説明

金属複合体組成物及びその混合物

【課題】インク材料等として、発光輝度の向上を可能にする材料を提供すること。
【解決手段】分子量200以上の共役化合物がアスペクト比1.5以上の金属ナノ構造体に吸着されてなる金属複合体及びイオン性化合物を含む金属複合体組成物(ここで、イオン性化合物が共役化合物の場合、イオン性化合物である共役化合物の分子量は200未満である。);金属複合体組成物と、分子量200以上の共役化合物とを含有する混合物等。イオン性化合物は、下記式(hh−1)で表される構造を有する化合物であってもよい。
【化1】


(式中、Mm’+は、金属カチオンを表す。X’n’−はアニオンを表す。a及びbはそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。Mm’+及びX’n’−の各々は複数存在する場合には、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属複合体組成物及びその混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属と有機化合物を含む材料は、電子素子の電極の材料として有用であることから、近年、注目されている。金属と有機化合物を含む材料として、金属と有機化合物を複合化した金属複合体や、金属複合体と有機化合物を混合した組成物が挙げられる。具体的には、この金属複合体として、共役化合物を吸着させた銀ナノワイヤーをメタノール等の極性溶媒に分散させた分散液を用いて、塗布法により電極を作製し、それを用いて発光素子を作製することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−261102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の発光素子は、発光輝度が必ずしも十分ではない。
【0005】
そこで、本発明は、発光輝度の更なる向上を可能にする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は第一に、(1)分子量200以上の共役化合物がアスペクト比1.5以上の金属ナノ構造体に吸着されてなる金属複合体、及び、(2)イオン性化合物(「塩」といわれることもある。)を含む、金属複合体組成物を提供する。
ここで、分子量200以上の共役化合物としては、下記式(I)で表される基若しくは下記式(II)で表される繰り返し単位、又は、これらの両方を有する化合物が好ましい。
【0007】
【化1】

(式中、
Arは(n+1)価の芳香族基を表し、Rは直接結合又は(m+1)価の基を表し、Xはヘテロ原子を含む基を表す。
及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。
、X及びmの各々は複数存在する場合には、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【0008】
【化2】

(式中、
Arは(n+2)価の芳香族基を表し、Rは直接結合又は(m+1)価の基を表し、Xはヘテロ原子を含む基を表す。
及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。
、X及びmの各々は複数存在する場合には、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【0009】
本発明は第二に、前記金属複合体組成物と分子量200以上の共役化合物とを含有する混合物を提供する。
【0010】
本発明は第三に、前記金属複合体組成物を含む薄膜、配線材料、電極材料及び電子素子を提供する。
【0011】
本発明は第四に、基板と、該基板上に形成された前記金属複合体組成物を含む層とを有する積層構造体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属複合体組成物及び混合物は、塗布法により電極を作製した場合においても、発光輝度又は光電変換効率に優れた電子素子を作製可能にする。従って、本発明の金属複合体組成物及び混合物は、例えば、塗布電極、透明電極、導電塗料、配線材料、粘着剤、接着剤、導電性塗料、回路、集積回路、電磁波遮断材料、センサー、アンテナ、帯電防止剤、繊維、包装材料、抗菌剤、消臭剤、発熱体、放熱体又は医療用材料として有用である。特に、本発明の金属複合体組成物及び混合物は、導電性及び透明性が優れているため、発光素子、太陽電池及び有機トランジスタ等の電子素子、特に電極の材料として有用である。
また、本発明の発光素子は、陽極以外の層が塗布法により形成されることから、簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について説明する。
【0014】
本発明の金属複合体組成物は、分子量200以上の共役化合物がアスペクト比1.5以上の金属ナノ構造体に吸着されてなる金属複合体、及び、イオン性化合物を含む、金属複合体組成物である。
【0015】
本明細書において、「吸着」とは、化学吸着または物理吸着を意味し、吸着が強いので、化学吸着が好ましい。化学吸着においては、吸着質と吸着媒の間で化学結合(共有結合、イオン結合、金属結合、配位結合又は水素結合等)を伴う。ここで、吸着質は共役化合物であり、吸着媒は金属ナノ構造体である。一方、物理吸着においては、吸着質と吸着媒の間に化学結合は認められず、物理的なファンデルワールス力等によって起こる可逆的な吸着となる。
【0016】
金属ナノ構造体のアスペクト比とは、(最も長い径)/(最も短い径)の比率を意味し、このアスペクト比に分布がある場合には平均値とする。ここで言う平均値とは、算術平均値である。銀ナノ構造体等の金属ナノ構造体についての最も長い径および最も短い径は、走査型電子顕微鏡による写真で確認することができる。
【0017】
アスペクト比は、陰極の導電性が向上するので、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、更に好ましくは10以上であり、特に好ましくは50以上であり、とりわけ好ましくは100以上であり、殊更に好ましくは300以上である。
アスペクト比が1.5未満の場合、導電パスの形成が不十分となり導電性が低下するおそれがある。
アスペクト比の上限は、特に限定されない。アスペクト比は、分散性が良好となるので、好ましくは10以下であり、より好ましくは10以下であり、更に好ましくは10以下であり、特に好ましくは10以下であり、とりわけ好ましくは10以下である。
【0018】
金属ナノ構造体とは、ナノ単位の径を有する金属又は金属化合物である。金属化合物とは、炭素原子又はヘテロ原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子)で修飾された金属をいい、金属酸化物が例示できる。金属酸化物としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及び、それらを含む複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、スズアンチモン酸化物、NESA等が挙げられ、ITO、IZOが好ましい。金属ナノ構造体の最も短い径は、1nm以上、1000nm未満である。合成が容易であるので、好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、更に好ましくは300nm以下である。
【0019】
金属ナノ構造体の最も長い径は、通常、1000nm以上であるが、分散性が良好であるので、好ましくは1300nm以上、より好ましくは1600nm以上、更に好ましくは2000nm以上である。この最も長い径は、通常、250000nm以下である。
【0020】
金属ナノ構造体の形状としては、例えば、異方性ナノ粒子、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノシート等が挙げられるが、合成が容易となるので、ナノロッド、ナノワイヤーが好ましい。
【0021】
金属ナノ構造体を構成する金属としては、金属としての安定性が優れるので、遷移金属が好ましく、周期表第11族金属がより好ましく、銀が更に好ましい。これらの金属は2種類以上含まれていてもよく、酸化されていてもよい。
【0022】
本発明において、アスペクト比の異なる2種類以上の金属ナノ構造体を混合して用いてもよい。
【0023】
アスペクト比の異なる金属ナノ構造体が2種類以上含まれる場合、そのアスペクト比がアスペクト比の平均値の半分より小さい金属ナノ構造体の割合は、金属ナノ構造体の全量を100重量部としたとき、50重量部以下が好ましく、40重量部以下がより好ましく、30重量部以下が更に好ましく、10重量部以下が特に好ましい。
【0024】
共役化合物の分子量は、金属複合体の安定性が優れるので、好ましくは3.0×10〜1.0×10であり、より好ましくは5.0×10〜1.0×10であり、更に好ましくは1.0×10〜5.0×10である。共役化合物の分子量が200未満の場合、金属複合体に吸着した共役化合物が蒸発等で分離し易くなることがある。
【0025】
本発明における金属ナノ構造体は、液相法や気相法等の公知の方法で製造することができ、また市販品をそのまま使用することもできる。より具体的には、金ナノ構造体の製造方法としては特開2006−233252号公報等に記載の方法が挙げられ、銀ナノ構造体の製造方法としては、Xia,Y.et al.,Chem.Mater.(2002)、14、4736−4745及びXia,Y.et al.,Nano Letters(2003)3、955−960、Xia,Y.et al.,J.Mater.Chem.,(2008)18、437−441等に記載の方法が挙げられる。銅ナノ構造体の製造方法としては特開2002−266007号公報等に記載の方法が挙げられ、コバルトナノ構造体の製造方法としては特開2004−149871号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0026】
本明細書において、共役化合物とは、共役系を有する化合物を意味し、多重結合(二重結合又は三重結合)、非共有電子対(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はリン原子が有する非共有電子対)、空のp軌道(例えば、ホウ素原子が有する空のp軌道)又はシグマ結合性のd軌道(例えば、ケイ素原子が有するシグマ結合性のd軌道)が1つの単結合を挟んで連なっている系を含む化合物が好ましい。
この共役化合物は、電子輸送性が良好となるので、

{(多重結合、非共有電子対、空のp軌道又はシグマ結合性のd軌道が一つの単結合を挟んで連なっている系に含まれる母骨格若しくは主鎖上の原子の数)/(母骨格若しくは主鎖上の全原子の個数)}×100%

で計算される値が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましく、該共役化合物が芳香族化合物であることがとりわけ好ましい。また、共役化合物は、金属複合体の安定性が良好であるので、ヘテロ原子を含むことが好ましい。
【0027】
共役化合物としては、下記式(I)で表される基若しくは下記式(II)で表される繰り返し単位、又は、これらの両方を有する化合物が好ましい。
【0028】
【化3】

(式中、
Arは(n+1)価の芳香族基を表し、Rは直接結合又は(m+1)価の基を表し、Xはヘテロ原子を含む基を表す。
及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。
、X及びmの各々は複数存在する場合には、それらは各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【0029】
【化4】

(式中、
Arは(n+2)価の芳香族基を表し、
は直接結合又は(m+1)価の基を表し、Xはヘテロ原子を含む基である。m及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。
、X及びmの各々は複数存在する場合には、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【0030】
式(I)中、Arで表される(n+1)価の芳香族基は、置換基を有していてもよい芳香環を有する化合物から環を構成する炭素原子に直接結合する(n+1)個の水素原子を取り除いた残りの原子団(残基)を意味する。
【0031】
式(II)中、Arで表される(n+2)価の芳香族基は、置換基を有していてもよい芳香環を有する化合物から環を構成する炭素原子に直接結合する(n+2)個の水素原子を取り除いた残りの原子団(残基)を意味する。
【0032】
芳香環を有する化合物としては、例えば、下記式(1)〜(95)で表される化合物が挙げられ、合成が容易であるので、下記式(1)〜(12)、(15)〜(22)、(24)〜(31)、(37)〜(40)、(43)〜(46)、(49)、(50)、(59)〜(76)のいずれか一つで表される化合物が好ましく、下記式(1)〜(3)、(8)〜(10)、(15)〜(21)、(24)〜(31)、(37)、(39)、(43)〜(45)、(49)、(50)、(59)〜(76)のいずれか一つで表される化合物がより好ましく、下記式(1)〜(3)、(8)、(10)、(15)、(17)、(21)、(24)、(30)、(59)、(60)及び(61)のいずれか一つで表される化合物が更に好ましく、下記式(1)〜(3)、(8)、(10)及び(59)のいずれか一つで表される化合物が特に好ましく、下記式(1)、(8)又は(59)で表される化合物がとりわけ好ましい。
【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
【化8】

【0037】
これらの芳香環を有する化合物における水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
置換基としては、例えば、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、メルカプトカルボニル基、メルカプトチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、シアノ基、アミノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルアミノ基、ホスフィノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルホスフィノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルホスフィノ基、式:−P(=O)(OH)で表される基、スルホ基、1価の複素環基、ハロゲン原子、ホルミル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ニトロ基、式:−OP(=O)(OH)で表される基、カルバモイル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルバモイル基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルカルバモイル基、式:−C(=S)NRで表される基、式:−B(OH)で表される基、式:−BRで表される基、ホウ酸エステル残基、式:−Si(OR)で表される基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニル基、スルフィノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルフィノ基、式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NRで表される基、式:−SC(=O)NRで表される基、式:−OC(=S)NRで表される基、式:−SC(=S)NRで表される基、式:−NRC(=O)NRで表される基、式:−NRC(=S)NRで表される基、2個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基、2個以上のエステル結合を有するヒドロカルビル基、2個以上のアミド結合を有するヒドロカルビル基、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CSMで表される基、式:−OMで表される基、式:−COMで表される基、式:−NMで表される基、式:−NHMで表される基、式:−NRMで表される基、式:−POMで表される基、式:−OP(=O)(OM)で表される基、式:−P(=O)(OM)で表される基、式:−C(=O)NMで表される基、式:−C(=O)NHMで表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NHMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NMで表される基、式:−B(OM)で表される基、式:−BRMで表される基、式:−B(OR)Mで表される基、式:−SOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NMで表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NMで表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NMで表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NMで表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NMで表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NMで表される基、式:−NRC(=S)NRMで表される基、式:−NRM’で表される基、式:−PRM’で表される基、式:−ORM’で表される基、式:−SRM’で表される基、式:−IRM’で表される基、及びカチオン化された窒素原子を複素環内に有する複素環基が挙げられる。式中、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基であり、以下、同じである。)を表し、Mは、金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表し、M’は、アニオンを表す。また、これらの置換基は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子や窒素原子等とともに環を形成してもよい。
【0038】
前記の置換基のうち好ましい例としては、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、シアノ基、アミノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルアミノ基、式:−OP(=O)(OH)で表される基、式:−P(=O)(OH)で表される基、スルホ基、1価の複素環基、式:−COMで表される基、式:−POMで表される基、式:−SOMで表される基、及び式:−NRM’で表される基が挙げられ、
より好ましい例としては、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、式:−P(=O)(OH)で表される基、スルホ基、1価の複素環基、式:−COMで表される基、式:−POMで表される基、及び式:−NRM’で表される基が挙げられ、更に好ましい例としては、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいピリジル基、及び式:−COMで表される基が挙げられる。
【0039】
本明細書において、所定の基が「置換基を有していてもよい」又は「置換されていてもよい」とは、所定の基が非置換の基であること、又は所定の基が置換されていることを意味する。「非置換の」とは、その直後に記載された基の水素原子が置換基で置換されていないことを意味する。基の直前に付されている「置換」とは、その基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていることを意味する。
該置換基としては、特に説明がない限り、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基及び炭素原子数1〜30のヒドロカルビルオキシ基が挙げられ、これらの中でも、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基及び炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基及び炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基がより好ましく、ハロゲン原子及び炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基がさらに好ましく、ハロゲン原子及び炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基が特に好ましい。
ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基の例は、それぞれ、後述するアルキル基及びアルキルオキシ基の例と同様である。所定の基が置換されている場合における置換基の個数は、通常、1〜4個であり、好ましくは1〜3個であり、より好ましくは1〜2個である。
【0040】
置換基であるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0041】
置換基である置換基を有していてもよいヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1〜50のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素原子数3〜50の環状飽和ヒドロカルビル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素原子数2〜50のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素原子数6〜50のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数7〜50のアラルキル基が挙げられる。
中でも、炭素原子数1〜50のアルキル基又は炭素原子数6〜50のアリール基が好ましく、炭素原子数1〜12のアルキル基又は炭素原子数6〜18のアリール基がより好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基がさらに好ましい。
【0042】
置換基である、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基、及び置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルオキシ基とは、各基を構成する水素原子の一部又は全部(特には1〜3個、とりわけ1個又は2個)が前記ヒドロカルビル基で置換されたチオ基、チオカルボニル基、ジチオ基、オキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、及びカルボニルオキシ基である。
【0043】
置換基である、置換基を有していてもよいヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルホスフィノ基、及び置換基を有していてもよいジヒドロカルビルホスフィノ基とは、各基を構成する水素原子の一個又は二個が前記ヒドロカルビル基で置換されたアミノ基、及びホスフィノ基である。
【0044】
置換基である、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルバモイル基、及び置換基を有していてもよいジヒドロカルビルカルバモイル基とは、各基を構成する水素原子の一個又は二個が前記ヒドロカルビル基で置換されたカルバモイル基である。
【0045】
置換基である式:−BRで表される基及び式:−Si(OR)で表される基としては、前記Rが水素原子又は前記ヒドロカルビル基である基であり、ヒドロカルビル基の好ましい例は前述と同じである。
【0046】
置換基であるホウ酸エステル残基としては、例えば、以下の式のいずれか一つで表される基が挙げられる。
【0047】
【化9】

【0048】
置換基である、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニル基、及び置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルフィノ基とは、各基を構成する水素原子の一個又は二個が前記ヒドロカルビル基で置換されたスルホ基、スルホニル基、及びスルフィノ基である。
【0049】
置換基である、式:−C(=S)NRで表される基、式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NRで表される基、式:−SC(=O)NRで表される基、式:−OC(=S)NRで表される基、式:−SC(=S)NRで表される基、式:−NRC(=O)NRで表される基及び式:−NRC(=S)NRで表される基としては、前記Rが水素原子又は前記ヒドロカルビル基である基であり、ヒドロカルビル基の好ましい例は前述と同じである。
【0050】
置換基である1価の複素環基は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子を1個取り除いた残りの原子団である。複素環式化合物の複素環の例としては、例えば、
ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、アザジアゾール環等の単環式複素環;単環式芳香環から選ばれる2個以上の環が縮合した縮合多環式複素環;2個の複素環、又は1個の複素環と1個の芳香環とを、メチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基で橋かけした構造を有する有橋多環式芳香環等が挙げられ、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環又は1,3,5−トリアジン環が好ましく、ピリジン環又は1,3,5−トリアジン環がより好ましい。
【0051】
置換基である2個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基としては、例えば、以下の式のいずれか一つで表される基が挙げられる。
【0052】
【化10】

(式中、R’は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を表し、複数あるR’は同一でも異なっていてもよい。nは2以上の整数を表す。)
【0053】
置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基(「ヒドロカルビレン基」と言われることもある。)としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、ドデカメチレン基、これらの基の中の少なくとも1個の水素原子を置換基で置換した基等の、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜50の飽和ヒドロカーボンジイル基;エテニレン基、プロペニレン基、3−ブテニレン基、2−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基、これらの基の中の少なくとも1個の水素原子を置換基で置換した基等の、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜50のアルケニレン基、及び、エチニレン基を含む、置換基を有し又は有さない炭素原子数2〜50の不飽和ヒドロカーボンジイル基;シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基、これらの基の中の少なくとも1個の水素原子を置換基で置換した基等の、置換基を有していてもよい炭素原子数3〜50の飽和環状ヒドロカーボンジイル基;1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基、これらの基の中の少なくとも1個の水素原子を置換基で置換した基等の、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜50のアリーレン基が挙げられる。エーテル結合を有するヒドロカルビル基が複数ある場合は、これらの基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0054】
置換基である2個以上のエステル結合を有するヒドロカルビル基としては、例えば、以下の式のいずれか一つで表される基が挙げられる。
【0055】
【化11】

(式中、R’及びnは、前述と同様の意味である。)
【0056】
置換基である2個以上のアミド結合を有するヒドロカルビル基としては、例えば、以下の式で表される基が挙げられる。
【0057】
【化12】

(式中、R’及びnは、前述と同様の意味である。)
【0058】
式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CSMで表される基、式:−OMで表される基、式:−COMで表される基、式:−NMで表される基、式:−NHMで表される基、式:−NRMで表される基、式:−POMで表される基、式:−OP(=O)(OM)で表される基、式:−P(=O)(OM)で表される基、式:−C(=O)NMで表される基、式:−C(=O)NHMで表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NHMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NMで表される基、式:−B(OM)で表される基、式:−BRMで表される基、式:−B(OR)Mで表される基、式:−SOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NMで表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NMで表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NMで表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NMで表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NMで表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NMで表される基及び式:−NRC(=S)NRMで表される基において、Mは、金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表し、Rは、水素原子、又は前述した置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。
【0059】
金属カチオンとしては、1価、2価又は3価のイオンが好ましく、例えば、Li、Na、K、Cs、Be、Mg、Ca、Ba、Ag、Al、Bi、Cu、Fe、Ga、Mn、Pb、Sn、Ti、V、W、Y、Yb、Zn及びZr等の金属のイオンが挙げられ、Li、Na、K又はCsのイオンが好ましい。
【0060】
アンモニウムカチオンが有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0061】
式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CSMで表される基、式:−OMで表される基、式:−COMで表される基、式:−NMで表される基、式:−NHMで表される基、式:−NRMで表される基、式:−POMで表される基、式:−OP(=O)(OM)で表される基、式:−P(=O)(OM)で表される基、式:−C(=O)NMで表される基、式:−C(=O)NHMで表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NHMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NMで表される基、式:−B(OM)で表される基、式:−BRMで表される基、式:−B(OR)Mで表される基、式:−SOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NMで表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NMで表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NMで表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NMで表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NMで表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NMで表される基、及び式:−NRC(=S)NRMで表される基において、基全体の電荷が中和されるように、M以外の別の金属カチオンが伴ってもよく、また、アニオンが伴ってもよい。このとき、別の金属カチオンは、前述した金属カチオンと同様である。
【0062】
前記アニオンとしては、例えば、F、Cl、Br、I、OH、ClO、ClO、ClO、ClO、SCN、CN、NO、SO2−、HSO、PO3−、HPO2−、HPO、BF、PF、CHSO、CFSO、[(CFSON]、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオン、8−キノリノラトアニオン、2−メチル−8−キノリノラトアニオン及び2−フェニル−8−キノリノラトアニオン等が挙げられる。
【0063】
式:−NRM’で表される基、式:−PRM’で表される基、式:−ORM’で表される基、式:−SRM’で表される基、及び式:−IRM’で表される基において、Rは、水素原子、又は前述した置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、M’は、アニオンを表す。このアニオンとしては、上述のとおりである。
【0064】
Mで示される置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンは、カチオン化された窒素原子を複素環内に有するアンモニウムカチオンを含み、その例としては以下の式(n−1)〜(n−13)のいずれか一つで表される複素環から水素原子を取り除いた残りの原子団が挙げられる。これらの複素環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、Ar及びArについて上述したものが挙げられる。
合成が容易となるので、式(n−1)、(n−5)、(n−7)、(n−9)、(n−11)又は(n−13)で表される複素環が好ましく、式(n−1)、(n−5)、(n−11)又は(n−13)で表される複素環がより好ましく、式(n−1)、(n−5)又は(n−13)で表される複素環が更に好ましい。
【0065】
【化13】

(式中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、M’は、アニオンを表す。R及びM’は上述のとおりである。)
【0066】
式(I)及び(II)中、X及びXで表されるヘテロ原子を含む基は、吸着性及び溶媒への分散性が良好であるので、硫黄原子、酸素原子、窒素原子及びリン原子からなる群から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を含む1価の基が好ましく、メルカプト基、メルカプトカルボニル基、メルカプトチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、シアノ基、アミノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルアミノ基、ホスフィノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルホスフィノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルホスフィノ基、式:−P(=O)(OH)で表される基、スルホ基及び1価の複素環基からなる群(この群を「グループ1a」とする。)から選択される1価の基がより好ましく、メルカプト基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、シアノ基、アミノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルアミノ基、式:−P(=O)(OH)で表される基、スルホ基又は1価の複素環基が更に好ましく、メルカプト基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、式:−P(=O)(OH)で表される基、スルホ基又は1価の複素環基が特に好ましく、メルカプト基、カルボキシル基又はピリジル基がとりわけ好ましい。これらの基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0067】
また、吸着性及び溶媒への分散性の観点から好ましい基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ニトロ基、式:−OP(=O)(OH)で表される基、カルバモイル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルバモイル基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルカルバモイル基、式:−C(=S)NRで表される基、式:−B(OH)で表される基、式:−BRで表される基、ホウ酸エステル残基、式:−Si(OR)で表される基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニル基、スルフィノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルフィノ基、式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NRで表される基、式:−SC(=O)NRで表される基、式:−OC(=S)NRで表される基、式:−SC(=S)NRで表される基、式:−NRC(=O)NRで表される基、及び式:−NRC(=S)NRで表される基からなる群(この群を「グループ1b」とする。)から選択される1価の基も挙げられる。
吸着性及び溶媒への分散性の観点から好ましい基が属するこれら2つの群(グループ1a及びグループ1b)を、総称してグループ1と呼ぶ。
【0068】
及びXで表されるヘテロ原子を含む基は、金属複合体の導電性及び電荷注入性が優れるので、2個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基、2個以上のエステル結合を有するヒドロカルビル基、2個以上のアミド結合を有するヒドロカルビル基、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CSMで表される基、式:−OMで表される基、式:−COMで表される基、式:−NMで表される基、式:−NHMで表される基、式:−NRMで表される基、式:−POMで表される基、式:−OP(=O)(OM)で表される基、式:−P(=O)(OM)で表される基、式:−C(=O)NMで表される基、式:−C(=O)NHMで表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NHMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NMで表される基、式:−B(OM)で表される基、式:−BRMで表される基、式:−B(OR)Mで表される基、式:−SOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NMで表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NMで表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NMで表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NMで表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NMで表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NMで表される基、式:−NRC(=S)NRMで表される基、式:−NRM’で表される基、式:−PRM’で表される基、式:−ORM’で表される基、式:−SRM’で表される基、式:−IRM’で表される基、及びカチオン化された窒素原子を複素環内に有する複素環基からなる群(この群を「グループ2」とする。)から選択される1価の基が好ましい。これらの基は互いに結合して環を形成してもよい。中でも、式:−OMで表される基、式:−COMで表される基、式:−POで表される基、式:−SOMで表される基、又は式:−NRM’で表される基がより好ましく、式:−COMで表される基、式:−POで表される基、式:−SOMで表される基、又は式:−NRM’で表される基が更に好ましく、式:−COMで表される基、式:−POで表される基、又は式:−NRM’で表される基が特に好ましく、式:−COMで表される基がとりわけ好ましい。
【0069】
ここで、M、R及びM’は前述と同様の意味である。
【0070】
式(I)中、Rで表される(m+1)価の基としては、例えば、前記置換基を有していてもよいヒドロカルビル基又は前記1価の複素環基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、式−O−(R’O)−で表される基(m=1の場合)が挙げられる。
好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、置換基を有していてもよいアリール基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基で置換されたアルキル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、又は1価の複素環基で置換されたアリール基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、より好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、フェニル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたアルキル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、又はトリアジニル基で置換されたアリール基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、更に好ましくは、へキシル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、フェニル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、又はトリアジニル基で置換されたフェニル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団である。
【0071】
式(II)中、Rで表される(m+1)価の基としては、例えば、前記置換基を有していてもよいヒドロカルビル基又は前記1価の複素環基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、式−O−(R’O)−で表される基(m=1の場合)が挙げられる。好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、置換基を有していてもよいアリール基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基で置換されたアルキル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、又は1価の複素環基で置換されたアリール基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、より好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、フェニル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたアルキル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、又はトリアジニル基で置換されたアリール基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、更に好ましくは、へキシル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、フェニル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団、又はトリアジニル基で置換されたフェニル基からm個の水素原子を取り除いた残りの原子団である。
【0072】
前記式中、R’の定義、具体例及び好ましい例は、前記の通りである。mは、1以上の整数を表し、1〜20が好ましく、3〜20がより好ましく、3〜15が更に好ましく、6〜10がとりわけ好ましい。
【0073】
共役化合物は、前記グループ1から選ばれる基及び前記グループ2から選ばれる基の各々を少なくとも1種類ずつ有することが好ましい。
【0074】
共役化合物は、前記グループ1から選ばれる基又はグループ1から選ばれる基を有する繰り返し単位と、前記グループ2から選ばれる基又はグループ2から選ばれる基を有する繰り返し単位と、を少なくとも1つずつ有することが好ましい。
【0075】
特に、共役化合物は、前記グループ1から選ばれる基を有する繰り返し単位と、前記グループ2から選ばれる基を有する繰り返し単位と、を少なくとも1つずつ有することが好ましい。
【0076】
本発明の共役化合物の具体例としては、以下の式(a−1)〜(a−35)、(b−1)〜(b−39)、(c−1)〜(c−37)、(d−1)〜(d−47)、(e−1)〜(e−16)、(f−1)〜(f−35)、(g−1)〜(g−24)で表される繰り返し単位(2価の基)からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を有する共役化合物が挙げられる。これらの式中、nは2以上の整数を表し、2〜30の整数が好ましく、2〜20の整数がより好ましく、6〜10の整数が更に好ましい。nは1以上の整数を表し、1〜10の整数が好ましく、2〜6の整数が更に好ましい。これらの式中、Rは水素原子、又は前述した置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が更に好ましい。
【0077】
【化14】

【0078】
【化15】

【0079】
【化16】

【0080】
【化17】

【0081】
【化18】

【0082】
【化19】

【0083】
【化20】

【0084】
【化21】

【0085】
共役化合物としては、吸着性、溶媒への分散性、導電性及び電荷注入性が良好であるので、式(a−1)〜(a−7)、(a−10)〜(a−19)、(a−21)〜(a−27)、(a−29)〜(a−35)、(b−1)〜(b−6)、(b−9)、(b−11)〜(b−16)、(b−22)、(b−31)〜(b−39)、(c−1)〜(c−15)、(c−17)、(c−20)〜(c−22)、(c−24)〜(c−27)、(c−29)、(c−30)〜(c−37)、(d−1)〜(d−6)、(d−9)、(d−11)〜(d−16)、(d−22)、(d−31)〜(d−39)、(d−41)〜(d−47)、(e−1)〜(e−3)、(e−5)〜(e−16)、(f−1)〜(f−6)、(f−9)、(f−11)〜(f−16)、(f−22)、(f−31)〜(f−35)、(g−1)〜(g−13)、(g−16)〜(g−24)で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を有する共役化合物が好ましく、式(a−1)〜(a−3)、(a−5)、(a−7)、(a−10)、(a−12)、(a−14)〜(a−19)、(a−21)〜(a−27)、(a−29)〜(a−33)、(b−1)〜(b−6)、(b−9)、(b−11)、(b−13)、(b−15)、(b−16)、(b−22)、(b−34)〜(b−39)、(c−1)〜(c−15)、(c−17)、(c−20)〜(c−22)、(c−24)〜(c−27)、(c−29)〜(c−32)、(c−34)〜(c−37)、(d−1)〜(d−6)、(d−9)、(d−11)、(d−13)、(d−15)、(d−16)、(d−22)、(d−31)〜(d−39)、(d−41)、(d−42)、(d−47)、(e−1)、(e−5)〜(e−8)、(e−11)、(e−12)、(e−15)、(e−16)、(f−1)〜(f−6)、(f−9)、(f−11)、(f−13)、(f−15)、(f−16)、(f−22)、(f−31)、(f−34)、(f−35)、(g−1)〜(g−3)、(g−6)〜(g−13)、(g−16)〜(g−24)で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を有する共役化合物がより好ましく、式(a−1)、(a−3)、(a−7)、(a−10)、(a−14)、(a−15)、(a−17)、(a−19)、(a−22)、(a−23)、(a−25)〜(a−27)、(a−30)、(a−31)、(b−1)、(b−2)、(b−5)、(b−6)、(b−9)、(b−11)、(b−13)、(b−22)、(b−34)〜(b−39)、(c−1)〜(c−4)、(c−13)(c−15)、(c−20)〜(c−22)、(c−25)〜(c−27)、(c−30)〜(c−32)、(d−1)、(d−2)、(d−5)、(d−6)、(d−9)、(d−11)、(d−13)、(d−22)、(d−31)〜(d−38)、(d−41)、(d−42)、(d−47)、(e−1)、(e−5)、(e−7)、(e−8)、(e−11)、(e−12)、(e−15)、(e−16)、(f−1)、(f−2)、(f−5)、(f−6)、(f−9)、(f−11)、(f−13)、(f−22)、(f−31)、(f−34)、(f−35)、(g−1)〜(g−3)、(g−6)、(g−7)、(g−9)〜(g−13)、(g−18)〜(g−21)で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を有する共役化合物が更に好ましく、式(a−3)、(a−14)、(a−22)、(a−17)、(a−25)、(a−30)、(a−31)、(b−6)、(b−22)、(b−34)〜(b−37)、(b−39)、(c−1)〜(c−4)、(c−15)、(c−22)、(c−27)、(d−6)、(d−22)、(d−34)〜(d−38)、(d−41)、(d−42)、(e−1)、(e−5)、(e−8)、(e−12)、(e−15)、(f−6)、(f−34)、(g−2)、(g−6)、(g−7)、(g−10)〜(g−12)、(g−18)〜(g−21)で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を有する共役化合物が特に好ましく、式(b−6)、(b−34)、(b−35)、(b−37)、(c−1)〜(c−4)、(d−6)、(d−34)、(d−36)〜(d−38)、(d−41)、(d−42)、(f−6)、(f−34)、(g−2)、(g−10)〜(g−12)で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を有する共役化合物がとりわけ好ましく、式(b−6)、(b−34)、(b−37)、(c−1)〜(c−4)、(d−38)、(d−41)及び(d−42)で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を有する共役化合物が殊更に好ましい。
【0086】
式(I)で表される基としては、例えば、前記の繰り返し単位の例において、2つの結合のうちの一つを水素原子に置き換えてなる基が挙げられる。
【0087】
共役化合物は、式(I)で表される基、若しくは式(II)で表される繰り返し単位、又はこれらの両方を有する化合物である場合には、更に、式(II)で表される繰り返し単位とは異なる他の繰り返し単位を有していてもよい。
【0088】
この他の繰り返し単位としては、例えば、前記芳香環を有する化合物(上記式(1)〜(95))から環を構成する炭素原子に直接結合する2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、前記ヒドロカルビル基から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、前記1価の複素環基から環を構成する炭素原子に直接結合する1個の水素原子を取り除いた残りの原子団が挙げられ、前記芳香環を有する化合物から環を構成する炭素原子に直接結合する2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、又は前記ヒドロカルビル基から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団が好ましく、前記芳香環を有する化合物から環を構成する炭素原子に直接結合する2個の水素原子を取り除いた残りの原子団がより好ましい。これらの原子団は置換基を有していてもよい。式(II)で表される繰り返し単位は、下記式(h−1)〜(h−19)のいずれか一つで表される2価の基により結合していてもよい。
【0089】
【化22】

(式中、Rは、水素原子、又は前述した置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)
【0090】
前記他の繰り返し単位の原子団が有していてもよい置換基としては、前記芳香環を有する化合物が有していてもよい置換基と同じ基が挙げられる。
【0091】
前記他の繰り返し単位を有する場合、共役化合物の共役を妨げない範囲で導入することが好ましい。
【0092】
共役化合物の態様としては、次の1.〜3.が好ましい。
1.式(I)で表される基におけるArの結合手が水素原子又はハロゲン原子と結合した化合物
2.式(II)で表される繰り返し単位を有する化合物
3.式(II)で表される繰り返し単位に式(I)で表される基が結合した化合物
【0093】
中でも、前記1.又は2.の態様の共役化合物がより好ましく、前記2.の態様の共役化合物が更に好ましい。
【0094】
本発明の共役化合物は、ドーパントをドープして使用することができる。このドーパントは、共役化合物100重量部あたり、1〜50重量部の割合で用いることが好ましい。
【0095】
ドーパントとしては、例えば、ハロゲン、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、ニトリル化合物、有機金属化合物、アルカリ金属及びアルカリ土類金属等が挙げられる。
ハロゲンとしては、例えば、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられ、ハロゲン化合物としては、例えば、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素及びフッ化ヨウ素等が挙げられる。ルイス酸としては、例えば、五フッ化リン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、三フッ化硼素、三塩化硼素、三臭化硼素及び無水硫酸等が挙げられる。プロトン酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼フッ化水素酸、フッ化水素酸及び過塩素酸等の無機酸と、カルボン酸及びスルホン酸等の有機酸が挙げられる。有機カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸及び環状脂肪族カルボン酸のいずれであってもよく、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸及びトリフエニル酢酸が挙げられる。有機スルホン酸としては、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸及び環状脂肪族スルホン酸のいずれであってもよく、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸及びアリルスルホン酸等の、分子内に1つのスルホ基を有するスルホン酸化合物と、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸及びエチルナフタレンジスルホン酸等の、分子内にスルホ基を複数個有するスルホン酸化合物が挙げられる。
また、本発明に用いるドーパントとして、有機酸はポリマー酸であってもよい。ポリマー酸としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びポリイソプレンスルホン酸が挙げられる。ニトリル化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン及びテトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。有機金属化合物の例としては、トリス(4−ブロモフェニル)アンモニウムヘキサクロロアンチモネート、ビス(ジチオベンジル)ニッケル、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)亜鉛錯体、及びテトラブチルアンモニウムビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)ニッケル(III)錯体が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K、Rb及びCs等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えば、Be、Mg、Ca、Sr及びBa等が挙げられる。
【0096】
本発明に用いられる金属複合体は、分光学的分析、熱分析、質量分析又は元素分析等により分析を行うことで、吸着している共役化合物を検出することができる。
【0097】
分光学的分析としては、例えば、核磁気共鳴スペクトル法、赤外分光法、ラマン分光法、原子吸収光分析法、アーク放電発光分析法、スパーク放電発光分析法、誘導結合プラズマ発光分析法、X線光電子分光法、蛍光X線分析法、紫外・可視分光法及び蛍光分析法が挙げられる。熱分析としては、例えば、熱重量測定法、示差熱分析及び示差走査熱量測定が挙げられる。質量分析としては、例えば、各種イオン化法を用いた質量分析法が挙げられる。これら分光学的分析、熱分析、質量分析又は元素分析等により分析を行うことで、金属複合体に吸着している共役化合物を検出することができる。
【0098】
本発明に用いられる金属複合体は、X線光電子分光法により求められる該金属複合体中に存在する一つ以上の原子のピークが、分子量200以上の共役化合物の原子由来のピークを含むことが好ましい。ここで、X線光電子分光法に求められる原子のピーク位置は、金属複合体を形成する金属ナノ構造体の金属元素のピーク位置を基準とする。例えば金属ナノ構造体が銀ナノ構造体の場合、Ag3dのピーク位置を基準とする。また、分子量200以上の共役化合物の原子由来のピークとは、金属ナノ構造体中及び金属ナノ構造体前駆体中に存在する原子以外の原子由来のピークである。ここで、金属ナノ構造体前駆体とは、金属ナノ構造体に、分子量200以上の共役化合物以外の化合物が吸着されてなる化合物を意味する。金属ナノ構造体前駆体の例としては、ポリビニルピロリドンが吸着した金属ナノ構造体が挙げられる。
【0099】
金属複合体をX線光電子分光法による測定に供する場合には、該金属複合体を、その表面に弱く付着している分子量200以上の共役化合物が溶解可能な溶媒及び金属ナノ構造体に吸着した他の化合物が溶解可能な溶媒により、5回以上洗浄した後に用いる。洗浄は、金属複合体に各種溶媒を添加した後、攪拌、振盪、超音波分散、遠心分離、上澄み除去、再分散、透析、ろ過及び加熱等の処理を行うことにより実施することができる。
【0100】
本発明に用いられる共役化合物は、大気中において光電子分光装置により求めた最高占有分子軌道(以下、「HOMO」と言うことがある。)の軌道エネルギーが、通常、−4.5eV以下であり、好ましくは−4.8eV以下であり、より好ましくは−5.0eV以下であり、更に好ましくは−5.2eV以下であり、特に好ましくは−5.3eV以下である。HOMOの測定方法は、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0101】
最高占有分子軌道の軌道エネルギーは、大気中において光電子分光装置により求めた共役化合物のイオン化ポテンシャルの値に、−(マイナス)を付けた値である。
【0102】
本発明に用いられる共役化合物は、最低非占有分子軌道(以下、「LUMO」と言うことがある。)の軌道エネルギーが、通常、−3.5eV以上であり、好ましくは−3.2eV以上、より好ましくは−2.9eV以上、更に好ましくは−2.8eV以上、とりわけ好ましくは−2.7eV以上である。
【0103】
最低非占有分子軌道の軌道エネルギーは、紫外・可視・近赤外分光装置から得られる吸収スペクトルの長波長側の吸収端の値から求められる、最高占有分子軌道の軌道エネルギー(eV)と最低非占有分子軌道の軌道エネルギー(eV)との差の値と、前記最高占有分子軌道の軌道エネルギー(eV)の値を足すことで求めることができる。最高占有分子軌道の軌道エネルギー(eV)と最低非占有分子軌道の軌道エネルギー(eV)との差の値の測定方法は、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0104】
本発明に用いられる金属複合体は、例えば、アスペクト比が1.5以上の金属ナノ構造体と、分子量200以上の共役化合物とを溶媒中で混合する工程(以下、「混合工程」と言う。)を含む方法で製造される。
【0105】
分子量200以上の共役化合物の存在下で金属ナノ構造体を製造することにより、本発明に用いられる金属複合体を製造することもできる。
【0106】
本発明に用いられる金属複合体を製造する際に用いられる金属ナノ構造体は、高純度のものを使用してもよいし、無機多孔体、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン及びポリアクリル酸等の化合物が吸着したものを用いてもよい。後者の場合には、これらの化合物を分子量200以上の共役化合物で置換すればよい。
【0107】
本発明に用いられる金属複合体を製造する際に用いられる溶媒は、通常、共役化合物を溶解することができ、金属ナノ構造体を溶解しない溶媒である。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ベンゼン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、酢酸、水、プロパノール、ブタノール及びN−メチル−2−ピロリドンが挙げられ、共役化合物の溶解性が良好であるので、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、トルエン、キシレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン、アセトニトリル、プロパノール、ブタノール又はN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0108】
金属複合体の製造方法において、混合工程は、攪拌、振盪若しくは機械的混合、又はこれらの組み合わせにより実施することが好ましい。
【0109】
混合工程に用いることができる機械的混合としては、例えば、一般に用いられている混合攪拌装置、超音波分散機又は超音波洗浄機等を用いた方法が挙げられる。混合攪拌装置としては、圧力式、せん断式、超音波式、ビーズ式及びローター式等のいずれの方式の装置を用いてもよい。
【0110】
金属複合体の製造方法において、混合工程における溶媒中の金属ナノ構造体の濃度は、共役化合物の溶解性と金属ナノ構造体の分散性とが優れるので、混合工程で得られる溶液を100重量部としたとき、金属ナノ構造体は好ましくは0.0001〜75重量部であり、より好ましくは0.001〜50重量部であり、更に好ましくは0.005〜30重量部であり、特に好ましくは0.005〜10重量部である。
【0111】
混合工程における溶媒中の共役化合物の濃度は、共役化合物の溶解性と金属ナノ構造体の分散性とが優れるので、混合工程で得られる溶液を100重量部としたとき、共役化合物は好ましくは0.0001〜75重量部であり、より好ましくは0.001〜50重量部であり、更に好ましくは0.05〜30重量部であり、特に好ましくは0.05〜10重量部である。
【0112】
混合工程の温度は、共役化合物の溶解性と温度安定性とが優れるので、好ましくは−78〜200℃、より好ましくは0〜100℃、更に好ましくは10〜80℃、特に好ましくは20〜60℃である。
【0113】
混合工程の時間は、共役化合物と金属ナノ構造体の親和性とが優れるので、好ましくは1000分以内、より好ましくは1〜1000分、更に好ましくは10〜900分、特に好ましくは30〜800分である。親和性の高い共役化合物と金属ナノ構造体を用いた場合は、混合工程の時間は更に短くなる。
【0114】
金属複合体の製造方法において、混合工程の後に、混合工程で得られた金属複合体を精製する工程(以下、「精製工程」と言う。)を有していてもよい。この精製工程は、超音波分散、遠心分離、上澄み除去、再分散、透析、ろ過、洗浄、加熱及び乾燥等の処理を行うことにより実施することができる。
【0115】
金属ナノ構造体の安定性が十分な場合は、精製工程において溶媒を加え、超音波分散、遠心分離及び上澄み除去の処理を繰り返し行うことが好ましい。
【0116】
金属ナノ構造体の安定性が低い場合は、精製工程において溶媒を加え、ろ過及び/又は透析の処理を繰り返し行うことが好ましい。
【0117】
金属複合体の製造方法において、金属複合体が分散液の状態である場合には、混合工程の後に、遠心分離、ろ過又は蒸留等の方法により、固体の状態の金属複合体を得るための回収工程を有していてもよい。
【0118】
上記の混合工程及び精製工程において、分散安定剤、界面活性剤、粘度調整剤及び腐食防止剤等の添加剤を更に加えてもよい。
【0119】
本発明の金属複合体組成物は、金属複合体の他にイオン性化合物を含む。ここで、イオン性化合物が共役化合物の場合、イオン性化合物である共役化合物の分子量は200未満である。
【0120】
イオン性化合物とは、少なくともカチオンとアニオンから構成される化合物であり、水和水、中性配位子等を含んでいてもよい。中性配位子とは、配位結合可能な孤立電子対を有する非イオン性の化合物であり、イオン性化合物と結合した場合にイオン性化合物の酸化数を変化させない化合物をいう。中性配位子としては、例えば、ピリジン、2,2’−ビピリジル、フェナントロリン、ターピリジン、トリフェニルホスフィン、一酸化炭素及びクラウンエーテルが挙げられる。
【0121】
カチオンとしては、例えば、金属カチオン及び有機カチオンが挙げられ、カチオンの安定性が優れるので、金属カチオンが好ましい。
【0122】
金属カチオンとしては、例えば、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、典型金属カチオン及び遷移金属カチオンが挙げられ、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンが好ましい。
【0123】
アルカリ金属カチオンとしては、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrが挙げられ、Li、Na、K、Rb又はCsが好ましく、Csが更に好ましい。
【0124】
アルカリ土類金属カチオンとしては、例えば、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+が挙げられる。
【0125】
典型金属カチオンとしては、例えば、Zn2+、Cd2+、Hg、Hg2+、Al3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn2+、Sn4+、Pb2+、Pb4+、Bi3+、Al3+、Tl及びTl3+が挙げられる。
【0126】
遷移金属カチオンとしては、例えば、Sc3+、Ti4+、V3+、V5+、Cr2+、Cr3+、Mn2+、Mn3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Ni2+、Ni3+、Cu、Cu2+、Y3+、Zr4+、Nb3+、Nb5+、Mo4+、Mo6+、Ru4+、Rh3+、Pd、Pd2+、Ag、Sb3+、La3+、Ce3+、Ce4+、Eu3+、Hf4+、Ta5+、W6+、Re6+、Os2+、Os4+、Ir4+、Pt2+及びPt4+が挙げられる。
【0127】
有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン等の含窒素芳香環を有するオニウムカチオン;アンモニウムカチオン;及びホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0128】
アニオンとしては、例えば、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO、NO、ClO、ClO、ClO、ClO、CrO2−、HSO、SCN、BF、PF、R(ここで、Rは置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)、RCOO(ここで、Rは置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)、RSO(ここで、Rは置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)、ROCO(ここで、Rは置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)、RSO(ここで、Rは置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)、R(ここで、Rは置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)、B(R(ここで、Rは置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)、CO2−、S2−、SO2−、S2−、PO3−及びO2−が挙げられ、好ましくは、F、Cl、Br、I、OH、NO、BF、PF、R、RCOO、RSO、RCO、RSO、CO2−、SO2−又はPO3−であり、より好ましくは、F、Cl、Br、I、OH、NO、BF、PF、R、RCOO、RSO、CO2−又はSO2−であり、更に好ましくは、F、Cl、Br、I、OH、NO、BF、PF、RCOO、RSO、CO2−又はSO2−であり、特に好ましくは、F、OH、NO、RCOO又はCO2−である。
【0129】
〜Rで表される置換基を有していてもよいヒドロカルビル基におけるヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基及びドコシル基等の炭素原子数が1〜50のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基及びアダマンチル基等の炭素原子数が3〜50の環状飽和ヒドロカルビル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基及び2−ドデセニル基等の炭素原子数が2〜50のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基及び4−フェニルフェニル基等の炭素原子数が6〜50のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基及び6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数が7〜50のアリールアルキル基が挙げられる。中でも、炭素原子数が1〜50のアルキル基又は炭素原子数が6〜50のアリール基が好ましく、炭素原子数が1〜12のアルキル基又は炭素原子数が6〜18のアリール基がより好ましく、炭素原子数が1〜6のアルキル基又は炭素原子数が6〜12のアリール基が更に好ましい。ヒドロカルビル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、メルカプト基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基及びニトロ基等が挙げられ、アミノ基、1価の複素環基、メルカプト基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基が好ましく、アミノ基、ピリジル基、メルカプト基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基がより好ましい。前記置換基が複数個(例えば、1個、2個または3個)存在する場合には、複数個存在する置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0130】
前記置換基であるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、通常、1〜20(環状アルコキシ基の場合は、通常、3〜20)であり、1〜10(環状アルコキシ基の場合は、通常、3〜10)が好ましい。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基及びラウリルオキシ基が挙げられる。前記アルコキシ基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基及び2−メトキシエチルオキシ基が挙げられる。
【0131】
前記置換基であるアリールオキシ基の炭素原子数は、通常、6〜60であり、6〜48が好ましい。前記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基及びペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。
〜C12アルコキシフェノキシ基としては、例えば、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、イソプロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、イソブトキシフェノキシ基、sec−ブトキシフェノキシ基、tert−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基及びラウリルオキシフェノキシ基が挙げられる。
〜C12アルキルフェノキシ基としては、例えば、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、イソブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基及びドデシルフェノキシ基が挙げられる。
【0132】
前記置換基である置換アミノ基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基からなる群から選択される1種以上の基で置換されたアミノ基が挙げられる。置換アミノ基の炭素原子数は、通常、1〜60であり、2〜48が好ましい。前記置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基、フェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基及び2−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基が挙げられる。
【0133】
前記置換基である1価の複素環基は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子を1個取り除いた残りの原子団である。複素環式化合物の複素環の例としては、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環及びアザジアゾール環等の単環式複素環;単環式複素環から選ばれる2個以上の環が縮合した縮合多環式複素環;2個の複素環、又は1個の複素環と1個の芳香環とを、2価の基(例えば、メチレン基、エチレン基及びカルボニル基等)で橋かけした構造を有する有橋多環式複素環等が挙げられる。複素環としては、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環又は1,3,5−トリアジン環が好ましく、ピリジン環又は1,3,5−トリアジン環がより好ましい。
【0134】
イオン性化合物としては、下記組成式(hh−1)で表される構造を有することが好ましい。
m’+X’n’− (hh−1)
(式中、Mm’+は、金属カチオンを表す。X’n’−はアニオンを表す。a及びbはそれぞれ独立に、1以上の整数である。Mm’+及びX’n’−の各々は複数存在する場合には、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。
【0135】
前記式(hh−1)で表されるイオン性化合物は、水和水、配位子等を含んでいてもよい。
【0136】
前記式(hh−1)中、a及びbは、それぞれ独立に、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1又は2である。但し、a及びbは、前記式(hh−1)で表される化合物の全体としての電荷の偏りがない組み合わせである。
【0137】
前記式(hh−1)中、m’は1以上の整数を表す。Mm’+で表される金属カチオンの定義、具体例及び好ましい例は、前記の通りである。
【0138】
前記式(hh−1)中、n’は1以上の整数を表す。X’n−で表されるアニオンの定義、具体例及び好ましい例は、前記の通りである。
【0139】
イオン性化合物が水和水を含む場合、下記式(hh−2)で表される構造を有することが好ましい。
m’+aX'n’−b・n’’(HO) (hh−2)
【0140】
前記式(hh−2)中、n’’は、1以上の整数を表す。Mm’+、X’n’−、a及びbの定義、具体例及び好ましい例は、前述の通りである。
【0141】
前記イオン性化合物の例としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、フッ化ガリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸銅、炭酸鉄、炭酸銀、炭酸アンモニウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸銀、酢酸銅、酢酸アンモニウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸セシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸アンモニウム、硫酸銀、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸鉛、亜硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸セシウム、硝酸カルシウム、硝酸アンモニウム、硝酸銀、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸コバルト、硝酸鉛、亜硝酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸アルミニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、過塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、シアン酸カリウム、チオシアン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸亜鉛、グルタル酸二ナトリウム、グルタル酸二セシウム、6−アミノヘキサン酸ナトリウム、チオリンゴ酸ナトリウム、チオリンゴ酸セシウム、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸ナトリウム、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸セシウム、6−アミノヘキサン酸セシウム、4−アミノベンゼンカルボン酸セシウム、リノール酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、テレフタル酸セシウム、ピリジンカルボン酸リチウム、ピリジンカルボン酸ナトリウム、ピリジンカルボン酸カリウム、ピリジンカルボン酸セシウム、ピリジンジカルボン酸セシウム、2−2’−ビピリジン−4−4’−ジカルボン酸セシウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム塩化物、1−ブチルピリジニウム塩化物、テトラブチルアンモニウム塩化物、トリメチルブチルアンモニウム塩化物、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム塩化物、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート及びグリシン塩酸塩が挙げられ、
フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、フッ化ガリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸銅、炭酸鉄、炭酸銀、炭酸アンモニウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸セシウム、ピリジンカルボン酸リチウム、ピリジンカルボン酸ナトリウム、ピリジンカルボン酸カリウム、ピリジンカルボン酸セシウム、1-ブチル−3−メチルイミダゾリウム塩化物、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウム塩化物、トリメチルブチルアンモニウム塩化物、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム塩化物又はトリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートが好ましく、
フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸セシウム、テレフタル酸セシウム、ピリジンカルボン酸セシウムがより好ましく、
フッ化セシウム、水酸化セシウム、酢酸セシウム、安息香酸セシウム又はピリジンカルボン酸セシウムが更に好ましく、水酸化セシウムが特に好ましい。
これらのイオン性化合物は、水和水及び/又は中性配位子を含んでいてもよい。
【0142】
前記式(hh−2)で表される化合物としては、例えば、水酸化セシウム1水和物、塩化コバルト6水和物、硫酸銅1水和物、硫酸銅3水和物、硫酸銅5水和物、硫酸ナトリウム10水和物、炭酸ナトリウム10水和物、炭酸ナトリウム1水和物、硫酸アルミニウム16水和物、塩化ニッケル6水和物、塩化スズ2水和物、ヨウ化コバルト6水和物及び塩化ロジウム3水和物が挙げられ、水酸化セシウム1水和物が好ましい。
【0143】
前記イオン性化合物は、1種類のみ用いても2種類以上を併用してもよい。
【0144】
前記イオン性化合物は、分子量が1000未満であることが好ましく、800未満であることがより好ましく、500未満であることが更に好ましい。
【0145】
本発明の金属複合体組成物において、イオン性化合物の添加量は、前記金属複合体100重量部に対して、通常、0.01〜1000重量部であり、好ましくは0.1〜100重量部であり、より好ましくは1〜50重量部である。
【0146】
本発明の金属複合体組成物は、そのまま電極等の材料として使用してもよいが、溶媒に分散させて分散液として使用することもできる。この溶媒の具体例としては、金属複合体の製造に用いた溶媒と同じものが挙げられる。分散液中の金属複合体の濃度は、分散液を100重量部としたとき、好ましくは0.01〜75重量部であり、より好ましくは0.05〜50重量部であり、更に好ましくは0.1〜30重量部である。本発明の金属複合体組成物の分散液において、イオン性化合物の濃度は、分散液を100重量部としたとき、好ましくは0.0001〜20重量部であり、より好ましくは0.0001〜10重量部であり、更に好ましくは0.0001〜1重量部であり、特に好ましくは0.001〜1重量部であり、殊更好ましくは0.001〜0.1重量部である。この分散液は、本発明の金属複合体組成物のほかに、分散安定剤、界面活性剤、粘度調整剤及び腐食防止剤等の添加剤を含んでもよい。
【0147】
該分散液は、導電性塗料、熱伝導性塗料、粘着剤、接着剤又は機能性コーティング材料として有用である。
【0148】
本発明の混合物は、前記金属複合体組成物と分子量200以上の共役化合物とを含む。
本発明の混合物に含まれる、金属複合体組成物以外の成分である、分子量200以上の共役化合物の定義、具体例及び好ましい例は、金属ナノ構造体に吸着している分子量200以上の共役化合物のものと同様である。本発明の混合物は、前記金属複合体の製造方法において、混合工程の後にイオン性化合物を添加し溶媒を蒸発させることにより、又は前記金属複合体組成物に分子量200以上の共役化合物をさらに混合することにより、得ることができる。共役化合物は、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基を含むことが好ましい。
【0149】
共役化合物中に含まれるへテロ原子又はへテロ原子を含む基としては、例えば、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、メルカプトカルボニル基、メルカプトチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、ホルミル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルアミノ基、ホスフィノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルホスフィノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルホスフィノ基、式:−OP(=O)(OH)で表される基、式:−P(=O)(OH)で表される基、カルバモイル基、(置換基を有していてもよいヒドロカルビル)カルバモイル基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルカルバモイル基、式:−C(=S)NRで表される基、式:−B(OH)で表される基、式:−BRで表される基、ホウ酸エステル残基、式:−Si(OR)で表される基、スルホ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニル基、スルフィノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルフィノ基、式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NRで表される基、式:−SC(=O)NRで表される基、式:−OC(=S)NRで表される基、式:−SC(=S)NRで表される基、式:−NRC(=O)NRで表される基、式:−NRC(=S)NRで表される基、1価の複素環基、2個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基、2個以上のエステル結合を有するヒドロカルビル基、2個以上のアミド結合を有するヒドロカルビル基、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CSMで表される基、式:−OMで表される基、式:−COMで表される基、式:−NMで表される基、式:−NHMで表される基、式:−NRMで表される基、式:−POMで表される基、式:−OP(=O)(OM)で表される基、式:−P(=O)(OM)で表される基、式:−C(=O)NMで表される基、式:−C(=O)NHMで表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NHMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NMで表される基、式:−B(OM)で表される基、式:−BRMで表される基、式:−B(OR)Mで表される基、式:−SOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NMで表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NMで表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NMで表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NMで表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NMで表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NMで表される基、式:−NRC(=S)NRMで表される基、式:−NRM’で表される基、式:−PRM’で表される基、式:−ORM’で表される基、式:−SRM’で表される基、式:−IRM’で表される基、及びカチオン化された窒素原子を複素環内に有する複素環基が挙げられる。
式中、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、Mは、金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表し、M’は、アニオンを表す。
中でも、2個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基、式:−COMで表される基、式:−SOMで表される基、又は式:−NRM’で表される基がより好ましく、式:−COMで表される基又は式:−NRM’で表される基が特に好ましく、式:−COMで表される基がとりわけ好ましい。ここで、共役化合物中に含まれるへテロ原子又はへテロ原子を含む基として上記のとおり例示した各原子及び基の詳細は、前記と同様であり、また、M及びM’の詳細は前記と同様である。
【0150】
本発明の混合物は、混合物を100重量としたとき、通常、金属複合体組成物を1〜99重量部、分子量200以上の共役化合物を1〜99重量部含み、好ましくは金属複合体組成物を1〜50重量部、分子量200以上の共役化合物を50〜99重量部含む。
【0151】
本発明の混合物は、金属複合体、イオン性化合物及び分子量200以上の共役化合物を、それぞれ2種類以上含んでもよく、更に金属粒子、金属酸化物、金属ナノ構造体、界面活性剤、粘度調整剤又は腐食防止剤等を含んでもよい。
【0152】
本発明の混合物は、導電性塗料、熱伝導性塗料、配線材料、粘着剤、接着剤、機能性コーティング材料、電磁波遮断材料、センサー、アンテナ、帯電防止剤、繊維、包装材料、抗菌剤、消臭剤、発熱体、放熱体又は医療用材料として有用である。
【0153】
本発明の金属複合体組成物又は混合物(以下、単に「本発明の金属複合体組成物等」と言う。)を含む薄膜は、導電性を有する。また、本発明の金属複合体組成物等を含む薄膜は、好ましい実施形態では、光透過性を有することから、平面液晶ディスプレイ、タッチパネル、発光素子、光電変換素子、帯電防止層又は電磁波遮蔽層として有用である。
【0154】
本発明の薄膜の導電性は、シート抵抗により評価できる。用途により好ましいシート抵抗の値は異なるが、発光素子材料として利用する場合は、10000Ω/□以下が好ましく、1000Ω/□がより好ましく、100Ω/□が更に好ましい。
【0155】
本発明の薄膜を支持する基板としては、薄膜を形成する際に化学的に変化しないものであればよく、例えば、ガラス、プラスチック及びシリコン等の材料、高分子フィルム等からなるものである。
【0156】
本発明の金属複合体組成物等を含む材料は、導電性を有する材料であり、導電材料、電極材料又は配線材料に有用である。
【0157】
本発明の金属複合体組成物等は、積層構造体に用いることが可能であり、電子素子等の製造に有用な材料となる。この積層構造体は、基板と、該基板上に形成された本発明の金属複合体組成物を含む層とを有するものである。発光素子を例に挙げて説明すると、基板はガラス基板、ポリエチレンテレフタラート基板、ポリエチレン基板、ポリプロピレン基板又はポリカーボネート基板等であり、金属複合体組成物を含む層は陰極である。
【0158】
本発明の金属複合体組成物等は、異方性の高い構造を有しているため、敷き詰めなくても金属複合体組成物に含まれる構成単位同士の接点を確保することができる。また、本発明の金属複合体組成物等は、導電性が優れている。そのため、本発明の金属複合体組成物等は、例えば、電極材料として用いることができる。
【0159】
本発明の金属複合体組成物等を導電性塗料に用いると、塗布方法を選択することによって、必要に応じてパターンニングされた導電性部位を作製することが可能であるため、蒸着、スパッタリング、エッチング、メッキ等の工程を必要とせずに電極等を作製することができる。また、本発明の金属複合体組成物等は異方性の高い構造を有しているため、こうして得られた電極は、透明性と導電性を両立したものである。この電極は、発光素子(例えば、有機EL素子)、トランジスタ及び光電変換素子(例えば、太陽電池)等の電子素子に用いることができる。そのほか、本発明の金属複合体組成物等は、平面液晶ディスプレイ、タッチパネル、発熱体、電磁波遮断フィルム、アンテナ、集積回路又は帯電防止剤等に用いられる。
【0160】
前記有機トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極及び絶縁されたゲート電極層を有する。本発明の金属複合体組成物等は該電極に用いることができる。この有機トランジスタは、基板又は半導体層等を更に有していてもよい。
【0161】
前記発光素子は、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられた発光層とを有するものである。本発明の金属複合体組成物等は該電極に用いることができる。この発光素子は、基板、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層又は電子輸送層等を更に有していてもよい。
【0162】
本発明の発光素子は、基板側から採光する所謂ボトムエミッションタイプ、基板と反対側から採光する所謂トップエミッションタイプ、両面採光型のいずれのタイプの発光素子であってもよい。
【0163】
本発明の発光素子は、陰極と発光層との間又は陽極と発光層との間に、さらに他の構成要素を備えることができる。
例えば、陽極と発光層との間には正孔注入層及び正孔輸送層のうちの1層以上を有することができる。正孔注入層が存在する場合は、発光層と正孔注入層との間に正孔輸送層を1層以上有することができる。
一方、陰極と発光層との間には電子注入層及び電子輸送層のうちの1層以上を有することができる。電子注入層が存在する場合は、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を1層以上有することができる。
本発明の金属複合体組成物等を含む層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層又は電子輸送層等として用いることもできる。
【0164】
ここで、陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等に正孔を供給する電極であり、陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層等に電子を供給する電極である。
発光層とは、電界を印加した際に、陽極又は陽極側に隣接する層より正孔を受け取り、陰極又は陰極側に隣接する層より電子を受け取る機能、受け取った電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有する層をいう。
電子注入層とは、陰極に隣接する層であり、陰極から電子を受け取る機能を有する層であり、さらに必要に応じて電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能、発光層へ電子を供給する機能のいずれかを有する層をいう。電子輸送層とは、主に電子を輸送する機能を有する層であり、さらに必要に応じて、陰極から電子を受け取る機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能、発光層へ電子を供給する機能のいずれかを有する層をいう。
正孔注入層とは、陽極に隣接する層であり、陽極から正孔を受け取る機能を有する層であり、さらに必要に応じて正孔を輸送する機能、発光層へ正孔を供給する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有する層をいう。正孔輸送層とは、主に正孔を輸送する機能を有する層であり、さらに必要に応じて、陽極から正孔を受け取る機能、発光層へ正孔を供給する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有する層をいう。
なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶことがある。また、電子注入層と正孔注入層を総称して電荷注入層と呼ぶことがある。
【0165】
即ち、本発明の発光素子は下記の層構成(a)を有することができ、又は層構成(a)から、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層の1層以上を省略した層構成を有することもできる。層構成(a)において、本発明の金属複合体組成物等を含む層は、陰極に用いることが好ましい。
【0166】
(a)陽極−(正孔注入層)−(正孔輸送層)−発光層−(電子輸送層)−(電子注入層)−陰極
【0167】
ここで、符号「−」は、これを挟んで両側に記載された各層が隣接して積層されていることを示す。「(正孔注入層)」は、正孔注入層を1層以上含む層構成を示す。「(正孔輸送層)」は、正孔輸送層を1層以上含む層構成を示す。「(電子注入層)」は、電子注入層を1層以上含む層構成を示す。「(電子輸送層)」は、電子輸送層を1層以上含む層構成を示す。以下の層構成の説明においても同様である。
【0168】
さらに、本発明の発光素子は、1つの積層構造中に2層の発光層を有することができる。この場合、発光素子は下記の層構成(b)を有することができ、又は層構成(b)から、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び電極の1層以上を省略した層構成を有することもできる。層構成(b)において、本発明の金属複合体組成物等を含む層は、陰極に用いることが好ましい。
【0169】
(b)陽極−(正孔注入層)−(正孔輸送層)−発光層−(電子輸送層)−(電子注入層)−電極−(正孔注入層)−(正孔輸送層)−発光層−(又は電子輸送層)−(電子注入層)−陰極
【0170】
さらに、本発明の発光素子は、1つの積層構造中に3層以上の発光層を有することができる。この場合、発光素子は下記の層構成(c)を有することができ、又は層構成(c)から、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び電極の1層以上を省略した層構成を有することもできる。層構成(c)において、本発明の金属複合体組成物等を含む層は陰極に用いることが好ましい。
【0171】
(c)陽極−(正孔注入層)−(正孔輸送層)−発光層−(電子輸送層)−(電子注入層)−繰返し単位A−繰返し単位A・・・−陰極
ここで、「繰返し単位A」は、電極−(正孔注入層)−(正孔輸送層)−発光層−(電子輸送層)−(電子注入層)の層構成の単位を示す。
【0172】
本発明の発光素子の好ましい層構成としては、下記の構成が挙げられる。下記層構成において、本発明の金属複合体組成物等を含む層は、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層及び陰極からなる群から選ばれる1つ以上の層として用いることができる。
(a’)陽極−発光層−陰極
(b’)陽極−正孔注入層−発光層−陰極
(c’)陽極−発光層−電子注入層−陰極
(d’)陽極−正孔注入層−発光層−電子注入層−陰極
(e’)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−陰極
(f’)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−電子注入層−陰極
(g’)陽極−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
(h’)陽極−正孔注入層−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
(i’)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
【0173】
本発明の金属複合体組成物等を含む層は、陽極又は陰極であることが好ましく、陰極であることがより好ましい。
【0174】
本発明の発光素子は、さらに電極との密着性向上や電極からの電荷(即ち正孔又は電子)の注入の改善のために、電極に隣接して絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層(即ち正孔輸送層又は電子輸送層)又は発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して決定することができる。
【0175】
次に、本発明の発光素子を構成する各層の材料及び形成方法について、より詳説する。
【0176】
−基板−
本発明の発光素子は、通常、基板を用いて形成される。基板としては、電極を形成し、有機層を形成する際に化学的に変化しないものであればよく、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、高分子フィルム基板、金属フィルム基板、シリコン基板、及びこれらを積層した基板が挙げられる。前記基板としては、市販のものが入手可能であり、又は公知の方法により製造することができる。
本発明の発光素子がディスプレイ装置の画素を構成する際には、当該基板上に画素駆動用の回路が設けられていてもよいし、当該駆動回路上に平坦化膜が設けられていてもよい。平坦化膜が設けられる場合には、該平坦化膜の中心線平均粗さ(Ra)がRa<10nmを満たすことが好ましい。
Raは、日本工業規格JISのJIS−B0601−2001に基づいて、JIS−B0651からJIS−B0656及びJIS−B0671−1等を参考に計測できる。
【0177】
−陽極−
本発明の発光素子を構成する陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等で用いられる有機半導体材料への正孔供給性が優れるので、かかる陽極の発光層側表面の仕事関数が4.0eV以上であることが好ましい。
本発明の発光素子において、本発明の金属複合体組成物等以外の陽極の材料には、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物等の電気伝導性化合物、及びこれらの混合物等を用いることができる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、酸化モリブデン等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;及びこれらの導電性金属酸化物と金属との混合物等が挙げられる。
前記陽極は、これら材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。多層構造である場合は、仕事関数が4.0eV以上である材料を発光層側の最表面層に用いることがより好ましい。
【0178】
陽極の作製方法としては、公知の方法が利用でき、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、及び溶液からの成膜による方法(高分子バインダーとの混合溶液を用いてもよい)等が挙げられる。
【0179】
陽極の厚さは、通常10nm〜10μmであり、好ましくは40nm〜500nmである。
また、短絡等の電気的接続の不良を効率的に防止することができるので、陽極の発光層側表面の中心線平均粗さ(Ra)はRa<10nmを満たすことが好ましく、Ra<5nmを満たすことがより好ましい。
【0180】
さらに、該陽極は上記方法にて作製された後に、UVオゾン、シランカップリング剤、及び2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン等の電子受容性化合物を含む溶液等で表面処理を施してもよい。表面処理によって該陽極に接する層との電気的接続が改善される。
【0181】
本発明の発光素子において陽極を光反射電極として用いる場合には、かかる陽極が、高光反射性金属からなる光反射層と4.0eV以上の仕事関数を有する材料を含む高仕事関数材料層とを組み合わせた多層構造が好ましい。
このような陽極の構成としては、例えば、以下の(i)〜(v)が挙げられる。
(i)Ag−MoO
(ii)(Ag−Pd−Cu合金)−(ITO及び/又はIZO)
(iii)(Al−Nd合金)−(ITO及び/又はIZO)
(iv)(Mo−Cr合金)−(ITO及び/又はIZO)
(v)(Ag−Pd−Cu合金)−(ITO及び/又はIZO)−MoO
十分な光反射率を得る為に、Al、Ag、Al合金、Ag合金及びCr合金等の高光反射性金属からなる光反射層の厚さは50nm以上であることが好ましく、80nm以上であることがより好ましい。ITO、IZO及びMoO等の高仕事関数材料層の厚さは通常、5nm〜500nmの範囲である。
【0182】
−正孔注入層−
本発明の発光素子において、本発明の金属複合体組成物等以外の正孔注入層を形成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、スターバースト型アミン、フタロシアニン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、及びこれらを含む重合体;酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム及び酸化アルミニウム等の導電性金属酸化物;ポリアニリン、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー及びポリチオフェン等の導電性高分子及びオリゴマー;ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸及びポリピロール等の有機導電性材料並びにこれらを含む重合体;アモルファスカーボン;テトラシアノキノジメタン誘導体(例えば、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)、1,4−ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体及びポリニトロ化合物等のアクセプター性有機化合物;オクタデシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が好適に挙げられる。
前記材料は一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。また、前記正孔注入層は、前記材料のみからなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、正孔輸送層の材料として例示する材料も正孔注入層の材料として用いることができる。
【0183】
正孔注入層の作製方法としては、公知の方法が利用できる。正孔注入層に用いられる正孔注入材料が無機材料の場合は、真空蒸着法、スパッタリング法又はイオンプレーティング法等が利用でき、低分子有機材料の場合は、真空蒸着法、レーザー転写や熱転写等の転写法、又は溶液からの成膜による方法(高分子バインダーとの混合溶液を用いてもよい)等が利用できる。また、正孔注入材料が高分子有機材料の場合は、溶液からの成膜による方法が利用できる。
【0184】
正孔注入材料が、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体及びトリフェニルジアミン誘導体等の低分子有機材料の場合には、真空蒸着法を用いて正孔注入層を形成することが好ましい。
【0185】
また、高分子化合物バインダーと前記低分子有機材料を分散させた混合溶液を用いて正孔注入層を成膜することもできる。
混合する高分子化合物バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くない化合物が好適に用いられる。この高分子化合物バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル及びポリシロキサンが例示される。
【0186】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させることができる溶媒であればよい。該溶媒としては、水;クロロホルム、塩化メチレン及びジクロロエタン等の含塩素溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル及びエチルセルソルブアセテート等のエステル溶媒が例示される。
【0187】
溶液からの成膜方法としては、塗布法が挙げられ、その具体例としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法及びノズルコート法等のコート法;マイクログラビア印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法及びインクジェット印刷法等の印刷法等が挙げられる。
パターン形成が容易であるので、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法及びインクジェット印刷法等の印刷法やノズルコート法が好ましい。
【0188】
正孔注入層に続いて、正孔輸送層及び発光層等の有機化合物層を形成する場合、特に、両方の層を塗布法によって形成する場合には、先に塗布した層(以下、「下層」という場合がある。)が後から塗布する層(以下、「上層」という場合がある。)の溶液に含まれる溶媒に溶解して積層構造を作製できなくなることがある。この場合には、下層を溶媒不溶化する方法を用いることができる。下層を溶媒不溶化する方法としては、例えば、下層に含まれる高分子化合物に架橋基を付け、架橋させて不溶化する方法;芳香族ビスアジドに代表される芳香環を有する架橋基を持った低分子化合物を架橋剤として混合し、架橋させて不溶化する方法;アクリレート基に代表される芳香環を有しない架橋基を持った低分子化合物を架橋剤として混合し、架橋させて不溶化する方法;下層を紫外光に感光させて架橋させ、上層の製造に用いる有機溶媒に対して不溶化する方法;及び下層を加熱して架橋させ、上層の製造に用いる有機溶媒に対して不溶化する方法等が挙げられる。下層を加熱する場合の加熱温度は通常100℃〜300℃であり、加熱時間は通常1分〜1時間である。
また、下層を溶解させずに上層を積層するその他の方法として、隣り合った層の製造に異なる極性の溶液を用いる方法があり、例えば、下層に水溶性の高分子化合物を用い、上層の溶液として油溶性の高分子化合物を含む油性溶液を用いて、塗布しても下層が溶解しないようにする方法等がある。
【0189】
正孔注入層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよい。正孔注入層の厚さは、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは10nm〜100nmである。
【0190】
−正孔輸送層−
本発明の発光素子において、本発明の金属複合体組成物等以外の正孔輸送層を構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、及びこれらの構造を含む重合体;アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー及びポリチオフェン等の導電性高分子及びオリゴマー;ポリピロール等の有機導電性材料が挙げられる。
前記材料は一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。また、前記正孔輸送層は、前記材料のみからなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、正孔注入層の材料として例示する材料も正孔輸送層の材料に用いることができる。
【0191】
前記正孔輸送層を構成する材料としては、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報、特開平5−263073号公報、特開平6−1972号公報、WO2005/52027及び特開2006−295203号公報等に開示される化合物も有用である。これらの中でも、繰り返し単位として2価の芳香族アミン残基を含む重合体が、好適に用いられる。
【0192】
正孔輸送層の成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、塗布法が挙げられ、その具体例としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法及びノズルコート法等のコート法;グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法及びインクジェット印刷法等の印刷法等が挙げられる。昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法又は転写法が挙げられる。溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔注入層の成膜方法で例示した溶媒が挙げられる。
【0193】
正孔輸送層に続いて、発光層等の有機層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法において説明した方法と同様の方法で下層を溶媒不溶化することができる。
【0194】
正孔輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよい。正孔輸送層の厚さは、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。
【0195】
−発光層−
本発明の発光素子において、発光層が高分子化合物を含む場合、該高分子化合物としては、例えば、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール、ポリアルキルチオフェン等の共役高分子化合物を好適に用いることができる。
また、前記高分子化合物を含む発光層は、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等の高分子系色素化合物や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子色素化合物を含有してもよい。また、該発光層は、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、並びにテトラフェニルブタジエン及びその誘導体、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等の燐光を発光する金属錯体を含有してもよい。
【0196】
また、本発明の発光素子が有する発光層は、非共役高分子化合物と前記有機色素や前記金属錯体等の発光性有機化合物とを含む材料から構成されてもよい。非共役高分子化合物としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂及びシリコン樹脂が挙げられる。前記の非共役高分子化合物は、その側鎖に、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン化合物、ポルフィリン化合物及び有機シラン誘導体からなる群から選ばれる1つ以上の誘導体若しくは化合物の構造を有していてもよい。
【0197】
発光層が低分子化合物を含む場合、該低分子化合物としては、例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、カルバゾール、キナクリドン等の低分子色素化合物、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系、インジゴ系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、フタロシアニン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、並びにテトラフェニルブタジエン及びその誘導体等が挙げられる。
発光層が燐光を発光する金属錯体を含む場合、該金属錯体としては、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、チエニルピリジン配位子含有イリジウム錯体、フェニルキノリン配位子含有イリジウム錯体、トリアザシクロノナン骨格含有テルビウム錯体等が挙げられる。
【0198】
発光層に用いられる高分子化合物としては、例えば、WO97/09394、WO98/27136、WO99/54385、WO00/22027、WO01/19834、GB2340304A、GB2348316、US573636、US5741921、US5777070、EP0707020、特開平9−111233号公報、特開平10−324870号公報、特開2000−80167号公報、特開2001−123156号公報、特開2004−168999号公報、特開2007−162009号公報、「有機EL素子の開発と構成材料」(シーエムシー出版、2006年発行)等に開示されているポリフルオレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体及び共重合体、芳香族アミン及びその誘導体の(共)重合体が例示される。
また、低分子化合物としては、特開昭57−51781号公報、「有機薄膜仕事関数データ集[第2版]」(シーエムシー出版、2006年発行)、「有機EL素子の開発と構成材料」(シーエムシー出版、2006年発行)等に記載されている化合物が例示される。
前記材料は一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。また、前記発光層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0199】
発光層の成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、塗布法が挙げられ、その具体例としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法及びノズルコート法等のコート法;グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法及びインクジェット印刷法等の印刷法が挙げられる。昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法又は転写法等が挙げられる。
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔注入層の成膜方法で例示した溶媒が挙げられる。
【0200】
発光層に続いて、電子輸送層等の有機化合物層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法において説明した方法と同様の方法で下層を溶媒不溶化することができる。
【0201】
発光層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよい。発光層の厚さは、通常、5nm〜1μmであり、好ましくは10nm〜500nmであり、さらに好ましくは30nm〜200nmである。
【0202】
−電子輸送層−
本発明の発光素子において、本発明の金属複合体組成物等以外の電子輸送層を構成する材料としては、公知のものが使用でき、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。これらのうち、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、並びに8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が好ましい。
前記材料は一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。また、前記電子輸送層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、電子注入層の材料として例示する材料も電子輸送層の材料に用いることができる。
【0203】
電子輸送層の成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、塗布法が挙げられ、その具体例としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法及びノズルコート法等のコート法;グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法及びインクジェット印刷法等の印刷法が挙げられる。昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法又は転写法等が挙げられる。
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔注入層の成膜方法で例示した溶媒が挙げられる。
【0204】
電子輸送層に続いて、電子注入層等の有機化合物層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法において説明した方法と同様の方法で下層を溶媒不溶化することができる。
【0205】
電子輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよい。電子輸送層の厚さは、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。
【0206】
−電子注入層−
本発明の発光素子において、本発明の金属複合体組成物等以外の電子注入層を構成する材料としては、公知の化合物が使用でき、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体及び有機シラン誘導体等が挙げられる。
前記材料は一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。また、前記電子注入層は、前記材料のみからなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、電子輸送層の材料として例示する材料も電子注入層の材料に用いることができる。
【0207】
電子注入層の成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、塗布法が挙げられ、その具体例としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法及びノズルコート法等のコート法;グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法及びインクジェット印刷法等の印刷法が挙げられる。昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法又は転写法等が挙げられる。
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔注入層の成膜方法で例示した溶媒が挙げられる。
【0208】
電子注入層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよい。電子注入層の厚さは、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。
【0209】
−陰極−
本発明の発光素子において、陰極は、単一の材料又は複数の材料からなる単層構造であってもよいし、複数層からなる多層構造であってもよい。陰極が単層構造である場合、本発明の発光素子において、本発明の金属複合体組成物等以外の陰極の材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、スズ、鉛、ニッケル、チタン等の低抵抗金属及びこれらを含む合金;酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、酸化モリブデン等の導電性金属酸化物;これらの導電性金属酸化物と金属との混合物が挙げられる。多層構造である場合、第1陰極層とカバー陰極層の2層構造、又は第1陰極層、第2陰極層及びカバー陰極層の3層構造が好ましい。ここで、第1陰極層は、陰極の中で最も発光層側にある層をいい、カバー陰極層は2層構造の場合は第1陰極層を、3層構造の場合は第1陰極層と第2陰極層を覆う層をいう。電子供給能が優れるので、第1陰極層の材料の仕事関数が3.5eV以下であることが好ましい。また、仕事関数が3.5eV以下の金属の酸化物、フッ化物、炭酸塩、複合酸化物等も第1陰極層材料として好適に用いられる。カバー陰極層の材料には、抵抗率が低く、水分への耐腐食性が高い金属、金属酸化物等が好適に用いられる。
【0210】
第1陰極層材料としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を1種類以上含む合金、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩及び複合酸化物、並びにこれらの混合物からなる群より選択される1つ以上の材料等が挙げられる。アルカリ金属又はその酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩及び複合酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、モリブデン酸カリウム、チタン酸カリウム、タングステン酸カリウム及びモリブデン酸セシウムが挙げられる。アルカリ土類金属又はその酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩及び複合酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸化バリウム、モリブデン酸バリウム及びタングステン酸バリウムが挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属を1種類以上含む合金の例としては、Li−Al合金、Mg−Ag合金、Al−Ba合金、Mg−Ba合金、Ba−Ag合金及びCa−Bi−Pb−Sn合金が挙げられる。また、第1陰極層材料として例示した材料と電子注入層を構成する材料として例示した材料とを組み合わせた材料も第1陰極層の材料に使用できる。第2陰極層の材料としては、第1陰極層の材料と同様の材料が例示される。
【0211】
カバー陰極層の材料の例としては、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、スズ、鉛、ニッケル、チタン等の低抵抗金属及びこれらを含む合金;金属ナノ粒子;金属ナノワイヤー;酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、酸化モリブデン等の導電性金属酸化物;これらの導電性金属酸化物と金属との混合物;導電性金属酸化物のナノ粒子;グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性炭素が挙げられる。
【0212】
陰極が多層構造である場合の例としては、Mg/Al、Ca/Al、Ba/Al、NaF/Al、KF/Al、RbF/Al、CsF/Al、NaCO/Al、KCO/Al、CsCO/Al等の第1陰極層とカバー陰極層の2層構造;LiF/Ca/Al、NaF/Ca/Al、KF/Ca/Al、RbF/Ca/Al、CsF/Ca/Al、Ba/Al/Ag、KF/Al/Ag、KF/Ca/Ag、KCO/Ca/Ag等の第1陰極層、第2陰極層及びカバー陰極層の3層構造が挙げられる。ここで、符号「/」は、これを挟んで両側に記載された各層が隣接して積層されていることを示す。なお、第2陰極層の材料が第1陰極層の材料に対して還元作用を有することが好ましい。ここで、材料間の還元作用の有無及びその程度は、例えば、化合物間の結合解離エネルギー(ΔrH°)から見積もることができる。即ち、第2陰極層を構成する材料による、第1陰極層を構成する材料に対する還元反応において、結合解離エネルギーが正である組み合わせの場合、第2陰極層の材料が第1陰極層の材料に対して還元作用を有すると言える。結合解離エネルギーは、例えば「電気化学便覧第5版」(丸善、2000年発行)、「熱力学データベースMALT」(科学技術社、1992年発行)で参照できる。
【0213】
陰極の作製方法としては公知の方法が利用でき、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、溶液からの成膜による方法(高分子バインダーとの混合溶液を用いてもよい)が挙げられる。陰極の材料として金属、金属酸化物、フッ化物、炭酸塩を用いる場合は真空蒸着法が好適に使用され、高沸点の金属酸化物、金属複合酸化物や酸化インジウムスズ等の導電性金属酸化物を用いる場合は、スパッタリング法、イオンプレーティング法が好適に使用される。金属、金属酸化物、フッ化物、炭酸塩、高沸点の金属酸化物、金属複合酸化物、導電性金属酸化物を2種以上併用して成膜する場合には、共蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が用いられる。金属ナノ粒子、金属ナノワイヤー、導電性金属酸化物ナノ粒子を用いる場合には、溶液からの成膜による方法が好適に使用される。特に、低分子有機化合物と金属又は金属酸化物、フッ化物、炭酸塩とを組み合わせた材料を成膜する場合には共蒸着法が適する。
【0214】
陰極の厚さは用いる材料、層構造によって最適値が異なり、駆動電圧、発光効率、素子寿命が適度な値となるように選択すればよいが、通常、第1陰極層の厚さは0.5nm〜20nmであり、カバー陰極層の厚さは10nm〜1μmである。例えば、第1陰極層にBa又はCa、カバー陰極層にAlを用いる場合、Ba又はCaの厚さは2nm〜10nm、Alの厚さは10nm〜500nmであることが好ましく、第1陰極層にNaF又はKF、カバー陰極層にAlを用いる場合、NaF又はKFの厚さは1nm〜8nm、Alの厚さは10nm〜500nmであることが好ましい。
【0215】
本発明の発光素子において陰極を光透過性電極として用いる場合には、カバー陰極層の可視光透過率が40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。この可視光透過率は、カバー陰極層材料として酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、酸化モリブデン等の透明導電性金属酸化物を用いるか、或いは、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、スズ、鉛等の低抵抗金属及びこれらを含む合金を用いたカバー陰極層の厚さを30nm以下にすることで達成される。
【0216】
また、陰極側からの光透過率を向上させることを目的として、陰極のカバー陰極層上に反射防止層を設けてもよい。反射防止層に用いられる材料としては、屈折率が1.8〜3.0であることが好ましく、この屈折率を満たす材料としては、例えば、ZnS、ZnSe、WOが挙げられる。反射防止層の厚さは材料の組み合わせによって異なるが、通常10nm〜150nmである。
【0217】
−絶縁層−
本発明の発光素子は、電極との密着性向上、電極からの電荷注入改善、隣接層との混合防止等の機能を有する層として、厚さ5nm以下の絶縁層を備えていてもよい。上記絶縁層の材料としては、例えば、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料(ポリメチルメタクリレート等)等が挙げられる。厚さ5nm以下の絶縁層を設けた発光素子としては、陰極に隣接して厚さ5nm以下の絶縁層を設けた素子、陽極に隣接して厚さ5nm以下の絶縁層を設けた素子が挙げられる。
【0218】
−その他の構成要素−
本発明の発光素子は、さらに、発光層等を挟んで基板と反対側に、封止部材を有してもよい。本発明の発光素子はまた、カラーフィルター、蛍光変換フィルター等のフィルター、画素の駆動に必要な回路及び配線等の、ディスプレイ装置を構成するための任意の構成要素を有することができる。
【0219】
本発明の金属複合体組成物等は、陰極に使用することが好ましいが、その他の層にも使用することができる。
【0220】
本発明の金属複合体組成物等を溶液から成膜する際には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、キャピラリ−コート法及びノズルコート法等の塗布法を用いることができる。
【0221】
なお、如何なる用途であっても、本発明の金属複合体組成物等は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0222】
−発光素子の製造方法−
一実施形態において、本発明の発光素子は、例えば、基板上に各層を順次積層することにより製造することができる。具体的には、基板上に陽極を設け、その上に正孔注入層、正孔輸送層等の層を設け、その上に発光層を設け、その上に電子輸送層、電子注入層等の層を設け、さらにその上に、陰極を積層することにより、発光素子を製造することができる。
他の実施形態では、本発明の発光素子は、基板上に陰極を設け、その上に電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層等の層を設け、さらにその上に、陽極を積層することにより、製造することができる。
更に他の実施形態では、本発明の発光素子は、陽極又は陽極上に各層を積層した陽極側基材と陰極又は陰極上に各層を積層させた陰極側基材とを、対向させて接合することにより製造することができる。
【0223】
−発光素子の応用−
本発明の発光素子を用いてディスプレイ装置を製造することができる。該ディスプレイ装置は、発光素子を1画素単位として備える。画素単位の配列の態様は、テレビ等のディスプレイ装置で通常採られる配列とすることができ、多数の画素が共通の基板上に配列された態様とすることができる。ディスプレイ装置において、基板上に配列される画素は、バンクで規定される画素領域内に形成することができる。また本発明の発光素子は平面状や曲面状の照明装置に用いることができる。
【0224】
前記光電変換素子は、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられた有機層とを有するものであって、該電極に本発明の金属複合体組成物等が用いられたものである。この光電変換素子は、基板、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電化分離層等を更に有していてもよい。
【0225】
本発明の金属複合体組成物等を含む層を有する光電変換素子の電荷分離層には、電子供与性化合物と電子受容性化合物とが含まれていることが好ましい。
【0226】
前記電荷分離層は、電子供与性化合物と電子受容性化合物のおのおのを一種単独で含んでいても二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。なお、前記電子供与性化合物、前記電子受容性化合物は、これらの化合物のエネルギー準位のエネルギーレベルから相対的に決定される。
【0227】
前記電子供与性化合物としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、共役高分子化合物が挙げられ、前記共役高分子化合物としては、例えば、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0228】
前記電子受容性化合物としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体、酸化チタン等の金属酸化物、カーボンナノチューブ等が挙げられる。電子受容性化合物としては、好ましくは酸化チタン、カーボンナノチューブ、フラーレン又はフラーレン誘導体であり、特に好ましくはフラーレン又はフラーレン誘導体である。
【0229】
電荷分離層の厚さは、通常、1nm〜100μmであり、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、より好ましくは20nm〜200nmである。
【0230】
<電荷分離層の製造方法>
前記電荷分離層の製造方法は、如何なる方法でもよく、例えば、溶液からの成膜や、真空蒸着法による成膜方法が挙げられる。
【0231】
溶液からの成膜には、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法及びキャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法又はディスペンサー印刷法が好ましい。
【0232】
本発明の金属複合体組成物等を含む層を有する光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム及びシリコン等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
前記透明又は半透明の電極材料としては、例えば、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体(インジウム・スズ・オキサイド、インジウム・亜鉛・オキサイド等)からなる導電性材料、NESA、金、白金、銀、銅等を用いて作製された膜が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド又は酸化スズを用いて作製された膜が好ましい。電極の作製方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法及びメッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。さらに電極材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができ、一対の電極のうち一方の電極は仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属;前記金属のうち2つ以上の金属からなる合金;前記金属のうち1つ以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上の金属との合金;グラファイト又はグラファイト層間化合物が用いられる。合金としては、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金及びカルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0233】
光電変換効率を向上させるための手段として、本発明に用いられる高分子化合物を含む層以外に、電荷分離層以外の付加的な中間層を使用してもよい。中間層の材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物等を用いることができる。また、酸化チタン等無機半導体の微粒子、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)等が挙げられる。
【0234】
光電変換素子は、例えば、基板上に上述の各層を順次に積層することにより製造することができる。電荷分離層以外の前記の各層の形成方法については、既に説明した発光素子と同様に実施することができるため、詳細な説明を省略する。
【0235】
本発明の金属複合体組成物等は、陰極に使用することが好ましいが、その他の層にも使用することができる。
【0236】
本発明の金属複合体組成物等を溶液から成膜する際には、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、キャピラリ−コート法及びノズルコート法等の塗布法を用いることができる。
【0237】
なお、如何なる用途であっても、本発明の金属複合体組成物等は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0238】
<素子の用途>
本発明の金属複合体組成物等を含む層を有する光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0239】
また、電極間に電圧を印加した状態、あるいは無印加の状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【0240】
<太陽電池モジュール>
本発明の光電変換素子を有機薄膜太陽電池として用いて太陽電池モジュールを構成する場合、該太陽電池モジュールは、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には、金属及びセラミック等の支持基板の上に太陽電池が構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上に太陽電池を構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。太陽電池モジュールの公知の構造として、例えば、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ及びポッティングタイプ等のモジュール構造、及びアモルファスシリコン太陽電池等で用いられる基板一体型モジュール構造等が挙げられる。本発明の光電変換素子を用いた太陽電池モジュールも、使用目的や使用場所及び環境により、適宜これらのモジュール構造を選択できる。
【0241】
代表的なモジュール構造であるスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプの太陽電池モジュールでは、一対の支持基板の間に、一定間隔に太陽電池が配置されている。支持基板の一方又は両方は、透明で反射防止処理が施されている。隣り合う太陽電池同士は、金属リード及びフレキシブル配線等の配線によって電気接続されている。モジュールの外縁部には、太陽電池で発生した電力を外部に取り出すための集電電極が配置されている。支持基板と太陽電池の間には、太陽電池の保護や集電効率向上のため、目的に応じエチレンビニルアセテート(EVA)等の様々な種類のプラスチック材料をフィルム又は充填樹脂の形で設けてもよい。また、外部からの衝撃が少ない場所等、表面を硬い素材で覆う必要のない場所において太陽電池モジュールを使用する場合には、透明プラスチックフィルムを用いて表面保護層を形成するか、又は上記充填樹脂を硬化させて保護機能を付与することによって、片側の支持基板を省くことが可能である。支持基板の周囲は、内部の密封及びモジュールの剛性を確保するため、通常、金属製のフレームでサンドイッチ状に固定されており、支持基板とフレームの間は封止材料で密封シールされている。また、太陽電池そのものや支持基板、充填材料及び封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池モジュールを構成することもできる。
【0242】
支持基板としてポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いて太陽電池モジュールを作製する場合、ロール状のフレキシブル支持体を送り出しながら順次太陽電池を形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより太陽電池モジュール本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells,48,p383−391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。更に、フレキシブル支持体を用いた太陽電池モジュールは曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【実施例】
【0243】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0244】
<分析>
重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名:HLC−8220GPC)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量及び数平均分子量として求めた。また、測定する試料は、約0.5重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入した。更に、GPCの移動相としてはテトラヒドロフランを用い、0.5mL/分の流速で流した。検出波長を254nmに設定した。
【0245】
重合体の構造分析は、300MHzNMRスペクトロメーター(Varian社製)を用いたH NMR解析によって行った。また、測定は、20mg/mLの濃度になるように試料を可溶な重溶媒に溶解させて行った。
【0246】
実施例で作製した複合体は、走査型X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ社製、商品名:Quantera SXM)を用いてX線光電子分光スペクトルを測定し、表面組成分析を行った。分析手法はX線光電子分光法(以下、「XPS」と言う。)であり、X線源はAlKα線(1486.6eV)、X線のスポット径は100μm、中和条件は中和電子銃・低速Arイオン銃を使用した。サンプルをステンレス製のカップに詰めて測定した。
【0247】
重合体のHOMOの軌道エネルギーは重合体のイオン化ポテンシャルから求め、LUMOの軌道エネルギーはイオン化ポテンシャル及びHOMOの軌道エネルギーとLUMOの軌道エネルギーとの差から求めた。イオン化ポテンシャルの測定には光電子分光装置(理研計器株式会社製:AC−2)を用いた。また、HOMOの軌道エネルギーとLUMOの軌道エネルギーの差は、紫外・可視・近赤外分光光度計(Varian社製:CarySE)を用いて重合体の吸収スペクトルを測定し、その吸収末端より求めた。具体的には、得られた重合体のイオン化ポテンシャルは、大気中にて測定した。測定用の試料は、重合体の1重量%クロロホルム溶液を調製し、該溶液を回転数1000rpmで30秒間、石英基板上にスピンコートし、100℃で15分間乾燥させて作成した。また、得られた重合体のバンドギャップは、イオン化ポテンシャルと同様の測定用の試料を用いて、重合体の吸収スペクトルを大気中にて測定し、その吸収末端より求めた。
【0248】
実施例で作製した薄膜のシート抵抗(Ω/□)は、抵抗率計(三菱化学社製、ロレスタGP MCP−T610型)を用いて測定した。
【0249】
実施例で作製した薄膜の全光線透過率(%)は、直読式ヘーズメーター(スガ試験機社製、HGM−2DP)を用いて測定した。
【0250】
<合成例1>(銀ナノ構造体Aの合成)
エチレングリコール5mLを入れた50mLフラスコを150℃のオイルバスに浸漬し、このエチレングリコールを60分間空気でバブリングしながら、予備加熱を行った。予備加熱後に、空気から窒素ガスに切り替え、バブリングを止めた。次いで、そこに、0.1Mの硝酸銀−エチレングリコール溶液1.5mL、0.15Mのポリビニルピロリドン(以下、「PVP」と言う。)(重量平均分子量:5.5×10)−エチレングリコール溶液1.5mL、及び、4mMの塩化銅2水和物−エチレングリコール溶液40μLを入れ、120分間攪拌したところ、銀ナノ構造体の分散液が得られた。得られた分散液を40℃まで冷却した後、遠心分離し、沈殿物を取得した。取得した沈殿物を乾燥し、銀ナノ構造体(以下、「銀ナノ構造体A」と言う。)を得た。
【0251】
得られた銀ナノ構造体Aを走査型電子顕微鏡(日本電子社製、商品名:JSM−5500)(以下、「SEM」と言う。)による写真から目視で確認したところ、形状はワイヤー状であり、最も短い径は約30nmであり、最も長い径は約15μmであり、前記方法により確認した少なくとも10個の銀ナノ構造体のアスペクト比の平均値は約500であった。なお、この銀ナノ構造体Aに、合成の際に共存させたPVPが吸着していることをXPS測定により確認した。
【0252】
<合成例2>(共役化合物P−1の合成)
2,7−ジブロモ−9−フルオレノン(52.5g)、サリチル酸エチル(154.8g)、及び、メルカプト酢酸(1.4g)を300mLフラスコに入れ、該フラスコ内の気体を窒素で置換した。そこに、メタンスルホン酸(630mL)を添加し、混合物を75℃で終夜撹拌した。混合物を放冷し、氷水に添加して1時間撹拌したところ固体が生じた。生じた固体をろ別し、加熱したアセトニトリルで洗浄した。洗浄された固体をアセトンに溶解させ、得られたアセトン溶液から固体を再結晶させ、ろ別した。得られた固体(62.7g)、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ−p−トルエンスルホネート(86.3g)、炭酸カリウム(62.6g)、及び1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカン(「18−クラウン−6」と呼ばれることもある。)(7.2g)をN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)(670mL)に溶解させ、溶液をフラスコへ移して105℃で終夜撹拌した。得られた混合物を室温まで放冷し、氷水へ加え、1時間撹拌した。その後、反応液にクロロホルムを加えて分液抽出を行い、溶液を濃縮することで、2,7−ジブロモ−9,9−ビス[3−エトキシカルボニル−4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]フェニル]−フルオレン(化合物D)(51.2g)を得た。
【0253】
【化23】

【0254】
フラスコ内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物D(15g)、ビス(ピナコラート)ジボロン(8.9g)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(0.8g)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.5g)、酢酸カリウム(9.4g)、及び、ジオキサン(400mL)を混合し、110℃に加熱し、10時間加熱還流させた。放冷後、反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。残渣をメタノールで3回洗浄し、トルエンに溶解させ、溶液に活性炭を加えて攪拌した。その後、ろ過を行い、ろ液を減圧濃縮することで、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ビス[3−エトキシカルボニル−4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]フェニル]−フルオレン(化合物E)(11.7g)を得た。
【0255】
【化24】

【0256】
フラスコ内を不活性ガス雰囲気下とした後、化合物D(0.55g)、化合物E(0.61g)、トリフェニルホスフィンパラジウム(0.01g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g,アルドリッチ製)、及び、トルエン(10mL)を混合し、105℃に加熱した。反応液に2M 炭酸ナトリウム水溶液(6mL)を滴下し、8時間還流させた。その後、反応液に4−tert−ブチルフェニルボロン酸(0.01g)を加え、6時間還流させた。次いで、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液(10mL、濃度:0.05g/mL)を加え、2時間撹拌した。混合溶液をメタノール300mL中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥させ、テトラヒドロフラン20mLに溶解させた。得られた溶液をメタノール120mLと3重量%酢酸水溶液50mLとの混合液に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過し、テトラヒドロフラン20mLに溶解させた。こうして得られた溶液をメタノール200mLに滴下して30分攪拌した後、析出した沈殿をろ過して固体を得た。得られた固体をテトラヒドロフランに溶解させ、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。カラムから回収したテトラヒドロフラン溶液を濃縮した後、メタノールに滴下し、析出した固体をろ過し、乾燥させた。得られたポリ[9,9−ビス[3−エトキシカルボニル−4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]フェニル]−フルオレン](化合物F)の収量は520mgであった。
【0257】
化合物Fのポリスチレン換算の数平均分子量は5.2×10であった。化合物Fは、NMRの結果から下記式で表される繰り返し単位を持つ。
【0258】
【化25】

【0259】
化合物F(200mg)を100mLフラスコに入れ、該フラスコ内の気体を窒素ガスで置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、及び、エタノール(20mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化セシウム(200mg)を水(2mL)に溶解させた水溶液を添加し、55℃で6時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去したところ固体が生じた。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(150mg、化合物Fのセシウム塩であり、以下、「共役化合物P−1」と言う。)を得た。NMRスペクトルにより、化合物F内のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。共役化合物P−1は下記式で表される繰り返し単位からなる。共役化合物P−1のHOMOの軌道エネルギーは−5.5eVであり、LUMOの軌道エネルギーは−2.7eVであった。
【0260】
【化26】

【0261】
共役化合物P−1のポリスチレン換算の数平均分子量は、化合物Fとほぼ同様である。
【0262】
<合成例3>(金属複合体Cの合成)
共役化合物P−1のメタノール溶液10mL(繰り返し単位の単量体換算で100μM)に銀ナノ構造体A 40mgを加え、超音波により分散させた。その後、2時間攪拌した後に遠心分離し上澄みを除去した。この残渣に、共役化合物P−1のメタノール溶液10mL(繰り返し単位の単量体換算で100μM)を加え、超音波により分散、2時間攪拌、遠心分離、上澄み除去の操作を5回繰り返した。次いで、メタノール20mLを加え超音波により分散させた。その後、1時間攪拌した後に遠心分離し上澄みを除去した。メタノール20mLを加え超音波により分散させ、1時間攪拌、遠心分離、上澄み除去の操作を5回繰り返した後、残渣を乾燥させた。得られた固体について、走査型X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ社製、商品名:Quantera SXM)により銀ナノ構造体の表面に吸着している物質の測定を行ったところ、共役化合物P−1のCsカチオンに起因するセシウム原子のピークが得られたことから、銀ナノ構造体Aに共役化合物P−1が吸着した複合体(以下、「金属複合体C」と言う。)であることが確認できた。
【0263】
<合成例4>(正孔輸送材料Bの合成)
フラスコ内を不活性ガス雰囲気下とした後、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(1.4g、2.5mmol)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(6.4g、10.0mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N’,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(4.1g、6mmol)、ビス(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブテンアミン(0.6g、1.5mmol)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(1.7g、2.3mmol)、酢酸パラジウム(4.5mg、0.02mmol)、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.03g、0.08mmol)、及び、トルエン(100mL)を混合し、混合物を100℃で2時間加熱攪拌した。次いで、フェニルボロン酸(0.06g、0.5mmol)を添加し、得られた混合物を10時間撹拌した。放冷後、水層を除去し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を添加し攪拌した後、水層を除去し、有機層を水、3重量%酢酸水で順次洗浄した。有機層をメタノールに注いでポリマーを沈殿させた後、濾取したポリマーを再度トルエンに溶解させ、シリカゲルカラム及びアルミナカラムに通液した。ポリマーを含む溶出トルエン溶液を回収し、回収した前記トルエン溶液をメタノールに注いでポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを濾取後50℃で真空乾燥し、正孔輸送材料Bである高分子化合物(12.1g)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによれば、得られた正孔輸送材料Bのポリスチレン換算の重量平均分子量は3.0×10であり、分子量分布指数(Mw/Mn)は3.1であった。
【0264】
正孔輸送材料Bは、下記式:
【化27】

で表される構成単位と、下記式:
【化28】

で表される構成単位と、下記式:
【化29】

で表される構成単位とを62.5:30:7.5のモル比(原料の仕込量からの理論値)にて有する共重合体である。
【0265】
<合成例5>(発光材料Bの合成)
フラスコ内を不活性ガス雰囲気下とした後、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(9.0g、16.4mmol)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)1,4−フェニレンジアミン(1.3g、1.8mmol)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(4−ヘキシルフェニル)フルオレン(13.4g、18.0mmol)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(43.0g、58.3mmol)、酢酸パラジウム(8mg、0.04mmol)、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.05g、0.1mmol)、及び、トルエン(200mL)を混合し、混合物を90℃で8時間加熱攪拌した。次いで、フェニルボロン酸(0.22g、1.8mmol)を添加し、得られた混合物を14時間撹拌した。放冷後、水層を除去し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を添加し撹拌した後、水層を除去し、有機層を水、3重量%酢酸水で順次洗浄した。有機層をメタノールに注いでポリマーを沈殿させた後、濾取したポリマーを再度トルエンに溶解させ、シリカゲルカラム及びアルミナカラムに通液した。ポリマーを含む溶出トルエン溶液を回収し、回収した前記トルエン溶液をメタノールに注いでポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを50℃で真空乾燥し、発光材料Bである高分子化合物(12.5g)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによれば、得られた発光材料Bのポリスチレン換算の重量平均分子量は3.1×10であり、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.9であった。
【0266】
発光材料Bは、下記式:
【化30】

で表される構成単位と、下記式:
【化31】

で表される構成単位と、下記式:
【化32】

で表される構成単位とを50:45:5のモル比(原料の仕込量からの理論値)にて有する共重合体である。
【0267】
<実施例1>(発光素子k−1の作製)
第一に、陽極としてITOが成膜されたガラス基板のITOの上に、正孔注入材料溶液として、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸(H.C.Starck製、PEDOT:PSS溶液、商品名:CLEVIOS(登録商標) P VP Al 4083)0.5mLを塗布し、スピンコート法によって、厚さが70nmになるように成膜した。こうして得られた成膜ガラス基板を空気中で、200℃で10分間加熱した後、基板を室温まで自然に冷却させることにより、正孔注入層が形成されたガラス基板Aを得た。
【0268】
第二に、正孔輸送材料B 5.2mgとキシレン1mLとを混合し、正孔輸送材料Bが0.6重量%の正孔輸送層用組成物を調製した。
【0269】
正孔輸送層用組成物をスピンコート法により、正孔注入層が形成されたガラス基板A上に塗布し、厚さ33nmの塗膜を形成させた。この塗膜を形成させたガラス基板を窒素雰囲気下で、200℃で20分間加熱し、塗膜を不溶化させた後、室温まで自然に冷却させることにより、正孔輸送層が形成されたガラス基板Bを得た。
【0270】
第三に、発光材料B 11.3mgとキシレン1mLとを混合し、発光材料Bが1.3重量%の発光層用組成物を調製した。
【0271】
この発光層用組成物をスピンコート法により、正孔輸送層が形成されたガラス基板B上に塗布し、厚さ99nmの塗膜を形成させた。この塗膜を形成させた基板を窒素雰囲気下で、130℃で15分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然に冷却させることにより、発光層が形成されたガラス基板Cを得た。
【0272】
第四に、約1.0重量部の銀ナノ構造体Aに、約0.2重量部の共役化合物P−1、約0.07重量部の水酸化セシウム1水和物、約98.73重量部のメタノールを混合し、1時間攪拌を行うことで金属複合体組成物分散液(100重量部)を得た。この分散液には、合成例3で得られた金属複合体C(銀ナノ構造体Aに共役化合物P−1が吸着した複合体)とイオン性化合物(水酸化セシウム1水和物)とが分散している。
【0273】
この金属複合体組成物分散液をキャスティング法により、発光層が形成されたガラス基板C上に塗布し、本発明の金属複合体組成物を含む積層構造体m−1を得た。ここで、金属複合体組成物は陰極として作用する。
【0274】
最後に、この陰極が形成された積層構造体m−1を、窒素雰囲気下で、封止ガラスと2液混合型エポキシ樹脂(Robnor resins社製、商品名:PX681C/NC)にて封止することにより、発光素子k−1を作製した。
【0275】
発光素子k−1に12Vの順方向電圧を印加し、再度12Vの順方向電圧を印加し、発光輝度を測定した結果、77.8cd/mの輝度を得た。発光素子k−1は、両面発光素子である。陽極寄りの側と陰極寄りの側との発光輝度をあわせた発光素子k−1全体の発光輝度は、前記数値のおよそ2倍となる。
【0276】
<比較例1>(発光素子k−2作製)
実施例1において、金属複合体組成物分散液の代わりに、約1.0重量部の銀ナノ構造体Aに、約0.2重量部の共役化合物P−1、約98.8重量部のメタノールを混合し、1時間攪拌を行うことで得た金属複合体分散液(100重量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして、発光素子(以下、「発光素子k−2」と言う。)を作製した。発光素子k−2に12Vの順方向電圧を印加し、発光輝度を測定した結果、1.1cd/mの輝度を得た。発光素子k−2は、両面発光素子である。陽極寄りの側と陰極寄りの側との発光輝度をあわせた発光素子k−2全体の発光輝度は、前記数値のおよそ2倍となる。
【0277】
<実施例2>(発光素子k−3の作製)
実施例1において、金属複合体組成物分散液の代わりに、約1.0重量部の銀ナノ構造体Aに、約0.2重量部の共役化合物P−1、約0.01重量部の酢酸セシウム、約98.79重量部のメタノールを混合し、1時間攪拌を行うことで得た金属複合体組成物分散液(100重量部)を用いた以外は、実施例1と同様にして、発光素子(以下、「発光素子k−3」と言う。)を作製した。発光素子k−3に15Vの順方向電圧を印加した結果、発光輝度は370cd/mであった。
【0278】
<実施例3>(発光素子k−4の作製)
実施例2において、酢酸セシウムの代わりに安息香酸セシウムを用いた以外は、実施例2と同様にして、発光素子(以下、「発光素子k−4」と言う。)を作製した。発光素子k−4に15Vの順方向電圧を印加した結果、発光輝度は460cd/mであった。
【0279】
<実施例4>(発光素子k−5の作製)
実施例2において、酢酸セシウムの代わりに4-ピリジンカルボン酸セシウムを用いた以外は、実施例2と同様にして、発光素子(以下、「発光素子k−5」と言う。)を作製した。発光素子k−5に15Vの順方向電圧を印加した結果、発光輝度は195cd/mであった。
【0280】
<評価>
本発明の金属複合体組成物等を含む発光素子は、本発明の金属複合体組成物等を含まない発光素子に比べて、発光輝度が優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)分子量200以上の共役化合物がアスペクト比1.5以上の金属ナノ構造体に吸着されてなる金属複合体、及び、(2)イオン性化合物を含む、金属複合体組成物。
(ここで、イオン性化合物が共役化合物の場合、イオン性化合物である共役化合物の分子量は200未満である。)
【請求項2】
前記イオン性化合物が、下記式(hh−1)で表される構造を有する化合物である、請求項1に記載の金属複合体組成物。
【化1】

(式中、
m’+は、金属カチオンを表す。X’n’−はアニオンを表す。
a及びbはそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
m’+及びX’n’−の各々は複数存在する場合には、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記金属カチオンが、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンである、請求項2に記載の金属複合体組成物。
【請求項4】
前記分子量200以上の共役化合物が芳香族化合物であり、前記金属ナノ構造体が周期表第11族金属の金属ナノ構造体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属複合体組成物。
【請求項5】
前記分子量200以上の共役化合物がヘテロ原子を含む基を有する芳香族化合物である、請求項4に記載の金属複合体組成物。
【請求項6】
前記へテロ原子を含む基が、
メルカプト基、メルカプトカルボニル基、メルカプトチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、シアノ基、アミノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルアミノ基、ホスフィノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルホスフィノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルホスフィノ基、式:−P(=O)(OH)で表される基、スルホ基、1価の複素環基、ハロゲン原子、ホルミル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ニトロ基、式:−OP(=O)(OH)で表される基、カルバモイル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルバモイル基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルカルバモイル基、式:−C(=S)NRで表される基、式:−B(OH)で表される基、式:−BRで表される基、ホウ酸エステル残基、式:−Si(OR)で表される基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニル基、スルフィノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルフィノ基、式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NRで表される基、式:−SC(=O)NRで表される基、式:−OC(=S)NRで表される基、式:−SC(=S)NRで表される基、式:−NRC(=O)NRで表される基、及び、式:−NRC(=S)NRで表される基からなる群(グループ1)から選ばれる1価の基である、請求項5に記載の金属複合体組成物。
(式中、Rは、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)
【請求項7】
前記へテロ原子を含む基が、
2個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基、2個以上のエステル結合を有するヒドロカルビル基、2個以上のアミド結合を有するヒドロカルビル基、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CSMで表される基、式:−OMで表される基、式:−COMで表される基、式:−NMで表される基、式:−NHMで表される基、式:−NRMで表される基、式:−POMで表される基、式:−OP(=O)(OM)で表される基、式:−P(=O)(OM)で表される基、式:−C(=O)NMで表される基、式:−C(=O)NHMで表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NHMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NMで表される基、式:−B(OM)で表される基、式:−BRMで表される基、式:−B(OR)Mで表される基、式:−SOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NMで表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NMで表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NMで表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NMで表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NMで表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NMで表される基、式:−NRC(=S)NRMで表される基、式:−NRM’で表される基、式:−PRM’で表される基、式:−ORM’で表される基、式:−SRM’で表される基、式:−IRM’で表される基、及び、カチオン化された窒素原子を複素環内に有する1価の複素環基からなる群(グループ2)から選ばれる1価の基である、請求項5に記載の金属複合体組成物。
(式中、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、Mは、金属カチオン、又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表し、M’は、アニオンを表す。)
【請求項8】
前記分子量200以上の共役化合物が、前記グループ1から選ばれる基及び前記グループ2から選ばれる基の各々を少なくとも1種類ずつ有する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の金属複合体組成物。
【請求項9】
前記分子量200以上の共役化合物が、
下記式(I)で表される基若しくは下記式(II)で表される繰り返し単位、又は、これらの両方を有する、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属複合体組成物。
【化2】

(式中、
Arは(n+1)価の芳香族基を表し、Rは直接結合又は(m+1)価の基を表し、Xはヘテロ原子を含む基を表す。
及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。
、X及びmの各々は複数存在する場合には、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【化3】

(式中、
Arは(n+2)価の芳香族基を表し、Rは直接結合又は(m+1)価の基を表し、Xはヘテロ原子を含む基を表す。
及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。
、X及びmの各々は複数存在する場合には、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項10】
Arで表される(n+1)価の芳香族基及びArで表される(n+2)価の芳香族基が、それぞれ、
下記の式のいずれか一つで表される芳香族化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する(n+1)個の水素原子を取り除いた残基及び(n+2)個の水素原子を取り除いた残基であって、
更に置換基を有していてもよいものである、請求項9に記載の金属複合体組成物。
【化4】

【請求項11】
前記分子量200以上の共役化合物が、
下記の式で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を有する高分子化合物である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の金属複合体組成物。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

(式中、
は2以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、
Rは、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)
【請求項12】
前記分子量200以上の共役化合物が、
式(b−6)、(b−34)、(b−37)、(c−1)、(c−2)、(c−3)、(c−4)、(d−38)、(d−41)及び(d−42)で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を有する高分子化合物である、請求項11に記載の金属複合体組成物。
【請求項13】
金属ナノ構造体が銀ナノ構造体である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の金属複合体組成物。
【請求項14】
X線光電子分光法により求められる金属複合体中に存在する一つ以上の原子のピークが、分子量200以上の共役化合物の原子由来のピークを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の金属複合体組成物。
【請求項15】
前記分子量200以上の共役化合物の最高占有分子軌道(HOMO)の軌道エネルギーが、−4.5eV以下である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の金属複合体組成物。
【請求項16】
前記分子量200以上の共役化合物の最低非占有分子軌道(LUMO)の軌道エネルギーが、−3.5eV以上である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の金属複合体組成物。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の金属複合体組成物と、分子量200以上の共役化合物とを含有する混合物。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の金属複合体組成物を含む薄膜。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の金属複合体組成物を含む電極材料。
【請求項20】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の金属複合体組成物を含む電子素子。
【請求項21】
発光素子である請求項20に記載の電子素子。
【請求項22】
光透過性を有する請求項20に記載の電子素子。
【請求項23】
光電変換素子である請求項20に記載の電子素子。
【請求項24】
基板と、該基板上に形成された請求項1〜16のいずれか一項に記載の金属複合体組成物を含む層とを有する、積層構造体。
【請求項25】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の金属複合体組成物を含む配線材料。

【公開番号】特開2012−207223(P2012−207223A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58979(P2012−58979)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】