説明

金属調軟質高分子成形体

【課題】軟質高分子成形体に優れた金属調を実現し、トップコート層を設けた場合であっても光沢が喪失せず元来の金属調を維持することができる金属調軟質高分子成形体の提供。
【解決手段】軟質高分子成形体11に金属薄膜層13を有する金属調軟質高分子成形体10について、金属薄膜層13を、長手方向の最大長が5μm以内の蒸着金属粒でなる多数の島部が不連続に密集する平坦な表面構造を有するものとし、かつその層厚を20nm〜100nmとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質高分子成形体の表面に金属調の加飾がなされた金属調軟質高分子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形体の表面に金属薄膜層を有する金属調樹脂成形体は、樹脂成形体の表面にめっきや蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの方法により金属薄膜層を形成して得られることが知られており、蒸着などによれば、光沢性の良い、いわゆる鏡面状の加飾を実現でき金属薄膜層は金属板などと同様な金属光沢を放つことができるものとなる。このような場合、金属の被膜を硬質な樹脂の表面に形成させるのが一般的であり、剥離しにくい密着性の高い表面被膜が得られる。
【0003】
ところが、この硬質の樹脂成形体に代えて軟質高分子成形体を用いた場合は、成形体の変形とともに金属薄膜層も連動して変形することで金属薄膜層に割れが発生したり、白濁して見えてしまったりする不都合がある。また、軟質高分子成形体には軟質性を付与するための種々の添加剤が混入されている場合も多く、添加剤成分の染み出しによって金属薄膜層が剥離し易くなり、また、光沢が変化し易いという問題がある。
【0004】
こうした問題は、金属薄膜層が一様に連続した膜として形成される場合に起こることが知られており、この問題を解決するためには、金属薄膜層を一様な連続膜として形成しないようにすることが提案されている。例えば、特開平11−34220号公報(特許文献1)では微細な金属粒を形成するものとして構成したり、特開平11−131213号公報(特許文献2)では、連続膜として形成した金属薄膜層を加熱することでクラックを有する金属薄膜層として構成することが提案されている。
【特許文献1】特開平11−34220号公報
【特許文献2】特開平11−131213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法で形成された金属薄膜層は、その表面にトップコート層を設けると白濁してしまい、金属光沢を保てない場合がある。その原因は定かではないが、トップコートを形成する際に、金属薄膜層を形成している金属の微粒子にトップコート層用インキが入り込み、金属の微粒子の配列を乱すため、金属の微粒子に当たる光が干渉し乱反射を引き起こすことが原因であると推測される。また、予めクラックを形成する特許文献2に記載の方法では、クラックの大きさを制御することが困難であり、安定した製造条件が得られないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明では、軟質高分子成形体に優れた金属調を実現し、トップコート層を設けた場合であっても光沢が喪失せず優れた金属調を維持することができ、不具合の起こりにくい高品質の金属調軟質高分子成形体を得ることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、軟質高分子成形体に金属薄膜層を有する金属調軟質高分子成形体であって、金属薄膜層は、長手方向の最大長が5μm以内の蒸着金属粒でなる多数の島部が不連続に密集する平坦な表面構造を有し、かつ層厚が20nm〜100nmである金属調軟質高分子成形体を提供する。
【0008】
金属薄膜層は、長手方向の最大長が5μm以内の蒸着金属粒でなる多数の島部が不連続に密集する平坦な表面構造を有し、かつ層厚が20nm〜100nmとしたため、白濁することがなく、優れた金属光沢を有する金属調軟質高分子成形体とできる。また、トップコート層を設けても白濁することなく、優れた金属光沢を有するものとすることができる。さらに、所定の蒸着により製造できるため、安定した製造が可能であり、製造コストが安く、安定して不具合のない品質が得られる金属調軟質高分子成形体とすることができる。
【0009】
そして本発明は、金属薄膜層が、走査型電子顕微鏡での表面写真によって35μm×50μmの範囲内で、島部の抜けまたは前記最大長を超える大きさの島部の存在箇所が2つ以下である金属調軟質高分子成形体とすることができる。
【0010】
すなわち、金属薄膜層の多数の島部が不連続に密集する表面構造を、走査型電子顕微鏡での表面写真による表面状態が、金属薄膜層表面の35μm×50μmの範囲内で、島部の抜けまたは前記最大長を超える大きさの島部の存在箇所が2つ以下であるととらえることができる。所定の範囲内での島部の抜けや最大長を超える大きさの島部の合計の存在箇所が2つ以下であれば、白濁することがなく、優れた金属光沢を有する金属調軟質高分子成形体とすることができ、また、トップコート層を設けても白濁することがない。
【0011】
軟質高分子成形体には、JIS K 6253のA硬度が50〜95のゴム状弾性体を用いることができる。軟質高分子成形体の硬度がJIS K 6253硬度のA硬度で50〜95であるゴム状弾性体を用いたため、軟質高分子成形体が大きく変形することがあっても、その変形に応じて金属薄膜層を構成する金属粒が追随し、金属薄膜層としての割れや、はがれが生じにくい。そして、白濁することがなく、優れた金属光沢を有する金属調軟質高分子成形体とすることができ、トップコート層を設けても白濁することがない。そのため、屈曲性が必要な用途に用いても金属光沢が劣ることがなく、安定した金属調の外観を保持することができる。さらに、所定の蒸着により製造できるため、製造コストが安く、安定して製造しうる金属調軟質高分子成形体とすることができる。
【0012】
また、軟質高分子成形体は熱可塑性エラストマーでなるものとすることができる。軟質高分子成形体を熱可塑性エラストマーとすることで、優れた金属光沢を有し金属と同様の外観を有する柔らかな成形体を得ることができる。また、熱可塑性を有しながら、金属薄膜層の割れやはがれの生じにくい金属調軟質高分子成形体とすることができる。
【0013】
また、本発明は、金属薄膜層の軟質高分子成形体側とは反対側の面にトップコート層を設けることができる。金属薄膜層の軟質高分子成形体側とは反対側の面にトップコート層を有する金属調軟質高分子成形体であれば、優れた金属光沢と、製造し易さを有しながら、耐磨耗性等にも優れた金属調軟質高分子成形体となる。
【0014】
軟質高分子成形体と金属薄膜層の間にベースコート層を有する金属調軟質高分子成形体とすることができる。軟質高分子成形体と金属薄膜層の間にベースコート層を有する金属調軟質高分子成形体であれば、金属薄膜層の密着性が良好で、軟質高分子成形体の表面状態が多少悪い場合でも、金属光沢を有し、安定して製造しうる金属調軟質高分子成形体とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の金属調軟質高分子成形体によれば、金属薄膜層の上にトップコート層を設けた場合であっても、白濁することがなく、優れた金属光沢を有する金属調軟質高分子成形体である。また、その製造が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の金属調軟質高分子成形体についてさらに詳しく説明する。なお、各実施形態の説明において、先の実施形態で説明したものと同じ材料、同じ製造方法などとなる場合は重複説明を省略する。
【0017】
第1実施形態; 図1には本発明の第一実施形態である金属調軟質高分子成形体10の層構成を示す。この金属調軟質高分子成形体10は、軟質高分子成形体11の表面に樹脂膜でなるベースコート層11を有し、その表面に金属薄膜層13、さらにその表面にトップコート層14を有している。
【0018】
軟質高分子成形体11には、JIS K 6253のA硬度で20〜100の硬度を有する高分子材料を用いることができるが、特に、JIS K 6253のA硬度で50〜95である柔らかな高分子材料を用いることができる。これらの材料には、軟質樹脂や熱可塑性エラストマーなどのゴム状弾性体が挙げられる。具体的には、軟質樹脂として、軟質アクリル、塩ビ、オレフィン系樹脂が挙げられ、また、ゴム状弾性体として、エチレン系、スチレン系、ウレタン系、オレフィン系、ポリエステル系、エーテル系、ポリアミド系等の各種熱可塑性エラストマーや、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムや天然ゴムが挙げられる。
【0019】
また、軟質高分子成形体11に用いる材料は、ベースコート層11との密着性がよく、その軟質高分子成形体11の成分が染み出さない種類のものが好ましい。この観点から、未反応モノマーが少なく、液状の添加剤等の含有が少ない材料とすることが好ましく、単一、または、より少ない構成単位よりなる重合体であることが好ましい。また、軟質高分子成形体として熱可塑性エラストマーを用いることは好ましい。熱可塑性エラストマーを用いれば、柔らかな材料で表面を金属調に装飾することができるからである。軟質高分子成形体11は、原材料となる軟質高分子を射出成形などで成形することで得られる。
【0020】
ベースコート層12は基材である軟質高分子成形体11と金属薄膜層13との両方に密着性があり、金属薄膜層13の軟質高分子成形体11への固着力を高めるために設けられる層である。具体的には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エーテル樹脂及び硝化綿(ニトロセルロース)系樹脂よりなる蒸発乾燥型、紫外線硬化型、加熱硬化型の樹脂を用いて形成することができる。また、ベースコート層12は、軟質高分子成形体11の変形時にはその変形に追随して柔軟に屈曲する材質が好ましく、この観点からウレタン系またはアクリルウレタン系樹脂を用いることが好ましい。ベースコート層12の形成は、軟質高分子成形体11の表面に印刷、塗布など種々の方法により塗工して形成することができる。
【0021】
金属薄膜層13は、薄厚の金属層であり、蒸着法により形成することができる層である。用いられる金属としては、アルミニウム、クロム、銅、ゲルマニウム、金、インジウム、鉄、鉛、マグネシウム、ニッケル、パラジウム、白金、銀、錫、チタン、亜鉛などが挙げられる。アルミニウム、銀、インジウム、マグネシウム、錫などは、その融点が低く、金属薄膜を容易に形成できる点で好ましい。
【0022】
軟質高分子成形体11への金属薄膜層13の形成は、蒸着装置を用い、金属を蒸着装置の空間内に均一かつ直線的に飛散させて形成することができる。金属を蒸着装置の空間内に均一かつ直線的に飛散させることで、一様に不連続な金属粒で構成される金属薄膜層13を軟質高分子成形体11に形成することができる。これに対し、蒸発した金属が均一かつ直線的に飛散しない場合は、蒸着装置内で金属濃度が不均一となり、偏りが生じて表面に凹凸がある金属薄膜層となる。
【0023】
金属薄膜層13の層厚は、20nm〜100nmとすることで金属光沢が十分に発揮され、高級感のある金属調軟質成形体とすることができる。20nmより薄いと、金属調といえる程度に十分な金属光沢を得ることができず、黒みがかった発色を呈してしまう。また、100nmを超えるとトップコート層14を設けた際に白濁した金属光沢となってしまい、金属薄膜層13に亀裂が生じやすくなる。
【0024】
トップコート層14は、金属薄膜層13の保護、傷つき防止の機能を有する層であり、金属薄膜層13との密着性、耐摩耗性、耐薬品性、軟質高分子成形体11の変形に対する追従性などに優れた性質を持つことが好ましい。トップコート層14として用いることのできる材料には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エーテル樹脂及び硝化綿(ニトロセルロース)系樹脂よりなる蒸発乾燥型、紫外線硬化型、加熱硬化型の樹脂を挙げることができるが、特に架橋型の樹脂を用いることが好ましい。トップコート層14の形成は、金属薄膜層13の表面に印刷、塗布など種々の方法により塗工して形成することができる。
【0025】
こうして得られる金属調軟質高分子成形体10の金属薄膜層13の表面状態を図2に示し、比較のため、蒸着条件を種々代えて形成した比較例となる金属調軟質高分子成形体の金属薄膜層の表面写真を図3〜図5に示す。いずれの写真も、金属薄膜層を形成した後のその表面を、走査型電子顕微鏡で25000倍に拡大したものである。図2〜図5のいずれにおいても写真上の一目盛りは2μmを表す。
【0026】
図2で示す電子顕微鏡写真は、試料1とした金属調軟質高分子成形体10の金属薄膜層13の表面写真である。試料1の詳細は後述する。試料1の金属調軟質高分子成形体10は、金属薄膜層13を設けた際、また、その後のトップコート層14を設けた際も、鏡面状の金属光沢を有し、白濁することなく、優れた金属光沢を有している。これは、金属薄膜層13が、不連続に密集した金属粒で平坦に形成されているため、トップコート層14に対して安定しており、金属粒の変化がないためと考えられる。すなわち、この金属調軟質高分子成形体10の表面は、長手方向の最大長が5μm以内の蒸着金属粒でなる多数の島部が不連続に密集する平坦な表面構造を有し、島部の抜けまたは前記最大長を超える大きさの島部の存在、あるいは、周囲の島部とはコントラストが相違し白く視認される島部が1つも無いように見える。また、金属薄膜層13の他の表面を観察しても、走査型電子顕微鏡での表面写真による表面状態が、金属薄膜層表面の35μm×50μmの範囲内でこのような箇所が2つ以下である。この金属薄膜層13の所定の2点間の抵抗値を計測すると1GΩ程度となり、金属薄膜層13は金属粒で形成された不連続体であって、電気的に絶縁状態にあると考えられる。
【0027】
これに対し、比較例となる試料2の金属調軟質高分子成形体は、その金属薄膜層の表面写真を図3で示すが、金属薄膜層を設けた際は、白濁することが無い優れた金属光沢を有しているものの、トップコート層を設けた後は、白濁してしまい、金属光沢の無い金属調軟質高分子成形体となる。これは、金属薄膜層を形成している金属粒が崩れるためと考えられる。この金属調軟質高分子成形体の表面は、周囲の島部とはコントラストが異なり白く視認される島部が見え、隣接する島部に対し凹凸を有し、平坦な平面となっていないものと推測される。これは、金属が蒸着槽の空間内に均一かつ直線的に飛散せず、偏った分布で飛散してできたものであり、金属薄膜層が連続体となっていると考えられる。
【0028】
また、比較例となる試料3の金属調軟質高分子成形体は、金属薄膜層の表面写真を図4で示すが、試料2と同様に、金属薄膜層を設けた際は、白濁することが無く優れた金属光沢を有していたが、トップコート層を設けた後は、白濁してしまい、金属光沢の無い金属調軟質高分子成形体となる。これは、金属粒の濃淡のバラツキがあったため、トップコート層の形成で金属薄膜層のバラツキが増幅されて見えるためと考えられる。この金属調軟質高分子成形体の表面は、試料1と同様に、長手方向の最大長が5μm以内の蒸着金属粒でなる多数の島部が不連続に密集する表面構造が見られるものの、島部の抜けとみられる部分、換言すれば、島部が密集していない部分が3〜4か所見える。これは、フィラメントと被着体との間隔を広くしたため、蒸着槽内の高さ方向でバラツキが生じたまま金属薄膜層が形成されたためであり、金属薄膜層が連続体となっていると考えられる。
【0029】
さらに、比較例となる試料4の金属調軟質高分子成形体は、金属薄膜層の表面写真を図5で示すが、金属薄膜層を形成した段階から白濁した金属調軟質高分子成形体となる。この金属調軟質高分子成形体の表面には、長手方向の最大長が5μmを超える大きな金属粒が見える。これは、金属薄膜層の厚みを厚くしたため、蒸着時間も長くなり、金属粒が成長し、または連なってしまったため、金属薄膜層が連続体となっていると考えられる。
【0030】
このように、金属薄膜層の上にトップコート層を設けた場合であっても、白濁することがなく、優れた金属光沢を有する金属調軟質高分子成形体であるかどうかは、金属薄膜層の表面状態を走査型電子顕微鏡で観察することにより、粒状に見える島部の大きさ、島部の抜けの状態、表面の平坦性によって判断することができる。
【0031】
図2〜図5のそれぞれに示す金属薄膜層を形成する金属調軟質高分子成形体のより具体的な製造条件及び電子顕微鏡による撮影条件を次に示す。
【0032】
試料1: JIS K 6253硬度60のポリエステル系熱可塑性エラストマーを成形した軟質高分子成形体12に、ベースコート層12として「オリジプレートZクリヤ」(商品名:オリジン電気株式会社製)の主剤4部に対し「ポリハードR硬化剤」(商品名:オリジン電気株式会社製)の1部を混合し、「オリジンシンナー#210No.3」(商品名:オリジン電気株式会社製)を加えて粘度調整したアクリル系ウレタン塗料を塗布し、80℃、30分での乾燥硬化後の層厚を10μmとした。その後、該成形体とフィラメントとの間を100mm〜200mmとした真空蒸着装置にて、電流値が100アンペア〜200アンペア、時間が30秒〜2分、で適宜調整してインジウム(純度99.9%、株式会社ニラコ製)を該成形体に蒸着させ、層厚が20nmの金属薄膜層13を形成した。走査型電子顕微鏡による写真撮影は、「走査型電子顕微鏡S−3000N」(商品名:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、この金属薄膜層13の表面を倍率25,000倍にて撮影したものである。その後、トップコート層14として、「オリジプレートセットMPクリヤ」(商品名:オリジン電気株式会社製)の主剤4部に対し、前記ポリハードR硬化剤の1部を混合し、前記オリジンシンナー#210No.3を加えて粘度調整したアクリル系ウレタン塗料を塗布し、90℃、30分での乾燥硬化後の層厚を10μmとした。こうして試料1とする金属調軟質高分子成形体10を得た。
【0033】
試料2: フィラメントの種類を代えた以外は、試料1と同様にして製造し、同様に撮影した。
【0034】
試料3: 蒸着を施す成形体とフィラメントとの間を約240mmとした以外は、試料1と同様にして製造し、同様に撮影した。
【0035】
試料4: 金属薄膜層の形成時間を試料1の場合よりも長くし、金属薄膜層の厚みを120nmとした以外は、試料1と同様にして製造し、同様に撮影した。
【0036】
第2実施形態; 第2実施形態による金属調軟質高分子成形体20を図6に示す。金属調軟質高分子成形体20は、第1実施形態で示した金属調軟質高分子成形体10においてベースコート層12を設けない構造としたものであり、軟質高分子成形体11、金属薄膜層13、トップコート層14が積層した層構成を有している。
【0037】
金属調軟質高分子成形体20を構成する材料、製造方法については、ベースコート層を除き、第1実施形態で示した材料、製造方法と同じである。
【0038】
また、金属薄膜層13の表面状態を走査型電子顕微鏡写真で観察すると、第1実施形態における試料1と同様の表面状態が観察された。
【0039】
第3実施形態; 第3実施形態による金属調軟質高分子成形体30を図7に示す。金属調軟質高分子成形体30は、軟質高分子成形体11に金属薄膜層13が積層した層構成を有している。ベースコート層12及びトップコート層14が形成されていない以外は第1実施形態と同じである。
【0040】
金属調軟質高分子成形体30を構成する材料、製造方法については、ベースコート層12、トップコート層14を除き、第1実施形態で示した材料、製造方法と同じである。
【0041】
また、金属薄膜層13の表面状態を走査型電子顕微鏡写真で観察すると、第1実施形態における試料1と同様の表面状態が観察された。
【0042】
実施形態の変更例; 上記各実施形態については、ベースコート層12、金属薄膜層13、トップコート層14の他に、金属調軟質高分子成形体10,20,30に着色を与える着色層や、金属薄膜層13の金属光沢を発揮させないための被覆層、文字や記号などを付与する表示層などを形成することも可能である。
【0043】
第1実施形態の部分で説明した試料1〜試料4は、いずれも真空蒸着装置により形成したものであるが、同様の表面構造は真空蒸着以外にも、イオンプレーティング、スパッタリングなどの方法によって形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
金属調軟質高分子成形体10,20,30は、柔軟性がありながら表面光沢に優れた金属調の材料であり、金属調のデザインが要求される柔らかな部材、例えば、柔らかなジャックカバーやロボットおもちゃなど可撓性のある材料への利用をはじめ、質量低減が要求される部材などへの利用など種々の用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態による金属調軟質高分子成形体の模式断面図。
【図2】試料1とした本発明の第1実施形態による金属調軟質高分子成形体の金属薄膜層表面の電子顕微鏡写真図。
【図3】試料2とした比較例による金属調軟質高分子成形体の金属薄膜層表面の電子顕微鏡写真図。
【図4】試料3とした比較例による金属調軟質高分子成形体の金属薄膜層表面の電子顕微鏡写真図。
【図5】試料4とした比較例による金属調軟質高分子成形体の金属薄膜層表面の電子顕微鏡写真図。
【図6】本発明の第2実施形態による金属調軟質高分子成形体の模式断面図。
【図7】本発明の第3実施形態による金属調軟質高分子成形体の模式断面図。
【符号の説明】
【0046】
10,20,30 金属調軟質高分子成形体
11 軟質高分子成形体
12 ベースコート層
13 金属薄膜層
14 トップコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質高分子成形体に金属薄膜層を有する金属調軟質高分子成形体であって、
金属薄膜層は、長手方向の最大長が5μm以内の蒸着金属粒でなる多数の島部が不連続に密集する平坦な表面構造を有し、かつ層厚が20nm〜100nmである金属調軟質高分子成形体。
【請求項2】
金属薄膜層は、走査型電子顕微鏡での表面写真によって、35μm×50μmの範囲内で、島部の抜けまたは前記最大長を超える大きさの島部の存在箇所が2つ以下である請求項1記載の金属調軟質高分子成形体。
【請求項3】
軟質高分子成形体は、JIS K 6253のA硬度が50〜95のゴム状弾性体である請求項1または請求項2記載の金属調軟質高分子成形体。
【請求項4】
軟質高分子成形体が、熱可塑性エラストマーでなる請求項1〜請求項3何れか1項記載の金属調軟質高分子成形体。
【請求項5】
金属薄膜層の軟質高分子成形体側とは反対側の面にトップコート層を有する請求項1〜請求項4何れか1項記載の金属調軟質高分子成形体。
【請求項6】
軟質高分子成形体と金属薄膜層の間にベースコート層を有する請求項1〜請求項5何れか1項記載の金属調軟質高分子成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−136689(P2007−136689A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329463(P2005−329463)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】