説明

酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法

【課題】 酸化亜鉛系結晶からなる薄膜の微細加工において、現像及びホトレジスト剥離のいずれの処理においても酸化亜鉛系結晶からなる薄膜の溶解を抑制し、導電特性及び可視光透過性の大幅な劣化を生ずることなくパターニング可能な方法の提供すること。
【解決手段】 基板上に酸化亜鉛系結晶からなる薄膜を成膜し、該薄膜表面にホトレジストを形成した後にパターンマスクを介して露光し、前記ホトレジストの露光部を現像液により現像処理を施して前記露光部のホトレジストを除去し、残存した前記ホトレジストを介して前記薄膜にエッチングを施した後に剥離液により前記ホトレジストを剥離処理するパターニング方法であって、前記現像液及び前記剥離液のpHが10.5〜13.5であり、且つ液温が15〜50℃の温度範囲であることを特徴とする酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法に関し、より詳しくは、ホトリソグラフィにおける現像あるいはホトレジスト剥離の夫々の処理において、導電性や可視光透過性を損なわない薄膜のパターニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)やタッチパネル等に使用される導電性薄膜として酸化インジウムスズ(ITO)が多用されている。しかしながら、電子デバイスの需要増大により希少金属であるインジウムの枯渇が懸念されるため、導電性と可視光透過性を有する酸化亜鉛(ZnO)がITOの代替材料として有望視されている。
【0003】
しかし、酸化亜鉛薄膜にホトリソグラフィを用いてパターン形成すると、導電性や可視光透過性が低下するという問題があった。
これは、パターニング過程における現像、エッチング、ホトレジスト剥離等の夫々の処理で使用される薬液が強酸性又は強アルカリ性であるため、両性酸化物である酸化亜鉛が溶解することに起因していた。
【0004】
下記特許文献1及び2には、酸化亜鉛を含有する薄膜におけるパターニング方法が開示されており、現像あるいはホトレジスト剥離の夫々の処理条件について検討がなされている。
【0005】
特許文献1には、現像とエッチング処理を同時に行うパターニング方法が開示されている。
特許文献1の開示技術は、現像液にpH13〜14の水酸化カリウム溶液を用いて現像とエッチング処理を同時に行うものである。この技術を用いると、処理工程数を減らして効率的にパターニングを行うことができる。
しかし、pH13〜14の水酸化カリウム溶液を用い、液温調節や処理時間調節がなされていないため、やはり酸化亜鉛が溶解する虞があり、導電特性や可視光透過性が低下するという問題を解決できるものではなかった。
【0006】
一方、特許文献2には、現像液に水酸化テトラメチルアンモニウム、エッチング液に硝酸、塩酸、水の混合液、ホトレジスト剥離液にエタノールアミンを用いる酸化亜鉛と酸化スズからなる薄膜のパターンニング方法が開示されている。
特許文献2の開示技術を用いると、80%前後の可視光透過率と10−3〜10−2Ωcmの導電特性を有し、且つテーパー形状も良好な薄膜を得ることができる。
特許文献2に記載のパターニング方法では、現像液、剥離液の夫々の薬液濃度が調整されて各処理に供される。しかし、薬液の液温は調節されておらず、また夫々の処理時間についても調節されていないため、過剰な現像処理や剥離処理を防止できるものではなかった。従って、薄膜の溶解を防止することができず、導電特性や可視光透過性の低下を招く虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−227300号公報
【特許文献2】特開2006−196201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した問題を解決すべくなされたものであって、酸化亜鉛系結晶からなる薄膜の微細加工において、現像及びホトレジスト剥離のいずれの処理においても酸化亜鉛系結晶からなる薄膜の溶解を抑制し、導電特性及び可視光透過性の大幅な劣化を生ずることなくパターニング可能な方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、基板上に酸化亜鉛系結晶からなる薄膜を成膜し、該薄膜表面にホトレジストを形成した後にパターンマスクを介して露光し、前記ホトレジストの露光部を現像液により現像処理を施して前記露光部のホトレジストを除去し、残存した前記ホトレジストを介して前記薄膜にエッチングを施した後に剥離液により前記ホトレジストを剥離処理するパターニング方法であって、前記現像液及び前記剥離液のpHが10.5〜13.5であり、且つ液温が15〜50℃の温度範囲であることを特徴とする酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記現像液のpHが12.0〜13.0であり、且つ液温が25〜50℃の温度範囲であることを特徴とする請求項1記載の酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法に関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記現像処理及び前記剥離処理を夫々15〜100秒の間で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記現像液が水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムのいずれかから選択されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法に関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記剥離液がアミン系化合物であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法に関する。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記酸化亜鉛系結晶が酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法に関する。
【0015】
請求項7に係る発明は、前記酸化亜鉛系結晶がアルミニウム、ガリウム、マグネシウム、マンガン、インジウムのうち1種以上を1〜6重量%含有することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、基板上に酸化亜鉛系結晶からなる薄膜を成膜し、該薄膜表面にホトレジストを形成した後にパターンマスクを介して露光し、前記ホトレジストの露光部を現像液により現像処理を施して前記露光部のホトレジストを除去し、残存した前記ホトレジストを介して前記薄膜にエッチングを施した後に剥離液により前記ホトレジストを剥離処理するパターニング方法であって、前記現像液及び前記剥離液のpHが10.5〜13.5であり、且つ液温が15〜50℃の温度範囲であることにより、酸化亜鉛系結晶が溶解する虞がないため膜厚が減少せず、良好なパターン形状が得られるとともに、導電特性及び可視光透過性の変動範囲を10%未満とすることができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、前記現像液のpHが12.0〜13.0であり、且つ液温が25〜50℃の温度範囲であることにより、効率的に現像処理を施すことができるため、酸化亜鉛結晶からなる薄膜の溶解を防止することができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、前記現像処理及び前記剥離処理を夫々15〜100秒の間で行うことにより、現像及び剥離処理を確実に施すことができるとともに、酸化亜鉛結晶からなる薄膜を溶解することなく良好なパターン形状とすることができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、前記現像液が水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムのいずれかから選択されることにより、レジストパターンの溶解を防止することができ、レジストの現像不良を生じる虞がない。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、前記剥離液がアミン系化合物であることにより、レジストパターンのみを剥離することができるため、薄膜が著しく溶解する虞がない。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、前記酸化亜鉛系結晶が酸化亜鉛であることにより、電子デバイス等に汎用可能な薄膜とすることができる。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、酸化亜鉛系結晶がアルミニウム、ガリウム、マグネシウム、マンガン、インジウムのうち1種以上を1〜6重量%含有するため、結晶性を損なうことなく導電性の向上した薄膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るパターニング方法における夫々の処理工程を示す模式図であって、(a)は成膜工程、(b)はホトレジスト形成工程、(c)は露光工程、(d)は現像工程、(e)はエッチング工程、(f)はホトレジスト剥離工程を示す図である。
【図2】GZO膜における可視光透過率の現像液浸漬時間依存性を示す図であって、(a)は水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)濃度が2wt%、3wt%、5wt%の結果、(b)はTMAH濃度が10wt%、20wt%の結果を示す図である。
【図3】GZO膜における抵抗及び膜厚の剥離液浸漬時間依存性を示す図である。
【図4】GZO膜におけるキャリア濃度及び電子移動度の剥離液浸漬時間依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法について詳述する。
図1は、本発明に係るパターニング方法における夫々の処理工程を示す模式図である。
基板(1)に酸化亜鉛系結晶からなる薄膜(2)を成膜し、薄膜(2)の表面にホトレジスト(3)を形成した後にホトレジスト(3)上にパターンマスク(4)を載置する。パターンマスク(4)を介して紫外光を照射して露光した後に、ホトレジスト(3)の露光部(5)を現像液により現像する。現像処理の後、残存したホトレジスト(3)を介してエッチング処理を施して薄膜(2)をエッチングし、剥離液によってホトレジスト(3)を剥離する。
【0025】
先ず、基板(1)に酸化亜鉛系結晶からなる薄膜(2)が成膜される(図1(a)参照)。
酸化亜鉛系結晶の結晶構造は六方晶系ウルツァイト構造である。ウルツァイト構造は、結晶の単位格子内において亜鉛原子面、酸素原子面が存在し、結晶格子の垂直方向に対してこれらの面が交互に重なって結晶を構成している。
本発明では、単結晶、多結晶のいずれであってもよい。
【0026】
酸化亜鉛結晶に亜鉛(Zn)、酸素(O)以外の元素を添加することなく成膜して電子デバイスに利用することができる。
しかし酸化亜鉛(ZnO)は3.4eVのワイドギャップ半導体であり、その抵抗率は10−2Ω・cm〜10Ω・cmであるため、その導電性の向上、あるいはバンドギャップ制御のために周期律表の第2族、第4族、第7族、第13族、第14族元素などの種々の元素を添加してもよい。
本発明においては酸化亜鉛にアルミニウム、ガリウム、マグネシウム、マンガン、インジウムのうち1種以上の元素を添加することができる。前記元素の添加量は1〜6重量%であることが好ましく、3〜5重量%であることがより好ましい。1重量%未満であると導電性付与の効果が顕著でなく、6重量%を超えると固溶体が形成されず異相の析出が見られるようになり、結晶性の低下や抵抗率の増大が生じ、更に、透明薄膜を得ようとする場合は低透過率となるためいずれの場合も好ましくない。
【0027】
酸化亜鉛系結晶からなる薄膜の成膜方法は公知の方法を用いることができ、その一つとしてスパッタリング法が挙げられる。
本発明における成膜方法としては、具体的には例えば、上記したスパッタリング法や、真空蒸着法、イオンプレーティング法(プラズマ蒸着法)、DCスパッタ法、DCマグネトロンスパッタ法、RF重畳DCスパッタ法、レーザーアブレーション法、分子線堆積法(MB)、原子線堆積法(ALD)、化学気相成長法(CVD)等が用いられる。これらの中でも結晶性の良い薄膜を得ることができるため、イオンプレーティング法、DCマグネトロンスパッタ法、RF重畳DCスパッタ法が好適に用いられる。
【0028】
薄膜が形成される基板には、ガラス、単結晶、セラミックス、樹脂等を用いることができる。例えば、無アルカリガラス、シリコン単結晶(Si)、シリコン多結晶(Si)、サファイア単結晶(α−Al)、アルミナ(Al)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、環状ポリオレフィン樹脂等が用いられるが、これらに限定されない。また、薄膜を形成する基板は1層に限らず、前記基板上に、例えばアモルファス層を形成し、その上に薄膜を形成することもできる。
【0029】
酸化亜鉛系結晶からなる薄膜(2)を基板(1)上に成膜した後、薄膜(2)表面にはホトレジスト(3)が形成される(図1(b)参照)。
ホトレジスト(3)は感光性の樹脂であれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0030】
ホトレジスト(3)を形成した後に、ホトレジスト(3)上にパターンマスク(4)が載置され、このパターンマスク(4)を介して紫外線が照射され露光される(図1(c)参照)。
パターンマスク(4)のパターン形状は所望の配線パターンとされる。
【0031】
パターンマスク(4)を介してホトレジスト(3)を露光した後、現像液によりホトレジスト(3)の露光部(5)が現像される。即ち、パターンマスク(4)によりマスクされていない部分のホトレジスト(3)が除去されることとなる(図1(d)参照)。
【0032】
使用される現像液のpHは10.5〜13.5であり、pH12.0〜13.0であることがより好ましい。加えて、現像液の液温は15〜50℃の範囲に設定され、25〜50℃の範囲であることがより好ましい。
pHが10.5未満であると現像処理が不十分となり、一方、pHが13.5を超えるとレジストパターンのパターン形状が悪くなるとともに、薄膜(2)の溶解が顕著になる虞があるため、いずれの場合も好ましくない。
また、現像液の液温が15℃未満であると現像速度が遅くなって処理効率が低下し、一方、50℃を超えると現像速度が速くなり過ぎるため、ホトレジスト(3)のパターンも除去する虞があるため、いずれの場合も好ましくない。
【0033】
現像処理時間は15〜100秒の間であることが好ましく、20〜60秒の間であることがより好ましい。
現像処理時間を15〜100秒とすることにより、確実に現像処理を施して露光されたホトレジスト(3)を除去することができるとともに、過剰な現像を防止して薄膜(2)を溶解する虞がない。
現像処理時間が15秒未満であると現像が不十分となり、一方、100秒を超えて処理を施すと露光部(5)のホトレジスト(3)のみが除去されるだけでなく、薄膜(2)まで溶解する虞があるため、いずれの場合も好ましくない。
【0034】
現像に用いられる現像液は特に限定されず、公知の現像液を使用できるが、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)のいずれかから選択されることが好ましい。これらの水溶液を用いることで露光部(5)のホトレジスト(3)を確実に除去することができるとともに、レジストパターンを溶解する虞がない。
上記した現像液のうち、有機アルカリ系水溶液であるTMAHが好適に用いられる。TMAHを用いることで現像処理による残渣の発生を略なくすことができる。
【0035】
現像処理後、残存したホトレジスト(3)を介して薄膜(2)がエッチングされる(図1(e)参照)。エッチング方法としてはウェットエッチング、ドライエッチングのいずれであってもよい。
【0036】
ウェットエッチングを施す場合、使用するエッチング液は酸性であることが望ましく、強酸、弱酸ともに使用することができるが、弱酸を使用することが好ましい。また、有機酸、無機酸のいずれであってもよいが、有機酸を使用することが好ましい。
具体的なエッチング液としては、例えば酢酸、プロピオン酸等のカルボキシル基を1乃至複数有するカルボン酸やアンモニウム塩でpH調整された硝酸等が使用される。
【0037】
ドライエッチングを施す場合、その方法は特に限定されず、公知の方法を利用することができるが、反応性ガスプラズマを利用したプラズマエッチングによりエッチングすることが望ましい。そうすることで、良好なパターン形状が得られるとともに基板(1)を損傷する虞がない。
【0038】
薄膜(2)にエッチング処理を施した後に、残存するホトレジスト(3)は剥離液により剥離される(図1(f)参照)。
使用される剥離液のpHは10.5〜13.5である。加えて、剥離液の液温は15〜50℃の範囲に設定される。
pHが10.5未満であると剥離処理が不十分となり、一方、pHが13.5を超えると薄膜(2)を溶解する虞があるため、いずれの場合も好ましくない。
また、剥離液の液温が15℃未満であると剥離速度が遅くなって処理効率が低下するとともに残渣が発生する虞があり、一方、50℃を超えると剥離速度が速くなり過ぎるため、薄膜(2)も除去する虞があり、またパターン形状も悪くなるため、いずれの場合も好ましくない。
【0039】
ホトレジスト(3)の剥離処理時間は15〜100秒の間であることが好ましく、20〜60秒の間であることがより好ましい。
剥離処理時間を15〜100秒とすることにより、確実に剥離処理を施して残存したホトレジスト(3)を除去することができるとともに、薄膜(2)の溶解を防止することができる。
剥離処理時間が15秒未満であるとホトレジスト(3)の剥離が不十分となり、一方、100秒を超えて処理を施すとホトレジスト(3)のみが除去されるだけでなく、薄膜(2)まで溶解する虞があるため、いずれの場合も好ましくない。
【0040】
ホトレジスト(3)の剥離に用いられる剥離液は特に限定されず、公知の剥離液を使用できるが、アミン系化合物を用いることが好ましい。アミン系化合物を剥離液とすることで残存したホトレジスト(3)のみを剥離することが可能となる。
剥離液として使用されるアミン系化合物として、アルカノールアミン等が例示されるが、アルカノールアミン、特にジエタノールアミンが好適であり、薄膜(2)を溶解する虞がなく、また、パターン形状を良好とすることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明に係るパターニング方法に関する実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。
但し、本発明は下記実施例には限定されない。
【0042】
<イオンプレーティング法(プラズマ蒸着法)による成膜>
ターゲットとして酸化ガリウム(Ga)を3.5〜4.5重量%含む酸化亜鉛結晶タブレットを用い、基板としてガラスを用いた。
成膜時の基板加熱温度を180℃、導入ガス(アルゴン及び酸素)のガス圧を0.4〜0.6Pa、成膜速度を150〜170nm/min、プラズマ放電電流140〜150Aとして成膜し、膜厚50nm又は100nmのガリウム含有酸化亜鉛結晶からなる薄膜(以下、GZO膜という)を得た。
【0043】
(試験例1)
<GZO膜における抵抗及び可視光透過率の現像液浸漬時間依存性>
上記の成膜方法により膜厚100nmのGZO膜を作製した。パターンマスクを介して露光した後、現像液にTMAHを用い、GZO膜をTMAHに浸漬して現像した。
現像液のpHは12.5〜13.5、液温を27℃とし、TMAHの濃度を2wt%、3wt%、5wt%、10wt%、20wt%として夫々の現像液にGZO膜を10〜300秒浸漬し、シート抵抗及び可視光透過率の変化率を評価した。
可視光透過率を図2に示す。
【0044】
図2(a)において、◆は2wt%、●は3wt%、▲は5wt%の結果であり、
図2(b)において、■は10wt%、*は20wt%の結果である。
いずれのTMAH濃度においてもGZO膜の可視光透過率は約85〜87%と、高
い透過率を維持することができた。また、GZO膜の抵抗増加率を10%未満に抑制
できることがわかった。
浸漬後のGZO膜の膜厚は変化しておらず、成膜当初の膜厚と略変わらないことが
わかった。
【0045】
(試験例2)
<GZO膜における抵抗及びキャリア濃度の剥離液浸漬時間依存性>
上記の成膜方法により膜厚50nmのGZO膜を作製した。パターンマスクを介して露光した後、現像、エッチング処理を施し、剥離液にジエタノールアミンを用い、GZO膜を10〜600秒浸漬してホトレジストを剥離した。
剥離液のpHは11.5、液温を25℃とし、シート抵抗及びキャリア濃度の変化率を評価した。
尚、現像液に3wt%のTMAHを使用し、液温39℃、pH12.7に調整して、30秒現像処理を施した。
シート抵抗を図3、キャリア濃度を図4に示す。
【0046】
図3において、■はシート抵抗、●は膜厚のプロットである。
また、図4において、■は電子移動度、◆はキャリア濃度のプロットである。
抵抗の変化率を10%未満とすることができ、膜厚の減少も見られないことがわかった。
また、図4より、キャリア濃度も略減少しないことが確認され、高い電子移動度を有することが明らかとなった。
【0047】
以上の結果より、本発明に係るパターニング方法を用いて酸化亜鉛系結晶からなる薄膜をパターニングすると、薄膜が溶解せず、良好な導電特性と可視光透過性を有する薄膜が得られることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係るパターニング方法は、酸化亜鉛系結晶からなる薄膜において、液晶ディスプレイのTFT基板側の透明電極のような微細加工を要する電子デバイス、太陽電池や薄膜トランジスタ等に用いられる半導体及び電極、発光ダイオードのような発光素子等の微細加工に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 基板
2 薄膜
3 ホトレジスト
4 パターンマスク
5 露光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に酸化亜鉛系結晶からなる薄膜を成膜し、該薄膜表面にホトレジストを形成した後にパターンマスクを介して露光し、前記ホトレジストの露光部を現像液により現像処理を施して前記露光部のホトレジストを除去し、残存した前記ホトレジストを介して前記薄膜にエッチングを施した後に剥離液により前記ホトレジストを剥離処理するパターニング方法であって、
前記現像液及び前記剥離液のpHが10.5〜13.5であり、且つ液温が15〜50℃の温度範囲であることを特徴とする酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法。
【請求項2】
前記現像液のpHが12.0〜13.0であり、且つ液温が25〜50℃の温度範囲であることを特徴とする請求項1記載の酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法。
【請求項3】
前記現像処理及び前記剥離処理を夫々15〜100秒の間で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法。
【請求項4】
前記現像液が水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムのいずれかから選択されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法。
【請求項5】
前記剥離液がアミン系化合物であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法。
【請求項6】
前記酸化亜鉛系結晶が酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法。
【請求項7】
前記酸化亜鉛系結晶がアルミニウム、ガリウム、マグネシウム、マンガン、インジウムのうち1種以上を1〜6重量%含有することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の酸化亜鉛系結晶からなる薄膜のパターニング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−134495(P2011−134495A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291275(P2009−291275)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(509093026)公立大学法人高知工科大学 (95)
【Fターム(参考)】