合にはステップS4に戻る。検査対象の配管内の監視領域をすべて走行したときは監視を終了する。
【0027】
本発明の実施の形態によれば、配管内移動体12に搭載されたカメラ23で撮影された影像を配管表面走行体13に搭載されたプロジェクタ25で配管11の内面位置に対応する配管11の表面位置に映写するので、検査員は配管11の表面位置に映写された影像を見ることにより、配管11の外部から配管内面の状態を容易に監視できる。これにより、局部減肉が発生していた場合、肉厚測定をするための範囲を絞り込むことができるので、超音波探傷試験による的確な配管減肉管理を行うことができる。
【0028】
また、配管内移動体12は尺取り虫状に形成されているので、配管内面を自在に移動することができ、配管内面の全域を監視できる。さらには、位置合わせ装置で配管内移動体12と配管表面走行体13との位置合わせを行うので、配管11の内面位置に対応する配管11の表面位置を精度良く調整できるので、検査員は、あたかも配管11の内面が透き通って見える状態で監視でき、監視精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0029】
10…配管内面監視装置、11…配管、12…配管内移動体、13…配管表面走行体、14…ケーブル、15…リモコン、16…台車、17…車輪、18…操舵部、19…中心点、20…車軸、21…中心点、22…照明装置、23…カメラ、24…位置合わせ装置、25…プロジェクタ、26…車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内面を撮影するカメラを搭載し前記配管内を走行する配管内移動体と、
前記配管の表面を走行する配管表面走行体と、
前記配管表面走行体が前記配管内移動体に連動して走行するように前記配管表面走行体と前記配管内移動体との位置合わせを行う位置合わせ装置と、
前記配管表面走行体に搭載され前記配管内移動体の前記カメラで撮影された影像を前記配管の内面位置に対応する前記配管の表面位置に映写するプロジェクタと、
前記配管内移動体及び前記配管表面走行体の走行を制御するリモコンと、
を備えたことを特徴とする配管内面監視装置。
【請求項2】
前記位置合わせ装置は、前記配管内移動体に搭載され超音波を発信する超音波発信器と、前記配管表面走行体に搭載され前記超音波発信器から発信する超音波を受信する超音波受信器とからなり、前記超音波発信器からの超音波を前記超音波受信器で受信することにより、前記配管表面走行体と前記配管内移動体との位置合わせを行うことを特徴とする請求項1に記載の配管内面監視装置。
【請求項3】
前記配管内移動体は、配管内面に吸着脱可能で操舵可能な車輪を備えた複数の台車を連結して尺取り虫状に形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の配管内面監視装置。
【請求項4】
配管内移動体及び配管表面走行体を配管の開放部に配置し、
前記配管表面走行体と前記配管内移動体との位置合わせを行い、
前記配管内移動体及び配管表面走行体を走行開始し、
前記配管内移動体に搭載されたカメラで撮影した影像を前記配管の内面位置に対応する前記配管の表面位置に前記配管表面移動体に搭載されたプロジェクタで映写させつつ前記配管内移動体及び配管表面走行体を走行させ、
前記プロジェクタで映写された影像を監視し、
前記プロジェクタで映写された影像により局部減肉であると判断したときは前記配管内移動体及び配管表面走行体の走行を停止し、
局部減肉であると判断した配管内面の位置を探触子で探傷することを特徴とする配管内面監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−230343(P2010−230343A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75464(P2009−75464)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】