説明

鉛直循環搬送設備

【構成】 棚を鉛直循環させる内部スペースを囲む内壁と、内壁を外側から囲む外壁とを設けて、内部スペースに棚を配置する。棚の対角位置に設けた一対の突出部を、内壁に設けたスリットから内壁と外壁との間の外部スペースに突き出させて、各突出部をエンドレスの駆動部材に取り付け、さらに駆動部材の駆動機構を外部スペース内に設ける。また外部スペースを貫通して内部スペースと設備の外部とを接続する物品の搬出入用のトンネルを設ける。
【効果】 棚を安定した姿勢で鉛直循環させることができ、駆動部などでの発塵で棚などを汚染しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クリーンルーム内で物品を鉛直方向に搬送する設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2002−104641)は鉛直循環搬送設備の例を示している。このような鉛直循環搬送設備をクリーンルーム内に設置する場合、設備の機構部分からの発塵によって、被搬送物品も設備に接続したフロア内スペースも汚染しないようにする必要がある。発明者はこの一方で、設備内を循環する棚を、棚に対してほぼ対角線上に配置した2つのチェーンなどで昇降させることを検討した。棚の対角線位置に2つのチェーンを設ければ、棚を安定して昇降させることができる。しかしこのようにすると棚の前面と背面の双方にチェーンが配置されるので、棚の前面側をチェーンの駆動部で発塵した空気から遮断することが難しい。そこで発明者は、鉛直循環搬送設備の棚をチェーンの駆動部で発塵した空気から遮断すると共に、棚と設備の外部との間で物品を搬出入する際に、発塵した空気が設備の外部に流れ出さないようにすることを検討し、この発明に到った。
【特許文献1】特開2002−104641
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、棚を安定した姿勢で昇降させると共に、棚の駆動部で発塵した空気を、棚からも設備の外部からも遮断することにある。
この発明ので追加の課題は、鉛直循環搬送設備を介して、フロア間での気流が生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、エンドレスの駆動部材に棚を取り付けて鉛直循環させる設備において、
棚を鉛直循環させる内部スペースを囲む内壁と、該内壁を外側から囲む外壁とを設けて、前記内部スペースに棚を配置するとともに、
棚の対角位置に設けた一対の突出部を、内壁に設けたスリットから内壁と外壁との間の外部スペースに突き出させて、前記各突出部をエンドレスの駆動部材に取り付け、さらに前記駆動部材の駆動機構を前記外部スペース内に設け、
かつ前記外部スペースを貫通して内部スペースと設備の外部とを接続する物品の搬出入用のトンネルを設けたことを特徴とする。
【0005】
好ましくは、鉛直循環搬送設備は複数のフロア間で物品を搬送し、かつ少なくとも最下層のフロアは床下に排気スペースを備えており、
前記外部スペースの空気を浄化して前記内部スペースへ供給するためのファンフィルタユニットを設けると共に、
前記内部スペースの気圧を鉛直循環搬送設備の周囲のフロア内の気圧よりも正にし、前記外部スペースの気圧を前記フロア内の気圧よりも負で、フロアの床下に設けた排気スペースよりも正に保つようにする。
なお排気スペースが複数ある場合、外部スペースの気圧を各排気スペースよりも正に保つようにする。
特に好ましくは、前記内部スペースへ設備の外部から空気を取り入れて供給するファンフィルタユニットを設けると共に、前記排気スペースへ前記外部スペースの空気を排気する排気口とを設ける。
【発明の効果】
【0006】
この発明では、棚の対角位置に一対の突出部を設けて、各突出部に駆動部材を取り付け、鉛直循環させる。この結果、安定した姿勢で棚を循環させることができる。設備の内部は内壁で内部スペースと外部スペースとに仕切られ、棚の突出部をスリットから外部スペースへ突き出させて、駆動部材で駆動する。そして駆動部材やその駆動機構を外部スペースに収容する。これらの結果、駆動機構などからの発塵は内部スペースに入りにくくなる。また内部スペースと設備の外部とを外部スペースを貫通するトンネルで接続するので、外部スペースの空気にさらさずに物品を搬出入できる。
【0007】
外部スペースの空気を浄化して内部スペースへ供給するためのファンフィルタユニットを設けると、設備内での発塵を設備内で処理して、外部への汚染空気の排出量を少なくできる。またファンフィルタユニットで内部スペースの気圧を高めると、内部スペースの気圧を設備の周囲のフロア内の気圧よりも容易に高くでき、ファンフィルタユニットでの吸引により、外部スペースの気圧をフロア内の気圧よりも容易に低くできる。
ここで内部スペースへ設備の外部から空気を取り入れて供給するファンフィルタユニットを設けると、内部スペースの気圧を外部のフロアよりもより容易に高くできる。また排気スペースへ外部スペースの空気を排気する排気口を設けると、外部スペースの気圧をより容易に外部のフロアよりも低く、しかも排気スペースよりも高くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0009】
図1〜図4に、実施例の鉛直循環搬送設備2を示す。鉛直循環搬送設備2は2重の筒状に構成され、4はその内部スペースで、クリーン度が最も高いスペースである。6は外部スペースで、内部スペース4を取り巻き、スペース4,6間の内壁8により両者を遮断し、10は外部スペース6を設備の外部から遮断する外壁である。鉛直循環搬送設備2には、図2に示すフロアスペースF1,F2に面してトンネル12を設け、トンネル12は外部スペース6を貫通し、内部スペース4と設備の外部とを接続する。またトンネル12には機械式のシャッタ24を設けて、foup18などの物品を搬出入する際にのみシャッタ24を開く。14はトンネル12の外壁である。
【0010】
内部スペース4内を棚16が鉛直循環し、各棚16は対角線上に一対の突出部28,28を備え、突出部28,28は内壁8に設けたスリット26から、外部スペース6側へ突出している。そして突出部28にはエンドレスのチェーン30やエンドレスベルトなどを取り付け、図2,図3に示すスプロケット34やその駆動部36により、鉛直方向に循環させる。内部スペース4内には、鉛直方向に沿って棚16が2列に平行に配置され、スプロケット34により循環動作する。
【0011】
棚16にはfoup18などの物品を載置し、物品の種類は任意である。またトンネル12にはスカラアームなどを用いた移載ロボット20を設け、シャッタ24を開いた際に、棚16と外部との間でfoup18などを移載できるようにする。ここではシャッタ24の外側に移載ロボット20を配置したが、シャッタ24をトンネル12の出口に配置し、移載ロボット20をトンネル12の内部に配置しても良い。また外部スペース6の適宜の位置にファンフィルタユニット(FFU)22を設けて、外部スペース6内の空気を浄化し、内部スペース4へ送り込む。さらに鉛直循環搬送設備2の例えば天井部にファンフィルタユニット(FFU)32を設けて、設備2の外部の空気を浄化し、内部スペース4へ送り込む。
【0012】
図2に示すように、鉛直循環搬送設備2は複数のフロアスペースF1,F2の間を貫通し、38,40はフロアの床で、ここでは2つのフロアスペースF1,F2間の搬送を示すが、鉛直方向に沿ったフロアスペースの数は任意である。床38の下部には排気スペース42が設けられ、外壁10に排気口44を設けて、外部スペース6内の空気を排気スペース42側へ排気する。なお排気スペース42には一般に吸引ファンが設けられ、雰囲気は負圧に保たれている。
【0013】
実施例の動作を示す。スプロケット34により、チェーン30を介して、棚16が鉛直方向に循環移動する。棚16はほぼ対角線上の2つの位置でチェーン30により支持されているので、foup18からの荷重などでは傾斜しにくく、水平な姿勢で鉛直循環する。棚16が物品の搬出入を行うフロアスペースに到着すると鉛直循環運動を停止し、シャッタ24を開き、移載ロボット20により鉛直循環搬送設備2の外部との間で物品を搬出入する。ここでフロアスペースF1,F2の双方で同時に物品を搬出入する場合、内部スペース4を介してフロアスペースF1,F2間で空気が流れることが考えられる。そしてフロアスペースF1,F2はクリーン度が異なる場合、クリーン度の低いスペースから高いスペースへ向けて気流が生じると、不都合である。
【0014】
鉛直循環搬送設備2内のクリーン度を説明する。上部のファンフィルタユニット32により、内部スペース4にクリーンエアが供給され、スリット26からクリーンエアが外部スペース6へ漏れ出し、排気口44から排気スペース42へ排気される。内部スペース4のクリーン度を、複数のフロアスペースF1,F2中の最高のクリーン度以上とする。外部スペース6は、フロアスペースF1,F2とも内部スペース4とも遮断されているので、クリーン度は適宜でよい。
【0015】
鉛直循環搬送設備2の各部の気圧を図4に模式的に示す。内部スペース4の気圧を、フロアスペースF1,F2の気圧よりも高くし、外部スペース6の気圧をいずれのフロアスペースF1,F2よりも低くし、排気スペース42の気圧を最低とする。またファンフィルタユニット32から内部スペース4内へ常時クリーンエアを供給し、排気口44から外部スペース6の空気を常時排気する。さらにファンフィルタユニット32からの送風量を、シャッタ24からフロアスペースへ流れる空気の量よりも大きくする。このようにすると、シャッタ24を開いても、内部スペース4内の気圧は基本的に変わらず、フロアスペースF1,F2よりも高いままである。シャッタ24を開くと、内部スペース4からフロアスペースF1,F2への気流が生じ、逆向きの気流は生じないので、フロアスペースF1,F2間で空気が混じり合うことがない。従って各フロアスペースのクリーン度を乱さない。

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例の鉛直循環搬送設備の水平方向断面図で、内外のスペースとトンネルとを示す。
【図2】図1のII-II方向に沿った鉛直方向断面図で、内外のスペースとトンネル及びチェーンの配置を示す
【図3】図2のIII−III方向に沿った水平断面図で、チェーンとスプロケットの配置を示す
【図4】実施例の各部での気圧を模式的に示す図
【符号の説明】
【0017】
2 鉛直循環搬送設備
4 内部スペース
6 外部スペース
8 内壁
10 外壁
12 トンネル
14 トンネル外壁
16 棚
18 foup
20 移載ロボット
22,32 ファンフィルタユニット(FFU)
24 シャッタ
26 スリット
28 突出部
30 チェーン
34 スプロケット
36 駆動部
38,40 床
42 排気スペース
44 排気口
F1,F2 フロアスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレスの駆動部材に棚を取り付けて鉛直循環させる設備において、
棚を鉛直循環させる内部スペースを囲む内壁と、該内壁を外側から囲む外壁とを設けて、前記内部スペースに棚を配置するとともに、
棚の対角位置に設けた一対の突出部を、内壁に設けたスリットから内壁と外壁との間の外部スペースに突き出させて、前記各突出部をエンドレスの駆動部材に取り付け、さらに前記駆動部材の駆動機構を前記外部スペース内に設け、
かつ前記外部スペースを貫通して内部スペースと設備の外部とを接続する物品の搬出入用のトンネルを設けたことを特徴とする、鉛直循環搬送設備。
【請求項2】
鉛直循環搬送設備は複数のフロア間で物品を搬送し、かつ少なくとも最下層のフロアは床下に排気スペースを備えており、
前記外部スペースの空気を浄化して前記内部スペースへ供給するためのファンフィルタユニットを設けると共に、
前記内部スペースの気圧を鉛直循環搬送設備の周囲のフロア内の気圧よりも正にし、前記外部スペースの気圧を前記フロア内の気圧よりも負で、フロアの床下に設けた排気スペースよりも正に保つようにしたことを特徴とする、請求項1の鉛直循環搬送設備。
【請求項3】
前記内部スペースへ設備の外部から空気を取り入れて供給するファンフィルタユニットを設けると共に、前記排気スペースへ前記外部スペースの空気を排気する排気口とを設けたことを特徴とする、請求項2の鉛直循環搬送設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−113930(P2009−113930A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289431(P2007−289431)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】