説明

金属製ワーク洗浄システム、洗浄方法及び製造方法

【課題】 洗浄後の金属製ワークにおける錆の発生を従来よりも抑えることが可能な金属製ワークの洗浄システム、洗浄方法及び製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】 本実施形態によれば、ORPが負の値となった酸化還元電位水により金属製ワークWkを洗浄することで、水道水を洗浄水として使用する従来の洗浄システム及び洗浄方法に比較して、洗浄後の金属製ワークWkにおける錆の発生を長期間に亘って抑制することができた。より具体的には、酸化還元電位水のORPを−500mV以下及び/又は溶存水素量を1.0〜2.0ppmとし、pH7.0〜7.8とし、更に、ノズル202に供給される酸化還元電位水の水温を、38度以下及び/又は、金属製ワークWkのうち酸化還元電位水が衝突している部分の温度を28度以下とすることで、洗浄後の金属製ワークWkにおける錆の発生を、4日〜25日間に亘って抑制することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製ワーク洗浄システム、洗浄方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属製ワークに付着した異物(油分や切粉、金属製ワークから切粉として分離していない所謂、バリ等)を除去するための洗浄システムとして、ノズルから洗浄水(例えば、水道水)を高圧・高速で噴射して金属製ワークに衝突させる、所謂、高圧噴射洗浄システムが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】社団法人発明協会、“技術分野別特許マップ”、[online]、特許庁ホームページ、[平成17年4月12日検索]、インターネット[URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/map/sennzyo/1/1-7.htm]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した従来の洗浄システムについて本願発明者らが実験検討した結果、以下のことが分かった。即ち、水道水により洗浄した金属製ワークを乾燥(自然乾燥又は強制乾燥)させると、乾燥過程或いは乾燥直後に金属製ワークの表面に錆が発生することが分かった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、洗浄後の金属製ワークにおける錆の発生を従来よりも抑えることが可能な金属製ワークの洗浄システム、洗浄方法及び製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る金属製ワーク洗浄システムは、金属製ワークを洗浄するための金属製ワーク洗浄システムにおいて、水と水素ガスとを攪拌混合して酸化還元電位が負の値になった酸化還元電位水を生成するための酸化還元電位水製造装置と、酸化還元電位水を金属製ワークに向けて噴射するためのノズルを有する噴射洗浄装置とを備えたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の金属製ワーク洗浄システムにおいて、酸化還元電位水の水温を38度以下にしてノズルに供給するように構成されたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の金属製ワーク洗浄システムにおいて、酸化還元電位水の水温を33度以上にしてノズルに供給するように構成されたところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の金属製ワーク洗浄システムにおいて、金属製ワークのうち酸化還元電位水が衝突している部分の温度が28度以下となるように、酸化還元電位水の水温を所定温度以下にしてノズルに供給するように構成されたところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の金属製ワーク洗浄システムにおいて、金属製ワークのうち酸化還元電位水が衝突している部分の温度が24度以上となるように、酸化還元電位水の水温を所定温度以上にしてノズルに供給するように構成されたところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の金属製ワーク洗浄システムにおいて、酸化還元電位水製造装置は、単位体積当たりの水に溶解した水素ガス量である溶存水素量が1.0〜2.0ppm及び/又は酸化還元電位が−500mV以下でありかつ、pH7.0〜7.8である酸化還元電位水を生成するように構成されたところに特徴を有する。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の金属製ワーク洗浄システムにおいて、噴射洗浄装置による洗浄後の金属製ワークに付着した水分を除去するための水分除去装置を備えたところに特徴を有する。
【0012】
請求項8の発明は、請求項7に記載の金属製ワーク洗浄システムにおいて、水分除去装置は、噴射洗浄装置による洗浄後の金属製ワークに気体を吹き付けて金属製ワークに付着した水分を吹き飛ばす送風機と、水分が吹き飛ばされた金属製ワークを加熱して水分を蒸発させる乾燥機とから構成されたところに特徴を有する。
【0013】
請求項9の発明は、請求項1乃至8の何れかに記載の金属製ワーク洗浄システムにおいて、酸化還元電位水製造装置は、水と共に水素ガスを吸引して混合し排出する気液混合ポンプと、気液混合ポンプから排出された水に対する水素ガスの溶存量を高めるためのミキサーとを備え、ミキサーは、気液混合ポンプの排出口に接続された管路と、管路の軸方向に沿って間隔をあけて設けられ、管路内を複数の領域に区画すると共に水の通過を許容し、管路内で流体圧力の強弱が繰り返されるようにするための複数のミキシング壁とを備えたところに特徴を有する。
【0014】
請求項10の発明は、請求項1乃至9の何れかに記載の金属製ワーク洗浄システムにおいて、酸化還元電位水製造装置により水素ガスと攪拌混合される水から予め気体を除去するための脱気装置と、残留塩素を除去するための脱塩素装置と、金属イオンを除去するための軟水装置とを備えたところに特徴を有する。
【0015】
請求項11の発明に係る金属製ワーク洗浄方法は、水と水素ガスとを攪拌混合して酸化還元電位が負の値になった酸化還元電位水を生成し、その酸化還元電位水をノズルから噴射して金属製ワークを洗浄するところに特徴を有する。
【0016】
請求項12の発明は、請求項11に記載の金属製ワーク洗浄方法において、ノズルに供給する酸化還元電位水の水温を38度以下にするところに特徴を有する。
【0017】
請求項13の発明は、請求項11又は12に記載の金属製ワーク洗浄方法において、ノズルに供給する酸化還元電位水の水温を33度以上にするところに特徴を有する。
【0018】
請求項14の発明は、請求項11乃至13の何れかに記載の金属製ワークの洗浄方法において、金属製ワークのうち、酸化還元電位水が衝突している部分の温度を28度以下にするところに特徴を有する。
【0019】
請求項15の発明は、請求項11乃至14の何れかに記載の金属製ワークの洗浄方法において、金属製ワークのうち、酸化還元電位水が衝突している部分の温度を24度以上にするところに特徴を有する。
【0020】
請求項16の発明は、請求項11乃至15の何れかに記載の金属製ワーク洗浄方法において、酸化還元電位水は、単位体積当たりの水に溶解した水素ガス量である溶存水素量が1.0〜2.0ppm及び/又は酸化還元電位が−500mV以下でありかつ、pH7.0〜7.8であるところに特徴を有する。
【0021】
請求項17の発明は、請求項11乃至16の何れかに記載の金属製ワークの洗浄方法において、前酸化還元電位水による洗浄後に、金属製ワークに付着した水分を除去する水分除去工程を備えたところに特徴を有する。
【0022】
請求項18の発明は、請求項17に記載の金属製ワークの洗浄方法において、水分除去工程は、金属製ワークに気体を吹き付けて水分を吹き飛ばす水切り工程と、水切り工程後の金属製ワークを加熱して水分を蒸発させる乾燥工程とからなるところに特徴を有する。
【0023】
請求項19の発明は、請求項11乃至18の何れかに記載の金属製ワークの洗浄方法において、水素ガスと攪拌混合される水から予め気体を除去するための脱気工程と、残留塩素を除去するための脱塩素工程と、金属イオンを除去するための軟水化工程とを備えたところに特徴を有する。
【0024】
請求項20の発明に係る金属製ワークの製造方法は、請求項11乃至19の何れかに記載の金属製ワークの洗浄方法を工程の一部に備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0025】
[請求項1,2,4,6,11,12,14,16,20の発明]
上記のように構成した請求項1,11,20の発明によれば、従来に比べて、洗浄後の金属製ワークにおける錆の発生を抑制することができた。ここで、ノズルに供給する酸化還元電位水の水温を38度以下にするとより好ましい(請求項2,12の発明)。また、金属製ワークのうち酸化還元電位水が衝突している部分の温度が28度以下となるようにするとより好ましい(請求項4,14の発明)。さらに、酸化還元電位水は、単位体積当たりの水に溶解した水素ガス量である溶存水素量が1.0〜2.0ppm及び/又は酸化還元電位が−500mV以下でありかつ、pH7.0〜7.8であることが好ましい(請求項6,16の発明)。
【0026】
[請求項3,5,13,15の発明]
請求項3,5,13,15の発明によれば、金属製ワークに付着した異物、特に油分を確実に除去することができる。
【0027】
[請求項7,17の発明]
請求項7,17の発明によれば、金属製ワークに付着した水分を除去することで、金属製ワークにおける錆の発生が抑制される。
【0028】
[請求項8,18の発明]
請求項8,18の発明によれば、金属製ワークを加熱して水分を蒸発させることで金属製ワークに付着した水分を確実に除去することができる。また、乾燥する前に気体を吹き付けることで、金属製ワークに付着した水分の大部分が吹き飛ばされるので、水分を吹き飛ばさずに乾燥した場合に比較して、乾燥後の金属製ワークにおけるスケール(固形物)の発生量が減少する。
【0029】
[請求項9の発明]
請求項9の発明によれば、水素ガスと混合された水がミキサーを通過する過程で、その水にかかる流体圧力の強弱が繰り返され、水に対する水素ガスの溶存量が向上し、酸化還元電位水の酸化還元電位をより低めることができる。
【0030】
[請求項10及び19の発明]
請求項10及び19の発明によれば、酸化還元電位水に含まれる酸化性物質(溶存酸素や残留塩素)が低減するので、酸化還元電位水の衝突による金属製ワークのエロージョンコロージョン(酸化性物質による化学的腐食と酸化還元電位水の衝突による物理的浸食とが繰り返されること)が防止できる。また、水中の金属イオンが除去されるので、洗浄後の金属製ワークが乾いたときのスケールの発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の金属製ワーク洗浄システム10は、例えば、鉄を含有した金属(具体的には、SPCC材)製のプレートバルブボディ(以下、「金属製ワークWk」という)の製造システムMの一部として備えられている。金属製ワーク洗浄システム10は、水に水素ガスを溶解させて酸化還元電位(以下「ORP」という)が負の値となった(還元性を有する)酸化還元電位水を生成する酸化還元電位水製造装置100と、酸化還元電位水により金属製ワークWkに付着した異物を除去・洗浄する噴射洗浄装置200と、噴射洗浄装置200で洗浄された金属製ワークWkから水分を除去するための水分除去装置300とを主要部として備えている。
【0032】
まず、酸化還元電位水製造装置100を図2〜図5に基づいて説明する。
酸化還元電位水製造装置100は、例えば、図示しない上水道配管に接続されて水が流れる主配管MPを備え、その主配管MPに各種機器を備えてなる。以下、酸化還元電位水製造装置100の各部位を主配管MPの上流側から順に説明する。主配管MPの上流端には、ソレノイドバルブSV0が備えられている。ソレノイドバルブSV0の下流側にはプレフィルタ11、軟水装置12及び活性炭濾過器13が備えられている。
【0033】
プレフィルタ11により水道水に混入している、例えば、1μm以上の異物が除去される。また、軟水装置12により、水道水中の金属イオン(例えば、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム等の各イオン)が除去される。また、活性炭濾過器13により、水道水に含まれる残留塩素が除去される。通常、水道水は、プレフィルタ11、軟水装置12、活性炭濾過器13の順に流されるが、切替バルブの操作により、軟水装置12を通さずにプレフィルタ11から直接、活性炭濾過器13に流すことも可能である。ここで、水道水から酸化性物質である残留塩素を除去することで、水道水のORPを低めることが可能となる。なお、水道水を軟水装置12に通過させる工程が本発明の「軟水化工程」に相当し、活性炭濾過器13に通過させる工程が本発明の「脱塩素工程」に相当する。また、活性炭濾過器13は、本発明の「脱塩素装置」に相当する。
【0034】
活性炭濾過器13の下流側には活水器14が備えられている。活水器14は、例えば、プラスチック製のパイプを流れる水道水の摩擦で生じる静電気をパイプ外側に装着した電極に集め、水中に放射する構成となっている。活水器14は、主配管MPに対して着脱可能となっており、主配管MPには活水器14を迂回するバイパス配管BPが備えられている。これにより、活水器14を主配管MPから取り外した状態でも水道水を流すことが可能となっている。
【0035】
ここで、水道水を活水器14に通すことで、生成される酸化還元電位水の水質を安定化することができる。具体的には、酸化還元電位水の溶存水素量(単位体積当たりの水に溶解した水素ガス量)やORPを比較的長期間に亘って維持することが可能となる。
【0036】
活水器14の下流側には、上記各機器11〜13を通過した水道水を貯留するための原水槽15が備えられている。原水槽15には液位計L及び水温計Tが備えられ、その計測値は図示しない制御部に出力されている。
【0037】
なお、制御部は、液位計Lの計測結果に基づいて原水槽15の貯水量を調節している。具体的には、例えば、原水槽15の最大貯水量は150Lであり、制御部は貯水量が20L以下となったときに、主配管MPの上流端のソレノイドバルブSV0を開いて原水槽15への水道水の供給を開始する一方、貯水量が120Lとなったときに、ソレノイドバルブSV0を閉じて原水槽15への水道水の供給を停止する。
【0038】
原水槽15には、ドレン配管DPが接続されており、例えば、水道水の水質変化等により、原水槽15に貯留されている水道水が不要となった場合には、このドレン配管DPから排出することができる。また、原水槽15からオーバーフローした水道水も、ドレン配管DPから外部に排出できる。
【0039】
図2に示すように、酸化還元電位水製造装置100のうち原水槽15の下流側には、後述する気液混合ポンプ17に供給される水道水の供給量(流量)を実測するための複数の水流量計Fが備えられている。本実施形態では、水流量計Fとして、超音波式流量計及び羽根車式流量計が備えられている。そして、これら水流量計Fによる水流量の実測値は図示しない制御部に出力される。なお、水流量計Fは、1つでも構わない。
【0040】
水流量計Fの下流側には脱気装置16が備えられている。脱気装置16は、真空モジュール16Aに水道水を導入し、その真空モジュール16A内を真空ポンプ16Bによって真空にすることで水道水に溶存している気体(例えば、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガス等)を抜く構成となっている。脱気装置16により水道水から気体を抜く工程が、本発明の「脱気工程」に相当する。
【0041】
真空モジュール16Aは主配管MPに対して着脱可能となっており、主配管MPには、脱気装置16を迂回したバイパス配管BPが備えられている。これにより、水道水を脱気せずに気液混合ポンプ17に供給することが可能となる。
【0042】
本実施形態では、真空ポンプ16Bとして所謂、水封式真空ポンプ又はダイヤフラム式真空ポンプとの2つの真空ポンプを備えており、それぞれ真空モジュール16Aに対して着脱可能となっている。真空モジュール16Aと真空ポンプ16Bとの間には真空計P1が設けられ、その計測値が図示しない制御部に出力される。制御部は真空計P1の計測値に基づいて真空ポンプ16Bを駆動制御して、水道水の脱気の程度を調節している。なお、真空ポンプは1つでも構わない。
【0043】
ここで、水素ガスと混合する前に水を予め脱気しておくと、脱気しない場合に比較して、水素ガスを水に溶解させ易くなると共に、生成される酸化還元電位水中の溶存水素量をより高めたり、ORPをより低めたりすることができる。また、水道水から酸化性物質である溶存酸素が除去されることで、酸化還元電位水のORPをより低めることが可能となる。なお、真空モジュール16Aにおける真空の度合い、即ち、水道水の脱気の程度を調節することで、生成される酸化還元電位水中の溶存水素量やORPを調節することが可能となる。
【0044】
図2に示すように、脱気装置16の下流側には、ソレノイドバルブSV2を介して同一仕様の2つの気液混合ポンプ17,17が備えられている。気液混合ポンプ17,17は、所定量の水道水を原水槽15から吸引すると共に、水素ガス供給源18(具体的には、ガスボンベ)から所定量の水素ガスを吸引し、これら水道水と水素ガスとを攪拌混合した上で、この混合流体を所定圧力で吐出している。
【0045】
本実施形態では、常には、2つの気液混合ポンプ17,17のうちの一方の気液混合ポンプ17のみに水道水と水素ガスとが供給されている。そして、例えば、一方の気液混合ポンプ17が故障又はメンテナンス等により使用不可能となった場合には、切替バルブを操作して他方の気液混合ポンプ17に水素ガスと水道水とを供給するようになっている。これにより、気液混合ポンプ17の故障やメンテナンス時にも、水素ガスと水道水との攪拌混合を継続することが可能となる。なお、2つの気液混合ポンプ17,17の両方を常時使用して水素ガスと水道水とを攪拌混合するようにしてもよい。
【0046】
なお、気液混合ポンプ17は、所謂、インバータ制御されている。即ち、電源からの交流の電力をいったん直流に変換し、再び交流に戻すときに必要な周波数を作り出し、その周波数に応じて気液混合ポンプ17に備えた交流モータの回転数を変化させている。従って、酸化還元電位水製造装置100の稼働開始時や停止時における急激な流量変化が抑えられ、気液混合ポンプ17や後述するミキサーユニット22に与える負荷を軽減することができる。
【0047】
気液混合ポンプ17は、主配管MPに対して着脱可能となっており、その吸引口の直前部分には、水素ガス供給源18から延びたガス配管GPが接続されている。
【0048】
図2に示すように、ガス配管GPの途中には、気液混合ポンプ17への水素ガスの供給量(供給体積)を実測しかつ調節するためのマスフローコントローラ19が備えられている。また、マスフローコントローラ19で実測された水素ガス供給量の実測値は、図示しない制御部に出力される。
【0049】
マスフローコントローラ19は、酸化還元電位水製造装置100の停止時には水素ガス供給量を「0」に設定しており、酸化還元電位水製造装置100が稼働後、所定量の水道水が気液混合ポンプ17に供給されるまではこの状態を保持する。そして、気液混合ポンプ17に所定量の水道水が供給されると、水素ガスの供給を開始する。このとき、水素ガス供給量を徐々に大きくすることで、気液混合ポンプ17における、所謂「エア噛み」を抑制することができる。
【0050】
なお、ガス配管GPのうち、主配管MPとの接続部分の直前部分には、ガス配管GPへの水道水の流入を防止するための逆止弁20Aが備えられている。なお、逆止弁20Aに代えてソレノイドバルブを配置し、水素ガスの供給中はソレノイドバルブを開放し、供給が停止したときに閉鎖するようにしてもよい。
【0051】
主配管MPのうち、気液混合ポンプ17の下流側には、上述した活水器14と同一構成の活水器14が着脱可能に設けられ、主配管MPには、活水器14を迂回したバイパス配管BPが接続されている。なお、活水器14と気液混合ポンプ17との間には、逆流を防止するための逆止弁20Bが設けられている。
【0052】
活水器14の下流側には、ミキサーユニット22が備えられている。ミキサーユニット22は、複数(例えば、3つ)の同一構成のミキサー22A,22B,22Cからなる。具体的には、図3に示すように、第1のミキサー22Aと第2のミキサー22Bとを並列接続し、これら第1及び第2のミキサー22A,22Bに対して第3のミキサー22Cを直列接続した構造をなす。また、各ミキサー22A,22B,23Cの上流側には、圧力計P2が備えられている。ここで、第1及び第2のミキサー22A,22Bと第3のミキサー22Cとの間の配管長は、例えば、1メートルとなっているが、配管長は適宜変更可能である。また、第3のミキサー22Cを通さずに流すためのバイパス流路BPを設けることが好ましい。
【0053】
ミキサー22A,22B,22Cは、図4に示すように、円筒ケース30(本発明の「管路」に相当する)の内部に、複数(例えば、11個)のミキシング壁40を収容してなる。まず、円筒ケース30について説明する。
【0054】
円筒ケース30は、ケース本体31と、ケース本体31の上流側端部に接合される流入管32及びケース本体31の下流側端部に接合される流出管33とから構成される。
【0055】
ケース本体31は、円筒形状をなし、両端部には、流入管32及び流出管33と接合するへルール部37が形成されている。また、ケース本体31の内部空間は、径が一定な円柱形状をなしている。
【0056】
流入管32及び流出管33は、同一形状をなしている。即ち、流入管32及び排出管33の一端には、前記主配管MPに接続される配管接続部34が形成され、他端には、ケース本体31に接合するへルール部35が形成されている。そして、その外径は、配管接続部34からへルール部35に向かって段付き状に拡径している。なお、流入管32及び流出管33の内径は一定となっている。
【0057】
流入管32及び流出管33のうち、ケース本体31に接合される側の開口縁(へルール部35の端面35T)からは、円筒ボス36が起立している。そして、流入管32及び流出管33がケース本体31の両端に接合されると、この円筒ボス36がケース本体31の内部空間に突入して嵌合するようになっている。以上が円筒ケース30の説明である。
【0058】
ミキシング壁40は、以下のようである。図5に示すように、ミキシング壁40は、円板部材41に複数の小孔42を貫通形成した構成をなす。円板部材41は、例えば、金属(具体的には、ステンレスや真鍮)製であり、その外径は、ケース本体31の内径とほぼ同一となっている。また、小孔42は、ミキシング壁40の板厚方向(図3における上下方向)に延びその内径は、例えば、1〜3μm(好ましくは、2μm)となっている。
【0059】
図3に示すように、ミキシング壁40は、円筒ケース30(詳細には、ケース本体31)の内部において、円筒ケース30の軸方向に重なるように配置されている。ミキシング壁40同士の間には、スペーサ45(例えば、Oリング)が挟まれている。このスペーサ45により隣接したミキシング壁40が所定間隔を空けて重ねられ、これらミキシング壁40によって、ケース本体31の内部空間が、扁平円柱形状をなした複数の空間部46(本発明における「領域」に相当する)に区画されている。換言すれば、ケース本体31の内部には、ケース本体31の軸方向に沿って、ミキシング壁40と空間部46とが交互に備えられている。ここで、ケース本体31の内部に収容された複数のミキシング壁40は、ケース本体31の内側に嵌合されかつ、ケース本体31の両端側から流入管32及び流出管33に備えた円筒ボス36,36に押圧されて、ケース本体31の内部に固定配置されている。
【0060】
本実施形態では、ミキシング壁40は円筒ケース30に対して着脱可能となっており、構造(小孔42の形状、孔径、板厚等)が異なる複数種類のミキシング壁40が予め用意されている。そして、目的とする酸化還元電位水の水質に応じてそれら複数種類のミキシング壁40の中から適当なミキシング壁40を選択して、円筒ケース30に装着されているミキシング壁40と交換可能となっている。ミキシング壁40の交換は、手動で行ってもよいし、図示しない交換装置によって自動で交換するようにしてもよい。
【0061】
ここで、気液混合ポンプから圧送された水素ガス及び水道水の混合流体は、以下のようにしてミキサー22A,22B,22Cを通過する。即ち、水素ガス及び水道水の混合流体は、ミキサー22A,22B,22Cの流入管32から円筒ケース30内に流入し、最上段のミキシング壁40に衝突する。ミキシング壁40に衝突した混合流体は、ミキシング壁40に形成された複数の小孔42に押し込められることで加圧されると共に複数の流路に細かく分かれる。
【0062】
ミキシング壁40の小孔42を通過した混合流体は、最上段の空間部46内に流入する。この空間部46において、小孔42を通過する際に複数の流路に分かれた混合流体が合流すると共に混合流体にかかる圧力が低下する。
【0063】
最上段の空間部46に流入した混合流体は、2段目のミキシング壁40に衝突して小孔42を通過する際に、再び強い圧力を受けると共に複数の流路に細かく分かれる。そして、2段目のミキシング壁40を通過すると、2段目の空間部46に流入し、ここでミキシング壁40を複数の流路(小孔42)に分かれて通過した混合流体が合流すると共に、混合流体にかかる圧力が低下する。以下、ミキシング壁40の小孔42と空間部46とを交互に通過することで、混合流体が分流と合流とを繰り返すと共に、混合流体にかかる圧力の強弱が繰り返される。これにより、混合流体中の水素ガスが水道水に溶け込み、ORPが負の値となった、即ち、水道水よりも還元性を有する酸化還元電位水が生成される。以上がミキサーユニット22の説明である。
【0064】
図2に示すように、酸化還元電位水製造装置100のうちミキサーユニット22の下流側には、気液混合ポンプ17及びミキサーユニット22を通過することで生成された酸化還元電位水を加熱するためのヒータ23が備えられている。ヒータ23は主配管MPに対して着脱可能となっている。また、主配管MPには、ヒータ23を迂回したバイパス配管BPが接続されている。酸化還元電位水を加熱する必要がない場合やヒータ23が取り外された場合には、このバイパス配管BPによって酸化還元電位水を流すことができる。
【0065】
本実施形態では、同一仕様の2つのヒータ23,23が備えられており、常には、一方のヒータ23のみを酸化還元電位水が通過する。そして、例えば、一方のヒータ23が故障又はメンテナンス等により使用不可能となった場合には、切替バルブの操作により他方のヒータ23を酸化還元電位水が通過するようになっている。これにより、ヒータ23の故障やメンテナンス時にも酸化還元電位水を加熱することが可能となる。なお、2つのヒータ23,23の両方に、常時、酸化還元電位水を通過させるようにしてもよい。
【0066】
ここで、主配管MPのヒータ23よりも下流側には水温計Tが備えられ、その計測値が図示しない制御部に出力されている。なお、酸化還元電位水を加熱して常温よりも高い所定水温にすることで、酸化還元電位水の水質(溶存水素量やORP)を安定させることができる。また、後述する金属製ワークWkの洗浄において、金属製ワークWkに付着した異物(特に、油分)を効果的に除去することができる。
【0067】
ヒータ23の下流側には、主配管MPから分岐した計器接続配管KPが設けられ、この計器接続配管KPの途中に溶存水素計Hmが着脱可能に取り付けられている。溶存水素計Hmは、酸化還元電位水の溶存水素量を実測し、その実測結果を図示しない制御部に出力する。なお、計器接続配管KPには、ソレノイドバルブSV4と、溶存水素計Hmへ供給される酸化還元電位水の流量を一定にするための定量弁25とが備えられている。
【0068】
計器接続配管KPの下流側には、生成水槽26が備えられている。生成水槽26は、例えば、密閉タンクで構成され、ここに生成された酸化還元電位水が一時的に貯留される。生成水槽26には酸化還元電位水を気液混合ポンプ17よりも上流側に環流させるための循環配管CPが接続されている。また、生成水槽26には酸化還元電位水を後述する噴射洗浄装置200に供給するための供給配管SPが接続されている。
【0069】
循環配管CPの途中には、環流する酸化還元電位水の流量を計測するための流量計F3(本実施形態では、羽根車式流量計)が備えられている。
【0070】
一方、供給配管SPの途中には供給ポンプ27が備えられている。供給ポンプ27は、生成水槽26に貯留された酸化還元電位水を所定圧力(例えば、0.1〜0.3MPa)で吐出しており、開閉弁28を開くことで、酸化還元電位水が生成水槽26から噴射洗浄装置200に供給される。また、供給配管SPの途中には、噴射洗浄装置200から酸化還元電位水製造装置100への酸化還元電位水の逆流を防止するための逆止弁20Cが備えられている。なお、供給ポンプ27は、前述した気液混合ポンプ17と同様に、インバータ制御されているので、酸化還元電位水を安定して噴射洗浄装置200に供給することができる。
【0071】
さらに、生成水槽26にはドレン配管DPが接続されており、酸化還元電位水の生成条件が変更された場合や、酸化還元電位水の水質(溶存水素量、水温、ORPなど)が変化して、生成水槽26に貯留された酸化還元電位水が不要となった場合には、このドレン配管DPから、酸化還元電位水を排出することができる。また、生成水槽26からオーバーフローした酸化還元電位水も、ドレン配管DPから外部に排出することができる。
【0072】
生成水槽26には、液位計Lが備えられている。制御部は、液位計Lの計測結果に基づいて貯水量を算出し、酸化還元電位水の生成量を制御している。具体的には、生成水槽26の最大貯水量は、例えば、200Lであり、制御部は、例えば、貯水量が160L以上となったときに、気液混合ポンプ17への水道水と水素ガスの供給を停止しかつ、循環配管CPに備えたソレノイドバルブSV3を開放して、生成水槽26に貯留された酸化還元電位水を循環させる。また、貯水量が50L以下となったときに、気液混合ポンプ17への水道水と水素ガスの供給を開始しかつ、ソレノイドバルブSV3を閉じて酸化還元電位水の循環を停止する。
【0073】
即ち、生成水槽26に貯留された酸化還元電位水の量が予め設定された上限以上となると、新たな酸化還元電位水の生成を中止して、現存する酸化還元電位水の循環を行い、予め設定された下限以下になると、循環を停止して新たな酸化還元電位水の生成を開始する。ここで、酸化還元電位水を循環させて、気液混合ポンプ17及びミキサー22A,22B,22Cに繰り返し通すことで、酸化還元電位水の溶存水素量が高められ、ORPをより低い値にすることができる。
【0074】
また、生成水槽26には水温計Tが備えられている。この水温計Tにより、図6に示す噴射洗浄装置200(詳細には、ノズル202)に供給される酸化還元電位水の水温が計測されている。また、制御部は、水温計Tの計測値に基づいて、噴射洗浄装置200に供給される(生成水槽26に貯留されている)酸化還元電位水が、後述する設定水温となるようにヒータ23を駆動制御する。
【0075】
図示しないが、生成水槽26には、生成水槽26に貯まった水素ガス濃度を検出する水素ガス濃度計が備えられており、その計測結果は図示しない制御部に出力される。制御部は、水素ガス濃度計の計測結果が所定の上限濃度を超えた場合に警報を出力しかつ、酸化還元電位水製造装置100の運転を停止するようにしてもよい。
【0076】
なお、酸化還元電位水製造装置100の主配管MPの所定箇所には、上述した構成の他にも、水の流れる流路を切り替えるための切替バルブ、外部機器や配管を接続するための接続部、水を採水するための採水弁等が備えられている。また、主配管MPと活水器14、真空モジュール16A、気液混合ポンプ17、ヒータ23との各接続部分は、所謂、ユニオン接続となっており、比較的容易に着脱することが可能となっている。
【0077】
そして、上述した酸化還元電位水製造装置100によれば、水道水(pH7.0〜7.5、ORP+150mV以上)を原料水として、pH7.0〜7.8、ORP−500mV以下、溶存水素量1.0〜2.0ppmとなった酸化還元電位水が生成される。即ち、pHを中性に保持したままで、酸化還元電位を水道水よりも低い負の値にしかつ溶存水素量を増加させることができる。以上が、酸化還元電位水製造装置100の説明である。
【0078】
次に、噴射洗浄装置200を図6及び図7に基づいて説明する。噴射洗浄装置200は、酸化還元電位水を高圧・高速で噴射して金属製ワークWkに衝突させ、金属製ワークWkに付着している異物(油分や切粉、切粉として金属製ワークWkから分離していないバリ)を除去する。
【0079】
具体的には、噴射洗浄装置200は、図6の(A)に示すように、酸化還元電位水製造装置100の供給配管SPに接続した高圧ポンプ203を備えている。この高圧ポンプ203は、酸化還元電位水製造装置で製造された酸化還元電位水を所定圧力(例えば、10〜15MPa)で吐出しており、開閉弁204が開くことで、配管体201に酸化還元電位水が供給される。配管体201には、金属製ワークWkに向けて酸化還元電位水を噴射する複数のノズル202が備えられている。配管体201は、金属製ワークWkの両面側(図6の(A)における上面側と下面側)に備えられ、固定された金属製ワークWkに対して所定の速度で自動的に移動しながら酸化還元電位水を噴射する構成となっている。
【0080】
配管体201に備えられたノズル202の噴射口と金属製ワークWkの表面との間の距離H1は、例えば、40mmとなっている。ノズル202から噴射された酸化還元電位水は、図7に示すように、噴出口から金属製ワークWkに向かって略扇形状に拡散するようになっており、その略扇形の頂角、即ち、ノズル202から噴射された酸化還元電位水の広がり角度θ1(図6の(A)を参照)は、例えば、75度となっている。また、同一の配管体201に備えた各ノズル202は、金属製ワークWkの酸化還元電位水が衝突している部分(図7の点線mで囲まれた部分)が互いに重ならないように配置されている。換言すれば、一のノズル202から噴射された酸化還元電位水が、同一の配管体201に備えられた他のノズル202から噴射された酸化還元電位水と交差して衝突力が落ちないようになっている。
【0081】
更に、配管体201が金属製ワークWkに対して図7の太線矢印で示された方向に水平移動することで、金属製ワークWkのうち、一のノズル202から噴射された酸化還元電位水の衝突部分がそれぞれ帯状領域Qを形成しかつ、隣接した他のノズル202により形成された帯状領域Qとの境界部分が、例えば、2mm程度重なるようになっている。これにより、ノズル202から噴射された酸化還元電位水が金属製ワークWkの両面全体に確実に衝突するようになっている。更に、本実施形態では、配管体201の傾動により、ノズル202の中心線と金属製ワークWkの表面との交差角度θ2(図6の(B)を参照)を、例えば、90度〜105度の範囲で調節可能となっている。
【0082】
噴射洗浄装置200の説明は以上であって、次に水分除去装置300について説明する。水分除去装置300は、送風機301と乾燥機302とから構成される。送風機301は、噴射洗浄装置200で洗浄された金属製ワークWkに対して気体(例えば、空気)を高速・高圧で吹き付けて、金属製ワークWkに付着した水分を吹き飛ばす。即ち、強制的に水切りを行う。
【0083】
詳細には、送風機301は、図8に示すように、金属製ワークWkに対して自動的に移動しながら空気を吹き付ける気体噴射ノズル301aと、その気体噴射ノズル301aに空気を供給するブロア301bとから構成され、ブロア301bと気体噴射ノズル301aとの間に設けられた調節弁301cによって気体噴射ノズル301aから噴射される空気の風速が、例えば、60〜120m/secの間で調節可能となっている。
【0084】
気体噴射ノズル301aの噴射口は、例えば、細長いスリット形状をなしている。そして、図9に示すように、気体噴射ノズル301aから噴射された空気は、所謂、エアーカーテンを形成し、このエアーカーテンを横切る際に、金属製ワークWkに付着した水分の大部分が吹き飛ばされる。本実施形態では、気体噴射ノズル301aの噴射口と金属製ワークWkの表面との間の距離H2(図8を参照)は、例えば、180mmとなっている。また、気体噴射ノズル301aから吹き出した空気が金属製ワークWkの表面に対してほぼ垂直方向から当たるようになっている。更に、本実施形態では、気体噴射ノズル301aが、例えば、水平に寝かされた金属製ワークWkの両面側(図8における上面側と下面側)に順番に移動して空気を吹き付けるようになっている。
【0085】
一方、乾燥機302は、送風機301によって水分が吹き飛ばされた金属製ワークWkに、常温よりも高温な(例えば、最高で80度)の温風を吹き付けて加熱し、送風機301で除去できなかった水分を蒸発させる。即ち、強制的に乾燥させる。これにより、金属製ワークWkに付着した水分が完全に除去される。
【0086】
ここで、乾燥機302で乾燥する前に、送風機301により金属製ワークWkに付着した水分の大部分を吹き飛ばしておくと、水分を吹き飛ばさずに乾燥機302により乾燥させた場合に比較して、乾燥後の金属製ワークWkの表面におけるスケール(固形物)の発生量が低減できる。また、乾燥に要する時間も短縮できる。
【0087】
また、本実施形態では、前述したように、酸化還元電位水の生成過程で軟水装置12により水中の金属イオンが除去されているので、スケール(具体的には、カルシウム、マグネシウム等の炭酸塩)の発生をより確実に防ぐことができる。
【0088】
ここで、水分除去装置300により金属製ワークWkに付着した水分を除去する工程が、本発明の「水分除去工程」に相当する。また、送風機301により金属製ワークWkに気体を吹き付けて金属製ワークWkに付着した水分を吹き飛ばす工程が、本発明の「水切り工程」に相当し、乾燥機302により金属製ワークWkに常温よりも高温な温風を吹き付けて加熱し水分を蒸発させる工程が、本発明の「乾燥工程」に相当する。
【0089】
本実施形態の金属製ワーク洗浄システム10には、上記した構成の他に、浄水装置400が備えられている。浄水装置400は、噴射洗浄装置200において金属製ワークWkに噴射された酸化還元電位水を回収して、油水分離、油分回収、固形物(切粉やバリ等)回収等を行い、回収された水を浄化する。その後、所定の水質をクリアした水は、酸化還元電位水の原料水として酸化還元電位水製造装置100に供給されて再利用され、所定の水質をクリアしなかった水は、排水処理後に下水道に放流される。ここで、浄水装置400に回収される酸化還元電位水のpHは水道水とほぼ同じであり、しかも酸化還元電位水に溶存している水素ガスは洗浄水として使用された後で自然に抜けるので、水にpH調整剤や洗浄剤、防錆剤等を添加してなる洗浄水に比較して、酸化還元電位水の原料水としての再利用や排水処理が容易となる。
【0090】
以上が、金属製ワーク洗浄システム10の説明である。なお、この金属製ワーク洗浄システム10を備えた金属製ワークの製造システムMには、図1に示すように、防錆油付着装置401が備えられている。防錆油付着装置401は、静電浄油装置401aによって予め浄化した(具体的には、ゴミを取り除いた)防錆油を、乾燥した金属製ワークWkに塗布又は噴霧する。これにより、金属製ワークWkにおける錆の発生を確実に防止することができる。なお、本実施形態のように製造する金属製ワークWkが自動車に使用されるプレートバルブボディである場合には、防錆油として、例えば、MTF(手動変速機油)を塗布又は噴霧するようにしてもよい。
【0091】
次に、金属製ワークの製造工程及び洗浄工程について説明する。
金属製ワークWkは、例えば、圧延、切削、プレス等の工程を経て成形され、外観検査工程に送られる。そして、外観検査に合格した金属製ワークWkが洗浄工程に送られる。
【0092】
即ち、金属製ワークWkは、金属製ワーク洗浄システム10に備えた噴射洗浄装置200に送られる。噴射洗浄装置200では、供給ポンプ27によって酸化還元電位水製造装置100(詳細には、生成水槽26)から所定圧力(0.1〜0.3MPa)で供給された酸化還元電位水を高圧ポンプ203により10〜15MPaのうちの予め設定された圧力にしてノズル202から噴射し、金属製ワークWkに衝突させる。
【0093】
ここで、酸化還元電位水は、生成水槽26に流入する前にヒータ23により暖められて、例えば、生成水槽26における水温が33度以上38度以下にとなるように水温調節されている。つまり、噴射洗浄装置200のノズル202に供給される酸化還元電位水の水温が33度以上38度以下になっている。ここで、生成水槽26における酸化還元電位水の水温を33度以上としたのは、金属製ワークWkに付着した異物、特に、油分を確実に除去するためである。
【0094】
酸化還元電位水が衝突すると、金属製ワークWkの表面に付着していた切粉や油分が洗い流されると共に、金属製ワークWkから分離していないバリが水圧によって金属製ワークWkから分離して取り除かれる。
【0095】
噴射洗浄装置200により洗浄(切粉、バリ、油分が除去)された金属製ワークWkは、直ちに(好ましくは、洗浄終了から1分以内に)水分除去装置300(水分除去工程)に送られる。水分除去装置300では、まず、送風機301により風速60〜100m/secで空気を吹き付ける。すると、金属製ワークWkに付着している水分の大部分が吹き飛ばされる。次いで、乾燥機302により、例えば、80度の温風を吹き付ける。すると、金属製ワークWkが加熱されて送風機301で除去されなかった水分が蒸発する。これにより、金属製ワークWkに付着した水分が完全に取り除かれる。ここで、金属製ワークWkの洗浄終了から水分除去工程に移行するまでの時間を1分以内としたのは、金属製ワークWkに付着した水分と大気中の酸素とに起因した錆の発生を確実に防ぐためである。以上により、金属製ワークWkの洗浄工程は終了である。
【0096】
洗浄工程を経て洗浄・乾燥された金属製ワークWkには防錆油が塗布又は噴霧され、その後箱詰めされる。なお、ここまでの全工程、即ち、金属製ワークWkの成形から防錆油の塗布までの工程が、金属製ワークWkの製造工程である。
【0097】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の効果を具体的に説明する。
[実施例]
本発明に係る実施例の金属製ワーク洗浄システム10の構成は、上述した通りである。ここで、実施例の金属製ワーク洗浄システム10では、噴射洗浄装置200のノズル202の中心線と金属製ワークWkの表面との交差角度θ2(図6の(B)を参照)を90度に設定し、ノズル202から噴射される酸化還元電位水の圧力を15MPaに設定し、ノズル202の移動速度を金属製ワークWk1枚当たり6秒で洗浄が終了するように設定した。また、送風機301の気体噴射ノズル301aから噴射される空気の速度(風速)は60m/secに設定し、乾燥機302から出る温風の温度は80度に設定した。
【0098】
[比較例]
金属製ワークWkに噴射する水が、水道水(pH7.0〜7.5、ORP+150mV以上)である点のみが実施例の金属製ワーク洗浄システム10とは異なり、他の構成及び設定条件は実施例の金属製ワーク洗浄システム10と同一である。
【0099】
[実験方法]
(1)実施例の金属製ワーク洗浄システム10と比較例の金属製ワーク洗浄システムとを用いて、金属製ワークWkを上記工程により洗浄・乾燥した。ここで、実施例の金属製ワーク洗浄システム10による洗浄では、酸化還元電位水製造装置100の生成水槽26に貯留されている(即ち、ノズル202に供給される)酸化還元電位水の水温を種々の値に設定しかつ、金属製ワークWkのうち、酸化還元電位水が衝突している部分(図7の点線mで囲まれた部分)の温度を実測した。また、金属製ワークWkに噴射される酸化還元電位水のpH、ORP、溶存水素量もあわせて実測した。
(2)乾燥後の金属製ワークWkを屋内の大気中に放置し、目視又は顕微鏡により錆(所謂、赤錆)の発生の有無を毎日検査した。
【0100】
[実験結果]
【表1】

【0101】
比較例の金属製ワーク洗浄システムによって洗浄した金属製ワークWkは、乾燥機302から取り出した時点ですでに錆が発生していることが確認された。
【0102】
これに対し、実施例の金属製ワーク洗浄システム10によって洗浄した金属製ワークWk(No.1〜8)では、上記表1に示すように、乾燥後、長期間に亘って錆の発生が抑制できることが分かった。具体的には、酸化還元電位水(pH7.36、ORP−618mV、溶存水素1.696ppm)の生成水槽26における水温を36度〜38度とした場合、金属製ワークWkのうち酸化還元電位水が衝突している部分(図7を参照)の温度は26.7度〜27.8度であった。そして、この条件(No.1〜5)で洗浄された金属製ワークWkを乾燥して大気中に放置した場合、大気放置を開始してから4日目まで錆の発生は確認されなかった。
【0103】
また、酸化還元電位水(pH7.22、ORP−606mV、溶存水素1.431ppm)の生成水槽26における水温を33度〜35度とした場合、金属製ワークWkの酸化還元電位水が衝突している部分(図7を参照)の温度は24.6度〜25.1度であった。そして、この条件(No.6〜8)で洗浄された金属製ワークWkを乾燥して大気中に放置した場合、大気放置を開始してから最短でも20日目まで錆の発生は確認されず(No.6)、最長では25日目まで錆の発生は確認されなかった(No.7,8)。
【0104】
更に、実施例の金属製ワーク洗浄システム10によれば、金属製ワークWkに付着した異物の除去も良好に行われ、乾燥後のスケールの発生も確認されなかった。
【0105】
このように、本実施形態によれば、ORPが負の値となった酸化還元電位水により金属製ワークWkを洗浄することで、水道水を洗浄水として使用する従来の洗浄システム及び洗浄方法に比較して、洗浄後の金属製ワークWkにおける錆の発生を長期間に亘って抑制することができた。より具体的には、酸化還元電位水のORPを−500mV以下(好ましくは−600mV以下)及び/又は溶存水素量を1.0〜2.0ppm(好ましくは、1.4ppm〜2.0ppm)とし、pH7.0〜7.8(好ましくは、pH7.2〜7.8)とし、更に、ノズル202に供給される酸化還元電位水の水温(本実施形態では、生成水槽26における水温)を、38度以下(より好ましくは、35度以下)及び/又は、金属製ワークWkのうち酸化還元電位水が衝突している部分(図7を参照)の温度を28度以下(より好ましくは、26度以下)とすることで、洗浄後の金属製ワークWkにおける錆の発生を、4日〜25日間に亘って抑制することができた。
【0106】
また、ノズル202に供給される酸化還元電位水の水温(生成水槽26における水温)を、33度以上及び/又は、金属製ワークWkのうち酸化還元電位水が衝突している部分(図7を参照)の温度を24度以上とすることで、金属製ワークWkに付着している異物が確実に除去できた。
【0107】
また、酸化還元電位水を生成する過程で水道水中の酸化性物質(溶存酸素及び残留塩素)が除去されると共に、酸化還元電位水自体が還元性を有するので、酸化還元電位水が金属製ワークWkに衝突することによるエロージョンコロージョンを抑制することができる。
【0108】
なお、酸化還元電位水で金属製ワークWkを洗浄すると、水道水で洗浄した場合に比べて錆が長期間に亘って抑制された理由として、以下のことが推測される。金属の一例として、鉄を例に挙げて説明すると、一般に、鉄に水分が付着すると以下の化学反応(酸化反応)により錆が発生する。
【0109】
鉄がイオン化し、水中に溶出する。
Fe→Fe2++2e・・・(1)
鉄が放出した電子が介在して、水と酸素が反応し水酸化物イオンが生成する。
2HO+O+4e→4OH ・・・(2)
鉄イオンと水酸化物イオンが反応し、水酸化第一鉄が生成する。
Fe2++2OH→Fe(OH)・・・(3)
水酸化第一鉄は水中の溶存酸素或いは大気中の酸素によって直ちに酸化され、水酸化第二鉄(赤錆)が生成する。
4Fe(OH)+2HO+O→4Fe(OH)・・・(4)
なお、水酸化第二鉄が脱水すると酸化第二鉄となる。
2Fe(OH)→Fe+3HO・・・(5)
【0110】
水道水で洗浄した場合、金属製ワークWkに付着した水道水と溶存酸素により、洗浄中或いは乾燥するまでの間に上記(1)〜(4)の反応が進行し赤錆が発生したものと推測される。
【0111】
これに対し、酸化還元電位水で洗浄した場合は以下のようである。即ち、酸化還元電位水のORPは、上記したようにマイナス側に大きな値(具体的には−600mV以下)となっている。つまり、酸化還元電位水は、水道水(ORP+150mV以上)に比較して強い還元性を有する。これにより、酸化還元電位水により洗浄した場合には、少なくとも洗浄から乾燥に至るまで上記反応(1)〜(4)の進行が抑制され、水道水で洗浄した場合に比較して錆の発生が長期間に亘って抑制されたものと推測される。
【0112】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記一実施形態では、水素ガス供給源18としてガスボンベが備えられているが、ガスボンベに代えて、例えば、化学反応により水から水素ガスを生成する水素ガス発生装置を備えていてもよい。この場合、発生した水素ガスを気液混合ポンプ17に圧送するためのポンプをガス配管GPの途中に設けることが好ましい。
【0113】
(2)上記実施形態では、金属製ワークWkを酸化還元電位水のみで洗浄していたが、酸化還元電位水による洗浄の前に、洗浄油によって洗浄してもよい。
【0114】
(3)上記実施形態では、酸化還元電位水の生成に使用する水道水の前処理として、軟水化処理及び活性炭濾過処理を行っていたが、これら処理に加えてイオン交換処理、紫外線殺菌処理を行ってもよい。このような前処理を経て生成された酸化還元電位水は、精密部品の洗浄に使用することができる。
【0115】
(4)上記実施形態では、金属製ワークWkの一例としてSPCC材を例示したが、他の鉄を含有した金属製ワーク(例えば、SECC材に亜鉛メッキしたものや、ステンレス)であってもよい。また、鉄を含有しない金属(アルミニウムや真鍮(黄銅))であってもよい。
【0116】
(5)上記実施形態では、乾燥後の金属製ワークWkに防錆油を塗布していたが、例えば、窒素ガスを充填した袋に入れて密封してもよい。このようにすれば、金属製ワークWkのユーザーは、金属製ワークWkの使用前に防錆油を除去する手間が省ける。
【0117】
(6)上記実施形態では、噴射洗浄装置200に備えたノズル202及び送風機301に備えた気体噴射ノズル301aが金属製ワークWkに対して移動する構成であったが、これらノズル202及び気体噴射ノズル301aを固定して、金属製ワークWkを、搬送装置(例えば、コンベヤ)によって噴射洗浄装置200、水分除去装置300の順に搬送するようにしてもよい。
【0118】
(7)上記実施形態では、酸化還元電位水を噴射するノズル202の噴射口と金属製ワークWkの表面との間の距離H1は40mmであったが、この距離H1は、金属製ワークWkの状態(例えば、板厚や付着した異物の多少等)に応じて変更してもよい。また、金属製ワークWkに噴射される酸化還元電位水の圧力も、金属製ワークWkの状態に応じて10〜15MPaの範囲内で適宜変更すればよい。
【0119】
(8)上記実施形態では、酸化還元電位水を噴射するノズル202として、噴射口から噴射された水が略扇形状に拡散する、所謂、フラットノズルを使用していたが、略円錐形状に拡散する所謂、フルコーンノズルや、気体噴射ノズル301aのような、所謂、スリットノズルを使用してもよい。
【0120】
(9)上記実施形態では、金属製ワークWkを水平に寝かせて、その上面側と下面側とから酸化還元電位水を吹き付けるようにしていたが、金属製ワークWkを垂直に立てて保持し、横方向から酸化還元電位水を吹き付けるようにしてもよい。このようにすれば、金属製ワークWkの上面に水が溜まることが防がれ、酸化還元電位水を吹き付けている間にも水切りを行うことができる。
【0121】
(10)上記実施形態では、気体噴射ノズル301aから吹き出した空気が金属製ワークWkの表面に対してほぼ垂直方向から当たるようになっていたが、垂直方向に対して傾いた方向から当たるようにしてもよい。
【0122】
(11)上記実施形態では、金属製ワークWkに気体を吹き付けて水分を吹き飛ばしていたが、例えば、金属製ワークWkを高速回転させて遠心力で水切りしたり、超音波振動により水切りしてもよい。
【0123】
(12)上記実施形態では、噴射洗浄装置200に備えたノズル202が酸化還元電位水を噴射しながら自動的に移動する構成であったが、例えば、高圧ホースを介して供給配管SPに接続された噴射ノズルを作業者が持って酸化還元電位水を吹き付けるようにしてもよい。
【0124】
(13)上記実施形態では、酸化還元電位水の生成に使用する水道水の前処理として、脱気処理及び活性炭濾過処理を行って溶存酸素や残留塩素などの酸化性物質が除去されていたが、これら処理を行わなくてもよい。この場合、酸化還元電位水中には、酸化性物質が残留することになるが、酸化還元電位水自体が有する還元力(或いは、酸化還元電位水に溶解している水素)により酸化性物質の酸化力を弱めて、金属製ワークWkにおける錆やエロージョンコロージョンの発生を抑制するようにしてもよい。
【0125】
(14)上記実施形態では、水分除去装置300の送風機301が金属製ワークWkに空気を吹き付けていたが、空気の代わりに窒素ガスやアルゴンガスを吹き付けるようにすれば金属製ワークWkにおける錆の発生をより確実に防止することができる。
【0126】
(15)上記実施形態では、気体噴射ノズル301aの噴射口と金属製ワークWkの表面との間の距離H2は、180mmであったが、この距離H2は、金属製ワークWkの状態(例えば、板厚や付着した異物の多少等)に応じて変更してもよい。また、金属製ワークWkに噴射される気体の風速も、金属製ワークWkの状態に応じて60〜120m/secの範囲内で適宜変更すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の一実施形態に係る金属製ワーク洗浄システムの概念図
【図2】酸化還元電位水製造装置の概念図
【図3】ミキサーユニットの概念図
【図4】ミキサーの側断面図
【図5】ミキシング壁の平面図
【図6】(A)噴射洗浄装置の概念図(B)噴射洗浄装置の部分拡大図
【図7】噴射洗浄装置の斜視図
【図8】送風機の概念図
【図9】送風機の斜視図
【符号の説明】
【0128】
10 金属製ワーク洗浄システム
12 軟水装置
13 活性炭濾過器(脱塩素装置)
16 脱気装置
17 気液混合ポンプ
22A,22B,22C ミキサー
23 ヒータ
26 生成水槽
30 円筒ケース(管路)
40 ミキシング壁
100 酸化還元電位水製造装置
200 噴射洗浄装置
202 ノズル
300 水分除去装置
301 送風機
302 乾燥機
M 金属製ワーク製造システム
Wk 金属製ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製ワークを洗浄するための金属製ワーク洗浄システムにおいて、
水と水素ガスとを攪拌混合して酸化還元電位が負の値になった酸化還元電位水を生成するための酸化還元電位水製造装置と、
前記酸化還元電位水を前記金属製ワークに向けて噴射するためのノズルを有する噴射洗浄装置とを備えたことを特徴とする金属製ワーク洗浄システム。
【請求項2】
前記酸化還元電位水の水温を38度以下にしてノズルに供給するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の金属製ワーク洗浄システム。
【請求項3】
前記酸化還元電位水の水温を33度以上にしてノズルに供給するように構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属製ワーク洗浄システム。
【請求項4】
前記金属製ワークのうち前記酸化還元電位水が衝突している部分の温度が28度以下となるように、前記酸化還元電位水の水温を所定温度以下にしてノズルに供給するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の金属製ワーク洗浄システム。
【請求項5】
前記金属製ワークのうち前記酸化還元電位水が衝突している部分の温度が24度以上となるように、前記酸化還元電位水の水温を所定温度以上にしてノズルに供給するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の金属製ワーク洗浄システム。
【請求項6】
前記酸化還元電位水製造装置は、単位体積当たりの水に溶解した水素ガス量である溶存水素量が1.0〜2.0ppm及び/又は酸化還元電位が−500mV以下でありかつ、pH7.0〜7.8である酸化還元電位水を生成するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の金属製ワーク洗浄システム。
【請求項7】
前記噴射洗浄装置による洗浄後の前記金属製ワークに付着した水分を除去するための水分除去装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の金属製ワーク洗浄システム。
【請求項8】
前記水分除去装置は、前記噴射洗浄装置による洗浄後の前記金属製ワークに気体を吹き付けて前記金属製ワークに付着した水分を吹き飛ばす送風機と、前記水分が吹き飛ばされた前記金属製ワークを加熱して水分を蒸発させる乾燥機とから構成されたことを特徴とする請求項7に記載の金属製ワーク洗浄システム。
【請求項9】
前記酸化還元電位水製造装置は、前記水と共に前記水素ガスを吸引して混合し排出する気液混合ポンプと、
前記気液混合ポンプから排出された前記水に対する前記水素ガスの溶存量を高めるためのミキサーとを備え、
前記ミキサーは、前記気液混合ポンプの排出口に接続された管路と、
前記管路の軸方向に沿って間隔をあけて設けられ、前記管路内を複数の領域に区画すると共に前記水の通過を許容し、前記管路内で流体圧力の強弱が繰り返されるようにするための複数のミキシング壁とを備えたことを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の金属製ワーク洗浄システム。
【請求項10】
前記酸化還元電位水製造装置により前記水素ガスと攪拌混合される前記水から予め気体を除去するための脱気装置と、残留塩素を除去するための脱塩素装置と、金属イオンを除去するための軟水装置とを備えたことを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の金属製ワーク洗浄システム。
【請求項11】
水と水素ガスとを攪拌混合して酸化還元電位が負の値になった酸化還元電位水を生成し、その酸化還元電位水をノズルから噴射して前記金属製ワークを洗浄することを特徴とする金属製ワーク洗浄方法。
【請求項12】
前記ノズルに供給する前記酸化還元電位水の水温を38度以下にすることを特徴とする請求項11に記載の金属製ワーク洗浄方法。
【請求項13】
前記ノズルに供給する前記酸化還元電位水の水温を33度以上にすることを特徴とする請求項11又は12に記載の金属製ワーク洗浄方法。
【請求項14】
前記金属製ワークのうち、前記酸化還元電位水が衝突している部分の温度を28度以下にすることを特徴とする請求項11乃至13の何れかに記載の金属製ワークの洗浄方法。
【請求項15】
前記金属製ワークのうち、前記酸化還元電位水が衝突している部分の温度を24度以上にすることを特徴とする請求項11乃至14の何れかに記載の金属製ワークの洗浄方法。
【請求項16】
前記酸化還元電位水は、単位体積当たりの水に溶解した水素ガス量である溶存水素量が1.0〜2.0ppm及び/又は酸化還元電位が−500mV以下でありかつ、pH7.0〜7.8であることを特徴とする請求項11乃至15の何れかに記載の金属製ワーク洗浄方法。
【請求項17】
前記酸化還元電位水による洗浄後に、前記金属製ワークに付着した水分を除去する水分除去工程を備えたことを特徴とする請求項11乃至16の何れかに記載の金属製ワークの洗浄方法。
【請求項18】
前記水分除去工程は、前記金属製ワークに気体を吹き付けて水分を吹き飛ばす水切り工程と、前記水切り工程後の前記金属製ワークを加熱して水分を蒸発させる乾燥工程とからなることを特徴とする請求項17に記載の金属製ワークの洗浄方法。
【請求項19】
前記水素ガスと攪拌混合される前記水から予め気体を除去するための脱気工程と、残留塩素を除去するための脱塩素工程と、金属イオンを除去するための軟水化工程とを備えたことを特徴とする請求項11乃至18の何れかに記載の金属製ワークの洗浄方法。
【請求項20】
前記請求項11乃至19の何れかに記載の金属製ワークの洗浄方法を工程の一部に備えたことを特徴とする金属製ワークの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−314910(P2006−314910A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139296(P2005−139296)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(593161478)佐藤工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】