説明

金属張積層板の製造方法

【課題】 本発明の課題は、吸湿半田耐熱性に優れた金属張積層板を提供することにある。
【解決手段】 導体上に少なくとも2種以上のポリイミド層を有する金属張積層板の製造方法であって、少なくとも該2種以上のポリイミド層の導体と接触している側の層が熱可塑性ポリイミド層であって、該熱可塑性ポリイミドが、ピロメリット酸二無水物と2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを主成分とするものであり、かつ特定の条件を満足し、ポリイミド樹脂の前駆体を含む溶液2種以上を共押出によって導体上に流延して2層以上の複数層を形成する工程を含み、前記共押出に用いる溶液の少なくとも1つの溶液には化学脱水剤及び触媒が含有されており、ポリイミド前駆体を310〜410℃の温度でイミド化することを特徴とする金属張積層板の製造方法により、上記課題を解決し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板等に好適に用いられる金属張積層板の製造方法に関する。更に詳しくは、少なくとも導体と複数のポリイミド層からなる、金属張積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化、高機能化、小型化が急速に進んでおり、これに伴って電子機器に用いられる電子部品に対しても小型化、軽量化の要請が高まっている。上記要請を受け、半導体素子パッケージ方法やそれらを実装する配線板にも、より高密度、高機能、かつ高性能なものが求められるようになっている。
【0003】
近年は、絶縁性フィルムに直接金属層を設けたFPCや、接着層に熱可塑性ポリイミドを使用したFPCが提案されている。このようなFPCは、絶縁性の基板に直接金属層を形成している状態にあるため、2層FPCとも呼ばれる。この2層FPCは、接着層としてエポキシ樹脂系やアクリル樹脂系等の熱硬化性接着剤を使用している3層FPCより優れた特性を有し、上記各種特性に対する要求にも十分対応可能であることから、今後需要が伸びていくことが期待される。
【0004】
上記2層FPCは、基板に金属箔を積層した構造を有する金属張積層板を用いて製造される。この金属張積層板の作製方法としては、導体上にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を流延、塗布した後イミド化するキャスト法、スパッタ、メッキによりポリイミドフィルム上に直接金属層を設けるメタライジング法、熱可塑性ポリイミドを介してポリイミドフィルムと金属箔とを貼り合わせるラミネート法が挙げられる。
【0005】
これらのうち、キャスト法は、最も生産性に優れており、従って最もローコストで金属張積層板を製造可能な方法である。キャスト法では、接着性と寸法安定性の両方を付与するため、複数層のポリイミド樹脂層を導体上に設けることが一般的に行われている。複数層のポリイミド樹脂層を導体上に作製する方法としては、1つのポリイミド前駆体溶液を導体上にキャストし乾燥した後、次のポリイミド前駆体溶液をその上にキャストする、逐次キャスト法(例えば特許文献1参照)や、複数のポリイミド前駆体溶液を、共押出ダイを使用して導体上に同時にキャストする、共押出法(例えば特許文献2参照)が知られている。このうち共押出法は、逐次キャスト法と比較して生産性に優れていることや、工程が少ないことから異物混入などの欠陥要因が少ないことから、より優位な方法である。
【0006】
一方、ポリイミド材料を用いる場合の欠点としては、ポリイミドの性質に基づく吸水率の高さが挙げられる。これは、2層FPCにおいても当てはまる問題である。FPCの吸水率が高い場合、半田を用いた部品実装時に悪影響を及ぼす場合がある。具体的には、大気中から材料内に取り込まれた水分が、部品実装時の加熱によって急激に系外に放出されることにより、結果としてFPCに膨れや白化が生じ、FPCにおける各材料間の接着性や電気特性に問題が生じる場合がある。このような吸湿半田耐熱性に係る問題を回避するため、例えば、実装工程前にFPCを予備乾燥して水分を除去する対策を講じることもできる。しかしながら、工程数が増えてしまうため、生産性の面で問題がある。
【0007】
上記課題を解決するために、接着層に用いる熱可塑性ポリイミドの特性を制御した接着フィルムが提案されている。具体的には、耐熱性ベースフィルムの片面又は両面に設けられる接着層に含まれる熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度を上げることで、接着層の耐熱性を向上させ、吸水率を下げることにより、接着フィルム中に取り込まれる水分量を減らしている(例えば特許文献3もしくは特許文献4参照)。また、接着フィルムと金属箔を貼り合わせる際に、接着フィルムを予備乾燥することで水分を除去するといった、加工面での対策も提案されている(例えば特許文献5参照)。
【0008】
これらの方法により、ポリイミド材料を用いた際の欠点であった吸湿半田耐熱性は改善される。しかしながら、近年の環境に対する意識の高まりにより、半導体実装時に鉛フリー半田が採用される例が増えてきている。鉛フリー半田は現在使用されている共晶半田よりも融点が40℃程度高いことから、実装工程において使用される材料にかかる温度は必然的に上昇することになる。そのため、従来に比較し、材料に要求される吸湿半田耐熱性もより厳しくなっているのが現状である。また、多層FPC用途として使用する際には、多層化により材料内部に水分が閉じ込められやすいため、単層FPCの場合と比較して低い半田温度で不良が発生しやすくなる傾向があるため、これらに使用される材料にはより厳しい吸湿半田耐熱性が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−323935号公報
【特許文献2】特公平4−79713号公報
【特許文献3】特開2000−129228号公報
【特許文献4】特開2001−260272号公報
【特許文献5】特開2001−270037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、接着剤として使用する熱可塑性ポリイミドの特性を制御することにより、吸湿半田耐熱性に優れた金属張積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
通常、熱可塑性ポリイミドのイミド化温度は、イミド化と焼成後フィルムに溶剤成分を残さない観点からできるだけ高温で実施することが有効であることが知られている。しかしながら、高温でイミド化した場合には、充分な吸湿半田耐熱性が得られないポリイミドも存在する。
【0012】
本発明者は、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、接着層に使用する熱可塑性ポリイミド組成に特定のモノマーを特定のモル比で使用し、特定の温度範囲でイミド化することにより、接着フィルムおよびそれを用いて得られるフレキシブル金属張積層板の吸湿半田耐熱性を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、導体上に少なくとも2種以上のポリイミド層を有する金属張積層板の製造方法であって、少なくとも該2種以上のポリイミド層の導体と接触している側の層が熱可塑性ポリイミド層であって、該熱可塑性ポリイミドが、下記(A)と(B)を満足し、ポリイミド樹脂の前駆体を含む溶液2種以上を共押出によって導体上に流延して2層以上の複数層を形成する工程を含み、前記共押出に用いる溶液の少なくとも1つの溶液には化学脱水剤及び触媒が含有されており、ポリイミド前駆体を310〜410℃の温度でイミド化することを特徴とする金属張積層板の製造方法である。
(A)該熱可塑性ポリイミドが、ピロメリット酸二無水物と2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを主成分とするものであり、ピロメリット酸二無水物以外の酸二無水物をテトラカルボン酸二無水物成分100モル%中、10〜50モル%含有し、および/または2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン以外のジアミンをジアミン成分100モル%中、5〜30モル%含有し、
(B)ピロメリット酸二無水物以外の酸二無水物と2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン以外のジアミンとの合計モル数が酸二無水物成分100モル%とジアミン成分100モル%の合計200モル%中、5〜50モル%である。
【0014】
熱可塑性ポリイミド層以外のポリイミド層が、少なくとも耐熱性ポリイミド層を含むことが好ましい。
【0015】
ポリイミド層が、耐熱性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層を設けてなることが好ましい。
【0016】
導体上に、熱可塑性ポリイミド前駆体溶液−耐熱性ポリイミド前駆体溶液−熱可塑性ポリイミド前駆体溶液を前記順で共押出によって導体上に流延した後に、乾燥・焼成せしめ、導体−熱可塑性ポリイミド層−耐熱性ポリイミド層−熱可塑性ポリイミド層からなる積層体を作製した後、当該積層体の導体と接触していない側の熱可塑性ポリイミド層と、第二導体を熱ラミネートすることが好ましい。
【0017】
熱可塑性ポリイミドに含有されるピロメリット酸二無水物以外の酸二無水物が、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であることが好ましい。
【0018】
熱可塑性ポリイミドに含有される2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン以外のジアミンが、4,4’−オキシジアニリンであることが好ましい。
【0019】
金属箔引き剥がし強度が180度方向剥離で10N/cm以上であることが好ましい。
【0020】
前記熱可塑性ポリイミドが280℃における貯蔵弾性率1×10Pa以上、350℃での貯蔵弾性率1×10Pa未満であることが好ましい。
【0021】
前記耐熱性ポリイミドフィルムが、熱可塑性ポリイミドのブロック成分をポリイミド全体の20〜60モル%含有することが好ましい。
【0022】
前記熱可塑性ポリイミドのブロック成分の繰り返し単位nが3〜99であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明により得られる金属張積層板は、優れた接着性を維持しながら、吸湿半田耐熱性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかる金属張積層板の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明は、導体上に少なくとも2種以上のポリイミド層を有する金属張積層板の製造方法であって、共押出法である必要がある。本発明に係る、共押出法とは、ポリイミド樹脂の前駆体を含む溶液2種以上を共押出によって導体上に流延して2層以上の複数層を形成する工程を含むフィルムの製造方法である。2層以上の複数層は、2層以上の多層ダイを有する押出成形機へポリイミド樹脂の前駆体を含む溶液2種以上を同時に供給して、前記多層ダイの吐出口から溶液を少なくとも2層の薄膜状体として押出すことで得られる。一般的に用いられる方法について説明すると、2層以上の多層ダイから押出された前記の両溶液を、バックアップロールに抱かせた導体上に連続的に押し出し、次いで、前記支持体上の多層の薄膜状体の溶媒の少なくとも一部を揮散せしめ、さらに高温で充分に加熱処理することによって、溶媒を実質的に除去すると共にイミド化を進行させることで、目的の金属張積層板が得られる。また、接着層の溶融流動性を改善する目的で、意図的にイミド化率を低くする及び/又は溶媒を残留させてもよい。
【0026】
上記の2層以上の多層ダイとしては各種構造のものが使用できるが、例えば複数層用フィルム作製用のTダイス等が使用できる。また、従来既知のあらゆる構造のものを好適に使用可能であるが、特に好適に使用可能なものとして、フィードブロックTダイやマルチマニホールドTダイが例示される。
【0027】
本発明にかかる導体とは、金属箔であればその種別を問わないが、銅箔、特に5〜20μmの厚みの銅箔、もしくはキャリア銅箔付きの極薄銅箔であることが好ましい。前記銅箔は、圧延銅箔、電解銅箔の何れでも好適に使用可能であり、また、銅箔の表面処理も、公知の如何なる処理も使用可能である。
【0028】
導体上に形成される2種以上のポリイミド層は、導体と接触している側の層が熱可塑性ポリイミドである必要がある。更に好適には、寸法安定性を付与するために、熱可塑性ポリイミド層以外のポリイミド層が、少なくとも耐熱性ポリイミド層を含むことが好ましい。
【0029】
一般的にポリイミドは、ポリイミドの前駆体、即ちポリアミド酸からの脱水転化反応により得られ、当該転化反応を行う方法としては、熱によってのみ行う熱キュア法と、化学硬化剤を使用する化学キュア法の2法が最も広く知られている。しかしながら、本発明では、化学キュア法の採用が必須であり、前記共押出に用いる溶液の少なくとも1つの溶液には化学脱水剤及び触媒が含有される。
【0030】
ここで、化学硬化剤とは、化学脱水剤及び触媒を含むものである。ここでいう化学脱水剤とは、ポリアミド酸に対する脱水閉環剤であり、その主成分として、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N′−ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族酸無水物、アリールスルホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物またはそれら2種以上の混合物を好ましく用いることができる。その中でも特に、脂肪族酸無水物及び芳香族酸無水物が良好に作用する。化学脱水剤の好適な導入量は、化学脱水剤を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して0.5〜4.0モル、好ましくは0.7〜4.0モル、特に好ましくは1.0〜4.0モルである。前記範囲を超えると、導体が腐食することがある。また、前記範囲を下回ると、硬化速度が充分でなく、本発明の効果を発揮できないことがある。
【0031】
また、触媒とは硬化剤のポリアミド酸に対する脱水閉環作用を促進する効果を有する成分であるが、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミンを用いることができる。そのうち、イミダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ル、イソキノリン、キノリン、またはβ−ピコリンなどの含窒素複素環化合物であることが好ましい。さらに、化学脱水剤及び触媒からなる溶液中に、有機極性溶媒を導入することも適宜選択されうる。触媒の好適な導入量は、触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して0.05〜2.0モル、好ましくは0.1〜2.0モル、特に好ましくは0.2〜2.0モルである。前記範囲を超えると、ポリイミド層に触媒が残存し、長期耐熱性に劣る場合がある。また、前記範囲を下回ると、硬化速度が充分でなく、本発明の効果を発揮できないことがある。
【0032】
化学硬化剤を導入するポリイミド前駆体は、何れの層を構成するものであっても本発明の効果を好適に発現しうるが、耐熱性ポリイミド層のみに化学硬化剤を導入する方法が、装置の簡略化、導体の腐食の防止、ポリイミド層の物性に関して最も好ましい結果を享受可能である。
【0033】
2層以上の多層ダイから押出された耐熱性ポリイミドの前駆体溶液と、熱可塑性ポリイミドを含有する溶液若しくは熱可塑性ポリイミドの前駆体を含有する溶液中の溶媒の揮散方法に関しては特に限定されないが、加熱かつ/または送風による方法が最も簡易な方法である。上記加熱の際の温度は、高すぎると溶媒が急激に揮散し、当該揮散の痕が最終的に得られる多層フィルム中に微小欠陥を形成せしめる要因となるため、用いる溶媒の沸点+50℃未満であることが好ましい。
【0034】
イミド化時間に関しては、実質的にイミド化および乾燥が完結するのに十分な時間を取ればよく、一義的に限定されるものではないが、一般的には1〜600秒程度の範囲で適宜設定される。この時、最終的に310〜410℃の温度で加熱す必要がある。また、320〜400℃の範囲で加熱することが好ましい。また、330〜390℃の範囲で加熱することが更に好ましい。この温度より高いと熱可塑性ポリイミドの熱劣化が起こり問題が生じることがある。逆にこの温度より低いと所定の効果が発現しないことがある。例えば、300℃以下で加熱すると吸湿半田耐熱性悪化や吸湿後の銅箔との密着強度低下といった問題が生じる。420℃以上で加熱すると銅箔との密着強度低下といった問題が生じる。
【0035】
また、得られた金属張積層板の導体と接触していない側の熱可塑性ポリイミド層と、第二導体を熱ラミネートすることで、ポリイミド層の両面に導体を設けることも好ましく選択されうる。本発明に係る第二導体とは、前記導体同様金属箔であればその種別を問わないが、銅箔、特に5〜20μmの厚みの銅箔、もしくはキャリア銅箔付きの極薄銅箔であることが好ましい。前記銅箔は、圧延銅箔、電解銅箔の何れでも好適に使用可能であり、また、銅箔の表面処理も、公知の如何なる処理も使用可能である。
【0036】
熱ラミネートの方法も特に限定されず、ダブルベルト法や1対の熱ロールで加圧する熱ロール法などが例示される。また、熱ロール法においても、熱ロールと金属張積層板の間に保護フィルムを挟む方法や、熱ロールをブースで囲い、当該ブース内を不活性ガスで充満させる方法などが挙げられる。
【0037】
両面金属張積層板を作製する場合、ポリイミド層の最外層の両面が熱可塑性ポリイミドであることが好ましく、前記2種以上のポリイミド層が、耐熱性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層を設けてなることが好ましい。
【0038】
導体上に、熱可塑性ポリイミドの前駆体溶液−耐熱性ポリイミドの前駆体溶液−熱可塑性ポリイミドの前駆体溶液を前記順で共押出によって導体上に流延した後に、乾燥・焼成せしめ、導体−熱可塑性ポリイミド層−耐熱性ポリイミド層−熱可塑性ポリイミド層からなる積層体を作製した後、当該積層体の導体と接触していない側の熱可塑性ポリイミド層と、第二導体を熱ラミネートすることで両面金属張積層板を得ることが好ましい。
【0039】
<熱可塑性ポリイミド>
本発明に係る熱可塑性ポリイミドとは、ガラス転移温度を有し、且つ圧縮モード(プローブ径3mmφ、荷重5g)の熱機械分析装置(TMA)において、10〜400℃(昇温速度:10℃/min)の温度範囲で永久圧縮変形を起こすものをいう。また、既存の装置でラミネートが可能であり、且つ得られる金属張積層板の耐熱性を損なわないという点から考えると、本発明にかかる熱可塑性ポリイミドは、150〜310℃の範囲にガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう)を有していることが好ましい。なお、Tgは、動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値によりもとめることができる。
【0040】
本発明に係る熱可塑性ポリイミドは、半田耐熱性を高めるため、下記(A)と(B)を満足する必要がある。
(A)該熱可塑性ポリイミドが、ピロメリット酸二無水物と2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを主成分とするものであり、ピロメリット酸二無水物以外の酸二無水物をテトラカルボン酸二無水物成分100モル%中、10〜50モル%含有し、および/または2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン以外のジアミンをジアミン成分100モル%中、5〜30モル%含有し、
(B)ピロメリット酸二無水物以外の酸二無水物と2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン以外のジアミンとの合計モル数が酸二無水物成分100モル%とジアミン成分100モル%の合計200モル%中、5〜50モル%である。
【0041】
なお、本明細書中において、主成分とは50%以上であることを意味する。
【0042】
上記(A)(B)を満足しない場合、熱可塑性ポリイミドの所定の効果が発現しないことがある。例えば、ピロメリット酸二無水物以外の酸二無水物をテトラカルボン酸二無水物成分100モル%中、10モル%未満含有する場合、銅箔との密着強度低下といった問題が生じる場合がある。逆に、ピロメリット酸二無水物以外の酸二無水物をテトラカルボン酸二無水物成分100モル%中、50モル%より多く含有する場合、吸湿半田耐熱性悪化といった問題が生じる場合がある。2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン以外のジアミンをジアミン成分100モル%中、5モル%未満含有する場合、銅箔との密着強度低下といった問題が生じる場合がある。逆に、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン以外のジアミンをジアミン成分100モル%中、50モル%より多く含有する場合、吸湿半田耐熱性悪化といった問題が生じる場合がある。
【0043】
テトラカルボン酸二無水物成分が上記主成分以外の成分を含んでもよく、ジアミン成分が上記主成分以外の成分を含んでもよく、テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分のどちらもが上記主成分以外の成分を含んでもよい。
【0044】
ピロメリット酸二無水物以外の酸二無水物が、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であることが、良好な吸湿半田耐熱性及び良好な銅箔との密着強度を得るためには好ましい。2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン以外のジアミンが、4,4’−オキシジアニリンであることが、良好な吸湿半田耐熱性及び良好な銅箔との密着強度を得るためには好ましい。
【0045】
更に、本発明にかかる熱可塑性ポリイミドの280℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以上であることが良好な吸湿半田耐熱性発現のために好ましい。熱可塑性ポリイミドの半田試験温度での貯蔵弾性率が低い場合、多層ポリイミド中の水分が接着層を介して急激に系外に放出されてしまい、結果として多層ポリイミドやフレキシブル金属張積層板における白化や膨れの原因となりうる。また、フレキシブル金属張積層板を製造する際に多層ポリイミドと金属箔とを貼り合わせる温度では、接着性を発現するために熱可塑性ポリイミドは十分に軟化している必要があり、本発明に係る熱可塑性ポリイミドは、350℃での貯蔵弾性率が1×10Pa未満であることが好ましい。更には、熱可塑性ポリイミドが300℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以上、340℃での貯蔵弾性率が1×10Pa未満であることが好ましく、更には、接着層に含有される熱可塑性ポリイミドが300℃における貯蔵弾性率が3×10Pa以上、340℃での貯蔵弾性率が8×10Pa未満であることが好ましい。また、金属箔と貼り合わせる温度において貯蔵弾性率が大きい場合、銅箔密着強度が低下し、得られた銅張積層板を加工する際に銅箔剥がれ等の問題が生じるため好ましくない。なお、金属箔と貼り合わせる温度において貯蔵弾性率が小さいことは、銅箔密着強度が良好であることに対する必要条件であり、貯蔵弾性率が小さくても銅箔とのマッチング不良のために密着強度が低い場合もある。
【0046】
また、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等のフィルムの諸特性を改善する目的でフィラーを添加することもできる。フィラーとしてはいかなるものを用いても良いが、好ましい例としてはシリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
【0047】
フィラーの粒子径は改質すべきフィルム特性と添加するフィラーの種類によって決定されるため、特に限定されるものではないが、一般的には平均粒径が0.05〜100μm、好ましくは0.1〜75μm、更に好ましくは0.1〜50μm、特に好ましくは0.1〜25μmである。粒子径がこの範囲を下回ると改質効果が現れにくくなり、この範囲を上回ると表面性を大きく損なったり、機械的特性が大きく低下したりする可能性がある。また、フィラーの添加部数についても改質すべきフィルム特性やフィラー粒子径などにより決定されるため特に限定されるものではない。一般的にフィラーの添加量はポリイミド100重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは0.01〜90重量部、更に好ましくは0.02〜80重量部である。フィラー添加量がこの範囲を下回るとフィラーによる改質効果が現れにくく、この範囲を上回るとフィルムの機械的特性が大きく損なわれる可能性がある。フィラーの添加は、
1.重合前または途中に重合反応液に添加する方法
2.重合完了後、3本ロールなどを用いてフィラーを混錬する方法
3.フィラーを含む分散液を用意し、これをポリアミド酸有機溶媒溶液に混合する方法
などいかなる方法を用いてもよいが、フィラーを含む分散液をポリアミド酸溶液に混合する方法、特に製膜直前に混合する方法が製造ラインのフィラーによる汚染が最も少なくすむため、好ましい。フィラーを含む分散液を用意する場合、ポリアミド酸の重合溶媒と同じ溶媒を用いるのが好ましい。また、フィラーを良好に分散させ、また分散状態を安定化させるために分散剤、増粘剤等をフィルム物性に影響を及ぼさない範囲内で用いることもできる。
【0048】
本発明に係る多層ポリイミドにおける熱可塑性ポリイミド層の厚みは限定されるものではないが、多層ポリイミド全体の厚みや、接着対象である金属箔の表面粗度等を考慮して適宜選択されうるが、1〜12μmの範囲が好ましく、更には1.3〜10μmの範囲が好ましく、更には1.5〜8μmの範囲がより好ましい。上記範囲より接着層を厚くしても、接着強度が比例して向上するわけではなく、逆に、多層ポリイミドとしての線膨張係数を制御するのが困難になるといった不具合が生じる場合がある。上記範囲より接着層を薄くすると、金属箔表面の凹凸に接着層が十分にかみ込まず、接着不良を生じる場合がある。
【0049】
また、本発明の熱可塑性ポリイミドは、使用する原料比を限定することにより諸特性を制御することができる。
【0050】
<金属張積層板>
本発明にかかる金属張積層板は、吸湿半田耐熱性(例えば、85℃、85%R.H.の加湿条件下で24時間吸湿させた後、300℃の半田浴に10秒間浸漬しても、膨れ、白化等の外観異常が生じないレベル)を改善することができる。
【0051】
本発明の金属張積層板は、金属箔引き剥がし強度が180度方向剥離で10N/cm以上であることが好ましい。金属箔引き剥がし強度が10N/cm未満であると、得られた銅張積層板を加工する際に銅箔剥がれ等の問題が生じるため好ましくない。
【0052】
<耐熱性ポリイミド>
ここで、本発明における耐熱性ポリイミドフィルムとは、その高分子量体のフィルムが350℃〜500℃程度に加熱した際に熔融し、フィルムの形状を保持するものを指す。より具体的な耐熱性ポリイミドフィルムの判定方法としては、用いるジアミンと酸二無水物のモル比率を、仮想的に100:97〜97:100となるよう適切な溶媒中に添加してポリアミド酸溶液を調製し、次いで、当該ポリアミド酸溶液を平滑な支持体上に、最終厚み10〜30μm、1辺の長さ25cm以上になるよう塗布する。前記平滑な支持体の具体例としては、PETフィルム、アルミ箔、銅箔が挙げられる。最終厚みを10〜30μmになるよう塗布する方法としては、バーコーター、コンマコーター、ドクターブレードなどの方法が挙げられる。さらに、支持体上に塗布したポリアミド酸溶液の塗布膜が自己支持性を発現するまで乾燥させて支持体上から剥離し、金属製の枠に固定してイミド化と乾燥を実質的に終了させてポリイミドの単層シートを作製する。上記の乾燥及びイミド化の方法としては、熱風、遠赤外線などの方法が挙げられ、その温度条件は、溶媒種、ポリアミド酸の分子構造によって適宜選択される。このようにして得られたポリイミドの単層シートを、内辺が各20cmの正方形の金属枠に、ポリイミドの単層シートと金属枠の中心がほぼ一致するよう固定して、350℃〜500℃の雰囲気中に、フィルムが略水平になるよう5分以上封入する。その際、フィルム中央の熱変形が鉛直下方向に1cm未満であった場合、当該ポリイミドからなるフィルムは、耐熱性であると判定する。
【0053】
本発明にかかる耐熱性ポリイミドフィルムは、ポリアミド酸を前駆体として用いて製造される。ポリアミド酸の製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができ、通常、芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンを、実質的等モル量を有機溶媒中に溶解させて、得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。これらのポリアミド酸溶液は通常5〜35重量%、好ましくは10〜30重量%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る。
【0054】
重合方法としてはあらゆる公知の方法およびそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ポリアミド酸の重合における重合方法の特徴はそのモノマーの添加順序にあり、このモノマー添加順序を制御することにより得られるポリイミドの諸物性を制御することができる。従い、本発明においてポリアミド酸の重合にはいかなるモノマーの添加方法を用いても良い。代表的な重合方法として次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法、
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法、
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法、
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法、
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法、
などのような方法である。これら方法を単独で用いても良いし、部分的に組み合わせて用いることもできる。
【0055】
本発明の耐熱性ポリイミドフィルムは、その分子中に熱可塑性ポリイミドブロック成分をポリイミド全体の20〜60モル%含有することが好ましい。この範囲の耐熱性フィルムを用いることで、吸湿半田耐熱性を向上させることが可能となる。その理由は未だ解明してはいないが、以下のように推察している。吸湿半田耐熱性試験での不良、即ち白化や発泡は、ポリイミド層に吸収された水分が、加熱された半田浴に浸漬されることにより、金属箔とポリイミド層の界面で急激に膨張することにより発生する現象である。耐熱性ポリイミド層に熱可塑性ポリイミド層のブロック成分を導入することにより、水蒸気透過速度が著しく向上し、それにより、金属箔とポリイミド層界面での水分の急激な膨張が避けられていると考えている。またさらに熱可塑性ポリイミドブロック成分は、ポリイミド全体の20〜60mol%、好ましくは25〜55mol%、特に好ましくは30〜50mol%含有される。熱可塑性ポリイミドブロック成分がこの範囲を下回ると本発明の優れた接着性を発現することが困難となり、この範囲を上回ると最終的に耐熱性ポリイミドフィルムとすることが困難となる。理想的にブロック成分を形成する目的で熱可塑性ポリイミド前駆体のブロック成分を形成した後、残りのジアミン及び/又は酸二無水物を用いて非熱可塑性ポリイミド前駆体を形成する方法を用いるのが好ましい。この際、前記1)〜5)の方法を部分的に組み合わせて用いることが好ましい。
【0056】
本発明において熱可塑性ポリイミドブロック成分とは、その高分子量体のフィルムが350℃〜500℃程度に加熱した際に熔融し、フィルムの形状を保持しないようなものを指す。より具体的な熱可塑性ポリイミドブロック成分の判定方法としては、用いるジアミンと酸二無水物のモル比率を、仮想的に100:97〜97:100となるよう適切な溶媒中に添加してポリアミド酸溶液を調製し、次いで、当該ポリアミド酸溶液を平滑な支持体上に、最終厚み10〜30μm、1辺の長さ25cm以上になるよう塗布する。前記平滑な支持体の具体例としては、PETフィルム、アルミ箔、銅箔が挙げられる。最終厚みを10〜30μmになるよう塗布する方法としては、バーコーター、コンマコーター、ドクターブレードなどの方法が挙げられる。さらに、支持体上に塗布したポリアミド酸溶液の塗布膜が自己支持性を発現するまで乾燥させて支持体上から剥離し、金属製の枠に固定してイミド化と乾燥を実質的に終了させてポリイミドの単層シートを作製する。上記の乾燥及びイミド化の方法としては、熱風、遠赤外線などの方法が挙げられ、その温度条件は、溶媒種、ポリアミド酸の分子構造によって適宜選択される。このようにして得られたポリイミドの単層シートを、内辺が各20cmの正方形の金属枠に、ポリイミドの単層シートと金属枠の中心がほぼ一致するよう固定して、350℃〜500℃の雰囲気中に、フィルムが略水平になるよう5分以上封入する。その際、フィルム中央が鉛直下方向に1cm以上熱変形していた場合、当該ポリイミドからなるブロック成分は、熱可塑性であると判定する。
【0057】
ここで、熱可塑性ポリイミドブロック成分のmol%、すなわち、本発明における熱可塑性ポリイミドブロック成分の含有量とは、該熱可塑性ポリイミドブロック成分が、ジアミンを酸成分に対して過剰に用いて合成された場合は下記の計算式(1)により、酸成分をジアミン成分に対して過剰に用いて合成された場合は下記計算式(2)に従って、それぞれ計算される。
(熱可塑性ポリイミドブロック成分含有量) = a/b×100 計算式(1)
a:熱可塑性ポリイミドブロック成分に含まれるジアミン量(mol)
b:全ジアミン量(mol)
(熱可塑性ポリイミドブロック成分含有量) = a/b×100 計算式(2)
a:熱可塑性ポリイミドブロック成分に含まれる酸成分量(mol)
b:全酸成分量(mol)
またさらに熱可塑性ポリイミドブロック成分の繰り返し単位nは3〜99が好ましく、4〜90がより好ましい。繰り返し単位nがこの範囲を下回ると優れた接着性が発現しにくく、且つ吸湿膨張係数が大きくなりやすい。また、繰り返し単位nがこの範囲を上回るとポリイミド前駆体溶液の貯蔵安定性が悪くなる傾向にあり、かつ重合の再現性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0058】
本発明における熱可塑性ポリイミドブロック成分は、その高分子量体において150〜300℃の範囲にガラス転移温度(Tg)を有していることが好ましい。なお、Tgは動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値等により求めることができる。
【0059】
本発明の熱可塑性ポリイミドブロック成分を形成するモノマーについて説明する。
本発明の熱可塑性ポリイミドブロック成分を構成するジアミン主成分として好ましく用い得る例としては4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン等が挙げられ、これらを単独または複数併用することができる。これらの例は主成分として好適に用いられる例であり、副成分としていかなるジアミンを用いることもできる。これらの中で特に好ましく用い得るジアミンの例として、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0060】
これらの中でも、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いた場合、接着性を好適な範囲に制御しやすいことから特に好ましい。
【0061】
また、熱可塑性ポリイミドブロック成分を構成する酸成分として好適に用い得る例としてはピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物などが挙げられ、これらを単独または複数併用することができる。本発明においては、少なくとも3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び4,4’−オキシジフタル酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸二無水物を必須成分として用いることが好ましい。これら酸二無水物を用いることで本発明の効果である接着性ポリイミド層との高い密着性が得られやすくなる。
【0062】
本発明において、熱可塑性ポリイミドブロック成分(この段階では、熱可塑性ポリイミド前駆体ブロック成分)と反応させて耐熱性ポリイミド前駆体を製造する際に用いられるジアミンと酸二無水物の好適な例を挙げる。ジアミンと酸二無水物の組み合わせにより種々特性が変化するため一概に規定することはできないが、最終的には、耐熱性ポリイミドとなるようなジアミン、酸を使用する。このようなジアミンとしては剛直な成分、例えばパラフェニレンジアミンおよびその誘導体、ベンジジン及びその誘導体を主成分として用いるのが好ましい。これら剛直構造を有するジアミンを用いることにより非熱可塑性とし、且つ高い弾性率を達成しやすくなる。また酸成分としてはピロメリット酸二無水物を主成分として用いることが好ましい。ピロメリット酸二無水物はよく知られているようにその構造の剛直性から耐熱性ポリイミドを与えやすい傾向にある。
【0063】
本発明においては、重合制御のしやすさや装置の利便性から、まず熱可塑性ポリイミド前駆体ブロック成分を合成した後、さらに適宜設計されたモル分率でジアミン及び酸二無水物を加えて耐熱性ポリイミド前駆体とする重合方法を用いることが好ましい。
【0064】
ポリイミド前駆体(以下ポリアミド酸という)を合成するための好ましい溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができるが、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用い得る。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明について更に具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0066】
〔フレキシブル金属張積層板の吸湿半田耐熱性〕
実施例ならびに比較例で得られた両面フレキシブル金属張積層板について、3.5cm角に切り出し、片面(便宜的にA面とする)は2.5cm角の銅箔層がサンプル中央に残るように、反対面(便宜的にB面とする)は銅箔層が全面に残るように、エッチング処理で余分な銅箔層を除去してサンプルを五つ作製した。得られたサンプルを40℃、90%R.H.の加湿条件下で、96時間放置し、吸湿処理を行った。吸湿処理後、サンプルを260℃又は280℃又は300℃の半田浴に10秒間浸漬させた。半田浸漬後のサンプルについて、B面の銅箔層をエッチングにより完全に除去し、銅箔が重なっていた部分の外観に変化が無い場合は○(良)、多層ポリイミド層の白化、膨れ、銅箔層の剥離のいずれかが確認された場合は×(悪)とした。
【0067】
〔フレキシブル金属張積層板の金属箔引き剥がし強度〕
JISC6471の「6.5引きはがし強さ」に従って、サンプルを作製し、5mm幅の金属箔部分を、180度の剥離角度、50mm/分の条件で剥離し、その荷重を測定した。更に、高温高湿環境における密着力として、基材を、121℃、湿度95%、2気圧オーブンに96時間放置し、室温になるまで放置した後、90°ピール強度を評価することで行った。
【0068】
〔接着層のみのポリイミドフィルムの貯蔵弾性率の測定〕
各合成例のポリイミド前駆体樹脂から得られたポリイミドフィルムをセイコー電子(株)社製のDMS6100を用いて(サンプルサイズ 幅:9mm、長さ:50mm)、周波数1、5、10Hzで昇温速度3℃/minで20〜400℃の温度範囲で測定し、280℃と350℃の貯蔵弾性率の値を読み取った。
【0069】
(合成例1;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFともいう)を807.2g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を111.0g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら無水ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAともいう)を57.2g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.8gのPMDAを22.8gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0070】
(合成例2;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを807.3g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を110.4g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAともいう。)を4.0g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを53.9g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.8gのPMDAを22.7gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0071】
(合成例3;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを807.5g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を109.7g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらBPDAを7.9g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを50.7g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.7gのPMDAを22.5gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0072】
(合成例4;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを802.6g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を107.9g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAともいう)を8.5g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらBPDAを7.7g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらPMDAを47.0g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.8gのPMDAを23.3gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0073】
(合成例5;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを807.6g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を109.0g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらBPDAを11.7g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを47.5g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.7gのPMDAを22.4gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0074】
(合成例6;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを807.7g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を108.4g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらBPDAを15.5g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを44.4g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.7gのPMDAを22.3gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0075】
(合成例7;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを808.0g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を107.1g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらBPDAを23.0g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを38.1g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.7gのPMDAを22.0gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0076】
(合成例8;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを808.5g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を104.7g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらBPDAを37.5g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを26.1g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.7gのPMDAを21.5gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0077】
(合成例9;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを809.0g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を102.3g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらBPDAを51.3g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを16.3g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.6gのPMDAを21.0gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0078】
(合成例10;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを806.8g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を107.3g、加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら4,4’−オキシジアニリン(以下、4,4‘−ODAともいう)を2.8g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを58.2g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.8gのPMDAを22.7gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0079】
(合成例11;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを806.4g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を103.4g、加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら4,4’−オキシジアニリン(以下、4,4‘−ODAともいう)を5.6g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを59.2g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.8gのPMDAを23.6gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0080】
(合成例12;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを804.7g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を86.4g、加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら4,4’−オキシジアニリン(以下、4,4‘−ODAともいう。)を18.1g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを63.6g添加し、25℃で1時間撹拌した。2.0gのPMDAを25.4gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0081】
(合成例13;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを802.6g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を66.7g、加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら4,4’−オキシジアニリン(以下、4,4‘−ODAともいう)を32.5g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを68.7g添加し、25℃で1時間撹拌した。2.0gのPMDAを25.4gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0082】
(合成例14;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを807.0g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を106.6g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら4,4’−オキシジアニリン(以下、4,4‘−ODAともいう)を2.7g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらBPDAを4.0g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを54.9g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.8gのPMDAを23.1gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0083】
(合成例15;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを807.1g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を106.0g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら4,4’−オキシジアニリン(以下、4,4‘−ODAともいう)を2.7g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらBPDAを8.0g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを51.6g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.8gのPMDAを22.9gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0084】
(合成例16;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
容量2000mlのガラス製フラスコにDMFを805.4g、4,4’-ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(以下、BAPPともいう)を89.7g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら4,4’−オキシジアニリン(以下、4,4‘−ODAともいう)を14.6g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらBPDAを8.6g加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら、PMDAを55.3g添加し、25℃で1時間撹拌した。1.9gのPMDAを24.6gのDMFに溶解させた溶液を別途調製し、これを上記反応溶液に、粘度に注意しながら徐々に添加、撹拌を行った。粘度が1000poiseに達したところで添加、撹拌をやめ、ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0085】
(合成例17;耐熱性ポリイミド前駆体の合成)
容量3000mlのガラス製フラスコに717.0gに4,4’−オキシジアニリン(以下、4,4‘−ODAともいう)20.7g、p−フェニレンジアミン(以下、p−PDAともいう)18.6g、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(以下、BAPPともいう)28.2gを溶解した後、ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAともいう)31.2gを添加し1時間撹拌して溶解させた。ここに、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAともいう)60.9gを添加し1時間撹拌させて溶解させた。
【0086】
別途調製しておいたPMDAのDMF溶液(PMDA:DMF=2.7g:21.0g)を上記反応液に徐々に添加し、粘度が3500ポイズ程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って固形分濃度18重量%、23℃での回転粘度が3500poiseのポリアミド酸溶液(耐熱性ポリイミド前駆体溶液)を得た。
【0087】
(実施例1)
合成例17で得られた耐熱性ポリイミド前駆体溶液に、以下の化学脱水剤及び触媒を含有せしめた。
化学脱水剤:無水酢酸を耐熱性ポリイミド前駆体のアミド酸ユニット1モルに対して2.0モル
触媒:イソキノリンを耐熱性ポリイミド前駆体のアミド酸ユニット1モルに対して0.5モル
次いで、リップ幅520mmのマルチマニホールド式の3層共押出多層ダイから、両外層が合成例3で得られた熱可塑性ポリイミド前駆体溶液、内層が上記で調製した耐熱性ポリイミド前駆体溶液となる順番で形成された3層構造の多層膜を連続的に押出して、当該Tダイスの下50mmを走行している銅箔のマット面上に、銅箔と熱可塑性ポリイミド前駆体溶液が接するように流延した。前記銅箔としては、12μ厚の日本電解社製銅箔HLBを用いた。次いで、多層膜付きの銅箔を140℃×100秒で乾燥せしめ、次いでテンター炉で250℃×20秒、300℃×20秒、330℃で30秒加熱してイミド化を完了させ、各熱可塑性ポリイミド層2μm、高耐熱性ポリイミド層10μmの良好な形状の金属張積層板を得た。外層に用いた熱可塑性ポリイミド前駆体の原料モル比を表1に示す。
【0088】
得られた金属張積層板の、銅箔が接着されていない側の熱可塑性ポリイミド層と12μ厚の日本電解社製銅箔HLBを、熱ロールを用いて加圧接着せしめた。加圧接着の条件は、熱ロールと金属張積層板の両側に保護材料(アピカル125NPI;株式会社カネカ製)を用い、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力176N/cm(18kgf/cm)ラミネート速度1.0m/分とした。得られたフレキシブル金属張積層板の吸湿半田耐熱性、金属箔引き剥がし強度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0089】
続いて、外層に用いた熱可塑性ポリイミド前駆体をPETフィルムにコンマコーターを用いて塗布し、150℃で5分間乾燥した。塗布膜をPETフィルムから剥離し、金属製の枠に固定して250℃で5分、更に350℃で5分加熱し、接着層のポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの貯蔵弾性率の測定を行った。結果を表2に示す。
【0090】
(実施例2〜16)
外層に用いる熱可塑性ポリイミドの種類を表1に示すとおりに変更すること、及び実施例1においてイミド化を完了させる温度である330℃を表1に示すとおりの温度にすることを除き、他は実施例1と同様にして金属張積層板及び接着層のポリイミドフィルムを製造し、吸湿半田耐熱性、金属箔引き剥がし強度、貯蔵弾性率の測定を行った。結果を表1、表2に示す。
【0091】
(比較例1〜12)
外層に用いる熱可塑性ポリイミドの種類を表1に示すとおりに変更すること、及び実施例1においてイミド化を完了させる温度である330℃を表1に示すとおりの温度にすることを除き、他は実施例1と同様にして金属張積層板及び接着層のポリイミドフィルムを製造し、吸湿半田耐熱性、金属箔引き剥がし強度、貯蔵弾性率の測定を行った。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体上に少なくとも2種以上のポリイミド層を有する金属張積層板の製造方法であって、少なくとも該2種以上のポリイミド層の導体と接触している側の層が熱可塑性ポリイミド層であって、該熱可塑性ポリイミドが、下記(A)と(B)を満足し、ポリイミド樹脂の前駆体を含む溶液2種以上を共押出によって導体上に流延して2層以上の複数層を形成する工程を含み、前記共押出に用いる溶液の少なくとも1つの溶液には化学脱水剤及び触媒が含有されており、ポリイミド前駆体を310〜410℃の温度でイミド化することを特徴とする金属張積層板の製造方法:
(A)該熱可塑性ポリイミドが、ピロメリット酸二無水物と2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを主成分とするものであり、ピロメリット酸二無水物以外の酸二無水物をテトラカルボン酸二無水物成分100モル%中、10〜50モル%含有し、および/または2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン以外のジアミンをジアミン成分100モル%中、5〜30モル%含有し、
(B)ピロメリット酸二無水物以外の酸二無水物と2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン以外のジアミンとの合計モル数が酸二無水物成分100モル%とジアミン成分100モル%の合計200モル%中、5〜50モル%である。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリイミド層以外のポリイミド層が、少なくとも耐熱性ポリイミド層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の金属張積層板の製造方法。
【請求項3】
前記ポリイミド層が、耐熱性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層を設けてなることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属張積層板の製造方法。
【請求項4】
導体上に、熱可塑性ポリイミド前駆体溶液−耐熱性ポリイミド前駆体溶液−熱可塑性ポリイミド前駆体溶液を前記順で共押出によって導体上に流延した後に、乾燥・焼成せしめ、導体−熱可塑性ポリイミド層−耐熱性ポリイミド層−熱可塑性ポリイミド層からなる積層体を作製した後、当該積層体の導体と接触していない側の熱可塑性ポリイミド層と、第二導体を熱ラミネートすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属張積層板の製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリイミドに含有されるピロメリット酸二無水物以外の酸二無水物が、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属張積層板の製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリイミドに含有される2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン以外のジアミンが、4,4’−オキシジアニリンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属張積層板の製造方法。
【請求項7】
前記金属張積層板の金属箔引き剥がし強度が180度方向剥離で10N/cm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属張積層板の製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリイミドが280℃における貯蔵弾性率1×10Pa以上、350℃での貯蔵弾性率1×10Pa未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属張積層板の製造方法。
【請求項9】
前記耐熱性ポリイミドが、熱可塑性ポリイミドのブロック成分をポリイミド全体の20〜60モル%含有することを特徴とする請求項2または4に記載の金属張積層板の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリイミドのブロック成分の繰り返し単位nが3〜99であることを特徴とする請求項9のいずれか1項に記載の金属張積層板の製造方法。

【公開番号】特開2013−28146(P2013−28146A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167413(P2011−167413)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】