説明

配線基板、電子源、画像表示装置、情報表示再生装置及びそれらの製造方法

【課題】 基板表面に形成した溝に配線を埋め込む配線基板において溝内の配線材料による基板への応力を緩和し、基板クラックの発生を防止することによって配線の膜厚を厚くし、配線の抵抗を低減する。
【解決手段】 基板1の表面に溝2を形成し、基板1の表面の溝2にはその幅方向に少なくとも1つの凸部3を形成する。凸部3は溝2の長さ方向に連続に形成し、且つ、凸部3を形成した溝2内にAg配線4を充填する。また、基板表面に複数の溝を並行して形成することによって、溝間に凸部を形成し、複数の溝を跨いでAg配線を充填する。更に、溝2の長さ方向に沿って凸部3を周期的に形成する。更に、凸部3は溝2の終端部と接続しない構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、詳しくは基板表面に設けた溝に配線材料を埋め込んで形成した埋め込み配線基板及びそれを用いた電子源、画像表示装置、情報表示再生装置、及びそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板としては基板表面に配線を形成することが一般的であるが、平坦性の確保或いはより配線抵抗を低くする目的等で、配線を基板内に埋め込んだ埋め込み配線基板も提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特に、埋め込み配線の利点としては、平坦な基板表面に配線を形成する場合に比べて配線膜厚を厚くした時に配線からの応力によって生じる基板のクラックが起こりにくい点が挙げられる。
【0004】
図13(a)は基板表面に配線を形成したもので、エッジへの応力集中が大きい様子を示す。これに対し、図13(b)は配線を基板表面に形成された溝内に埋め込んだもので、エッジへの応力集中緩和効果が得られることを模式的に示す。
【特許文献1】特許第3044434号公報
【特許文献2】特開2000−251680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の埋め込み配線基板においても、基板クラックを生じる配線の膜厚限界があり、配線の膜厚が配線抵抗を制限することとなっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、その目的は、配線幅の制約の中でより配線抵抗の低い配線基板及びそれを用いた電子源、画像表示装置、情報表示再生装置、及びそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の配線基板は、上記目的を達成するため、基板表面に溝が形成され、前記基板表面の溝は少なくとも1つの凸部を備え、該凸部を備える溝内に配線が充填されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の配線基板の製造方法は、基板表面の溝に充填された配線を有する配線基板の製造方法であって、表面に第1のパターンの溝を有する基板の前記溝にスクリーン印刷法を用いて配線材料を充填する工程を含み、前記溝はその底部に少なくとも1つの凸部を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記した配線基板を用いた電子源および配線基板の製造方法を用いて形成される電子源の製造方法、および該電子源を用いた画像表示装置およびその製造方法並びに該画像表示装置を用いた情報表示再生装置をもその特徴とする。
【0010】
本願発明者らは、図13(c)に示すように壁面による厚み方向の応力緩和効果が得られる溝底部の形状に着目した。即ち、図13(b)と図13(c)との比較で明らかなように基板の溝底面におけるRを小さくすると、太い矢印で示すように配線からの合成応力を小さくできることを見出した。
【0011】
そこで、本発明は、図1等に示すように溝の内部に凸部を備えることによって凸部の両側における溝のR(曲率半径)を小さくしている。その結果、図14に示すような溝内に凸部を持たない場合に比べて、本発明においては、配線材料から基板への応力を緩和することができ、基板にクラックが発生することを防止することができる。その結果、配線材料の膜厚を厚くできるので、配線抵抗を低減することを可能としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配線から基板への応力を緩和することができ、基板にクラックが発生することを防止できるので、配線幅の制約の中でより配線抵抗の低い配線基板を実現することができる。また、本発明の配線基板を用いることにより、高密度に電子放出素子を配列でき、高精細な画像を表示することが可能な画像表示装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、本発明に係る配線基板について説明する。ここでは、後述する凸部3が、基板1の一部で構成された例を示すが、本発明においては、基板1とは別の部材で凸部3を形成しても良い。しかしながら、好ましくは基板1の一部で凸部を構成する。また、配線4の材料として以下で示す実施形態例では銀(Ag)を用いた例を示すが、本発明においては配線の材料は銀に限定されるものではない。そのため、本発明における配線は、配線としての機能を満たせば良いので基本的に導電性の材料であればよい。例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅などの材料を用いても良い。また、凸部の高さ(溝の底部からの高さ)に特に制限はない。また、溝2内における凸部3の数は、特に制限はなく、複数配置されていてもよい。
【0014】
図1は本発明による配線基板の第1の実施形態を示す断面図である。図2は平面図を示す。図2において、溝2のa−a’における断面図(溝2の幅方向における断面図)が図1である。本実施形態では、基板1の表面に配置した溝2内にAg配線4が埋め込まれており、溝2内に凸部3が配置されている。凸部3は、溝の幅方向に少なくとも1つ以上配置されている。
【0015】
また、本発明においては、凸部3は図2に示すように溝2の長さ方向に連続に形成されていても良いが、溝2の長さ方向に沿って、複数の凸部が互いに離間して配置されていても良い。尚、本実施形態における凸部は、溝2の長さ方向の端から端まで配置されている例を示した。凸部3は上述のように配線から基板への応力を緩和し、その結果、配線材料の膜厚を厚くして配線抵抗を低減することを可能とする。
【0016】
図3は本発明による配線基板の第2の実施形態を示す断面図である。本実施形態では、溝2内部の凸部の頂点(基板1の裏面から最も離れた箇所)が、基板1の表面の位置と同じ場合を示している。このため、この様な溝は、例えば、基板1表面に複数の溝2(図3では2つ)を並行に配置することで形成することができる。そして、この平行に配置された複数の溝(図3では2つの溝)2の間の基板1の一部が凸部3を構成する。この例においても、凸部3は溝2の長さ方向に連続に形成されていても良いが、溝2の長さ方向に沿って、複数の凸部が互いに離間して配置されていても良い。この例においてはAg配線4は2つの溝2を跨いで埋め込まれている。この構成では、同様に配線から基板への応力を緩和できると共に、配線基板の製造プロセスが簡単で済む。
【0017】
図4は本発明による配線基板の第3の実施形態を示す図である。図4(a)は平面図、図4(b)は断面図である。図4(b)は図4(a)のb−b’における断面図である。本実施形態では、図1と同様に基板1の溝2に少なくとも1つの凸部が形成され、その凸部が溝の長さ方向に連続に形成され、その溝2内にAg配線4が形成されている。図1と異なるのは、図4(b)に示すように凸部3が溝2の終端部にまで配置されていない点である。この様に、凸部3を溝2の終端部にまで配置しない構成では、配線から基板への応力を緩和できると共に、製造時に溝2の終端部において配線材料の基板裏面への回り込み等、配線材料が溝2内からはみ出てしまうことを防止できるので好ましい。
【0018】
図5は本発明による配線基板の第4の実施形態を示す図である。図5(a)は平面図、図5(b)は溝2の長さ方向における断面図である。図5(b)は図5(a)のb−b’における断面図である。本実施形態では、溝2の長さ方向に、凸部3が周期的に複数配置された例である。図5(a)に示すように基板の上方から見ると、複数の凸部3が、溝2の長さ方向に沿って、互いに間隔を置いて配置されている。
【0019】
また、図5(a)に示す、凸部3を含む、溝2の幅方向の断面は、図1と同様である。一方で、凸部3を含まない、溝2の幅方向の断面は、図14(b)、図14(c)などに示すように、凸部がなく単に溝2内に配線が配置された断面形状となる。Ag配線4はその溝2内に上下に(基板1の厚み方向に)蛇行するように形成される。この構成でも、配線から基板への応力を緩和できると共に、配線4の体積が増加するため、配線4の抵抗値を更に低減することができる。
【0020】
なお、図4に示す、凸部を溝2の長さ方向における両端部に接続させない構成は、図1に示した実施形態や、図3に示した実施形態や図5に示した実施形態に適用することができる。また、図5に示した、溝2内に、溝2の長さ方向に、凸部を周期的に配置する構成は、図3の実施形態にも適用することができる。
【0021】
次に、上述のような本発明の配線基板を適用例の実施形態について説明する。即ち、本発明の配線基板を、基板上に配置した多数の電子放出素子の各々を駆動するために、電源や駆動回路と各々の電子放出素子とを接続するための配線として使用することで電子源を形成することも可能である。更に、上記電子源を用いた画像表示装置並びに画像表示装置を用いた情報表示再生装置も形成することが可能である。また、電子放出素子だけでなく、基板上に配置した多数の電子デバイスの各々を駆動するために、電源や駆動回路と各々の電子デバイスとを接続するための配線として使用した、電子デバイスを形成することも可能である。このような電子デバイスとしては特に制限はないが、例えばEL素子を挙げることができる。
【0022】
次に、基板上に複数の電子放出素子を配列し、個々の電子放出素子を上述した配線によって接続した電子源及び画像表示装置の一例について図6、図7、図8を用いて説明する。
【0023】
図6は、基板71上に配置された複数の電子放出素子74の各々に接続するX方向配線72とY方向配線73が設けられた電子源を模式的に表した図である。基板71上の電子放出素子74の配列については、例えば、m本のX方向配線72とn本のY方向配線73を用意し、電子放出素子74を構成する第1電極をm本のX方向配線72のうちの1本に接続し、電子放出素子74を構成する第2電極をn本のY方向配線73のうちの1本に接続する配列形態(「マトリクス型配列」と呼ぶ)が挙げられる(尚、m、nは、共に正の整数)。
【0024】
m本のX方向配線72は、Dx1,Dx2,……,Dxmからなり、これらの配線は前述した本発明による配線によって形成され、絶縁性基板71の表面に設けられた溝内に埋め込む様に形成される。X方向配線72は、導電性材料からなり、多数の電子放出素子にほぼ均等な電圧が供給される様に、材料、膜厚、配線幅が適宜設定されている。
【0025】
n本のY方向配線73は、Dy1,Dy2,…,Dynのn本の配線よりなり、X方向配線72と同様に導電性材料で構成され,フォトリソグラフィー法や印刷法により形成することができる。これらm本のX方向配線72とn本のY方向配線73との間には、不図示の絶縁層が配置されている。絶縁層は、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等で形成することができる。材料としてはSiO2等を用いることができる。Y方向配線73は、絶縁層を介して、X方向配線72を覆う構成となる。
【0026】
また、Y方向配線73には、走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が電気的に接続される。一方、Y方向配線72には、走査信号に同期して、選択された各電子放出素子から放出される電子を変調するための変調信号を印加する不図示の変調信号発生手段が電気的に接続される。このような電子源の駆動時においては、n本のY方向配線73の中から選択した配線に対して電位(走査信号)を供給する。この電位の供給により、選択されたY方向配線に接続する全ての電子放出素子が選択状態となる。そして、選択したY方向配線への電位の供給に同期させて、選択されたY方向配線に接続する電子放出素子に接続するm本のX方向配線72の各々に対して、所望の電子放出量が得られる様に電位(変調信号)を印加する。この動作を繰り返すことで、マトリクス駆動が行われる。各電子放出素子に印加される駆動電圧Vfは、印加される走査信号と変調信号との差電圧である。
【0027】
尚、本発明に用いることのできる電子放出素子としては、MIM型電子放出素子や、金属或いは半導体を微細加工して円錐や四角錘状の電子放出体として備えた電界放出型電子放出素子(いわゆるスピント型の電界放出型電子放出素子)や、カーボンナノチューブやグラファイトナノファイバー等のナノサイズの直径を備えるカーボンファイバーを電子放出体として用いた電界放出型電子放出素子や、表面伝導型電子放出素子等の冷陰極型電子放出素子等が挙げられる。
【0028】
いずれの電子放出素子も、少なくとも間隔を置いて配置された2つの電極を備えており、この2つの電極間に電圧を印加することで電子を放出する電子放出素子である。中でも、表面伝導型電子放出素子やカーボンファイバーを電子放出体として用いた電界放出型電子放出素子を好ましく使用することができる。
【0029】
次に、上述のようなマトリクス配列の電子源基板を用いた電子源、及び、画像表示装置の一例について、図7と図8を用いて説明する。図7は画像表示装置の基本構成図であり、図8は蛍光膜を示す図である。
【0030】
図7において、71は電子放出素子74を複数配した電子源基板、81は電子源基板71を固定したリアプレート、86はガラス等の透明基板83の内面に蛍光膜84と導電性膜85等が形成されたフェースプレートである。82は支持枠である。リアプレート81、支持枠82及びフェースプレート86は、接合部にフリットガラスやインジウムなどの接着剤を塗布し、大気中や窒素中あるいは真空中で、加熱することにより封着されており、この封着された構造体で外囲器88が構成されている。尚、導電性膜85はアノード電極に対応する部材である。
【0031】
外囲器88は、大気中や窒素中で封着して形成した場合には、その後、不図示の排気管を通じ、内部の圧力が所望の真空度(例えば1.3×10−5Pa程度)に達するまで排気した後、排気管を封止することで内部が真空に維持された外囲器88を得ることができる。また、封着を真空中で行えば、上記排気管を用いずに、封着と同時に封止が行えるので、簡易に内部が真空に維持された外囲器88を得ることができる。
【0032】
また、外囲器88の封止の前後で、外囲器88の内部に配置した不図示のゲッターを活性化させる場合もある。上述のように真空中で封着する場合には、封着の前後で、外囲器88の内部に配置した不図示のゲッターを活性化させる。このようにすることで、封止後の外囲器88内部の真空度を維持することができる。
【0033】
外囲器88は、フェースプレート86、支持枠82、リアプレート81で構成することができる。しかし、リアプレート81は主に基板71の強度を補強する目的で設けられるため、基板71自体で十分な強度を持つ場合は別体のリアプレート81は不要である。そのため、基板71に直接支持枠82を封着し、フェースプレート86、支持枠82及び基板71で外囲器88を構成してもよい。
【0034】
また、フェースプレート86とリアプレート81(基板71)との間に、スペーサーと呼ばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度を持つ外囲器88を構成することができる。
【0035】
図8(a)、(b)は、それぞれ、図7に示す蛍光膜84の具体的な構成の例を示す。蛍光膜84は、モノクロームの場合は単色の蛍光体92のみから成る。しかし、カラーの画像表示装置を構成する場合には、蛍光膜84は、3原色の蛍光体92と、各色の間に配置される光吸収部材91とを含む。
【0036】
光吸収部材91は一般的には、黒色の部材を用いることができる。図8(a)は光吸収部材91をストライプ状に配列した形態である。図8(b)は光吸収部材91をマトリクス状に配列した形態である。
【0037】
一般に、図8(a)の形態は「ブラックストライプ」と呼ばれ、図8(b)の形態は「ブラックマトリクス」と呼ばれる。光吸収部材91を設ける目的は、カラー表示の場合必要となる3原色蛍光体の各蛍光体92間の塗り分け部における混色等を目立たなくすることと、蛍光膜84における外光反射によるコントラストの低下を抑制することにある。
【0038】
光吸収部材91の材料としては、通常良く用いられている黒鉛を主成分とする材料だけでなく、光の透過及び反射が少ない材料であればこれに限るものではない。また、導電性であっても絶縁性であっても構わない。
【0039】
また、蛍光膜84の内面側には、通常「メタルバック」等と呼ばれる導電性膜85が設けられている。導電性膜85の目的は、蛍光体92の発光のうち、電子放出素子側へ向かう光をフェースプレート86側へ鏡面反射することで輝度を向上させること、電子ビーム加速電圧を印加するための電極として作用させること、外囲器88内で発生した負イオンの衝突による蛍光体のダメージを抑制すること等である。
【0040】
導電性膜85は、通常、アルミニウム膜で形成されている。導電性膜85は、蛍光膜84の作製後、蛍光膜84の表面の平滑化処理(通常、「フィルミング」と呼ばれる)を行い、その後Alを真空蒸着等で堆積することで作製できる。
【0041】
フェースプレート86には、更に蛍光膜84の導電性を高めるため、蛍光膜84とフェースプレート86との間にITO等からなる透明電極(不図示)を設けてもよい。
【0042】
外囲器88内の各電子放出素子には、外囲器88内において各電子放出素子に接続するX方向配線72及びY方向配線73に接続する端子Dox1〜Doxm、Doy1〜Doynを通じ、電圧を印加することにより、全述したマトリクス駆動を行うことで、所謂「線順次駆動」を行うことができる。この時、高圧端子87を通じ、メタルバック85に5kV以上30kV以下、好ましくは10kV以上25kV以下の電圧を印加する。この様にする事で、選択した電子放出素子から放出された電子は、メタルバックを透過し、蛍光膜84に衝突する。そして蛍光体を励起・発光させることで画像を表示するものである。
【0043】
X方向配線72には、上述のような本発明による埋め込み配線が用いられ、基板71の表面に形成された溝内に埋め込むように形成されている。なお、以上述べた構成においては、各部材の材料等、詳細な部分は上記した内容に限られるものではなく、目的に応じて適宜変更される。
【0044】
また、図7を用いて説明した本発明の外囲器(画像表示装置)88を用いて情報表示再生装置を構成することができる。
【0045】
具体的には、テレビジョン放送や文字放送等の放送信号や、接続されたデジタルカメラなどの情報蓄積デバイスから発せられる各種信号を受信する受信装置と、受信した信号を選曲するチューナーと、選曲した信号に含まれる映像情報、文字情報及び音声情報の少なくとも1つを、外囲器(画像表示装置)88に出力して表示或いは再生させる。この構成によりテレビジョン等の情報表示再生装置を構成することができる。またさらに、表示した情報を接続したプリンターに出力する機構を設けることもできる。
【0046】
勿論、放送信号がエンコードされている場合には、本発明の情報表示再生装置はデコーダも含むことができる。また、音声信号については、別途設けたスピーカー等の音声再生手段に出力して、外囲器(画像表示装置)88に表示される映像情報や文字情報と同期させて再生する。
【0047】
また、映像情報または文字情報を外囲器(画像表示装置)88に出力して表示或いは再生させる方法としては、例えば以下のように行うことができる。
【0048】
まず、受信した映像情報や文字情報から、外囲器(画像表示装置)88の各画素に対応した画像信号を生成する。そして生成した画像信号を、外囲器(画像表示装置)88の駆動回路に入力する。また、駆動回路に入力された画像信号に基づいて、駆動回路から外囲器(画像表示装置)88内の各電子放出素子に印加する電圧を制御して画像を表示する。
【0049】
ここで述べた画像表示装置の構成は、本発明を適用可能な画像表示装置の一例であり、本発明の技術思想に基づいて種々の変形が可能である。また、本発明の画像表示装置は、テレビ会議システムやコンピュータ等の表示装置等としても用いることができる。
【実施例】
【0050】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0051】
(実施例1)
図9は実施例1による配線基板のプロセスフローを示す。まず、図9(a)に示すようにガラス基板101上にドライフィルムレジスト102を1層パターニング形成した。次いで、図9(b)に示すように溝中の凸部となる部分を除いて、2層目のドライフィルムレジスト103を積層形成した。この時、溝の幅は200μm、凸部形成用レジストパターンは幅50μm、膜厚5μmとした。
【0052】
次に、図9(c)に示すようにこのレジスト基板を#1000の砥粒を用いてサンドブラスト処理を行ったところ、図9(d)に示すように深さ70μmの溝103が形成され、溝103中の凸部104の高さは40μmであった。
【0053】
その後、ドライフィルムレジストを除去した溝形成基板に、スクリーン印刷法でAg配線ペーストを#325、乳剤厚20μm、100μmの開口幅のスクリーン印刷版でパターニング印刷し(図11参照)、420℃で焼成してAg配線を埋め込み形成した。
【0054】
このようにして図1、図2に示すような配線基板を作製した。Ag配線4の焼成後の膜厚は45μmであり、長さ920mmの配線の配線抵抗は3Ωであった。この配線基板にAg配線形成後の応力によるガラス基板のクラック発生は見られなかった。また、配線の断線やAgのはみ出し等も見られなかった。
【0055】
このように本実施例では、溝底部に幅方向断面の凸形状を形成することによって、配線材料から基板への応力を緩和し、その結果として形成する配線材料の膜厚を厚くして配線抵抗を低減することが可能である。
【0056】
(比較例)
比較例では、溝底部に凸形状のない埋め込み配線基板を形成した。その後、スクリーン印刷版を用いてパターニング印刷を行い(図12参照)、焼成してAg配線を埋め込み形成した。但し、スクリーン版の乳剤厚は10μmのものを使用した。このようにして図14に示す配線基板を作製した。この時の配線膜厚は39μmであり、配線抵抗は4Ωであったが、この配線基板にはAg配線形成後の応力によるガラス基板のクラック発生が見られた。また、この配線基板にはAg印刷ペーストの転写不良による断線が見られた。
【0057】
(実施例2)
図10は実施例2による溝形成のプロセスフローを示す。まず、図10(a)に示すようにガラス基板101上にドライフィルムレジスト102をパターニング形成した。溝の幅は200μm、凸部形成用レジストパターンは幅40μm、膜厚40μmとした。次いで、図10(b)に示すようにこのレジスト基板を#1000の砥粒を用いてサンドブラスト処理を行ったところ、図10(c)に示すように深さ70μmの溝103が形成された。また、溝103間に凸部104が形成された。
【0058】
その後、ドライフィルムレジストを除去した溝形成基板に、スクリーン印刷法でAg配線ペーストを#325、乳剤厚20μm、100μmの開口幅のスクリーン印刷版でパターニング印刷し(図11参照)、更に、420℃で焼成してAg配線を埋め込み形成した。このようにして図3に示すような配線基板を作製した。
【0059】
Ag配線の焼成後の膜厚は45μmであり、長さ920mmの配線の配線抵抗は3Ωであった。この配線基板にAg配線形成後の応力によるガラス基板のクラック発生は見られなかった。また、配線の断線や溝側面からのAgのはみ出し等も見られなかった。
【0060】
(実施例3)
実施例1と同様に基板に深さ70μmの溝を形成し、その溝にスクリーン印刷でAg配線を埋め込み形成した。但し、図4(b)に示すように基板の溝の長さ方向における終端部で溝を深く形成し、凸部を溝の終端部に接続しない構造とした。このようにして図4に示す配線基板を作製した。この配線基板にAg配線形成後の応力によるガラス基板のクラック発生は見られなかった。また、溝終端部におけるAgの滲み等も見られなかった。これは、上述のように凸部を溝終端部に接続しない構造とすることによって、溝終端部におけるAgの滲み防止効果が得られたものである。
【0061】
(実施例4)
実施例4では、図10(a)に示すようにガラス基板101上にドライフィルムレジスト102をパターニング形成した。但し、この場合には、ドライフィルムレジストを図5(a)に示すように破線状にパターニング形成した。溝の幅は200μm、凸部形成用レジストパターンは幅40μm、膜厚40μmとした。次いで、図10(b)に示すようにこのレジスト基板を#1000の砥粒を用いてサンドブラスト処理を行ったところ、図10(c)に示すように深さ70μmの溝が形成された。
【0062】
その後、ドライフィルムレジストを除去した溝形成基板に、スクリーン印刷法でAg配線ペーストを#325、乳剤厚20μm、100μmの開口幅のスクリーン印刷版でパターニング印刷し、420℃で焼成してAg配線を埋め込み形成した。
【0063】
このようにして図5に示す配線基板を作製した。Ag配線の焼成後の膜厚は45μmであり、長さ920mmの配線の配線抵抗は2.5Ωであった。この配線基板にAg配線形成後の応力によるガラス基板のクラック発生は見られなかった。また、配線の断線やAgのはみ出し等も見られなかった。
【0064】
(実施例5)
実施例5では、実施例4の製造方法を用いて図6に示す電子源を作成し、この電子源を用いて図7に示す画像表示装置を形成した。電子放出素子74としては表面伝導型電子放出素子を用いた。具体的には、図7に示す電子源基板71上に実施例4の製造方法(実施例1〜3の製造方法でも良い)を用いてX方向配線72を形成した。この時、基板71上において図5に示す配線が形成された。そして、X方向配線72とY方向配線73とが交差する領域にSiO2を主成分とする絶縁層を印刷法により形成した。そして、さらに、絶縁層上にY方向配線73をAgペーストを用いてスクリーン印刷法により形成した。各表面伝導型電子放出素子74は、X方向配線72のうちの1つとY方向配線73のうちの1つとに接続した。そして、前述したように、リアプレート81、支持枠82、フェースプレート86等を用いて組み立てることによって図7に示す画像表示装置を作製した。そして、Y方向配線73には走査信号出力回路を接続し、X方向配線72には変調信号出力回路を接続した。このように形成した画像表示装置に前述した信号を受信する受信装置と、受信した信号を選曲するチューナーとを接続し、テレビジョン放送を表示させたところ、本実施例のテレビジョンでは、高精細な画像を表示することができた。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る配線基板の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明に係る配線基板の第2の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る配線基板の第3の実施形態を示す図である。
【図5】本発明に係る配線基板の第4の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の配線を用いたマトリクス配線を示す図である。
【図7】本発明に係る配線を用いた電子源及び画像表示装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図8】図7の画像表示装置に用いる蛍光膜を示す図である。
【図9】本発明の実施例1による配線基板の製造工程を示す図である。
【図10】本発明の実施例2による配線基板の製造工程を示す図である。
【図11】本発明の実施例1においてAg配線をスクリーン印刷法を用いてパターニング印刷する様子を説明する図である。
【図12】本発明の比較例においてAg配線をスクリーン印刷法を用いてパターニング印刷する様子を説明する図である。
【図13】配線から基板への応力を従来と本発明とで説明する図である。
【図14】従来の配線埋め込み基板を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 基板
2 溝
3 凸部
4 Ag配線
71 絶縁性基板(電子源基板)
72 X方向配線
73 Y方向配線
74 電子放出素子
81 リアプレート
82 支持枠
83 透明基板
84 蛍光膜
85 導電性膜
86 フェースプレート
88 外囲器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に溝を備え、該溝の内部に少なくとも1つの凸部が配置され、該凸部が配置された溝内に配線が充填されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記凸部は前記溝の長さ方向に沿って連続的に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記溝は、前記基板表面に並行して配置された複数の溝から構成されており、前記複数の溝間を跨いで配線が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記溝の長さ方向に沿って凸部が周期的に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記凸部は、前記溝の長手方向における端部と接続されていないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記凸部の前記溝の底面からの高さが、4μm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項7】
基板表面の溝に充填された配線を有する配線基板の製造方法であって、
表面に第1のパターンの溝を有する基板の前記溝にスクリーン印刷法を用いて配線材料を充填する工程を含み、
前記溝はその底部に少なくとも1つの凸部を有するように形成されることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項8】
複数の電子放出素子と、該複数の電子放出素子の各々に接続された配線とを備えた基板とを有する電子源において、前記配線は、前記基板表面に形成された溝内に充填されており、前記溝の内部に少なくとも1つの凸部が配置されていることを特徴とする電子源。
【請求項9】
前記凸部は前記溝の長さ方向に沿って連続的に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の電子源。
【請求項10】
前記溝は、前記基板表面に並行して配置された複数の溝から構成されており、前記複数の溝間を跨いで配線が充配置されていることを特徴とする請求項8または9に記載の電子源。
【請求項11】
前記溝の長さ方向に沿って凸部が周期的に形成されていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の電子源。
【請求項12】
前記凸部は、前記溝の長手方向における端部と接続されていないことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の電子源。
【請求項13】
前記凸部の前記溝の底面からの高さが、4μm以上であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の電子源。
【請求項14】
電子源と、前記電子源から放出された電子が照射されることで発光する発光体と、を備える画像表示装置において、前記電子源が、請求項8〜13のいずれか1項に記載の電子源であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項15】
受信した放送信号に含まれる映像情報、文字情報及び音声情報の少なくとも1つを出力する受信器と、前記受信器に接続された画像表示装置とを少なくとも備える情報表示再生装置であって、前記画像表示装置が、請求項14に記載の画像表示装置であることを特徴とする情報表示再生装置。
【請求項16】
複数の電子放出素子と、該複数の電子放出素子の各々に接続する配線とを備える基体を有する電子源の製造方法であって、
表面に所望のパターンの溝を有する基板の前記溝にスクリーン印刷法を用いて配線材料を充填する工程を含み、
前記溝はその底部に少なくとも1つの凸部を備えることを特徴とする電子源の製造方法。
【請求項17】
電子源と、該電子源から放出された電子が照射されることで発光する発光体と、を備える画像表示装置の製造方法であって、前記電子源が、請求項16に記載の製造方法により製造されることを特徴とする画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−66337(P2006−66337A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250216(P2004−250216)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】