説明

鉄道車両用制動制御システム

鉄道車両の制動システムにおいて、吸気バルブ、排気バルブ及び接続バルブはそれぞれ電子制御装置によって制御されている。電子制御装置は、それぞれの各吸排気バルブによって行われるバルブ動作の回数を計数するカウンター有するとともに、使用時に前記それぞれの吸排気バルブによって行われるバルブ動作の回数に少なくとも部分的に依存して鉄道車両を制動させるために前記吸排気弁のいずれを動作させるかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両における空気圧制動システムを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な鉄道車両は、多数の車や貨車といくつかの列車引通し線とを備える。引通し線は、車両の長さに沿って直列に接続された空気圧及び電気の両方のラインを含む。当該空気圧引通し線の一つは主制動パイプである。従来の装置においては、故障によって制動パイプ内で圧力降下が生じるとブレーキがかかるように、主制動パイプ内の空気圧は車の各台車上の制動アクチュエータを切位置に付勢するようになっていた。
【0003】
通常の点検制動の際、制動を均等にするために全ての制動アクチュエータの制動圧力を同じにすることは通例である。しかし、例えば車輪とレールとの摩擦抵抗が小さいなどのある状況において、均等な制動を保証するために各車軸を独立に制動圧力制御することが必要となる。かかる単独制御は、車輪滑走防止(WSP)として知られ、各車軸の制動圧力を、他の車軸及び/又は台車毎に独立して制御し得ることを要求する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
WO 01/062567は、特に鉄道車両の制動に関し、制動動作出力を制御する方法及び装置を開示している。このシステムにおいて、バルブ装置は、第1及び第2制動動作出力における圧力を制御する第1及び第2制動アクチュエータのための第1及び第2の制動動作出力を有するように提供される。このバルブ装置は、制動出力のぞれぞれに空気を供給する第1及び第2の吸気バルブと、各吸気バルブに対応する第1及び第2の排気バルブと、制動出力の間の接続バルブとを備える。接続バルブは、選択的に、開弁したときには制動出力のぞれぞれの圧力をいずれにも共通して制御し、閉弁したときには独立して制御する。かかる弁制御は、電子制御装置によって判定される。この装置における該弁は、故障の際に少なくとも50%の運用性を保証するように個々に制御される。しかし、WO 01/062567に開示されたような制動システムは、一般に個々のバルブの使用による損傷度が車両の長さに沿って不揃いであるため、制動バルブの寿命が限定されるという問題がある。
【0005】
そこで本発明は寿命の長い制動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、使用時に第1及び第2の空気管路を介して第1及び第2の制動アクチュエータに空気を供給するための空気源と、使用時にそれぞれの吸気バルブの間のエア管路内の空気流量を制御するための追加バルブとを備える鉄道車両用の制動システムであって、前記空気の圧力は、それぞれの吸気バルブ及び排気バルブによって制御される各制動アクチュエータに供給され、それぞれの吸排気バルブ及び追加バルブの動作は電子制御装置によって制御され、該電子制御装置は、それぞれの各吸排気バルブによって行われるバルブ動作の回数を計数するカウンターを有するとともに、使用時に前記それぞれの吸排気バルブによって行われるバルブ動作の回数に少なくとも部分的に依存して鉄道車両を制動させるために前記吸排気弁のいずれを動作させるかを判定する制動システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
好ましい実施形態において、前記電子制御装置は使用時に前記吸排気バルブの使用による損傷度を均等にするように吸排気バルブのいずれを動作させるべきかを判定する。より好ましくは、第1及び第2制動アクチュエータへの圧力の適用がそれぞれの吸排気バルブの組の一方のみによって制御されるように、追加バルブは使用時に前記第1及び第2の空気管路のうちの一方から他方への空気流を許容するように開弁位置で維持される。
【0008】
追加バルブは、吸排気バルブのそれぞれの組の分離した制御を許容するように閉弁されるのが好ましい。吸排気バルブのぞれぞれの組は、使用時に空気流を増加させ又は故障バルブを補償するように並列に制御されるのが好ましい。前記電子制御装置は、吸排気バルブのいずれを吸排気バルブのバルブ動作の総回数に基づいて動作させるかを判定するのが好ましい。好ましくは、前記電子制御装置は、それぞれの吸排気バルブのいずれを動作させるかを判定し、所定回数の制動動作の後には吸排気バルブのそれぞれの組の間で交互とする。
【0009】
他の実施形態において、前記電子制御装置は、それぞれの吸排気バルブのいずれを動作させるかを判定し、所定のインターバルタイムの後には吸排気バルブのそれぞれの組の間で交互にしてもよい。
【実施例】
【0010】
本発明の典型的な実施例を以下図面を参照しつつより詳細に説明する。
【0011】
図1は、使用時に第1及び第2の管路2,3へ空気を供給する空気供給源1を有する複車軸台車鉄道車両用の制動システムの模式図を示す。各管路2,3は第1及び第2の制動アクチュエータ10,11に供給し、各管路にはそれぞれの吸気バルブ4,6が設けられている。各吸気バルブ4,6はそれぞれの排気バルブ5,7に接続され、排気バルブは大気への排気を提供する。追加の空気接続路8が管路2,3の間に設けられ、該接続路には管路2,3間の空気流量を制御するための連係バルブ9が設けられている。制動アクチュエータ10,11は、車軸12,13を制動させるそれぞれの制動シリンダーBC1,BC2に圧力を供給する。
【0012】
上記システムは、さらに、吸気バルブ4,6、排気バルブ5,7及び連係バルブ9の動作を制御するための電子制御装置20を有する。上記の各バルブは、バルブの個々の動作を記録するカウンターを有する。電子制御装置(ECU)20は、軌道に対する車輪の摩擦抵抗(車輪滑走)が小さいことを検知する各車軸上のセンサーからの入力を有する。ECU20もまた、各制動シリンダーにおける実際の制動圧力を監視する。鉄道車両の各車は、分散制御システムを提供するために独自のECUを有している。
【0013】
使用時に、バルブの動作回数が大きくなると、カウンターの瞬間的な値がRAMのような揮発性メモリーに保持される。次に、カウンターの値は、典型的には百万回以上書換え可能なEEPROM21のような不揮発性メモリーに記憶される。バルブが200万回以上の動作の寿命を有するように、上記データは間欠的にダウンロードされる。
【0014】
ECU20は、吸気バルブ4及び排気バルブ5を備える制御グループと吸気バルブ6及び排気バルブ7を備える制御グループとに分離して、吸排気バルブのそれぞれの組を独立に制御する。通常の点検制動動作では、ECU20は、制御グループの一方若しくは他方を選択するか、或いは制動アクチュエータ10,11における圧力を増大させるか減少させるかを選択する。連係バルブ9は、通常の動作状態の間、管路2,3の間の圧力を均等化させるように開かれている。
【0015】
いずれの制御グループを選択するかは、電子制御装置20によって選択され判定される。その選択は、それぞれのバルブ4,5及び6,7の寿命の総動作回数のようないくつかの基準で行うことができる。別の基準は、グループのバルブ動作の各々のバルブ動作の後、所定回数のバルブ動作の後にはグループを切換える。実際には、車両の制動停止毎にグループを切換えることが妥協点として許容できる。
【0016】
一方の車軸の回転速度が所定量より大きいことによって隣接する車軸と異なるときのように車輪とレールとの検知摩擦抵抗が小さくなると、ECU20は、摩擦抵抗が小さいと判定された車軸を分離するように連係バルブ9を閉じる。ECU20は、次に、レールへの所望の摩擦抵抗を回復させるように車輪滑走保護プログラムに従って吸排気バルブを操作してその車軸のグループを制御する。WSPは、通常、従来の点検制動に比較してバルブ動作の回数が必然的に大きくなり、多数の動作回数がカウンターに記録される。
【0017】
ECU20もまた各制動シリンダーにおける実際の制動圧力を監視し、実際の制動圧力を所定の特性若しくは目標値と比較する。実際の制動圧力と目標値との間の差が所定値を超えると、ECU20は、その応答を改善するように並列に両方の制御グループを操作する。これは、吸排気弁のいずれか一方が開かない際に、台車上の制動アクチュエータの動作を他の管路を介して残った制御グループによって制御できるようにするのに特に有用である。そのような故障を検知するとECUは故障もまた記録する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】制動システムの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に第1及び第2の空気管路を介して第1及び第2の制動アクチュエータに空気を供給するための空気源と、使用時にそれぞれの吸気バルブの間のエア管路内の空気流を制御するための追加バルブとを備える鉄道車両用の制動システムであって、前記空気の圧力は、それぞれの吸気バルブ及び排気バルブによって制御される各制動アクチュエータに供給され、それぞれの吸排気バルブ及び追加バルブの動作は電子制御装置によって制御され、該電子制御装置は、それぞれの各吸排気バルブによって行われるバルブ動作の回数を計数するカウンターを有するとともに、使用時に前記それぞれの吸排気バルブによって行われるバルブ動作の回数に少なくとも部分的に依存して鉄道車両を制動させるために前記吸排気弁のいずれを動作させるかを判定する、制動システム。
【請求項2】
請求項1に記載の制動システムにおいて、前記電子制御装置は使用時に前記吸排気バルブの使用を均等にするように吸排気バルブのいずれを動作させるべきかを判定する、制動システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制動システムにおいて、第1及び第2制動アクチュエータへの圧力の適用がそれぞれの吸排気バルブの組の一方のみによって制御されるように、追加バルブは使用時に前記第1及び第2の空気管路のうちの一方から他方への空気流を許容するように開弁位置で維持される、制動システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の制動システムにおいて、追加バルブは、吸排気バルブのそれぞれの組の分離した制御を許容するように閉弁される、制動システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の制動システムにおいて、吸排気バルブのぞれぞれの組は、使用時に空気流量を増加させ又は故障バルブを補償するように並列に制御される、制動システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の制動システムにおいて、前記電子制御装置は、吸排気バルブのバルブ動作の総回数に基づいて吸排気バルブのいずれを動作させるかを判定する、制動システム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の制動システムにおいて、前記電子制御装置は、それぞれの吸排気バルブのいずれを動作させるかを判定し、所定回数の制動動作の後には吸排気バルブのそれぞれの組の間で交互とする、制動システム。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の制動システムにおいて、前記電子制御装置は、それぞれの吸排気バルブのいずれを動作させるかを判定し、所定のインターバルタイムの後には吸排気バルブのそれぞれの組の間で交互とする、制動システム。

【図1】
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【公表番号】特表2006−525907(P2006−525907A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506236(P2006−506236)
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002011
【国際公開番号】WO2004/098966
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505464914)クノール−ブレームス レール システムス (ユーケー) リミテッド (4)
【Fターム(参考)】