説明

金属膜を有する成型体およびその製造方法

【課題】 難接着性樹脂からなる基材に、プライマーなどを塗布しないで、真空蒸着により、金属膜を直接成膜することを可能とし、電磁波シールド成型体および光輝化成型体を、低コストかつ生産性よく提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、これらにガラス繊維が含有されたもの、および、液晶ポリマーなどからなる基材に、ブラスト処理を行い、その後、該ブラスト処理が施された基材表面に、電磁波シールド膜や光輝化膜を、真空蒸着により成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の上に電磁波シールド膜や光輝化膜が形成されている成型体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチックは、熱可塑性があり、軽量であり、かつ、金属材料に代替できる高耐熱性、高強度性および耐薬品性等の機能を有することから、多くの産業分野において利用されている。
【0003】
かかるエンジニアリングプラスチックを始め、各種の樹脂やプラスチックにおいて、導電性を付与したり、その特性をさらに改善させたり、光輝化した外観等を付与したり、帯電防止や電磁波シールドとして機能させたりするために、その表面処理が施される。
【0004】
たとえば、携帯電話などの電子機器およびコネクタやソケットなどの電気機器においては、電波の発信および受信による機器の誤動作を避けるため、その筐体の内側に、電磁波シールド処理が施されている。このような筐体に電磁波シールド処理を施す方法としては、その基材中に導電性金属を混入する方法、その基材の表面に導電性塗料を塗布する方法、および、その基材の表面に、湿式メッキまたは真空蒸着により金属膜を電磁波シールド膜として形成する方法が知られている。
【0005】
また、各種成型体に光輝化処理を施して、ドアノブ等の装飾目的に使用する場合にも、同様に、その基材の表面に金属膜を光輝化膜として形成している。
【0006】
近年、製品の軽量化と薄肉化の要求から、その基材として、エンジニアリングプラスチックの中でも、薄くてもさらに高い強度と剛性を有するポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、これらの樹脂でガラス繊維を含むものなどを用いることが要求されている。
【0007】
しかしながら、このような表面処理を目的とする場合、一般的には、その基材としては、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、または、ABSとポリカーボネートの混合樹脂に限定されているのが現状である。
【0008】
たとえば、湿式メッキ法による成膜では、無電解メッキ法が用いられているが、この方法では、クロム酸エッチングまたはパラジウム触媒付加などを行うため、基材と薄膜との密着が強固となる。しかしながら、ポリアミド樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂を基材として用いた場合、これらの素材自身が有機溶剤や化学薬品に耐性を有していたり、これらの素材に複合材料としてガラスや各種添加剤が含まれていたりするため、メッキに適した表面性状とできない。一方、メッキに適した表面性状となる条件で処理をすれば、基材に変形が見られるなどの問題が生ずる。このため、ABS樹脂とポリカーボネート樹脂を除いては、エンジニアリングプラスチックに対する湿式メッキ法が確立していない。なお、湿式メッキ法には、廃液の処理の問題、処理時間が長いという問題、基材の両面にメッキされるという問題もある。
【0009】
一方、真空蒸着による成膜では、アルミニウムを膜厚2μm〜3μmで形成する方法や、銅を第1層にして、保護膜としてニッケルなどを成膜する方法が、一般的である。しかし、ポリアミド樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂を基材として用いた場合、これらの素材は金属膜との密着が悪いため、物理的に基材表面を粗化させたり、プライマーを基材表面に施す必要があり、ABS樹脂とポリカーボネート樹脂を除いては、エンジニアリングプラスチックに対して真空蒸着により金属膜を直接成膜することは行われていない。
【0010】
たとえば、特開平7−133361号公報には、ABS/PC基材の上に、高周波励起プラズマによりボンバード処理をすることによりアルミニウム膜が形成された電磁波シールドプラスチック成型体が記載されている。しかし、ポリアミド樹脂等からなる基材は、かかる処理によっては、表面改質がされず、膜との密着が弱いため、適用することができない。
【0011】
特開平7−70345号公報には、プラスチック成形品に水溶性塗料からなるプライマーコート層を形成し、アルミニウム膜や銅膜を形成して得られる電磁波シールドプラスチック成型体が記載されている。しかし、プラスチック成型体としては、ポリカボネート(PC)/ABS樹脂にガラス繊維配合の成型材料、および炭素繊維配合のポリカーボネート(PC)成型材料が記載されているのみで、ポリアミド樹脂等は記載されていない。ポリアミド樹脂等からなる基材は、通常の水溶性塗料では侵されないため、基材とプライマー間で強い密着が得られないという問題があるためである。
【0012】
特開平7−7283号公報、特開平6−240034号公報,特開平6−240027号公報,特開平6−157797号公報および特開平6−145396号公報には、プラスチックからなる基材を洗浄することなく、プライマーも塗布しないで、高周波励起プラズマで表面をクリーニングして、膜と密着させる技術が記載されている。これらは、表面官能基が多く含まれるABS樹脂や、そのアロイには適用できるが、表面官能基がほとんどないポリアミド樹脂や、ポリフェニレンサルファイド樹脂では、表面が十分に改質されず、基材と膜が強く付着しないという問題があった。
【0013】
ナイロン繊維などに電磁波シールド膜を成膜する技術としては、特開2001−32150号公報、特開平10−46443号公報、特開平10−8317号公報および特開平6−330677号公報に記載がある。しかし、これらでは、電子機器、電気機器、装飾品等の産業用途に用いる程度の密着力がないという問題がある。
【0014】
【特許文献1】特開平7−133361号公報
【0015】
【特許文献2】特開平7−70345号公報
【0016】
【特許文献3】特開平7−7283号公報
【0017】
【特許文献4】特開平6−240034号公報
【0018】
【特許文献5】特開平6−240027号公報
【0019】
【特許文献6】特開平6−157797号公報
【0020】
【特許文献7】特開平6−145396号公報
【0021】
【特許文献8】特開2001−32150号公報
【0022】
【特許文献9】特開平10−46443号公報
【0023】
【特許文献10】特開平10−8317号公報
【0024】
【特許文献11】特開平6−330677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、ポリアミド樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂などのように、高い強度と剛性を有するが、表面処理が難しい基材に、プライマーなどを塗布することなく、真空蒸着により金属膜を成膜する方法を確立し、これにより、電磁波シールド膜や光輝化膜が基材に直接成膜された成型体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の成型体の製造方法は、難接着性樹脂からなる基材の表面にブラスト処理を施し、該ブラスト処理が施された表面に、真空蒸着により、金属膜を成膜することを特徴とする。
【0027】
ここで、難接着性樹脂とは、エンジニアリングプラスチックのうち、溶剤で表面が侵されずらい樹脂である。また熱可塑樹脂より熱硬化樹脂の方が表面の官能基の違いで密着しずらい。樹脂には結晶性と非結晶性があるがそれだけでは密着性は判断できない。耐熱温度が150℃以上あるプラスチックは密着が悪い。ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンを除く、結晶性樹脂ではシンジオタクチック・ポリスチレン、ポリアミド、ポリアセタール、非結晶性樹脂ではポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル結晶性耐熱スーパ樹脂ではポリフェニレンサルファイド、フッソ樹脂、ポリエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリエーテルニトリル。非結晶性耐熱スーパ樹脂ではポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミドをいう。
【0028】
具体的には、前記ブラスト処理として、粒径50μm〜500μmのガラスビーズまたはセラミック微粉末を、圧力0.196MPa(2kg/cm2)〜0.392MPa(4kg/cm2)のエアーにより、前記基材の表面に吹き付ける。セラミック微粉末としては、酸化アルミナや炭化珪素などを用いることができる。
【0029】
かかるブラスト処理がなされた前記基材の表面上に、電磁波シールド膜として、膜厚0.5μm〜2μmの銅膜を成膜することにより、電磁波シールド成型体を得ることができる。
【0030】
該銅膜の上に、膜厚0.1μm〜0.3μmのニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、Sn−Cu−Cr合金、および、Sn−Cu−Ni合金のいずれかからなる保護膜を成膜することが好ましい。
【0031】
なお、光輝化成型体とする場合には、電磁波シールド膜を成膜することなく、前記基材の表面上に、膜厚0.1μm〜0.3μmのニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、Sn−Cu−Cr合金、および、Sn−Cu−Ni合金のいずれかからなる光輝化膜を成膜する。
【0032】
かかる保護膜ないしは光輝化膜の上にさらにクリア塗装を施すことが好ましい。クリア塗装には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などが用いられる。
【0033】
かかる成型体の製造方法により、難接着性樹脂からなる基材と、該基材の上に直接形成された電磁波シールド膜からなる電磁波シールド成型体が得られる。
【0034】
なお、本発明は、前記基材が、特に、ポリアミド樹脂、ガラス繊維が含有されたポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ガラス繊維が含有されたポリフェニレンサルファイド樹脂、および、液晶ポリマー樹脂といった高い強度と剛性を有する材料からなる基材に適用できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー樹脂などからなる表面処理が難しい基材に、電磁波シールド膜や光輝化膜として金属膜を直接成膜することが可能となり、電磁波シールド成型体や光輝化された成型体を、低コストかつ生産性よく提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明では、ポリアミド樹脂、ガラス繊維が含有されたポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ガラス繊維が含有されたポリフェニレンサルファイド樹脂、および液晶ポリマー樹脂のいずれかからなる基材に、ブラスト処理を行う点に特徴がある。
【0037】
前記ブラスト処理は、粒径が50μm〜500μmのガラスビーズまたはセラミック微粉末を使用し、該微粉末を、たとえばエアーガンにより、圧力0.196MPa(2kg/cm2)〜0.392MPa(4kg/cm2)のエアーで、基材の表面に吹き付ける。セラミック微粉末の材料としては、酸化アルミナや炭化珪素などを用いることができる。
【0038】
一般に、研磨剤には、樹脂、ガラス、植物種、金属、セラミックなどがあるが、ガラス繊維が添加されたエンジニアリングプラスチックは表面硬度が高いので、樹脂や植物の微紛ではガラスで強化された樹脂の表面を荒らすことはできない。また、金属は欠けたり磨耗が激しいため、ガラスやセラミックなどのように高硬度な微紛を用いることが望ましい。
【0039】
微紛の大きさは、50μm〜500μmの大きさが望ましい。50μm未満では、表面の凹凸が十分に形成されず、強い密着が得られない。
【0040】
また、500μmを超えると、表面の凹凸が大きくなり、光輝感が損なわれたり、膜を成膜したときに、抵抗値が高くなるので好ましくない。
【0041】
また、吹き付ける際の圧力が0.196MPa(2kg/cm2)未満では、表面の凹凸が少なく、十分な密着が得られない。0.392MPa(4kg/cm2)を超えると、基材が変形したり、研磨剤が基材に埋め込まれ、表面に異物が付着するという不良が発生する。
【0042】
かかるブラスト処理を行った後、当該処理が施された基材表面に、真空蒸着により金属膜を成膜すると、基材と金属膜の間に高い密着力を得ることが可能となる。
【0043】
たとえば、電磁波シールド成型体を得るためには、基材の表面にブラスト処理を行い、その後、電磁波シールド膜として、膜厚が0.5μm〜2μmの銅膜を成膜し、好ましくは、該銅膜の上に、膜厚が0.1〜0.3μmのニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、Sn−Cu−Cr合金、または、Sn−Cu−Ni合金を保護膜として成膜する。
【0044】
成膜は、膜形成が均一となるように、また、環境性に優れた真空蒸着により行うことが望ましい。具体的には、電子銃で高融点ターゲットを溶解し、金属を蒸発させ、基材に膜を形成するイオンプレーテイィング、もしくは、合金成分で成膜でき、膜厚が均一となるスパッタリングが望ましい。
【0045】
なお、銅膜の膜厚は、電磁波シールド特性が得られる膜厚とする。0.5μm未満では、抵抗値が高く、電磁波シールド特性が低くなる。一方、2μmを超えると、膜応力が強くなり、耐熱試験などで銅膜が基材より剥離する可能性がある。また、2μmを超えて成膜しても、抵抗値は下がらず、成膜時間が伸びるので、製造コストも高くなる。
【0046】
また、保護膜を施すことにより、耐湿性や耐酸性などが向上し、電子機器、電気機器等の産業用途に好適に用いることができる。
【0047】
ニッケル、ニッケル合金、クロム、または、クロム合金は、耐食性が高く、Sn−Cu−Cr合金、または、Sn−Cu−Ni合金は、Snの融点が低いので、それぞれ速い成膜速度が得られる。膜厚が0.1μm未満では、膜にピンホールが発生し、製品の立ち面ではさらに膜が薄くなり、未着部分が発生し、銅膜に対する保護膜とならない可能性がある。0.3μmを超えると、耐食性にほとんど変化がなく、膜応力が上がることで、膜にクラックが入り、銅を腐食させる可能性がある。
【0048】
さらに、耐候性に優れたアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などを用いて、基材に形成された金属膜の上にクリア塗装を施すことにより、前記保護膜により得られる光輝感が保持され、耐環境性に優れた成型体を提供することができる。
【0049】
なお、光輝化して得られた成型体を外装部品や車載用途に用いる場合は、銅膜を省略して、前記保護膜を光輝化として成膜し、これにクリア塗装を施せばよい。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
ポリアミド樹脂とガラス繊維とが50%ずつ配合され、50mm×50mm、厚さ2mmの基材(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、レニー(登録商標)1022H)を用いた。
【0051】
まず、研磨剤として粒径100μmのガラスビーズを、ノズル径2mmのエアーガンの中に入れ、圧力0.196MPa(2kg/cm2)で、10秒間、ショットした。処理した後に、基材をエアーブローし、表面のガラスビーズを吹き飛ばした。
【0052】
次に、イオンプレーティング装置(神港製作所製、AAIH−W36200SBT)に取り付け、1層目に銅を膜厚1μmで成膜して、2層目にニッケルを膜厚0.2μmで成膜した。
【0053】
以上により得られた電磁波シールド成型体について、表1に示した試験項目で評価を行った。結果を表1に示す。なお、碁盤目テープ剥離試験においては、1mm間隔の碁盤目とした。
【0054】
【表1】

【0055】
(実施例2)
50mm×50mm、厚さ2mmの基材(東洋紡株式会社製、PPS樹脂(ガラス40%含有)、TS401)を用いて、1層目に銅を膜厚1.5μmで成膜して、2層目にSn−Cu−Cr合金を膜厚0.2μmで成膜した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の電磁波シールド成型体を得た。
【0056】
以上により得られた電磁波シールド成型体について、実施例1と同様の試験項目で評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
(実施例3)
研磨剤として粒径100μmの酸化アルミナを使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の電磁波シールド成型体を得た。
【0059】
以上により得られた電磁波シールド成型体について、実施例1と同様の試験項目で評価を行った。結果は、実施例1と全く同じであった。
【0060】
(実施例4)
2層目にハステロイG(登録商標)を0.1μm、成膜した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の電磁波シールド成型体を得た。
【0061】
以上により得られた電磁波シールド成型体について、実施例1と同様の試験項目で評価を行った。結果は、実施例1と全く同じであった。
【0062】
(実施例5)
2層目にSn−Cu−Niを膜厚0.2μmで成膜した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の電磁波シールド成型体を得た。
【0063】
以上により得られた電磁波シールド成型体について、実施例1と同様の試験項目で評価を行った。結果は、実施例1と全く同じであった。
【0064】
(実施例6)
ポリアミド樹脂とガラス繊維とが50%ずつ配合された50mm×50mm、厚さ2mmの基材(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、レニー(登録商標)1022H)を用いた。
【0065】
まず、研磨剤として粒径100μmのガラスビーズを、ノズル径2mmのエアーガンの中に入れ、圧力0.196MPa(2kg/cm2)で、10秒間、ショットした。処理した後、基材をエアーブローし、表面のガラスビーズを吹き飛ばした。
【0066】
次に、イオンプレーティング装置(神港製作所製、AAIH−W36200SBT)に取り付け、Sn−Cu−Cr合金を膜厚0.1μmで成膜し、アクリルトップコート(藤倉化成製、ET5406A)を10μm、スプレー塗装し、80℃、30分乾燥した。外観は、クロム色で58%(550nm波長)の反射率を有していた。
【0067】
以上により得られた光輝化成型体について、表3に示した試験項目で、評価を行った。結果を表3に示す。なお、碁盤目テープ剥離試験においては、1mm間隔の碁盤目とした。
【0068】
【表3】

【0069】
(実施例7)
液晶樹脂(デュポン社製、商品名:ゼナイト)からなるコネクタを基材として用いた以外は、実施例1と同様な処理を行い、実施例7の電磁波シールド成型体を得た。
【0070】
以上により得られた電磁波シールド成型体について、実施例1と同様の試験項目で評価を行った。結果は、実施例1と全く同じであった。
【0071】
(比較例1)
ブラスト処理を行わずに、1層目にナイロン用接着剤を10%にMEKで希釈したアンダーコートを使用し、膜厚4.5μmとなるようにスプレー塗装した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電磁波シールド成型体を得た。
【0072】
初期付着は、50/100で大きく剥離した。剥離個所は、アンダコートと金属膜の間であった。
【0073】
(比較例2)
ブラスト処理を行わずに、1層目にABS基材やPC(ポリカーボネート)基材に良く接着するゴム系接着(コニシ社製、ボンドG103)をMEKで希釈してアンダコートとして使用し、膜厚0.5μmとなるようにスプレー塗装した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の電磁波シールド成型体を得た。
【0074】
初期付着は、80/100で大きく剥離した。剥離個所は、アンダコートと基材の間であった。
【0075】
(比較例3)
ブラスト処理を行わずに、1層目にナイロン用印刷インクを10%にMEKで希釈したアンダーコートを使用し、膜厚0.5μmとなるようにスプレー塗装した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の電磁波シールド成型体を得た。
【0076】
初期付着は、20/100で大きく剥離した。剥離個所は、アンダコートと金属膜の間であった。
【0077】
(比較例4)
研磨剤として粒径700μmのガラスビーズを使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の電磁波シールド成型体を得た。
【0078】
以上により得られた電磁波シールド成型体の表面抵抗値は、0.6Ωであり、実施例1と比べて倍の値になった。
【0079】
(比較例5)
研磨剤として粒径20μmのガラスビーズを使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例5の電磁波シールド成型体を得た。
【0080】
初期付着は、30/100で大きく剥離した。
【0081】
(比較例6)
ポリアミド樹脂とガラス繊維とが50%ずつ配合された50mm×50mm、厚さ2mmの基材(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、レニー(登録商標)1022H)を用いた。
【0082】
まず、エッチング液としてクロム酸を用い、60秒、浸漬した。次に、イオンプレーティング装置(神港製作所製、AAIH−W36200SBT)に取り付け、1層目に銅を膜厚1μmで成膜して、2層目にニッケルを膜厚0.2μmで成膜した。
【0083】
初期付着は剥離がなかったが、基材の端が1mmほど浮き上がり、変形してしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難接着性樹脂からなる基材の表面にブラスト処理を施し、該ブラスト処理が施された表面に、真空蒸着により、金属膜を成膜することからなる成型体の製造方法。
【請求項2】
前記ブラスト処理が、粒径50μm〜500μmのガラスビーズまたはセラミック微粉末を、圧力0.196MPa〜0.392MPaのエアーにより、前記基材の表面に吹き付けることからなる請求項1に記載の成型体の製造方法。
【請求項3】
前記金属膜として、膜厚0.5μm〜2μmの銅膜を成膜することにより、電磁波シールド成型体を得る請求項1または2に記載の成型体の製造方法。
【請求項4】
前記銅膜の上に、膜厚0.1μm〜0.3μmのニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、Sn−Cu−Cr合金、および、Sn−Cu−Ni合金のいずれかからなる保護膜を成膜する請求項3に記載の成型体の製造方法。
【請求項5】
前記保護膜の上にさらにクリア塗装を施す請求項4に記載の成型体の製造方法。
【請求項6】
前記金属膜として、膜厚0.1μm〜0.3μmのニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、Sn−Cu−Cr合金、および、Sn−Cu−Ni合金のいずれかからなる光輝化膜を成膜することにより、光輝化成型体を得る請求項1または2に記載の成型体の製造方法。
【請求項7】
前記光輝化膜の上にさらにクリア塗装を施す請求項6に記載の成型体の製造方法。
【請求項8】
難接着性樹脂からなる基材と、該基材の上に直接形成された電磁波シールド膜とからなる電磁波シールド成型体。
【請求項9】
前記基材が、ポリアミド樹脂、ガラス繊維が含有されたポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ガラス繊維が含有されたポリフェニレンサルファイド樹脂、および、液晶ポリマー樹脂のいずれかからなる請求項8に記載の電磁波シールド成型体。
【請求項10】
予めブラスト処理が施された前記基材の表面に、前記電磁波シールド膜が形成されている請求項8または9に記載の電磁波シールド成型体。
【請求項11】
前記電磁波シールド膜が、膜厚0.5μm〜2μmの銅膜からなる請求項8から10のいずれかに記載の電磁波シールド成型体。
【請求項12】
前記電磁波シールド膜の上に、膜厚0.1μm〜0.3μmのニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、Sn−Cu−Cr合金、および、Sn−Cu−Ni合金のいずれかからなる保護膜が形成されている請求項8から10のいずれかに記載の電磁波シールド成型体。
【請求項13】
前記保護膜の上にさらにクリア塗装が施されている請求項12に記載の電磁波シールド成型体。
【請求項14】
難接着性樹脂からなる基材と、該基材の上に直接形成された光輝化膜とからなる光輝化成型体。
【請求項15】
前記基材が、ポリアミド樹脂、ガラス繊維が含有されたポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ガラス繊維が含有されたポリフェニレンサルファイド樹脂、および、液晶ポリマー樹脂のいずれかからなる請求項14に記載の光輝化成型体。
【請求項16】
予めブラスト処理が施された前記基材の表面に、前記光輝化膜が形成されている請求項14または15に記載の光輝化成型体。
【請求項17】
前記光輝化膜が、膜厚0.1μm〜0.3μmのニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、Sn−Cu−Cr合金、および、Sn−Cu−Ni合金のいずれかからなる請求項13から15のいずれかに記載の光輝化成型体。
【請求項18】
前記光輝化膜の上にさらにクリア塗装が施されている請求項17に記載の光輝化成型体。

【公開番号】特開2007−191738(P2007−191738A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9045(P2006−9045)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】