説明

防振部材

【課題】金具に付着させる加硫接着剤の膜厚が薄くても十分な接着強度が得られるようにする。
【解決手段】防振部材10は、防振ゴム14,15が加硫接着剤を介して金具12,13に加硫接着されている。防振ゴム14,15は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体として液状水素添加イソプレンが添加されたブレンドゴムを原料ゴムとし、原料ゴム100質量部に対して、シランカップリング剤で表面処理されたシリカが5〜15質量部配合されたゴム組成物で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
防振ゴムが加硫接着剤を介して金具に一体に設けられた防振部材に関する。
【背景技術】
【0002】
防振ゴムを有する防振部材が広く実用化されている。
【0003】
特許文献1には、EPDMにアミノ系シランカップリング剤処理されたシリカを添加した防振ゴムが開示されている。特許文献2〜6には、EPDMにシランカップリング剤処理されたシリカを添加した防振ゴムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−20548号公報
【特許文献2】特許第3838154号公報
【特許文献3】特開2006−52281号公報
【特許文献4】特開2006−52282号公報
【特許文献5】特開2008−7770号公報
【特許文献6】特開2009−30037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、EPDMのゴム組成物の防振ゴムを金具に加硫接着する場合、十分な接着強度を得るためには、重ね塗りする等して金具に加硫接着剤を厚膜に付着させる必要がある。
【0006】
本発明の課題は、金具に付着させる加硫接着剤の膜厚が薄くても十分な接着強度が得られるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、防振ゴムが加硫接着剤を介して金具に加硫接着された防振部材であって、上記防振ゴムは、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体として液状水素添加イソプレンが添加されたブレンドゴムを原料ゴムとし、該原料ゴム100質量部に対して、シランカップリング剤で表面処理されたシリカが5〜15質量部配合されたゴム組成物で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防振ゴムが、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体として液状水素添加イソプレンが添加されたブレンドゴムを原料ゴムとし、その原料ゴム100質量部に対して、シランカップリング剤で表面処理されたシリカが5〜15質量部配合されたゴム組成物で形成されているので、金具に付着させる加硫接着剤の膜厚が薄くても十分な接着強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係るエキゾーストマウントの正面図である。
【図2】本実施形態に係るエキゾーストマウントを用いた排気管の支持構造の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1及び2は本実施形態に係るエキゾーストマウント10(防振部材)を示す。このエキゾーストマウント10は、自動車の車体21の下面に設けられ、支持部材22を介して排気管23の消音器24の近傍を吊り下げ支持する部材である。
【0012】
本実施形態に係るエキゾーストマウント10は、中央に取付部11が設けられており、その取付部11の両側面及び下面を囲うように本体部12(金具)が、また、取付部11の上面を覆うようにブラケット13(金具)がそれぞれ設けられている。そして、取付部11と本体部12とは一対の主バネ部14(防振ゴム)によって連結されており、また、本体部12とブラケット13とは一対の副バネ部15(防振ゴム)によって連結されている。
【0013】
取付部11は、ゴム組成物により縦長の略矩形のブロック状に形成されており、中央に支持部材挿入孔11aが貫通して形成されている。取付部11は、例えば、縦が30〜50mm、横が20〜50mm、及び厚さが20〜50mmである。
【0014】
本体部12は、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属の細長板材が曲げ加工され、左右方向に延びる底壁部12aの左右両端部のそれぞれから上方に垂直壁部12bが延びたコの字状に形成されている。また、本体部12は、各垂直壁部12bの上端部に連続して外方に屈曲して略水平に延びる連結片部12cが形成されている。本体部12は、例えば、縦が40〜100mm、横が60〜160mm、本体部12を構成する細長板材の幅が20〜100mm、及び厚さが2〜10mmである。
【0015】
ブラケット13は、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属で平板状に形成されており、両端部のそれぞれに車体固定ボルト孔13aが貫通して形成されている。ブラケット13は、例えば、長さが100〜200mm、幅が20〜100mm、及び厚さが2〜10mmである。
【0016】
一対の主バネ部14のぞれぞれは、取付部11と同一のゴム組成物で柱状に且つ取付部11と一体に形成されており、取付部11の左側面又は右側面から外向き斜め下方に延びるように設けられ、先端が本体部12の対応する垂直壁部12bの内側面に加硫接着されて結合している。各主バネ部14は、例えば、長さが10〜55mm、及び外径が10〜30mmである。
【0017】
一対の副バネ部15のそれぞれは、ゴム組成物で平板状に形成されており、下面が本体部12の対応する連結片部12cの上面に、また、上面がブラケット13の下面の車体固定ボルト孔13aの内側部分にそれぞれ加硫接着されて結合している。各副バネ部15は、例えば、縦及び横が10〜100mm、並びに厚さが3〜20mmである。
【0018】
取付部11、主バネ部14、及び副バネ部15を形成するゴム組成物は、原料ゴムに所定のゴム配合剤が配合された未加硫ゴム組成物が加熱及び加圧されて加硫成型されたものである。なお、取付部11、主バネ部14、及び副バネ部15は、同一のゴム組成物で形成されていてもよく、また、異なるゴム組成物で形成されていてもよい。
【0019】
取付部11、主バネ部14、及び副バネ部15を形成するゴム組成物の原料ゴムは、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体として液状水素添加イソプレンが添加されたブレンドゴムである。エチレン−α−オレフィンエラストマーと液状水素添加イソプレンとのブレンド質量比は、前者/後者=90/10〜60/40であることが好ましく、90/10〜80/20であることがより好ましい。
【0020】
エチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(以下、「EPDM」という。)、エチレン−プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン−ブテンコポリマー(EBM)、エチレン−オクテンコポリマー(EOM)等が挙げられ、これらのうちEPDMが好ましい。EPDMの場合、そのムーニー粘度ML1+4(125℃)は60〜80であることが好ましく、エチレン含量は50〜70質量%及びジエン含量は3〜10質量%であることが好ましく、ジエン成分はエチリデンノルボルネン(ENB)であることが好ましい。エチレン−α−オレフィンエラストマーは、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。
【0021】
液状水素添加イソプレンは、平均分子量が25000〜30000であることが好ましく、ヨウ素価が0〜40g/100gであることが好ましい。なお、液状水素添加イソプレンの市販品としては、例えば、クラレ社の商品名LIR−200やLIR−290等が挙げられる。
【0022】
原料ゴムには、後述の防振ゴムが強固に内環11及び外環12に加硫接着される効果に影響を及ぼさない範囲で天然ゴム(NR)、クロロプレン(CR)等が含まれていてもよい。
【0023】
防振ゴムを形成するゴム組成物には、ゴム配合剤としてシランカップリング剤で表面処理されたシリカが原料ゴム100質量部に対して5〜15質量部配合されている。このように防振ゴムが、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体として液状水素添加イソプレンが添加されたブレンドゴムを原料ゴムとし、その原料ゴム100質量部に対して、シランカップリング剤で表面処理されたシリカが5〜15質量部配合されたゴム組成物で形成されているので、製造時に、内環11及び外環12に付着させる加硫接着剤の膜厚が薄くても十分な接着強度を得ることができる。ここで、シリカの配合量が原料ゴム100質量部に対して5質量部よりも少ないと、シランカップリング剤で表面処理されたシリカの機能が希薄となる。このような観点からシリカの配合量は5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。一方、シリカの配合量が原料ゴム100質量部に対して15質量部よりも多いと、エチレン−α−オレフィンエラストマーに対する配合比率が高くなり、例えばジエン成分の働きを妨げる等の不具合が生じる虞がある。このような観点からシリカの配合量は15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0024】
シリカは、例えば、平均粒径が1.5〜8.0μm、pHが8、表面積が10〜20m/g、吸油量が40〜60ml/100gである。シリカは、単一種が配合されていてもよく、また、複数種が混合されて配合されていてもよい。後者の場合、シリカは、例えば、平均粒径やpHや表面積や強熱減量や吸油量が相互に異なる複数のグレードが混合されて配合されていてもよい。
【0025】
シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのメタクリル酸系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランなどのメルカプト及びサルファ系シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。シリカは、これらのうちアミノ系シランカップリング剤で処理されたものが配合されていることが好ましい。シリカは、単一種のシランカップリング剤で表面処理されたものが配合されていてもよく、また、複数種のシランカップリング剤で表面処理されたものが混合されて配合されていてもよい。
【0026】
なお、シランカップリング剤で表面処理されたシリカの市販品としては、例えば、ホフマンミネラル社製の商品名アクティジルEM(エポキシ系シランカップリング剤処理品)やアクティジルAM(アミン系シランカップリング剤処理品)等が挙げられる。
【0027】
ゴム配合剤としては、その他に、例えば、カーボンブラックなどの補強材、加硫促進助剤、加工助剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫剤等が配合されていてもよい。
【0028】
補強材のカーボンブラックとしては、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラックが挙げられる。カーボンブラックは、単一種が配合されていてもよく、また、複数種が配合されていてもよい。カーボンブラックの配合量は、原料ゴム100質量部に対して例えば10〜80質量部である。
【0029】
加硫促進助剤としては、例えば、酸化マグネシウムや酸化亜鉛といった金属酸化物等が挙げられる。加硫促進助剤は、複数種が配合されていることが好ましい。加硫促進助剤の配合量は、原料ゴム100質量部に対していずれも例えば1.5〜10.0質量部であり、合計が例えば3.0〜20.0質量部である。
【0030】
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸等が挙げられる。加工助剤は、単一種が配合されていてもよく、また、複数種が配合されていてもよい。加工助剤の配合量は、原料ゴム100質量部に対して例えば0.5〜4.0質量部である。
【0031】
老化防止剤としては、例えば、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体、モノフェノール系、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダートフェノール系、亜リン酸エステル系のもの等が挙げられる。老化防止剤は、単一種が配合されていてもよく、また、複数種が配合されていてもよい。老化防止剤の配合量は、原料ゴム100質量部に対して例えば0.5〜8.0質量部である。
【0032】
加硫促進剤としては、例えば、グァニジン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系のものが挙げられる。加硫促進剤は、単一種が配合されていてもよく、また、複数種が配合されていてもよい。加硫促進剤の配合量は、原料ゴム100質量部に対して例えば1.0〜8.0質量部である。
【0033】
加硫剤としては、例えば、硫黄、硫黄化合物、オキシム類、ニトロソ化合物、ポリアミン、有機過酸化物等が挙げられる。加硫剤は、単一種が配合されていてもよく、また、複数種が配合されていてもよい。加硫剤の配合量は、原料ゴム100質量部に対して例えば3〜10質量部である。
【0034】
加硫接着剤としては、例えば、単一剤で構成される一層型加硫接着剤、金属側に塗布されるプライマーとその上に塗布されてゴム側となる上塗り剤とで構成される二層型加硫接着剤が挙げられる。前者の市販品としては、例えば、ロード・ファー・イースト社のケムロックXJ150、6100、6108、6126、6254等が挙げられる。後者のプライマーの市販品としては、ロード・ファー・イースト社のケムロック205、207、208、200、200K、204等が挙げられる。後者の上塗り剤の市販品としては、ロード・ファー・イースト社のケムロック6108、6110、6125、6225等が挙げられる。
【0035】
加硫接着剤は、汎用の塩化ゴム系接着剤であってもよく、高架橋型のポリオレフィン系接着剤であってもよい。前者の市販品としては、例えば、ロード・ファー・イースト社のケムロック6110が挙げられる。この加硫接着剤は、キシレン77質量%、テトラクロロエチレン0.3質量%、カーボンブラック1〜5質量%、塩化ゴム系樹脂10〜15質量%、及び合成樹脂5〜10質量%を含有するものである。後者の市販品としては、例えば、ロード・ファー・イースト社のケムロック6108が挙げられる。この加硫接着剤は、キシレン77質量%、酸化亜鉛1〜5質量%、カーボンブラック1〜5質量%、合成樹脂10〜15質量%、変性ポリエチレン5〜10質量%、及び四塩化炭0.01質量%未満を含有するものである。
【0036】
以上の構成の本実施形態に係るエキゾーストマウント10は、自動車の車体21の下面にブラケット13が当接するように設けられると共に車体固定ボルト孔13aにボルト25が通されて固定され、また、一端が排気管23の消音器24の近傍に取り付けられた支持部材22が取付部11の支持部材挿入孔11aに挿入されるように設けられ、そして、それによって排気管23を吊り下げ支持し、主バネ部14及び副バネ部15によりその振動を吸収するように構成されている。
【0037】
次に、本実施形態に係るエキゾーストマウント10の製造方法について説明する。
【0038】
まず、バンバリーミキサー等のゴム混練機に原料ゴムを投入して素練りし、しかる後、シランカップリング剤で表面処理されたシリカを含むゴム配合剤を投入してそれらを混練することにより未加硫ゴム組成物を得る。
【0039】
一方、本体部12の各垂直壁部12bの内側面及び各連結片部12cの上面、並びにブラケット13の下面の車体固定ボルト孔13aの内側部分のそれぞれ、つまり、ゴム接着面にプライマーを塗布して乾燥させ、その上に上塗り剤を塗布して乾燥させる。加硫接着剤層の厚さは例えば3〜5μmである。なお、一層型加硫接着剤を用いる場合には、ゴム接着面にそれを塗布して乾燥させればよい。
【0040】
未加硫ゴム組成物と本体部12及びブラケット13とを成形型にセットして加熱及び加圧する。このとき、未加硫ゴム組成物が加硫して取付部11及び一対の主バネ部14の一体物に成型されると共に各主バネ部14が本体部12の対応する垂直壁部12bの内側面に加硫接着されて一体化する。また、一対の副バネ部15が成型されると共に各副バネ部15が本体部12の対応する連結片部12cの上面及びブラケット13の下面の車体固定ボルト孔13aの内側部分にそれぞれ加硫接着されて一体化する。ここで、成型加硫条件は、例えば、温度が140〜170℃、及び時間が3〜30分である。
【0041】
なお、本実施形態では、エキゾーストマウント10を防振部材として例示したが、特にこれに限定されるものではなく、その他の構成の防振部材であってもよい。
【実施例】
【0042】
(ゴム組成物)
以下の実施例1〜3並びに比較例1及び2のゴム組成物を作製した。なお、それぞれの配合は表1にも示す。
【0043】
<実施例1>
EPDM100質量部に対して70質量部の油展がなされた油展EPDM(住友化学社製 商品名:エスプレン601F、ムーニー粘度73ML1+4(125℃)、エチレン含量59質量%、ジエン含量3.5質量%)153質量部に対して液状水素添加イソプレン(クラレ社製 商品名:LIR−290、平均分子量25000、ヨウ素価40g/100g)10質量部を添加し、それによって、EPDM90質量部及び液状水素添加イソプレン10質量部の原料ゴムを構成し、この原料ゴム100質量部に対し、アミノ系シランカップリング剤で表面処理されたシリカ(ホフマンミネラル社製 商品名:アクティジルAM)5質量部、MAFカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シースト116)48質量部、酸化亜鉛(三井金属社製 酸化亜鉛2種)5質量部、ステアリン酸(日油社製 商品名:ステアリン酸ツバキ)1質量部、老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラックRD(224))1質量部、加硫促進剤1(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーDM−P)0.5質量部、加硫促進剤2(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーTT−P)1質量部、加硫促進剤3(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーTRA−P)0.5質量部、加硫促進剤4(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーBZ)1質量部、及び粉末硫黄(細井化学社製)1質量部を配合して混練調製した未加硫ゴム組成物を実施例1とした。
【0044】
<実施例2>
アミノ系シランカップリング剤で表面処理されたシリカの配合量を原料ゴム100質量部に対して10質量部としたことを除いて実施例1と同様にして混練調製した未加硫ゴム組成物を実施例2とした。
【0045】
<実施例3>
アミノ系シランカップリング剤で表面処理されたシリカの配合量を原料ゴム100質量部に対して15質量部としたことを除いて実施例1と同様にして混練調製した未加硫ゴム組成物を実施例3とした。
【0046】
<比較例1>
液状水素添加イソプレンを原料ゴムに含めず、また、アミノ系シランカップリング剤で表面処理されたシリカを配合しないことを除いて実施例1と同様にして混練調製した未加硫ゴム組成物を比較例1とした。
【0047】
<比較例2>
アミノ系シランカップリング剤で表面処理されたシリカを配合しないことを除いて実施例1と同様にして混練調製した未加硫ゴム組成物を比較例2とした。
【0048】
<比較例3>
アミノ系シランカップリング剤で表面処理されたシリカの配合量を原料ゴム100質量部に対して20質量部としたことを除いて実施例1と同様にして混練調製した未加硫ゴム組成物を比較例4とした。
【0049】
<比較例4>
アミノ系シランカップリング剤で表面処理されたシリカの配合量を原料ゴム100質量部に対して30質量部としたことを除いて実施例1と同様にして混練調製した未加硫ゴム組成物を比較例4とした。
【0050】
【表1】

【0051】
(試験評価方法)
<接着試験>
実施例1〜3及び比較例1〜4のそれぞれについて、JIS K6256の金属片とゴムの90度はく離試験に基づいてはく離強さを測定した。また、破壊状態をゴム部の破損をR、ゴム部と加硫接着剤間の破損をRC、加硫接着剤間の破損をCP、及び金属と加硫接着剤間の破損をMと分類し、それらの割合を目視にて評価した。なお、金属片としてリン酸亜鉛被膜処理を施したFe板を用いた。加硫接着剤は、プライマーとしてロード・ファー・イースト社のケムロック205を用い、その膜厚を1〜2μmとし、及び上塗り剤としてロード・ファー・イースト社のケムロック6108を用い、その膜厚を2〜3μmとした。
【0052】
<ゴム硬さ>
実施例1〜3及び比較例1〜4のそれぞれについて、プレス成形加工によりゴムシートを作成した。成型条件は温度を170℃及び時間を15分とした。そして、ゴムシートから試験片を切り出し、JIS K6253に基づいてタイプAデュロメータを用いてゴム硬さを測定した。
【0053】
<引張強さ及び切断時伸び並びに100%モジュラス>
実施例1〜3及び比較例1〜4のそれぞれについて、ゴムシートから試験片を切り出し、JIS K6251に基づいて引張強さ及び切断時伸びを測定した。また、そのときの100%モジュラスを求めた。
【0054】
<引裂き強さ>
実施例1〜3及び比較例1〜4のそれぞれについて、ゴムシートから試験片を切り出し、JIS K6252に基づいて引裂き強さを測定した。
【0055】
<反発弾性率>
実施例1〜3及び比較例1〜4のそれぞれについて、ゴムシートから試験片を切り出し、JIS K6255に基づいて反発弾性率を求めた。
【0056】
<圧縮永久歪み>
実施例1〜3及び比較例1〜4のそれぞれについて、ゴムシートから試験片を切り出し、JIS K6262に基づいて試験温度を150℃及び試験時間を70時間として圧縮永久歪みを測定した。
【0057】
<耐熱老化性>
実施例1〜3及び比較例1〜4のそれぞれについて、ゴムシートから試験片を切り出し、JIS K6257に基づいて熱老化条件を温度120℃及び時間7時間として熱老化させ、その後、ゴム硬さ、引張強さ、及び切断時伸びを測定し、また、100%モジュラスを求めた。なお、ゴム硬さはJIS K6253に基づいてタイプAデュロメータを用いて測定した。引張強さ及び切断時伸びはJIS K6251に基づいて測定した。
【0058】
そして、ゴム硬さ、引張強さ、切断時伸び、及び100%モジュラスの変化率を算出した。
【0059】
(試験評価結果)
試験結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
剥離強さは、実施例1が11.5N/mm、実施例2が13.5N/mm、及び実施例3が10.2N/mm、並びに比較例1が3.3N/mm、比較例2が9.6N/mm、比較例3が5.6N/mm、及び比較例4が4.6N/mmであった。剥離形態は、実施例1がR70%/RC30%、実施例2がR90%/RC10%、及び実施例3がR60%/RC40%、並びに比較例1がRC100%、比較例2がR50%/RC50%、比較例3がR2%/RC98%、及び比較例4がRC100%であった。
【0062】
ゴム硬さは、実施例1が46、実施例2が47、及び実施例3が48、並びに比較例1が50、比較例2が45、比較例3が50、及び比較例4が51であった。
【0063】
引張強さは、実施例1が12.5MPa、実施例2が13.3MPa、及び実施例3が14.1MPa、並びに比較例1が11.9MPa、比較例2が12.3MPa、比較例3が16.6MPa、及び比較例4が15.8MPaであった。切断時伸びは、実施例1が590%、実施例2が600%、及び実施例3が590%、並びに比較例1が480%、比較例2が580%、比較例3が590%、及び比較例4が580%であった。100%モジュラスは、実施例1が1.4MPa、実施例2が1.4MPa、及び実施例3が1.6MPa、並びに比較例1が1.9MPa、比較例2が1.3MPa、比較例3が1.8MPa、及び比較例4が2.1MPaであった。
【0064】
引裂き強さは、実施例1が36kN/mm、実施例2が36kN/mm、及び実施例3が40kN/mm、並びに比較例1が46kN/mm、比較例2が36kN/mm、比較例3が42kN/mm、及び比較例4が44kN/mmであった。
【0065】
反発弾性率は、実施例1が68%、実施例2が68%、及び実施例3が65%、並びに比較例1が68%、比較例2が69%、比較例3が64%、及び比較例4が62%であった。
【0066】
圧縮永久歪みは、実施例1が53%、実施例2が53%、及び実施例3が53%、並びに比較例1が51%、比較例2が53%、比較例3が53%、及び比較例4が54%であった。
【0067】
耐熱老化性について、ゴム硬さの変化率は、実施例1が+6%、実施例2が+6%、及び実施例3が+6%、並びに比較例1が+6%、比較例2が+6%、比較例3が+6%、及び比較例4が7%であった。引張強さの変化率は、実施例1が−20%、実施例2が−27%、及び実施例3が−22%、並びに比較例1が−5%、比較例2が−17%、比較例3が−19%、及び比較例4が−14%であった。切断時伸びの変化率は、実施例1が−37%、実施例2が−38%、及び実施例3が−36%、並びに比較例1が−39%、比較例2が−34%、比較例3が−38%、及び比較例4が−38%であった。100%モジュラスの変化率は、実施例1が+33%、実施例2が+33%、及び実施例3が+44%、並びに比較例1が+55%、比較例2が+32%、比較例3が+66%、及び比較例4が+24%であった。
【0068】
以上の結果から、接着性は、原料ゴムに液状水素添加イソプレンを含み、また、アミノ系シランカップリング剤で表面処理されたシリカを原料ゴム100質量部に対して5〜15質量部含む実施例1〜3が、それらの両方を含まない比較例1、液状水素添加イソプレンを含むがシリカを含まない比較例2、シリカの含有量が原料ゴム100質量部に対して20質量部である比較例3及び30質量部である比較例4よりも優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は防振ゴムが加硫接着剤を介して金具に一体に設けられた防振部材について有用である。
【符号の説明】
【0070】
10 エキゾーストマウント(防振部材)
11 取付部
11a 支持部材挿入孔
12 本体部(金具)
12a 底壁部
12b 垂直壁部
12c 連結片部
13 ブラケット(金具)
13a 車体固定ボルト孔
14 主バネ部
15 副バネ部
21 車体
22 支持部材
23 排気管
24 消音器
25 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振ゴムが加硫接着剤を介して金具に加硫接着された防振部材であって、
上記防振ゴムは、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体として液状水素添加イソプレンが添加されたブレンドゴムを原料ゴムとし、該原料ゴム100質量部に対して、シランカップリング剤で表面処理されたシリカが5〜15質量部配合されたゴム組成物で形成されていることを特徴とする防振部材。
【請求項2】
請求項1に記載された防振部材において、
上記原料ゴムに含まれるエチレン−α−オレフィンエラストマーがEPDMであることを特徴とする防振部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された防振部材において、
上記シランカップリング剤がアミノ系シランカップリング剤であることを特徴とする防振部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−270835(P2010−270835A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123484(P2009−123484)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】