説明

鍛造方法、閉塞鍛造金型、及びトリポード型等速自在継手

【課題】ダイスに負荷する閉塞力を軽減することができ、大型サイズの製品であっても比較的小型の閉塞装置の使用が可能な鍛造方法及び閉塞鍛造金型を提供し、また、このような閉塞鍛造金型を用いて成形したトリポード部材を使用したトリポード型等速自在継手を提供する。
【解決手段】開閉可能なダイス11、12とこのダイス11、12内の材料を押圧するパンチ14、15とを備えた閉塞鍛造金型を用いて、ボス部18と、このボス部18から放射状に突設される軸部17とを有する製品(トリポード部材)16を成形する。ボス部18のダイス11、12側へのボス部軸方向の投影面積を、外径面をボス部軸心を中心とした一つの凸曲面とした際のダイス側へのボス部軸方向の投影面積よりも小さする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造方法、閉塞鍛造金型、及びトリポード型等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
等速自在継手用のトラニオン(トリポード部材)やユニバーサルジョイント用の十字スパイダなど、ボス部に放射状に軸部が形成されている製品を閉塞鍛造で成形する場合、閉塞鍛造金型が用いられる。
【0003】
閉塞鍛造金型は、特許文献1等に記載され、図7に示すように、開閉可能なダイス1,2と、このダイス1,2の中心軸上で駆動可能なように配置されるパンチ4、5とを備える。すなわち、ダイス1,2を閉状態としてパンチ4、5にて押圧することによって、製品6の軸部7とボス部8の形状に相当したキャビテイ9が形成されている。そのため、ビレット(材料)をダイス内に投入した後型締めしてパンチ4、5により押圧すると、ビレットが塑性変形して、図8に示すように、ボス部8および軸部7が形成されてなる製品6を構成することができる。
【特許文献1】特開2003−343592号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような閉塞鍛造では油圧またはバネなどの閉塞装置を使用して、上下のダイスを接触させた状態で維持するために閉塞力を負荷している。このため、対象とする製品のサイズが大きくなると必要とする閉塞力も大きくなり、場合によっては定格閉塞力の上限で使用することがあった。しかしながら、定格閉塞力の上限で使用することは、前記閉塞装置の寿命の低下を招くこととなる。また、より大きな閉塞力を必要とする大型サイズの製品を成形する場合には、所望の大きな閉塞力を負荷できる閉塞装置を使用しなければならず、それに伴いプレス機も大型化してコストも高額になる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、ダイスに負荷する閉塞力を軽減することができ、大型サイズの製品であっても比較的小型の閉塞装置の使用が可能な鍛造方法及び閉塞鍛造金型を提供し、また、このような閉塞鍛造金型を用いて成形したトリポード部材を使用したトリポード型等速自在継手を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鍛造方法は、開閉可能なダイスとこのダイス内の材料を押圧するパンチとを備えた閉塞鍛造金型を用いて、ボス部と、このボス部から放射状に突設される軸部とを有する製品を成形する鍛造方法において、ボス部のダイス側へのボス部軸方向の投影面積を、外径面をボス部軸心を中心とした一つの凸曲面とした際のダイス側へのボス部軸方向の投影面積よりも小さくするものである。ここで、前記投影面積とは、ボス部のいずれか一方の端面を含む平面に投影されるボス部外径部の投影部の、この平面上の面積(端面の実際の面積を省いた面積)である。
【0007】
本発明の鍛造方法によれば、ボス部のダイス側へのボス部軸方向の投影面積を小さくすることができ、これによって、閉塞時のダイスに作用する垂直方向(ボス部軸方向)の荷重を低減できる。
【0008】
ボス部の外径面を、軸方向中央部から順次形成される第1平面部と凸曲面部とテーパ面部と凹曲面部と第2平面部とを備えた面とすることによって、前記投影面積を小さくすることができる。この場合、前記テーパ面部を、前記凸曲面部の接線とするのが好ましく、さらには前記テーパ面部のテーパ角度を25°以下とするが好ましい。さらには、前記テーパ面部を、前記凹曲面部の接線としたり、前記第1平面部を、前記凸曲面部の接線とし、かつ、軸方向と平行な面としたり、前記第2平面部を、前記凹曲面部の接線とし、かつ、軸方向と平行な面としたりできる。
【0009】
本発明の閉塞鍛造金型は、開閉可能なダイスとこのダイス内の材料を押圧するパンチとを備え、ボス部と、このボス部から放射状に突設される軸部とを有する製品を成形する閉塞鍛造金型であって、成形する製品のボス部において、ダイス側へのボス部軸方向の投影面積を、ボス部の外径面をボス部軸心を中心とした一つの凸曲面とした際のダイス側へのボス部軸方向の投影面積よりも小さくしたものである。
【0010】
本発明の閉塞鍛造金型によれば、成形時のボス部のダイス側へのボス部軸方向の投影面積を小さくすることができ、これによって、閉塞時のダイスに作用する垂直方向(ボス部軸方向)の荷重を低減できる。
【0011】
本発明のトリポード型等速自在継手は、内周面に軸方向に延びる3本の直線状のトラック溝が形成された外側継手部材と、この外側継手部材の内部に配置され、ボス部とこのボス部の外径面から径方向に突設された3本の脚軸とを有するトリポード部材と、前記脚軸に支持され、前記トラック溝に案内されるトルク伝達要素とを備え、前記トリポード部材が、開閉可能なダイスとこのダイス内の材料を押圧するパンチとを備えた閉塞鍛造金型にて成形されてなるトリポード型等速自在継手であって、前記トリポード部材のボス部のダイス側へのボス部軸方向の投影面積を、外径面をボス部軸心を中心とした一つの凸曲面とした際のダイス側へのボス部軸方向の投影面積よりも小さくしたものである。
【0012】
本発明のトリポード型等速自在継手によれば、トリポード部材の成形時に用いる閉塞鍛造金型のダイスにおいて、閉塞時のダイスに作用する垂直方向(ボス部軸方向)の荷重を低減できる。
【0013】
ボス部の外径面を、軸方向中央部から順次形成される第1平面部と凸曲面部とテーパ面部と凹曲面部と第2平面部とを備えた面とするのが好ましい。また、前記テーパ面部を、前記凸曲面部の接線としたり、前記テーパ面部のテーパ角度を25°以下としたりするのが好ましい。さらには、前記テーパ面部を、前記凹曲面部の接線としたり、前記第1平面部を、前記凸曲面部の接線とし、かつ、軸方向と平行な面とたり、前記第2平面部を、前記凹曲面部の接線とし、かつ、軸方向と平行な面とすることができる。
【0014】
前記トルク伝達要素は、前記外側継手部材のトラック溝に挿入されたアウターローラと、前記脚軸に外嵌されて前記アウターローラの内周側に配置されるインナーローラとを備え、前記脚軸は、縦断面が継手の軸線と直交するストレート形状をなし、横断面が継手の軸線と直交する方向で前記インナーローラの内周面と接触し、かつ継手の軸線方向で前記インナーローラの内周面との間に隙間が形成されているのが好ましい。
【0015】
このような構成とすれば、トルク伝達性を損なうことなく、外側継手部材と継手内部部材(トリポード部材)とが作動角をとった状態で回転するときに、ローラとローラ案内面とが斜交状態になるのを一層効果的に回避することが可能となる。なお、この構成は、例えば脚軸の横断面形状を、継手の軸線と直交する方向に長軸を有する略楕円状に形成することで得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、閉塞時のダイスに作用する垂直方向(ボス部軸方向)の荷重を低減できる。これによって、小型で簡易な閉塞装置(ダイスの閉塞を行う装置)の使用が可能になり、プレス設備費を安価に抑えることができる。また、閉塞装置への負荷を軽減できるため閉塞装置の寿命を向上させることができる。
【0017】
ボス部の外径面を、軸方向中央部から順次形成される第1平面部と凸曲面部とテーパ面部と凹曲面部と第2平面部とを備えた面とすることによって、前記投影面積を小さくすることができる。このため、閉塞時のダイスに作用する垂直方向の荷重を確実に小さくすることができる。
【0018】
また、本発明にかかるトリポード型等速自在継手では、本発明にかかる閉塞鍛造金型を用いて本発明にかかる鍛造方法によって、成形されたトリポード部材を用いることになる。このため、このトリポード型等速自在継手の製造に用いる閉塞鍛造金型において、プレス設備費を安価に抑えることができる。また、閉塞装置への負荷を軽減できるため閉塞装置の寿命を向上させることができる。
【0019】
また、脚軸の横断面形状を、継手の軸線と直交する方向に長軸を有する略楕円状等に形成することによって、ローラとトラック溝のローラ案内面とが斜交状態になるのを効果的に回避することが可能となって、作動角運転時における滑り抵抗を低減させることができる。このため、このような等速自在継手を用いた車両において、摩耗増大が要因となる車体振動や騒音といった現象を抑えることができて車両の安定した振動特性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
【0021】
図1に本発明にかかる閉塞鍛造金型を示し、この閉塞鍛造金型は、開閉可能なダイス11、12と、このダイス11、12の開閉方向に沿って駆動してダイス11,12内の材料を押圧するパンチ14、15とを備え、放射状に軸部17が形成されてなる製品(たとえば、等速自在継手用のトリポード部材)16を成形するものである。なお、製品16であるトリポード部材は、ボス部18と、ボス部18から径方向外方に伸びる3本の軸部17とを備える。
【0022】
ダイス11,12の軸心部にはガイド孔21a、21bが設けられ、各ガイド孔21a、21bには、それぞれパンチ14、15が嵌挿される。また、ダイス11,12の合わせ面11a、12a側のガイド孔21a、21bの開口部には、径方向に延びる3個の凹部22、23が周方向に沿って120°ピッチで配設されている。
【0023】
また、上方のパンチ14の下面14aにはその中央部に膨出部27が設けられるとともに、下方のパンチ15の上面15aにはその中央部に膨出部28が設けられている。
【0024】
ダイス11,12が図1に示すように重ね合わされた状態では、製品16の軸部17を形成するための軸部用空所24Aが相対面する凹部22、23によって形成される。また
パンチ14、15及びダイス11、12によって、ボス部18を成形するためのボス部用空所24Bが形成される。すなわち、軸部用空所24Aとボス部用空所24Bとで製品成形用のキャビテイ24が構成される。
【0025】
ところで、この製品16のボス部18の外径面30には、図2に示すように、軸方向中央部から順次形成される第1平面部31と凸曲面部32とテーパ面部33と凹曲面部34とを備えた面が形成され、さらには、凹曲面部34には、軸方向端部の第2平面部35が設けられている。
【0026】
この場合、第1平面部31は軸方向と平行な面で、かつ、凸曲面部32の接線方向の平面であり、凸曲面部32はその曲率中心が外径面30よりも内径側に位置する曲面であり、テーパ面部33は、凸曲面部32の接線方向の平面で、かつ、凹曲面部34の接線方向の平面であり、凹曲面部34は、その曲率中心が外径面30よりも外径側に位置する曲面であり、第2平面部35は軸方向と平行な面で、かつ、凹曲面部34の接線方向の平面である。
【0027】
例えば、ボス部18の肉厚Hを28mmとし、直径寸法Dを44mmとし、凸曲面部32の曲率半径R1を22mmとすれば、第1平面部31の寸法L1を1mmとし、テーパ面部33のテーパ角度αを25°とし、テーパ面部33の寸法L2を2mmとし、凹曲面部34の曲率半径R2を3mmとし、第2平面部35の寸法L3を0.6mmとすることができる。
【0028】
すなわち、図1に示すように、閉塞鍛造金型のキャビテイ24におけるボス部外径成形用面40には、第1平面部41と凸曲面部42とテーパ面部43と凹曲面部44と第2平面部45が形成され、成形時に、ボス部18の外径面30を、第1平面部31と凸曲面部32とテーパ面部33と凹曲面部34と第2平面部35とを備えた面に仕上ることになる。
【0029】
次に前記金型を使用した鍛造方法を説明する。まず、上方のダイス11と下方のダイス12とを相対的に離間させた型開状態とする。この際、上方のパンチ14を上昇させるとともに下方のパンチ15を下降させておく。この状態で、下方のダイス12のガイド孔21bにビレット(材料)を投入する。なお、このビレットは、ガイド孔21a、21bに嵌挿でき、かつ形成する製品の容積に対応するものである。
【0030】
その後、上方のダイス11と下方のダイス12とを相対的に接近させる型締めを行う。次に、上方のパンチ14を下降させるとともに、下方のパンチ15を上昇させる。これによって、ビレットを上下から押圧して、軸部17を形成するための前記空所24Aを形成する。空所24Aにビレットの一部を流動させて、ボス部18の周囲に3本の軸部17を放射状に有する製品16(トリポード部材)を形成する。
【0031】
ところで、ボス部18のダイス側へのボス部軸方向の投影部50は図3のドット(点々模様)で示す範囲となる。これに対して、ボス部18の外径面を、ボス部軸心を中心とした一つの凸曲面51(図2の仮想線で示す曲面)とした場合、その投影部50は図4のドット(点々模様)で示す範囲となる。ここで、投影部50とは、ボス部18のいずれか一方の端面19(20)を含む平面に投影されるボス部外径部の投影部(端面19ないし20は除く部分)である。
【0032】
図3と図4とを比較した場合、図3においては、隣り合う軸部17、17間のボス部18においては、その投影部50の径方向長さがAとなり、図4においては、隣り合う軸部17、17間のボス部18においては、その投影部50の径方向長さがA1となる。この場合、A1>Aである。
【0033】
すなわち、本発明では、製品16のボス部18の外径面30は、前記したように、第1平面部31と凸曲面部32とテーパ面部33と凹曲面部34を備えたものであるので、図3に示すように、ボス部18のダイス側へのボス部軸方向の投影面積を小さくすることができる。投影面積とは、ボス部18のいずれか一方の端面19(20)を含む平面に投影されるボス部外径部の投影部の、この平面上の面積(端面19ないし20の面積を除いた面積)である。
【0034】
本発明では、ボス部18のダイス側へのボス部軸方向の投影面積を小さくすることができ、これによって、閉塞時のダイス11、12に作用する垂直方向(ボス部軸方向)の荷重を低減できる。したがって、小型で簡易な閉塞装置(ダイスの閉塞を行う装置)の使用が可能になり、プレス設備費を安価に抑えることができる。また、閉塞装置への負荷を軽減できるため閉塞装置の寿命を向上させることができる。
【0035】
ボス部18の外径面30を、軸方向中央部から順次形成される第1平面部31と凸曲面部32とテーパ面部33と凹曲面部34とを備えた面とすることによって、投影面積を小さくすることができる。このため、閉塞時のダイス11、12に作用する垂直方向の荷重を確実に小さくすることができる。
【0036】
図5は、本発明にかかる閉塞鍛造金型を用いた鍛造方法によって成形したトリポード部材16を用いたトリポード型等速自在継手である。このトリポード型等速自在継手は、内周面60に軸方向に延びる3本の直線状のトラック溝61が形成された外側継手部材62と、この外側継手部材62の内部に配置され、ボス部18とこのボス部18の外径面から径方向に突設された3本の脚軸(軸部)17とを有するトリポード部材16と、脚軸17に支持され、トラック溝61に案内されるトルク伝達要素63とを備える。トラック溝61は、周方向で向かい合った側壁にローラ案内面68が形成されている。
【0037】
トルク伝達要素63は、前記外側継手部材62のトラック溝61に挿入されたアウターローラ65と、脚軸17に外嵌されてアウターローラ65の内周側に配置されるインナーローラ66とを備える。この場合、アウターローラ65とインナーローラ66との間に複数の転動体67が介在される。
【0038】
また、脚軸17は、縦断面が継手の軸線と直交するストレート形状をなし、図6に示すように、横断面が継手の軸線と直交する方向で前記インナーローラ66の内周面と接触し、かつ継手の軸線方向で前記インナーローラ66の内周面との間に隙間が形成されている。すなわち、脚軸17の断面形状は、トリポード部材16の軸方向で互いに向き合った面が相互方向に、つまり、仮想円筒面よりも径方向内方に後退したものである。
【0039】
このような構成とすれば、トルク伝達性を損なうことなく、外側継手部材62と継手内部部材(トリポード部材)16とが作動角をとった状態で回転するときに、ローラ65とローラ案内面68とが斜交状態になるのを効果的に回避することが可能となって、作動角運転時における滑り抵抗を低減させることができる。このため、このような等速自在継手を用いた車両において、摩耗増大が要因となる車体振動や騒音といった現象を抑えることができて車両の安定した振動特性を維持することができる。なお、この構成は、例えば脚軸17の横断面形状を、継手の軸線と直交する方向に長軸を有する略楕円状に形成することで得ることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、ボス部18の外径面30の形状として、前記実施形態では、第1平面部31と凸曲面部32とテーパ面部33と凹曲面部34と第2平面部35とを備えたものであったが、このような形状に限るものではない。すなわち、第1平面部31、テーパ面部33、凹曲面部34、第2平面部35等を有さないものであってもよい。この場合、第1平面部31のみを省略したり、テーパ面部33のみを省略したり、凹曲面部34のみを省略したり、第2平面部35のみを省略したりでき、また、これら全部を省略したり、これらのうち任意の2つを省略したりできる。第1平面部31を省略する場合、凸曲面部32を、外径面の軸方向中央まで形成すればよい。テーパ面部33を省略する場合、凸曲面部32を凹曲面部34まで延ばせばよい。凹曲面部34を省略する場合、凸曲面部32を第2平面部35まで延ばしたり、テーパ面部33を第2平面部35まで延ばしたりすればよい。
【0041】
また、第1平面部31の寸法、凸曲面部32の曲率半径、テーパ面部33のテーパ長さL2やテーパ角度、凹曲面部34の曲率半径、第2平面部35の寸法等は、各平面部31、凸曲面部32、テーパ面部33、凹曲面部34、第2平面部35等が滑らかに連続するものであって、前記投影面積の減少が可能な範囲で種々変更することができる。また脚軸17の断面形状は円形でもよい。
【実施例】
【0042】
次に、閉塞鍛造金型のダイス11,12に負荷する閉塞力を調べ、その結果を次の表1に示した。表1においてテーパ角度とは、テーパ面部33のテーパ角度である。また、ボス部18の肉厚Hを28mmとし、凸曲面部32の曲率半径R1を22mmとし、第1平面部31の寸法L1を0mmとし、テーパ面部33の寸法L2をテーパ角度5°のとき12.1mmとし、テーパ角度15°のとき8.6mmとし、テーパ角度25°のとき5.2mmとし、凹曲面部34の曲率半径R2を0mmとし、第2平面部35の寸法L3を0mmとした。
【表1】

【0043】
この表1からわかるように、従来品(図2の仮想線で示すように、外径面がボス部の軸心を中心とする一つの円弧面からなるもの)に比べて、テーパ角度αが5°の場合、閉塞力を42%軽減でき、テーパ角度αが15°の場合、閉塞力を25%軽減でき、テーパ角度αが25°の場合、閉塞力を11%軽減できた。このように、ボス部18のダイス側へのボス部軸方向の投影面積を小さくした場合、閉塞力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態を示す閉塞鍛造金型の断面図である。
【図2】前記閉塞鍛造金型にて成形された製品の要部外形図である。
【図3】前記閉塞鍛造金型にて成形された製品の平面図である。
【図4】投影面積が大である製品の平面図である。
【図5】前記閉塞鍛造金型にて成形されたトリボード部材を用いたトリポード型等速自在継手の断面図である。
【図6】前記等速自在継手のトルク伝達要素の断面図である。
【図7】従来の閉塞鍛造金型の断面図である。
【図8】従来の閉塞鍛造金型の断面平面図である。
【符号の説明】
【0045】
11,12 ダイス
14、15 パンチ
16 製品(トリポード部材)
17 軸部(脚軸)
18 ボス部
24 キャビテイ
30 外径面
31 平面部
32 凸曲面部
33 テーパ面部
34 凹曲面部
60 内周面
61 トラック溝
62 外側継手部材
63 トルク伝達要素
65 アウターローラ
66 インナーローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能なダイスとこのダイス内の材料を押圧するパンチとを備えた閉塞鍛造金型を用いて、ボス部と、このボス部から放射状に突設される軸部とを有する製品を成形する鍛造方法において、
ボス部のダイス側へのボス部軸方向の投影面積を、外径面をボス部軸心を中心とした一つの凸曲面とした際のダイス側へのボス部軸方向の投影面積よりも小さくすることを特徴とする鍛造方法。
【請求項2】
ボス部の外径面を、軸方向中央部から順次形成される第1平面部と凸曲面部とテーパ面部と凹曲面部と第2平面部を備えた面とすることを特徴とする請求項1に記載の鍛造方法。
【請求項3】
前記テーパ面部を、前記凸曲面部の接線とすることを特徴とする請求項2に記載の鍛造方法。
【請求項4】
前記テーパ面部のテーパ角度を25°以下とすることを特徴とする請求項3に記載の鍛造方法。
【請求項5】
前記テーパ面部を、前記凹曲面部の接線とすることを特徴とする請求項2に記載の鍛造方法。
【請求項6】
前記第1平面部を、前記凸曲面部の接線とし、かつ、軸方向と平行な面とすることを特徴とする請求項2に記載の鍛造方法。
【請求項7】
前記第2平面部を、前記凹曲面部の接線とし、かつ、軸方向と平行な面とすることを特徴とする請求項2に記載の鍛造方法。
【請求項8】
開閉可能なダイスとこのダイス内の材料を押圧するパンチとを備え、ボス部と、このボス部から放射状に突設される軸部とを有する製品を成形する閉塞鍛造金型であって、
成形する製品のボス部において、ダイス側へのボス部軸方向の投影面積を、ボス部の外径面をボス部軸心を中心とした一つの凸曲面とした際のダイス側へのボス部軸方向の投影面積よりも小さくしたことを特徴とする閉塞鍛造金型。
【請求項9】
内周面に軸方向に延びる3本の直線状のトラック溝が形成された外側継手部材と、この外側継手部材の内部に配置され、ボス部とこのボス部の外径面から径方向に突設された3本の脚軸とを有するトリポード部材と、前記脚軸に支持され、前記トラック溝に案内されるトルク伝達要素とを備え、前記トリポード部材が、開閉可能なダイスとこのダイス内の材料を押圧するパンチとを備えた閉塞鍛造金型にて成形されてなるトリポード型等速自在継手であって、
前記ボス部のダイス側へのボス部軸方向の投影面積を、外径面をボス部軸心を中心とした一つの凸曲面とした際のダイス側へのボス部軸方向の投影面積よりも小さくすることを特徴とするトリポード型等速自在継手。
【請求項10】
ボス部の外径面を、軸方向中央部から順次形成される第1平面部と凸曲面部とテーパ面部と凹曲面部と第2平面部を備えた面とすることを特徴とする請求項9に記載のトリポード型等速自在継手。
【請求項11】
前記テーパ面部を、前記凸曲面部の接線とすることを特徴とする請求項10に記載のトリポード型等速自在継手。
【請求項12】
前記テーパ面部のテーパ角度を25°以下とすることを特徴とする請求項10に記載のトリポード型等速自在継手。
【請求項13】
前記テーパ面部を、前記凹曲面部の接線とすることを特徴とする請求項10に記載のトリポード型等速自在継手。
【請求項14】
前記第1平面部を、前記凸曲面部の接線とし、かつ、軸方向と平行な面とすることを特徴とする請求項10に記載のトリポード型等速自在継手。
【請求項15】
前記第2平面部を、前記凹曲面部の接線とし、かつ、軸方向と平行な面とすることを特徴とする請求項10に記載のトリポード型等速自在継手。
【請求項16】
前記トルク伝達要素は、前記外側継手部材のトラック溝に挿入されたアウターローラと、前記脚軸に外嵌されて前記アウターローラの内周側に配置されるインナーローラとを備え、前記脚軸は、縦断面が継手の軸線と直交するストレート形状をなし、横断面が継手の軸線と直交する方向で前記インナーローラの内周面と接触し、かつ継手の軸線方向で前記インナーローラの内周面との間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項9〜請求項15のいずれか1項に記載のトリポード型等速自在継手。
【請求項17】
前記脚軸の横断面形状は楕円形状をなすことを特徴とする請求項16に記載のトリポード型等速自在継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−142868(P2010−142868A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325943(P2008−325943)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】