説明

配管溶接部検査装置

【課題】欠陥の検出精度を高めることができる配管溶接部検査装置を提供する。
【解決手段】配管1の溶接部2を検査する配管溶接部検査装置において、配管1の外周側に配置され、配管1の内周側に向けて傾斜した角度で超音波を発信するとともにその反射波を受信する超音波斜角探触子6と、超音波斜角探触子6の位置情報及び超音波斜角探触子6で受信した反射波の波形情報を含む探傷情報を収録する中央制御装置10の探傷情報記憶部19と、探傷情報記憶部19で収録された探傷情報に基づき反射波を配管1の板厚方向断面の反射位置に変換して画像表示し、溶接部2の境界に相当する複数の反射波画像26a等の位置に基づき溶接部2の境界線28を演算して設定し、この溶接部2の境界線28より配管母材側に位置しかつ溶接部2の境界線28より予め設定された閾値以上離れた位置の反射波画像26cを欠陥に相当すると判定して識別表示させる表示装置11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査により配管の溶接部を検査する配管溶接部検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば原子力プラントのPLR(Primary Loop Re-circulation System:一次冷却材再循環系)配管等における突合せ溶接部の供用中検査では、配管の外周側から溶接部(詳細には、溶接金属及び熱影響部)に欠陥が生じていないかどうかを検査する必要がある。従来、このような配管の溶接部の検査を行うための超音波探傷装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の超音波探傷装置は、配管の外周側に配置され、配管の内周側に向け傾斜した角度で超音波を発信するとともにその反射波を受信する超音波斜角探触子と、この超音波斜角探触子を配管の軸方向及び周方向に移動させるスキャナと、このスキャナを介して超音波斜角探触子の位置を制御するとともに超音波斜角探触子による超音波の発信を制御し、超音波斜角探触子の位置情報及び超音波斜角探触子で受信した反射波の波形情報を自動収録し、平面展開図及び板厚方向断面図上で反射波を画像表示する制御・収録・処理装置とを備えている。また、例えば欠陥に相当する反射波画像が表示されて欠陥が有りとなった場合、制御・収録・処理装置は、反射波の強度により欠陥の程度を区分けして表示するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−47116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。
すなわち、特許文献1には明確に記載されていないが、上記制御・収録・処理装置は、板厚方向断面における反射波画像と設計図(詳細には、溶接部の設計境界線等)とを重ね合わせて表示しており、作業者の目視判断により欠陥の有無の判定を行っている。ところが、通常、配管の外周面はグラインダ等で平滑処理されて溶接部と配管母材との境界が特定できないため溶接部の位置を正確に把握できない場合には、反射波画像と設計図との位置関係を正確に合わせることが困難であった。また、例えば配管母材及び溶接金属がオーステナイト系ステンレス鋼又はニッケル基合金等で形成された場合、溶接部の境界等で反射した反射波が得られる。そのため、板厚方向断面における溶接部の境界近傍に表示された反射波画像が、溶接部の境界に相当するものなのかそれとも欠陥に相当するものなのかを正確に判定することができなかった。したがって、欠陥の検出精度の点で改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、欠陥の検出精度を高めることができる配管溶接部検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、超音波検査により配管の溶接部を検査する配管溶接部検査装置において、前記配管の外周側に配置され、前記配管の内周側に向けて傾斜した角度で超音波を発信するとともにその反射波を受信する超音波探触子と、前記超音波探触子の位置情報及び前記超音波探触子で受信した反射波の波形情報を含む探傷情報を収録する探傷情報記憶手段と、前記探傷情報記憶手段で収録された探傷情報に基づき反射波を前記配管の板厚方向断面の反射位置に変換して画像表示する反射波画像表示手段と、前記反射波画像表示手段で表示され前記溶接部の境界に相当する複数の反射波画像の位置に基づき前記溶接部の境界線を演算して設定する境界線設定手段と、前記反射波画像表示手段で表示された複数の反射波画像のうち、前記境界線演算手段で設定された前記溶接部の境界線より配管母材側に位置しかつ前記溶接部の境界線より予め設定された閾値以上離れた位置のものを、欠陥に相当すると判定して識別表示させる欠陥判定手段とを備える。
【0008】
本発明においては、境界線設定手段は、溶接部の境界に相当する反射波画像の位置に基づき溶接部の境界線を演算して設定するので、溶接部の境界線を正確に特定することができる。また、欠陥判定手段は、設定された溶接部の境界線を基準として欠陥に相当する反射波画像の有無を判定し、例えば欠陥に相当する反射波画像がある場合はそれを識別表示させる。したがって本発明においては、例えば作業者の目視判断により欠陥の有無を判定する場合と比べ、欠陥の検出精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、欠陥の検出精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本実施形態による配管溶接部検査装置の全体構成を表す概略図である。また、図2は、超音波斜角探触子を配管の溶接部とともに表す配管断面図である。
【0012】
これら図1及び図2において、配管溶接部検査装置は、配管1の溶接部2の検査(特に、配管母材3の内周面から発生するひび4の検出)を目的とするものであり、配管1の外周側に取り付けられたガイドレール5と、このガイドレール5を介し配管1の周方向に移動可能に設けられ、超音波斜角探触子6を備えた探触子移動装置7と、この探触子移動制御装置7を駆動制御して超音波斜角探触子6の位置を制御する探触子位置制御装置8と、超音波斜角探触子6による超音波の発信及びその反射波の受信を制御する超音波探傷制御装置9と、これら探触子位置制御装置8及び超音波探傷制御装置9を連携して制御するとともに、探傷情報(詳細には、超音波斜角探触子3の位置情報と超音波斜角探触子3で受信した反射波の波形情報を含む)を収録する中央制御装置10と、この中央制御装置10に収録された探傷情報に基づき、反射波を配管1の板厚方向断面の反射位置に変換して画像表示する表示装置11と、配管1の溶接部2の設計境界線(配管母材3の開先線)を含む設計データを記憶する設計データ記憶装置12とを備えている。
【0013】
探触子移動装置7は、上記超音波斜角探触子6と、配管1の軸方向(図1及び図2中左右方向)に延在し超音波斜角探触子3を支持するアーム13と、このアーム13を配管1の軸方向に移動可能に支持する複数の車輪14と、これら車輪14を回転制御してアーム13(言い換えれば、超音波斜角探触子6)を配管1の軸方向に移動させる軸方向移動制御機構15と、ガイドレール5に噛み合う歯車16と、この歯車16を回転制御して装置本体(言い換えれば、超音波斜角探触子6)を配管1の周方向に移動させる周方向移動制御機構17とを備えている。なお、ガイドレール5は、配管1の外周側に取り付け可能なように分割構造となっている。
【0014】
超音波斜角探触子6は、配管1の内周側に向けて傾斜した角度で超音波を発信するとともに、配管1の溶接部2の境界(詳細には、溶接金属と配管母材3との境界、及び溶接金属の垂れ込みの内周面)で反射された反射波や、配管母材2の内周面から発生したひび4等の欠陥で反射された反射波を受信するようになっている(図2中点線矢印で超音波の経路を示す)。
【0015】
超音波は音響インピーダンス(=媒質密度×音速)の差がある部位で反射し、音響インピーダンスの差が大きいほど反射効率が高くなる。例えばオーステナイト系ステンレス鋼で形成された溶接部2及び配管母材3は、密度差がほとんどない。しかしながら、配管母材3では、結晶組織の向きがランダムであるから超音波の伝播方向に関係なく音速が一定であるのに対し、溶接部2では、結晶組織の向きが揃うことから音速の音響異方性を有する。そして、図3に示すように、溶接部2の柱状晶組織の方向に対する超音波の入射角度が0度、45度、90度である場合、溶接部2と配管母材3との間の音速比が大きくなり(特に、縦波に比べて横波の方が大きくなり)、溶接部2の境界における反射効率が高くなる。また、図4に示すように、溶接部2の柱状晶組織の生成方向は境界上で法線方向となることから、溶接部2の境界線に対する超音波の入射角を45度にすると、反射効率が高くなる。また、溶接部2の境界線は、例えば配管1の板厚方向に対し0度〜25度の範囲の傾き部分を有している。以上のことから、超音波斜角探触子6は、横波の超音波を発信するとともに、その屈折角θを45度〜70度の範囲で設定することが好ましい。
【0016】
中央制御装置10は、探触子位置制御装置8及び超音波探傷制御装置9にトリガ信号を出力するトリガ信号発生部18と、探傷情報を収録する探傷情報記憶部19とを備えている。
【0017】
探触子位置制御装置8は、中央制御装置10のトリガ信号発生部18からのトリガ信号に対し予め設定された走査パターン(例えば配管1の周方向位置を変えて軸方向の走査を繰り返すような矩形走査パターン)に基づいて演算処理が行われ、生成した駆動制御信号(所定の移動量に相当する信号)を探触子移動装置7の軸方向移動制御機構15及び周方向移動制御機構17に出力する走査制御回路20と、この走査制御回路20の制御情報に基づき超音波斜角探触子6の移動方向及び移動量を演算して超音波斜角探触子6の位置を演算する移動量演算回路21と、この移動量演算回路21で演算された超音波斜角探触子6の位置情報をアナログ信号からデジタル信号に変換して、中央制御装置10の探傷情報記憶部19に出力するA/D変換回路22とを備えている。
【0018】
超音波探傷制御装置9は、中央制御装置10のトリガ信号発生部18からのトリガ信号に応じて超音波斜角探触子6に超音波の発信指令を送信する送信回路23と、超音波斜角探触子6で受信した反射波を受信する受信回路24と、この受信回路24で受信した反射波の波形情報をアナログ信号からデジタル信号に変換して、中央制御装置10の探傷情報記憶部19に出力するA/D変換回路25とを備えている。
【0019】
中央制御装置10の探傷情報記憶部19は、探触子位置制御装置8からの超音波斜角探触子6の位置情報及び超音波探傷制御装置9からの反射波の波形情報が入力されると、これらを探傷情報として収録し、トリガ信号発生部18にトリガ信号の発信指令を出力する。そして、トリガ信号発生部18は、トリガ信号の発信指令に応じてトリガ信号を出力し、探触子移動装置8及び超音波探傷制御装置を連携して制御する。このようにして、超音波斜角探触子6を配管1上で走査させながら探傷情報を自動収録するようになっている。
【0020】
ここで本実施形態の大きな特徴として、中央制御装置10の探傷情報記憶部19には、配管1の溶接部2の境界で反射した反射波に関する探傷情報が収録されている。そして、表示装置11は、中央制御装置10の探傷情報記憶部19に収録された複数の探傷情報に基づき反射波を配管1の板厚方向断面の反射位置に変換して画像表示するとともに、それら配管1の溶接部2の境界に相当する複数の反射波画像の位置に基づき溶接部2の境界線を演算して設定し、この溶接部2の境界線を重ね合わせて表示する。また、溶接部2の境界線を基準として欠陥に相当する反射波画像の有無を判定し、例えば欠陥に相当する反射画像がある場合はそれを識別表示させるようになっている。このような表示装置11の制御手順を図5により説明する。
【0021】
図5は、表示装置11の制御処理内容を表すフローチャートである。
【0022】
この図5において、まず、ステップ100において、表示装置11は、中央制御装置10の探傷情報記憶部19に収録された複数の探傷情報を読み込み、電気ノイズを除去するために振幅が予め設定された閾値以上の反射波を抽出する。その後、ステップ110に進んで、抽出した反射波を配管1の板厚方向断面の位置に変換して画像(詳細には、反射波の振幅を等高線で表した画像)として表示させる。詳細には、図6に示すように、配管1の軸方向における超音波斜角探触子6の位置をX軸とし、超音波のビーム路程(詳細には、超音波が反射されて戻るまでの片道の伝播時間を距離で表したもの)をY軸とし、このY軸を超音波の屈折角θの分だけ傾斜させた斜交座標系を用いて、反射波を配管1の板厚方向断面の位置に変換する。なお、本実施形態では、作業者が配管1の外周面に溶接部2の仮想中心線27(前述の図1及び図2参照)をペン等で付しており、この仮想中心線27に超音波斜角探触子6の初期位置を合わせることで、仮想中心線27の位置(基準位置)を座標原点Oとしている。そして、例えば図6に示すように、溶接金属と配管母材3との境界に相当する複数の反射波画像26aと、溶接金属の垂れ込みの内周面に相当する反射波画像26bと、配管母材3の内周面から発生したひび4の角部に相当する反射波画像26cとが表示される。
【0023】
そして、ステップ120に進み、表示装置11は、設計データ記憶装置12に記憶された溶接部2の設計境界線を読み込み(設計図から抽出処理してもよい)、上述した反射波画像26a,26b,26cの位置との相関性により設計境界線の位置を演算する。具体例としては、溶接部2の境界に相当するものとして互いの位置間隔が閾値以下となる反射波画像26aを抽出し、これらの反射波画像26aの位置を直線近似し、設計境界線をX軸方向に移動させて最も相関性が高くなる位置を演算する。相関性を求める方法としては、最尤法や最小二乗法等がある。このようにして溶接部2の境界線28を設定し、上述した反射画像26a〜26cに重ね合わせて表示する(図6参照)。
【0024】
そして、ステップ130に進み、例えば溶接部2の境界線28より配管母材側(図6中右側)に位置し配管母材の内周面を含むように予め設定された検査範囲29(例えば境界線28の中心位置28aから配管1の軸方向に10mm移動した範囲)において、境界線28より予め設定された閾値以上離れた反射波画像の有無を判定する。そして、例えば図6に示すように、検査範囲29において境界線28より予め設定された閾値以上離れた反射画像26cがある場合は、ステップ130の判定が満たされてステップ140に進み、反射画像26cを色等で識別表示させる。
【0025】
なお、上記において、中央制御装置10の探傷情報記憶部19は、特許請求の範囲記載の超音波探触子の位置情報及び超音波探触子で受信した反射波の波形情報を含む探傷情報を収録する探傷情報記憶手段を構成する。表示装置11が行うステップ110は、探傷情報記憶手段で収録された探傷情報に基づき反射波を配管の板厚方向断面の反射位置に変換して画像表示する反射波画像表示手段を構成する。また、表示装置11が行うステップ120は、反射波画像表示手段で表示され溶接部の境界に相当する複数の反射波画像の位置に基づき溶接部の境界線を演算して設定する境界線設定手段を構成する。また、表示装置11が行うステップ130及び140は、反射波画像表示手段で表示された複数の反射波画像のうち、境界線演算手段で設定された溶接部の境界線より配管母材側に位置しかつ溶接部の境界線より予め設定された閾値以上離れた位置のものを、欠陥に相当すると判定して識別表示させる欠陥判定手段を構成する。また、超音波斜角探触子6、探触子移動装置7、及び探触子位置制御装置8は、配管1の外周面に付した基準位置を入力可能な入力手段を構成する。
【0026】
以上のように構成された本実施形態においては、表示装置11は、配管1の溶接部2の境界に相当する反射波画像26a等に基づき溶接部2の境界線を演算して設定するので、溶接部2の境界線を正確に特定することができる。また、設定された溶接部2の境界線を基準として欠陥に相当する反射波画像の有無を判定し、例えば欠陥に相当する反射波画像26cがある場合はそれを識別表示させる。したがって、例えば作業者の目視判断により欠陥の有無を判定する場合と比べ、欠陥の検出精度を高めることができる。
【0027】
なお、上記一実施形態においては、表示装置11は、境界線設定機能として、複数の反射波画像26a等の位置との相関性により溶接部2の設計境界線の位置を演算して設定する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、溶接部2の境界に相当するものとして互いの位置間隔が閾値以下となる反射波画像26aを抽出し、これらの反射波画像26aの位置に基づき回帰線(溶接部2の境界線)を演算して設定してもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0028】
また、上記一実施形態においては、配管1の内周側に向けて傾斜した角度で超音波を発信するとともにその反射波を受信する超音波探触子として、超音波斜角探触子3を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、超音波斜角探触子3に代えて、例えば超音波アレイセンサを設けてもよい。このような変形例を以下説明する。
【0029】
図7は、第1の変形例における超音波アレイセンサの構成を表す概略図である。なお、この第1の変形例において、上記一実施形態と同等の部分は、適宜説明及び図示を省略する。
【0030】
第1の変形例では、探触子移動装置7のアーム13には、配管1の軸方向に配設された複数(図7では8個)の振動子30を有する超音波アレイセンサ31が設けられている。また、複数の振動子31からの球面超音波32の発信及び位相をそれぞれ制御する振動子制御装置33(振動子制御手段)が備えられている。振動子制御装置33は、複数の振動子31への電圧印加時間(言い換えれば、遅延時間)をそれぞれ制御して、振動子31から発生する球面超音波32の位相の重ね合わせ位置を制御することにより、干渉波34の角度及び集束を可変制御する。これにより、任意の集束目標点P(好ましくは配管母材の内周面)及び任意の傾斜角度θで干渉波34を発信するようになっている。
【0031】
このように構成された第1の変形例においても、上記一実施形態同様、欠陥の検出精度を高めることができる。
【0032】
図8は、第2の変形例における超音波アレイセンサを配管の溶接部とともに表す配管断面図である。なお、この第2の変形例において、上記一実施形態と同等の部分は、適宜説明を省略する。
【0033】
第2の変形例では、配管1の軸方向に配設された多数(図8では20個以上)の振動子30を有する超音波アレイセンサ31Aと、振動子30からの球面超音波32の発信及び位相をそれぞれ制御する振動子制御装置33A(振動子制御手段、図示せず)とを備えている。振動子制御装置33Aは、多数の振動子30のうち互いに隣接する例えば8つの振動子30を選択し、それら選択した振動子31への電圧印加時間(言い換えれば、遅延時間)をそれぞれ制御して、振動子31から発生する球面超音波32の位相の重ね合わせ位置を制御することにより、干渉波34の角度及び集束を可変制御する。これにより、任意の集束目標点(好ましくは配管母材の内周面)及び任意の傾斜角度で干渉波34を発信するようになっている。
【0034】
また、振動子制御装置33Aは、干渉波34の入射位置を配管1の軸方向に移動させるため、電圧を印加する8つの振動子30を適宜選択するようになっている(なお、振動子31への電圧印加時間のパターン、言い換えれば遅延時間のパターンは一定とする)。なお、図示しない周方向移動制御機構によって、超音波アレイセンサ31Aは配管1の周方向に移動するようになっている。
【0035】
このように構成された第2の変形例においても、上記一実施形態同様、欠陥の検出精度を高めることができる。また、第2の変形例では、振動子制御装置33Aは、電圧を印加する振動子31を適宜選択することにより、干渉波34の入射位置を移動させている。これにより、上記一実施形態のようにアーム13、車輪14、及び軸方向移動機構15を備えさせて超音波探触子を機械的に移動させる場合と比べ、配管1の軸方向における走査速度を高めることができる。したがって、検査時間の短縮を図ることができる。
【0036】
なお、以上においては、溶接部2及び配管母材3がオーステナイト系ステンレス鋼で形成された場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えばニッケル基合金等で形成されてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の配管溶接部検査装置の一実施形態の全体構成を表す概略図である。
【図2】本発明の配管溶接部検査装置の一実施形態を構成する超音波斜角探触子を配管の溶接部とともに表す配管断面図である。
【図3】配管の溶接部における音速異方性を説明するための特性図である。
【図4】配管の溶接部における柱状晶組織を説明するための配管断面図である。
【図5】本発明の配管溶接部検査装置の一実施形態を構成する表示装置の制御処理内容を表すフローチャートである。
【図6】本発明の配管溶接部検査装置の一実施形態を構成する表示装置で処理された反射波の画像及び溶接部の境界線を一例として表す図である。
【図7】本発明の配管溶接部検査装置の第1の変形例を構成する超音波アレイセンサの構成を表す概略図である。
【図8】本発明の配管溶接部検査装置の第2の変形例を構成する超音波アレイセンサを配管の溶接部とともに表す配管断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 配管
2 溶接部
3 配管母材
4 ひび
6 超音波斜角探触子
11 表示装置
12 設計データ記憶装置
19 探傷情報記憶部
26a 反射波画像
26b 反射波画像
26c 反射波画像
28 境界線
30 振動子
31 超音波アレイセンサ
31A 超音波アレイセンサ
32 球面超音波
33 振動子制御装置
33A 振動子制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波検査により配管の溶接部を検査する配管溶接部検査装置において、
前記配管の外周側に配置され、前記配管の内周側に向けて傾斜した角度で超音波を発信するとともにその反射波を受信する超音波探触子と、
前記超音波探触子の位置情報及び前記超音波探触子で受信した反射波の波形情報を含む探傷情報を収録する探傷情報記憶手段と、
前記探傷情報記憶手段で収録された探傷情報に基づき反射波を前記配管の板厚方向断面の反射位置に変換して画像表示する反射波画像表示手段と、
前記反射波画像表示手段で表示され前記溶接部の境界に相当する複数の反射波画像の位置に基づき前記溶接部の境界線を演算して設定する境界線設定手段と、
前記反射波画像表示手段で表示された複数の反射波画像のうち、前記境界線演算手段で設定された前記溶接部の境界線より配管母材側に位置しかつ前記溶接部の境界線より予め設定された閾値以上離れた位置のものを、欠陥に相当すると判定して識別表示させる欠陥判定手段とを備えたことを特徴とする配管溶接部検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の配管溶接部検査装置において、前記溶接部の設計境界線を記憶する設計境界線記憶手段をさらに備え、前記境界線設定手段は、前記反射波画像表示手段で表示された複数の反射波画像の位置との相関性により前記溶接部の設計境界線の位置を演算して設定することを特徴とする配管溶接部検査装置。
【請求項3】
請求項1記載の配管溶接部検査装置において、前記配管の外周面に付した基準位置を入力可能な入力手段を有し、前記反射波画像表示手段は、前記入力手段で入力された基準位置を座標原点として反射波画像を表示することを特徴とする配管溶接部検査装置。
【請求項4】
請求項1記載の配管溶接部検査装置において、前記超音波探触子は、前記配管の軸方向に配設された複数の振動子を有する超音波アレイセンサであり、前記複数の振動子からの球面超音波の発信及び位相をそれぞれ制御する振動子制御手段を備えたことを特徴とする配管溶接部検査装置。
【請求項5】
請求項1記載の配管溶接部検査装置において、前記配管母材及び溶接金属は、オーステナイト系ステンレス鋼又はニッケル基合金で形成されたことを特徴とする配管溶接部検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−69077(P2009−69077A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240045(P2007−240045)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】