説明

配線基板の製造方法、電子部品の製造方法、配線基板および電子部品

【課題】配線基板に形成する配線をより微細化できる技術を提供すること。
【解決手段】絶縁層と導電層との少なくともいずれかによって形成した層を複数積層させて前記絶縁層および前記導電層を含む積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体形成工程において形成した前記積層体を、複数の前記層と交差する面に沿って切断する切断工程と、を含む配線基板の製造方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子を実装する配線基板の製造方法、電子部品の製造方法、配線基板および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の小型化、高集積化および薄型化等を図るため、配線基板に形成する配線の微細化が進められている。
例えば、特許文献1には、インクジェット法を用いて配線基板上に配線パターンを形成する際に、多孔膜部材に導電性材料を含む液滴を吐出することにより、吐出された液滴の広がりを防止して、配線をより微細化することが記載されている。
また、インクジェット法と同様に、配線の微細化を実現可能な技術として、セミアディティブ法が用いられることもあり、この場合、スパッタリング等によって金属薄膜を形成した後、銅をメッキアップすることによって配線パターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−34526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インクジェット法あるいはセミアディティブ法等を用いた配線基板の製造方法においては、電子機器のさらなる小型化等を図る上で、形成される配線の微細化が十分なものではなかった。即ち、これらの方法では、形成される配線の幅として、現在のところ20μmを実現しつつある状況である。
そのため、電子機器のさらなる小型化等を図るためには、配線をより微細化することが望まれる。
本発明の課題は、配線基板に形成する配線をより微細化できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係る配線基板の製造方法は、
絶縁層と導電層との少なくともいずれかによって形成した層を複数積層させて前記絶縁層および前記導電層を含む積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体形成工程において形成した前記積層体を、複数の前記層と交差する面に沿って切断する切断工程と、を含むことを特徴とする。
このような方法により、積層した絶縁層および導電層からなる積層体を複数の層と交差する方向に沿って切断することにより、配線基板が得られる。
そのため、目的とする配線の幅を絶縁層および導電層の厚さによって容易に実現することができる。
したがって、配線基板に形成する配線をより微細化することが可能となる。
【0006】
また、本発明の他の態様に係る配線基板の製造方法は、
前記積層体形成工程において、少なくとも1つの前記層を前記絶縁層からなる部分と前記導電層からなる部分とによって形成することを特徴とする。
このような方法により、目的とする配線のパターンを、積層体を構成する層の形状によって容易に実現することができる。
【0007】
また、本発明の他の態様に係る配線基板の製造方法は、
前記積層体形成工程において、前記複数の層をインクジェット法によって形成することを特徴とする。
このような方法により、ノズルの切り替えによって導電層と絶縁層とを形成することができるため、積層体を形成することが容易となる。
【0008】
本発明の一態様に係る電子部品の製造方法は、
絶縁層と導電層との少なくともいずれかによって形成した層を複数積層させて前記絶縁層および前記導電層を含む積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体形成工程において形成した前記積層体を、複数の前記層と交差する面に沿って切断し、前記積層体の一方によって構成され、前記切断によって形成される第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有する配線基板を形成する配線基板形成工程と、前記配線基板の前記第1の面と前記第2の面との少なくともいずれか一方に、電子素子を実装する実装工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
このような方法により、積層した絶縁層および導電層からなる積層体を複数の層と交差する方向に沿って切断することにより、配線基板が得られ、この配線基板に電子素子を実装することで電子部品が構成される。
そのため、目的とする配線の幅を絶縁層および導電層の厚さによって容易に実現することができる。
したがって、配線基板に形成する配線をより微細化することが可能となる。
【0010】
また、本発明の他の態様に係る電子部品の製造方法は、
前記積層体形成工程において、少なくとも1つの前記層を前記絶縁層からなる部分と前記導電層からなる部分とによって形成することを特徴とする。
このような方法により、目的とする配線のパターンを、積層体を構成する層の形状によって容易に実現することができる。
また、本発明の他の態様に係る電子部品の製造方法は、
前記積層体形成工程において、前記複数の層をインクジェット法によって形成することを特徴とする。
このような方法により、ノズルの切り替えによって導電層と絶縁層とを形成することができるため、積層体を形成することが容易となる。
【0011】
本発明の一態様に係る配線基板は、
絶縁層と導電層との少なくともいずれかによって形成した層を複数積層した積層体が、複数の前記層と交差する面に沿って切断された構成を有し、切断面に前記絶縁層および前記導電層によって形成された配線パターンを有することを特徴とする。
このような構成により、積層した絶縁層および導電層からなる積層体を複数の層と交差する方向に沿って切断することにより、配線基板が得られる。
そのため、積層体に積層された絶縁層および導電層の厚さに対応する配線の幅を有する配線基板となる。
したがって、配線基板に形成する配線をより微細化することが可能となる。
【0012】
本発明の一態様に係る電子部品は、
絶縁層と導電層との少なくともいずれかによって形成した層が複数積層され、複数の前記層に交差する方向の外面に、前記絶縁層および前記導電層によって構成された配線パターンを有する配線基板と、前記配線基板の前記外面に搭載され、前記配線パターンの前記導電層に接続された電子素子と、を有することを特徴とする。
このような構成により、配線基板の絶縁層および導電層が積層した外面に現れた配線パターンの導電層に電子素子が実装された電子部品を構成できる。
したがって、電子部品を容易に製造することができると共に、配線基板に形成する配線をより微細化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1工程において、板材1が液体吐出装置100のステージSに設置された状態を示す図である。
【図2】板材1の被吐出面Fに積層体B1が形成される工程を示す図である。
【図3】切断装置200の固定台Rに積層体B1を設置した状態を示す図である。
【図4】積層体B1を切断する工程を示す図である。
【図5】配線基板P1にソルダーレジストを施す工程を示す図である。
【図6】配線基板P1に電子素子D1,D2が実装された状態を示す図である。
【図7】第1実施形態に係る配線基板の製造方法によって製造した電子部品C1を備える電子機器の例を示す図である。
【図8】本発明における配線の微細化についての効果を示す図である。
【図9】本発明における配線の厚さについての効果を示す図である。
【図10】第2実施形態の第2−1工程を示す図である。
【図11】第2実施形態の第2−2,2−3工程を示す図である。
【図12】第2実施形態の第2−4〜2−6工程を示す図である。
【図13】第2実施形態の第2−7,2−8工程を示す図である。
【図14】第2実施形態の第2−9,2−10工程を示す図である。
【図15】第2実施形態の第2−11,2−12工程を示す図である。
【図16】第2実施形態の第2−13工程を示す図である。
【図17】第2実施形態の第2−14工程を示す図である。
【図18】第2実施形態の第2−15工程を示す図である。
【図19】第2実施形態の第2−16,2−17工程を示す図である。
【図20】第2実施形態の第2−18,2−19工程を示す図である。
【図21】第2実施形態の第2−20,2−21工程を示す図である。
【図22】第2実施形態の第2−22〜2−24工程を示す図である。
【図23】第2実施形態の第2−25〜2−26工程を示す図である。
【図24】積層体B2を切断する工程を示す図である。
【図25】配線基板P2に電子素子D1,D2が実装された状態を示す図である。
【図26】第2実施形態の配線基板の製造方法を用いて製造した配線基板の他の例を示す図である。
【図27】積層体から切り出す部分の幅を変化させた場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明に係る配線基板の製造方法、電子部品の製造方法、配線基板および配線構造の積層体の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明に係る第1実施形態の配線基板の製造方法について説明する。
本実施形態においては、平行な6本の配線を配線基板に形成する場合を例として説明する。なお、以下、製造した配線基板を用いて電子部品を製造する工程(電子部品の製造方法)まで併せて説明する。
【0015】
(配線基板の製造方法)
図1〜6は、本実施形態に係る配線基板の製造方法の工程を示す図である。
初めに、インクジェット法によって配線を形成可能な液体吐出装置100のステージSに基材となる板材1を設置する(第1工程)。
図1は、第1工程において、板材1が液体吐出装置100のステージSに設置された状態を示す図である。
板材1としてガラス基板等を用いることができ、板材1は、液体吐出装置100から吐出した液体を積層していく平坦な面(以下、適宜「被吐出面F」と称する。)を有している。
【0016】
また、液体吐出装置100は、揮発性の溶媒に導電性の微粒子を分散した導電性材料を吐出するノズルN1と、紫外線硬化型の絶縁性材料を吐出するノズルN2とを有している。そして、液体吐出装置100の制御部110は、これらノズルN1およびノズルN2における材料の吐出を制御する。
導電性材料における導電性の微粒子として、銅、金、銀、アルミ等の金属、あるいは、カーボンナノチューブ等の有機導電性物質を用いることができる。
また、絶縁性材料としては、紫外線硬化型の樹脂等を用いることができ、例えば紫外線硬化型のソルダーレジストで用いられている材料を用いても良い。若しくは、絶縁性材料として、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。なお、絶縁性材料として、板材1との接着性が低い材料を選択する。
【0017】
次に、板材1の被吐出面FにノズルN1およびノズルN2から交互に導電性材料および絶縁性材料を吐出し、導電層および絶縁層からなる積層体B1を形成する(第2工程)。
図2は、板材1の被吐出面Fに積層体B1が形成される工程を示す図である。
第2工程においては、まず、板材1の被吐出面Fの全面に一様な厚さ(例えば2〜3μm)となるようにノズルN2から絶縁性材料を吐出し、第1絶縁層を形成する。そして、第1絶縁層の絶縁性材料に重ねて、ノズルN1から導電性材料を吐出し、第1導電層を形成する。さらに、第1導電層の導電性材料に重ねて、ノズルN2から絶縁性材料を吐出し、第2絶縁層を形成する。同様に、第2導電層〜第6導電層および第3絶縁層〜第6絶縁層を形成する。
この結果、第2工程において、第1〜第6絶縁層および第1〜第6導電層からなる積層体B1が形成される。
【0018】
次に、積層体B1を板材1と一体のまま液体吐出装置100のステージSから切断装置200の固定台Rに移載する(第3工程)。
図3は、切断装置200の固定台Rに積層体B1を設置した状態を示す図である。
ここで、切断装置200として、トムソン型を用いた切断装置、金型を用いた切断装置、レーザー切断装置、ウォーターカッター、ダイシングソー、あるいは、エッチングを用いた切断装置を採用することができる。以下、切断装置200がレーザー切断装置であるものとして説明する。
【0019】
次に、積層体B1に予め設定した分割線(図3における一点鎖線)の位置にレーザー光を照射することによって積層体B1を切断する(第4工程)。
図4は、積層体B1を切断する工程を示す図である。
なお、本実施形態においては、積層体B1を板材1によって支持するものとして説明するが(図4(a)参照)、図4(b)に示すように、必要に応じて、側面から積層体B1を支持する側壁1a,1bを設置することも可能である。
ここで、積層体B1の分割線は、配線抵抗や浮遊容量等を考慮して算出された配線の厚み(即ち、積層体B1の上面視における切り出し幅)となる位置に設定されている。
【0020】
そして、第4工程において、切断装置200の制御部210は、上面視において分割線に沿い、側面視において積層体B1の上面に対して90度よりも小さい入射角となるようにレーザー光を照射する。
これにより、切断時に照射するレーザー光が、切り出す部分の積層体(以下、「配線基板P1」と称する。)に照射され、絶縁性および導電性に影響が生じることを防止できる。
【0021】
また、切断装置200の制御部210は、積層体B1における絶縁層および導電層を1層ずつ、もしくは、各1層の絶縁層および導電層を1組として除去する。即ち、制御部210は、同時に2層の導電層が除去されないようにレーザー光の照射を行う。
これにより、異なる層の導電層に対して同時にレーザー光が照射され、切断時に配線基板P1が短絡する事態を防止できる。
なお、切り出した配線基板P1は、紫外線を照射して板材1に接する絶縁層を硬化させ、接着性を低下させることにより板材1から分離する。
【0022】
第4工程において切り出された配線基板P1は、第4工程で切断されることにより形成された第1の面S1(切断面)および第1の面S1とは反対側(裏面側)の第2の面S2(図6参照)を有する。これら第1の面S1および第2の面S2は、配線基板P1の層に交差する方向の外面となる。配線基板P1は、配線の幅が第2工程において形成した導電層の厚さ(例えば2〜3μm)となる。
このような工程により、配線基板P1が製造される。
なお、図4(b)に示すように、板材1の上面視において隣り合う2辺の位置に、積層体B1を支持するための側壁1a,1bを設置しておくと、第4工程においてより容易に切断を行うことができる。
特に、切断装置200として、応力を加えて切断を行うものを採用した場合に、側壁1a,1bを設置すると、積層体B1の切断時における変形等を抑制でき、導電層の短絡等を防止することが可能となる。
【0023】
次に、積層体B1から切り出した配線基板P1にソルダーレジストを施す(第5工程)。
図5は、配線基板P1にソルダーレジストを施す工程を示す図である。
第5工程では、電子素子を実装する領域以外の部分(図5中の斜線領域)にソルダーレジスト液を塗布する。このとき、配線基板P1は両面および側面に導電層が露出していることから、配線基板P1の導電層が露出している各面にソルダーレジストを施す。
【0024】
次に、ソルダーレジストを施した配線基板P1に電子素子を実装する(第6工程)。
なお、電子素子の電極と配線基板P1の配線とは、例えばはんだボール等によって電気的に接続される。
図6は、配線基板P1に電子素子D1,D2が実装された状態を示す図である。
図6に示すように、電子素子D1と電子素子D2とは配線基板P1の配線(導電層)によって電気的に接続されており、これら配線は、第2工程における導電層の厚さに相当する配線の幅および絶縁層の厚さに相当する配線の間隔となっている。なお、図6においては、電子素子D1が第1の面S1に実装され、電子素子D2が第1の面S1とは反対側の第2の面S2に実装された状態を示している。なお、電子素子は、配線基板P1の第1の面S1(切断面)若しくは第2の面S2のいずれかに1つ実装されていれば良い。
【0025】
この結果、電子素子D1,D2が実装され、積層体B1の形成時に定まる配線幅および配線間隔と、配線基板P1の切り出し時に定まる配線の厚さとを有する電子部品C1(電子部品)が製造される。
この電子部品C1は、他の電子部品と組みつけられて、完成体としての電子機器を構成する。
【0026】
(作用)
次に、作用を説明する。
本実施形態に係る配線基板の製造方法では、第2工程において、板材1の被吐出面Fに所定の厚さを有する導電層および絶縁層を複数層形成し、積層体B1を得る。
このとき形成する導電層の厚さが配線基板P1の配線の幅に相当するものとなるため、第2工程において、目的とする配線の幅を実現するためには、その配線の幅に相当する導電層の厚さとすれば良い。同様に、第2工程における絶縁層の厚さが配線基板P1の配線の間隔に相当するものとなるため、第2工程において、目的とする配線の間隔を実現するためには、その配線の間隔に相当する絶縁層の厚さとすれば良い。
なお、この積層体B1は、配線基板P1の配線構造が積層した積層体となっている。
【0027】
そして、切り出す部分が所定の幅となるように、第4工程において、導電層および絶縁層が重なる方向(層に平行でない方向)に積層体B1を切断し、並行した導電層が配線を形成する配線基板P1を得る。
このとき切り出す部分に設けた幅が配線基板P1の配線の厚さ(高さ)となるため、第4工程において、目的とする配線の厚さを実現するためには、その配線の厚さに相当する幅で積層体B1から配線基板P1を切り出せば良い。
このように形成した配線基板P1は、第5工程においてソルダーレジストを施され、第6工程において電子素子が実装されることにより、目的とする配線幅および配線間隔と、配線の厚さとを有する電子部品C1となる。
【0028】
図7は、本実施形態に係る配線基板の製造方法によって製造した電子部品C1を備える電子機器の例を示す図である。
図7においては、電子機器として折り畳み式の携帯電話機に電子部品として電子部品C1が組みつけられている場合の例を示している。
図7に示す電子機器において、電子部品C1は、例えば液晶ディスプレイのドライバーICを実装するフレキシブル基板として用いることができる。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る配線基板の製造方法では、積層した絶縁層および導電層からなる積層体を層が重なる方向に切断することにより、配線基板を得ている。
そのため、極めて細い場合(例えば2〜3μm)を含め、目的とする配線の幅を絶縁層および導電層の厚さによって容易に実現することができる。
したがって、配線基板に形成する配線をより微細化することが可能となる。
【0030】
図8は、本発明における配線の微細化についての効果を示す図である。
なお、図8(a)は、導電性材料および絶縁性材料を低粘度で吐出した場合を示し、図8(b)は、導電性材料および絶縁性材料を図8(a)の場合よりも高い粘度である高粘度で吐出した場合を示している。
図8に示すように、第2工程において、絶縁性材料および導電性材料として吐出する液の粘度を調整することにより、種々の配線の幅および間隔を有する配線基板を形成することが可能となる。
【0031】
また、本実施形態に係る配線基板の製造方法では、積層体を切断する際の幅を選択することにより、配線の厚さを容易に調整することができる。
したがって、従来のインクジェット法あるいはセミアディティブ法等の配線形成技術に比べ、配線を容易に厚くすることができる。
図9は、本発明における配線の厚さについての効果を示す図である。
低電圧で薄さを求められる配線基板であれば、図9(a)に示すように、第4工程において積層体B1から切り出す部分の幅を狭くし、高電圧で配線抵抗の減少を求められる配線基板であれば、図9(b)に示すように、第4工程において積層体B1から切り出す部分の幅を広くすれば良い。
【0032】
また、本実施形態に係る配線基板の製造方法では、導電層によって形成された配線の間に絶縁層が配置された状態で配線基板を得ることができるため、配線の間隔がより小さくなっても、配線間の絶縁性をより確実に行うことができる。また、配線に電子素子を実装した際に、絶縁層によって配線を支持することができるため、一定の厚さを有する配線に電子素子を実装した際に、配線が潰れる事態を防止することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る配線基板の製造方法では、両面に配線が露出した配線基板を得ることができるため、電子素子の両面実装が容易な配線基板とすることができる。
さらに、本実施形態に係る配線基板の製造方法では、積層体を層が重なる方向に切断して配線を形成しているため、基材に液滴を吐出して平面上に配線を形成した場合に比べ、配線の形状にムラが少ない。
そのため、配線基板が屈曲した際に応力が集中し難く、亀裂の発生を防ぐことができる。また、高周波信号が入力した時に、配線の形状が信号伝達に影響を与えることを防止できる。
【0034】
なお、第1実施形態では、第2工程において、インクジェット法によって絶縁層および導電層を形成する場合を例に挙げて説明したが、絶縁層および導電層を積層させることができれば、セミアディティブ法等のインクジェット法以外の技術を用いることができる。
ここで、第1実施形態において、主に第1工程から第4工程が本発明における配線基板の製造方法に対応し、主に第1工程から第6工程が本発明における電子部品の製造方法に対応する。また、第2工程が積層体形成工程に対応し、第4工程が配線基板形成工程に対応し、第6工程が実装工程に対応する。また、配線基板P1が本発明における配線基板に対応し、積層体B1が配線構造の積層体に対応する。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の配線基板の製造方法について説明する。
本実施形態においては、第1実施形態の場合よりも複雑な配線パターンを有する配線基板を形成する場合を例として説明する。
ここで、本実施形態における配線基板の製造方法では、第1実施形態に対し、第2工程が異なっている。
したがって、以下、異なる部分である第2工程について主に説明する。
【0036】
(配線基板の製造方法)
本実施形態においては、第1実施形態と同様に、液体吐出装置100のステージSに板材を設置する(第1工程)。
次に、板材1の被吐出面FにノズルN1およびノズルN2から導電性材料および絶縁性材料を吐出し、導電層および絶縁層からなる積層体B2を形成する(第2工程)。
このとき、本実施形態においては、導電層および絶縁層として、一様な平面状の層のみならず、同一層に導電層と絶縁層とが混在した層を含む積層体B2を形成する。なお、インクジェット法を用いた液体吐出装置100の場合、ノズルの切り替えによって導電層と絶縁層とを形成することができるため、同一層に導電層と絶縁層とを混在させて積層体B2を形成することが容易である。
【0037】
図10〜23は、板材1の被吐出面Fに積層体B2が形成される工程を示す図であり、各図の(a)は上面図、(b)は正面図である。なお、図10〜20においては、説明の便宜のために、積層体B2の幅方向にx軸、奥行き方向にy軸、x軸およびy軸に垂直な方向(上下方向)にz軸を設定する。
第2工程においては、まず、図10に示すように、板材1の被吐出面Fの全面に一様な厚さ(例えば2〜3μm)となるようにノズルN2から絶縁性材料を吐出し、第1配線層を形成する(第2−1工程)。本実施形態において、第1配線層は、板材1に接する層であるため、導電層を形成せずに全面を絶縁層とする。
【0038】
そして、図11に示すように、第1配線層に重ねて、x=0(積層体B2の一端)からx=x1の範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−2工程)、x=x1からx=X(積層体B2の他端)の範囲にノズルN1から導電性材料を吐出し(第2−3工程)、第2配線層を形成する。
次に、図12に示すように、第2配線層に重ねて、x=0からx=x2の範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−4工程)、x=x2からx=x3の範囲にノズルN1から導電性材料を吐出し(第2−5工程)、x=x3からx=Xの範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−6工程)、第3配線層を形成する。
【0039】
次に、図13に示すように、第3配線層に重ねて、x=0からx=x4の範囲にノズルN1から導電性材料を吐出し(第2−7工程)、x=x4からx=Xの範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−8工程)、第4配線層を形成する。
次に、図14に示すように、第4配線層に重ねて、x=0からからx=x1の範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−9工程)、x=x1からx=Xの範囲にノズルN1から導電性材料を吐出し(第2−10工程)、第5配線層を形成する。
【0040】
次に、図15に示すように、第5配線層に重ねて、x=0からx=x3の範囲にノズルN1から導電性材料を吐出し(第2−11工程)、x=x3からx=Xの範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−12工程)、第6配線層を形成する。
次に、図16に示すように、第6配線層に重ねて、x=0からx=Xの範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−13工程)、第7配線層を形成する。即ち、第7配線層は、全面が絶縁層となる。
【0041】
次に、図17に示すように、第7配線層に重ねて、x=0からx=Xの範囲にノズルN1から導電性材料を吐出し(第2−14工程)、第8配線層を形成する。即ち、第8配線層は、全面が導電層となる。
次に、図18に示すように、第8配線層に重ねて、x=0からx=Xの範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−15工程)、第9配線層を形成する。即ち、第9配線層は、全面が絶縁層となる。
【0042】
次に、図19に示すように、第9配線層に重ねて、x=0からx=x3の範囲にノズルN1から導電性材料を吐出し(第2−16工程)、x=x3からx=Xの範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−17工程)、第10配線層を形成する。
次に、図20に示すように、第10配線層に重ねて、x=0からからx=x1の範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−18工程)、x=x1からx=Xの範囲にノズルN1から導電性材料を吐出し(第2−19工程)、第11配線層を形成する。
【0043】
次に、図21に示すように、第11配線層に重ねて、x=0からx=x4の範囲にノズルN1から導電性材料を吐出し(第2−20工程)、x=x4からx=Xの範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−21工程)、第12配線層を形成する。
次に、図22に示すように、第12配線層に重ねて、x=0からx=x2の範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−22工程)、x=x2からx=x3の範囲にノズルN1から導電性材料を吐出し(第2−23工程)、x=x3からx=Xの範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−24工程)、第13配線層を形成する。
【0044】
次に、図23に示すように、第13配線層に重ねて、x=0からx=x1の範囲にノズルN2から絶縁性材料を吐出し(第2−25工程)、x=x1からx=Xの範囲にノズルN1から導電性材料を吐出し(第2−26工程)、第14配線層を形成する。
この結果、第2工程において、第1〜第14配線層からなる積層体B2が形成される。
次に、積層体B2を板材1と一体のまま液体吐出装置100のステージSから切断装置200の固定台Rに移載する(第3工程)。
【0045】
次に、積層体B2に予め設定した分割線(図24における一点鎖線)の位置にレーザー光を照射することによって積層体B2を切断する(第4工程)。
図24は、積層体B2を切断する工程を示す図である。
本実施形態では、積層体B2を切断した場合の配線基板P2が、第1実施形態における平行な配線よりも複雑なパターンとなるように、各配線層を形成してある。
具体的には、第4工程において切り出された配線基板P2は、図24に示すように、一端において配線が等間隔に形成されている一方、他端においては配線の間隔が広がるパターンとなっている。
このような工程により、配線基板P2が製造される。
【0046】
次に、積層体B2から切り出した配線基板P2にソルダーレジストを施し(第5工程)、ソルダーレジストを施した配線基板P2に電子素子を実装する(第6工程)。
図25は、配線基板P2に電子素子D1,D2が実装された状態を示す図である。
第2実施形態における配線基板P2は、一端よりも他端の方が配線の間隔が広い形状となっているため、例えば、配線間隔の狭い領域に電子素子D1としてLCDコントローラ等の集積回路を実装し、配線間隔の広い領域に電子素子D2として規定のインターフェース用の信号処理回路等を実装することができる。
この結果、積層体B2の各配線層の形状に対応した配線基板P2と、配線基板P2の切り出し時に定まる配線の厚さとを有する電子部品C2が製造される。
この電子部品C2は、他の電子部品と組みつけられて、完成体としての電子機器を構成する。
【0047】
(作用)
次に、作用を説明する。
本実施形態に係る配線基板の製造方法では、第2工程において、板材1の被吐出面Fに所定の形状を有する配線層を複数層形成し、積層体B2を得る。
このとき形成する導電層の厚さが配線基板P2の配線の幅に相当するものとなるため、第2工程において、目的とする配線の幅を実現するためには、その配線の幅に相当する厚さの導電層を有する配線層の構造とすれば良い。同様に、第2工程における絶縁層の厚さが配線基板P2の配線の間隔に相当するものとなるため、第2工程において、目的とする配線の間隔を実現するためには、その配線の間隔に相当する厚さの絶縁層を有する配線層の構造とすれば良い。さらに、第2工程において、目的とするパターンの配線を実現するためには、そのパターンを断面とする複数の配線層を順次形成すれば良い。なお、目的とする配線のパターンが複雑な場合であっても、より多くの配線が沿う方向と板材1の被吐出面Fとが平行になるように積層の向きを定めると、より簡単に各配線層を形成することができる。
なお、この積層体B2は、配線基板P2の配線構造が積層した積層体となっている。
【0048】
そして、切り出す部分が所定の幅となるように、第4工程において、導電層および絶縁層が重なる方向(層に平行でない方向)に積層体B2を切断し、目的とするパターンの配線が形成された配線基板P2を得る。
このとき切り出す部分に設けた幅が配線基板P2の配線の厚さ(高さ)となるため、第4工程において、目的とする配線の厚さを実現するためには、その配線の厚さに相当する幅で積層体B2から配線基板P2を切り出せば良い。
このように形成した配線基板P2は、第5工程においてソルダーレジストを施され、第6工程において電子素子が実装されることにより、目的とする配線幅および配線間隔と、配線の厚さと、配線のパターンとを有する電子部品C2となる。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る配線基板の製造方法では、絶縁層および導電層が混在した配線層を含む積層体を層が重なる方向に切断することにより、配線基板を得ている。
そのため、極めて細い場合(例えば2〜3μm)を含め、目的とする配線の幅を絶縁層および導電層の厚さによって容易に実現することができる。
したがって、配線基板に形成する配線をより微細化することが可能となる。
さらに、本実施形態に係る配線基板の製造方法では、目的とする配線のパターンを配線層の形状によって容易に実現することができる。
【0050】
図26は、第2実施形態の配線基板の製造方法を用いて製造した配線基板の他の例を示す図である。
図26に示すように、隣接する配線層において導電層同士を重ねて形成することで、積層体B2を分割したときに、配線の幅がより広い配線基板P2を形成することができる。
なお、同様に、隣接する配線層において絶縁層同士を重ねて形成することで、積層体B2を分割したときに、配線の間隔がより広い配線基板P2を形成することも可能である。
【0051】
ここで、第2実施形態において、主に第1工程から第4工程が本発明における配線基板の製造方法に対応し、主に第1工程から第6工程が本発明における電子部品の製造方法に対応する。また、第2工程が積層体形成工程に対応し、第4工程が切断工程に対応し、第6工程が実装工程に対応する。また、配線基板P2が本発明における配線基板に対応し、積層体B2が配線構造の積層体に対応する。
【0052】
(応用例)
第1および第2実施形態において、第4工程で積層体B1,B2を切断する際に、1本の直線からなる分割線を設定し、この分割線に沿う平面によって積層体B1,B2から配線基板P1,P2を切り出すこととした。
これに対し、本応用例では、積層体B1,B2の分割線を1本の直線ではなく、屈曲する線等にすることにより、切り出される配線基板P1,P2の形状をより複雑なものとする。即ち、切り出す部分の幅(配線基板P1,P2の配線の厚さ)が位置によって異なるように積層体B1,B2を切断するものとする。
例えば、分割線として、配線基板P1,P2を切り出す幅が狭い部分と広い部分とを設定したり、切り出す幅が徐々に変化する部分を設定したりする。
【0053】
図27は、積層体から切り出す部分の幅を変化させた場合の例を示す図である。
なお、図27では、積層体B1を切断する場合を例として示している。
図27に示す例においては、x軸の原点に近い範囲では、一定の狭い幅で配線基板を切り出し、次いで、x軸の増加と共に、幅を増加させて配線基板を切り出し、以降、積層体の端部まで、一定の広い幅で配線基板を切り出している。
これにより、切り出された配線基板P1は、部分によって厚さが異なる複雑な形状となる。
したがって、配線基板の厚さを厚くすることで、配線基板の強度を高めることができ、電子素子を実装する際の取り扱いが容易となる。
また、1つの配線基板において、可撓性の高い部分と剛性の高い部分とを混在させることができるため、配線基板に要求される強度の特性を容易に実現することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 板材、B1,B2 積層体、C1,C2電子部品、D1,D2 電子素子、F 被吐出面、N1,N2 ノズル、P1,P2 配線基板、R 固定台、S ステージ、1a,1b 側壁、100 液体吐出装置、110,210 制御部、200 切断装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と導電層との少なくともいずれかによって形成した層を複数積層させて前記絶縁層および前記導電層を含む積層体を形成する積層体形成工程と、
前記積層体形成工程において形成した前記積層体を、複数の前記層と交差する面に沿って切断する切断工程と、
を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記積層体形成工程において、少なくとも1つの前記層を前記絶縁層からなる部分と前記導電層からなる部分とによって形成することを特徴とする請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記積層体形成工程において、前記複数の層をインクジェット法によって形成することを特徴とする請求項1または2記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
絶縁層と導電層との少なくともいずれかによって形成した層を複数積層させて前記絶縁層および前記導電層を含む積層体を形成する積層体形成工程と、
前記積層体形成工程において形成した前記積層体を、複数の前記層と交差する面に沿って切断し、前記積層体の一方によって構成され、前記切断によって形成される第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有する配線基板を形成する配線基板形成工程と、
前記配線基板の前記第1の面と前記第2の面との少なくともいずれか一方に、電子素子を実装する実装工程と、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記積層体形成工程において、少なくとも1つの前記層を前記絶縁層からなる部分と前記導電層からなる部分とによって形成することを特徴とする請求項4記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記積層体形成工程において、前記複数の層をインクジェット法によって形成することを特徴とする請求項4または5記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
絶縁層と導電層との少なくともいずれかによって形成した層を複数積層した積層体が、複数の前記層と交差する面に沿って切断された構成を有し、切断面に前記絶縁層および前記導電層によって形成された配線パターンを有することを特徴とする配線基板。
【請求項8】
絶縁層と導電層との少なくともいずれかによって形成した層が複数積層され、複数の前記層に交差する方向の外面に、前記絶縁層および前記導電層によって構成された配線パターンを有する配線基板と、
前記配線基板の前記外面に搭載され、前記配線パターンの前記導電層に接続された電子素子と、
を有することを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−199367(P2012−199367A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62185(P2011−62185)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】