説明

長尺シート状成形品の製造方法

【課題】 複数のシートの接合部位における接合力に優れ、外観品質の良好な長尺シート状成形品を生産性良く製造することができる長尺シート状成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】 金属粉体がマトリックスとしてのゴム等に配合された原料組成物を混練し、その混練物を予備圧延し、その予備圧延シートをサイドロールとトップロール12とで一次圧延することにより一次圧延シート14が得られる。得られた一次圧延シート14の後端縁部22に対して新たな一次圧延シート14の前端縁部21を突き合わせて二次圧延を行うことにより両者が一体化された二次圧延シート16が得られる。このとき、双方の一次圧延シート14の表面部は柔軟化され、内部は表面部より硬い状態にあり、シートの剛性を保持しつつ、双方の一次圧延シート14を融着できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電磁波吸収シート等として利用される長尺シート状成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のシート状成形品は、鉄、アルミニウム等の金属粉が40体積%以上配合された非架橋ゴム組成物が、ゴムロール等のゴム混練機で混練された後、カレンダーロール等のゴム加工機を用い、目標とする厚みまで圧延成形することによって製造される。例えば、軟磁性金属の粉末がゴム又はプラスチックのマトリックス材料中に分散されたものを、ロール圧延によりシート状に成形して得られる電磁波吸収シートが知られている(例えば、特許文献1を参照)。すなわち、誘電率を圧延方向について測定した値とそれに直角な方向について測定した値との間に実質上差がなく、従って偏波方向による吸収特性に異方性のない電磁波吸収シートである。具体的には、鉄−クロム合金の粉末67重量部を、塩素化ポリエチレン12重量部と配合し、ミキシングロールによる混練及び粗圧延に続いて圧延ロールによる精圧延を行うことにより、厚さ0.5mmの電磁波吸収シートが得られる。
【特許文献1】特開2002−171089号公報(第2頁及び第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記のような金属粉末を高濃度に配合したゴム(樹脂)組成物は、粘性及び弾性に乏しいため、圧延方向には延びるものの、圧延方向とは異なる方向、例えば直交方向には延びにくいという性質を有している。このため、四角形状のシートの場合、圧延方向(長さ方向)には延びを示すが、幅方向の両側縁部は圧延に追従することができないため、シートが圧延方向へ延びた分だけ亀裂が発生する。発生した亀裂の部分は製品にならないことから、シート状成形品の大きさが制限される。従って、長尺状のシート状成形品を得るためには、圧延前のシートを大きく設定しておく必要があるが、それには限界がある。そこで、複数のシートを繋ぎ合わせて長尺状のシート状成形品を得ることもできるが、その場合にもゴム組成物は粘弾性が不足しているため、接合部位で接合力が乏しく、外観品質も悪いという問題がある。
【0004】
そこで、本発明の目的とするところは、複数のシートの接合部位における接合力に優れ、外観品質の良好な長尺シート状成形品を生産性良く製造することができる長尺シート状成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の長尺シート状成形品の製造方法は、金属粉体がマトリックスとしてのゴム状弾性材料又は熱可塑性材料に配合された原料組成物を混練し、その混練物を圧延用ロールにより圧延して四角形状の単位圧延シートを複数成形し、成形された各単位圧延シートの端縁部を突き合わせて圧延し、長尺シート状成形品を製造する方法であって、前記単位圧延シートの表面部を軟化させた状態で単位圧延シートの端縁部を突き合わせて圧延を行うことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に記載の発明の長尺シート状成形品の製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記金属粉体は鉄若しくは鉄合金又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金であるとともに、ゴム状弾性材料はニトリルゴム又は塩素化ポリエチレンであり、熱可塑性材料はエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又は塩化ビニル樹脂であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載の発明の長尺シート状成形品の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記単位圧延シートは、端縁部を突き合わせて圧延する際の表面部の温度が内部の温度より高く設定され、表面部は柔軟性を有し、内部は表面部より剛性を有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明の長尺シート状成形品の製造方法においては、金属粉体がマトリックスとしてのゴム状弾性材料又は熱可塑性材料に配合された原料組成物を混練し、その混練物を圧延用ロールにより圧延して四角形状の単位圧延シートが複数成形される。成形された各単位圧延シートの表面部を軟化させた状態で単位圧延シートの端縁部を突き合わせて圧延が行われる。このため、単位圧延シートの端縁部が突き合わされた接合部位では表面部同士が融着して接合され、接合部位における接合力に優れ、外観品質の良好な長尺シート状成形品を生産性良く製造することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明の長尺シート状成形品の製造方法では、金属粉体として鉄若しくは鉄合金又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金、ゴム状弾性材料としてニトリルゴム又は塩素化ポリエチレン、熱可塑性材料としてエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又は塩化ビニル樹脂が用いられる。この場合、請求項1に係る発明の効果に加えて、金属粉体が良好な導電性や熱伝導性を発揮できるとともに、ゴム状弾性材料又は熱可塑性材料は熱変形温度が低く、圧延による長尺シート状成形品の製造を効率良く行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明の長尺シート状成形品の製造方法では、単位圧延シートは端縁部を突き合わせて圧延する際の表面部の温度が内部の温度より高く設定され、表面部は柔軟性を有し、内部は表面部より剛性を有している。従って、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、単位圧延シートが突き合わされた接合部位ではその内部でシートの剛性を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
圧延による長尺シート状成形品の製造は、図4(a)に示す予備圧延装置による予備圧延工程及び図4(b)に示す複数の圧延用ロールを備えた精圧延装置(カレンダーロール)による精圧延工程を経て行われる。ここで、長尺シート状成形品の長尺とは、長さが通常2m以上となるシート状成形品を意味し、その幅は通常300〜400mm程度である。まず、予備圧延工程について説明する。図4(a)に示すように、予備圧延装置は左右に対向して配置された一対の第1予備圧延ロール10aと第2予備圧延ロール10bとにより構成されている。第1予備圧延ロール10aと第2予備圧延ロール10bとの接触部上には、金属粉体がマトリックスとしてのゴム状弾性材料又は熱可塑性材料に配合された原料組成物の混練物13が載せられ、第1予備圧延ロール10aと第2予備圧延ロール10bとの回転によって予備圧延が行われ、予備圧延シート27が得られるようになっている。
【0012】
前記金属粉体としては、鉄、鉄を主体とする合金(鉄−ニッケル合金、鉄−クロム合金)、アルミニウム、アルミニウム合金等の粉体が好適に用いられる。マトリックスとしては、ゴム状弾性材料又は熱可塑性材料が用いられる。ゴム状弾性材料としては、ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、NBR、熱変形温度約110℃)、塩素化ポリエチレン(CM、熱変形温度約110℃)、クロルスルホン化ポリエチレン(CSM、熱変形温度約120℃)等が用いられる。これらのゴム状弾性材料のうち熱変形温度が低く、圧延を効率良く行うことができる点から、ニトリルゴム又は塩素化ポリエチレンが好ましい。熱可塑性材料としては、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA、熱変形温度70〜80℃)、塩化ビニル樹脂(PVC、熱変形温度90〜100℃)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC、熱変形温度130〜140℃)等が用いられる。これらの熱可塑性材料のうち熱変形温度が低く、圧延を効率良く行うことができる点から、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又は塩化ビニル樹脂が好ましい。これらのゴム状弾性材料又は熱可塑性材料は、目的に応じて1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0013】
本実施形態の原料組成物は非架橋の組成物であって、混練時等において加熱されても架橋反応を生じない組成物である。金属粉体の配合量は、原料組成物中に通常40体積%以上であるが、80体積%以上の場合もある。従って、原料組成物は、圧延方向には伸張されるが、幅方向には伸張されにくい。そのため、特に長方形状のシートの両側縁部20においては圧延に追従できないため、亀裂が発生しやすい。
【0014】
次に、精圧延工程について説明する。図4(b)に示すように、左右に対向して配置された圧延用ロールとしてのサイドロール11とトップロール12との間には、予備圧延工程で得られた予備圧延シート27が供給される。この予備圧延シート27は、予備圧延工程から直ちに精圧延工程に供給されるときには所要の温度状態になっているが、予備圧延工程と精圧延工程との間に一時保管等の時間的遅延がある場合には、温度が適切範囲を外れて低くなっているときがあり、そのようなときには、精圧延工程に供給される前に予備加熱される必要がある。そして、サイドロール11とトップロール12の回転により挟圧されながら下動し一次圧延が行われて単位圧延シートとしての一次圧延シート14が得られるようになっている。一次圧延の速度は、0.5〜1.5m/分である。また、一次圧延シート14は、厚さが2.5〜3.0mm程度である。
【0015】
一次圧延によって成形された一次圧延シート14は、図3に示すように、その表面部23の温度が内部24の温度より高くなっており、表面部23は柔軟性を有し、内部24は表面部23より高い剛性を有している。例えば、前述の好ましいゴム状弾性材料又は熱可塑性材料を用いた場合には、予備圧延工程における原料組成物の混練物13の温度は80〜90℃程度であり、予備圧延された予備圧延シート27の表面温度は75〜85℃程度であり、一次圧延シート14の表面部23の温度は70〜80℃程度で、内部24の温度は55〜70℃程度である。但し、予備圧延工程における第1予備圧延ロール10a、第2予備圧延ロール10bの表面における温度は、85〜95℃に設定され、サイドロール11、トップロール12及び後述するセンターロール15の表面における温度は、80〜90℃に設定される。そして、一次圧延シート14の表面部23の温度が内部24の温度より5〜15℃高くなるように設定される。この温度差が5℃未満の場合には、一次圧延シート14の表面部23と内部24との間の柔軟性或いは剛性に差異がなくなり、全体が軟らかくなり過ぎてシートの剛性が低下したり、硬くなり過ぎて突き合わされた接合部位における接合強度が低下したりする傾向を示す。一方、温度差が15℃を越える場合には、一次圧延シート14の表面部23と内部24との間の柔軟性或いは剛性について差異が大きくなり過ぎ、そのような状態を形成、維持することが難しくなりやすいため、好ましくない。ちなみに、原料組成物の混練物13の温度は、単一シートを製造する従来技術の予備圧延工程における混練物13の温度と同等又は若干高く設定される。
【0016】
また、一次圧延シート14の厚さは前記のように2.5〜3.0mm程度であり、前記表面部23の厚さは0.3〜0.5mm程度に設定される。つまり、表面部23の厚さは一次圧延シート14の厚さの1/5〜1/10程度である。表面部23の厚さが0.3mm未満では、加熱されて柔軟化される厚さが薄く、一次圧延シート14が突き合わされた接合部位での接合が十分に行われない場合がある。一方、表面部23の厚さが0.5mmを越えると、内部24の厚さが相対的に薄くなり、一次圧延シート14全体が過度に柔軟化されて垂れ下がり、或いは変形しやすくなり、圧延を円滑に行うことができないおそれがある。
【0017】
次いで、トップロール12とその下方位置の圧延用ロールとしてのセンターロール15との間には一次圧延シート14が左から右へ供給され、二次圧延が行われて二次圧延シート16が得られるようになっている。すなわち、図1(a)に示すように、長方形状の一次圧延シート14は、互いに逆方向に回転するトップロール12とセンターロール15との間を加圧されながら通過し、その長さ方向に順に圧延され、二次圧延シート16が成形される。この二次圧延に際しては、図2に示すように、圧延前の厚さが圧延条件に応じて圧延後には所定の厚さまで薄く形成される。
【0018】
図1(b)及び(c)に示すように、二次圧延が行われている一次圧延シート14の後端縁部22に対して、新たに一次圧延された一次圧延シート14の前端縁部21を突き合わせるようにして後の一次圧延シート14が供給される。但し、一次圧延シート14の両側縁部20には亀裂が形成され、形状が不規則になるため、両側縁部20と前端縁部21とが直交するように切断され、長方形状に形成される。図1(d)に示すように、先の一次圧延シート14に後の一次圧延シート14が突き合わされた状態で二次圧延が行われる。この二次圧延時には、両一次圧延シート14が突き合わされた接合部位25ではそれらの表面部23の温度が高く、柔軟性を有しているため、十分に接合され、一体となってトップロール12とセンターロール15との間から排出される。
【0019】
続いて、センターロール15とその下方位置の圧延用ロールとしてのボトムロール17との間には二次圧延シート16が右から左へ供給され、三次圧延が行われて二次圧延シート16より薄い三次圧延シート18が得られるようになっている。但し、二次圧延シート16の両側縁部20にも亀裂が形成され、形状が不規則になるため、両側縁部20と前端縁部21とが直交するように切断され、長方形状に形成される。二次圧延及び三次圧延においては、各圧延ロールに供給されるシートの厚さが特に幅方向で均一になるように形成され、またシートの両側縁部20が前端縁部21に対して直交するように形成され、さらに圧延ロールの軸線26に対してシートの前端縁部21が沿うように供給される。これにより、圧延されたシートの蛇行を防止し、安定した状態で圧延を行うことができる。三次圧延シート18は、その両側縁部20が前端縁部21に対して直交するように切断され、長尺シート状成形品が成形されるようになっている。
【0020】
さて、本実施形態の作用を説明すると、一次圧延シート14は、図1(a)に示すトップロール12とセンターロール15との間に供給されて二次圧延が行われ、その間に次の一次圧延が行われて新たな一次圧延シート14が成形される。これら一次圧延シート14の表面部23の温度は70〜80℃で柔軟性を有し、内部24の温度は55〜70℃で表面部23より硬い状態にある。
【0021】
続いて、図1(b)及び(c)に示すように、二次圧延が行われている先の一次圧延シート14の後端縁部22に後の一次圧延シート14の前端縁部21を突き合わせて二次圧延を行う。その際、先の一次圧延シート14の後端縁部22に後の一次圧延シート14の前端縁部21を突き合わせるまで前記の温度を維持するために、上記の操作が1〜2分以内の時間で行われる。このとき、双方の一次圧延シート14はシートの形状が保持されながら加圧され引き延ばされて表面部23同士で融着され、速やかに接合されて一体化され、二次圧延シート16が成形される。
【0022】
この場合、一次圧延シート14は表面部23及び内部24が同じ温度に加熱されて柔軟化されていると、軟らかくなり過ぎて垂れ下がり、或いは変形しやすくなり、また圧延用ロールによる圧力が逃げて接合が十分になされないうえに、接合部位25において膨らみや凹みが生じて外観が悪くなる。一方、一次圧延シート14の表面部23及び内部24がともに冷えた状態で硬くなっていると、一次圧延シート14が突き合わされた接合部位25で互いに融着せず、接合が満足になされず、長尺シート状成形品が得られなくなる。
【0023】
このようにして得られた二次圧延シート16は、センターロール15とボトムロール17との間に供給され、三次圧延が行われて所望の厚さまで薄く形成された三次圧延シート18が成形される。この三次圧延シート18は、その前端縁部21に対して両側縁部20が直交する方向に切断され、長さ2m以上の長方形状に形成され、目的とする長尺シート状成形品が得られる。
【0024】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態の長尺シート状成形品の製造方法においては、金属粉体がマトリックスとしてのゴム状弾性材料又は熱可塑性材料に配合された原料組成物を混練し、混練物13を予備圧延用ロールにより圧延して四角形状の予備圧延シート27が順に成形される。その予備圧延シート27がサイドロール11とトップロール12とにより一次圧延されて一次圧延シート14が成形される。得られた一次圧延シート14の表面部23が軟化された状態で、先の一次圧延シート14の後端縁部22に後の一次圧延シート14の前端縁部21を突き合わせて圧延が行われる。このため、双方の一次圧延シート14が突き合わされた接合部位25では表面部23同士が速やかに融着して接合され、接合部位25における接合力に優れ、接合部位25に膨らみや凹みのない外観品質の良好な長尺シート状成形品を生産性良く製造することができる。
【0025】
・ また、金属粉体としては鉄若しくは鉄合金又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金が好ましく、ゴム状弾性材料としてはニトリルゴム又は塩素化ポリエチレン、熱可塑性材料としてはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又は塩化ビニル樹脂が好ましい。その場合、金属粉体が良好な導電性や熱伝導性を発揮できるとともに、ゴム状弾性材料又は熱可塑性材料は熱変形温度が低く、圧延による長尺シート状成形品の製造を効率良く行うことができる。
【0026】
・ また、一次圧延シート14は端縁部を突き合わせて圧延する際の表面部23の温度が70〜80℃で内部24の温度より5〜15℃高く設定され、表面部23は柔軟性を有し、内部24は表面部23より剛性を有している。従って、一次圧延シート14が突き合わされた接合部位25ではその内部24でシートの剛性を保持することができる。
【0027】
・ さらに、二次圧延に際し、一次圧延シート14の前端縁部21をトップロール12とセンターロール15の軸線26に沿うように供給することにより、安定した状態で二次圧延を行うことができる。
【0028】
・ このようにして製造された長尺シート状成形品は、電磁波吸収シートをはじめ、床材、壁材等として利用することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜3及び比較例1〜3)
原料組成物として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)70質量部、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR、アクリロニトリル含量33質量%)30質量部、鉄粉300質量部、難燃剤として水酸化アルミニウム100質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム45質量部、メラミン20質量部、黒鉛150質量部及び高級脂肪酸3.5質量部を混合して調製した。なお、鉄粉の含有量は、原料組成物中に42質量%である。この原料組成物を混練し、前記図4(a)に示す予備圧延装置を用い、予備圧延して予備圧延シート27を成形した。成形された予備圧延シート27を図4(b)に示す精圧延装置を用い、一次圧延(圧縮率30〜50%)して一次圧延シート14を得た。得られた一次圧延シート14の両側縁部20及び前端縁部21を直交するように切断した。その一次圧延シート14の大きさを、長さ500mm、幅300mm、厚さが実施例1及び比較例1では1.1mm、実施例2及び比較例2では2.1mm、実施例3及び比較例3では3.1mmとした。
【0030】
続いて、それらの一次圧延シート14を二次圧延(圧縮率25〜35%)して二次圧延シート16を成形した。この場合、新たに成形された一次圧延シート14についても、その両側縁部20及び前端縁部21を直交するように切断し、同じ大きさのシートとした。そして、先の一次圧延シート14の後端縁部22に後の一次圧延シート14の前端縁部21を突き合わせて二次圧延に供した。一次圧延シート14について、その表面部の温度(℃)と内部の温度(℃)を測定し、表1に示した。
【0031】
成形された二次圧延シート16の両側縁部20及び前端縁部21を直交するように切断した。得られた二次圧延シート16を三次圧延(圧縮率20〜30%)して三次圧延シート18を成形した。そして、成形された三次圧延シート18について、接合部位の外観及び接合部位の接合強度を下記の方法で測定した。それらの結果を表1にまとめて示す。
(接合部位の外観)
三次圧延シート18の接合部位25を目視により観察した。
(接合部位の接合強度)
三次圧延シート18の両端部を両手で強く引っ張って接合部位25の強度を測定した。
【0032】
【表1】

表1に示すように、実施例1では一次圧延シート14の表面部23の温度が75℃で柔軟性を示し、内部24の温度が70℃(温度差5℃)で表面部23より硬く形成されている。従って、接合部位25の外観が良好で、接合強度にも優れている。一方、比較例1では一次圧延シート14の表面部23及び内部24の温度がともに20℃であるため、表面部23及び内部24が硬く形成されている。このため、接合部位25において接合痕による線(マーク)が認められ、接合強度も手で簡単に破断する結果であった。
【0033】
一次圧延シート14の厚さを2.1mmにした場合(実施例2と比較例2)及び一次圧延シート14の厚さを3.1mmにした場合(実施例3と比較例3)についても、実施例1及び比較例1の結果と同様であった。よって、一次圧延シート14の表面部23の温度は70〜80℃が好ましく、表面部23と内部24との温度差は5〜15℃であることが好ましいことがわかった。
(実施例4〜7)
実施例1において、原料組成物中のゴム状弾性材料又は熱可塑性材料及び金属粉体を以下に示すように変更する以外は実施例1と同様にして圧延を実施した。
【0034】
実施例4:NBR60質量部、塩化ビニル樹脂40質量部及びアルミニウム粉300質量部。
実施例5:塩素化ポリエチレン100質量部及び鉄粉300質量部。
【0035】
実施例6:塩素化ポリエチレン50質量部、EVA50質量部及びアルミニウム粉300質量部。
実施例7:塩素化ポリエチレン70質量部、塩化ビニル樹脂30質量部及び鉄粉300質量部。
【0036】
そして、成形された三次圧延シート18について、接合部位の外観及び接合部位の接合強度を実施例1と同様に測定した。それらの結果を表2にまとめて示す。
【0037】
【表2】

表2に示したように、実施例4においてはゴム状弾性材料としてNBR、熱可塑性材料として塩化ビニル樹脂を用い、金属粉体としてアルミニウム粉を用いた結果、一次圧延シート14の表面部23の温度が70℃で柔軟性を示し、内部24の温度が65℃(温度差5℃)で表面部23より硬く形成されている。従って、接合部位25の外観が良好で、接合強度にも優れている。実施例5ではゴム状弾性材料として塩素化ポリエチレンを用いた結果、一次圧延シート14の表面部23の温度が75℃で柔軟性を示し、内部24の温度が70℃(温度差5℃)で表面部23より硬く形成されており、接合部位25の外観が良好で、接合強度にも優れている。実施例6ではゴム状弾性材料として塩素化ポリエチレン、熱可塑性材料としてEVAを用い、金属粉体としてアルミニウム粉を用いた結果、表面部23と内部24の温度差が5℃であり、接合部位25の外観が良好で、接合強度にも優れている。実施例7ではゴム状弾性材料として塩素化ポリエチレン、熱可塑性材料として塩化ビニル樹脂を用いた結果、表面部23と内部24の温度差が10℃であり、接合部位25の外観が良好で、接合強度にも優れている。
【0038】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 予備圧延シート27を単位圧延シートとし、一次圧延において、複数の予備圧延シート27を接合して長尺シート状成形品を製造することも可能である。
【0039】
・ 実施形態において三次圧延を省略し、二次圧延シート16を長尺シート状成形品とすることもできる。
・ 一次圧延シート14を3枚以上順に接合し、より長い長尺シート状成形品を製造することも可能である。
【0040】
・ 長方形状の一次圧延シート14の長さと幅とを変更するように構成したり、厚さを変更するように構成することもできる。また、長さの異なる一次圧延シート14を接合して所望とする長さの長尺シート状成形品を製造することもできる。
【0041】
・ 二次圧延の方向を、一次圧延の圧延方向とは逆方向になるように二次圧延を行うこともできる。この場合、一次圧延によって形成される応力歪を二次圧延で緩和させることができる。
【0042】
・ 前記実施形態では二次圧延及び三次圧延を行ったが、それらの圧延時における圧縮率を小さくし、さらに四次圧延を行うように構成することもできる。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0043】
・ 前記単位圧延シートを、その前端縁部と側縁部とが直交するように切断して長方形状に形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の長尺シート状成形品の製造方法。この製造方法によれば、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、圧延に供せられるシートの蛇行を抑えて安定した状態で圧延を行うことができる。
【0044】
・ 圧延に供せられる単位圧延シートはその前端縁部が圧延用ロールの軸線方向に沿うように供給されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の長尺シート状成形品の製造方法。この製造方法によれば、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果を一層向上させることができる。
【0045】
・ 前記表面部の厚さは単位圧延シートの厚さの1/5〜1/10であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の長尺シート状成形品の製造方法。この製造方法によれば、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、単位圧延シートが突き合わされた接合部位の良好な接合強度と長尺シート状成形品の十分な形状保持の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)から(d)は、実施形態における長尺シート状成形品の製造工程を順に示す斜視図。
【図2】圧延用ロールによる圧延状態を示す正面図。
【図3】予備圧延シートの表面部と内部とを示す断面図。
【図4】(a)は一対の予備圧延ロールを備えた予備圧延装置で予備圧延シートを成形している状態を示す正面図、(b)は4つのロールを備えた精圧延装置でシートを圧延している状態を示す正面図。
【符号の説明】
【0047】
11…圧延用ロールとしてのサイドロール、12…圧延用ロールとしてのトップロール、13…混練物、14…単位圧延シートとしての一次圧延シート、15…圧延用ロールとしてのセンターロール、17…圧延用ロールとしてのボトムロール、20…側縁部、21…前端縁部、22…後端縁部、23…表面部、24…内部、25…接合部位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉体がマトリックスとしてのゴム状弾性材料又は熱可塑性材料に配合された原料組成物を混練し、その混練物を圧延用ロールにより圧延して四角形状の単位圧延シートを複数成形し、成形された各単位圧延シートの端縁部を突き合わせて圧延し、長尺シート状成形品を製造する方法であって、前記単位圧延シートの表面部を軟化させた状態で単位圧延シートの端縁部を突き合わせて圧延を行うことを特徴とする長尺シート状成形品の製造方法。
【請求項2】
前記金属粉体は鉄若しくは鉄合金又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金であるとともに、ゴム状弾性材料はニトリルゴム又は塩素化ポリエチレンであり、熱可塑性材料はエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又は塩化ビニル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の長尺シート状成形品の製造方法。
【請求項3】
前記単位圧延シートは、端縁部を突き合わせて圧延する際の表面部の温度が内部の温度より高く設定され、表面部は柔軟性を有し、内部は表面部より剛性を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の長尺シート状成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−297833(P2006−297833A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125431(P2005−125431)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(596004761)イノアックエラストマー株式会社 (33)
【Fターム(参考)】