説明

配車管理システム

【課題】基地局で把握している位置情報と実際の車両位置にずれに考慮した効率のよい配車業務が実現する配車管理システムを提供する。
【解決手段】車両からの車両位置情報を収集して記憶する位置情報データベース103と、顧客乗車位置(情報)と車両位置情報を基に車両を検索する配車管理システムにおいて、受付配車端末108が、顧客乗車位置情報を中心とした探車対象範囲8と、該探車対象範囲8より狭い探車除外範囲7とを設定し、前記探車対象範囲8から探車除外範囲7を除いた円環状の探車領域を得、この探車領域に位置し且つ進行方向が顧客乗車位置に向かう方向の車両を検索することにより、配車効率を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客の求めに応じて、目的地まで客を運び、距離・時間に応じて料金を領収する営業用(タクシー)に対する配車要求があったとき、要求された場所に最も早くたどり着ける営業用自動車への配車を指示することができる配車管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に郊外地域における営業用(以下、車両と呼ぶ)は、顧客からの電話連絡を配車センターで受け、該配車センターのオペレータが顧客から指示された場所に最も近く且つ空車状態の車両を選択し、当該車両に対して指定された場所に配車を指示することが行われている。
【0003】
この配車管理システムとしては、例えば各車両に無線通信装置とGPSを搭載し、GPSによる位置情報と空車や実車等の動態情報を逐次基地局に無線で送信することにより基地局が各車両の状態を把握し、顧客からの配車要求があったとき最適な車両に対して指示を出すものが知られており、例えば下記特許文献1には、配車を依頼をした顧客の電話番号や顧客コード等によって顧客データベースからその乗車地(経度、緯度)を割り出し、その地点にもっとも近い営業車両を検索して配車指示を行うことが記載されている。
【0004】
また特許文献2には、乗車地に最短時間で到達する車両を検索して該当車両に配車指示を行うと共に、その到着予定時間から一定時間を経過してもまだ到着してない場合にその車両に対して警告を行うシステムが提案されている。
【特許文献1】特開平5−81598号公報
【特許文献2】特開2001−101586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の従来技術による配車管理システムは、ポーリング方式(車両情報の収集を基地局から送信するポーリング信号に対する車両からの返信信号によって行う方式)が採用されているが、前記ポーリング方式による信号送信タイミングも数十秒から数分単位間隔で定期的に行われていることが多いことや、配車センターのオペレータが顧客からの配車要求を受け付け、指定された条件から配車候補を検索してその中から最適と思われるものを決定して該当車両に指示するのにも数十秒から数分の時間を要することや、この間も車両は顧客を捜すために移動していることが多いことから、基地局で把握している位置情報と実際の車両位置にずれが生じることから的確な配車指示ができず、顧客の待ち時間が長くなる可能性があると言う不具合があった。
【0006】
また、前記基地局で把握している位置情報と実際の車両位置とのずれを低減するために、デジタル無線によってリアルタイムに車両の情報を取得しようとするシステムも考えられるが、実際の車両運行においては、走行場所の条件によっては電波の衝突・干渉により車両位置情報をリアルタイムに正しく送受信できないことがあり、特に管理する台数が多い場合や都市部などではその問題が顕著となって、常に最新の車両位置情報が得られるとは限らないと言う問題があった。
【0007】
更に従来技術においては、基地局で把握している車両の位置情報が顧客の要求する乗車地に近くてもその車両の進行方向が目的地から離れる方向へ移動していた場合、距離的には遠くても目的地に近づく方向へ移動中の車両を向かわせたほうが早い場合があるが、乗車位置と車両位置との距離、又は距離と制限速度から求められる到着予想時間などによって配車候補を選択していたため、効率的な配車管理ができないと言う不具合もあった。
【0008】
本発明の目的は、前述の従来技術による不具合を除去することであり、配車要求があったとき、要求された場所に最も早くたどり着ける営業用自動車の配車を的確に指示することができる配車管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明は、複数の車両の車両位置を記憶する位置情報データベースと、顧客乗車位置を含む配車要求及び前記車両情報データベースに記憶した車両位置を基に前記配車要求に適した車両を検索し出力する受付配車端末とを備える配車管理システムであって、前記受付配車端末が、前記顧客乗車位置を中心とした第1の領域を設定する工程と、前記顧客乗車位置を中心とし、前記第1の領域より狭く任意の領域より広い第2の領域を設定する工程と、前記第1の領域から第2の領域を除いた探車領域を設定する工程と、前記探車領域に位置する車両を前記車両位置情報を基に検索し出力する工程とを実行することを第1の特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記特徴の配車管理システムにおいて、前記受付配車端末が、時間経過に応じた同一車両の複数の車両位置を基に車両の進行方向を取得する工程と、前記探車領域に位置し、且つ前記進行方向が前記顧客乗車位置情報に向かう方向を含む所定の許容範囲方向の車両を検索する工程とを実行することを第2特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記何れかの特徴の配車管理システムにおいて、前記第1の領域が、顧客乗車位置を中心とした第1の距離を半径とする円形状領域であり、前記第2の領域が、前記第1の距離より短くゼロ以上の第2の距離を半径とした円形状領域であることを第3の特徴とする。
【0012】
更に本発明は、時間経過に応じた複数の車両の車両位置を取得して記憶する位置情報データベースと、顧客乗車位置を含む配車要求及び前記車両情報データベースに記憶した車両位置を基に前記配車要求に適した車両を検索する受付配車端末とを備える配車管理システムにおいて実行される配車管理プログラムであって、前記受付配車端末に、前記顧客乗車位置を中心とした第1の領域を設定する第1手順と、前記顧客乗車位置を中心とし、前記第1の領域より狭く任意の領域より広い第2の領域を設定する第2手順と、前記第1の領域から第2の領域を除いた探車領域を設定する第3手順と、時間経過に応じた同一車両の複数の車両位置を基に車両の進行方向を取得する第4手順と、前記探車領域に位置し、且つ前記進行方向が前記顧客乗車位置に向かう方向を含む所定の許容範囲方向の車両を検索する第5手順を実行させることを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による配車管理システムでは、受付配車端末が、前記顧客乗車位置情報を中心とした第1の領域と、前記顧客乗車位置情報を中心とし、前記第1の領域より狭く任意の領域より広い第2の領域を設定し、該第1の領域から第2の領域を除いた探車領域を設定し、該探車領域に位置する車両を車両位置情報を基に検索することによって、車両から位置情報を取得した時刻とオペレータが探車して配車する時刻差による車両の移動に起因する基地局での位置情報と実際の車両位置にずれが生じることを防止し、顧客の待ち時間が長くなることを防止することができる。更に本発明によれば、任意の車両の時間的経過に伴う複数の車両位置情報を基に車両の進行方向を取得し、前記探車領域において進行方向が前記顧客乗車位置情報に向かう方向を含む所定の許容範囲方向である車両を検索することによって、更に顧客の待ち時間が長くなることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明により配車管理システムの一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態による配車管理システムの全体構成を示す図、図2は基地局の内部構成の一例を示す概略図、図3は車両から送信される車両情報を模式的に表現した図、図4は配車管理システムにおける配車処理全体の流れを示す図、図5は配車管理システムにおける基本探車処理の流れを示す図、図6は配車管理システムにおけるドーナツ範囲探車処理のフローチャートを示す図、図7は配車管理システムにおける方向指定探車処理のフローチャートを示す図、図8はドーナツ範囲探車における対象範囲を模式的に示す図、図9は方向指定探車における対象範囲を模式的に示す図、図10はドーナツ範囲探車と方向指定探車の併用による対象範囲を模式的に示す図、図11は方向指定探車における対象範囲を分割する方法について模式的に示す図である。尚、本実施形態の全図において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
<全体構成の説明>
【0015】
本実施形態による配車管理システムの全体構成は、図1に示す如く、無線電波の送受信を行うアンテナ2を介して複数の車両3a〜3eと通信を行う配車管理システムの基地局(配車センター)1と、公衆回線5を介して配車連絡を行うための携帯電話等の顧客端末6とから成る。前記車両3a〜3eは、各々、前記アンテナ2と交信するための無線通信端末4a〜4eと、図示しないGPSユニットやAVM(オートマチック・ビークル・モニタリング)操作表示端末等が搭載され、現在地・移動方向・移動速度などの車両に関する情報や、開局・空車・実車・待機などの車両の動態に関する情報(以下、車両情報と呼ぶときもある)を定期的に前記無線通信端末4a〜4eを介して発信すると共に、基地局1から送られる指示や制御コマンド等を受信する機能を有し、該基地局1と車両3a〜3eは、逐次・音声・データ通信等の送受信を行っているものとする。
【0016】
本配車管理システムは、前記基地局1が公衆回線5を通じて携帯電話等の顧客端末6からの配車要求を受け付け、この要求に従い複数の車両の中からその要求に対応する車両へ指示を出し、指示された車両が顧客に指定された場所へ配車を行う配車サービスを提供するものであって、図中、太矢印は車両の進行方向を示し、符号7で示す円形状領域は基地局1が探車(配車候補を探す処理)対象範囲を示し、符号8で示す円形状領域は探車除外範囲を示すものであり、その詳細については後述する。
【0017】
前記基地局1の内部構成は、図2に示す如く、前記アンテナ2に接続され車両と基地局1内各システムとの音声・データ通信のやり取りを制御する(無線)通信制御装置101と、各車両における車両情報や収集し現在の位置を地図情報とあわせて出力するAVM(オートマチック・ビークル・モニタリング)システム102と、前記通信制御装置101やAVM102を介して得た車両情報を格納する車両情報データベース103と、地図・交通情報などの情報を格納する地図情報データベース104と、予め登録された顧客の氏名/電話番号/指定配車先(場所/位置情報)等の顧客情報を格納した顧客情報データベース107と、前記公衆回線5を通じて顧客からの電話を受け付けるPBX(Private Branch eXchange:構内交換機)105と、前記公衆回線5の通信事業者の提供する発信者番号通知サービスによって顧客の電話番号を取得し、前記顧客情報データベース107のと連携して顧客情報をオペレータに表示出力するCTI(Computer Telephony Integration)サーバ106と、前記AVMシステム102及びCTIサーバ106に接続し、オペレータが配車業務を行うための受付配車端末108とを備える。
【0018】
尚、前述の装置機器は、各々CPU・メモリ・HDDなどを内蔵し、各処理はHDDに記憶されたプログラムや予め設定された情報に従いCPUで実行され、その際に読み出されたり、得られたりした情報は、これらのメモリやHDDに書き込み読み込まれるものであるが、専用のハード/ソフト構成であっても良い。また、本システムは、車両の乗務員や顧客との通話をおこなうためのマイク・スピーカー・受話器・ヘッドセット・各種ネットワーク機器があるものであるが、本実施形態においては図示を省略して説明する。また前記受付配車端末108は、業務規模に応じて複数台設けられるものであるが、本実施形態においては理解を容易にする為に1基として説明する。
【0019】
<車両情報の説明>
次いで、本実施形態における車両情報を図3を参照して説明する。図3は、車両3から送信される車両情報の一例を模式的に表現した図であって、この車両情報の送信データ20は、車両を登録する登録チャネルを示すチャネル201と、各チャネルにおける車両毎に異なる番号が付与された車番202と、車両のGPSユニットから得られる緯度情報を示す緯度情報203と、車両のGPSユニットから得られる経度情報である経度情報204と、車両の各種業務状態(例えば、開局[営業を開始]、実車[顧客を乗せて賃走している状態]、空車[顧客を探している状態]、迎車[配車指示により顧客を迎えに行く途中]、待機[待機指示により待機中]、休憩[食事などで一時的に営業を中止している]、空予[実車であるがまもなく空車になる予定の状態]、閉局[営業を終了])を示す動態205と、GPSによる位置情報の時系列な推移から得られる方向情報である進行方向206と、GPSによる位置情報の時系列な推移から得られる速度情報である速度207と、GPSにおける衛星との通信状態による測位精度を示す測位状態208と、車両の各種機器の状態を示す各種ステータス209等とから構成される。
【0020】
尚、本実施形態においては前述した各項目データの例を説明したが、この車両情報は、前述のものに限られるものではなく、業務形態や収集データの方針に応じて各種情報の追加、変更が可能であるが、本発明を実施するには、少なくとも、車両を特定する情報と、緯度、経度等の位置情報、空車もしくは空車予定かそれ以外か示す動態情報と、進行方向を示す方向情報とが必要である。更に前記車両情報は、ポーリング方式の場合は基地局から送られるポーリング信号に応答して発信され、任意発呼方式の場合は車両の移動距離、時間経過、動態変化、ボタン操作といった任意のタイミングで発信される。また、これらの併用方式であっても良い。
【0021】
本発明による配車管理システムは、前述の如き構成から成り、次いで本配車管理システムにおける配車処理全体の流れを図4を参照して説明する。この配車処理ステップS1000の全体は、図4に示す如く、大別して、顧客からの連絡により配車の受付を行う受付処理ステップS1001と、該顧客要求に応じた車両を探索する探車処理ステップS1002と、該探車した車両に対して配車を指示する配車指示ステップS1003とに分けられ、これらステップS1001〜1003を順に実行することによって配車処理が行われる。
【0022】
前記受付処理ステップS1001は、顧客端末6からの架電を受け、顧客端末6の発信者番号等により顧客情報データベース107から顧客情報を取得するステップS1100と、顧客からの要求事項、具体的には配車場所や時刻等の任意の事項を取得するステップS1200とから成り、前記探車処理ステップS1002は、前記ステップS1200で取得した配車場所(位置情報)を基点として該基点から第1の所定範囲領域(基点を中心とした所定距離aを半径とする領域)内に位置する車両を探索する基本探車処理ステップS1300と、該ステップS1300にて得た第1の所定範囲領域から、前記基点から第2の所定範囲領域(基点を中心とした所定距離b[a>b>0]を半径とする領域)を除いた円環状(ドーナツ状)の領域内に位置する車両を探車するドーナツ範囲探車ステップS1400と、該ステップS1400内で探車した各車両の進行方向を指定した探車を行う方向指定探車ステップS1500と、該ステップS1500で探車した車両情報を出力(位置情報として画像出力、または配置場所を基点として近接する順番のリスト表示出力)を行う探車結果の出力ステップS1600とから成る。
【0023】
前記配車指示ステッS1003は、オペレータの選択によって配車車両を決定(入力)する配車車両決定ステップS1700と、オペレータが該ステップS1700により決定した車両に対して配車を指示し且つ車両の了解を得た後に当該配車の動態を「迎車」に変更する配車指示ステップS1800と、該ステップS1800により指示した車両からの受付伝票や履歴を登録する配車処理を終了させた後の処理ステップS1900とから成る。尚、前述の各処理は、本実施形態においては主にAVMシステム102とCTIサーバ106と受付配車端末108にて行われるものである。
【0024】
<第1実施形態動作>
本発明の第1の実施形態による配車管理システムは、前述の探車処理ステップS1002を主に特徴とするものであって、この探車処理ステップS1002の詳細を次に図5を参照して説明する。尚、図5中の右側フローはステップS1302内の詳細を示すものであり、ステップS1500による方向指定探車は本発明の第2実施形態において説明する。
本実施形態による探車処理の基本探車処理ステップS1300は、図5に示す如く、まず、前記受付ステップS1001で得た顧客が乗車を希望する位置(顧客乗車位置:探車範囲における中心座標となるものであり緯度経度からなる情報が望ましい)の情報を取得するステップS1301と、全車両の動態情報をチェックして、あらかじめ指定された動態のものだけを抽出するステップS1302を実行する。
【0025】
この候補対象の抽出ステップS1302は、図5右側のフローに示す如く、車両情報データベース103に蓄積されている最新の全車両の動態に関する車両情報を呼び出すステップS1303と、該抽出した車両情報を全ての車両情報から抽出したか否かを判定するステップS1304と、該ステップS1304により探車する車両情報の残があるときに当該車両の動態情報を取得するステップS1305と、該取得した動態情報が指定された動態(「空車」)か否かを判定するステップSS1306と、該ステップS1306により動態が「空車」と判定されたときに1次候補に追加するステップS1307を順次実行することによって、第1候補のレベルである配車対象の動態(「空車」)を基に候補となる車両を抽出する。
【0026】
次いで本配車管理システムは、前記ステップS1301によって空車状態の車両を抽出した後、前記顧客乗車位置情報を中心として所定距離(例えば、時速40Km/hで車両が走行していると想定した場合、15分以内の距離として10Kmを想定)内の円形状領域(図1の探車対象範囲7:第1の所定範囲領域)を呼び出すステップS1308と、他の候補の車両が有るか否かを判定するステップS1309と、前記円形状領域内の候補となった車両の車両位置情報を取得するステップS1310と、前記抽出した動態が空車状態の車両が前記円形状領域内に位置するか否かを判定するステップS1311と、位置する場合は2次候補として追加するステップS1312とを順次繰り返して実行することによって、前記円形状領域内に位置する空車状態の全車両を抽出する処理を行う。尚、前記ステップS1311における判定は、ステップS1301で得られる顧客乗車位置情報とステップS1310で得られる車両位置情報によって求められる距離が、ステップS1308で得られる対象範囲となる半径(距離)より短いか否かで行なわれるが、経度緯度等の絶対的位置情報の2次元座標値の比較を行っても良く、これに限られるものではない。
【0027】
次いで本実施形態による配車管理システムは、図6に示すドーナツ範囲探車処理のステップS1400を実行する。この処理は、前記ステップS1308にて呼び出した顧客乗車位置情報を中心として所定半径距離内の円形状領域(第1の領域)から、前記顧客乗車位置に近い車両が在する円形状領域(第2の領域)を除外することにより、車両の基地局で把握している位置と実際の位置とが異なる車両を除外するための処理であって、図6に示す如く、顧客が乗車を希望する位置(顧客乗車位置)の情報を取得するステップS1401と、前記ステップS1312で抽出した2次候補対象の車両情報を読み出すステップS1402と、前記基本探車範囲から除外する半径領域(第2の所定範囲領域)を呼び出すステップS1403と、前記2次候補とした車両の有無を判定するステップS1404と、該ステップS1404により有りと判定された2次候補の車両の位置情報を取得するステップS1405と、該取得した車両が前記除外半径領域(第2の所定範囲領域)内か否かを判定し、除外半径領域内と判定されたときにステップS1404に戻るステップS1406と、該ステップS1406により範囲外(顧客乗車位置に近くない)とされた車両を3次候補として追加するステップS1407とを順次実行することによって、図1に示した探車対象範囲7から探車除外範囲8を除いた位置の車両を抽出する処理を実行する。
【0028】
尚、前記ステップS1406による領域範囲内か否かの判定は、前記顧客乗車位置情報と車両位置情報によって求められた距離が、ステップSで得た対象範囲となる半径(距離)より短いものを取り除くことや、経度緯度等の絶対的位置情報の2次元座標値の比較を行うことによって行われる。また前記ステップS1403における内円(除外)半径は、ステップS1308による外円半径(基本探車範囲)と同様、あらかじめ設定登録される値のほか、顧客の要求内容または車両の状況等によって導き出されるものであってもよい。ただし、この内円(除外)半径は、ステップS1308による外円半径よりも小さく、ゼロ以上の任意の半径距離、例えば5分の探車時間差(車両位置のずれ)とした場合、約3Kmの半径距離に設定することが考えられる。
【0029】
本実施形態による配車管理システムによる配車候補を抽出する概念を図8を用いて説明する。図8は、本実施形態によるドーナツ範囲探車における対象範囲を模式的にあらわした図であり、前記ステップS1308によって呼び出した外円半径22の外円(領域)23から、内円半径25の内円(領域)25を除いた円環状の領域に位置する車両を配車候補として抽出することにより、本システムは、顧客からはるかに遠い位置の車両33と逆に顧客に近接している除外範囲27に位置の車両31を配車対象外とし、外円23と内円25間の円環状の対象範囲26の車両32を配車候補として抽出することによって、顧客から遠ざかる方向への走行をしている車両31を候補外とすることができる。本配車管理システムは、こうして得られた配車候補を最も顧客条件に近い順に並び替え(例えば、顧客乗車位置に近い順に)図2の受付配車端末108のモニタ上に表示し(ステップS1600:探車結果の出力)、図4に示す配車指示処理ステップS1003へと続くものである。
【0030】
以上説明したように、従来システムにおいては、各車両から送信され車両情報データベースに蓄積されている最新の情報に基づき行われる探車処理において、営業中のほとんどの車両が常に移動していることから、蓄積された位置情報と、探車処理時およびその結果に従い配車指示を行うときの実際の位置と異なっており、これによって適切な配車ができないという不具合、例えば、蓄積された最新の情報が20秒前の情報だった場合、時速40kmで直線方向に移動中の車両の実際の位置は約200m異なる不具合や、ポーリング方式の場合、基地局(配車センター)からポーリング信号を発信し、この信号を受けて各車両が順番に車両情報を返すが、最初の車両と最後の車両では数十秒から数分の時間的な差異が生じて実際の位置はさらに異なる不具合に着目し、本実施形態による配車管理システムは、この実位置と蓄積された位置情報のずれを考慮して配車候補を抽出することにより、より効率の良い配車を行うことができる。即ち、従来の配車管理システムでは顧客乗車位置に近い車両に高い優先順位が与えられていたが、実際には顧客乗車位置を通り過ぎて、かえって車両が顧客乗車位置から遠く離れていることがあり、効率の良い配車管理ができないという不具合があったが、上述したように本実施形態によってこの問題が解決される。
<第2実施形態動作>
【0031】
前記本発明の第1の実施形態による配車管理システムは、顧客配車位置に近接している車両を除外することによって効率の良い配車管理を行うことができるものであるが、車両の進行方向を考慮することによって、更に精度の高い配車処理を行うことができ、この本発明の第2の実施形態による配車管理システムを次に説明する。
【0032】
図7は、本発明の第2の実施形態による方向指定探車処理ステップS1500のフローチャートを示す図である。この方向指定探車処理は、図6のドーナツ範囲探車(処理)ステップS1400と同様、基本探車処理S1300をベースに行われる処理であり、図7に示す如く、顧客が乗車を希望する位置(顧客乗車位置)の情報を取得するステップS1501と、前記ステップS1312で抽出した2次候補対象の車両情報を読み出すステップS1502と、該2次候補とした車両の有無を判定するステップS1503と、該候補車両毎にその進行方向の情報を取得するステップS1504と、該車両の位置情報を取得するステップS1505と、顧客乗車位置情報と車両位置情報から得られる車両から顧客乗車位置に対する方向を求めるステップS1506と、前記ステップS1504で得た進行方向とステップS1506で得た顧客乗車位置情報とを比較しその値が許容範囲か否かを判定するステップS1507と、該ステップS1507において許容範囲(方向)と判定した車両を3次候補とするステップS1508とを、2次候補のすべての車両に対して順次実行する。
【0033】
尚、前記ステップS1507における許容範囲(方向)とは、例えば、東,東南,南,南西,西,北西,北、北東の八つの方位を基本とした場合、仮に車両から顧客乗車位置に対する方向が東であったときは進行方向の東と近接する東南または北東もその値の範囲に含まれるものとする。さらに細分化して十六方位としたり、また車両から顧客乗車位置に対する方向に対し一定の角度を許容範囲として設定するものであってもよい。本実施形態では、上述の八方位を基本とし、車両から顧客乗車位置に対する方向を八方位の中から最も近い角度の方位に変換し、その方位と近接する二つの方位の三つの方位を許容範囲とする。また、前記進行方向の取得は、移動局情報データベース103に記憶した車両の位置情報を所定時間毎に抽出することによって行うものであり、例えば、特定の車両の最新の3分間隔毎の位置情報を2点抽出し、該2点を時間経過をファクターとした移動ベクトルを分析することによって車両がどの方向に移動しているかを取得することができる。この位置情報は3点以上であっても良い。即ち、本実施形態においては、特定の車両の時間経過に応じた位置情報を複数抽出することによって車両の進行方向を取得するものである。
【0034】
本実施形態による配車管理システムによる配車候補を抽出する概念を図9を用いて説明する。図9は、本実施形態によるドーナツ範囲探車における対象範囲に車両進行方向をファクターとして加えた探車方式を模式的にあらわした図であり、図中、基本探車処理S1300によって得られる対象範囲(基本対象範囲)26内には、2次候補に該当する車両31,32,34が位置し、これらの車両がそれぞれ矢印51、52、54の各進行方向に進んでいるものとし、前記ステップS1506,S1507で取得、判定される車両から顧客乗車位置に対する方向とその許容範囲を、3方向矢印61,62,64として表している。
【0035】
本実施形態による配車管理システムは、図9に示した状態において、前記ステップS1507による判定により、進行方向51及び52の車両31及び32が、顧客乗車位置方位とその許容範囲(許容方位)61及び62からその条件を満たし、3次候補として出力し、且つ車両34は、条件を満たさないため3次候補から除外するように動作するものである。即ち本実施形態による配車管理システムは、探車エリア内の車両の進行方向を検知し、車両位置から顧客乗車位置に向かう方向を基準とした3方向を許容範囲(許容方位)として設定し、該許容範囲の方向に向かう車両を配車候補として抽出することによって、上述の車両情報データベースに蓄積されている情報の登録時間と、検索時の時間との差による実際の車両位置のずれを補正し、顧客乗車位置の方向へ進行中の車両を候補対象とすることで効率の良い配車管理を行うことができる。
<第3実施形態の説明>
【0036】
本発明による配車管理システムは、前記第1及び第2実施形態で説明したドーナツ範囲探車と方向指定探車とを同時に行うことによってさらに精度の高い配車管理を行うことができ、この第3の実施形態を次に説明する。
【0037】
図10は、本発明の第3の実施形態によるドーナツ範囲探車と方向指定探車の併用による対象範囲を模式的に示した図であり、図中、ドーナツ範囲探車による探車対象範囲26に車両32及び34が位置し、該車両34の進行方向が矢印54の如く顧客乗車位置から遠ざかる方向であり、車両32の進行方向が矢印52の如く顧客乗車位置に接近する方の場合、両車両の許容範囲(許容方位)62及び64と顧客乗車位置とを比較し、その許容範囲内である車両32を配車候補とするものである。
【0038】
本実施形態による配車管理システムは、車両31は配車候補に含まれていたものの、実際には顧客乗車位置を通り過ぎ、さらに離れてしまっている可能性が高く、この車両に配車指示を出した場合、業務効率が低下する可能性が大きいものであったが、図10に示すドーナツ範囲探車と方向指定探車の併用による配車候補を抽出することによって、この問題を解決し配車効率を高めることができる。
【0039】
尚、本実施形態なよる探車処理において、ドーナツ範囲探車S1400と方向指定探車S1500はどちらを先に行っても良いが、ステップS1504〜S1507の方位・許容範囲の取得や、判定にかかる処理を考えるとドーナツ範囲探車処理S1400を先に行い候補車両を絞ってから方向指定探車を行った方が効率が良いと考えられる。
【0040】
また方向指定探車処理の効率を上げる1方法として図11に示す方向指定探車による対象範囲を分割する方法もあり、これを以下説明する。
本実施形態による方向指定探車処理は、図11に示す如く、前記基本探車処理ステップS1300によって得られる探車対象範囲(基本対象範囲)を、顧客乗車位置を中心として東西南北の方位にて、(北−)北東(−東)方面の26a,(東−)南東(−南)方面の26b,(南−)南西(−西)方面の26c,(西−)北西(−北)方面の26dの4エリアに分割し、北東方面26aにおける進行方向の許容範囲を[西,南西,南]、南東方面26bにおける進行方向の許容範囲を[北,北西,西]、南西方面26cにおける進行方向の許容範囲を[北,北東,東]、北西方面26dにおける進行方向の許容範囲を[東,南東,南]とあらかじめ各エリア毎にその許容範囲を設定しておき、指定方向の判定を行う車両が、4つのエリア26a〜26dのどのエリアに居るかによって判定の許容範囲を決定し、各車両31,32,34の進行方向51,52,53と比較されることによって配車候補を絞ることができる。
【0041】
即ち本例による方向指定探車処理は、前記円形状の探車対象範囲(基本対象範囲)を中央の顧客乗車位置を中心として4等分割し、該分割した各領域に位置する車両の選択条件として、前記各領域の円弧から中心に向かう3方向の進行方向の車両を選択することによって、顧客乗車位置に近接する可能性が高い方向に移動している車両を検索することができる。
この方法によれば前述の図9で説明した指定方向探車と同様に配車効率を高めるとともに、比較対象となる車両ごとにその許容範囲を設定するやり方に比べ、処理を軽くすることができ配車候補の検索効率を向上することができる。
【0042】
以上説明した本発明による探車処理及びドーナツ範囲探車および方位指定探車は、従来の配車管理システムの追加機能として加えることにより、配車管理の効率を向上することが可能である。また、この方法も図10と同様にドーナツ範囲探車と併用することができる。
【0043】
このように本発明におけるドーナツ範囲探車または方位指定探車、もしくはその併用によって得られた配車候補は、図2の受付配車端末108にリスト又は画像表示され、オペレータはこの表示によって顧客要求に対応する車両を容易に選択することができる。このとき、顧客要求や、探車結果によっては、絞る前の候補も選択対象として出力するようにしてもよい。例えば、探車結果が、顧客の要求する台数に満たないときは、より低次(2次候補や1次候補)の候補から必要な台数を満たすだけの候補車両を読み出すようにしてもよい。
【0044】
尚、前記各実施形態においては、一定距離を半径とする真円により探索範囲及び除外範囲を設定する例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、他の領域設定法を採用しても良い。例えば、本発明による探車処理をベースに範囲対象にかかる地形要素、交通要素、人口分布要素、顧客利用要素等によって基本となる半径となる距離に、重み付けを加える可変距離を足し加えることでさらにその効果を高めることも考えられるが、その場合探索範囲,除外範囲は真円とはならない。しかしながら上述したドーナツ範囲探車、指定方向探車を行う限り、本発明に含まれることは言うまでもない。これは探索範囲,除外範囲のひとつまたは両方を楕円形、多角形にする場合も同様である。
【0045】
また、各実施形態説明では、動態における抽出条件を「空車」のみとしたが、「空予(空車予定)」もその条件に加えるようにしても良く、更に本発明を適用する会社の業務方針などによって上記説明した以外の条件、例えば、配車候補にしない「ペナルティ」等の除外条件を加えるようにしてもよい。
【0046】
このように本発明におけるドーナツ範囲探車または方位指定探車、もしくはその併用によって得られる配車候補は、基本探車処理だけによって得られる配車候補よりも、目的地(顧客乗車位置)に早く到着する車両を多く含むため、この候補によって行われる配車管理は従来よりも配車効率が高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態による配車管理システムの全体構成を示す図。
【図2】基地局1の内部構成の一例を示す概略図。
【図3】車両3から送信される車両情報を模式的に表現した図。
【図4】配車管理システムにおける配車処理全体の流れを示す図。
【図5】配車管理システムにおける基本探車処理のフローチャートを示す図。
【図6】配車管理システムにおけるドーナツ範囲探車処理のフローチャートを示す図。
【図7】配車管理システムにおける方向指定探車処理のフローチャートを示す図。
【図8】ドーナツ範囲探車における対象範囲を模式的に示す図。
【図9】方向指定探車における対象範囲を模式的に示す図。
【図10】ドーナツ範囲探車と方向指定探車の併用による対象範囲を模式的に示す図。
【図11】方向指定探車における対象範囲を分割する方法について模式的に示す図。
【符号の説明】
【0048】
1:基地局、3a〜3e:車両、4a〜4e:無線通信端末、2:アンテナ、5:公衆回線、6:顧客端末、7:探車対象範囲、8:探車除外範囲、20:送信データ、22:外円半径、25:内円半径、26:探車対象範囲、26a:北東方面、26b:南東方面、26c:南西方面、26d:北西方面、27:除外範囲、31〜34:車両、51〜53:進行方向、61,62,64:方向矢印、101:通信制御装置、102:AVMシステム、103:車両情報データベース、104:地図情報データベース、106:CTIサーバ、107:顧客情報データベース、108:受付配車端末


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両の車両位置を記憶する位置情報データベースと、顧客乗車位置を含む配車要求及び前記車両情報データベースに記憶した車両位置を基に前記配車要求に適した車両を検索し出力する受付配車端末とを備える配車管理システムであって、
前記受付配車端末が、
前記顧客乗車位置を中心とした第1の領域を設定する工程と、
前記顧客乗車位置を中心とし、前記第1の領域より狭く任意の領域より広い第2の領域を設定する工程と、
前記第1の領域から第2の領域を除いた探車領域を設定する工程と、
前記探車領域に位置する車両を前記車両位置情報を基に検索し出力する工程とを実行することを特徴とする配車管理システム。
【請求項2】
前記受付配車端末が、
時間経過に応じた同一車両の複数の車両位置を基に車両の進行方向を取得する工程と、
前記探車領域に位置し、且つ前記進行方向が前記顧客乗車位置情報に向かう方向を含む所定の許容範囲方向の車両を検索する工程とを実行することを特徴とする請求項1記載の配車管理システム。
【請求項3】
前記第1の領域が、顧客乗車位置を中心とした第1の距離を半径とする円形状領域であり、前記第2の領域が、前記第1の距離より短くゼロ以上の第2の距離を半径とした円形状領域であることを特徴とする請求項1乃至2何れかに記載の探車管理システム。
【請求項4】
時間経過に応じた複数の車両の車両位置を取得して記憶する位置情報データベースと、顧客乗車位置を含む配車要求及び前記車両情報データベースに記憶した車両位置を基に前記配車要求に適した車両を検索する受付配車端末とを備える配車管理システムにおいて実行される配車管理プログラムであって、
前記受付配車端末に、
前記顧客乗車位置を中心とした第1の領域を設定する第1手順と、
前記顧客乗車位置を中心とし、前記第1の領域より狭く任意の領域より広い第2の領域を設定する第2手順と、
前記第1の領域から第2の領域を除いた探車領域を設定する第3手順と、
時間経過に応じた同一車両の複数の車両位置を基に車両の進行方向を取得する第4手順と、
前記探車領域に位置し、且つ前記進行方向が前記顧客乗車位置に向かう方向を含む所定の許容範囲方向の車両を検索する第5手順を実行させることを特徴とする配車管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−46712(P2008−46712A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219328(P2006−219328)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】