説明

配線及びその製造方法並びに配線を用いた電子部品及び電子機器

【課題】導電性微粒子本来の機能を損なうことなく保持しており、任意の基材表面に選択的に配列した単層の導電性微粒子層又は複数層の導電性微粒子層を有する配線及びその製造方法並びに配線を用いた電子部品及び電子機器を提供する。
【解決手段】基材11の表面のパターン部分22にのみ導電性微粒子31が配列した導電性微粒子層が1層結合固定されたパターン状の配線1、3であって、基材11の表面のパターン部分22には、分子の一端に第1の官能基を有する第1の膜化合物の被膜13が形成され、導電性微粒子31の表面には、分子の一端に第2の官能基を有する第2の膜化合物の被膜33が形成され、導電性微粒子31は、第1及び第2の官能基と第1のカップリング剤とのカップリング反応により形成された結合を介して基材11上に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスやプリント基板に用いる導体配線及びその製造方法並びに配線を用いた電子部品及び電子機器に関する。さらに詳しくは、表面に反応性を有する官能基を導入した導電性微粒子とを有する配線及びその製造方法並びに配線を用いた電子部品及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子デバイスやプリント基板に用いる導体配線及びその製造方法として、スクリーン印刷、フォトリソグラフィー等の方法により所定のパターン状に選択的に塗布された導電性ペーストを加熱処理して配線を形成する方法(例えば、特許文献1及び2参照)や、フォトリソグラフィー法とエッチング法を用いて、基板表面の導電体層を選択的に除去して配線を形成する方法(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−356053号公報
【特許文献2】特開2004−273205号公報
【特許文献3】特開2002−124518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、印刷やフォトリソグラフィーでは、電子デバイスやプリント基板の微細化高密度化に十分対応しきれなくなってきている。
【0005】
一方、電子デバイスやプリント基板上の配線を微細化するためには、基板上で導電性微粒子を均一な膜厚の被膜にする必要がある。しかしながら、任意の基体表面に導電性微粒子を1層のみ配列させた、粒子サイズレベルで均一な厚さを有する導電性微粒子よりなる導電性微粒子層、及び複数層累積した導電性微粒子層並びにそれらの製造方法は未だ開発及び提供されておらず、使用する導電性微粒子のサイズや積層数によって導電性微粒子膜の膜厚を制御するという技術的思想もこれまで提案されていない。
【0006】
本発明は、導電性微粒子本来の機能を損なうことなく保持しており、任意の基材表面に選択的に配列した単層の導電性微粒子層又は複数層の導電性微粒子層よりなる配線及びその製造方法並びに配線を用いた電子部品及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る配線は、基材の表面のパターン部分にのみ導電性微粒子が配列した導電性微粒子層が1層結合固定されたパターン状の配線であって、前記基材の表面の前記パターン部分には、分子の一端に第1の官能基を有し、他端で該パターン部分の表面に結合した第1の膜化合物の被膜が形成され、前記導電性微粒子の表面には、分子の一端に第2の官能基を有し、他端で該導電性微粒子の表面に結合した第2の膜化合物の被膜が形成され、前記導電性微粒子は、前記第1の官能基とカップリング反応して結合を形成する少なくとも1つの第1のカップリング反応基と、前記第2の官能基とカップリング反応して結合を形成する少なくとも1つの第2のカップリング反応基とを有する第1のカップリング剤と、前記第1及び前記第2の官能基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記基材上に固定されている。
【0008】
第1の発明に係る配線において、前記第1の膜化合物と前記第2の膜化合物とが同一の化合物であることが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る配線において、前記第1及び第2の膜化合物の形成する被膜の一方又は双方が単分子膜であることが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る配線において、前記カップリング反応により形成された結合が、アミノ基又はイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であってもよい。
【0011】
第2の発明に係る配線は、基材の表面のパターン部分にのみ、導電性微粒子が配列した導電性微粒子層が、前記基材側から空気との界面側に向かって第1層から第n層(nは2以上の整数)まで順次積層したパターン状の配線であって、前記基材の表面の前記パターン部分には、分子の一端に第1の官能基を有し、他端で該パターン部分の表面に結合した第1の膜化合物の被膜が形成され、前記導電性微粒子の第1層の表面には、分子の一端に第2の官能基を有し、他端で該導電性微粒子の表面に結合した第2の膜化合物の被膜が形成され、第x番目(xは整数で、2≦x≦n)の前記導電性微粒子層を形成している前記導電性微粒子の表面は、第(x+1)の官能基を有する第(x+1)の膜化合物の形成する被膜で被覆され、前記導電性微粒子の第1層は、前記第1の官能基とカップリング反応して結合を形成する少なくとも1つの第1のカップリング反応基と、前記第2の官能基とカップリング反応して結合を形成する少なくとも1つの第2のカップリング反応基とを有する第1のカップリング剤と、前記第1及び前記第2の官能基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記基材上に固定されており、前記導電性微粒子層の第(x−1)層と第x層は、第xの官能基とカップリング反応して結合を形成する少なくとも1つの第xのカップリング反応基と、前記第(x+1)の官能基とカップリング反応して結合を形成する少なくとも1つの第(x+1)のカップリング反応基とを有する第xのカップリング剤と、前記第xの官能基と前記第xのカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合、及び前記第(x+1)の官能基と前記第(x+1)のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して互いに固定されている。
【0012】
第2の発明に係る配線において、前記第1〜第(n+1)の膜化合物、並びに前記第1〜第nのカップリング剤がそれぞれ同一の化合物であることが好ましい。
【0013】
第2の発明に係る配線において、前記第1〜第(n+1)の膜化合物が形成する被膜が全て単分子膜であることが好ましい。
【0014】
第2の発明に係る配線において、前記カップリング反応により形成された結合が、アミノ基又はイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であってもよい。
【0015】
第3の発明に係る配線の製造方法は、基材の表面のパターン部分にのみ導電性微粒子が配列した導電性微粒子層が結合固定されたパターン状の配線を製造する方法であって、分子の両端にそれぞれ第1の官能基及び第1の結合基を有する第1の膜化合物を含む溶液を前記基材の表面に接触させ、前記第1の結合基と前記基材の表面との間で結合を形成させ、前記第1の膜化合物の形成する被膜で前記基材の表面を被覆する工程Aと、前記パターン部分を覆うマスクを通して、前記被覆された基材の表面にエネルギー線の照射を行い、前記パターン部分にのみ前記第1の膜化合物の形成する被膜を残すパターン形成処理を行う工程Bと、分子の両端にそれぞれ第2の官能基及び第2の結合基を有する第2の膜化合物を含む溶液を前記導電性微粒子の表面に接触させ、前記第2の結合基と前記導電性微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記導電性微粒子の表面に前記第2の膜化合物の形成する被膜を形成する工程Cと、前記第1の官能基とカップリング反応して結合を形成する1つ又は2つ以上の第1のカップリング反応基と、前記第2の官能基とカップリング反応して結合を形成する1つ又は2つ以上の第2のカップリング反応基とを有する第1のカップリング剤を、前記パターン形成処理を行った基材及び前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の表面にそれぞれ接触させ、前記第1の官能基と前記第1のカップリング反応基とのカップリング反応、及び前記第2の官能基と前記第2のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して、前記導電性微粒子からなる1層の前記導電性微粒子層を前記基材の表面に結合固定し、次いで、前記基材の表面に固定されなかった前記導電性微粒子を除去する工程Dとを有する。
【0016】
第3の発明に係る配線の製造方法において、前記工程Bにおける前記パターン形成処理は、レーザーアブレーション法を用いて前記パターン部分以外の前記第1の膜化合物の被膜を除去することにより行われてもよい。
【0017】
第3の発明に係る配線の製造方法において、工程Bにおける前記パターン形成処理は、前記エネルギー線の照射により前記パターン部分以外の前記第1の官能基を他の官能基に変換することにより行われてもよい。
【0018】
第3の発明に係る配線の製造方法において、前記工程Dでは、まず、前記パターン形成処理を行った基材の表面に前記第1のカップリング剤を接触させ、前記第1の官能基と前記第1のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記パターン部分の表面のみに選択的に該第1のカップリング剤の被膜を更に形成し、次いで、該第1のカップリング剤の被膜が形成された基材と前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子とを接触させ、前記第2の官能基と前記第2のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記パターン部分の表面のみに選択的に前記導電性微粒子を結合固定してもよい。
【0019】
第3の発明に係る配線の製造方法において、前記工程Dでは、まず、前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の表面に前記第1のカップリング剤を接触させ、前記第2の官能基と前記第2のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介してその表面に該第1のカップリング剤の被膜を更に形成し、次いで、該第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子と前記パターン形成処理を行った基材とを接触させ、前記第1の官能基と前記第1のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記パターン部分の表面のみに選択的に前記導電性微粒子を結合固定してもよい。
【0020】
第3の発明に係る配線の製造方法において、前記第1の膜化合物と前記第2の膜化合物とが同一の化合物であることが好ましい。
【0021】
第3の発明に係る配線の製造方法において、前記工程A及び前記工程Cにおいて、未反応の前記第1及び第2の膜化合物は洗浄除去され、前記基材及び前記導電性微粒子の表面上で前記第1及び第2の膜化合物がそれぞれ形成する被膜は、単分子膜であることが好ましい。
【0022】
第3の発明に係る配線の製造方法において、前記基材上には、前記導電性微粒子層が前記基材側から空気との界面側に向かって第1層から第n層(nは2以上の整数)まで順次積層した配線の製造方法であって、分子の両端にそれぞれ第3の官能基及び第3の結合基を有する第3の膜化合物を含む溶液を前記導電性微粒子の表面に接触させ、前記第3の結合基と前記導電性微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記導電性微粒子の表面に前記第3の膜化合物の被膜を形成し、次いで、前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の表面に、前記第2のカップリング反応基と、前記第3の官能基とカップリング反応して結合を形成する1つ又は2つ以上の第3のカップリング反応基とを有する第2のカップリング剤を接触させ、前記第3の官能基と前記第3のカップリング反応基とのカップリング反応により形成させた結合を介して、前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の表面に前記第2のカップリング剤の被膜を更に形成する工程Eと、前記導電性微粒子層の表層に位置する前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子と前記第2のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子とを接触させ、前記第2の官能基と前記第2のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して、前記第2のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子を前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の上に結合固定し、次いで、結合固定されなかった前記第2のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子を除去する工程Fとを有し、n≧3の場合、前記導電性微粒子層の表層に位置する前記第2のカップリング剤の被膜を有する導電性微粒子の表面に前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子を接触させ、前記第2の官能基と前記第2のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子を前記第2のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子の上に結合固定し、次いで、結合固定されなかった前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子を除去する工程Gを更に有し、n≧4の場合、n層の前記導電性微粒子層が形成されるまで前記工程F及びGを交互に繰り返し行う工程Hとを更に有していてもよい。
【0023】
第3の発明に係る配線の製造方法において、前記第1〜第3の膜化合物が同一の化合物でであることが好ましい。
【0024】
第3の発明に係る配線の製造方法において、前記工程Eにおいて、未反応の前記第3の膜化合物は洗浄除去され、前記導電性微粒子の表面上で前記第3の膜化合物が形成する被膜は、単分子膜であることが好ましい。
【0025】
第3の発明に係る配線の製造方法において、前記基材上には、前記導電性微粒子層が前記基材側から空気との界面側に向かって第1層から第n層(nは2以上の整数)まで順次積層した配線の製造方法であって、分子の両端にそれぞれ前記第1の官能基及び第3の結合基を有する第3の膜化合物を含む溶液を前記導電性微粒子の表面に接触させ、前記第3の結合基と前記導電性微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記導電性微粒子の表面に前記第3の膜化合物の形成する被膜を形成する工程Eと、前記導電性微粒子層の表層に位置する前記第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子と前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子とを接触させ、前記第1の官能基と前記第1のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して、前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子を前記第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子の上に結合固定し、次いで、結合固定されなかった前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子を除去する工程Fとを有し、n≧3の場合、前記導電性微粒子層の表層に位置する前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子と前記第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子とを接触させ、前記第1の官能基と前記第1のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子を前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の上に結合固定し、次いで、結合固定されなかった前記第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子を除去する工程Gを更に有し、n≧4の場合、n層の前記導電性微粒子層が形成されるまで前記工程F及びGを交互に繰り返し行う工程Hとを更に有していてもよい。
【0026】
第3の発明に係る配線の製造方法において、前記第1及び第2の膜化合物、或いは前記第1〜第3の膜化合物は全てアルコキシシラン化合物であり、前記第1及び第2の膜化合物、或いは前記第1〜第3の膜化合物を含む溶液は、更に縮合触媒として、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1つ又は2つ以上の化合物を含んでいてもよい。
この場合、更に助触媒として、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1つ又は2つ以上の化合物を含んでいてもよい。
【0027】
第3の発明に係る配線の製造方法において、前記第1及び第2の膜化合物、或いは前記第1〜第3の膜化合物は全てアルコキシシラン化合物であり、前記第1及び第2の膜化合物、或いは前記第1〜第3の膜化合物を含む溶液は、更に縮合触媒として、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1つ又は2つ以上の化合物を更に含んでいてもよい。
【0028】
第3の発明に係る配線の製造方法において、前記カップリング反応により形成された結合が、アミノ基又はイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であってもよい。
【0029】
第4の発明に係る電子部品は、第1及び第2の発明に係る配線を用いている。
【0030】
第5の発明に係る電子機器は、第1及び第2の発明に係る配線を用いている。
【発明の効果】
【0031】
請求項1〜8に記載の配線及び請求項9〜25に記載の配線の製造方法においては、導電性微粒子本来の機能を損なうことなく、任意の基材上の任意のパターン上に任意の膜厚で形成可能であり、膜厚が均一でかつ品質にばらつきの少ないパターン状の配線を低コストで製造できる。
また、基材の表面に配列した導電性微粒子層は基材の表面に結合固定されているので、高い耐剥離強度を有すると共に、カップリング反応により形成された結合を介して配線を1層ずつ積層固定するので、パターン状の配線の膜厚を導電性微粒子のサイズのレベルで容易に制御できる。
さらに、導電性微粒子層の積層固定にバインダーを用いないため、導体密度が高く電気伝導性の高い配線を形成できる。
【0032】
請求項2に記載の配線においては、第1の膜化合物と第2の膜化合物とが同一の化合物であるので、製造コストを低減できる。
【0033】
請求項3に記載の配線においては、第1及び第2の膜化合物の形成する被膜の一方又は双方が単分子膜であるので、基材及び導電性微粒子のいずれか一方又は双方の本来の物性や機能を損なうことがない。
【0034】
請求項4に記載の配線においては、カップリング反応により形成された結合が、アミノ基又はイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であるので、加熱により強固な結合を形成できる。
【0035】
請求項5に記載の配線においては、基材側から空気との界面側に向かって導電性微粒子層が順次積層した導電性微粒子層について、積層された導電性微粒子層の数、各導電性微粒子層を構成する導電性微粒子の材質、粒径等を任意に定めることができるため、導電性微粒子層の膜厚、電気伝導度等を容易に制御できる。また、各導電性微粒子層の材質に応じて、最適な膜化合物及びカップリング剤を選択できる。
【0036】
請求項6に記載の配線においては、第1〜第(n+1)の膜化合物及び第1〜第nのカップリング剤それぞれが同一の化合物であるので、製造コストを更に低減できる。
請求項7に記載の配線においては、第1〜第(n+1)の膜化合物の形成する被膜が全て単分子膜であるので、基材及び導電性微粒子の本来の物性や機能を損なうことがない。
【0037】
請求項8に記載の配線においては、カップリング反応により形成された結合が、アミノ基又はイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であるので、加熱により強固な結合を形成できる。
【0038】
請求項10に記載の配線の製造方法においては、工程Bにおけるパターン形成処理は、レーザーアブレーション法を用いてパターン部分以外の第1の膜化合物の被膜を除去することにより行われるので、微細なパターンを精度よく形成できる。
【0039】
請求項11に記載の配線の製造方法においては、工程Bにおけるパターン形成処理は、エネルギー線の照射によりパターン部分以外の第1の官能基を他の官能基に変換することにより行われるので、微細なパターンを精度よく形成できる。
【0040】
請求項12に記載の配線の製造方法においては、工程Dでは、まず、パターン形成処理を行った基材の表面に第1のカップリング剤を接触させ、第1の官能基と第1のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介してパターン部分の表面のみに選択的に第1のカップリング剤の被膜を更に形成し、次いで、第1のカップリング剤の被膜が形成された基材と第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子とを接触させ、第2の官能基と第2のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介してパターン部分の表面のみに選択的に導電性微粒子を結合固定するので、第2の膜化合物の形成する被膜で覆われた導電性微粒子に対して前処理を行うことなく、第2の官能基と第2のカップリング反応基とのカップリング反応により、第2の膜化合物の形成する被膜で覆われた導電性微粒子を表面に結合固定することができる。
【0041】
請求項13に記載の配線の製造方法においては、工程Dでは、まず、第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の表面に第1のカップリング剤を接触させ、第2の官能基と第2のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介してその表面に第1のカップリング剤の被膜を更に形成し、次いで、第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子とパターン形成処理を行った基材とを接触させ、第1の官能基と第1のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介してパターン部分の表面のみに選択的に導電性微粒子を結合固定するので、第1の膜化合物の形成する被膜で覆われた基材に対して前処理を行うことなく、第1の官能基と第1のカップリング反応基とのカップリング反応により、第1の膜化合物の形成する被膜で覆われた基材の表面に第2の膜化合物の形成する被膜で覆われた導電性微粒子を結合固定することができる。
【0042】
請求項14に記載の配線の製造方法においては、第1の膜化合物と第2の膜化合物とが同一の化合物であるので、製造コストを低減できる。
【0043】
請求項15に記載の配線の製造方法においては、第1及び第2の膜化合物がそれぞれ形成する被膜が単分子膜であるので、基材及び導電性微粒子の本来の物性や機能を損なうことがない。
【0044】
請求項16に記載の配線の製造方法においては、3種類の膜化合物、及び2種類のカップリング剤を用いて任意の膜厚の配線を製造できるので、製造コストを低減できる。
【0045】
請求項17に記載の配線の製造方法においては、第1〜第3の膜化合物が同一の化合物であるので、製造コストを更に低減できる。
請求項18に記載の配線の製造方法においては、第3の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であるので、導電性微粒子の本来の物性や機能を損なうことがない。
【0046】
請求項19に記載の配線の製造方法においては、3種類の膜化合物、及び1種類のカップリング剤を用いて任意の膜厚の配線を製造できるので、製造コストを低減できる。
【0047】
請求項20及び22に記載の配線の製造方法においては、膜化合物を含む溶液が、更に縮合触媒として、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1つ又は2つ以上の化合物を含むので、膜化合物の被膜の形成に要する時間を短縮し、配線の製造をより高効率に行うことができる。
【0048】
請求項21、23及び24に記載の配線の製造方法においては、膜化合物を含む溶液が、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からからなる群より選択される1つ又は2つ以上の化合物を更に含むので、膜化合物の被膜の形成に要する時間を短縮し、配線の製造をより高効率に行うことができる。特に、これらの化合物と上述の縮合触媒の両者を共に含む場合には、調製時間を更に短縮できる。
【0049】
請求項25に記載の配線の製造方法においては、カップリング反応により形成された結合が、アミノ基又はイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であるので、加熱により強固な結合を形成できる。
【0050】
請求項26記載の配線の電子部品及び請求項27記載の電子機器においては、高い電気伝導性を有し、耐剥離強度が高い請求項1〜8記載の配線を用いているので、内部損失やそれに伴う発熱が少なく、信頼性及び耐久性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1(a)は本発明の第1の実施の形態に係るパターン状の単層配線の断面構造を模式的に表した説明図、図1(b)は本発明の第2の実施の形態に係るパターン状の積層配線の断面構造を模式的に表した説明図、図2(a)は本発明の第3の実施の形態に係るパターン状の単層配線の断面構造を模式的に表した説明図、図2(b)は本発明の第4の実施の形態に係るパターン状の積層配線の断面構造を模式的に表した説明図、図3は、本発明の第1〜第4の実施の形態に係るパターン状の配線の製造方法において、ガラス基板の表面に第1の膜化合物の被膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、図3(a)は反応前のガラス基板の断面構造、図3(b)はエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜が形成されたガラス基板の断面構造をそれぞれ表し、図4(a)は同配線の製造方法におけるパターン形成処理を行う工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、図4(b)は変形例に係るパターン形成処理を行う工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図、図5は本発明の第1〜第4の実施の形態に係る配線の製造方法において、銀微粒子の表面に第2の膜化合物の被膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、図5(a)は反応前の銀微粒子の断面構造、図5(b)はエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜が形成された銀微粒子の断面構造をそれぞれ表す。
【0052】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る単層配線1について説明する。
図1(a)に示すように、単層配線1は、ガラス基板11(基材の一例)の表面のパターン部分にのみ銀微粒子31(導電性微粒子の一例)が配列した銀微粒子層(導電性微粒子層の一例)が1層結合固定されたパターン状の配線である。
ガラス基板11の表面のパターン部分には、分子の一端にエポキシ基(第1の官能基の一例)を有し、他端でパターン部分の表面に結合した第1の膜化合物の単分子膜13(被膜の一例)が形成され、更にその表面には、エポキシ基とカップリング反応して結合を形成するアミノ基及びイミノ基(第1及び第2のカップリング反応基の一例)を分子内に1つずつ有する2−メチルイミダゾール(第1のカップリング剤の一例)のアミノ基とエポキシ基とのカップリング反応により形成された結合を介して固定された2-メチルイミダゾールの単分子膜15(被膜の一例)が形成されている。
銀微粒子31の表面には、分子の一端にエポキシ基(第2の官能基の一例)を有し、銀微粒子31の表面に結合した第2の膜化合物の単分子膜33(被膜の一例)が形成されている。
ガラス基板11と銀微粒子31との間は、エポキシ基と2−メチルイミダゾールのアミノ基又はイミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介して互いに結合固定されている。
【0053】
単層配線1の製造方法は、図3(a)、(b)、図4(a)、図5(a)、(b)、及び図1(a)に示すように、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物(第1の膜化合物の一例)を含む溶液をガラス基板11の表面に接触させ、アルコキシシリル基(第1の結合基の一例)とガラス基板11の表面の水酸基12との間で結合を形成させ、ガラス基板11の表面に第1の膜化合物の単分子膜13を形成する工程A(図3参照)と、パターン部分を覆うマスク21を通して、第1の膜化合物の単分子膜13の表面に光照射(エネルギー線の照射)するパターン形成処理を行い、パターン部分22にのみエポキシ基を残したパターン形成処理を行う工程B(図4参照)と、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物(第2の膜化合物の一例)を銀微粒子31の表面に接触させ、アルコキシシリル基(第2の結合基の一例)と銀微粒子31の表面の水酸基32との間で結合を形成させ、銀微粒子31の表面に第2の膜化合物の単分子膜33を形成する工程C(図5参照)と、まず、パターン形成処理を行ったガラス基板11に、2−メチルイミダゾールを接触させて、エポキシ基とアミノ基とをカップリング反応により形成された結合を介して、パターン部分22の表面にのみ選択的に2−メチルイミダゾールの単分子膜15を形成させ、次いで、2−メチルイミダゾールの単分子膜15が形成されたガラス基板11と第2の膜化合物の単分子膜33が形成された銀微粒子31とを接触させ、エポキシ基とイミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介してパターン部分22の表面にのみ選択的に銀微粒子31を固定し、次いで、固定されなかった銀微粒子31を除去する工程Dとを有する。
【0054】
以下、工程A〜Dについてより詳細に説明する。
工程Aでは、エポキシ基を有する膜化合物をガラス基板11に接触させ、第1の膜化合物の単分子膜13を形成する(図3参照)。
なお、ガラス基板11の大きさには特に制限はない。
【0055】
エポキシ基を有する膜化合物としては、ガラス基板11の表面に吸着又は結合し、自己組織化により単分子膜を形成することのできる任意の化合物を用いることができるが、直鎖状アルキレン基の一方の末端にエポキシ基(オキシラン環)を含む官能基を、他方の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ有し、下記の一般式(化1)で表されるアルコキシシラン化合物が好ましい。
【0056】
【化1】

【0057】
上式において、Eはエポキシ基を有する官能基を、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
用いることのできるエポキシ基を有する膜化合物の具体例としては、下記(1)〜(12)に示したアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0058】
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(3) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(8) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(9) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(12) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
【0059】
ここで、(CHOCH)CH−基は、化2で表される官能基(グリシジル基)を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、化3で表される官能基(3,4−エポキシシクロヘキシル基)を表す。
【0060】
【化2】

【0061】
【化3】

【0062】
ガラス基板11の表面上への第1の膜化合物の単分子膜13の形成は、エポキシ基及びアルコキシシリル基を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基とガラス基板11の表面の水酸基12との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合した反応液をガラス基板11の表面に塗布し、室温の空気中で反応させることにより行われる。塗布は、ドクターブレード法、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法等の任意の方法により行うことができる。
【0063】
縮合触媒としては、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート等の金属塩が利用可能である。
縮合触媒の添加量は、好ましくはアルコキシシラン化合物の0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜1質量%である。
【0064】
カルボン酸金属塩の具体例としては、酢酸第1スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクタン酸第1スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄が挙げられる。
【0065】
カルボン酸エステル金属塩の具体例としては、ジオクチルスズビスオクチルチオグリコール酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩が挙げられる。
カルボン酸金属塩ポリマーの具体例としては、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマーが挙げられる。
カルボン酸金属塩キレートの具体例としては、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレートが挙げられる。
【0066】
チタン酸エステルの具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネートが挙げられる。
チタン酸エステルキレート類の具体例としては、ビス(アセチルアセトニル)ジ−プロピルチタネートが挙げられる。
【0067】
アルコキシシリル基とガラス基板11の表面の水酸基12とが縮合反応を起こし、下記の化4で示されるような構造を有するエポキシ基を有する第1の膜化合物の単分子膜13を生成する。なお、酸素原子から延びた3本の単結合はガラス基板11の表面又は隣接するシラン化合物のケイ素(Si)原子と結合しており、そのうち少なくとも1本はガラス基板11の表面のケイ素原子と結合している。
【0068】
【化4】

【0069】
アルコキシシリル基は、水分の存在下で分解するので、反応は相対湿度45%以下の空気中で行うことが好ましい。なお、縮合反応は、ガラス基板11の表面に付着した油脂分や水分により阻害されるので、ガラス基板11をよく洗浄して乾燥することにより、これらの不純物を予め除去しておくことが好ましい。
縮合触媒として上述の金属塩のいずれかを用いた場合、縮合反応の完了までに要する時間は2時間程度である。
【0070】
上述の金属塩の代わりに、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1つ又は2つ以上の化合物を縮合触媒として用いた場合、反応時間を1/2〜2/3程度まで短縮できる。
【0071】
あるいは、これらの化合物を助触媒として、上述の金属塩と混合(質量比1:9〜9:1の範囲で使用可能だが、1:1前後が好ましい)して用いると、反応時間を更に短縮できる。
【0072】
例えば、縮合触媒として、カルボン酸金属塩キレートであるジブチルスズビスアセチルアセテートの代わりにケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3を用い、その他の条件は同一にしてエポキシ化銀微粒子21の製造を行うと、エポキシ化銀微粒子21の品質を損なうことなく反応時間を1時間程度にまで短縮できる。
【0073】
更に、縮合触媒として、ジャパンエポキシレジン社のH3とジブチルスズビスアセチルアセトネートとの混合物(混合比は1:1)を用い、その他の条件は同一にして第1の膜化合物の単分子膜13の形成を行うと、反応時間を20分程度に短縮できる。
【0074】
なお、ここで用いることができるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等が挙げられる。
【0075】
また、用いることができる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸等が挙げられる。
【0076】
反応液の製造には、有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコーン系溶媒、及びこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコキシシラン化合物の加水分解を防止するために、乾燥剤又は蒸留により使用する溶媒から水分を除去しておくことが好ましい。また、溶媒の沸点は50〜250℃であることが好ましい。
【0077】
具体的に使用可能な溶媒としては、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
更に、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれらの混合物を用いることもできる。
【0078】
また、用いることができるフッ化炭素系溶媒としては、フロン系溶媒、フロリナート(米国3M社製)、アフルード(旭硝子株式会社製)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。更に、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機塩素系溶媒を添加してもよい。
【0079】
反応液におけるアルコキシシラン化合物の好ましい濃度は、0.5〜3質量%である。
【0080】
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った余分なアルコキシシラン化合物及び縮合触媒を除去すると、エポキシ基を有する第1の膜化合物の単分子膜13で表面が覆われたエポキシ化ガラス基板14が得られる。このようにして製造されるエポキシ化ガラス基板14の断面構造の模式図を図3(b)に示す。
【0081】
洗浄溶媒としては、アルコキシシラン化合物を溶解できる任意の溶媒を用いることができるが、安価であり、溶解性が高く、風乾により容易に除去することのできるジクロロメタン、クロロホルム、N−メチルピロリドン等が好ましい。
【0082】
反応後、ガラス基板11の表面を溶媒で洗浄せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、エポキシ化ガラス基板14の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、ガラス基板11の表面に必ずしも全てが共有結合により固定されているわけではないが、エポキシ基を含んでいるため、第1の膜化合物の単分子膜13と同様の反応性を有している。そのため、洗浄を行わなくても、工程B以降の製造工程に特に支障をきたすことはない。
【0083】
なお、本実施の形態においては、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を用いたが、直鎖状アルキレン基の一方の末端にアミノ基を、他方の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ有し、下記の一般式(化5)で表されるアルコキシシラン化合物を用いてもよい。なお、イミノ基やアミノ基と反応するカップリング剤としては、両端にグリシジル基を有するものが使用できる。
【0084】
【化5】

【0085】
上式において、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
用いることのできるアミノ基を有する膜化合物の具体例としては、下記(21)〜(28)に示したアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0086】
(21) H2N(CH2)Si(OCH)3
(22) H2N(CH2)Si(OCH)3
(23) H2N(CH2)Si(OCH)3
(24) H2N(CH2)Si(OCH)3
(25) H2N(CH2)Si(OC)3
(26) H2N(CH2)Si(OC)3
(27) H2N(CH2)Si(OC)3
(28) H2N(CH2)Si(OC)3
【0087】
ただし、この場合には、反応液において用いることのできる縮合触媒のうち、スズ(Sn)塩を含む化合物は、アミノ基と反応して沈殿を生成するため、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物に対しては縮合触媒として用いることができない。
したがって、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合には、カルボン酸スズ塩、カルボン酸エステルスズ塩、カルボン酸スズ塩ポリマー、カルボン酸スズ塩キレートを除き、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の場合と同様の化合物を単独で又は2種類以上を混合して縮合触媒として用いることができる。
用いることのできる助触媒の種類及びそれらの組み合わせ、溶媒の種類、アルコキシシラン化合物、縮合触媒、及び助触媒の濃度、反応条件並びに反応時間についてはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0088】
本実施の形態においては、ガラス基材を基材として用いたが、その表面に水酸基、アミノ基等の活性水素基を有するガラス以外の材料よりなる基材についても、膜化合物としてアルコキシシラン化合物を用いることができる。この様な基材の具体例としては、セラミックス、ほうろう、ITO(インジウムスズオキシド)等の透明電極、アルミニウム板、銅板、アルミニウム板、シリコンウェーハ等の金属板等が挙げられる。
また、基材材料として合成樹脂を用いる場合には、プラズマ処理等により活性水素基を有する化合物をグラフトする等の処理を行うことにより、膜化合物としてアルコキシシラン化合物を用いることができる。
【0089】
本実施の形態においては、第1の膜化合物として基材の表面の活性水素基と縮合反応するシラン化合物を用いたが、例えば、金メッキ層を有する基材の場合には、膜化合物として金原子と強い結合を形成するチオール誘導体又はトリアジンチオール誘導体を用いることができる。
(以上工程A)
【0090】
工程Bでは、パターン部分22を覆うマスク21を通して、第1の膜化合物の単分子膜13が形成されたガラス基板11の表面を露光して、レーザーアブレーション法によりパターン部分22にのみ選択的に第1の膜化合物の単分子膜13を残した、パターン形成処理を行う(図4参照)。
露光に用いるマスクとしては、半導体素子の製造等におけるフォトリソグラフィーに用いられるレチクル用材料等の、光を透過せず、少なくとも露光の間は照射光による損傷を受けない任意の材質のものを用いることができる。また、露光は等倍露光でもよく、微細なパターンを形成する場合等には縮小投影露光を用いてもよい。
【0091】
光源としては、XeF(353nm)、XeCl(308nm)、KrF(248nm)、ArF(193nm)等のエキシマレーザー等のレーザー光が好ましく用いられる。図4(a)に示すように、レーザー光の照射により、照射した部位の温度が上昇し、露光した部分を被覆していたアルコキシシラン化合物が選択的に除去され(図4中の23)る。その結果、パターン部分22にのみ第1の膜化合物の単分子膜13が残る(図4(a)参照)。
照射した部分以外への入熱を抑制するため、パルスレーザーを用いるパルスレーザーアブレーション法により、エポキシ化された膜化合物を除去することが好ましい。
レーザー光の強度は、0.1〜0.3J・cm−2であることが好ましい。レーザー光の強度が0.1J・cm−2未満である場合には、十分にエポキシ基を有する膜化合物を除去することができず、0.3J・cm−2を上回る場合には、エポキシ化ガラス基板14のガラス部材が除去されるため、いずれも好ましくない。
また、レーザー光の強度が上記範囲内である場合、パルス幅としては5〜50nsが好ましい。
【0092】
上記の実施の形態においては、パルスレーザーアブレーション法により第1の膜化合物を除去したが、電子線、X線等の他のエネルギー照射を用いてもよい。また、マスクを通して露光する代わりに、直接第1の膜化合物の単分子膜13に電子ビーム等で選択的にパターンを描画することにより、パターン以外の部分の第1の膜化合物を除去してもよい。
【0093】
変形例に係るパターン形成処理を図4(b)に示す。このパターン形成処理においては、第1の膜化合物の単分子膜13の表面に光重合開始剤を塗布した後、パターン部分24を覆うマスク21を通して、第1の膜化合物の単分子膜13の表面に光照射を行い、露光した部分のエポキシ基を開環重合させ、パターン部分24にのみ第1の膜化合物の単分子膜13を残す。
用いることができる光重合開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩等のカチオン性光重合開始剤が挙げられる。光源としては、高圧水銀灯、キセノンランプ等が挙げられる。
(以上工程B)
【0094】
工程Cでは、工程Aにおいて用いたものと同様のアルコキシシラン化合物(エポキシ基を有する第2の膜化合物)を銀微粒子31と接触させ、その表面にエポキシ基を有する第2の膜化合物の単分子膜33を形成する。
【0095】
用いることのできる銀微粒子31の粒径に特に制限はないが、10nm〜0.1mmの範囲内であることが好ましい。銀微粒子31の粒径が10nm未満である場合には、膜化合物の分子サイズの影響が無視できなくなり、粒径が0.1mmを上回る場合には、銀微粒子31の表面積に対する質量の割合が大きくなるため、架橋反応によりその質量を支持できなくなる。
【0096】
第2の膜化合物の単分子膜33の形成は、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基と銀微粒子31の表面の水酸基32との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合した反応液中に銀微粒子31を分散させ、室温の空気中で反応させることにより行われる。
【0097】
工程Cにおいて用いることのできるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の種類、縮合触媒、助触媒の種類及びそれらの組み合わせ、溶媒の種類、アルコキシシラン化合物、縮合触媒、及び助触媒の濃度、反応条件並びに反応時間については工程Aと同様であるので、説明を省略する。
【0098】
アルコキシシリル基と銀微粒子31の表面の水酸基32とが縮合反応(脱アルコール反応)を起こし、前記の化4で示されるような構造を有するエポキシ基を有する第2の膜化合物の単分子膜33を生成する。なお、酸素原子から延びた3本の単結合は銀微粒子31の表面又は隣接するシラン化合物のケイ素(Si)原子と結合しており、そのうち少なくとも1本は銀微粒子31の表面のケイ素原子と結合している。
なお、ハロシラン化合物を用いた場合と異なり、縮合反応の際に生成するハロゲン化水素により銀微粒子31の表面が腐食を受けることはない。
【0099】
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った余分なアルコキシシラン化合物及び縮合触媒を除去すると、図5(b)に示すように、エポキシ基を有する第2の膜化合物の単分子膜33が形成された銀微粒子31、すなわちエポキシ化銀微粒子34が得られる。
【0100】
洗浄溶媒としては、工程Aと同様の洗浄溶媒を用いることができる。
反応後、銀微粒子31の表面を溶媒で洗浄せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、エポキシ化銀微粒子34の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、銀微粒子31の表面に共有結合により固定されていないが、エポキシ基を含んでいるため、第2の膜化合物の単分子膜33と同様の反応性を有している。そのため、洗浄を行わなくても、工程D以降の製造工程に特に支障をきたすことはない。
【0101】
なお、本実施の形態においてはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を用いたが、工程Aと同様、直鎖状アルキレン基の一方の末端にアミノ基を、他方の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ有するアルコキシシラン化合物を用いてもよい。
また、本実施の形態においては工程Aと同一のアルコキシシラン化合物を用いているが、異なるアルコキシシラン化合物を用いてもよい。ただし、工程Dにおいて用いるカップリング剤のカップリング反応基と反応して結合を形成する官能基を有するものでなければならない。
【0102】
なお、本実施の形態では、導電性微粒子として銀微粒子を用いたが、他の導電性微粒子を用いることもできる。他の導電性微粒子としては、銅、ニッケル、或いは、銀メッキした貴金属や銅、ニッケルの金属微粒子、更には、導電性の金属酸化物微粒子であるITOやSnOが挙げられる。
【0103】
銀微粒子以外の導電性微粒子であっても、その表面に水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する場合には、銀の場合と同様に、第2の膜化合物としてアルコキシシラン化合物を用いることができる。
また、微粒子が、表面に活性水素基を有しない金(Au)や表面にAuメッキが施された金属微粒子等の場合には、第2の結合基として、−SH基やトリアジンチオール基を有する膜化合物(例えば、一般式HN(CH−SH(nは整数)で表される化合物(ω−アミノアルカンチオール)で、具体例としては、3−アミノプロパンチオール(前記一般式においてn=3である化合物)等が挙げられる)を用いれば、硫黄原子を介して結合したアミノ基を含む膜化合物の単分子膜が形成された金微粒子を製造することができる。勿論、アミノ基の代わりにエポキシ基を有するチオールやトリアジン誘導体を用いることもできる。
【0104】
なお、粒径が数nm〜数十nmの銀ナノ粒子を用いる場合には、体積に対する表面積の割合が増大することにより、例えば、230℃程度の低温で加熱することにより焼結が進行し、より緻密で導電性に優れた配線を形成できる。このような銀ナノ粒子を導電性微粒子として用いる場合には、焼結温度以下で銀ナノ粒子の表面から脱離するような膜化合物を用いることが好ましい。
【0105】
本実施の形態においては、第1及び第2の膜化合物として、共にエポキシ基を有する膜化合物を用いているが、両者は同一の化合物であってもよく、また異なる化合物であってもよい。更に、第1及び第2の膜化合物が異なる官能基(例えば、一方がエポキシ基で他方がイソシアネート基)を有していてもよい。
(以上工程C)
【0106】
工程Dでは、まず、第1の膜化合物の単分子膜13が表面に形成されたガラス基板11、すなわちエポキシ化ガラス基板14の表面に、2−メチルイミダゾールを接触させ、エポキシ基とアミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介して、その表面に2−メチルイミダゾールの単分子膜15を形成し、次いで、第2の膜化合物の単分子膜33が表面に形成された銀微粒子31、すなわちエポキシ化銀微粒子34を接触させ、エポキシ基とイミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介して、ガラス基板11の表面に銀微粒子31を結合固定し、次いで、固定されなかった銀微粒子31を除去する。
【0107】
2−メチルイミダゾールはエポキシ基と反応するアミノ基及びイミノ基をそれぞれ1−位及び3−位に有しており、下記の化6に示すような架橋反応により結合を形成する。
【0108】
【化6】

【0109】
2−メチルイミダゾールの単分子膜15の形成は、2−メチルイミダゾールと溶媒とを混合した反応液をガラス基板11の表面に形成された第1の膜化合物の単分子膜13の上に塗布し、加熱して反応させることにより行われる。塗布は、ドクターブレード法、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法等の任意の方法により行うことができる。
反応液の製造には、2−メチルイミダゾールが可溶な任意の溶媒を用いることができるが、価格、室温での揮発性、及び毒性等を考慮すると、イソプロピルアルコール、エタノール等の低級アルコール系溶媒が好ましい。
2−メチルイミダゾールの添加量、塗布する溶液の濃度、反応温度及び反応時間は、用いる基材及び導電性微粒子の種類、形成する配線の膜厚等に応じて適宜調節される。
【0110】
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った余分な2−メチルイミダゾールを除去すると、エポキシ基と2−メチルイミダゾールのアミノ基との反応により形成された結合を介して2−メチルイミダゾールの単分子膜15が形成される。
このようにして得られた、2−メチルイミダゾールの単分子膜15が表面に形成されたガラス基板11の表面に、第2の膜化合物の単分子膜33が表面に形成された銀微粒子31の分散液を塗布後加熱し、エポキシ基と2−メチルイミダゾールに由来するイミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介して銀微粒子31をガラス基板11の表面に結合固定し、単層の銀微粒子層を有する単層配線1を製造する。
加熱温度は、100〜200℃が好ましい。加熱温度が100℃未満だと、カップリング反応の進行に長時間を要し、200℃を上回ると、エポキシ基を有する単分子膜13、33及び2−メチルイミダゾールの単分子膜15の分解反応が起こり、均一な単層配線1が得られない。
【0111】
反応後、水やアルコール等の溶媒で洗浄することにより、ガラス基板11の表面に結合固定されなかった銀微粒子31を除去する。
【0112】
本実施の形態においては、カップリング剤として2−メチルイミダゾールを用いたが、下記化7で表される任意のイミダゾール誘導体を用いることができる。
【0113】
【化7】

【0114】
化7で表されるイミダゾール誘導体の具体例としては、下記(31)〜(38)に示すものが挙げられる。
(31) 2−メチルイミダゾール(R=Me、R=R=H)
(32) 2−ウンデシルイミダゾール(R=C1123、R=R=H)
(33) 2−ペンタデシルイミダゾール(R=C1531、R=R=H)
(34) 2−メチル−4−エチルイミダゾール(R=Me、R=Et、R=H)
(35) 2−フェニルイミダゾール(R=Ph、R=R=H)
(36) 2−フェニル−4−エチルイミダゾール(R=Ph、R=Et、R=H)
(37) 2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(R=Ph、R=Me、R=CHOH)
(38) 2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール(R=Ph、R=R=CHOH)
なお、Me、Et、及びPhは、それぞれメチル基、エチル基、及びフェニル基を表す。
【0115】
イミダゾール誘導体以外では、メルカプトトリアゾール、メラミン、イソシアヌル酸、トリアジン、バルビツール酸、パラバン酸、ウラシル、チミン等の2個以上の窒素を含む複素環化合物を用いることができる。更に、イミダゾール−銅錯体等のイミダゾール−金属錯体を用いてもよい。
【0116】
また、エポキシ樹脂のカップリング剤として用いられる無水フタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物、ジシアンジアミド、ノボラック等のフェノール誘導体等の化合物をカップリング剤として用いてもよい。この場合、カップリング反応を促進するためにイミダゾール誘導体を触媒として用いてもよい。
【0117】
なお、本実施の形態においては官能基としてエポキシ基を有する膜化合物を用いた場合について説明しているが、官能基としてアミノ基又はイミノ基を有する膜化合物を用いる場合には、カップリング反応基として2若しくは3以上のエポキシ基又は2若しくは3以上のイソシアネート基を有するカップリング剤を用いる。イソシアネート基を有する化合物の具体例としては、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。
これらのジイソシアネート化合物の添加量は、2−メチルイミダゾールの場合と同様、エポキシ化銀微粒子の5〜15重量%が好ましい。この場合、反応液の製造に用いることのできる溶媒としては、キシレン等の芳香族有機溶媒が挙げられる。
また、イミノ基やアミノ基を有する膜化合物を用いる場合、カップリング剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル等の2又は3以上のエポキシ基を有する化合物を用いることもできる。
(以上工程D)
【0118】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る積層配線3について説明する。
図1(b)に示すように、積層配線3において、銀微粒子層はガラス基板11側から空気との界面側に向かって第1層から第n層(nは2以上の整数で、本実施の形態においてはn=2)まで順次積層している。
【0119】
ガラス基板11の表面には、分子の一端にエポキシ基を有する第1の膜化合物の単分子膜13が形成され、更にその表面には、2−メチルイミダゾールのアミノ基とエポキシ基とのカップリング反応により形成された結合を介して固定された2-メチルイミダゾールの単分子膜15が形成されている。
第1層目の銀微粒子層を形成している銀微粒子31の表面には、分子の一端にエポキシ基を有する第2の膜化合物の単分子膜33が形成されている。
第2層目の銀微粒子層を形成している銀微粒子41の表面は、分子の一端にエポキシ基(第3の官能基の一例)を有する第3の膜化合物の単分子膜43(被膜の一例)が形成され、2−メチルイミダゾール(第2のカップリング剤の一例)のアミノ基(第3のカップリング反応基の一例)とエポキシ基とのカップリング反応により形成された結合を介して固定された2-メチルイミダゾールの単分子膜45(被膜の一例)が更に形成されている。
【0120】
ガラス基板11と第1層目の銀微粒子層を形成する銀微粒子31、及び第1層目の銀微粒子層を形成する銀微粒子31と第2層目の銀微粒子層を形成する銀微粒子41との間は、エポキシ基と2−メチルイミダゾールのアミノ基又はイミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介して互いに結合固定されている。
なお、図1(b)に示すように、2-メチルイミダゾールの単分子膜45の被膜が表面に形成された銀微粒子41は、第1層目の銀微粒子層を形成している銀微粒子31(エポキシ化銀微粒子34)の側面にも結合することができるが、図1(b)では、説明のために、実際のパターンの大きさに対して導電性微粒子の大きさを誇張して描写しているので、実際にはそれによりパターン形状が損なわれることは殆どない。
【0121】
積層配線3の製造方法は、図3(a)、(b)、図4(a)、図5(a)、(b)、及び図1(b)に示すように、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含む溶液をガラス基板11の表面に接触させ、アルコキシシリル基(第1の結合基の一例)とガラス基板11の表面の水酸基12との間で結合を形成させ、ガラス基板11の表面に第1の膜化合物の単分子膜13を形成する工程A(図3参照)と、パターン部分を覆うマスク21を通して第1の膜化合物の単分子膜13の表面に光照射するパターン形成処理を行いパターン部分22にのみエポキシ基を残したパターン形成処理を行う工程B(図4参照)と、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を銀微粒子31の表面に接触させ、アルコキシシリル基と銀微粒子31の表面の水酸基32との間で結合を形成させ、銀微粒子31の表面に第2の膜化合物の単分子膜33を形成する工程C(図5参照)と、図3(b)に示すように、まず、パターン形成処理を行ったガラス基板11に、2−メチルイミダゾールを接触させて、エポキシ基とアミノ基とをカップリング反応により形成された結合を介して、パターン部分22の表面にのみ選択的に2−メチルイミダゾールの単分子膜15を形成させ、次いで、2−メチルイミダゾールの単分子膜15が形成されたガラス基板11と第2の膜化合物の単分子膜33が形成された銀微粒子31とを接触させ、エポキシ基とイミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介してパターン部分22の表面にのみ選択的に銀微粒子31を固定し、次いで固定されなかった銀微粒子31を除去する工程Dとを有している。
【0122】
更に、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含む溶液を銀微粒子41の表面に接触させ、アルコキシシリル基(第3の結合基の一例)と銀微粒子41の表面の水酸基との間で結合を形成させ、その表面に第3の膜化合物の単分子膜43を形成し、次いで、第3の膜化合物の単分子膜43の表面に、2−メチルイミダゾール(第2のカップリング剤の一例)を接触させ、エポキシ基(第3の官能基の一例)とアミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介して固定された2−メチルイミダゾールの形成する単分子膜45(被膜の一例)被膜を更に形成する工程Eと、銀微粒子層の表層に位置する、第2の膜化合物の単分子膜33が表面に形成された銀微粒子31の表面に、2−メチルイミダゾールの単分子膜45が表面に形成された銀微粒子41を接触させ、エポキシ基とイミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介して、2−メチルイミダゾールの単分子膜45が表面に形成された銀微粒子41を第2の膜化合物の単分子膜33が表面に形成された銀微粒子31の銀微粒子層の上に結合固定し、次いで、結合固定されなかった銀微粒子41を除去する工程Fとを有する。
【0123】
以下、工程A〜Fについてより詳細に説明する。
工程A〜Dは、単層配線1の製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0124】
工程Eでは、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含む溶液を銀微粒子41の表面に接触させ、アルコキシシリル基と銀微粒子41の表面の水酸基との間で結合を形成させ、その表面に第3の膜化合物の単分子膜43を形成し、次いで、第3の膜化合物の単分子膜43の表面に、2−メチルイミダゾールを接触させ、エポキシ基とアミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介して固定された2−メチルイミダゾールの形成する単分子膜45を更に形成する。
用いられる2−メチルイミダゾール溶液の濃度、反応条件等は、溶液を塗布するのではなく、銀微粒子41を溶液中に分散させて加熱することを除くと、工程Dにおけるガラス基板11の表面に2−メチルイミダゾールの単分子膜15を形成する場合と同様であるので、詳しい説明を省略する。他に用いることのできるカップリング剤についても、工程Dと同様である。
【0125】
本実施の形態においては、第3の膜化合物として、共にエポキシ基を有する膜化合物を用いているが、第1及び第2の膜化合物の一方又は双方と同一の化合物であってもよく、また異なる化合物であってもよい。更に、第1及び第2の膜化合物と異なる官能基(例えば、アミノ基)を有していてもよい。
(以上工程E)
【0126】
工程Fでは、銀微粒子層の表層に位置する、第2の膜化合物の単分子膜33が表面に形成された銀微粒子31の表面に、2−メチルイミダゾールの単分子膜45が表面に形成された銀微粒子41を接触させ、エポキシ基とイミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介して、2−メチルイミダゾールの単分子膜45が表面に形成された銀微粒子41を第2の膜化合物の単分子膜33が表面に形成された銀微粒子31の銀微粒子層の上に結合固定し、次いで、結合固定されなかった銀微粒子41を除去する。
工程Fにおける反応条件については、工程Eと同様であるので、詳しい説明を省略する。
(以上工程F)
【0127】
本実施の形態においては、銀微粒子層を2層有する配線の調製について説明したが、n≧3の場合には、銀微粒子層の表層に位置する、2−メチルイミダゾールの単分子膜45が表面に形成された銀微粒子41の表面に第2の膜化合物の単分子膜33が表面に形成された銀微粒子31を接触させ、エポキシ基とイミノ基とのカップリング反応により結合を形成させ、第2の膜化合物の単分子膜33が表面に形成された銀微粒子31を2−メチルイミダゾールの単分子膜45が表面に形成された銀微粒子41の銀微粒子層の上に結合固定し、次いで、結合固定されなかった銀微粒子31を除去する工程Gを更に有している。なお、工程Gにおける反応条件については、工程Eと同様であるので、詳しい説明を省略する。
更に、n≧4の場合には、n層の銀微粒子層が形成されるまで工程F及び工程Gを交互に繰り返し行う工程Hを更に有する。なお、工程Hは、工程F及び工程Gのいずれで終えてもよい。例えば、n=4の場合、工程Hにおいて、工程Fのみを1度だけ行う。n=5の場合には、工程Fの後に工程Gを行い、n=6の場合には、工程Gを行った後に更にもう1度工程Fを行う。
【0128】
なお、本実施の形態においては、基材及び銀微粒子の表面を被覆する被膜を形成する膜化合物として3種類の膜化合物を用いているが、これらは全て同一の化合物であってもよい。或いは、基材及び銀微粒子層の各層を形成している銀微粒子の表面は、それぞれ異なる膜化合物の被膜で被覆されていてもよい。
また、本実施の形態において、第1及び第2のカップリング剤として共に2−メチルイミダゾールを用いているが、それぞれ異なるカップリング剤を用いてもよい。或いは、基材と第1番目の銀微粒子層との間、及び各銀微粒子層の間毎にそれぞれ異なるカップリング剤を用いてもよい。
【0129】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る単層配線2について説明する。
図2(a)に示すように、単層配線2は、ガラス基板11の表面のパターン部分22にのみ銀微粒子31が配列した銀微粒子層が1層結合固定されたパターン状の配線である。
ガラス基板11の表面のパターン部分22には、分子の一端にエポキシ基を有し、他端でパターン部分の表面に結合した第1の膜化合物の単分子膜13が形成されている。
銀微粒子31の表面には、分子の一端にエポキシ基を有し、銀微粒子31の表面に結合した第2の膜化合物の単分子膜33が形成され、更にその表面には、エポキシ基とカップリング反応して結合を形成するアミノ基及びイミノ基とを分子内に1つずつ有する2−メチルイミダゾールのアミノ基(第2のカップリング反応基の一例)とエポキシ基とのカップリング反応により形成された結合を介して固定された2-メチルイミダゾール(第1のカップリング剤の一例)の単分子膜35が形成されている。
ガラス基板11と銀微粒子31との間は、エポキシ基と2−メチルイミダゾールのアミノ基又はイミノ基(第1のカップリング反応基の一例)とのカップリング反応により形成された結合を介して互いに結合固定されている。
【0130】
単層配線2の製造方法は、図3(a)、(b)、図4(a)、図5(a)、(b)、及び図2(a)に示すように、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物(第1の膜化合物の一例)を含む溶液をガラス基板11の表面に接触させ、アルコキシシリル基(第1の結合基の一例)とガラス基板11の表面の水酸基12との間で結合を形成させ、ガラス基板11の表面に第1の膜化合物の単分子膜13を形成する工程A(図3参照)と、パターン部分を覆うマスク21を通して、第1の膜化合物の単分子膜13の表面に光照射(エネルギー線の照射)するパターン形成処理を行い、パターン部分22にのみエポキシ基を残したパターン形成処理を行う工程B(図4参照)と、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物(第2の膜化合物の一例)を銀微粒子31の表面に接触させ、アルコキシシリル基(第2の結合基の一例)と銀微粒子31の表面の水酸基32との間で結合を形成させ、銀微粒子31の表面に第2の膜化合物の単分子膜33を形成する工程C(図5参照)と、まず、表面に第2の膜化合物の単分子膜33が形成された銀微粒子31に、2−メチルイミダゾールを接触させて、エポキシ基とアミノ基とをカップリング反応により形成された結合を介して、第2の膜化合物の単分子膜33の表面に2−メチルイミダゾールの単分子膜35を形成させ、次いで、パターン部分22にのみ第1の膜化合物の単分子膜13が形成されたガラス基板11と2−メチルイミダゾールの単分子膜35が形成された銀微粒子31とを接触させ、エポキシ基とイミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介してパターン部分22の表面にのみ選択的に銀微粒子31を固定し、次いで、固定されなかった銀微粒子31を除去する工程Dとを有する。
【0131】
次に、本発明の第4の実施の形態に係る積層配線4について説明する。
図2(b)に示すように、積層配線4においては、銀微粒子層は、ガラス基板11側から空気との界面側に向かって第1層から第n層(nは2以上の整数で、本実施の形態においてはn=2)まで順次積層している。
【0132】
ガラス基板11の表面には、分子の一端にエポキシ基を有する第1の膜化合物の単分子膜13が形成されている。
第1層目の銀微粒子層を形成している銀微粒子31の表面には、分子の一端にエポキシ基を有する第2の膜化合物の単分子膜33が形成され、更にその表面には、2−メチルイミダゾールのアミノ基とエポキシ基とのカップリング反応により形成された結合を介して固定された2-メチルイミダゾールの単分子膜35が形成されている。
第2層目の銀微粒子層を形成している銀微粒子41の表面は、分子の一端にエポキシ基(第1の官能基の一例)を有し他端に第3の結合基を有する第3の膜化合物の単分子膜46(被膜の一例)が形成されている。
【0133】
ガラス基板11と第1層目の銀微粒子層を形成する銀微粒子31、及び第1層目の銀微粒子層を形成する銀微粒子31と第2層目の銀微粒子層を形成する銀微粒子41との間は、エポキシ基と2−メチルイミダゾールのアミノ基又はイミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介して互いに結合固定されている。
なお、図2(b)に示すように、第3の膜化合物の単分子膜46の被膜が表面に形成された銀微粒子41は、第1層目の銀微粒子層を形成している、2-メチルイミダゾールの単分子膜35が形成された銀微粒子31の側面にも結合することができるが、図2(b)では、説明のために、実際のパターンの大きさに対して導電性微粒子の大きさを誇張して描写しているので、実際にはそれによりパターン形状が損なわれることは殆どない。
【0134】
積層配線4の製造方法は、図3(a)、(b)、図4(a)、図5(a)、(b)、及び図2(b)に示すように、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含む溶液をガラス基板11の表面に接触させ、アルコキシシリル基とガラス基板11の表面の水酸基12との間で結合を形成させ、ガラス基板11の表面に第1の膜化合物の単分子膜13を形成する工程A(図3参照)と、パターン部分を覆うマスク21を通して第1の膜化合物の単分子膜13の表面に光照射するパターン形成処理を行い、パターン部分22にのみエポキシ基を残したパターン形成処理を行う工程B(図4参照)と、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を銀微粒子31の表面に接触させ、アルコキシシリル基と銀微粒子31の表面の水酸基32との間で結合を形成させ、銀微粒子31の表面に第2の膜化合物の単分子膜33を形成する工程C(図5参照)と、まず、表面に第2の膜化合物の単分子膜33が形成された銀微粒子31に、2−メチルイミダゾールを接触させてエポキシ基とアミノ基(第2のカップリング反応基の一例)とをカップリング反応により形成された結合を介して、第2の膜化合物の単分子膜33の表面に2−メチルイミダゾールの単分子膜35を形成させ、次いで、パターン部分22にのみ第1の膜化合物の単分子膜13が形成されたガラス基板11と2−メチルイミダゾールの単分子膜35が形成された銀微粒子31とを接触させ、エポキシ基とイミノ基(第1のカップリング反応基の一例)とのカップリング反応により形成された結合を介してパターン部分22の表面にのみ選択的に銀微粒子31を固定し、次いで固定されなかった銀微粒子31を除去する工程Dとを有している。
【0135】
更に、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含む溶液を銀微粒子41の表面に接触させ、アルコキシシリル基(第3の結合基の一例)と銀微粒子41の表面の水酸基との間で結合を形成させ、その表面に第3の膜化合物の単分子膜46を形成する工程Eと、銀微粒子層の表層に位置する、2−メチルイミダゾールの単分子膜35が表面に形成された銀微粒子31の表面に、第3の膜化合物の単分子膜46が表面に形成された銀微粒子41を接触させ、エポキシ基とイミノ基とのカップリング反応により形成された結合を介して、第3の膜化合物の単分子膜46が表面に形成された銀微粒子41を2−メチルイミダゾールの単分子膜35が表面に形成された銀微粒子31の銀微粒子層の上に結合固定し、次いで、結合固定されなかった銀微粒子41を除去する工程Fとを有する。
【0136】
工程A〜Fについては、第1の実施の形態に係る単層配線1及び第2の実施の形態に係る積層配線3の場合と同様であるので、詳しい説明は省略する。
なお、積層配線4の製造方法においても、n≧3の場合、銀微粒子層の表層に位置する、第3の膜化合物の単分子膜46が表面に形成された銀微粒子41の表面に2−メチルイミダゾールの単分子膜35が表面に形成された銀微粒子31を接触させ、エポキシ基とイミノ基とのカップリング反応により結合を形成させ、2−メチルイミダゾールの単分子膜35が表面に形成された銀微粒子31を第3の膜化合物の単分子膜46が表面に形成された銀微粒子41の銀微粒子層の上に結合固定し、次いで結合固定されなかった銀微粒子31を除去する工程Gを更に有している。
更に、n≧4の場合には、n層の銀微粒子層が形成されるまで工程F及び工程Gを交互に繰り返し行う工程Hを更に有する。なお、工程Hは、工程F及び工程Gのいずれで終えてもよい。例えば、n=4の場合、工程Hにおいて、工程Fのみを1度だけ行う。n=5の場合には、工程Fの後に工程Gを行い、n=6の場合には、工程Gを行った後に更にもう1度工程Fを行う。
【0137】
なお、本実施の形態においては、基材及び銀微粒子の表面を被覆する被膜を形成する膜化合物として3種類の膜化合物を用いているが、これらは全て同一の化合物であってもよい。或いは、基材及び銀微粒子層の各層を形成している銀微粒子の表面は、それぞれ異なる膜化合物の被膜で被覆されていてもよい。
また、本実施の形態において、1種類のカップリング剤(2−メチルイミダゾール)を用いているが、基材と第1番目の銀微粒子層との間、及び各銀微粒子層の間毎にそれぞれ異なるカップリング剤を用いてもよい。
【0138】
このようにして得られた単層配線1、3及び積層配線2、4は、0.1〜0.25×10S・cm−1程度の電気伝導度を有している。これは、バルク銀の電気伝導度(約0.6×10S・cm−1)にほぼ匹敵する値である。単層配線1、3を形成しているエポキシ化銀微粒子34は、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜33でその表面が被覆されているが、その厚さは高々数nmであり、導電性には殆ど影響を与えていないと考えられる。
同様に、積層配線2、4を形成しているエポキシ化銀微粒子は、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜33、43でその表面が被覆されているが、その厚さは高々数nmであり、導電性には殆ど影響を与えていないと考えられる。
【0139】
単層配線1、3及び積層配線2、4が用いられた電子部品の一例としては、半導体集積回路、プリント基板、多層基板におけるビア導体、タッチパネルにおける透明電極等が挙げられる。電子機器としては、これらの電子部品が用いられた任意の電子機器が挙げられる。
【実施例】
【0140】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
【0141】
実施例1:ガラス基板表面へのエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜の形成
ガラス基板を用意し、洗浄後よく乾燥した。
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(化8、信越化学工業株式会社製)0.99重量部、及びジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン溶媒に溶解し、反応液を調製した。
【0142】
【化8】

【0143】
このようにして得られた反応液をガラス基板に塗布し、空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、余分なアルコキシシラン化合物及びジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去した。この方法により、ガラス基板の表面にエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜(膜厚約1nm)を形成できた。
【0144】
実施例2:パターン形成処理
実施例1でガラス基板の表面に形成したエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜に、形成されるパターン部分を覆うマスクを介してKrFエキシマレーザー(波長248nm、パルス幅10ns、レーザー強度0.15J/cm)を照射し、パターン部分以外の部分を被覆するエポキシ基を有する単分子膜を、レーザーアブレーションにより除去した。この方法によりパターン形成処理を行うことができた。
【0145】
あるいは、カチオン性光重合開始剤であるイルガキュア(登録商標)250((4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートと炭酸プロピレンとの3:1混合物、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)をMEK(メチルエチルケトン)で希釈して、ガラス基板の表面に形成したエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜の表面に塗布した後、形成されるパターン部分を覆うマスクを介して遠紫外線を照射し、パターン部分以外の部分を被覆するエポキシ基を有する単分子膜のエポキシ基を開環重合させることによっても、パターン形成処理を行うことができた。
【0146】
実施例3:銀微粒子表面へのエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜の形成
粒径が100nm程度の銀微粒子を用意し、よく乾燥した。
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(化8)0.99重量部、及びジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン溶媒に溶解し、反応液を調製した。
【0147】
このようにして得られた反応液中に銀微粒子を混合し、撹拌しながら空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、トリクレンで洗浄し、余分なアルコキシシラン化合物及びジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去した。この方法により、銀微粒子の表面にも水酸基が存在するので、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜を形成できた。
【0148】
実施例4:ガラス基板表面への2−メチルイミダゾールの単分子膜の形成
実施例2でパターン形成処理を行ったガラス基板の表面に、2−メチルイミダゾールのエタノール溶液を塗布し、100℃で加熱すると、エポキシ基と2−メチルイミダゾールのアミノ基とが反応して2−メチルイミダゾールの単分子膜が形成された。エタノールで洗浄することにより余分な2−メチルイミダゾールを除去した。
【0149】
実施例5:銀微粒子表面への2−メチルイミダゾールの単分子膜の形成
実施例3で表面に2−メチルイミダゾールの単分子膜を形成した銀微粒子を、2−メチルイミダゾールのエタノール溶液中に分散して、100℃で加熱すると、エポキシ基と2−メチルイミダゾールのアミノ基とが反応して、銀微粒子表面に2−メチルイミダゾールの単分子膜を形成できた。その後、エタノールで洗浄することにより余分な2−メチルイミダゾールを除去した。
【0150】
実施例6:単層配線及び積層配線の調製(1)
実施例4で、2−メチルイミダゾールの単分子膜を形成したガラス基板の表面に、実施例3で表面にエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜を形成した銀微粒子のエタノール分散液を塗布し、100℃で加熱した。反応後、エタノールで洗浄し、余分な銀微粒子を除去した。このようにして得られた単層配線の膜厚は、銀微粒子の平均粒径とほぼ同一の100nmであり、極めて均一性が高いため、干渉色は観測されなかった。
このようにして得られた、銀微粒子層が1層積層した単層配線の表面に、実施例5で表面に2−メチルイミダゾールの単分子膜を更に形成した銀微粒子のエタノール分散液を塗布し、100℃で加熱した。反応後、エタノールで洗浄し、余分な銀微粒子を除去すると、2層の銀微粒子層が積層した積層配線が得られた。
また、積層配線について電気伝導度を測定したところ、約0.2×10S・cm−1という測定値を得た。
【0151】
実施例7:単層配線及び積層配線の調製(2)
実施例2でパターン形成処理したエポキシ化ガラス基板の表面に、表面に2−メチルイミダゾールの単分子膜を更に形成した銀微粒子のエタノール分散液を塗布し、100℃で加熱した。反応後、水で洗浄し、余分な銀微粒子を除去した。
このようにして得られた、銀微粒子層が1層積層した単層配線の表面に、実施例3で表面に3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの単分子膜を形成した銀微粒子のエタノール分散液を更に塗布し、100℃で加熱した。反応後、水で洗浄し、余分な銀微粒子を除去すると、2層の銀微粒子層が積層した積層配線が得られた。このようにして得られた積層配線についても電気伝導度を測定したところ、約0.2×10S・cm−1という実施例6と同様の測定値を得た。
【0152】
なお、単層配線及び積層配線が形成された基板を用いた電子部品及び電子機器は、それぞれ公知の方法を用いて製造できるので、詳しい説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】(a)は本発明の第1の実施の形態に係るパターン状の単層配線の断面構造を模式的に表した説明図、(b)は本発明の第2の実施の形態に係るパターン状の積層配線の断面構造を模式的に表した説明図である。
【図2】(a)は本発明の第3の実施の形態に係るパターン状の単層配線の断面構造を模式的に表した説明図、(b)は本発明の第4の実施の形態に係るパターン状の積層配線の断面構造を模式的に表した説明図である。
【図3】本発明の第1〜第4の実施の形態に係るパターン状の配線の製造方法において、ガラス基板の表面に第1の膜化合物の被膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前のガラス基板の断面構造、(b)はエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜が形成されたガラス基板の断面構造をそれぞれ表す。
【図4】(a)は、本発明の第1〜第4の実施の形態に係る配線の製造方法におけるパターン形成処理を行う工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(b)は、変形例に係るパターン形成処理を行う工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図である。
【図5】本発明の第1〜第4の実施の形態に係る配線の製造方法において、銀微粒子の表面に第2の膜化合物の被膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前の銀微粒子の断面構造、(b)はエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜が形成された銀微粒子の断面構造をそれぞれ表す。
【符号の説明】
【0154】
1、2:単層配線、3、4:積層配線、11:ガラス基板、12:水酸基、13:第1の膜化合物の単分子膜、14:エポキシ化ガラス基板、15:2−メチルイミダゾールの単分子膜、21:マスク、22:パターン部分、23:除去されたアルコキシシラン化合物、24:パターン部分、31:銀微粒子、32:水酸基、33:第2の膜化合物の単分子膜、34:エポキシ化銀微粒子、35:2−メチルイミダゾールの単分子膜、41:銀微粒子、43:第3の膜化合物の単分子膜、45:2−メチルイミダゾールの単分子膜、46:第3の膜化合物の単分子膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面のパターン部分にのみ導電性微粒子が配列した導電性微粒子層が1層結合固定されたパターン状の配線であって、
前記基材の表面の前記パターン部分には、分子の一端に第1の官能基を有し、他端で該パターン部分の表面に結合した第1の膜化合物の被膜が形成され、
前記導電性微粒子の表面には、分子の一端に第2の官能基を有し、他端で該導電性微粒子の表面に結合した第2の膜化合物の被膜が形成され、
前記導電性微粒子は、前記第1の官能基とカップリング反応して結合を形成する少なくとも1つの第1のカップリング反応基と、前記第2の官能基とカップリング反応して結合を形成する少なくとも1つの第2のカップリング反応基とを有する第1のカップリング剤と、前記第1及び前記第2の官能基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記基材上に固定されていることを特徴とする配線。
【請求項2】
請求項1記載の配線において、前記第1の膜化合物と前記第2の膜化合物とが同一の化合物であることを特徴とする配線。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の配線において、前記第1及び第2の膜化合物の形成する被膜の一方又は双方が単分子膜であることを特徴とする配線。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線において、前記カップリング反応により形成された結合が、アミノ基又はイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であることを特徴とする配線。
【請求項5】
基材の表面のパターン部分にのみ、導電性微粒子が配列した導電性微粒子層が、前記基材側から空気との界面側に向かって第1層から第n層(nは2以上の整数)まで順次積層したパターン状の配線であって、
前記基材の表面の前記パターン部分には、分子の一端に第1の官能基を有し、他端で該パターン部分の表面に結合した第1の膜化合物の被膜が形成され、
前記導電性微粒子の第1層の表面には、分子の一端に第2の官能基を有し、他端で該導電性微粒子の表面に結合した第2の膜化合物の被膜が形成され、
第x番目(xは整数で、2≦x≦n)の前記導電性微粒子層を形成している前記導電性微粒子の表面は、第(x+1)の官能基を有する第(x+1)の膜化合物の形成する被膜で被覆され、
前記導電性微粒子の第1層は、前記第1の官能基とカップリング反応して結合を形成する少なくとも1つの第1のカップリング反応基と、前記第2の官能基とカップリング反応して結合を形成する少なくとも1つの第2のカップリング反応基とを有する第1のカップリング剤と、前記第1及び前記第2の官能基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記基材上に固定されており、
前記導電性微粒子層の第(x−1)層と第x層は、第xの官能基とカップリング反応して結合を形成する少なくとも1つの第xのカップリング反応基と、前記第(x+1)の官能基とカップリング反応して結合を形成する少なくとも1つの第(x+1)のカップリング反応基とを有する第xのカップリング剤と、前記第xの官能基と前記第xのカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合、及び前記第(x+1)の官能基と前記第(x+1)のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して互いに固定されていることを特徴とする配線。
【請求項6】
請求項5記載の配線において、前記第1〜第(n+1)の膜化合物、並びに前記第1〜第nのカップリング剤がそれぞれ同一の化合物であることを特徴とする配線。
【請求項7】
請求項5及び6のいずれか1項に記載の配線において、前記第1〜第(n+1)の膜化合物が形成する被膜が全て単分子膜であることを特徴とする配線。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の配線において、前記カップリング反応により形成された結合が、アミノ基又はイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であることを特徴とする配線。
【請求項9】
基材の表面のパターン部分にのみ導電性微粒子が配列した導電性微粒子層が結合固定されたパターン状の配線を製造する方法であって、
分子の両端にそれぞれ第1の官能基及び第1の結合基を有する第1の膜化合物を含む溶液を前記基材の表面に接触させ、前記第1の結合基と前記基材の表面との間で結合を形成させ、前記第1の膜化合物の形成する被膜で前記基材の表面を被覆する工程Aと、
前記パターン部分を覆うマスクを通して、前記被覆された基材の表面にエネルギー線の照射を行い、前記パターン部分にのみ前記第1の膜化合物の形成する被膜を残すパターン形成処理を行う工程Bと、
分子の両端にそれぞれ第2の官能基及び第2の結合基を有する第2の膜化合物を含む溶液を前記導電性微粒子の表面に接触させ、前記第2の結合基と前記導電性微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記導電性微粒子の表面に前記第2の膜化合物の形成する被膜を形成する工程Cと、
前記第1の官能基とカップリング反応して結合を形成する1つ又は2つ以上の第1のカップリング反応基と、前記第2の官能基とカップリング反応して結合を形成する1つ又は2つ以上の第2のカップリング反応基とを有する第1のカップリング剤を、前記パターン形成処理を行った基材及び前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の表面にそれぞれ接触させ、前記第1の官能基と前記第1のカップリング反応基とのカップリング反応、及び前記第2の官能基と前記第2のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して、前記導電性微粒子からなる1層の前記導電性微粒子層を前記基材の表面に結合固定し、次いで、前記基材の表面に固定されなかった前記導電性微粒子を除去する工程Dとを有することを特徴とする配線の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の配線の製造方法において、前記工程Bにおける前記パターン形成処理は、レーザーアブレーション法を用いて前記パターン部分以外の前記第1の膜化合物の被膜を除去することにより行われることを特徴とする配線の製造方法。
【請求項11】
請求項9記載の配線の製造方法において、工程Bにおける前記パターン形成処理は、前記エネルギー線の照射により前記パターン部分以外の前記第1の官能基を他の官能基に変換することにより行われることを特徴とする配線の製造方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の配線の製造方法において、前記工程Dでは、まず、前記パターン形成処理を行った基材の表面に前記第1のカップリング剤を接触させ、前記第1の官能基と前記第1のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記パターン部分の表面のみに選択的に該第1のカップリング剤の被膜を更に形成し、次いで、該第1のカップリング剤の被膜が形成された基材と前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子とを接触させ、前記第2の官能基と前記第2のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記パターン部分の表面のみに選択的に前記導電性微粒子を結合固定することを特徴とする配線の製造方法。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の配線の製造方法において、前記工程Dでは、まず、前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の表面に前記第1のカップリング剤を接触させ、前記第2の官能基と前記第2のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介してその表面に該第1のカップリング剤の被膜を更に形成し、次いで、該第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子と前記パターン形成処理を行った基材とを接触させ、前記第1の官能基と前記第1のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記パターン部分の表面のみに選択的に前記導電性微粒子を結合固定することを特徴とする配線の製造方法。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれか1項に記載の配線の製造方法において、前記第1の膜化合物と前記第2の膜化合物とが同一の化合物であることを特徴とする配線の製造方法。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか1項に記載の配線の製造方法において、前記工程A及び前記工程Cにおいて、未反応の前記第1及び第2の膜化合物は洗浄除去され、前記基材及び前記導電性微粒子の表面上で前記第1及び第2の膜化合物がそれぞれ形成する被膜は、単分子膜であることを特徴とする配線の製造方法。
【請求項16】
請求項12記載の配線の製造方法において、前記基材上には、前記導電性微粒子層が前記基材側から空気との界面側に向かって第1層から第n層(nは2以上の整数)まで順次積層した配線の製造方法であって、
分子の両端にそれぞれ第3の官能基及び第3の結合基を有する第3の膜化合物を含む溶液を前記導電性微粒子の表面に接触させ、前記第3の結合基と前記導電性微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記導電性微粒子の表面に前記第3の膜化合物の被膜を形成し、次いで、前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の表面に、前記第2のカップリング反応基と、前記第3の官能基とカップリング反応して結合を形成する1つ又は2つ以上の第3のカップリング反応基とを有する第2のカップリング剤を接触させ、前記第3の官能基と前記第3のカップリング反応基とのカップリング反応により形成させた結合を介して、前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の表面に前記第2のカップリング剤の被膜を更に形成する工程Eと、
前記導電性微粒子層の表層に位置する前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子と前記第2のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子とを接触させ、前記第2の官能基と前記第2のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して、前記第2のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子を前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の上に結合固定し、次いで、結合固定されなかった前記第2のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子を除去する工程Fとを有し、
n≧3の場合、前記導電性微粒子層の表層に位置する前記第2のカップリング剤の被膜を有する導電性微粒子の表面に前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子を接触させ、前記第2の官能基と前記第2のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子を前記第2のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子の上に結合固定し、次いで、結合固定されなかった前記第2の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子を除去する工程Gを更に有し、n≧4の場合、n層の前記導電性微粒子層が形成されるまで前記工程F及びGを交互に繰り返し行う工程Hとを更に有することを特徴とする配線の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載の配線の製造方法において、前記第1〜第3の膜化合物が同一の化合物であることを特徴とする配線の製造方法。
【請求項18】
請求項16及び17のいずれか1項に記載の配線の製造方法において、前記工程Eにおいて、未反応の前記第3の膜化合物は洗浄除去され、前記導電性微粒子の表面上で前記第3の膜化合物が形成する被膜は、単分子膜であることを特徴とする配線の製造方法。
【請求項19】
請求項13記載の配線の製造方法において、前記基材上には、前記導電性微粒子層が前記基材側から空気との界面側に向かって第1層から第n層(nは2以上の整数)まで順次積層した配線の製造方法であって、
分子の両端にそれぞれ前記第1の官能基及び第3の結合基を有する第3の膜化合物を含む溶液を前記導電性微粒子の表面に接触させ、前記第3の結合基と前記導電性微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記導電性微粒子の表面に前記第3の膜化合物の形成する被膜を形成する工程Eと、
前記導電性微粒子層の表層に位置する前記第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子と前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子とを接触させ、前記第1の官能基と前記第1のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して、前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子を前記第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子の上に結合固定し、次いで、結合固定されなかった前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子を除去する工程Fとを有し、
n≧3の場合、前記導電性微粒子層の表層に位置する前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子と前記第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子とを接触させ、前記第1の官能基と前記第1のカップリング反応基とのカップリング反応により形成された結合を介して前記第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子を前記第3の膜化合物の被膜が形成された導電性微粒子の上に結合固定し、次いで、結合固定されなかった前記第1のカップリング剤の被膜が形成された導電性微粒子を除去する工程Gを更に有し、n≧4の場合、n層の前記導電性微粒子層が形成されるまで前記工程F及びGを交互に繰り返し行う工程Hとを更に有することを特徴とする配線の製造方法。
【請求項20】
請求項9〜15のいずれか1項に記載の配線の製造方法において、前記第1及び第2の膜化合物は全てアルコキシシラン化合物であり、前記第1及び第2の膜化合物を含む溶液は、更に縮合触媒として、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1つ又は2つ以上の化合物を含むことを特徴とする配線の製造方法。
【請求項21】
請求項9〜15のいずれか1項に記載の配線の製造方法において、前記第1及び第2の膜化合物は全てアルコキシシラン化合物であり、前記第1及び第2の膜化合物を含む溶液は、更に縮合触媒として、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1つ又は2つ以上の化合物を更に含むことを特徴とする配線の製造方法。
【請求項22】
請求項16〜19のいずれか1項に記載の配線の製造方法において、前記第1〜第3の膜化合物は全てアルコキシシラン化合物であり、前記第1〜第3の膜化合物を含む溶液は、更に縮合触媒として、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、及びチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1つ又は2つ以上の化合物を含むことを特徴とする配線の製造方法。
【請求項23】
請求項16〜19のいずれか1項に記載の配線の製造方法において、前記第1〜第3の膜化合物は全てアルコキシシラン化合物であり、前記第1〜第3の膜化合物を含む溶液は、更に縮合触媒として、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1つ又は2つ以上の化合物を更に含むことを特徴とする配線の製造方法。
【請求項24】
請求項20及び22のいずれか1項に記載の配線の製造方法において、更に助触媒として、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1つ又は2つ以上の化合物を含むことを特徴とする配線の製造方法。
【請求項25】
請求項9〜24のいずれか1項に記載の配線の製造方法において、前記カップリング反応により形成された結合が、アミノ基又はイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であることを特徴とする配線の製造方法。
【請求項26】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の配線を用いた電子部品。
【請求項27】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の配線を用いた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−38131(P2009−38131A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199617(P2007−199617)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】