説明

配線回路基板及びこれを用いた車両用灯具

【課題】基板折り曲げ部位の配線幅が狭くなったとしても配線層が切断しない信頼性の高い配線回路基板を提供する。
【解決手段】折り曲げ溝を折り曲げライン6として基板2を折り曲げて使用する配線回路基板である。この配線回路基板1では、基板2の他面に形成した折り曲げ溝の折り曲げライン6上に位置する配線層4の折曲げ部配線回路パターン4Cを、折り曲げラインに対して配線幅両側縁4C、4Cを斜めに交差させ、折り曲げられる側の基板2Aに対して折り曲げる側の基板2Bを両基板の両側縁2A、2B同士が一致しないように捻ってくの字状に折り曲げた場合に、折曲げ部配線回路パターン4Cを基板2から浮き上がらせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線層が形成された基板を折り曲げて使用する配線回路基板に関し、特に折り曲げ箇所の配線層の切断防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可撓性を有したフレキシブルプリント配線板ではなく、剛性を持った基板上に配線層をパターン形成した配線回路基板を折り曲げて使用する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2、3等)。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、厚肉状の合成樹脂からなる2つの基板本体を薄肉状で屈曲可能な可撓性を有する部材と一体的に連結することで、この可撓性を有する部材を折り曲げ部位として両基板本体同士を折り曲げ自在としている。特許文献2に記載の技術では、LEDチップを搭載した複数の実装基板を、可撓性を有するシートで整列配置し、そのシートを折り曲げることで、各実装基板同士を折り曲げ自在としている。特許文献3に記載の技術では、複数の基板をはんだにより連結することで、各基板同士を折り曲げ自在としている。
【0004】
これら特許文献1〜3記載の技術は、何れも可撓性部材を介して基板同士を連結することで折り曲げ可能としたものであり、剛性のある基板自体を折り曲げ自在としたものではない。近年例えば、図6に示すようなアルミニウムからなる基板101に絶縁層102が形成され、その絶縁層102上に所定パターンとされた配線層103が形成された基板自体を折り曲げることのできる配線回路基板104の開発が求められている。
【0005】
この配線回路基板104には、配線層103が形成される面とは反対側の面に基板折り曲げ用の溝105が基板幅方向全体に直線溝として形成されている。そして、配線層103は、前記溝105と直交する第1配線回路パターン部103Aと、この溝105が形成される部位に対応し且つ溝105と平行な第2配線回路パターン部103Bとを有した十字形状をなす配線パターンとされている。
【0006】
前記溝105を折り曲げ部位として前記配線回路基板104を二つ折りに折り曲げると、図6中破線で示す折り曲げライン106上の第2配線回路パターン部103Bが切断される。このため、第2配線回路パターン部103Bの導通部分が無くなることで、配線層103の機能が失われる。そこで、溝105と対応する部位の第2配線回路パターン103Bの配線幅Wを広く確保することで、切断されずに残った部位で導通を図ることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−152260号公報
【特許文献2】特開2010−141200号公報
【特許文献3】特開2010−135308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図7に示すように、基板101に2つの配線層103、103が形成されるような場合には、それぞれの配線層103、103の第2配線パターン部103Bの配線幅Wを広くとることはできない。このため、折り曲げ部位となる溝105と対応する部位の第2配線回路パターン部103Bが切断する危険度が大きくなることから配線層103を2つから1つになるようにパターン設計し直す必要が生じる。また、基板101自体を小さくしなければならない場合は、折れ曲がる部位の配線パターンの配線幅も当然小さくなるので、配線パターン部が切断し易くなる。
【0009】
そこで、本発明は、基板折り曲げ部位の配線幅が狭くなったとしても配線層が切断しない信頼性の高い配線回路基板及びこれを用いた車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、基板の一面に形成された絶縁層上に配線層が所定パターンとして形成され、該基板を折り曲げて使用する配線回路基板において、前記基板の他面に、当該基板を折り曲げるための折り曲げ溝を形成しており、その折り曲げ溝のライン上に位置する前記配線層の折曲げ部配線回路パターンを、前記折り曲げ溝のラインに対して配線幅両側縁を斜めに交差させており、前記基板を、前記折り曲げ溝を折り曲げ線として折り曲げられる側の基板に対して折り曲げる側の基板を両基板の両側縁同士が一致しないように捻ってくの字状に折り曲げた場合に、前記折曲げ配線回路パターンを前記基板から浮き上がらせたことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の配線回路基板であって、前記基板が導電性金属基板であることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の配線回路基板にLEDを搭載し、該LEDの電極端子を前記配線層に接続したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の配線回路基板によれば、折り曲げ溝のライン上に位置する配線層の折曲げ部配線回路パターンを、前記折り曲げ溝のラインに対して配線幅両側縁を斜めに交差させており、基板を、折り曲げ溝を折り曲げ線として折り曲げられる側の基板に対して折り曲げる側の基板を両基板の両側縁同士が一致しないように捻ってくの字状に折り曲げた場合に、前記折曲げ配線回路パターンが前記基板から浮き上がることで、折り曲げ線上の配線層が切断され無くなる。このように、折曲げ配線回路パターンが基板から浮き上がることで、例え配線幅が狭くなったとしても切断され難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本実施形態の配線回路基板を示し、(A)はその平面図、(B)は折り曲げ溝のライン上に位置する配線層の折曲げ部配線回路パターンの要部拡大図である。
【図2】図2は図1(A)の配線回路基板の右側面図である。
【図3】図3は図2の配線回路基板を捻ってくの字状に折り曲げる状態を示し、(A)はその右側面図、(B)は折り曲げられる側の基板に対して折り曲げる側の基板を両基板の両側縁同士が一致しないように捻ってくの字状に折り曲げる様子を誇張して示した図である。
【図4】図4は図2の配線回路基板を折り曲げることで折曲げ部配線回路パターンが基板から浮き上がった状態を示した配線回路基板の右側面図である。
【図5】図5は本実施形態の配線回路基板にLEDを搭載して該LEDの電極端子を配線層に接続した車両用灯具を示し、(A)はLED実装面から見たときの斜視図、(B)は配線層形成面から見たときの斜視図である。
【図6】図6は従来の配線回路基板を示し、(A)はその平面図、(B)は基板折り曲げ時の斜視図である。
【図7】図7は基板に2つの配線層が形成された従来の配線回路基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の配線回路基板1は、図1及び図2に示すように、基板2の一面2aに形成された絶縁層3上に配線層4が所定パターンとして形成されている。基板2は、可撓性を有したフレキシブル基板ではなく、例えばアルミニウム等の剛性を持った導電性金属基板からなる。基板2の厚みとしては、例えば1mm程度の厚い基板とされるが、その厚みは1mmに限定されるものではない。
【0016】
基板2の他面2bには、当該基板2を折り曲げるための折り曲げ溝5が形成されている。折り曲げ溝5は、基板2の短辺方向をXとし長辺方向をYとした場合に、Xで示す短辺方向に断面略U字状をなすストレート溝として基板全体に亘って形成されている。本実施形態では、前記折り曲げ溝5の位置を、前記基板2の長辺を約二等分する位置としている。また、前記折り曲げ溝5は、前記基板2を2つ折りにくの字状に折り曲げた場合に折り曲げられる側の基板2Aの長辺方向Yと平行な側縁2A及び折り曲げる側の基板2Bの長辺方向Yと平行な側縁2Bに対して略直交して短辺方向Xと平行に形成されている。
【0017】
配線層4は、折り曲げ溝5を折り曲げライン6として折り曲げられる側の基板2Aに形成される第1配線回路パターン4Aと、折り曲げ側の基板2Bに形成される第2配線回路パターン4Bと、折り曲げライン6上に位置する折曲げ部配線回路パターン4Cとからなる。かかる配線層4は、例えば絶縁層3の全面に形成された銅箔に対してフォトリソグラフィー技術で露光現像することで所定の配線回路パターンとされる。もちろん、配線層4は、フォトリソグラフィー技術以外の手段で形成されていてもよい。
【0018】
第1配線回路パターン4Aは、例えば基板2の長辺方向Yに延びる長方形パターンとして形成されている。第2配線回路パターン4Bは、同じく基板2の長辺方向Yに延びる長方形パターンとして形成されている。第1配線回路パターン4Aと第2配線回路パターン4Bは、同一線上に形成されているのではなく、基板2の短辺方向Xで互いの形成位置がずれている。折曲げ部配線回路パターン4Cは、第1配線回路パターン4Aと第2配線回路パターン4Bを連結する斜めとされた配線層となっている。
【0019】
前記折曲げ部配線回路パターン4Cは、図1(B)に示すように、折り曲げライン6に対して所定のなす角度θで配線幅両側縁4C、4Cを斜めに交差させている。前記角度θは、90度未満であることが好ましく、その角度が小さくなるほど折曲げ部配線回路パターン4Cが切断することなく基板2から剥がれて浮き上がる。前記角度θが90度であると、基板2を折り曲げライン6で折り曲げたときに必ずと言って折曲げ部配線回路パターン4Cが切断され、その部位の配線幅が狭い程全て切断されてしまう。
【0020】
このように構成された配線回路基板は、図3に示すように、前記折り曲げ溝5を折り曲げライン6としてくの字状に折り曲げて使用される。前記折り曲げライン6から基板2を折り曲げるに際しては、折り曲げられる側の基板2Aに対して折り曲げる側の基板2Bを上下で完全に重なるように折り曲げるのではなく、図3(B)に折り曲げ状態を誇張して示すように2つの基板2A、2Bの両側線2A、2B同士が一致しないように(同一線上に重ならないように)同図矢印M方向(これと反対方向でも可)に少し捻って折り曲げる。もう少し詳しく説明すると、折り曲げる側の基板2Bの両側縁2Bが折り曲げられる側の基板2Aの両側縁2Aに対して、一方の基板2Aから他方の基板2Bを見たときにこれら両側線2A、2B同士が重なることなく一致せずにそれらの位置がずれるように、両基板2A、2Bを折り曲げる。なお、2つの基板2A、2Bの折り曲げ角度としては、くの字となる程度の角度とされ、両者が重なり合う又は両者が重なり合う程に屈曲する程度に鋭角となるものではないとする。
【0021】
前記折り曲げられる側の基板2Aに対して折り曲げる側の基板2Bを捻って折り曲げを可能とするのは、前記基板2の他面2bに形成された折り曲げ溝5の幅W及び深さH(図2参照)によるものと考えられる。折り曲げ溝5の幅W及び深さHがある程度の寸法とされることで、折り曲げる側の基板2Bを折り曲げられる側の基板2Aに対して捻ってくの字状に折り曲げることが可能となる。
【0022】
前記折り曲げる側の基板2Bを折り曲げられる側の基板2Aに対して捻って折り曲げると、折り曲げる側の基板2Bには、図3(A)の矢印Sで示す折り曲げ溝5に向かう方向に押される力が作用する。この基板2Bを捻って折り曲げた時に生じる前記力の作用で、前記折り曲げ溝5と対応する部位に形成された折曲げ部配線回路パターン4Cが基板2(実際には絶縁層3)から剥がれ山のように盛り上がるようにして浮き上がる。折曲げ部配線回路パターン4Cが基板2から剥がれて浮き上がった状態を図4に示す。基板2から剥がれて浮き上がった折曲げ部配線回路パターン4Cには、切断箇所が見られない。
【0023】
前記折曲げ部配線回路パターン4Cの前記折り曲げライン6に対するなす角度θが90度未満で小さくなればなる程、基板2から折曲げ部配線回路パターン4Cが剥がれ易くなり、切断されなくなる。そのため、この折曲げ部配線回路パターン4Cでは、銅箔が確実に電気的に繋がった状態となることから第1配線回路パターン4Aと第2配線回路パターン4Bの導通状態が確保される。
【0024】
このように構成された本実施形態の配線回路基板1によれば、折曲げ部配線回路パターン4Cの配線幅が狭くても切断されずに基板2から山のように盛り上がって剥がれて浮き上がることで、第1配線回路パターン4Aと第2配線回路パターン4Bの導通状態を確実に確保することができる。
【0025】
また、本実施形態の配線回路基板1によれば、可撓性を有した基板ではなくて剛性のある導電性金属基板である基板2の厚みが厚くなったとしても折曲げ部配線回路パターン4Cに切断箇所が発生するのを防止することができ、当該折曲げ部配線回路パターン4Cを基板2から浮き上がらせることができる。
【0026】
このように折り曲げられて使用される配線回路基板1には、図5に示すようにLED7が搭載される。基板2には、LED7を搭載するためのLED搭載孔8が板厚を貫通して形成されている。LED搭載孔8は、折り曲げられる側の基板2Aと折り曲げる側の基板2Bにそれぞれ形成されている。基板2に形成された絶縁層3上には、LED7の両電極端子9、9と接続される2つの配線層4が基板2の長辺両側縁近傍にそれぞれ形成されている。なお、前記配線層4は、前記した図4に示す如く折曲げ部配線回路パターン4Cが基板2から浮き上がっている。
【0027】
前記LED7の両電極端子9、9とそれに対応する配線層4の第1配線回路パターン4A及び第2配線回路パターン4Bとは、例えばはんだによって電気的に接続される。このようにLED7が基板2に搭載されることで、LED7を光源とする車両用灯具が構成される。LED7を光源とする車両用灯具は、白熱球を光源とする灯具の代替え品として使用されるため、白熱球の配光パターンに近い配光を得るべく、指向の高いLED7を、基板2を折り曲げて使用することで実現する。このため、LED7を実装した基板2を折り曲げたときに配線層2が切断しては電気回路が遮断してしまうことから、本実施形態の配線回路基板1を使用することで白熱球の代替えとしてLED7を光源とする車両用灯具として使用可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、配線層が形成された基板を折り曲げて使用する配線回路基板に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1…配線回路基板
2…基板
3…絶縁層
4…配線層
4A…第1配線回路パターン
4B…第2配線回路パターン
4C…折曲げ部配線回路パターン
5…折り曲げ溝
6…折り曲げライン
7…LED
8…LED搭載孔
9…LEDの電極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一面に形成された絶縁層上に配線層が所定パターンとして形成され、該基板を折り曲げて使用する配線回路基板において、
前記基板の他面に、当該基板を折り曲げるための折り曲げ溝を形成しており、その折り曲げ溝のライン上に位置する前記配線層の折曲げ部配線回路パターンを、前記折り曲げ溝のラインに対して配線幅両側縁を斜めに交差させており、
前記基板を、前記折り曲げ溝を折り曲げラインとして折り曲げられる側の基板に対して折り曲げる側の基板を両基板の両側縁同士が一致しないように捻ってくの字状に折り曲げた場合に、前記折曲げ配線回路パターンを前記基板から浮き上がらせた
ことを特徴とする配線回路基板。
【請求項2】
請求項1記載の配線回路基板であって、
前記基板が導電性金属基板である
ことを特徴とする配線回路基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配線回路基板にLEDを搭載し、該LEDの電極端子を前記配線層に接続したことを特徴とする車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−84590(P2012−84590A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227525(P2010−227525)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(390005304)PIAA株式会社 (19)
【出願人】(310013196)上越電子工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】