説明

重送検知装置

【課題】 過剰な超音波の発信を抑えることにより、消費電力の低減、及び、超音波発信手段/超音波受信手段の高寿命化、及び、超音波の静音化した重送検知装置を提供する。また、超音波の発振パルスを制御することにより、確実に重送検知し、かつ、製品毎の調整工程を必要としない重送検知装置を提供する。
【解決手段】 シート状部材1の搬送路を挟んで、超音波発信手段2と超音波受信手段3を配置し、前記超音波発信手段2により発信され、シート状部材1を透過し、前記超音波受信手段3で受信された超音波の受信信号からシート状部材1の有無および重送を判定する重送検知装置13において、前記超音波発信手段2に超音波を発信させるために入力する発振パルスの数を増減させる制御手段4を備え、該制御手段4は、シート状部材1の有無を検知する際の前記発振パルスの数に比較して、シート状部材1の重送を検知する際の前記発振パルスの数を増やすよう制御することを特徴とする重送検知装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシート状部材を搭載し、シート状部材を一枚ずつ分離、搬送する機能を有する装置において、特に超音波センサを利用して、2枚以上のシート状部材を重ねたまま搬送してしまう重送を検知する重送検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ、プリンタ、複写機、印刷機、ATM(Automated Teller Machine)などにおいては、シート状部材を1枚づつ分離・搬送する機構が備えられている。しかし、シート状部材を1枚だけ搬送すべきところを、2枚以上のシート状部材の一部、あるいは全体が重なったまま搬送される重送が発生する可能性が考えられる。このため、シート状部材を搬送する装置には、シート状部材の重送を検知する機能が必要となる。シート状部材の重送を検知する機構として、各分野に超音波を利用した重送検知装置が普及している。以下、シート状部材として紙幣を例に、紙幣の重送を検知する重送検知装置について説明する(特許文献1参照。)。
【0003】
図2は、特許文献1において、従来の紙幣の重送検知装置の概要を示した図である。図2において、101は、検知対象のシート状部材であり、ここではシート状部材=紙幣を示す。102は、超音波発信手段であり、紙幣101に対して超音波を発信する。103は、超音波受信手段であり、超音波発信手段102の発信する超音波を受信する。また、図2に示すように、超音波受信手段103は、紙幣101を透過した超音波を受信可能なように紙幣101の搬送路を挟んで超音波発信手段102と対向するように設置されている。
【0004】
104は、制御手段であり、超音波発信信号として200kHzのパルス信号を駆動手段105に供給する。駆動手段105は、制御手段104より供給されたパルス信号を増幅させ超音波パルス信号を出力する。これにより、超音波発信手段102は、信号増幅された超音波パルス信号を基に200kHzの超音波を発信する。尚、制御手段104が供給する超音波発信信号は、例えば、一定時間に渡る200kHzのパルス信号を数周期分発信する信号である。これは、一般にバースト波と呼ばれるものであり、バースト波は数ms(ミリ秒)に一度、周期的に発信される。
【0005】
106は、信号増幅手段であり、超音波受信手段103の出力する超音波受信信号を増幅する。これは、超音波発信手段102と超音波受信手段103の間に搬送対象である紙幣101が入ると、超音波発信手段102より発信した超音波は、超音波受信手段103に到達するまでに減衰し、非常に微弱になってしまうため、超音波受信手段103の出力する超音波受信信号も振幅が微弱となり、これを信号増幅手段106で増幅し、重送検知判断の可能な信号振幅に引き上げるためである。また、110は、信号増幅率調整手段であり、信号増幅手段106の信号増幅率を調整する。ここで、信号増幅率調整手段110は、例えばボリュームである。また、この信号増幅率の調整は、例えば、製品出荷前に個々の製品について行ったり、製品使用者によって行われる。
【0006】
107は、A−D変換器であり、信号増幅手段106によって増幅された超音波受信信号(アナログ信号)を、デジタル信号に変換して信号解析手段108へ出力する。108は、信号解析手段であり、A−D変換器107においてデジタル化した超音波受信信号を解析して、解析結果を制御手段104へ出力する。109は、記憶手段であり、図2に示した重送検知装置の各設定値を保持する。これにより、図2に示した重送検知装置は、記憶手段109に保持された設定値を使用して重送検知動作を行う。
【0007】
次に、図2に示した重送検知装置の動作について説明する。
【0008】
まず、超音波発信手段102から発信された超音波は、紙幣101に当たり、その透過波を超音波受信手段103が受信する。これにより、超音波受信手段103は、受信した超音波の受信信号強度に応じて変化する超音波受信信号を出力する。次に、信号増幅手段106は、超音波受信手段103が出力する超音波受信信号を信号増幅率調整手段110の調整に応じた増幅率で増幅する。次に、A−D変換器107は、信号増幅手段106が増幅した超音波受信信号をデジタル信号へ変換し、デジタル化した超音波受信信号を信号解析手段108へ出力する。次に、信号解析手段108は、A−D変換器107の出力するデジタル化した超音波受信信号を解析する。次に、制御手段104は、信号解析手段108の解析結果を基に重送であると判断した場合は、装置または装置の利用者に重送が発生した旨を通知する処理を行う。
【0009】
図2の重送検知の手法は、受信した超音波受信信号の振幅の変化を信号解析手段108が解析することによって重送を検知するレベル判定方式と呼ばれるものである。このレベル判定方式についてさらに説明する。まず、予め重送判定閾値を設定した上で、紙幣101を搬送して紙幣101を透過した超音波の振幅を超音波受信手段103が取得する。紙幣101が正常に1枚ずつ搬送された場合の透過超音波の振幅と比較して、紙幣101が重送した場合の透過超音波の振幅は、超音波の減衰量が大きくなるため小さい値となる。従って、超音波受信手段103が取得し、信号増幅手段106が増幅した超音波受信信号の振幅を、波形解析手段108において前述の重送判定閾値と比較することにより、比較結果から紙幣101の重送を検知することが可能である。
【特許文献1】特開2004−231404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上に述べた、超音波重送検知装置を搭載したシート状部材搬送装置では、数ms(ミリ秒)毎に、一定周期分の超音波パルス信号を発信する。この従来の方式では、超音波でシート状部材の重送を検知するため、常に複数回の超音波パルス信号で超音波を発信させているが、シート状部材の重送を検知する必要のないとき、つまり、シート状部材の搬送を停止しているときにも、過剰に超音波を発信させていた。
【0011】
また従来の方法では、超音波発信手段および超音波受信手段の感度のばらつきにより、超音波受信信号の振幅が重送検知装置毎に異なるため、信号増幅手段の増幅率、或いは、重送判定閾値の調整、或いは、発振パルス数や発振パルス周波数や受信信号取得タイミングを変更する制御を必要とした。
【0012】
本発明は叙上の点に着目して成されたもので、過剰な超音波の発生を抑えるようにした重送検知装置を提供することを目的とする。併せて、発振パルス数を制御して、確実にシート状部材の有無の検知と、重送を検知できるようにした重送検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するため、重送検知装置を以下(1)〜(4)の構成とする。
【0014】
(1)シート状部材の搬送路を挟んで、超音波発信手段と超音波受信手段を配置し、前記超音波発信手段により発信され、シート状部材を透過し、前記超音波受信手段で受信された超音波の受信信号からシート状部材の有無および重送を判定する重送検知装置において、
前記超音波発信手段に超音波を発信させるために入力する発振パルスの数を増減させる制御手段を備え、
該制御手段は、シート状部材の有無を検知する際の前記発振パルスの数に比較して、シート状部材の重送を検知する際の前記発振パルスの数を増やすよう制御することを特徴とする重送検知装置。
【0015】
(2)シート状部材が搬送路に存在しない状態で、前記発振パルスの個数のひとつまたは複数の設定値における超音波の受信信号を取得して、前記超音波発信手段と前記超音波受信手段の基準感度を検出する基準感度検出手段を備え、前記制御手段は、前記基準感度に応じてシート状部材の有無を検知する際の前記発振パルスの個数を決定することを特徴とする前記(1)記載の重送検知装置。
【0016】
(3)シート状部材が搬送路に存在しない状態で、前記発振パルスの個数のひとつまたは複数の設定値における超音波の受信信号を取得して、前記超音波発信手段と前記超音波受信手段の基準感度を検出する基準感度検出手段を備え、前記制御手段は、前記基準感度に応じてシート状部材の重送を検知する際の前記発振パルスの個数を決定することを特徴とする前記(1)または(2)記載の重送検知装置。
【0017】
(4)シート状部材一枚が搬送路に存在する状態で、前記発振パルスの個数のひとつまたは複数の設定値における超音波の受信信号を取得し、前記制御手段は、該受信信号に応じて重送を検知する際の前記発振パルスの個数を決定することを特徴とする前記(1)または(2)記載の重送検知装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、従来の超音波重送検知装置を搭載したシート状部材搬送装置の構成が有していた問題を解決するものであり、過剰な超音波の発信を抑えることにより、消費電力の低減、及び、超音波発信手段/超音波受信手段の高寿命化、及び、超音波の静音化を図ることができる。
【0019】
また本発明は、発振パルス数を制御して確実にシート材の有無の検知と、シート材の重送を検知し、かつ、製品毎の調整工程を必要としない超音波重送検知装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0021】
まず、本発明の第1の実施形態である重送検知装置の概略構成について説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態における重送検知装置の概略構成を示す図である。図1に示す重送検知装置13は、超音波センサを利用して搬送する紙(シート状部材)が2枚以上となる重送を検知する装置である。符号1は、紙であり、搬送対象であるシート状部材を示す。すなわち、重送検知装置13は、紙1の重送を検知する。尚、本実施形態においては、シート状部材として紙を例に説明するが、この限りではなく、フィルムや紙幣などであってもよい。
【0023】
2は、超音波発信器であり、紙1に対して超音波を発信する。具体的には、超音波発信器2は、後述する駆動手段5から入力される超音波パルス信号に応じて超音波信号を発信する。3は、超音波受信器であり、超音波発信器2の発信する超音波を受信する。尚、図1に示すように、超音波受信器3は、紙1を透過した超音波を受信できるように紙1の搬送路を挟んで超音波発信器2と対向するように設置されている。これにより、超音波発信器2から発信された超音波は、紙1を透過して、その透過波を超音波受信器3が受信する。また、超音波受信器3は、受信した超音波の受信強度に応じて変化する出力電圧(超音波受信信号)を出力する。
【0024】
尚、上述したように、搬送路に紙1が存在するときには紙1を透過した超音波が超音波受信器3により受信されるが、搬送路に紙1が存在しないときには、超音波発信器2が発信した超音波が直接超音波受信器3により受信される。
【0025】
4は、制御手段であり、超音波発信信号として200kHzのパルス信号(以下、超音波信号とする)を駆動手段5に供給する。駆動手段5は、制御手段4より供給された超音波信号を増幅させ超音波パルス信号を出力する。これにより、超音波発信器2は信号増幅された超音波パルス信号を基に200kHzの超音波を発信させる。尚、制御手段4が駆動手段5へ供給する超音波信号は、例えば、一定時間に渡る数周期分の200kHzのパルス信号を発信する信号である。これは、一般にバースト波と呼ばれるものであり、バースト波は数msに一度発信される。また、制御手段4は、超音波信号としてバースト波を発信する間隔や1回のバースト波のパルスの個数(周期の数:以下発振パルス数と記述)を制御することができる。本発明ではバースト波のパルス数を増減することで超音波の受信強度が増減することを利用して、超音波のレベル調整を実働状態で行う。
【0026】
6は、信号増幅手段であり、超音波受信器3の出力する超音波受信信号を増幅する。これは、超音波発信器2と超音波受信器3の間に搬送対象である紙1が入ると、超音波発信器2より発信した超音波は、超音波受信器3に到達するまでに減衰し、非常に微弱な信号となり、超音波受信器3が出力する超音波受信信号も振幅が微弱となるためである。超音波受信信号が十分な振幅レベルになるよう信号増幅手段6で増幅し、重送検知判断の可能な信号振幅に引き上げる必要がある。本実施例では信号増幅手段6の増幅率は最適化された固定値とする。また信号増幅手段6は超音波受信信号が交流信号である場合は検波して直流信号に変換する機能を含んでいてもよい。
【0027】
7は、A−D変換器であり、信号増幅手段6によって増幅された超音波受信信号(アナログ信号)を、デジタル信号に変換して信号解析手段8へ出力する。この信号解析手段8は、A−D変換器7においてデジタル化した超音波受信信号を解析して、解析結果を制御手段4へ出力する。12は、記憶手段であり、図1に示した重送検知装置13の各設定値を保持する。具体的には、記憶手段12は、発振パルス数、重送検知レベル(閾値)などの設定値を保持する。また、制御手段4は、記憶手段12に保持されたそれらの設定値を使用して重送検知を行うよう重送検知装置13内を制御する。
【0028】
次に、信号解析手段8における重送検知の処理について具体例を挙げて説明する。
【0029】
信号解析手段8は、紙検知手段9、重送検知手段10、基準感度検出手段11から構成されており、デジタル化された超音波受信信号を解析して制御手段4に伝える。
【0030】
信号解析手段8における紙検知手段9について説明する。
【0031】
紙検知手段9は、デジタル化された超音波受信信号の振幅(以下、受信信号強度とする)を監視して、受信信号強度の大きさの変化から、超音波発信器2と超音波受信器3の間に紙1が1枚以上入っているか否かを判定することができる。尚、確実な紙検知を可能にするため紙1枚での受信信号強度がかなり低くなるように、後述する基準感度をもとに、後述する方法で紙検知時の発振パルス数は少なめに設定される。
【0032】
次に、信号解析手段8における重送検知手段10の処理について具体例を挙げて説明する。尚、重送検知手段10は紙検知手段9が紙検知と判断した場合に動作する。
【0033】
重送検知手段10は受信信号強度を監視して、受信信号強度の大きさの変化より重送を検知する。例えば、超音波発信器2と超音波受信器3の間に紙1を1枚だけ介在させたときの第1の受信信号強度と、超音波発信器2と超音波受信器3の間に紙1を2枚介在させたとき(重複したとき)の第2の受信信号強度を推定し、第1の受信信号強度と第2の受信信号強度の間の値を重送検知の閾値(S1)として、記憶手段12に保持する。上述したように、紙検知の際の少なめの発振パルス数の設定のままでは、紙1枚介在時の受信信号強度がかなり低くなるため紙2枚介在時の受信信号強度に接近しており、安定した重送の検知は困難である。そのため後述するように、基準感度をもとに設定された紙検知時の発振パルス数を用いて、後述する方法で重送検知時の発振パルス数を設定する。このときの紙1枚介在時の受信信号強度がかなり高くなるよう、発振パルス数は紙検知時のそれに比べて増加させる。このように重送検知時の発振パルス数は間接的にではあるが基準感度をもとに設定したとみなせる。
【0034】
このようにして設定された重送検知時の発振パルス数に対して、紙なしのときの受信信号強度はほぼ飽和信号強度に達し、紙1枚介在時の第1の受信信号強度は飽和信号強度に近づくため、紙1枚介在時の第1の受信信号強度は紙なしのときの受信信号強度に接近し、重送時の第2の受信信号強度との差が大きくなる。これにより重送検知手段10は、記憶手段12より閾値(S1)を参照して、現在搬送中の紙1を透過した超音波受信信号の受信信号強度と比較することで重送を検知する。尚、紙1の重送時における第2の受信信号強度は、超音波受信信号が殆ど透過しないことから、紙1の材質および厚さに関わらずほぼ一定値となる場合が一般的である。このように推定できる場合は、重送検知の閾値(S1)は第1の受信信号強度よりも第2の受信信号強度により近い値とする。
【0035】
信号解析手段8における基準感度検出手段11について説明する。
【0036】
基準感度検出手段11は、紙の搬送開始前または搬送終了後等で、超音波発信器2と超音波受信器3の間に紙が入っていないことが確実な場合に超音波信号の発振パルス数を一定の値に規定し、制御手段4に伝える。このときの受信信号強度を基準感度とし、基準感度が所定の値よりも低かった場合、制御手段4は紙検知時の超音波信号の発振パルス数を受信信号強度が所定の値に一致するまで増加させる。また、基準感度が所定の値よりも高かった場合、制御手段4は紙検知時の超音波信号の発振パルス数を受信信号強度が所定の値に一致するまで減少させる。
【0037】
例えば飽和受信信号強度を5Vと仮定して、上記の所定の値の一例として4Vを選ぶと、基準感度が4.5Vと検出された場合、受信信号強度が11%減少して4Vとなるよう発振パルス数を減少させて補正を行うことになる。
【0038】
以上のやりかたで超音波発信器2と超音波受信器3等のばらつきは吸収できる。
【0039】
尚、上記のように受信信号強度を所定の値に合わせることを、実際に受信信号強度を測定しながら発振パルス数を増減させて、行うこともできる。また合わせこむ作業を実際に行わず、基準感度と上記所定の値との差などから設定値となる発振パルス数を計算やルックアップテーブル等を用いて導出してもよい。また、この導出と上記合わせこみ作業を場合に応じて使い分けてもよい。
【0040】
このようにして設定された補正済み発振パルス数を用いて紙検知を行った結果の一例として、飽和受信信号強度を5Vと仮定して、受信信号強度が紙なしで4V、紙1枚介在時で1V、紙2枚介在時で0Vとなったと仮定すれば、紙有無判定の閾値を2.5Vに設定すれば確実な紙有無判定が可能である。このようにして紙1枚介在時の受信信号強度が比較的に低いレベルとなるよう、紙有無検知時の発振パルス数は少なめに設定される。このように上記所定の値の設定は飽和受信強度の95%〜50%の範囲に設定すると、紙なし時の受信信号強度と紙1枚介在時の受信信号強度の間に大きな差ができ、紙検出が容易となる。
【0041】
また連続読取動作中でも、紙検知手段9により、超音波発信器2と超音波受信器3の間に紙1が入っていないと判断された場合、上述した基準感度の検出、発振パルス数の補正を毎回行ってもよく、また所定の間隔をおいて行うようにしてもよい。
【0042】
また制御手段4は超音波信号のパルス数を、紙検知手段9が紙検知できる範囲で最小のパルス数に減少させることもできる。例えば飽和受信信号強度を5Vとして上記受信信号強度を一致させる目標値である所定の値を3Vとしたとき、紙1枚介在時の受信信号強度が0.5Vとなったとすると、紙2枚以上介在時との区別が難しい状態まで超音波信号のパルス数を減少させた低い値に設定されたことになる。しかし、この状態でも紙有無判定の閾値を2V付近に設定すれば確実な紙検知が可能である。
【0043】
上述したような、少なめの発振パルス数の設定により紙検知を確実に行った後、紙の重送を確実に判別するために超音波信号の発振パルス数を増加させる必要がある。紙が1枚介在しているときの受信信号強度を紙なしの状態に近いところまで上昇させ、紙1枚介在時と2枚以上介在時の状態を確実に判別できるようにする。この重送検知時に設定すべきパルス数は紙検知時のパルス数の設定値から計算やルックアップテーブル等を用いて導出する。
【0044】
一例として、紙検知時の発振パルス数の設定値をもとに、経験的に作成されたルックアップテーブルから決定された重送検知時の発振パルス数を使用した場合の受信信号強度が、紙なしでは飽和受信信号強度を5Vとして5Vに飽和し、紙1枚では4V、紙2枚では1Vになったと仮定すると、紙1枚と紙2枚の信号レベル差が大きく、重送判定の閾値を2.5Vに設定し確実な重送判定ができる。このように紙1枚と紙2枚の信号レベル差を大きくするように経験的にルックアップテーブルを作成する。
【0045】
また、ルックアップテーブルを近似する数式を用いて重送検知時の発振パルス数を算出してもよい。
【0046】
また紙1枚であることが確実にわかる場合は、紙1枚に対する受信信号強度と紙2枚に対する受信信号強度の差が十分大きな値となるような発振パルス数を実測により正確に設定することも可能である。
【0047】
上述したように、紙有無判定の際は基準感度をもとに、発振パルス数を低めの値に設定し、重送検知時は、発振パルス数を高い値に変更する。
【0048】
紙検知手段9により、紙検知時においては、制御手段4は200kHzのパルス信号を数msに一度、バースト波として発信させるが、紙なし時においては、前記バースト波の発信間隔を広げることもできる。ただし、バースト波の発信間隔を広げすぎるとデータサンプリングの回数も低減するため、紙検知のタイミングが遅れる要因となる。
【0049】
紙検知手段9が超音波発信器2と超音波受信器3の間に紙1が入っていないと判断し、一旦超音波信号のパルス数を減少させたり、バースト波の発信間隔を広げた状態にした後、再度紙検知すると、上述したように超音波信号のパルス数、及び、バースト波の発信間隔を、再び重送検知可能な状態に戻す。
【0050】
超音波発信器2と超音波受信器3の間に紙1が入っていない場合に、超音波信号のパルス数を減少させ、バースト波の発信間隔を広げ、過剰な超音波の発信を抑えることにより、消費電力の低減、及び、超音波発信手段/超音波受信手段の高寿命化、及び、超音波の静音化を図ることができる。
【0051】
基準感度検出手段11が基準感度を取得し制御手段4に伝えることで、紙検知時および重送検知時に用いる発振パルス数が最適化され、超音波発信器2、超音波受信器3の特性のばらつきと経時変化、及び、信号増幅手段6の増幅率等のばらつきによらず、確実に重送検知し、かつ、製品毎の調整工程を必要としない超音波重送検知装置13を実現できる。
【0052】
これらのパルス数の増加/減少による超音波受信信号の変化の度合いは、使用する超音波発信器2、超音波受信器3の特性、及び、信号増幅手段6の増幅率等の要因により異なるため、重送検知装置13を組んだ状態で適切にパルス数が変化するように本発明により設定される。
【0053】
また、自己校正モードを有する重送検知装置においては、ユーザーに紙一枚だけの装填を要求し確実に紙1枚だけ存在する状態を実現し、紙1枚介在時の受信信号強度が重送判定閾値に対して十分大きな値となるような発振パルス数を実測により確実に設定することが可能である。
【0054】
また、制御手段4、A−D変換器7、信号解析手段8、記憶手段12の行う各処理は、制御手段4、A−D変換器7、信号解析手段8、記憶手段12を構成する専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、制御手段4、A−D変換器7、信号解析手段8、記憶手段12がメモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、各処理を担う機能を実現する為のプログラムをメモリに読み込んで実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0055】
また、上記メモリは、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CD−ROM等の読み出しのみが可能な記録媒体、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリの内のいずれか、あるいはこれらの組み合わせによるコンピュータ読み取り、書き込み可能な記録媒体より構成されるものとする。
【0056】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなる制御手段4内のCPU内部の揮発メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0057】
また、上記プログラムは、このプログラムをメモリ等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により制御手段4内のメモリに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0058】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現する為のものであっても良い。さらに、前述した機能を信号解析手段8内のメモリに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0059】
さらに、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等のプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。
【0060】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態における重送検知装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】従来の紙幣の重送検知装置の概要を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0062】
1 紙(シート状部材に対応)
2 超音波発信器(超音波発信手段に対応)
3 超音波受信器(超音波受信手段に対応)
4 制御手段
5 駆動手段
6 信号増幅手段
7 A−D変換器
8 信号解析手段
9 紙検知手段
10 重送検知手段
11 基準感度検出手段
12 記憶手段
13 重送検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材の搬送路を挟んで、超音波発信手段と超音波受信手段を配置し、前記超音波発信手段により発信され、シート状部材を透過し、前記超音波受信手段で受信された超音波の受信信号からシート状部材の有無および重送を判定する重送検知装置において、
前記超音波発信手段に超音波を発信させるために入力する発振パルスの数を増減させる制御手段を備え、
該制御手段は、シート状部材の有無を検知する際の前記発振パルスの数に比較して、シート状部材の重送を検知する際の前記発振パルスの数を増やすよう制御することを特徴とする重送検知装置。
【請求項2】
シート状部材が搬送路に存在しない状態で、前記発振パルスの個数のひとつまたは複数の設定値における超音波の受信信号を取得して、前記超音波発信手段と前記超音波受信手段の基準感度を検出する基準感度検出手段を備え、前記制御手段は、前記基準感度に応じてシート状部材の有無を検知する際の前記発振パルスの個数を決定することを特徴とする請求項1記載の重送検知装置。
【請求項3】
シート状部材が搬送路に存在しない状態で、前記発振パルスの個数のひとつまたは複数の設定値における超音波の受信信号を取得して、前記超音波発信手段と前記超音波受信手段の基準感度を検出する基準感度検出手段を備え、前記制御手段は、前記基準感度に応じてシート状部材の重送を検知する際の前記発振パルスの個数を決定することを特徴とする請求項1または2記載の重送検知装置。
【請求項4】
シート状部材一枚が搬送路に存在する状態で、前記発振パルスの個数のひとつまたは複数の設定値における超音波の受信信号を取得し、前記制御手段は、該受信信号に応じて重送を検知する際の前記発振パルスの個数を決定することを特徴とする請求項1または2記載の重送検知装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−22793(P2007−22793A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211218(P2005−211218)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】