説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】本発明は、ケースモールド型の金属化フィルムコンデンサの耐湿性向上を簡素に実現することを目的とする。
【解決手段】誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを前記金属蒸着電極が前記誘電体フィルムを介して対向するように巻回し、両端面にメタリコン電極2を形成し、前記メタリコン電極2から上方に表出するように取り付けられた外部端子3を備えたコンデンサ素子1と、このコンデンサ素子1を内部に収納する、上面が開口した樹脂ケース4と、前記コンデンサ素子1と前記樹脂ケース4の隙間に充填される充填樹脂5と、からなる金属化フィルムコンデンサにおいて、前記コンデンサ素子1と前記樹脂ケース4との間で前記樹脂ケース4の内壁近傍にガスバリア性プラスチックフィルム6を配置する金属化フィルムコンデンサとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ素子をケース内に備え、ケース内に充填樹脂を注入して樹脂モールドされてなる金属化フィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は従来のケースモールド型の金属化フィルムコンデンサを示す断面図である。
【0003】
図8において、21は誘電体フィルムの片面に金属を蒸着させた2枚の金属化フィルムを巻回したコンデンサ素子である。
【0004】
コンデンサ素子21の巻回端面にはメタリコン電極22が形成されている。このメタリコン電極22に接続された銅製で一対の外部端子23は外方へ突出しており、メタリコン電極22と外部端子23を通じて外部へ電気的に接続をする働きを有している。
【0005】
上方に開口部を有する樹脂ケース24は外部端子23を持つコンデンサ素子21を樹脂ケース24内に収容し、樹脂ケース24内におけるコンデンサ素子21との隙間にエポキシ樹脂などの充填樹脂25を外部接続端子23のみが外方に表出するように注型してコンデンサ素子21を封止する。
【0006】
また、耐湿性を向上させるためにはガスバリア性のあるフィルムなどをコンデンサ素子21の外周に後巻フィルム(図示せず)として巻回した後にメタリコン電極22を形成するなどとしていた。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【特許文献1】特開2000−323352号公報
【特許文献2】特開2002−184642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の構成においては、耐湿性を向上させるためにコンデンサ素子21に対し充填樹脂25を注型することにより被覆したり、コンデンサ素子21をガスバリア性のある後巻フィルム(図示せず)で巻回したりするなどしていた。しかしながら、後巻フィルムの巻回には誘電体フィルムであるフィルムと別のフィルムを用いるために専用の機械が必要であり、また、コンデンサ素子21に強固に巻回しなければならず大がかりな工数も必要であった。
【0009】
さらに、コンデンサ素子21に後巻フィルムを巻回すると、コンデンサ素子21に熱が加わった場合に金属化フィルムと後巻フィルムの熱収縮率の差などによって、コンデンサ素子21と後巻フィルムとの間に空隙などができ、耐湿性に悪影響を及ぼすこともあった。
【0010】
そこで本発明は少ない工数で容易に耐湿性を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこでこの目的を達成するために、本発明は、コンデンサ素子を収納して樹脂モールドした樹脂ケースとコンデンサ素子との間で樹脂ケース内壁近傍にガスバリア性プラスチックフィルムを配置することを特徴とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属化フィルムコンデンサはコンデンサ素子と樹脂ケースとの間で樹脂ケースの内壁近傍にガスバリア性プラスチックフィルムを置くだけなので、専用の機械等も必要なく、容易に耐湿性を向上させることができるものである。
【0013】
また、ガスバリア性プラスチックフィルムは樹脂ケース内壁近傍に配置するので水分の侵入を樹脂ケースにより近い位置で阻むことができるので、耐湿性向上の効果も従来に比べ大きくなるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図を用いて説明する。
【0015】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態における金属化フィルムコンデンサの断面図であり、図2は同金属化フィルムコンデンサの樹脂ケースの側面を切り欠いた、切り欠き斜視図である。
【0016】
図1および図2において、コンデンサ素子1はポリプロピレンなどの誘電体フィルムの片面または両面にアルミニウムや亜鉛などの金属を蒸着させて金属蒸着電極とした2枚の金属化フィルムをこの金属蒸着電極が誘電体フィルムを介して対向するように巻回したものである。誘電体フィルムの両面に金属を蒸着した場合は金属化フィルムと誘電体フィルムを巻回することとなる。巻回した金属化フィルムを体積効率の向上のために扁平型に押圧し、巻回両端面に電極を引き出すため、亜鉛などを溶射することによってメタリコン電極2を形成する。さらに、外部端子3を後述する樹脂ケース4から上方に表出するようにメタリコン電極2に電気的に接続する。このように金属化フィルムを巻回し、両端にメタリコン電極2と外部端子3を設けることによってコンデンサ素子1を構成させるのである。
【0017】
上方に開口部を有するポリフェニレンサルファイドなどからなる樹脂ケース4は扁平型のコンデンサ素子1の長辺がほぼ垂直になるように収容することができるものである。
【0018】
ガスバリア性プラスチックフィルム6はコンデンサ素子1と樹脂ケース4との間に配置され、樹脂ケース4に入れられたコンデンサ素子1の巻回側面の長辺側に対向するように樹脂ケース4の内壁近傍に位置させる。このガスバリア性プラスチックフィルム6は少なくとも水蒸気をバリアする機能を有しているものとする。
【0019】
エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂からなる充填樹脂5はコンデンサ素子1と樹脂ケース4の隙間に注入される。このとき、ガスバリア性プラスチックフィルム6の幅は樹脂ケース4の内壁の幅より小さくすることにより、充填樹脂5はコンデンサ素子1とガスバリア性プラスチックフィルム6との間やガスバリア性プラスチックフィルム6と樹脂ケース4との間にも流れ込むことになる。図2においては充填樹脂5の図示は省略している。
【0020】
このようにコンデンサ素子1と樹脂ケース4との間で樹脂ケース4の内壁近傍にガスバリア性プラスチックフィルム6を配置することが本発明における技術的特徴の一つであり、これによって、従来であれば金属化フィルムにおける金属蒸着電極が水分などによって侵されてしまい、その結果コンデンサとしての容量が低下してしまうものであったところ、樹脂ケース4に近い部分で水分の侵入を阻むことができるので、容量が低下することなく、耐湿性を高めることができるとともに、ガスバリア性プラスチックフィルム6を樹脂ケース4内に配置するという極めて簡素な作業であるため、後巻フィルムのように専用の機械等を用いることなく、大がかりな工数を増やすことなく耐湿性の向上を図ることができるという効果を奏するものである。
【0021】
さらに、本実施の形態によれば、コンデンサ素子1とガスバリア性プラスチックフィルム6との間には必ず充填樹脂5が介在する構成としているため、背景技術の項で説明したガスバリア性プラスチックフィルムをコンデンサ素子に後巻フィルムとして巻回した構成のもので問題となるコンデンサ素子と後巻フィルムとの間に空隙が生じることも無いために、優れた耐湿性を発揮することができるものである。また、図1においてガスバリア性プラスチックフィルム6はU字状としたが、このガスバリア性プラスチックフィルム6の底面側はつながっていなくてもよく、コンデンサ素子1の巻回側面の長辺側に対向するようにそれぞれ2枚のガスバリア性プラスチックフィルム6を差し込んでもよいものとする。
【0022】
なお、このガスバリア性プラスチックフィルム6をU字状とすることによって部品数も最小限とすることができるとともに作業はより簡素なものにすることができる。
【0023】
また、ガスバリア性プラスチックフィルム6の剛性を高めることによってガスバリア性プラスチックフィルム6は樹脂ケース4内で底面側から開口面に向かって徐々に広がっていく形になり、ガスバリア性プラスチックフィルム6は樹脂ケース4の内壁に押しつけられる形となる。これによって充填樹脂5は樹脂ケース4とガスバリア性プラスチックフィルム6との間ではなくより広い隙間を持ったコンデンサ素子1とガスバリア性プラスチックフィルム6との間に注入されることになり、ガスバリア性プラスチックフィルム6は充填樹脂5によっても樹脂ケース4の内壁に押さえつけられることとなる。これによってガスバリア性プラスチックフィルム6はより樹脂ケース4に近い部分で水分の侵入を阻むことができるようになるものである。
【0024】
なお、ガスバリア性プラスチックフィルム6の剛性を高める方法としては、ガスバリア性プラスチックフィルム6の厚みを厚くしてもよく、さらにはガスバリア性プラスチックフィルム6を粘着剤などで複数枚貼り合わせてもよい。これによってさらに耐湿性が向上するとともに剛性も高まるのでケースに収納する際の作業性も向上するという効果を奏する。
【0025】
さらにガスバリア性プラスチックフィルム6を酸化ケイ素または酸化ケイ素とアルミナをコーティングした無機酸化物層を有するフィルムとすることで、ガスバリア性プラスチックフィルム6の耐薬品性、耐酸性、耐油性をより良好なものにすることができるとともに酸素透過性や水蒸気透過性も抑えることができるものである。
【0026】
なお、本実施の形態においてはガスバリア性プラスチックフィルム6を略方形のシートとし、コンデンサ素子1の巻回側面の長辺側に対向するものとしたが、図3に示すようにさらにコンデンサ素子1のメタリコン電極2に対向するように配置してもよく、これによってさらに耐湿性が向上するものである。ここで、図3においては外部端子3と充填樹脂5の図示は省略している。
【0027】
また、コンデンサ素子1の巻回側面の長辺側とメタリコン電極2の両方に対向させるために2枚の略方形のガスバリア性プラスチックフィルム6を用いてもよく、十字状に切り抜かれたガスバリア性プラスチックフィルム6を用いてもよいものとする。
【0028】
さらに、ガスバリア性プラスチックフィルム6を樹脂ケース4と別体で設けることによって、樹脂ケース4の内壁をコーティングなどした場合と比較した際には樹脂ケース4と充填樹脂5との接合力も従来同等に保持することが可能となり、充填樹脂5が剥離してしまうなどの問題も考慮する必要が無くなるものである。
【0029】
なお、図1および図2においてコンデンサ素子1は外部端子3を樹脂ケース4とで嵌合する、もしくは図示していない固定体などを用い樹脂ケース4にコンデンサ素子1を固定して樹脂ケース4と巻回された金属化フィルムとの間に隙間を設けるものとする。
【0030】
なお、本実施の形態によればコンデンサ素子1は単数としたが、コンデンサ素子1が複数の場合は図4に示すように樹脂ケース4とコンデンサ素子1との間で樹脂ケース4の内壁近傍にガスバリア性プラスチックフィルム6を配置すればよい。
【0031】
また、本実施の形態によればコンデンサ素子1の巻回軸は水平方向としたが、コンデンサ素子1の巻回軸を垂直方向にする場合には、図5に示すように少なくともコンデンサ素子1の巻回側面に対向するように樹脂ケース4の内壁近傍にガスバリア性プラスチックフィルム6を配置すればよい。
【0032】
さらに、本実施の形態によれば樹脂ケース4の開口面側にはガスバリア性プラスチックフィルム6を配置していないが、充填樹脂5の充填の途中などでシート状のガスバリア性プラスチックフィルム6をコンデンサ素子1に対して充填樹脂5を介して覆うように樹脂ケース4の開口面に配置してやることによって、より耐湿性も向上するものである。
【0033】
(実施例1)
実施例1として図1に示すような構成の金属化フィルムコンデンサを用いた。このときガスバリア性プラスチックフィルム6としては12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに酸化ケイ素を蒸着したものを1枚用いた。
【0034】
(実施例2)
実施例2として実施例1と同様にガスバリア性プラスチックフィルム6として12μmのPETフィルムに酸化ケイ素を蒸着したものをポリウレタン系の粘着剤により4枚貼り合わせたものを用いた。
【0035】
(実施例3)
実施例3として実施例1に加え、ガスバリア性プラスチックフィルム6として12μmのPETフィルムに酸化ケイ素を蒸着したシートを樹脂ケース4の開口面側に充填樹脂5中で充填樹脂5を介してコンデンサ素子1を覆うように配置したものを用いた。
【0036】
(比較例)
比較例として、上記各実施例に示したガスバリア性プラスチックフィルム6を用いない構成とした。
【0037】
このように構成された実施例1から3、比較例の金属化フィルムコンデンサについて耐湿試験を行った結果を図6、図7に示す。
【0038】
試験条件としてはDC400Vを負荷し、雰囲気温度85℃、湿度85%における容量減少率を測定した。
【0039】
図6に示すのは実施例1および2と比較例、図7に示すのは実施例1および3と比較例である。図6においてガスバリア性プラスチックフィルム6を貼り合わせる枚数を増やすことによって容量減少率が抑えられている。また図7において樹脂ケース4の開口面側にガスバリア性プラスチックフィルム6を配置することで同じく容量減少率が抑えられている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明にかかる金属化フィルムコンデンサによれば、専用の機械等も必要なく、容易に耐湿性を向上させることができるようになり、高温、高湿といった環境下における高信頼性などが要求される自動車のシステムなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1による金属化フィルムコンデンサの断面図
【図2】本発明の実施の形態1による金属化フィルムコンデンサの切り欠き斜視図
【図3】本発明の実施の形態1による金属化フィルムコンデンサの他の例を示す切り欠き斜視図
【図4】本発明の実施の形態1による金属化フィルムコンデンサの他の例を示す切り欠き斜視図
【図5】本発明の実施の形態1による金属化フィルムコンデンサの他の例を示す切り欠き斜視図
【図6】実施例1,2と比較例との耐湿試験における容量減少率のグラフ
【図7】実施例1,3と比較例との耐湿試験における容量減少率のグラフ
【図8】従来の金属化フィルムコンデンサの断面図
【符号の説明】
【0042】
1 コンデンサ素子
2 メタリコン電極
3 外部端子
4 樹脂ケース
5 充填樹脂
6 ガスバリア性プラスチックフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを前記金属蒸着電極が前記誘電体フィルムを介して対向するように巻回し、両端面にメタリコン電極を形成し、前記メタリコン電極から上方に表出するように取り付けられた外部端子を備えたコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を内部に収納する、上面開口の樹脂ケースと、前記コンデンサ素子と前記樹脂ケースの隙間に充填される充填樹脂と、からなる金属化フィルムコンデンサにおいて、前記コンデンサ素子と前記樹脂ケースとの間で、かつ前記樹脂ケースの内壁近傍にガスバリア性プラスチックフィルムを配置したことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記ガスバリア性プラスチックフィルムは酸化ケイ素、または酸化ケイ素とアルミナをコーティングした無機酸化物層を有するフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記ガスバリア性プラスチックフィルムを複数枚粘着させ、積層したものであることを特徴とする請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項4】
ガスバリア性プラスチックフィルムが前記充填樹脂を介して前記コンデンサ素子を覆うように前記樹脂ケースの開口面に配置したことを特徴とする請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記コンデンサ素子は扁平型であり、少なくとも前記コンデンサ素子の巻回側面の長辺部に対向するように前記樹脂ケースの内壁近傍にガスバリア性プラスチックフィルムを配置したことを特徴とする請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項6】
扁平型の前記コンデンサ素子の長辺がほぼ垂直になるように前記樹脂ケースに収納するとともに前記ガスバリア性プラスチックフィルムを略U字状に配置したことを特徴とする請求項5に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記ガスバリア性プラスチックフィルムは前記樹脂ケース内で底面から開口面に向かって徐々に広がっている形状であることを特徴とする請求項6に記載の金属化フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−173351(P2007−173351A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366069(P2005−366069)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】