説明

金属微粒子分散体およびその製造方法

【課題】本発明は、均一な粒子径を有し、分散安定性に優れ、印刷物や導電性パターン形成にも利用可能で、かつ導電性ペーストとして利用した際に、低温で焼結させることができ良好な物性が得られる金属微粒子分散体の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】液状媒体中に脂肪酸の金属塩化合物を分散させたのち、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを用いて、前記金属塩化合物を還元することを特徴とする金属微粒子分散体の製造方法。
【化1】


(式中Rは、n価の多塩基酸残基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、200℃以下の低温で焼結することができ、また分散安定性に優れる、導電性インキなどの原料として有用な金属微粒子分散体の製造方法に関する。

【背景技術】
【0002】
従来から、プリント配線板等の基材上に電極や導電回路パターンを形成するため、導電性ペーストが広く用いられてきた。これは、導電性粉末や金属粒子を樹脂成分や有機溶媒等に分散したものである。
【0003】
しかし近年、プリント配線板基材上の回路パターンのみならず、ICタグ、あるいは電磁波シールド用の回路パターンにも微細パターンの要求が高まってきている。このような、回路パターンの微小化の要求に伴い、従来使用してきたミクロンオーダーの金属粒子では対応が困難になってきており、より精密な導電性パターンを作製するために、ナノオーダーの金属微粒子に注目が集まってきている。

従来のミクロンサイズの金属粉末を用いた導電性ペーストでは、回路を形成させ、焼結を行う際には400℃以上の高温下で焼結を進行させる必要があったため、回路を形成する基板に制約があり、プラスチックフィルム等の基材上で回路を形成させるためには、150〜200℃以下で、さらに好ましくは150℃以下で焼結させる必要があった。一般に、金属微粒子の平均粒子径が数nm〜数10nm程度であるとき、粒子を形成する原子中において、粒子表面に存在するエネルギー状態の高い原子の占める割合が大きくなり、金属原子の表面拡散が極度に大きくなったことに起因し、バルクの金属の融点よりも格段に低い温度で焼結が起こることが知られている。近年、この現象を利用し、金属微粒子を低温で焼結させて導電性被膜を得る試みが注目を浴びており、様々な金属微粒子の製造方法が提案されている。

例えば、高分子量顔料分散剤を保護剤とし、非水性溶媒と水とを混合し、アミンで還元した後に非水性溶媒中に金属を抽出することにより微小な金属微粒子を得る方法などがあるが、この方法では熱分解温度の高い高分子量顔料分散剤を用いているため、低温での焼結が困難であった。(特許文献1)そのため、気相法を用いた合成時にオクチルアミン等のアミン化合物を保護剤として添加し、さらに酸性の分解剤を共存させておくことで保護剤の熱分解温度の低温化をはかる方法もあるが、この方法を用いても200℃以上で長時間加熱する必要があり、プラスチックフィルム上で回路を形成することは困難であった。その上、気相法を用いているためコスト的に不利であるという問題があった。(特許文献2)さらに、近年、金属微粒子の保護剤として炭素数の短い脂肪酸の金属化合物やアミンの金属錯体を添加し低温で焼結させて回路を形成する方法も報告されているが、脂肪酸の金属化合物やアミンの金属錯体は反応性が高く容易に還元されやすいため、長期保存において日光や熱により還元反応が起こり、金属微粒子が成長したり凝集体が形成されたりして分散体の安定性を損ないやすいという問題があった。また、この方法で用いている還元剤は、t−ブチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素ガス等の非常に強力な還元剤であるため、反応速度が速く粒子成長を制御することが困難である。そのため、特に炭素数が10よりも少ない脂肪酸においては凝集物が多く生成し、良好な分散体を得ることができなかった。(特許文献3)
金属微粒子の製造方法では、コスト的に液相法が有利であるといわれているが、その際、還元剤が重要な役割を果たすことが知られている。還元剤としては、一般的に水素、ジボラン、水素化ホウ素アルカリ金属塩、水素化ホウ素4級アンモニウム塩、ヒドラジン、クエン酸、アルコール類、アスコルビン酸、アミン化合物等がよく用いられている。しかし、ジボラン、水素化ホウ素アルカリ金属塩、水素化ホウ素4級アンモニウム塩、ヒドラジン等の還元剤が還元力が非常に強力で、金属化合物との反応が激しく進行するため、反応速度の制御が難しく、生成した金属微粒子が凝集沈殿してしまい、微小な金属微粒子分散体を収率良く得ることは困難であった。また、これら還元力の強い還元剤は強塩基や毒性を有するものも多く、作業上危険であった。クエン酸、アスコルビン酸、アルコール類は、緩やかに反応は進行するものの、還元時に還流などの高温条件下で反応を行う必要があり、生成した金属微粒子が高い熱エネルギーを持つため、不安定で凝集が起こりやすく、高濃度化が困難であった。比較的温和に反応が進行するアルコールアミンを用いて還元する方法も報告されているが、この方法を用いても粒子径分布が広く、収率の良い金属微粒子分散体は得られなかった。また、アミン化合物は金属種によってはアミン錯体を形成するのみで還元反応が進行しない場合があるため、使用できる金属種に制限があり、汎用性に欠けるという問題があった。いずれの還元剤も、均一で高濃度な金属微粒子分散体を得ることが困難であり、昨今、安全で還元性に優れ、粒子径分布の狭い金属微粒子を生成できる還元剤の開発が求められていた。


【特許文献1】特開平11−80647号公報
【特許文献2】特開2002−334618号公報
【特許文献3】特開2005−81501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、均一な粒子径を有し、分散安定性に優れ、印刷物や導電性パターン形成にも利用可能で、かつ導電性ペーストとして利用した際に、低温で焼結させることができ良好な物性が得られる金属微粒子分散体の製造方法の提供を目的とする。
【0005】
また、本発明は、パターン性に優れた導電性樹脂組成物と該導電性樹脂組成物を用いた導電パターンなどの導電性被膜の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液状媒体中に脂肪酸の金属塩化合物を分散させたのち、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを用いて、前記金属塩化合物を還元することを特徴とする金属微粒子分散体の製造方法に関する。
【0007】
【化1】



(式中Rは、n価の多塩基酸残基を表す。)

また、本発明は、脂肪酸が、炭素数3〜22である飽和または不飽和の脂肪酸から選ばれる一種以上である上記金属微粒子分散体の製造方法に関する。
【0008】
また、本発明は、脂肪酸の金属塩化合物を形成する金属が、VIII族およびIB族から選ばれる金属である上記金属微粒子分散体の製造方法に関する。
【0009】
また、本発明は、多塩基酸ポリヒドラジドが、二塩基酸ジヒドラジドである上記金属微粒子分散体の製造方法に関する。
【0010】
また、本発明は、液状媒体が、水と非水性溶媒との混合物である上記金属微粒子分散体の製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、還元後に水相を除去する上記金属微粒子分散体の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、上記製造方法で製造されてなる金属微粒子分散体に関する。
【0013】
また、本発明は、上記金属微粒子分散体を含む樹脂組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、上記金属微粒子分散体を含むインキに関する。
【0015】
また、本発明は、上記樹脂組成物または上記インキを基材上に塗布してなる被膜に関する。
【0016】
また、本発明は、上記被膜をさらに200℃以下の熱で焼成することにより得られる導電性被膜に関する。
【0017】
また、本発明は、上記金属微粒子分散体を含む樹脂組成物を基材上に塗布して被膜とする工程と、
前記被膜を200℃以下の熱で焼成する工程とを含む導電性被膜の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の方法で製造させる金属微粒子分散体は、液状媒体中で脂肪酸の金属塩化合物を、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジド、または下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを用いて還元することにより得られる。上記有機脂肪酸は、還元された後も微粒子の近辺に存在し、微粒子を安定に存在させる分散剤としての役割を果たすため、導電性樹脂組成物として用いる際に導電性を阻害する原因の一つとなる、樹脂タイプの分散剤の使用を抑えることができる。また、脂肪酸は熱分解温度が低く、200℃以下でも熱分解反応が進むため、低温焼結性に優れるという特徴を持っている。
【0019】
上記カルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドは、pHが中性〜弱塩基性であるため作業上安全であり、還元剤として使用した場合、ヒドラジンや水素化ホウ素ナトリウムのように激しく反応することはないが、還元反応は高温で加熱する必要なく迅速に進行するため、反応後の金属微粒子の凝集が抑えられ、微小で粒子径の揃った金属微粒子の分散体を得ることができる。
【0020】
【化2】


(式中Rは、n価の多塩基酸残基を表す。)
本発明の導電性の、樹脂組成物またはインキは、粒子径が微小かつ粒度分布が狭い金属微粒子を使用しているため、流動性や安定性に優れており、低温で低い体積抵抗値を有する導電性回路パターンなどの導電性被膜を形成することができる。そのため、フレキソ印刷、ロータリースクリーン印刷、オフセットグラビア印刷、グラビア印刷、レタープレス、インクジェット印刷といった通常の印刷方式で導電性パターンなどの導電性被膜の大量生産が可能となった。また、熱分解温度の低い脂肪酸によって微粒子が被覆されているため、塗膜の焼結を低温で行うことができるようになり、PETフィルム、紙等、各種基材上に回路を形成させることが可能となった。これらの印刷法により形成される厚さ数μm程度の導電性パターンは、例えば非接触型メディアのアンテナ回路や、電磁波シールド用回路パターンに要求される性能を十分満たすと同時に、その性能は安定し信頼性に優れている。
【0021】
本発明の導電樹脂組成物またはインキを使用することによって、導電性パターンなどの導電性被膜の実用性が高まり、低コスト化が可能になった。

本発明の印刷用インキなどに用いられる樹脂組成物またはインキは、粒子径が微小かつ粒度分布の狭い金属微粒子を使用しているため、金属微粒子に特有の表面プラズモンによる吸収のスペクトルの分布が狭く、目的の波長の光をシャープに吸収することができ、着色剤が強く、光学フィルターとしての性能が優れている。そのため、印刷用インキ、樹脂組成物に添加する場合において、より少ない添加量で、良い性能を出すことが可能となり、コストパフォーマンスにも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について、実施の形態について更に詳しく説明するが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
まず、本発明の金属微粒子分散体の製造方法について説明する。

本発明の方法で製造される金属微粒子分散体は、液状媒体中に脂肪酸の金属塩化合物を分散させたのち、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドで還元することにより製造される。
【0024】
【化3】

(式中、n価のRは多塩基酸残基を表す。)
脂肪酸とは、カルボキシル基1個を有するカルボン酸RCOOHのうち、鎖式構造を有するものをいい、直鎖構造のものとアルキル基に分岐した側鎖を有するものとがあり、また、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とがある。

本発明で用いられる脂肪酸の金属塩化合物を形成する脂肪酸の種類としては特に限定されないが、低温分解性や非水性溶媒への親和性等を考慮すると、アルキル基の炭素数は3〜22であることが好ましい。上記脂肪酸は、原料としてだけではなく、還元反応が起こり、金属微粒子が生成した後にも金属表面近傍に存在し、微粒子の安定化を助ける分散剤としても良好に働くため好ましい。

上記の脂肪酸としては特に限定されないが、直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等があげられる。直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等があげられる。中でも、安定性や低温分解性を考慮するとカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等があげられる。
【0025】
分岐脂肪酸としては、2−エチルヘキサン酸、2−エチルイソヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−ブチルオクタン酸、2−イソブチルイソオクタン酸、2−ペンチルノナン酸、2−イソペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘキシルイソデカン酸、2−ブチルドデカン酸、2−イソブチルドデカン酸、2−ヘプチルウンデカン酸、2−イソヘプチルウンデカン酸、2−イソペプチルイソウンデカン酸、2−ドデシルヘキサン酸、2−イソドデシルヘキサン酸、2−オクチルドデカン酸、2−イソオクチルドデカン酸、2−オクチルイソドデカン酸、2−ノニルトリデカン酸、2−イソノニルイソトリデカン酸、2−デシルドデカン酸、2−イソデシルドデカン酸、2−デシルイソドデカン酸、2−デシルテトラデカン酸、2−オクチルヘキサデカン酸、2−イソオクチルヘキサデカン酸、2−ウンデシルペンタデカン酸、2−イソウンデシルペンタデカン酸、2−ドデシルヘプタデカン酸、2−イソドデシルイソヘプタデカン酸、2−デシルオクタデカン酸、2−デシルイソオクタデカン酸、2−トリデシルヘプタデカン酸、2−イソトリデシルイソヘプタデカン酸、2−テトラデシルオクタデカン酸、2−イソテトラデシルオクタデカン酸、2−ヘキサデシルヘキサデカン酸、2−ヘキサデシルテトラデカン酸、2−ヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−イソヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−ペンタデシルノナデカン酸、2−イソペンタデシルイソノナデカン酸、2−テトラデシルベヘン酸、2−イソテトラデシルベヘン酸、2−テトラデシルイソベヘン酸、2−イソテトラデシルイソベヘン酸等があげられる。
【0026】
三級脂肪酸としては、例えば、ピバリン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、エクアシッド9(出光石油化学製)、エクアシッド13(出光石油化学製)などがあげられる。

かかる脂肪酸のうち、脂肪酸の炭素数が3〜22の直鎖脂肪酸であると、親油性に優れ非水性溶剤中での安定性が向上するほか、分解温度が低く、低温焼結性に優れるため好ましい。
これらは一種類で用いても複数種を混合して用いても良い。

脂肪酸の金属塩化合物を形成しうる金属としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、鉄、コバルト、水銀等のVIII族およびIB族から選ばれる少なくとも一種の金属であることが好ましく、導電性インキとしての物性、低温焼結性を考慮すると金、銀、銅であることが好ましい。

脂肪酸の金属塩化合物は、公知の方法を用いて簡単に得ることができる。例えば、市販の脂肪酸ナトリウムもしくは、脂肪酸と水酸化ナトリウムを水中で混合して得られた脂肪酸ナトリウム塩を、純水中で溶解させておき、得ようとする金属の無機塩を等量添加し、析出した脂肪酸の金属塩化合物を吸引濾過して濾別し、乾燥させることで容易に脂肪酸の金属塩化合物を得ることができる。

上記金属の無機塩としては、特に限定されないが、例えば、塩化金酸、塩化白金酸、塩化銀等の塩化物、硝酸銀等の硝酸塩、酢酸銀、酢酸銅(II)等の酢酸塩、過塩素酸銀等の過塩素酸塩、硫酸銅(II)等の硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩等があげられ、所望の金属に応じて適宜選択することができる。
【0027】
また、これらの金属の無機塩は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。

本発明の金属微粒子分散体の製造方法における還元剤であるカルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドは、通常は樹脂の硬化剤や改質剤として用いられている化合物であり、従来は還元剤として使用されていないが、我々は鋭意検討の中で金属化合物の還元剤としても良好に働くことを発見した。
【0028】
本発明における還元剤である式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドとしては、特に制限はないが、例えば、二塩基酸ジヒドラジド、三塩基酸トリヒドラジド、四塩基酸テトラヒドラジド等があげられる。上記多塩基酸ポリヒドラジドの中で、二塩基酸ジヒドラジドは、溶媒への溶解度が良好であるため、還元反応を均一に進行させることができ、貯蔵安定性も良いため好ましい。
【0029】
二塩基酸ジヒドラジドとしては、例えば、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、タルタロジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、ヘキサデカン酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等があげられる。

三塩基酸トリヒドラジドとしては、例えば、クエン酸トリヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド等があげられる。四塩基酸テトラヒドラジドとしては、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等があげられる。
【0030】
上記以外の多塩基酸ポリヒドラジドとしては、ポリアクリル酸ポリヒドラジド等が挙げられる。
【0031】
これらの多塩基酸ポリヒドラジドは、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができ、カルボジヒドラジドと組み合わせて用いることもできる。

カルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドは、固体で添加しても、溶媒に溶解して添加しても良いが、反応がより均一に効率よく進行するためには溶媒に溶解して添加することが好ましい。
【0032】
さらに、反応後の精製を考慮すると、水溶液として添加することが好ましい。水溶液として添加する場合においては、水への溶解性を考慮するとアジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジドを用いることが好ましい。
【0033】
カルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドは、水素の1つまたは2つ以上が水酸基等の官能基で置換されていてもよい。

本発明の金属微粒子分散体の製造方法におけるカルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドの添加量については、金属化合物の種類や濃度によっても異なるが、通常は少なくとも金属化合物溶液から金属が還元析出するのに必要な化学量論比の量を使用すればよい。本発明の製造方法に使用される還元剤はジヒドラジド類であり、還元能のある官能基を2個以上有していることから、金属が還元析出するのに必要な化学量論比はヒドラジド基で換算して添加するのが好ましい。還元後に水相を除去する場合には、余剰の還元剤も同時に除去できるため、化学量論比以上の還元剤を使用しても良く、その上限は特に定められるものではないが、洗浄工程やコストを考えると、ヒドラジド換算の化学量論比で金属化合物を還元するのに必要な添加量の6倍以下であることが好ましい。

本発明の金属微粒子分散体の製造方法において、脂肪酸の金属塩化合物を分散させる液状媒体としては、特に限定されないが、不純物の除去等の工程を考慮すると、水と相分離する非水性溶媒が好ましく、非水性溶媒に脂肪酸の金属塩化合物を分散させた後に、還元剤であるカルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドの水溶液を添加することが好ましい。
【0034】
このとき、還元反応は脂肪酸の金属塩化合物が非水性溶媒中に水性の液滴として存在する還元剤と接触した際のみに起こり、還元された金属は速やかに非水性溶媒中で安定化されるため、局所的な反応が起こりにくく、そのため、粒子径の揃った微小な金属微粒子を得ることができる。また、余剰の還元剤や塩残基等は水相に存在するため、反応後に静置して水相を除去するのみで、容易に精製を行うこともできるため好ましい。

上記非水性溶媒としては、水と相分離するものであれば特に限定されず、例えば、
クロロホルム、シクロヘキサン、ベンゼン、ノルマルヘキサン、トルエン、シクロヘキサノン、1−メトキシイソプロパノールアセテート、ジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、四塩化炭素、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、石油エーテル、シリコンオイル等があげられる。
【0035】
また、非水性溶媒としては、反応性有機溶剤を用いることもできる。反応性有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、ポリアリル化合物等のエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。非水性溶媒は1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。

本発明の金属微粒子分散体の製造方法では、脂肪酸の金属塩化合物を液状媒体中に分散させ、還元反応を行う過程において、脂肪酸の金属塩化合物または生成した金属微粒子に対し、原料由来の脂肪酸のみでも十分な分散効果を得ることができるが、必要に応じて分散安定化機能を有する化合物(以下「分散剤」と称する場合がある)を適宜添加してもよい。

上記分散安定化機能を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基、4級アンモニウム塩、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、チオール基、スルホン酸基等の顔料親和性基を1個または複数個有する化合物であることが好ましい。顔料親和性基は、化合物の主鎖に含まれていても、側鎖もしくは主鎖と側鎖の双方に含まれていてもよい。
【0036】
上記官能基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、アミン化合物、顔料分散剤、界面活性剤、脂肪酸等が好ましく使用できる。

アミン化合物としては、特に限定されず、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N',N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N'−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミン等をあげることができる。中でも、アルカノールアミンの類が好ましい。これらは1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、アミン化合物とアミン以外の上記化合物を組み合わせて使用してもよい。

顔料分散剤としては、特に限定されず一般に顔料分散剤として市販されているものを使用することができ、例えば、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース17000、ソルスパース24000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース36000、ソルスパース41000、エフカアディティブズ社製のEFKA4009、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4080、EFKA4010、EFKA4015、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4060、EFKA4330、EFKA4300、EFKA7462、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPB821、アジスパーPB711、アジスパーPB822、アジスパーPN411、アジスパーPA111、コグニスジャパン株式会社製のTEXAPHORUV20、TEXAPHORUV21、TEXAPHORP61、ビッグケミー・ジャパン株式会社製のDisperbyk−101、Disperbyk−103、Disperbyk−106、Disperbyk−110、Disperbyk−111、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−163、Disperbyk−164、Disperbyk−166、Disperbyk−167、Disperbyk−168、Disperbyk−170、Disperbyk−171、Disperbyk−174、Disperbyk−180、Disperbyk−182等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの顔料分散剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、顔料分散剤と顔料分散剤以外の上記化合物を組み合わせて使用してもよい。

界面活性剤は通常極性基と非極性基を併せ持つ物質であり、極性基の構造により、陰イオン系(アニオン系)、非イオン系(ノニオン系)、両性イオン系、陽イオン系(カチオン系)に分類される。単独でもミセルを形成して溶媒中に安定に存在するほか、粒子表面に吸着して安定化を助ける働きも有しているため、顔料や無機微粒子の分散安定化剤として好適に用いられる。
【0037】
本発明の金属微粒子分散体の製造方法において、界面活性剤を使用する場合には、特に限定されず、一般に界面活性剤として市販されている化合物を用いることができる。例えば、高級脂肪酸塩、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルファオレインスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩等の陰イオン系活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン系界面活性剤、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等の両性イオン系界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、N−メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩等の陽イオン系界面活性剤等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤、アリル系反応性界面活性剤等の反応性活性剤、カチオン性セルロース誘導体、ポリカルボン酸、ポリスチレンスルホン酸等の高分子界面活性剤も用いることができる。これらは湿潤分散剤としても市販されており、例えば、エフカアディティブズ社製のEFKA5010、EFKA5044、EFKA5244、EFKA5054、EFKA5055、EFKA5063、EFKA5064、EFKA5065、EFKA5066、EFKA5070、EFKA5071、EFKA5207、ビッグケミー・ジャパン株式会社製のDisperbyk−101、Disperbyk−108、Disperbyk−130等があげられる。これらの界面活性剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、界面活性剤と界面活性剤以外の上記化合物を組み合わせて使用してもよい。

脂肪酸としては、特に限定されず、一般に脂肪酸として知られているものを使用することができる。例えば、

上記の脂肪酸としては、金属微粒子合成時に使用する脂肪酸と同じ脂肪酸を使用しても、異なる脂肪酸を使用してもよく、特に限定されないが、直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等があげられる。直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等があげられる。中でも、安定性や低温分解性を考慮するとカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等があげられる。
【0038】
分岐脂肪酸としては、2−エチルヘキサン酸、2−エチルイソヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−ブチルオクタン酸、2−イソブチルイソオクタン酸、2−ペンチルノナン酸、2−イソペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘキシルイソデカン酸、2−ブチルドデカン酸、2−イソブチルドデカン酸、2−ヘプチルウンデカン酸、2−イソヘプチルウンデカン酸、2−イソペプチルイソウンデカン酸、2−ドデシルヘキサン酸、2−イソドデシルヘキサン酸、2−オクチルドデカン酸、2−イソオクチルドデカン酸、2−オクチルイソドデカン酸、2−ノニルトリデカン酸、2−イソノニルイソトリデカン酸、2−デシルドデカン酸、2−イソデシルドデカン酸、2−デシルイソドデカン酸、2−デシルテトラデカン酸、2−オクチルヘキサデカン酸、2−イソオクチルヘキサデカン酸、2−ウンデシルペンタデカン酸、2−イソウンデシルペンタデカン酸、2−ドデシルヘプタデカン酸、2−イソドデシルイソヘプタデカン酸、2−デシルオクタデカン酸、2−デシルイソオクタデカン酸、2−トリデシルヘプタデカン酸、2−イソトリデシルイソヘプタデカン酸、2−テトラデシルオクタデカン酸、2−イソテトラデシルオクタデカン酸、2−ヘキサデシルヘキサデカン酸、2−ヘキサデシルテトラデカン酸、2−ヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−イソヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−ペンタデシルノナデカン酸、2−イソペンタデシルイソノナデカン酸、2−テトラデシルベヘン酸、2−イソテトラデシルベヘン酸、2−テトラデシルイソベヘン酸、2−イソテトラデシルイソベヘン酸等があげられる。
三級脂肪酸としては、例えば、ピバリン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、エクアシッド9(出光石油化学製)、エクアシッド13(出光石油化学製)などがあげられる。
【0039】
これらの脂肪酸は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、脂肪酸と脂肪酸以外の上記化合物を組み合わせて使用してもよい。

上記化合物の添加量は、特に限定されないが、好ましくは仕込み時に分散体中の金属微粒子100重量部に対し、化合物の合計で1〜2000重量部となる割合である。さらに好ましくは10〜100重量部である。添加量が1重量部未満の場合、化合物の添加による十分な効果が得られず、また、2000重量部を超える場合、安定化に寄与しない余剰の化合物が分散体中に存在することになり、コスト的に不利であるだけでなく、分散体中の金属濃度の低下や導電性の阻害等の悪影響を与える恐れがあるため好ましくない。

本発明の金属微粒子分散体の製造方法における還元反応は、室温でも十分に終了するが、加熱して反応を行っても差し支えない。但し、あまり高温になると金属微粒子のブラウン運動が激しくなり、凝集が起こりやすくなる恐れや、顔料分散剤を添加した場合には、顔料分散剤が熱で変性してしまう恐れがあるため、90℃以下で還元反応を行うことが好ましい。更に好ましくは70℃以下で行うのが好ましい。

本発明の金属微粒子分散体の製造方法において、反応を通じて大気中で行っても差し支えないが、生成した金属微粒子の酸化や硫化を防ぐ、または酸素が存在することによる副反応物の生成を防ぐため、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。

本発明の金属微粒子分散体は、必要に応じて水相を除去した後に加熱や減圧蒸留等の方法を用いて非水性溶媒の一部を除去し、任意の濃度まで濃縮することができる。また、非水性溶媒を完全に除去した後、目的に応じて合成時と異なる溶媒を加えて再分散させ、任意の濃度の金属微粒子分散体に調整することも可能である。このときの溶媒は非水性溶媒でも水性溶媒でも良いが、金属微粒子近傍に存在する脂肪酸、または分散剤を用いる場合には該化合物が溶解する溶媒であることが好ましい。

本発明の方法で製造される金属微粒子分散体の粒子径は、必要に応じて調節可能であるが、0.1〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは1〜100nmである。
さらに、低温で融着させて導電性被膜を形成させる場合には、1〜80nmであると好ましい。粒子径は、粒子合成時の反応条件、還元剤、分散剤、原料濃度により調整が可能である。

次に、本発明の導電性の、樹脂組成物またはインキについて説明する。
【0040】
本発明の導電性の、樹脂組成物またはインキは、本発明の方法で製造される金属微粒子分散体を含むものであり、良好な導電性を得るためには、できるだけ金属微粒子分散体以外の成分は含まないほうが好ましいが、その樹脂組成物またはインキとしての物性を向上させるために、必要に応じて金属粉、樹脂、その前駆体、またはそれらの混合物からなる担体を含ませたり、可塑剤、滑剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、キレート剤等の通常用いられる各種添加剤を含ませたり、金属微粒子を被覆している分散剤の溶解性を損なわない範囲で、各種の液状媒体を使用してもよい。

上記金属粉としては、箔状、フレーク状、球状、針状、鱗片状、板状、樹脂状、その他いずれの形状のものでもよく、これらの混合物を使用することもできる。また、他の導電性粉末、例えば、金属で被覆した無機物粉末、酸化銀、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、インジウム−錫複合酸化物等の金属酸化物、またはカーボンブラック、グラファイト等を含有させることができる。これらの導電性物質は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。

上記樹脂、その前駆体、またはそれらの混合物からなる担体は、金属微粒子や金属粉を各種基材に固着させたり、物性を付与したり、印刷インキとしての性能を維持する働きをする。
【0041】
樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂等から選ばれる1種または2種以上を、印刷方法の種類及び使用基材の種類や用途に応じて使用することができる。
【0042】
樹脂の前駆体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、ポリアリル化合物等のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種または2種以上を使用することができる。
【0043】
本発明の導電性インキは、担体として液状の樹脂前駆体を含む場合(樹脂組成物)には、紫外線、電子線等の活性エネルギー線に対して硬化性を有する無溶剤型インキとして調製することができる。また、担体として樹脂を含み、液状の樹脂前駆体を含まない場合には、樹脂を溶解すると共に、金属微粒子や金属粉を分散安定化して、導電性インキに印刷適性を付与するために、液状媒体を含ませて一般的な熱乾燥型インキとして調製することができる。
【0044】
液状媒体としては、金属微粒子を被覆している分散剤の溶解性を損なわないものであれば特に制限はなく、担体として用いる樹脂、導電性パターンを形成する基材、印刷方法等の種類に応じて、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、水等を使用することができ、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0045】
エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3−メトキシブチル等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、及びこれらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0046】
脂肪族系溶剤としては、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられ、芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレンが挙げられる。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネートが挙げられる。
【0047】
また、樹脂の前駆体を含む本発明の導電性インキに、電子線を照射して硬化する場合は、樹脂の前駆体(エチレン性不飽和二重結合を有する化合物)の分子鎖切断によってラジカル重合が起こるが、紫外線を照射する場合は、導電性インキに光重合開始剤を添加するのが一般的である。
【0048】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、ベンゾイン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ビスイミダゾール系、アクリジン系、カルバゾール−フェノン系、トリアジン系、オキシム系等の光重合開始剤を使用することができる。
【0049】
樹脂の前駆体を含む本発明の導電性インキには、更に、光重合開始剤と共に、光重合促進剤、増感剤を含ませることができる。光重合促進剤および増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル等の脂肪族や芳香族のアミン類が挙げられる。
【0050】
また、樹脂の前駆体を含む本発明の導電性インキには、導電性インキの安定性を高める目的で、(熱)重合禁止剤を含ませることができる。(熱)重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,6−t−ブチル−p−クレゾール、2,3−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、アンスラキノン、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
【0051】
本発明の導電性インキには、必要に応じて可塑剤、滑剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、キレート剤等の通常用いられる各種添加剤を含ませることができる。更に、本発明の目的に反しない範囲で、通常用いられる有機・無機充填剤を含ませてもよい。
【0052】
最後に、本発明の導電性インキを用いて形成された導電性の被膜について説明する。
【0053】
上記導電性の被膜の形態については、特に限定されないが、通常の印刷法で形成可能なパターンなどを挙げることができる。例えば、細線状、膜状、格子状、回路状などの形態が挙げられる。これらの用途として、微細導電回路、電磁波シールド、電極、アンテナ、めっき代替、印刷エレクトロニクス用導電材料、フレキシブル回路基板等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0054】
本発明の導電性インキは、分散安定性に優れる上に、200℃以下の低温で導電性を発現させることができるため、用途に応じて紙、プラスチック、ガラス等の基材の片面または両面上に、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェット印刷、オフセット印刷、ロータリースクリーン印刷、レタープレス、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート、バーコート等、従来公知の方法を用いて本発明の導電性インキを印刷することで導電性被膜を形成することができる。
【0055】
紙基材としては、コート紙、非コート紙の他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できるが、導電回路として安定した導電性を得るためには、コート紙、加工紙が好ましい。コート紙の場合は、平滑度の高いものほど、導電回路パターンの性能が安定するため好ましい。
【0056】
プラスチック基材としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等の通常のプラスチック基材を使用することができる。プラスチックフィルムやガラス基材の表面には、密着性を高める目的で、必要に応じて、コロナ放電処理やプラズマ処理を施したり、またはポリウレタン、ポリイソシアネート、有機チタネート、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン等のアンカーコート剤を塗布したりすることができる。

本発明の導電性インキを用いることにより、通常の印刷方法によって導電回路が形成できるため、既存の設備を生かした設計が可能である。すなわち、絵柄等の非接触メディアの意匠性を高めるための通常の印刷を施した後に、そのまま導電回路を印刷、形成することが可能なため、従来、エッチング法や転写法で行っていた回路パターン形成法と比較して、生産性、初期投資コスト、ランニングコストの点ではるかに優れている。
【0057】
導電性パターンを印刷、形成する前の工程において、導電性パターンと基材との密着性を高める目的で、基材にアンカーコート剤や各種ワニスを塗工してもよい。また、導電性パターン形成後に、該パターンの保護を目的としてオーバープリントワニス、各種コーティング剤等を塗工してもよい。これらの各種ワニス、コーティング剤としては、環境面から活性エネルギー線硬化型が好ましい。
【0058】
また、導電性パターン上に接着剤を塗布し、そのまま絵柄等を印刷した紙基材やプラスチックフィルムを接着、またはプラスチックの溶融押し出し等によりラミネートして、電磁波シールドフィルムや非接触型メディアを得ることもできる。勿論、あらかじめ粘着剤、接着剤が塗布された基材を使用することもできる。
【0059】
また、上記印刷方式を用いて導電性パターンを印刷し、通常の熱乾燥後または活性エネルギー線を用いて硬化させた後、導電性パターンの抵抗値をさらに低減させる、あるいは抵抗値の安定性を高める目的で、熱風乾燥オーブンを通して導電性パターンを加熱しても良い。加熱温度は特に限定されないが、使用する基材や印刷速度によって使用可能な温度で加熱することが好ましい。
【0060】
加熱は、熱ロールまたは熱プレスロールを通して行っても良い。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、「部」および「%」とは、「重量部」および「重量%」をそれぞれ表す。また、銀濃度、銅濃度、および金濃度は、熱分析測定装置(株式会社日立製作所「TG−DTA」で測定したデータより求めた固形分中の金属濃度である。

[実施例1]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部およびオレイン酸銀38.9部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)を添加し溶解させた。その後、20%コハク酸ジヒドラジド(以降SUDHと略記する)水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。さらに反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水相を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄・分離を繰り返し、銀微粒子分散体トルエン溶液を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は7±2nmであり、銀濃度は73%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも、粒子径に変化はなく安定であった。

[実施例2]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部およびプロピオン酸銀18.1部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、20%SUDH水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。さらに反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水相を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返して銀微粒子分散体トルエン溶液を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は5±2nmであり、銀濃度は75%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。

[実施例3]
原料の金属塩をペンタン酸銀20.9部に変更した以外は、実施例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は5±1nmであり、銀濃度は82%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。

[実施例4]
原料の金属塩をヘキサン酸銀22.3部に変更した以外は、実施例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は5±2nmであり、銀濃度は80%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。

[実施例5]
還元剤を20%アジピン酸ジヒドラジド(ADH)水溶液を174.2部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)に変更した以外は、実施例3と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は6±2nmであり、銀濃度は75%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。

[実施例6]
原料の金属塩をミリスチン酸銀33.5部に変更した以外は、実施例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は8±2nmであり、銀濃度は72%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。

[実施例7]
原料の金属塩をステアリン酸銀39.1部に変更した以外は、実施例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は8±2nmであり、銀濃度は65%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。

[実施例8]
原料の金属塩をペンタン酸銅26.6部、還元剤を20%SUDH水溶液292.3部(金属1molに対しヒドラジド基4mol倍)に変更した以外は実施例2と同様にして赤色の銅微粒子分散体を得た。得られた銅微粒子分散体の銅微粒子の平均粒子径は7±2nmであり、銅濃度は50%であり、40℃で一ヶ月保存した後平均粒子径が10±2nmになったものの、凝集は起こらず、安定であった。

[実施例9]
原料の金属塩をペンタン酸金29.8部に変更した以外は、実施例2と同様にして赤紫色の金微粒子分散体を得た。得られた金微粒子分散体の金微粒子の平均粒子径は、10±3nmであり、金濃度は55%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。

[比較例1]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素ガスを導入しながら1M硝酸銀水溶液を100部仕込み、攪拌しながらソルスパース32000(アビシア株式会社製、重量平均分子量約50000)1.9部を、トルエン10.8部中に溶解させた溶液を滴下した。室温で30分攪拌した後、ジメチルアミノエタノール38.1部を滴下し、そのまま室温で一晩攪拌し反応を進行させた。水層を取り出し、数回蒸留水で洗浄・分離を繰返すことで過剰の還元剤と不純物の洗浄を行い、銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体は、ペースト状であり、希釈し測定すると銀微粒子の平均粒子径は25±10nmであり、銀濃度は50%であり、40℃で一ヶ月保存すると粒子径が50nmとなった。

[比較例2]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部およびヘキサン酸銀22.3部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、ヒドラジン3.2部(金属1molに対し2mol倍)を加えると激しく反応が起こり、沈殿物が生じた。静置、分離した後、水層を取り出すことで沈殿物、過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返して銀微粒子分散体トルエン溶液を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は20±5nmであり、銀濃度は30%であり、40℃で一ヶ月保存すると沈殿物が生じた。

[実施例10]
実施例3で得られた銀微粒子分散体のトルエンをロータリーエバポレータを用いて留去し、固形分50%に濃縮した分散体71.0部、メチルエチルケトン26.0部、ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製「バイロン300」)3.0部を混合し、ディソルバーを用いて30分攪拌し、導電性インキを得た。

[実施例11]
実施例1〜9、比較例1〜2で得られた金属微粒子分散体、および、実施例10で得られた導電性インキを用いて、PET基板上に、スピンコート法によって塗布、150℃の熱風乾燥オーブン中で一時間乾燥させて導電性被膜を得た。

[実施例12]
実施例1〜9、比較例1〜2で得られた金属微粒子分散体、および、実施例10で得られた導電性インキを用いて、ガラス基板上に、スピンコート法によって塗布、180℃の熱風乾燥オーブン中で一時間乾燥させて導電性被膜を得た。

実施例11、12で得られた導電性被膜の膜厚、体積抵抗値について以下の方法で評価した。結果を表1に示す。

[膜厚]
導電性被膜の膜厚を膜厚計(株式会社仙台ニコン製「MH−15M型」)で測定した。

[体積抵抗値]
導電性被膜を3mm幅に加工した後、導電被膜を30mm感覚で4箇所はさみ、その抵抗値を四探針抵抗測定器(三和電気計器株式会社製「DR−1000CU型」)で測定し、得られた抵抗値と膜厚から体積抵抗値を算出した。

【0062】
【表1】

【0063】
表1より、実施例1〜9で得られた本発明の金属微粒子分散体を使用することで、200℃以下の温和な乾燥条件においても10-5〜10-6Ω・cmオーダーの体積抵抗値が得られ、PET基材上への導電性被膜が可能となった。また、金属微粒子分散体の表面に存在する脂肪酸の炭素数が短くなるにつれて導電性が向上しており、脂肪酸の分解温度が低くなったことにより低温での導電性発現につながった。
【0064】
実施例10で得られた導電性インキは、本発明の銀微粒子分散体にバインダー樹脂を添加することにより、導電性を損なうことなく、基材への密着性が向上した。
【0065】
一方、比較例1で得られた金属微粒子分散体は、分散剤に高分子量の分散樹脂を用いているため、樹脂の分解温度が高いため200℃以下の乾燥温度では塗膜化しなかったり、導電性が発現しないという問題が見られた。また、比較例2で得られた金属微粒子分散体は、合成時に凝集物が多く生成したために分散体内の金属濃度が薄く、また、粒子径が大きくなったためにナノ粒子の融点降下の効果が得られず、十分な導電性を得ることができなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状媒体中に脂肪酸の金属塩化合物を分散させたのち、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを用いて、前記金属塩化合物を還元することを特徴とする金属微粒子分散体の製造方法。
【化1】



(式中Rは、n価の多塩基酸残基を表す。)
【請求項2】
脂肪酸が、炭素数3〜22である飽和または不飽和の脂肪酸から選ばれる一種以上である請求項1記載の金属微粒子分散体の製造方法。
【請求項3】
脂肪酸の金属塩化合物を形成する金属が、VIII族およびIB族から選ばれる金属である請求項1または2記載の金属微粒子分散体の製造方法。
【請求項4】
多塩基酸ポリヒドラジドが、二塩基酸ジヒドラジドである請求項1ないし3いずれか記載の金属微粒子分散体の製造方法。
【請求項5】
液状媒体が、水と非水性溶媒との混合物である請求項1ないし4いずれか記載の金属微粒子分散体の製造方法。
【請求項6】
還元後に水相を除去する請求項5記載の金属微粒子分散体の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか記載の製造方法で製造されてなる金属微粒子分散体。
【請求項8】
請求項7記載の金属微粒子分散体を含む樹脂組成物。
【請求項9】
請求項7記載の金属微粒子分散体を含むインキ。
【請求項10】
請求項8の樹脂組成物または請求項9記載のインキを基材上に塗布してなる被膜。
【請求項11】
請求項10記載の被膜をさらに200℃以下の熱で焼成することにより得られる導電性被膜。
【請求項12】
請求項7記載の金属微粒子分散体を含む樹脂組成物を基材上に塗布して被膜とする工程と、
前記被膜を200℃以下の熱で焼成する工程とを含む導電性被膜の製造方法。


【公開番号】特開2007−297665(P2007−297665A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125749(P2006−125749)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】