金属ワイヤメッシュの微小構造を備えた屈曲可能なヒートスプレッダーとヒートスプレッダーの製造方法
【課題】 内部の毛細管構造体が安価で容易に形成されるヒートスプレッダーとその製造方法を提供する。
【解決手段】 ヒートスプレッダー10は、上カバー12と下カバー14が接合された中空金属ハウジングと、上カバーと下カバーの内面に接合された金属メッシュ18によって形成される毛細管構造体と、金属ハウジングの内側に接合された複数の柱状の補強部材20と、作動流体を備えている。金属メッシュ18と上カバー12、金属メッシュ18と下カバー14、上カバー12と下カバー14の周縁部、補強部材20と金属ハウジングの内面との間は、全て拡散接合で接合される。
【解決手段】 ヒートスプレッダー10は、上カバー12と下カバー14が接合された中空金属ハウジングと、上カバーと下カバーの内面に接合された金属メッシュ18によって形成される毛細管構造体と、金属ハウジングの内側に接合された複数の柱状の補強部材20と、作動流体を備えている。金属メッシュ18と上カバー12、金属メッシュ18と下カバー14、上カバー12と下カバー14の周縁部、補強部材20と金属ハウジングの内面との間は、全て拡散接合で接合される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートスプレッダーと、ヒートスプレッダーの製造方法に関する。より詳しくは、金属メッシュ例えば銅製メッシュを適用することで得られる微小構造を備えており、屈曲可能なヒートスプレッダーと、ヒートスプレッダーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、通信デバイス、TFT−LCD等の最近の電子機器は、作動中に熱を発生する様々な電子部品を採用している。これらの装置は、特に高速処理が要求される場合において、必然的に以前の部品より多くの熱を発生する。このため、オーバーヒートによる電子部品の動作の悪化を防ぐことは極めて重要であり、様々な冷却装置および冷却方法が開発されている。
【0003】
例えば、銅板に取り付けられた1又は2以上のヒートパイプを備えた冷却装置が、当業者において用いられている。しかしながら、この種のヒートパイプは独立して使用することができないため、独立して使用可能な、「ヒートスプレッダー(heat spreader, 熱拡散装置)」と呼ばれる他のプレート型ヒートパイプが開発されている。このようなヒートスプレッダーは、独立して使用が可能であると共に、効率的な冷却効果を有するために、近年広く使われている。
【0004】
一般的に、ヒートスプレッダーは、銅板により形成された密閉されている中空ハウジングを備えている。ハウジングの内部は、一旦真空状態にされ、そして作動流体で満たされている。毛細管構造体が、ハウジングの内壁上に形成されている。真空状態の下で、作動流体は、ハウジングの熱吸収側面から熱を吸収して、急速に蒸発する。蒸発した作動流体は、吸収した熱を放射するハウジングの熱放射側面で、元の液体に戻るまで冷却される。その作動流体は、熱吸収−放射サイクルを繰り返し行うために、毛細管を通してハウジングの熱吸収側面に戻される。
【0005】
一般的に、ヒートスプレッダーの毛細管構造体は、微小溝を機械加工によって形成する方法または銅粉末を焼結する方法によって形成される。しかしながら、微小な寸法の溝を銅板上に加工することは容易ではない。一方、銅粉末焼結による方法では、より容易に毛細管構造体を形成することができるが、最終的な焼結品質を制御することは難しく、結果としてそれはより高い不良率の原因となり、より高い製造コストがかかる。これに加えて、ヒートスプレッダーを屈曲する必要がある場合、銅粉末焼結によって形成された毛細管構造体が曲げ加工により損傷を受ける。
【0006】
更に、従来のヒートスプレッダーは、二つの半分のハウジングを例えば半田付または溶接によって、一つに密閉することにより形成されている。例えば、特許文献1において開示されるプレート型ヒートパイプの周知の構造は、半田付によって、ハウジング内に取り付けられるその支持体を備えている。しかしながら、この方法は各々の支持体の一端を半田付することを可能にするだけであって、ハウジングが密閉された後に支持体の他端を半田付することができない。特許文献1の技術は、半田付処理の間に発生する熱によって、ハウジングが変形するという結果を引き起こす。
【特許文献1】台湾 実用新案 第577538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ヒートスプレッダーの毛細管構造体をより簡単かつ安価に得ることを目的とする。また、本発明のヒートスプレッダーの製造方法は、製造工程においてヒートスプレッダーのハウジングの熱による変形を低減することを目的としている。本発明はさらに、使用中に屈曲させることが可能であるとともに、熱吸収による変形を簡単に起こさないヒートスプレッダーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるヒートスプレッダーの製造方法は、それぞれが1枚のシート状の金属材料からなり、外周部及び内面部を有している上カバー及び下カバーを供給する工程と、上カバーの内面部の表面と、下カバーの内面部の表面に毛細管構造体を形成するために、拡散接合によって金属メッシュを上カバーの内面部と下カバーの内面部に取り付ける工程と、複数の補強部材を、金属メッシュが取り付けられた上カバーの内面と下カバーの内面の間に配置する工程と、上カバーの表面と下カバーの表面の間に空間が形成されて、補強部材は空間の間に接合されるように、上カバーと下カバーと補強部材を拡散接合によって接合する工程と、空間を真空にする工程と、記真空の空間に作動流体を満たす工程と、前記作動流体を満たされた空間を密閉する工程を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によるヒートスプレッダーは、内面部を有する上カバー及び内面部を有する下カバーを備えており、上カバーと下カバーの間に空間が形成されるように上カバーの外周部と下カバーの外周部が接合されている中空の金属ハウジングと、金属ハウジングの上カバーの内面部と下カバーの内面部に接合された金属メッシュからなる毛細管構造体と、金属ハウジングの上カバーの内面部と下カバーの内面部の間に接合されて、空間内に配置された複数の補強部材と、空間内に充填された作動流体を備えており、前記金属メッシュと前記金属ハウジングの内面部の間と、前記上カバーと下カバーの間と、前記補強部材と前記金属ハウジングの内面部の間の接合面が、全て拡散接合で接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、毛細管構造体をより簡単かつ安価に形成されたヒートスプレッダーが提供される。又、本発明のヒートスプレッダーは、製造工程におけるハウジングの熱による変形が低減されている。更に本発明によって、使用中に屈曲させることが可能であるとともに、熱吸収による変形を簡単に起こさないヒートスプレッダーが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明のヒートスプレッダー10を例示する。ヒートスプレッダー10は、上カバー12と、下カバー14と、充填パイプ16を備えている。これらの構成要素のために使用する材料は一般に銅である。その一方で、他のいかなる金属(例えばアルミニウム)もまた、効果的に熱を拡散する能力を有する限り用いることが可能である。
【0012】
図2および図3は、本発明の第1実施例のヒートスプレッダー10を例示する。上カバー12は周縁部12aを備えており、下カバー14は周縁部14bを備えている。上カバー12の周縁部12aの内側には、隆起した部分が形成されている。密封された空間13が、上カバー12の周縁部と下カバー14の周縁部の間の拡散接合によって形成される。適当量の作動流体(図示されない)が充填パイプ16を経て空間13に充填される。作動流体としては、例えば純水が適用される。充填パイプ16の一端は空間13に繋がっており、空間13が作動流体で充填された後に他端が密閉される。
【0013】
本発明の一態様では、銅製のメッシュ18は、毛細管構造体を形成するために、ヒートスプレッダー10の内面部に取り付けられる。複数の開口部18aがメッシュ18に形成されている。銅製の柱状部材20の両端部は、銅製のメッシュ18の開口部18aを通過することで、それぞれの端部が上カバー12と下カバー14に拡散接合されることが可能となる。複数の銅製の柱状部材20は、熱吸収の間、作動流体の揮発圧による変形を防止するために、ヒートスプレッダー10のハウジング補強構造体として機能する。
【0014】
上カバー12および下カバー14が互いに接合されている領域に銅製のメッシュ18が確実に入り込まないようにするために、銅製のメッシュ18の輪郭寸法がカバー12および下カバー14よりもいくらか小さい点は注目すべき点である。銅製のメッシュ18は、市販の200メッシュの微細な銅製のメッシュを裁断するかまたは打ち抜くことによって得られる。開口部18aは、必ずしも必要であるというわけではないが、ハウジング構造を補強するために用いる銅製の柱状部材20を好適に配置するために、本実施例においてはそれらを有することが好ましい。銅製のメッシュ18が打ち抜かれると同時に、打ち抜かれた銅製メッシュ18の上に開口部18aが固有の配置で打ち抜かれる。本実施例においては、2枚の銅製メッシュ18が用いられており、一つは上カバー12の内面部に取り付けられ、もう一つは下カバー14の内面部に取り付けられる。しかしながら、銅製メッシュは2枚に限らず、その枚数より多くの銅製メッシュ18を積み重ねて用いることが可能である。
【0015】
図4および図5は本発明の第二実施例のヒートスプレッダー10’を示す。第一実施例との主な違いは、後者が、補強部材として銅製の柱状部材20の代わりに銅製の帯板状部材20aを用いる点にある。本実施例において、銅製メッシュ18は第一実施例にあるような開口部18aを有しないが、必要に応じて、銅の帯板状部材20aの輪郭に一致している開口部(図示せず)を作ることもできる。
【0016】
銅製の帯板状部材20は、実質的に細長い形状である。より安定して銅製の帯板状部材20を配置し、次の接合処理を容易にするために、複数の幅の広がった部分21が、それぞれ離れて銅製の帯板状部材20に形成される。これらの拡幅部21を備えることで、銅製の帯板状部材20は、ヒートスプレッダーの組立準備の工程の間、傾きにくくなっている。一般的に、銅製の帯板状部材20aまたは銅製の柱状部材20のどちらかが単独で用いられる。しかし一方で、必要に応じてそれらの両方を組み合わせて用いることができる。
【0017】
焼結時に自然に発生する細かな開口が毛細管構造体として作用するために、上記の銅製の柱状部材または帯板状部材を焼結銅粉末から形成することは好都合である。さらに、毛細管構造体は、焼結しない銅柱状部材または帯板状部材(図示せず)を銅製のメッシュで包むことによっても形成することができる。
【0018】
本発明の銅製のメッシュによる微小構造体の重要な利点は、銅粉末を焼結した微小構造体に置き換えることができる構造体を、容易かつ安価に製造できるというだけではない。本発明のヒートスプレッダー10及びヒートスプレッダー10’は、その微小組織を損傷させることなく屈曲させることができる。このような特徴は、冷却を行う目的で熱源となる部品の輪郭に合致させたり、あるいは別の形態で用いたりするために、必要に応じてヒートスプレッダー10及びヒートスプレッダー10’を曲げる場合に、特に顕著な利点を有する。
【0019】
それでも尚、銅製の柱状部材20の補強構造体としての完全性が損なわれることを回避するために、図2及び図3で示すその内部構造体のために、ヒートスプレッダーは銅製の柱状部材20がない領域で曲げられることが望ましい。ヒートスプレッダーの中で、熱源の輪郭に合わせて曲げられる領域から銅製の柱状部材20を遠ざけておくように、前もって銅製の柱状部材20のレイアウトを調整することが可能である。しかしながら、図4及び図5で示す補強構造体は、そのような制約を受けない。その理由は、細長い銅の帯板状部材20aが、ヒートスプレッダー10’をその補強構造体としての機能を損なうことなく、ほとんどの箇所において曲げることができるためである。
【0020】
本発明の第1実施例に従ってヒートスプレッダー10を製造する方法を、以下に詳細に説明する。
【0021】
ステップ1: 上カバーおよび下カバーの形成
上カバー12と下カバー12は、1枚のシート状の銅によって形成される。一般的に、プレス加工、鍛造加工、または機械加工といった、多くの処理方法が用いられることが可能である。しかしながら、コストを考慮した場合、プレス加工法を採用することが好ましい。図2に示すように、上カバー12の周縁部12aの内側の部分はプレス加工によって隆起している。一方、下カバー14は平らな形状、若しくは上カバー12に類似した形状を有している。図3に示すように、上カバー12の突出部12bと、下カバー14の突出部14aを形成するためにそれぞれプレス加工がなされる。次に、上カバー12および下カバー14は、断片(スクラップ)を除去するために洗浄される。
【0022】
ステップ2:上カバーおよび下カバーへの金属メッシュの取り付け(拡散接合工程1)
図6Aおよび6Bを参照する。1枚の銅製のメッシュ18は、接合固定具30(例えば鋼鉄製の固定具)上に配置される。次に、銅製のメッシュ18は、上カバー12に覆われる。もう1枚の銅製のメッシュ18が、固定具32上に配置される。もう1枚の銅製メッシュ18は、下カバー14に覆われる。次に、これらの上カバーと銅製のメッシュを組み合わせた部材及び下カバーと銅製のメッシュを組み合わせた部材は、各々を拡散接合するために高温高圧処理の可能な真空炉に投入される。
【0023】
拡散接合は、温度、圧力、時間等の接合のための条件を適切に制御することによって、複合材または単一の原料から成る部材を、溶融点より低い温度で接合することができる。銅製の部材の拡散接合には、通常、温度条件を摂氏450度以上900度以下に設定し、2メガパスカル(2MPa)以上20メガパスカル(20MPa)以下の圧力を30分以上(好ましくは3時間以内)かけるように、条件を設定する。
【0024】
本発明の実施例における拡散接合の、温度、圧力と時間との関係を、図8及び図9に示す。拡散接合は、約80分間(図中の横軸80分から160分までの区間)に亘って、温度700度、圧力2.0メガパスカルの条件下で主に行われる。
【0025】
ここまでの工程によって、2枚の銅製メッシュが、上カバーの内面部及び下カバー内面部にそれぞれ接合されている。図6Aの銅メッシュ18と上カバー12の内面部との間の面aは拡散接合によって接合された界面を示している。図6Bの銅メッシュ18と下カバー14の内面部との間の面bは拡散接合によって接合された界面を示している。
【0026】
ステップ3:銅製メッシュを有している上カバー、銅メッシュを有している下カバー、および補強部材の接合(拡散接合工程2)
図7を参照する。銅製メッシュ18が接合された上カバー12と、銅製メッシュ18を接合された下カバー14と、銅製の柱状部材20が予備的に配置されて組立てられる。上カバー12および下カバー14は互いに整合して配置され、銅製の柱状部材20は傾きを避けるために、開口部18aを通過した銅製の柱状部材20の両端部が、上カバー12と下カバー14の間にはさまれる。次に、予め組立てられた部材は、接合固定具34によって、固定される。固定された部材は、高温高圧処理の可能な真空炉に投入されて、ステップ2と同一の接合条件で拡散接合が行われる。
【0027】
以上の工程によって、上カバー12と下カバー14の間の面cと、上カバー12と銅製の柱状部材20の間の面d、e,fと、下カバー14と銅製の柱状部材20の間の面g、h、iの全てが、拡散接合によって接合される。
【0028】
ステップ4:パイプの半田付
充填パイプ16が、上カバー12の突出部12bと下カバー14の突出部14aによって形成される開口部に半田付される(図1)。
【0029】
ステップ5:圧力および漏出のテスト
次に、ヒートスプレッダー10は、構造体としての圧力抵抗および密封能力を試験するために、試験用ガス(例えば窒素)で満たされる。空間13またはヒートスプレッダー10の内部は、10−3Torr(トール)から10−7Torr(トール)の真空まで排気される必要がある。
【0030】
ステップ6:作動流体の充填
作動流体として、例えば適当量の純水が、充填パイプ16を経由してヒートスプレッダー10内の空間13に充填される。作動流体としては、例えばメチルアルコールまたは冷却剤を同様に使用することも可能である。
【0031】
ステップ7:パイプ16の密閉
作動流体を充填した後、充填パイプ16の開放端が、例えば半田付によって、密閉される。
【0032】
上記の実施例においては、上カバー、下カバー、補強構造体、および毛細管構造体のための材料として銅が用いられる。しかしながら、本発明のための更なる他の実施例では、銅の代わりにアルミニウムが、上カバーと、下カバーと、補強構造体に使用される。銅は毛細管構造体に使用されるにとどまっている。この実施例の場合、異なる材料の接合のために、拡散接合の温度、圧力、時間の条件を変更することを除き、その構造体の配置、製造方法および発明有効性の全ては、前記実施例の説明を参照できる。ここでは、この実施例のための接合の温度、圧力、時間の条件を、以下に詳細に例示する。
【0033】
本実施例の第1の拡散接合工程においては、アルミニウム製の上カバーと銅製のメッシュの接合及び下カバーと銅製のメッシュの接合が行われる。本実施例の一般的な第1の拡散接合工程は、300度以上600度以下の温度で、0.6メガパスカル以上1.0メガパスカル以下の圧力を約30分以上4時間以下の時間範囲でかける条件で行われる。好適な拡散接合温度、圧力および時間は、図10と図11に示される。好ましくは、拡散接合は、約450度で、0.6メガパスカルの圧力を約80分間かけて実行される。
本実施例の第2拡散接合工程においては、アルミニウム製の上カバーとアルミニウム製柱状部材若しくは帯板状部材間の接合、及びアルミニウム製の下カバーとアルミニウム製柱状部材若しくは帯板状部材間の接合が行われる。好適な拡散接合温度、圧力および時間は、図12と図13に示される。本工程の拡散接合は、約550度で、約0.6メガパスカルの圧力を約80分間かけて実行される。
【0034】
上記2つの実例によって開示されたステップによって、使用される部材の材料が銅かアルミニウムであるかに関わらず、拡散接合によって面aからiが接合されたヒートスプレッダーを得ることができる。
【0035】
このように、本発明の別の利点は、拡散接合された部材間の界面が他の接合方法による界面(例えば、半田付された界面)を含まないために、銅およびアルミニウムのそれぞれの材質の特性が維持されることができるということである。それゆえに、熱応力が低減されており、ヒートスプレッダーを屈曲された状態で使用することがより容易となる。
【0036】
本発明の特定の実施例を図示し説明したが、本発明のより広い面から逸脱することなく本発明の変更や変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。したがって、請求の範囲の真の目的は、本発明の真の精神および範囲内にある変形および変更を含んでいる。
【0037】
また、以下の図は要素間の相互関係を表すだけであり、実際の寸法の比率には一致していない。図面の数字は要素または特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明のヒートスプレッダーの斜視図である。
【図2】図2は、図1の2−2直線で切り取られた図1のヒートスプレッダーの断面図である。
【図3】図3は、図2のスプレッダーの分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明のヒートスプレッダーの第2実施例の断面図である。
【図5】図5は、図4のスプレッダーの分解斜視図である。
【図6A】図6Aは、本発明の上カバーとヒートスプレッダーの銅製のメッシュを接合するための接合固定具の使用状況を例示している概略断面図である。
【図6B】図6Bは、本発明の下カバーおよびヒートスプレッダーの銅製メッシュを接合するために接合固定具を使用することを例示している概略断面図である。
【図7】図7は、図2のヒートスプレッダー全てを接合するための接合固定具の使用を例示している概略断面図である
【図8】図8は、銅製の上カバー、銅製の下カバー、および本発明のヒートスプレッダーの銅製メッシュおよび銅製の柱状部材または帯板状部材の拡散接合時間に対する温度および圧力の関係を示しているグラフである。
【図9】図9は、図8のグラフが示す温度、圧力と時間との関係を示すデータリストである。
【図10】図10は、アルミニウム製の上下カバーおよび本発明のヒートスプレッダーの銅製のメッシュの拡散接合のための時間に対する温度および圧力の関係を示しているグラフである。
【図11】図11は、図10のグラフが示す温度、圧力と時間との関係を示すデータのリストである。
【図12】図12は本発明のヒートスプレッダーのアルミニウム製の上下カバーおよびアルミニウム製柱状部材または帯板状部材の拡散接合ための時間に対する温度および圧力を示す。
【図13】図13は、図12のグラフが示す温度、圧力および時間のデータのリストである。
【符号の説明】
【0039】
10: ヒートスプレッダー
12: 上カバー
14: 下カバー
16: 充填パイプ
18: 金属メッシュ
20: 柱状部材
20a:帯板状部材
21: 拡幅部
30,32,34: 接合固定具
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートスプレッダーと、ヒートスプレッダーの製造方法に関する。より詳しくは、金属メッシュ例えば銅製メッシュを適用することで得られる微小構造を備えており、屈曲可能なヒートスプレッダーと、ヒートスプレッダーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、通信デバイス、TFT−LCD等の最近の電子機器は、作動中に熱を発生する様々な電子部品を採用している。これらの装置は、特に高速処理が要求される場合において、必然的に以前の部品より多くの熱を発生する。このため、オーバーヒートによる電子部品の動作の悪化を防ぐことは極めて重要であり、様々な冷却装置および冷却方法が開発されている。
【0003】
例えば、銅板に取り付けられた1又は2以上のヒートパイプを備えた冷却装置が、当業者において用いられている。しかしながら、この種のヒートパイプは独立して使用することができないため、独立して使用可能な、「ヒートスプレッダー(heat spreader, 熱拡散装置)」と呼ばれる他のプレート型ヒートパイプが開発されている。このようなヒートスプレッダーは、独立して使用が可能であると共に、効率的な冷却効果を有するために、近年広く使われている。
【0004】
一般的に、ヒートスプレッダーは、銅板により形成された密閉されている中空ハウジングを備えている。ハウジングの内部は、一旦真空状態にされ、そして作動流体で満たされている。毛細管構造体が、ハウジングの内壁上に形成されている。真空状態の下で、作動流体は、ハウジングの熱吸収側面から熱を吸収して、急速に蒸発する。蒸発した作動流体は、吸収した熱を放射するハウジングの熱放射側面で、元の液体に戻るまで冷却される。その作動流体は、熱吸収−放射サイクルを繰り返し行うために、毛細管を通してハウジングの熱吸収側面に戻される。
【0005】
一般的に、ヒートスプレッダーの毛細管構造体は、微小溝を機械加工によって形成する方法または銅粉末を焼結する方法によって形成される。しかしながら、微小な寸法の溝を銅板上に加工することは容易ではない。一方、銅粉末焼結による方法では、より容易に毛細管構造体を形成することができるが、最終的な焼結品質を制御することは難しく、結果としてそれはより高い不良率の原因となり、より高い製造コストがかかる。これに加えて、ヒートスプレッダーを屈曲する必要がある場合、銅粉末焼結によって形成された毛細管構造体が曲げ加工により損傷を受ける。
【0006】
更に、従来のヒートスプレッダーは、二つの半分のハウジングを例えば半田付または溶接によって、一つに密閉することにより形成されている。例えば、特許文献1において開示されるプレート型ヒートパイプの周知の構造は、半田付によって、ハウジング内に取り付けられるその支持体を備えている。しかしながら、この方法は各々の支持体の一端を半田付することを可能にするだけであって、ハウジングが密閉された後に支持体の他端を半田付することができない。特許文献1の技術は、半田付処理の間に発生する熱によって、ハウジングが変形するという結果を引き起こす。
【特許文献1】台湾 実用新案 第577538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ヒートスプレッダーの毛細管構造体をより簡単かつ安価に得ることを目的とする。また、本発明のヒートスプレッダーの製造方法は、製造工程においてヒートスプレッダーのハウジングの熱による変形を低減することを目的としている。本発明はさらに、使用中に屈曲させることが可能であるとともに、熱吸収による変形を簡単に起こさないヒートスプレッダーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるヒートスプレッダーの製造方法は、それぞれが1枚のシート状の金属材料からなり、外周部及び内面部を有している上カバー及び下カバーを供給する工程と、上カバーの内面部の表面と、下カバーの内面部の表面に毛細管構造体を形成するために、拡散接合によって金属メッシュを上カバーの内面部と下カバーの内面部に取り付ける工程と、複数の補強部材を、金属メッシュが取り付けられた上カバーの内面と下カバーの内面の間に配置する工程と、上カバーの表面と下カバーの表面の間に空間が形成されて、補強部材は空間の間に接合されるように、上カバーと下カバーと補強部材を拡散接合によって接合する工程と、空間を真空にする工程と、記真空の空間に作動流体を満たす工程と、前記作動流体を満たされた空間を密閉する工程を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によるヒートスプレッダーは、内面部を有する上カバー及び内面部を有する下カバーを備えており、上カバーと下カバーの間に空間が形成されるように上カバーの外周部と下カバーの外周部が接合されている中空の金属ハウジングと、金属ハウジングの上カバーの内面部と下カバーの内面部に接合された金属メッシュからなる毛細管構造体と、金属ハウジングの上カバーの内面部と下カバーの内面部の間に接合されて、空間内に配置された複数の補強部材と、空間内に充填された作動流体を備えており、前記金属メッシュと前記金属ハウジングの内面部の間と、前記上カバーと下カバーの間と、前記補強部材と前記金属ハウジングの内面部の間の接合面が、全て拡散接合で接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、毛細管構造体をより簡単かつ安価に形成されたヒートスプレッダーが提供される。又、本発明のヒートスプレッダーは、製造工程におけるハウジングの熱による変形が低減されている。更に本発明によって、使用中に屈曲させることが可能であるとともに、熱吸収による変形を簡単に起こさないヒートスプレッダーが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明のヒートスプレッダー10を例示する。ヒートスプレッダー10は、上カバー12と、下カバー14と、充填パイプ16を備えている。これらの構成要素のために使用する材料は一般に銅である。その一方で、他のいかなる金属(例えばアルミニウム)もまた、効果的に熱を拡散する能力を有する限り用いることが可能である。
【0012】
図2および図3は、本発明の第1実施例のヒートスプレッダー10を例示する。上カバー12は周縁部12aを備えており、下カバー14は周縁部14bを備えている。上カバー12の周縁部12aの内側には、隆起した部分が形成されている。密封された空間13が、上カバー12の周縁部と下カバー14の周縁部の間の拡散接合によって形成される。適当量の作動流体(図示されない)が充填パイプ16を経て空間13に充填される。作動流体としては、例えば純水が適用される。充填パイプ16の一端は空間13に繋がっており、空間13が作動流体で充填された後に他端が密閉される。
【0013】
本発明の一態様では、銅製のメッシュ18は、毛細管構造体を形成するために、ヒートスプレッダー10の内面部に取り付けられる。複数の開口部18aがメッシュ18に形成されている。銅製の柱状部材20の両端部は、銅製のメッシュ18の開口部18aを通過することで、それぞれの端部が上カバー12と下カバー14に拡散接合されることが可能となる。複数の銅製の柱状部材20は、熱吸収の間、作動流体の揮発圧による変形を防止するために、ヒートスプレッダー10のハウジング補強構造体として機能する。
【0014】
上カバー12および下カバー14が互いに接合されている領域に銅製のメッシュ18が確実に入り込まないようにするために、銅製のメッシュ18の輪郭寸法がカバー12および下カバー14よりもいくらか小さい点は注目すべき点である。銅製のメッシュ18は、市販の200メッシュの微細な銅製のメッシュを裁断するかまたは打ち抜くことによって得られる。開口部18aは、必ずしも必要であるというわけではないが、ハウジング構造を補強するために用いる銅製の柱状部材20を好適に配置するために、本実施例においてはそれらを有することが好ましい。銅製のメッシュ18が打ち抜かれると同時に、打ち抜かれた銅製メッシュ18の上に開口部18aが固有の配置で打ち抜かれる。本実施例においては、2枚の銅製メッシュ18が用いられており、一つは上カバー12の内面部に取り付けられ、もう一つは下カバー14の内面部に取り付けられる。しかしながら、銅製メッシュは2枚に限らず、その枚数より多くの銅製メッシュ18を積み重ねて用いることが可能である。
【0015】
図4および図5は本発明の第二実施例のヒートスプレッダー10’を示す。第一実施例との主な違いは、後者が、補強部材として銅製の柱状部材20の代わりに銅製の帯板状部材20aを用いる点にある。本実施例において、銅製メッシュ18は第一実施例にあるような開口部18aを有しないが、必要に応じて、銅の帯板状部材20aの輪郭に一致している開口部(図示せず)を作ることもできる。
【0016】
銅製の帯板状部材20は、実質的に細長い形状である。より安定して銅製の帯板状部材20を配置し、次の接合処理を容易にするために、複数の幅の広がった部分21が、それぞれ離れて銅製の帯板状部材20に形成される。これらの拡幅部21を備えることで、銅製の帯板状部材20は、ヒートスプレッダーの組立準備の工程の間、傾きにくくなっている。一般的に、銅製の帯板状部材20aまたは銅製の柱状部材20のどちらかが単独で用いられる。しかし一方で、必要に応じてそれらの両方を組み合わせて用いることができる。
【0017】
焼結時に自然に発生する細かな開口が毛細管構造体として作用するために、上記の銅製の柱状部材または帯板状部材を焼結銅粉末から形成することは好都合である。さらに、毛細管構造体は、焼結しない銅柱状部材または帯板状部材(図示せず)を銅製のメッシュで包むことによっても形成することができる。
【0018】
本発明の銅製のメッシュによる微小構造体の重要な利点は、銅粉末を焼結した微小構造体に置き換えることができる構造体を、容易かつ安価に製造できるというだけではない。本発明のヒートスプレッダー10及びヒートスプレッダー10’は、その微小組織を損傷させることなく屈曲させることができる。このような特徴は、冷却を行う目的で熱源となる部品の輪郭に合致させたり、あるいは別の形態で用いたりするために、必要に応じてヒートスプレッダー10及びヒートスプレッダー10’を曲げる場合に、特に顕著な利点を有する。
【0019】
それでも尚、銅製の柱状部材20の補強構造体としての完全性が損なわれることを回避するために、図2及び図3で示すその内部構造体のために、ヒートスプレッダーは銅製の柱状部材20がない領域で曲げられることが望ましい。ヒートスプレッダーの中で、熱源の輪郭に合わせて曲げられる領域から銅製の柱状部材20を遠ざけておくように、前もって銅製の柱状部材20のレイアウトを調整することが可能である。しかしながら、図4及び図5で示す補強構造体は、そのような制約を受けない。その理由は、細長い銅の帯板状部材20aが、ヒートスプレッダー10’をその補強構造体としての機能を損なうことなく、ほとんどの箇所において曲げることができるためである。
【0020】
本発明の第1実施例に従ってヒートスプレッダー10を製造する方法を、以下に詳細に説明する。
【0021】
ステップ1: 上カバーおよび下カバーの形成
上カバー12と下カバー12は、1枚のシート状の銅によって形成される。一般的に、プレス加工、鍛造加工、または機械加工といった、多くの処理方法が用いられることが可能である。しかしながら、コストを考慮した場合、プレス加工法を採用することが好ましい。図2に示すように、上カバー12の周縁部12aの内側の部分はプレス加工によって隆起している。一方、下カバー14は平らな形状、若しくは上カバー12に類似した形状を有している。図3に示すように、上カバー12の突出部12bと、下カバー14の突出部14aを形成するためにそれぞれプレス加工がなされる。次に、上カバー12および下カバー14は、断片(スクラップ)を除去するために洗浄される。
【0022】
ステップ2:上カバーおよび下カバーへの金属メッシュの取り付け(拡散接合工程1)
図6Aおよび6Bを参照する。1枚の銅製のメッシュ18は、接合固定具30(例えば鋼鉄製の固定具)上に配置される。次に、銅製のメッシュ18は、上カバー12に覆われる。もう1枚の銅製のメッシュ18が、固定具32上に配置される。もう1枚の銅製メッシュ18は、下カバー14に覆われる。次に、これらの上カバーと銅製のメッシュを組み合わせた部材及び下カバーと銅製のメッシュを組み合わせた部材は、各々を拡散接合するために高温高圧処理の可能な真空炉に投入される。
【0023】
拡散接合は、温度、圧力、時間等の接合のための条件を適切に制御することによって、複合材または単一の原料から成る部材を、溶融点より低い温度で接合することができる。銅製の部材の拡散接合には、通常、温度条件を摂氏450度以上900度以下に設定し、2メガパスカル(2MPa)以上20メガパスカル(20MPa)以下の圧力を30分以上(好ましくは3時間以内)かけるように、条件を設定する。
【0024】
本発明の実施例における拡散接合の、温度、圧力と時間との関係を、図8及び図9に示す。拡散接合は、約80分間(図中の横軸80分から160分までの区間)に亘って、温度700度、圧力2.0メガパスカルの条件下で主に行われる。
【0025】
ここまでの工程によって、2枚の銅製メッシュが、上カバーの内面部及び下カバー内面部にそれぞれ接合されている。図6Aの銅メッシュ18と上カバー12の内面部との間の面aは拡散接合によって接合された界面を示している。図6Bの銅メッシュ18と下カバー14の内面部との間の面bは拡散接合によって接合された界面を示している。
【0026】
ステップ3:銅製メッシュを有している上カバー、銅メッシュを有している下カバー、および補強部材の接合(拡散接合工程2)
図7を参照する。銅製メッシュ18が接合された上カバー12と、銅製メッシュ18を接合された下カバー14と、銅製の柱状部材20が予備的に配置されて組立てられる。上カバー12および下カバー14は互いに整合して配置され、銅製の柱状部材20は傾きを避けるために、開口部18aを通過した銅製の柱状部材20の両端部が、上カバー12と下カバー14の間にはさまれる。次に、予め組立てられた部材は、接合固定具34によって、固定される。固定された部材は、高温高圧処理の可能な真空炉に投入されて、ステップ2と同一の接合条件で拡散接合が行われる。
【0027】
以上の工程によって、上カバー12と下カバー14の間の面cと、上カバー12と銅製の柱状部材20の間の面d、e,fと、下カバー14と銅製の柱状部材20の間の面g、h、iの全てが、拡散接合によって接合される。
【0028】
ステップ4:パイプの半田付
充填パイプ16が、上カバー12の突出部12bと下カバー14の突出部14aによって形成される開口部に半田付される(図1)。
【0029】
ステップ5:圧力および漏出のテスト
次に、ヒートスプレッダー10は、構造体としての圧力抵抗および密封能力を試験するために、試験用ガス(例えば窒素)で満たされる。空間13またはヒートスプレッダー10の内部は、10−3Torr(トール)から10−7Torr(トール)の真空まで排気される必要がある。
【0030】
ステップ6:作動流体の充填
作動流体として、例えば適当量の純水が、充填パイプ16を経由してヒートスプレッダー10内の空間13に充填される。作動流体としては、例えばメチルアルコールまたは冷却剤を同様に使用することも可能である。
【0031】
ステップ7:パイプ16の密閉
作動流体を充填した後、充填パイプ16の開放端が、例えば半田付によって、密閉される。
【0032】
上記の実施例においては、上カバー、下カバー、補強構造体、および毛細管構造体のための材料として銅が用いられる。しかしながら、本発明のための更なる他の実施例では、銅の代わりにアルミニウムが、上カバーと、下カバーと、補強構造体に使用される。銅は毛細管構造体に使用されるにとどまっている。この実施例の場合、異なる材料の接合のために、拡散接合の温度、圧力、時間の条件を変更することを除き、その構造体の配置、製造方法および発明有効性の全ては、前記実施例の説明を参照できる。ここでは、この実施例のための接合の温度、圧力、時間の条件を、以下に詳細に例示する。
【0033】
本実施例の第1の拡散接合工程においては、アルミニウム製の上カバーと銅製のメッシュの接合及び下カバーと銅製のメッシュの接合が行われる。本実施例の一般的な第1の拡散接合工程は、300度以上600度以下の温度で、0.6メガパスカル以上1.0メガパスカル以下の圧力を約30分以上4時間以下の時間範囲でかける条件で行われる。好適な拡散接合温度、圧力および時間は、図10と図11に示される。好ましくは、拡散接合は、約450度で、0.6メガパスカルの圧力を約80分間かけて実行される。
本実施例の第2拡散接合工程においては、アルミニウム製の上カバーとアルミニウム製柱状部材若しくは帯板状部材間の接合、及びアルミニウム製の下カバーとアルミニウム製柱状部材若しくは帯板状部材間の接合が行われる。好適な拡散接合温度、圧力および時間は、図12と図13に示される。本工程の拡散接合は、約550度で、約0.6メガパスカルの圧力を約80分間かけて実行される。
【0034】
上記2つの実例によって開示されたステップによって、使用される部材の材料が銅かアルミニウムであるかに関わらず、拡散接合によって面aからiが接合されたヒートスプレッダーを得ることができる。
【0035】
このように、本発明の別の利点は、拡散接合された部材間の界面が他の接合方法による界面(例えば、半田付された界面)を含まないために、銅およびアルミニウムのそれぞれの材質の特性が維持されることができるということである。それゆえに、熱応力が低減されており、ヒートスプレッダーを屈曲された状態で使用することがより容易となる。
【0036】
本発明の特定の実施例を図示し説明したが、本発明のより広い面から逸脱することなく本発明の変更や変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。したがって、請求の範囲の真の目的は、本発明の真の精神および範囲内にある変形および変更を含んでいる。
【0037】
また、以下の図は要素間の相互関係を表すだけであり、実際の寸法の比率には一致していない。図面の数字は要素または特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明のヒートスプレッダーの斜視図である。
【図2】図2は、図1の2−2直線で切り取られた図1のヒートスプレッダーの断面図である。
【図3】図3は、図2のスプレッダーの分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明のヒートスプレッダーの第2実施例の断面図である。
【図5】図5は、図4のスプレッダーの分解斜視図である。
【図6A】図6Aは、本発明の上カバーとヒートスプレッダーの銅製のメッシュを接合するための接合固定具の使用状況を例示している概略断面図である。
【図6B】図6Bは、本発明の下カバーおよびヒートスプレッダーの銅製メッシュを接合するために接合固定具を使用することを例示している概略断面図である。
【図7】図7は、図2のヒートスプレッダー全てを接合するための接合固定具の使用を例示している概略断面図である
【図8】図8は、銅製の上カバー、銅製の下カバー、および本発明のヒートスプレッダーの銅製メッシュおよび銅製の柱状部材または帯板状部材の拡散接合時間に対する温度および圧力の関係を示しているグラフである。
【図9】図9は、図8のグラフが示す温度、圧力と時間との関係を示すデータリストである。
【図10】図10は、アルミニウム製の上下カバーおよび本発明のヒートスプレッダーの銅製のメッシュの拡散接合のための時間に対する温度および圧力の関係を示しているグラフである。
【図11】図11は、図10のグラフが示す温度、圧力と時間との関係を示すデータのリストである。
【図12】図12は本発明のヒートスプレッダーのアルミニウム製の上下カバーおよびアルミニウム製柱状部材または帯板状部材の拡散接合ための時間に対する温度および圧力を示す。
【図13】図13は、図12のグラフが示す温度、圧力および時間のデータのリストである。
【符号の説明】
【0039】
10: ヒートスプレッダー
12: 上カバー
14: 下カバー
16: 充填パイプ
18: 金属メッシュ
20: 柱状部材
20a:帯板状部材
21: 拡幅部
30,32,34: 接合固定具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートスプレッダーの製造方法であって、
それぞれが1枚のシート状の金属材料からなり、外周部及び内面部を有している上カバー及び下カバーを供給する工程と、
前記上カバーの内面部の表面と、前記下カバーの内面部の表面に毛細管構造体を形成するために、拡散接合によって金属メッシュを前記上カバーの内面部と前記下カバーの内面部に取り付ける工程と、
複数の補強部材を、金属メッシュが取り付けられた前記上カバーの内面と前記下カバーの内面の間に配置する工程と、
前記上カバーの表面と前記下カバーの表面の間に空間が形成されて、前記補強部材は空間の間に接合されるように、前記上カバーと前記下カバーと前記補強部材を、拡散接合によって接合する工程と、
前記空間を真空にする工程と、
前記真空の空間に作動流体を満たす工程と、
前記作動流体が満たされた空間を密閉する工程を備えていることを特徴とするヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項2】
上カバーと、下カバーと、金属メッシュが銅から作られていることを特徴とする請求項1に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項3】
複数の補強部材が、銅製の柱状部材、銅製の帯板状部材、もしくは銅製の柱状部材と銅製の帯板状部材の組合せのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項4】
上カバーと下カバーを形成する金属材料がアルミニウムであって、金属メッシュが銅製のメッシュであることを特徴とする請求項1に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項5】
補強部材はアルミニウム製の柱状部材、アルミニウム製の帯板状部材、もしくはアルミニウム製の柱状部材とアルミニウム製の帯板状部材の組合せのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項4に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項6】
補強部材は、上カバーに取り付けられる金属メッシュと、下カバーに取り付けられる金属メッシュとの間で接合されることを特徴とする請求項1に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項7】
それぞれの金属メッシュが複数の開口部を有しており、補強部材は上カバー及び下カバーの内面部に接合するために前記開口部を通過することを特徴とする請求項1に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項8】
拡散接合が、摂氏450度以上摂氏900度以下の温度条件の下で、2メガパスカル以上20メガパスカル以下の圧力を30分以上3時間以下の時間範囲でかけることで行われることを特徴とする請求項2又は3記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項9】
拡散接合が、摂氏700度で、2.0メガパスカルの圧力を80分間かけることを特徴とする請求項8に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項10】
銅製のメッシュを、アルミニウム製の上カバーとアルミニウム製の下カバーに取り付けるための拡散接合が、摂氏300度以上摂氏600度以下の温度条件の下で、0.6メガパスカル以上1.0メガパスカル以下の圧力を30分以上4時間以下の時間範囲でかけることで行われることを特徴とする請求項4又は5記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項11】
銅製のメッシュを、アルミニウム製の上カバーとアルミニウム製の下カバーに取り付けるための拡散接合が、摂氏450度で、0.6メガパスカルの圧力を80分間かけることを特徴とする請求項10記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項12】
アルミニウム製の柱状部材またはアルミニウム製の帯板状部材を、アルミニウム製の上カバーとアルミニウム製の下カバーに取り付けるための拡散接合が、摂氏550度で、0.6メガパスカルの圧力を80分間かけることを特徴とする請求項10記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項13】
ヒートスプレッダーであって、
内面部を有する上カバー及び内面部を有する下カバーを備えており、前記上カバーと前記下カバーの間に空間が形成されるように上カバーの外周部と下カバーの外周部が接合されている中空の金属ハウジングと、
前記金属ハウジングの上カバーの内面部と下カバーの内面部に接合された金属メッシュからなる毛細管構造体と、
前記金属ハウジングの上カバーの内面部と下カバーの内面部の間に接合され、前記空間内に配置された複数の補強部材と、
空間内に充填された作動流体を備えており、
前記金属メッシュと前記金属ハウジングの内面部の間と、前記上カバーと下カバーの間と、前記補強部材と前記金属ハウジングの内面部の間の接合面は、全て拡散接合で接合されていることを特徴とするヒートスプレッダー。
【請求項14】
上カバーと、下カバーと、金属メッシュが銅から作られていることを特徴とする請求項13記載のヒートスプレッダー。
【請求項15】
複数の補強部材が、銅製の柱状部材、銅製の帯板状部材、もしくは銅製の柱状部材と銅製の帯板状部材の組合せのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項14記載のヒートスプレッダー。
【請求項16】
上カバー及び下カバーを構成する金属材料がアルミニウムであって、金属メッシュが銅製メッシュであることを特徴とする請求項13記載のヒートスプレッダー。
【請求項17】
補強部材は、アルミニウム製の柱状部材、アルミニウム製の帯板状部材、もしくはアルミニウム製の柱状部材とアルミニウム製の帯板状部材の組合せのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項16記載のヒートスプレッダー。
【請求項18】
補強部材は、上カバーの金属メッシュ及び下カバーの金属メッシュとの間で接合されることを特徴とする請求項13または14記載のヒートスプレッダー。
【請求項19】
それぞれの金属メッシュは複数の開口部をさらに有しており、補強部材が上カバー及び下カバーの内面部に接合するために、前記金属メッシュの前記開口部を通過することを特徴とする請求項13または14記載のヒートスプレッダー。
【請求項20】
ヒートスプレッダーが屈曲可能なことを特徴とする請求項13または14記載のヒートスプレッダー。
【請求項1】
ヒートスプレッダーの製造方法であって、
それぞれが1枚のシート状の金属材料からなり、外周部及び内面部を有している上カバー及び下カバーを供給する工程と、
前記上カバーの内面部の表面と、前記下カバーの内面部の表面に毛細管構造体を形成するために、拡散接合によって金属メッシュを前記上カバーの内面部と前記下カバーの内面部に取り付ける工程と、
複数の補強部材を、金属メッシュが取り付けられた前記上カバーの内面と前記下カバーの内面の間に配置する工程と、
前記上カバーの表面と前記下カバーの表面の間に空間が形成されて、前記補強部材は空間の間に接合されるように、前記上カバーと前記下カバーと前記補強部材を、拡散接合によって接合する工程と、
前記空間を真空にする工程と、
前記真空の空間に作動流体を満たす工程と、
前記作動流体が満たされた空間を密閉する工程を備えていることを特徴とするヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項2】
上カバーと、下カバーと、金属メッシュが銅から作られていることを特徴とする請求項1に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項3】
複数の補強部材が、銅製の柱状部材、銅製の帯板状部材、もしくは銅製の柱状部材と銅製の帯板状部材の組合せのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項4】
上カバーと下カバーを形成する金属材料がアルミニウムであって、金属メッシュが銅製のメッシュであることを特徴とする請求項1に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項5】
補強部材はアルミニウム製の柱状部材、アルミニウム製の帯板状部材、もしくはアルミニウム製の柱状部材とアルミニウム製の帯板状部材の組合せのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項4に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項6】
補強部材は、上カバーに取り付けられる金属メッシュと、下カバーに取り付けられる金属メッシュとの間で接合されることを特徴とする請求項1に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項7】
それぞれの金属メッシュが複数の開口部を有しており、補強部材は上カバー及び下カバーの内面部に接合するために前記開口部を通過することを特徴とする請求項1に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項8】
拡散接合が、摂氏450度以上摂氏900度以下の温度条件の下で、2メガパスカル以上20メガパスカル以下の圧力を30分以上3時間以下の時間範囲でかけることで行われることを特徴とする請求項2又は3記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項9】
拡散接合が、摂氏700度で、2.0メガパスカルの圧力を80分間かけることを特徴とする請求項8に記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項10】
銅製のメッシュを、アルミニウム製の上カバーとアルミニウム製の下カバーに取り付けるための拡散接合が、摂氏300度以上摂氏600度以下の温度条件の下で、0.6メガパスカル以上1.0メガパスカル以下の圧力を30分以上4時間以下の時間範囲でかけることで行われることを特徴とする請求項4又は5記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項11】
銅製のメッシュを、アルミニウム製の上カバーとアルミニウム製の下カバーに取り付けるための拡散接合が、摂氏450度で、0.6メガパスカルの圧力を80分間かけることを特徴とする請求項10記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項12】
アルミニウム製の柱状部材またはアルミニウム製の帯板状部材を、アルミニウム製の上カバーとアルミニウム製の下カバーに取り付けるための拡散接合が、摂氏550度で、0.6メガパスカルの圧力を80分間かけることを特徴とする請求項10記載のヒートスプレッダーの製造方法。
【請求項13】
ヒートスプレッダーであって、
内面部を有する上カバー及び内面部を有する下カバーを備えており、前記上カバーと前記下カバーの間に空間が形成されるように上カバーの外周部と下カバーの外周部が接合されている中空の金属ハウジングと、
前記金属ハウジングの上カバーの内面部と下カバーの内面部に接合された金属メッシュからなる毛細管構造体と、
前記金属ハウジングの上カバーの内面部と下カバーの内面部の間に接合され、前記空間内に配置された複数の補強部材と、
空間内に充填された作動流体を備えており、
前記金属メッシュと前記金属ハウジングの内面部の間と、前記上カバーと下カバーの間と、前記補強部材と前記金属ハウジングの内面部の間の接合面は、全て拡散接合で接合されていることを特徴とするヒートスプレッダー。
【請求項14】
上カバーと、下カバーと、金属メッシュが銅から作られていることを特徴とする請求項13記載のヒートスプレッダー。
【請求項15】
複数の補強部材が、銅製の柱状部材、銅製の帯板状部材、もしくは銅製の柱状部材と銅製の帯板状部材の組合せのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項14記載のヒートスプレッダー。
【請求項16】
上カバー及び下カバーを構成する金属材料がアルミニウムであって、金属メッシュが銅製メッシュであることを特徴とする請求項13記載のヒートスプレッダー。
【請求項17】
補強部材は、アルミニウム製の柱状部材、アルミニウム製の帯板状部材、もしくはアルミニウム製の柱状部材とアルミニウム製の帯板状部材の組合せのいずれかで構成されていることを特徴とする請求項16記載のヒートスプレッダー。
【請求項18】
補強部材は、上カバーの金属メッシュ及び下カバーの金属メッシュとの間で接合されることを特徴とする請求項13または14記載のヒートスプレッダー。
【請求項19】
それぞれの金属メッシュは複数の開口部をさらに有しており、補強部材が上カバー及び下カバーの内面部に接合するために、前記金属メッシュの前記開口部を通過することを特徴とする請求項13または14記載のヒートスプレッダー。
【請求項20】
ヒートスプレッダーが屈曲可能なことを特徴とする請求項13または14記載のヒートスプレッダー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−140435(P2006−140435A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174888(P2005−174888)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(505225201)邁萪科技股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(505225201)邁萪科技股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】
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