説明

鋼管杭の施工方法

【課題】頭部に上部構造物取付部材を固着する鋼管杭の施工方法において、施工現場で鋼管杭に上部構造物取付部材を溶接する必要のない施工方法を提供すること。
【解決手段】事前にボルトの挿入孔211を形成したプレート21と鋼管杭11を用意し(図1(a))、工場等において鋼管杭11に上部構造物取付部材用のプレート21を溶接して固着し(図1(b))、そのプレート付鋼管杭11を施工現場に搬入して地盤312に埋設し(図1(c))、プレート21と上部構造物の支柱12を取付けたプレート22をボルト23とナット241,242によって結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地盤(地中)に鋼管杭を埋設し、その鋼管杭の頭部にアンテナ、信号機、広告等の支柱や電柱等の上部構造物を設置するときの鋼管杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上部構造物を設置する鋼管杭を埋設する場合、従来例えば図4の施工方法が行われている。
図4(a),(b1)は、鋼管杭を地盤に埋設した状態の断面図を示す。
まず図4(a)について説明する(例えば特許文献1参照)。
事前に円筒状部材(鋼管)62の一端に円盤状のプレート71を溶接により固着した部材(上部構造物取付部材)を作製する。次に地盤312に鋼管杭61を打設して埋設し、その鋼管杭61の頭部に円筒状部材62の他端を溶接により固着する。即ち鋼管杭61の頭部に上部構造物取付部材を接合する。
上部構造物が例えばアンテナの場合、アンテナの支柱(図示せず)を取付けた円盤状のプレート72を、ボルト73とナット741,742によりプレート71に結合する。即ちプレート72を上部構造物取付部材に結合する。その結合の際、必要に応じてプレート71,72の間にグラウト材75を充填する。
【0003】
次に図4(b1)について説明する(例えば特許文献2参照)。
まず鋼管杭61を地盤312に埋設し、その鋼管杭61の頭部外周に、プレート取付金具76を複数個溶接により固着して、プレート71とプレート取付金具76をボルト73とナット741,742によって結合する。即ち図4(b1)の場合、上部構造物取付部材は、プレート取付金具76とプレート71からなる。上部構造物を取付けたプレート(図示せず)は、4(a)と同じように、ボルト73とナット741,742によりプレート71に結合する。
なおプレート取付金具76の側面形状(図4(b1)において左側叉は右側から見た形状)は、図4(b2)のようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−214226号公報
【特許文献2】特開2004−11283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の鋼管杭の施工方法は、鋼管杭11を地盤に埋設し、その埋設した鋼管杭の頭部に上部構造物取付部材を溶接により固着しなければならない。即ち鋼管杭の施工現場において溶接作業が必要になる。施工現場における溶接作業は、難しく危険を伴う場合もあるため、作業効率が悪く施工期間が長くなり、また溶接の品質も十分でない場合がある。
本願発明は、従来の鋼管杭の施工方法の前記問題点に鑑み、鋼管杭の施工を効率的に安全に行うことができ、高品質の溶接が可能な鋼管杭の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載の鋼管杭の施工方法は、事前に頭部に上部構造物取付部材を固着した鋼管杭を用意し、その鋼管杭を地盤に所定の深さまで埋設し、上部構造物取付部材に上部構造物を結合することを特徴とする。
請求項2に記載の鋼管杭の施工方法は、請求項1に記載の鋼管杭の施工方法において、前記上部構造物取付部材は、プレートであることを特徴とする。
請求項3に記載の鋼管杭の施工方法は、請求項1叉は請求項2に記載の鋼管杭の施工方法において、前記鋼管杭は、先端にスクリュー状の翼を備えていることを特徴とする。
請求項4に記載の鋼管杭の施工方法は、請求項3に記載の鋼管杭の施工方法において、前記鋼管杭は回転して圧入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、事前に工場等の設備の整った場所において鋼管杭に上部構造物取付部材を溶接して固着するから、施工現場において鋼管杭に上部構造物取付部材を溶接する必要がない。したがって本願発明は、鋼管杭の施工を容易に安全に効率的に行うことができ、施工期間を短縮できる。また鋼管杭と上部構造物取付部材との接合(溶接)は、設備の整った工場等で行うから、高品質の溶接が可能になる。
本願発明は、翼付鋼管杭を回転して圧入するから、鋼管杭11に上部構造物取付部材を取付けた状態で鋼管杭を円滑に埋設できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本願発明の実施例に係る鋼管杭の第1の施工方法を説明する図である。
【図2】図2は、本願発明の実施例に係る鋼管杭の第2の施工方法を説明する図である。
【図3】図3は、図1、図2の施工方法に用いるプレートの構造と鋼管杭の先端部の構造を示す。
【図4】図4は、従来の鋼管杭の施工方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜3により本願発明の実施例に係る鋼管杭の施工方法を説明する。
なお図1〜3において、共通の部分は、同じ符号を使用している。
【実施例】
【0010】
図1により鋼管杭の第1の施工方法の手順を説明する。
まず図1(a)のように、ボルトの挿入孔211を形成したプレート21と埋設する鋼管杭11を用意し、図1(b)のように、工場等において鋼管杭11の頭部にプレート21を溶接により固着してプレート付き鋼管杭11を作製する。そのプレート付き鋼管杭11を施工現場に搬入して、図1(c)のように、鋼管杭11を回転させながら圧入して、或いは打設して地盤312に埋設する。その際プレート21の地盤面311からの距離は、上部構造物の設置条件等を勘案して設定する。次に図1(d)のように、プレート21に、上部構造物の支柱12を取付けたプレート22をボルト23、ナット241,242によって結合する。その際プレート21とプレート22の間にグラウト材を充填してもよい。図1(a)の場合、プレート21は、上部構造物を鋼管杭11に取付ける部材、即ち上部構造物取付部材となる。
【0011】
次に図2により鋼管杭の第2の施工方法の手順を説明する。
まず図2(a)のように、根伐りして地盤412に基礎構築用の空間313を掘削し、図2(b)のように、図1と同じ構造のプレート付き鋼管杭11を回転させながら圧入して、或いは打設して地盤312に埋設する。次に図2(c)のように、鋼管杭11の上部構造物取付部材用のプレート21にボルト23、ナット241,242を装着し、空間313内にコンクリートの基礎314を構築する。そして図2(d)のように、プレート21と上部構造物の支柱12を取付けたプレート22をボルト23、ナット241,242によって結合する。
【0012】
図1、図2の施工方法は、鋼管杭を地盤に埋設する前に、工場等の設備の整った場所において鋼管杭の頭部に上部構造物取付部材を溶接により固着から、施工現場においてその溶接を行う必要がない。したがって図1、図2の施工方法は、鋼管杭の施工を容易に安全に効率的に行うことができ、施工期間を短縮することができる。また鋼管杭に上部構造物取付部材を溶接する作業は、設備の整った場所において行うから、高品質の溶接が可能になる。
【0013】
図3は、図1、図2のプレートの構造例と鋼管杭の先端部の構造例を示す。
図3(a1)は、図1、図2のプレート21の例を、図3(a2)は、図1、図2のプレート22の例を示す。プレート21、プレート22は、ボルト23を挿入する長孔211,221を形成してある。孔211,221は、長孔にすることによりプレート21とプレート22の相対的位置関係を調整することができる。なおプレート21,22は、四角形でなく円形であってもよい。
【0014】
図3(b)は、鋼管杭11の先端部にスクリュー状(螺旋状)の2枚の翼111,112を取付けた例である。鋼管杭が先端部に翼111,112を備えている場合には、杭施工機(図示せず)により鋼管杭11の周囲を把持し、鋼管杭11を回転して圧入できるから、鋼管杭11は、上部構造物取付部材を取付けた状態でも円滑に埋設できる。上部構造物取付部材が図1、図2のプレート21の場合には、杭施工機によりそのプレート21を把持して鋼管杭11を回転し圧入することもできる。
【0015】
前記実施例の施工方法は、上部構造物取付部材としてプレート21を用い、そのプレート21を鋼管杭11に直接溶接する例について説明したが、上部構造物取付部材は、図4の従来例と同じ構造のものであってもよい。またその他、従来慣用されている二重管式杭頭構造、基礎に埋設する鉄筋、アンカーボルト等を鋼管杭の頭部に溶接により固着する構造の上部構造物取付部材の場合にも、本願発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0016】
11 鋼管杭
111,112 翼
12 上部構造物の支柱
21 上部構造物取付部材用のプレート
22 上部構造物の支柱を取付けるプレート
311 地盤面
312 地盤
313 根伐りして形成した空間
314 コンクリートの基礎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前に頭部に上部構造物取付部材を固着した鋼管杭を用意し、その鋼管杭を地盤に所定の深さまで埋設し、上部構造物取付部材に上部構造物を結合することを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼管杭の施工方法において、前記上部構造物取付部材は、プレートであることを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項3】
請求項1叉は請求項2に記載の鋼管杭の施工方法において、前記鋼管杭は、先端にスクリュー状の翼を備えていることを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項4】
請求項3に記載の鋼管杭の施工方法において、前記鋼管杭は回転して圧入することを特徴とする鋼管杭の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−281081(P2010−281081A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134343(P2009−134343)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(595071036)株式会社三誠 (11)
【Fターム(参考)】