説明

金属製品のバリ取り装置およびその方法

【課題】 本発明は、プレス等の加工後のワーク4に発生するバリ、鋭利なエッジを取り除くバリ取り装置とそのバリ取りの方法に関し、特にワーク4の要望する小さいワーク搬送を可能とすること。
【解決手段】ワーク4を直線的に運ぶ搬送コンベア方式から、円を描くように、ワーク4の角度を変えて一周させる旋回式の搬送方法にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリ取り装置に係り、更に詳細には、加工後のワークに発生するバリ、鋭利なエッジを取り除くバリ取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の円筒形バリ取り研磨ブラシを正回転および逆回転させ、更に旋回と、ワークを搬送するベルトコンベアの進行方向を横断する往復動作をさせてバリ取りを行う、バリ取り装置の構造が知られている。
【0003】
すなわち、直線的に搬送するベルトコンベア上に加工済みのワークを、ベルト上に設けられる、整列に配置された多数の穴に、負圧を生じるようにベルト下側より吸引し、固定したワークが搬送される為、無規則の方向や位置に存在している加工済みワークのバリ、鋭利なエッジは、複数の円筒形バリ取り研磨ブラシが正、逆回転の他に、旋回、左右往復の複合動作を行うことによって、搬送ベルト幅全域を研磨してバリ取りを行っている。
【特許文献1】米国特許第5468173号明細書
【特許文献2】特表平5−508354
【0004】
しかし、これらのバリ取り装置は、複数の円筒形バリ取り研磨ブラシを複合動作させる為、構造が複雑になる欠点がある。又、搬送ベルト上にワークを固定する為の吸引装置は、搬送ベルトの走行台として設けられ、台上には通過する搬送ベルトの吸引穴とほぼ等しい面積の吸引孔を有し、別に設けられた吸引ポンプによって吸引力が発生する。そして、搬送ベルトにワークを固定させる力は搬送ベルトの多数の穴を介して行われるが、その多くの吸引力は搬送ベルトそのものも吸引し、走行台との摩擦が増大して搬送ベルトの走行を阻害する抵抗力となる。摩擦を軽減する必要から、走行台と搬送ベルト下面の密着を防ぐ工夫として走行台上面を波形等にして空隙を設けるが、空隙に流入する空気は、ワークを吸引している搬送ベルトの吸引穴以外からの流入であり、摩擦を軽減すると同時に吸引力を弱める方向に働く。個々の吸引力が弱いと研磨ブラシの研削力によって、ずれたり、掻き飛ばされる危険もある。したがって、吸引ポンプは大容量のものを用いて、その危険を回避しているにも拘らず、搬送ベルトの個々の吸引穴から得る力は小さく、ワークを固定させる力を得るには吸引穴を数個以上塞ぐ大きさのワークに制限される問題と、供給される電力の大半は、搬送ベルト上にワークを固定する為だけの吸引ポンプに消費される、効率の悪い問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、最小ワークの制限が、具体的には25×25(mm)の実用上にマッチする大きさのワークを固定可能として搬送する。又、ワークを固定する為の電力消費量を少なくする点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述したごとき問題に鑑みて、本発明は直線的に進行する搬送ベルトを、円周方向に旋回する円卓構造の搬送装置としてワークを固定し、ワーク自身が徐々に角度を変えて一周させることにより、正逆に回転する円筒形バリ取り研磨ブラシの旋回する動作を不要とし、左右の往復動作のみに簡素化する。
円卓の回転中央部は空芯構造として、別に設けた吸引ポンプにより円卓内部の空気を吸引する。旋回する円卓上面には、輪形に並べられた多数の吸引穴を有するゴム状のシートを敷き、ワークを吸引固定して旋回させる。又、円卓の内側は円卓の中心から半径方向に仕切り板を12等分するように配置し、それぞれが個別に吸引する吸引区分を設ける。搬入及び搬出する付近では、吸引を遮断する板が設けられ、当該の吸引区分の上にあるワークは、固定力が開放される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のバリ取り装置の搬送装置は、ワークを乗せるシート自身が円卓上面に吸引することで搬送を阻害する抵抗力とはならない。又、吸引時は、円卓上面にシートが密着することで、シートの吸引穴以外から空気が入り込む量は極小となり、シート上の個々の吸引穴の吸引力は、従来の搬送ベルト方式に比べ増大し、搬送固定する最小ワークは、目標とする25×25(mm)の大きさも可能となり、吸引ポンプの電力消費も従来の3分の1以下となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明によるバリ取り装置の実施例を正面から見た図である。
【図2】図2は、図1に示すバリ取り装置の実施例を側面から見た図である。
【図3】図3は、図2のA−A’方向に見た図である。
【図4】図4は、ワーク搬送の入口付近に置いたワークが、徐々に角度を変えてバリ取りが行われ、出口付近では全ての角度方向にバリ取りが行われる様子を説明した図である。
【図5】図5は、搬送用のシート(消耗品)を示した図である。 1a、1b・・・円筒形バリ取り研磨ブラシ、2・・・円卓構造の搬送装置、3・・・搬送用シート 4・・・ワーク、5・・・仕切り板、6・・・空芯軸受、7・・・吸引室、8・・・遮蔽板、9・・・吸引口 10・・・分配ボックス、11・・・搬送入口付近、12・・・搬送出口付近、13・・・軌道台、14・・・其台 15・・・電動機A、16・・・電動機B、17・・・電動機C、18・・・電動機D、19・・・往復動作 20・・・吸引空気の流れ、21・・・吸引穴、22・・・バリ取り研磨方向
【発明を実施するための形態】
【0009】
バリ取り出来る最小ワーク仕様を短小化するという目的で、従来の直線搬送方法を旋回搬送方法に実現した。
【実施例】
【0010】
図1および図2は、本発明装置の実施例で、正転する円筒形バリ取り研磨ブラシ1aと逆転する円筒形バリ取り研磨ブラシ1b、更に前記1aが、分配ボックス10上に正、逆、正回転の順に配置される。前記1a,1bは電動機D18で駆動し、回転方向はタイミングベルトの伝達面によって変える。分配ボックス10は、軌道台13の上で矢印19の方向に往復する。実施例では詳細に図示しないが、軌道台13にガイドレールを設け、左右の動作はタイミングベルトを介し電動機A15によって走行する構造となっている。軌道台13は、其台14の電動機B16で昇降する構造となっている。前記1a,1bとワーク4の相対距離はワーク4の材質やバリの研磨量によって設定される重要な要素の為、現位置はエンコーダを用いて位置決め制御を行っている。円卓構造の搬送装置2は電動機C17によって旋回する。尚、電動機D18のスピンドル回転数(rpm)、電動機A15の往復ストローク数(spm)、電動機C17の搬送速度(m/min)も同様にワーク4の材質やバリの研磨量によって設定される重要な要素の為、それぞれ速度制御を行っている。前記2の上には、搬送用シート3を敷き、ワーク4が吸引固定され、バリ取りしながら一周する。前記2は、吸引室7上側に空芯軸受6を介して接続し、吸引室7下側には、図示していないが別置吸引ポンプが接続される。吸引空気の流れ20は、搬送用シート3の輪形に並べられた多数の吸引穴21から入り、吸引室7の下側出口から排出する。吸引室7は負圧状態となり、吸引穴21上に置かれたワーク4は、吸引力により固定される。搬送入口付近11及び出口付近12では、固定力を解除する必要がある。図3は、本発明装置の実施例の断面図で、前記2の内側は仕切り板5で12等分の独立した吸引区分には吸引口9を設け、遮蔽板8の上空に旋回してきた吸引区分は吸引空気が遮断され、固定力が失われることを示した実施例である。
図4は、ワーク4が、ブラシによって順次研磨される方向の軌跡を、ワーク4上に矢印22で示した説明図で、前記1aおよび1bの旋回動作が必要としないことを示している。
図5は、バリ取り作業によって消耗する搬送用シート3の実施例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形バリ取り研磨ブラシ1a、1bを正転及び逆転方向に回転させながら、分配ボックス10を左右方向に連動の往復動作をさせて、ワーク4の表面を直線的に磨くバリ取りツール下を、ワーク4を固定して一周し、徐々にワーク4の角度を変える円卓構造の搬送装置2を有することを特徴とした金属製品のバリ取り装置およびそのバリ取りの方法。
【請求項2】
ワーク4を固定して搬送する入口11及び出口12付近で固定する吸引力を弱くする為に、円卓構造の搬送装置2内部は等角度間隔に仕切り板5と夫々の吸引区分に吸引口9を設け、所定の回転角度では、閉じられる形状としたことを特徴とする、請求範囲1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−35403(P2012−35403A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186618(P2010−186618)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(510228879)オーセンテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】