説明

防振装置

【課題】外筒およびブラケットをいずれも樹脂材料で構成することで、さらなる軽量化を実現した防振装置において、装置の使用等に際する、ブッシュの、ブラケットからの意図しない抜け出しを有効に防止できる防振装置を提供する。
【解決手段】互いに平行に配置した内筒1および外筒2の相互を、それらの内筒1と外筒2との間に配設した弾性部材3で連結してなるブッシュ4と、該ブッシュ4を内側に保持する筒状部分5を有するブラケット6とを具え、ブッシュ4の前記外筒2および、ブラケット6をともに樹脂材料にて形成してなる防振装置であって、外筒2の一端部に外向きフランジ2aを設けるとともに、ブラケット6の筒状部分5の一端に、前記外向きフランジ2aに面接触する平坦面5bを設け、ブラケット6の該平坦面5bと、前記外向きフランジ2aとの相互を固着させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、互いに平行に配置した内筒および外筒の相互を、それらの相互間に配設した弾性体で連結してなるブッシュと、そのブッシュを内側に保持する筒状部分を有するブラケットとを具える、エンジンマウントとして用いて好適な防振装置に関するものであり、とくには、さらなる軽量化を実現した装置において、ブッシュの、ブラケットからの抜け出しを有効に防止することができる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防振装置では、ブッシュの外筒と、ブッシュを保持する筒状部分を有するブラケットとをいずれも金属材料で構成しており、かかる防振装置を製造する場合、金属製ブラケットの内側に、内筒および外筒の相互を弾性体で連結してなるブッシュを組付けるに当って、金属製ブラケットの内径と同一または、それよりも僅かに大きい外径を有する、金属製のブッシュ外筒を、金属ブラケットの内側に圧入することとしており、これにより、金属製のブッシュ外筒の外周面を、金属ブラケットの内周面に強固に摩擦係合させて、ブラケットにブッシュを保持させていた。
【0003】
ここで、装置の軽量化を目的として、ブッシュの外筒を、金属材料よりも比重の小さい樹脂材料にて形成した場合は、樹脂製のブッシュ外筒を、金属ブラケットの内側に、摩擦係合に基く所要の保持力を発揮させ得る程度の大きな力で圧入したり、経年の使用により繰り返し入力があった場合、金属製のものに比して強度が低い樹脂製の外筒が破損するおそれがあるため、ブラケットによる、ブッシュの保持力を所期したほどに高めることができず、それ故に、ブラケットの軸線方向に、ブッシュが抜け出るおそれがあった。
【0004】
このことに対し、特許文献1には、「外郭筒内に圧入される(、樹脂材料からなる)外筒と、この外筒の内側に配置された内筒と、これらの外筒と内筒との間に配置されて両者を弾性的に連結する筒状の弾性体と、を備える防振装置であって、前記外筒の軸方向一端部にはその全周にわたって凹部が形成され、この外筒において、前記凹部よりも軸方向一端側に位置する一端側部分に対する径方向外側からの拘束を解除した状態で、前記凹部よりも軸方向他端側に位置する他端側部分を縮径変形させたときに、前記一端側部分が前記凹部回りに径方向外側に向けて反り返る構成とされたことを特徴とする防振装置」が提案されており、この防振装置によれば、「外筒の他端側部分と外郭筒の圧入面との間に摩擦力を発生させることのみならず、外筒の一端側部分を外郭筒において圧入面に軸方向一端側から連なる部分に係合させることも可能になり、防振装置を外郭筒内に強固に固定することができる」とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−270586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の防振装置を、車両に搭載する用途に用いる場合は、車両の低燃費性の要請から、たとえば、車両のエンジンマウントとして用いられることのあるこの種の防振装置それ自体のさらなる軽量化が希求されている状況の下では、外筒のみを樹脂製とした、特許文献1に記載された防振装置によっては、要求されるほどの軽量化を実現することができなかった。
そこで、ブッシュの外筒のみならず、ブッシュを取り囲んで保持するブラケットもまた、樹脂材料で構成することが提案されている。
【0007】
しかるに、ブッシュの外筒および、ブッシュを内側に保持するブラケットをいずれも樹脂製とした場合は、樹脂ブラケットもまた強度の低いものとなって、装置の製造時の、ブッシュ外筒の、ブラケットの筒状部分の内側への圧入に際し、いずれも樹脂材料からなる外筒およびブラケットの双方の破損を防止するべく、ブッシュ外筒の圧入力をさらに小さくせざるを得ない結果として、ブラケットの内側でのブッシュの保持力が、より一層低下することになるため、特許文献1に記載されたような、外筒の一端部分に引掛け部を設けた防振装置によっても、ブッシュの、ブラケットからの抜け出しを十分に防止することはできなかった。
【0008】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、外筒およびブラケットをいずれも樹脂材料で構成することで、さらなる軽量化を実現した防振装置において、装置の使用等に際する、ブッシュの、ブラケットからの意図しない抜け出しを有効に防止できる防振装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の防振装置は、互いに平行に配置した内筒および外筒の相互を、それらの内筒と外筒との間に配設した弾性部材で連結してなるブッシュと、該ブッシュを内側に保持する筒状部分を有するブラケットとを具え、ブッシュの前記外筒および、ブラケットをともに樹脂材料にて形成してなるものであって、外筒の一端部に外向きフランジを設けるとともに、ブラケットの筒状部分の一端に、前記外向きフランジに面接触する平坦面を設け、ブラケットの該平坦面と、前記外向きフランジとの相互を、たとえば、超音波溶接、摩擦溶接もしくはレーザ溶接等によって固着させてなるものである。
【0010】
ここで好ましくは、ブラケットの筒状部分の前記一端に、前記平坦面を有するフランジ部を設けるとともに、外筒の外向きフランジを、前記筒状部分の本体部の外表面よりも外周側まで延在させ、ブラケットのフランジ部の平坦面と、前記外向きフランジとの相互を、前記筒状部分の本体部の外表面よりも外周側の領域で固着させる。
【0011】
ところで、外筒の、前記外向きフランジ側とは逆側の端部分には、それの周方向の少なくとも一部に、外周側への突出姿勢でブラケットの筒状部分の他端部もしくは他端面に掛合する引掛け掛合部を設けることが好ましい。
【0012】
なお、この引掛け掛合部は、外筒の、前記外向きフランジ側とは逆側の端部分の外周面に全周にわたって設けた溝により区画形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明の防振装置によれば、ブッシュ外筒の一端部に設けた外向きフランジと、ブラケットの筒状部分の一端に設けられて、前記外向きフランジに面接触する平坦面との相互を固着させることにより、ブッシュ外筒の、ブラケットの筒状部分への圧入に際し、いずれも強度の低い樹脂ブラケット及び樹脂性のブッシュ外筒の破損を生じさせるほどに、圧入力を高めることなく、ブッシュ外筒をブラケット内に圧入することができる一方で、圧入力の低下に起因するブッシュ保持力の低下に対しては、ブッシュ外筒の外向きフランジと、ブラケットの平坦面との固着域での、それらの部材相互の十分強固な連結を担保することで、ブラケット及びブッシュ外筒の双方を樹脂製としたことによる装置の軽量化を実現してなお、ブッシュの、ブラケットからの意図しない抜け出しのおそれを十分に取り除くことができる。
【0014】
ここで、防振装置のさらなる軽量化を目的として、ブラケットの筒状部分を薄肉なものとした場合であっても、ブラケットの筒状部分の一端に、平坦面を有するフランジ部を設けるとともに、外筒の外向きフランジを、前記筒状部分の本体部の外表面よりも外周側まで延在させることにより、たとえば、超音波溶接を行うに際し、相互に近接させた、ブラケットのフランジ部及び、外筒の外向きフランジのそれぞれの、前記筒状部分の本体部の外表面よりも外周側の部分を、超音波溶接装置等で挟み込んだ状態で、それらの相互を接合することにより、ブラケットのフランジ部と外筒の外向きフランジとの固着を、高い接合精度の下、所期したとおりの位置で行うことができる。
【0015】
ところで、外筒の、外向きフランジとは逆側の端部分の周方向の少なくとも一部、たとえば、周方向の複数個所に、筒状部分の内周面によって縮径変形されずに、外周側への突出姿勢でブラケットの筒状部分の他端部もしくは他端面に掛合する引掛け掛合部を設けたときは、ブラケットの筒状部分が、外筒の、前述した外向きフランジと、外周側へ突出する引掛け掛合部との間で挟み込み固定されることになるので、外向きフランジの、筒状部分の平坦面との固着とも相俟って、ブッシュの、ブラケットからの抜け出しを防止する効果をさらに高めることができる。
【0016】
この場合において、上記の引掛け掛合部を、外筒の、前記外向きフランジ側とは逆側の端部分の外周面に全周にわたって設けた溝により区画形成したときは、ブッシュを、ブラケットの内側に組付けるに先立って、ブッシュ外筒に、外周側に突出する引掛け掛合部としての引掛け突部を形成することなく、ブッシュ外筒の端部分の外周側に溝のみを予め設けることにより、ブッシュ外筒の、ブラケットの筒状部分への圧入の完了時に、外周側の筒状部分による拘束から解放される、外筒の、前記溝よりも先端側の部分だけが、外周側に弾性復元変形して、外筒に設けた前記溝の溝壁が、筒状部分の他端部もしくは他端面に掛合することになるので、外筒への引掛け掛合部の形成を極めて容易なものとして、かかる防振装置の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す装置の、ブラケットの筒状部分の中心軸線を含む縦断面図である。
【図3】図2の要部を示す拡大断面図である。
【図4】ブラケットの筒状部分の変形例を示す縦断面図である。
【図5】図2の他の要部を示す拡大断面図である。
【図6】図5のブッシュ外筒を、ブラケット内に圧入する前の状態で示す拡大断面図である。
【図7】ブッシュ外筒の端部分の変形例を示す、図6と同様の断面図である。
【図8】図2の防振装置の組付け工程を、筒状部分の上半部のみで示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照しつつ、この発明の実施形態について説明する。
図1に示す防振装置は、互いに平行に配置した内筒1及び外筒2の相互を、それらの間に配設した、ゴム材料等で構成することのできる弾性部材3で連結してなるブッシュ4と、ブッシュ4を内側に保持する筒状部分5を有するブラケット6とを具えてなる。
なおここでは、この発明を適用したエンジンマウントを例にとって説明するが、この発明は当然に、エンジンマウント以外のブッシュタイプの防振装置にも適用可能である。
【0019】
ここでは、内筒1を、たとえば金属材料その他の剛性材料にて形成する一方で、外筒2及びブラケット6はいずれも、たとえば、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリブテン等の樹脂材料で形成する。
このように、外筒2及びブラケット6を、金属材料よりも比重の小さい樹脂材料で形成することにより、防振装置を大幅に軽量化することができるので、この防振装置を、たとえば、車両に搭載してエンジンマウントとして用いた場合は、車両の燃費性の向上に寄与させることができる。
【0020】
ところで、外筒2及びブラケット6をいずれも樹脂製としたこの防振装置では、ブッシュ4をブラケット6に組付けるに当り、筒状部分5による大きなブッシュ保持力を発揮させるために、ブッシュ外筒2を、ブラケット6の筒状部分5内に、大きな圧入締め代の下で圧入した場合は、強度の低い樹脂製ブラケット6及び樹脂製の外筒2が破損するおそれがある一方で、締め代が小さいと、ブッシュ外筒2の保持力が不足することになるので、たとえば、図2に縦断面図で示す、筒状部分5内での外筒2の軸線方向の圧入長さLを短くすることや、筒状部分5の内径と外筒2の外径との径差を適宜選択すること等によって、樹脂ブラケット6及び樹脂製の外筒2が破損し得ない程度のブッシュ保持力の作用の下で、ブッシュ外筒2の外周面を筒状部分5の内周面に摩擦係合させる。
【0021】
ところで、この発明では、ブラケット6によるブッシュ2保持力の低さを補うべく、外筒2の、図2では右側に位置する一端に、外向きフランジ2aを全周にわたって設けるとともに、ブラケット6の筒状部分5の、同様に右側に位置する一端の、図に示すところではフランジ部5aに、前記外向きフランジ2aに面接触する平坦面5bを設けて、図3に拡大図で示すように、これらの外向きフランジ2a及び平坦面5bの相互を、たとえば、超音波溶接、摩擦溶接もしくはレーザ溶接等によって固着させる。
【0022】
このことによれば、ブラケット6及び外筒2の両部材を樹脂製としたことに起因する、ブラケット6の筒状部分5によるブッシュ保持力の低さを、筒状部分5の平坦面5bと、ブッシュ外筒2の外向きフランジ2aとの固着によって有効に補うことができるので、ブッシュ4の、ブラケット6からの意図しない抜け出しを防止することができる。
なおここで、外向きフランジ2a及び平坦面5bの相互の固着力を十分高めるためには、ブラケット6及び外筒2をともに、たとえば、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリブテン等のうちから選択した同種の樹脂材料にて形成することが好ましい。
【0023】
ここで、筒状部分の、外筒2の外向きフランジ2aを面接触させる平坦面は、図4(a)及び(b)に示すように、フランジ部を有しない筒状部分15、25の一端側の開口部周縁に形成することも可能であるが、ブラケットの体積を小さくして装置の軽量化を図るとの観点及び、筒状部分の平坦面と、外筒の外向きフランジとの固着を確実かつ強固なものとするとの観点からは、図1〜3に示すように、筒状部分5の一端に、平坦面5bを形成したフランジ部5aを設け、さらに、外筒2の外向きフランジ2aを、筒状部分5の本体部5cの外表面よりも外周側まで延在させて、筒状部分5のフランジ部5aの平坦面5bと、外向きフランジ2aとの相互を、筒状部分5の本体部5cの外表面よりも外周側の領域で固着させることが好ましい。
【0024】
すなわち、筒状部分5の平坦面5bと、外筒2の外向きフランジ2aとの固着を、たとえば超音波溶接にて行う場合は、筒状部分5に、平坦面5bを有するフランジ部5aを設けることにより、図3に破線で示すような超音波溶接装置100によって、相互に近接させたフランジ部5aと外向きフランジ2aとを、それらの相互に対向する面のそれぞれの裏面側から挟み込んで十分確実に支持することが可能となり、しかも、平坦面5bと外向きフランジ2aとの相互の固着部分を、平坦面5bの、筒状部分5の本体部5cの外表面よりも外周側の領域とすることにより、溶接装置100の作動に基く、平坦面5bの、外向きフランジ2aとの溶融接合をもたらす、図に矢印で示す軸線方向の加振力の付与に際し、溶接装置100によって、筒状部分5及び外筒2のそれぞれの相互固着部分の軸線方向への変位を強固に拘束することができるので、筒状部分5を薄肉化して防振装置をさらに軽量化した場合であっても、筒状部分5とブッシュ外筒2との接合精度を高めることができる。
【0025】
なお、図1に示すように、ブッシュ4の内筒1と外筒2とを連結する弾性部材3に、内外筒の軸線方向に貫通する所要の空所3a、3bを設けて、図の上下方向と正面視の左右方向とのそれぞれの入力振動に対し異なる制振特性を発揮し得るようにした防振装置では、筒状部分5の平坦面5bと外向きフランジ2aとの固着を、ブッシュ4の、軸線周りの回転変位に基き溶融接合する摩擦溶接によるよりも、超音波溶接によって行わせることが好ましい。
【0026】
またここで、図1〜3及び4(a)に示すように、筒状部分5、15の、外筒2の外向きフランジ2aが面接触する平坦面5b、15bの外周側に、筒状部分5、15から連続して軸線方向に延びて、外向きフランジ2aの外周側を取り囲む環状部分5d、15dを設けることは、この発明の必須の構成ではないので、図4(b)に示すように、外向きフランジ2aを、筒状部分25から露出する姿勢で、平坦面25bに面接触させることも可能である。
【0027】
ところで、外筒2の、外向きフランジ2aとは逆側の、図では左側に位置する端部分には、図5に拡大図で示すように、ブッシュ外筒2の、ブラケット6の筒状部分5内への圧入完了状態で、縮径姿勢から解放されて外周側へ弾性復帰して、筒状部分5の他端部もしくは他端面に掛合する引掛け掛合部2bを設けることができる。
このことにより、筒状部分5が、外筒2の、外向きフランジ2aと引掛け掛合部2bとの間で挟み込まれて、外筒2の、筒状部分5の軸線方向のいずれの方向への抜け出しも防止されることになるので、ブラケット6及びブッシュ外筒2をいずれも樹脂製としたことに起因する、筒状部分5によるブッシュ保持力の低さを十分に補って、ブッシュ4の抜け出しのおそれをより確実に取り除くことができる。
【0028】
かかる引掛け掛合部2bの形成は、図6に、ブッシュ4を、ブラケット内に圧入する前の状態で示すように、外筒2の端部分の外周面に、全周にわたって延在する溝2cを予め設けることによって行うことができ、これによれば、外筒2の外径よりも僅かに小さい内径を有する筒状部分5内への、ブッシュ外筒2の圧入の完了時に、筒状部分5の他端側で、筒状部分5による縮径変形から解放される、外筒2の端部分の、溝2cよりも先端側の箇所だけが、自身の弾性復元力に基いて拡径変形することによって、その先端側の溝壁が、図5に示すように、筒状部分5の他端部もしくは他端面に引っ掛かることに基いて、ブッシュ外筒2を抜け止めする。
なお、この場合、ブッシュ外筒2の、溝2cよりも軸線方向の中央部側部分は、筒状部分5によって縮径変形させられたまま、筒状部分5の内周面に摩擦係合されることになる。
【0029】
一方、引掛け掛合部2bは、図7に、図6と同様の断面図で示すように、外筒32の端部分の全周にわたって、または該端部分の複数箇所に、ブラケット内に圧入する前の状態でも、ブッシュ外筒32の軸線方向の中央部分の外周面から突出する突部32cを予め設けることによっても形成することができる。
外筒32の端部分に設けたこの突部32cは、筒状部分5の他端部もしくは他端面に引っ掛かるものであれば、図示の形状に限定されることはなく、様々な形状に形成することができる。
【0030】
以上に述べたような防振装置における、ブッシュ4のブラケット6への組付けに当っては、たとえば、図8(a)に、筒状部分5の上半部のみを断面図で示すように、内筒1及び外筒2を弾性部材3で相互に連結したブッシュ4を、外筒2の外向きフランジ2a側とは逆側の端部分から、図に矢印で示す向きに、ブラケット6の筒状部分5内へ所要の縮径状態で圧入し、しかる後、外筒2の外向きフランジ2aが、たとえば、筒状部分5の平坦面5bに設けた自己溶融突起部5eに接触したところで、図示しない超音波溶接装置によって軸線方向の加振力を作用させて、突起部5eを、外向きフランジ2aとの間で溶融させつつ、ブッシュ外筒2を筒状部分5内にさらに圧入し、ついには、図8(b)に示すように、外向きフランジ2aを平坦面5bに面接触させて、これらの部材の相互を、突起部5eの溶融下で固着させることにより行うことができる。
【0031】
なおここで、筒状部分5の平坦面5bに設けられて、超音波溶接を行うに際して外向きフランジ2aとの接合に寄与する突起部5eは、平坦面5bの周方向の一または複数個所に形成することができる他、図示は省略するが、突起部を、外筒2の外向きフランジ2aに設けることもできる。
【0032】
ここにおいて、外筒2の、外向きフランジ2aとは逆側の端部分に、上述した引掛け掛合部2bを設けた場合は、図8(a)及び(b)に示すように、ブッシュ4の、ブラケット内への圧入工程と、その圧入工程の終盤で行う、筒状部分5の平坦面5b及び、外筒2の外向きフランジ2aの相互の溶接工程との両工程が終了して、平坦面5bと外向きフランジ2aとが面接触すると同時に、引掛け掛合部2bが、筒状部分5の他端部もしくは他端面に掛合するように、筒状部分5及び外筒2のそれぞれの軸線方向の長さ寸法を選択することが、ブラケット6及びブッシュ外筒2をともに樹脂材料にて形成したことによって、筒状部分5による十分大きなブッシュ保持力が見込めないこの種の防振装置において、ブッシュ外筒2の意図しない抜け出しを防止するとともに、装置の使用状態での、筒状部分5内でのブッシュ4のがたつき、ひいては、そのがたつきによる異音の発生を有効に防止するとの観点から好ましい。
【符号の説明】
【0033】
1 内筒
2 外筒
2a 外向きフランジ
2b 引掛け掛合部
2c 溝
32c 突部
3 弾性部材
3a、3b 空所
4 ブッシュ
5、15、25 筒状部分
5a フランジ部
5b、15b、25b 平坦面
5d、15d 環状部分
5e 突起部
6 ブラケット
100 超音波溶接装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置した内筒および外筒の相互を、それらの内筒と外筒との間に配設した弾性部材で連結してなるブッシュと、該ブッシュを内側に保持する筒状部分を有するブラケットとを具え、ブッシュの前記外筒および、ブラケットをともに樹脂材料にて形成してなる防振装置であって、
外筒の一端部に外向きフランジを設けるとともに、ブラケットの筒状部分の一端に、前記外向きフランジに面接触する平坦面を設け、ブラケットの該平坦面と、前記外向きフランジとの相互を固着させてなる防振装置。
【請求項2】
ブラケットの筒状部分の前記一端に、前記平坦面を有するフランジ部を設けるとともに、外筒の外向きフランジを、前記筒状部分の本体部の外表面よりも外周側まで延在させ、ブラケットのフランジ部の平坦面と、前記外向きフランジとの相互を、前記筒状部分の本体部の外表面よりも外周側の領域で固着させてなる請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
外筒の、前記外向きフランジ側とは逆側の端部分の周方向の少なくとも一部に、外周側への突出姿勢でブラケットの筒状部分の他端部もしくは他端面に掛合する引掛け掛合部を設けてなる請求項1もしくは2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記引掛け掛合部を、外筒の、前記外向きフランジ側とは逆側の端部分の外周面に全周にわたって設けた溝により区画形成してなる請求項3に記載の防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−117626(P2012−117626A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269206(P2010−269206)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】