説明

難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート、プリント配線板

【課題】 非ハロゲン系難燃剤を用いた難燃化手法において,十分な難燃性を確保しつつ適正な硬化性を保てる樹脂配合であり,これら樹脂を用いた製品についても,機械的,電気的,化学的に適正な特性を得ることができる難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート、プリント配線板を提供すること。
【解決の手段】 下記式(1)で示す有機リン化合物を含むエポキシ樹脂、または尿素樹脂、またはメラミン樹脂、またはフェノール樹脂からなる難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート、プリント配線板。
【化1】


(但し,R1〜13は水素原子もしくは,ハロゲン元素を含まず,かつ反応性を有さないC〜C20の炭素を有する有機基を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,環境意識の高まりにより工業製品に対する様々な規制が整備されるようになってきている。電気絶縁用積層板(本発明において積層板には片面又は,両面を金属はくで覆った積層板,すなわち金属張積層板を含む),プリプレグ、接着シート、樹脂付き銅はくおよびプリント配線板等の、配線板用材料に関しても例外ではなく,廃棄あるいは焼却時に有害物質を環境中に排出しないことも要求事項の一つとして挙げられる。そのため,燃焼時にダイオキシン問題が発生することを避ける目的でハロゲン系難燃剤を含有しないことを特徴とした製品に対する需要も増加してきている。そこで、ハロゲン系難燃剤の代替難燃剤として,種々の検討が行われており、現在は無機材料,リン化合物,窒素化合物等が難燃剤として広く用いられている。
【0003】
工業的には,これら代替難燃剤を組合せることにより難燃性を確保している場合が多い。その難燃剤の配合については,様々な案が各社から提出されている。なぜなら,従来のハロゲン系の難燃化手法の多くは,テトラブロモビスフェノールAに代表される臭素系難燃剤をベースに用いる難燃化手法が確立されていたが,非ハロゲン系の難燃システムは発展途上であり,様々な難燃化手法が提案されている段階にある為である。
【0004】
【特許文献1】特開平2‐69567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の,難燃化手法は,主に難燃剤を樹脂中に添加する方法と,反応させて樹脂骨格中に取り込む方法が取られている。両者の手法は,それぞれ特徴を有するが,従来のハロゲン系の難燃化手法が樹脂骨格中に難燃剤を取り込む系を多用していたこと,骨格中に取り込んだほうが機械的強度等の点で優れると推定されること等の理由から,非ハロゲン系でも反応性を有する難燃剤が注目される傾向がある。事実,樹脂骨格自体に難燃性を付与する手法を採用した製品も実用化されている。しかし,残念ながら十分な特性を得るに至っていない。なぜなら,反応型難燃剤は,それ自体が反応することで樹脂骨格中に取りこまれることを特長の一つとするが,現在実際に採用されている反応型の難燃剤は、それ自体が含有する難燃成分の割合が比較的少量の為,十分な難燃性を獲得しうる量を樹脂中に添加した場合,その難燃剤も持つ反応性が反応システム全体を支配してしまい,反応系及び得られる樹脂硬化物の特性に多大な影響を与えてしまい,その反応性自体が製品特性の向上を制限する結果となってしまっているためである。
【0006】
代表的な,反応型難燃剤を式(5)に示す。式(5)に示す構造の化合物及びこれに類する構造を骨格中に有し,反応性を持つ難燃剤は,前述のとおり,比較的高い難燃性を有し,実用レベルの製品特性を獲得できることから既に難燃剤として採用されている。しかし,この材料を,十分な難燃性を得られるだけの量を用いた場合,その反応性から硬化特性に大きな影響を与える為に,樹脂組成物及び製品の設計の自由度を制限する場合もある。
【0007】
【化1】

【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは,十分な物理的,化学的特性を有しつつ,ハロゲン系難燃剤を含まず,反応性を持たない化合物を用い,かつ十分な難燃性を有した樹脂組成物を作製する方法について種々検討を行った結果,以下の発明を見出すに至った。
すなわち本発明は次の発明に関する。
<1> 下記式(1)で示す有機リン化合物を含むエポキシ樹脂、または尿素樹脂、またはメラミン樹脂、またはフェノール樹脂からなる難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート。
【化2】

(但し,R1〜13は水素原子もしくは,ハロゲン元素を含まず,かつ反応性を有さないC〜C20の炭素を有する有機基を示す)
<2>上記有機リン化合物が下記式(2)で示される化合物である<1>記載の難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート。
【化3】

<3> 上記<1>または<2>に記載の難燃性樹脂組成物に下記式(3)に示す有機リン化合物を添加した難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート。
【化4】

(但し,R14〜18は水素原子もしくは,ハロゲン元素を含まないC〜C20の炭素を有する有機基を示す)
<4> <3>の上記式(3)で示した有機リン化合物が下記式(4)で示される縮合型燐酸エステルである難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート。
【化5】

<5> <1>〜<4>記載の難燃性樹脂組成物にフィラーを添加した難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート。
<6> <1>〜<5>記載の樹脂付き銅はく,もしくは接着シートおよび金属張り積層板,プリプレグを任意に組合せて作られるプリント配線板。
【発明の効果】
【0009】
本発明により,非ハロゲン系難燃剤を用いた難燃化手法において,十分な難燃性を確保しつつ適正な硬化性を保てる樹脂配合が確立され,これら樹脂を用いた製品についても,機械的,電気的,化学的に適正な特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は,上記式(1)で与えられる化合物、例えば式(2)の化合物を用いることを必須とする。式(1),(2)に示す化合物は,上記式(5)に類する構造を有するが、反応性を持たない点が、式(5)の化合物と大きく異なる点である。本発明では,式(1),(2)に示すように,式(5)とほぼ同等の構造を有していながら,反応性を持たない構造を有するとすることで,硬化特性を左右されることなく,既に実用化されている式(5)と同等の難燃化効果と良好な製品特性を得ることが出来たと考えられる。
【0011】
本発明における,式(1),もしくは式(2)の化合物の添加量は,樹脂組成物を100とした場合,リン分の含有量が0.5〜7の範囲で添加することが好ましく,より好ましくは0.5〜6であり,さらに好ましくは0.8〜5の範囲で添加する場合に良好な特性を付与する。他のリン系難燃剤を併用した場合,式(2)もしくは式(1)の化合物の添加量が零ではなく,かつそれぞれの化合物の含有するリン分が上記範囲である場合良好な特性を示す。
【0012】
本発明は,式(1)で与えられる構造を有する化合物、代表的には式(2)の化合物を配合することをよって得られる樹脂組成物であり,高い難燃化効果を得ると同時に,樹脂組成物,積層板,プリプレグ及びプリント配線板として良好な特性を獲得する。
【0013】
本発明は,上記式(1)もしくは式(2)に示す構造を有する化合物を用いることを特長とするが,他の難燃剤を併用することを制限するものではない。例えば,上記式(3)に示す構造の有機リン化合物を用いることができ,R14〜R18はハロゲン元素を含まない任意の有機基を示す。これは即ちR14を介して複数のホスフォリル基が結合した所謂縮合リン酸エステルである。これらの具体例としては,1,3−ビス(ジフェニルホスフォリル)ベンゼン [レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)と慣用名で表記する。以下同],レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート),ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート),ビスフェノールAビス(ジキシレニルホスフェート)等が使用でき,特に式(4)に示すレゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)が溶剤溶解性や価格の点でより好ましい。
【0014】
式(3)もしくは式(4)の化合物は,式(1)もしくは式(2)の化合物と,式(1)もしくは式(2)の割合がゼロにならない範囲で任意の割合で配合できるが,式(3)もしくは式(4)の化合物の含むリンの総量が式(1)もしくは式(2)の含有するリンの総量を超えない範囲で添加することが好ましい。
【0015】
また,式(5)に示す構造の化合物及びこの誘導体,もしくはその構造を骨格中に有する化合物も用いることが出来る。式(6)に示した化合物は,9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドもしくはその誘導体,例えば10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(式(5))や10−(2,5−ジヒドロキシ−6−メチルフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド,10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドであり、これらの化合物は本発明に使用できる。
【0016】
【化6】

(但し,R19は水素原子もしくは,ハロゲン元素を含まないC〜C26の炭素を有する有機基を示す)
【0017】
ただし,式(5)に示す化合物は前述の通り反応性を有する。このため,反応性を有する式(5)に示される化合物,もしくは式(6)に示す化合物が,樹脂の硬化性に大きな影響を与えない範囲で併用することが好ましい。添加範囲は,特に規定しないが,式(1)もしくは式(2)の化合物の含有するリンの総量を,超えない範囲で添加することが好ましい。また,式(5)に示す化合物の添加量も特に規定しないが,水酸基当量比が,硬化剤の有する水酸基の当量比を超えない範囲で添加することが好ましい。
【0018】
また,式(5)もしくは式(6)に示される化合物を,事前にジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物やエポキシ樹脂,フェノール系硬化等と反応させ,上記難燃剤自体の持つ反応性基の反応性を削除もしくは低減させたうえで用いてもよい。
【0019】
ここで、用いる熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂があり,これらを単独もしくは複数組み合わせて用いることができるが、その中でもエポキシ樹脂を用いる場合がもっとも好ましい。ここでいうエポキシ樹脂とは,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,ビスフェノールS型エポキシ樹脂,ビフェニル型エポキシ樹脂,ナフタレンジオール型エポキシ樹脂,フェノールノボラック型エポキシ樹脂,クレゾールノボラック型エポキシ樹脂,ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂,環状脂肪族エポキシ樹脂,グリシジルエステル樹脂,グリシジルアミン樹脂,複素環式エポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレート,ジグリシジルヒダントイン等),およびこれらを種々の反応性モノマで変性した変性エポキシ樹脂等が使用でき,これらのエポキシ樹脂を2種類以上適宜組合せて使用することもできる。特に,電気電子材料用途に適用できる高い耐熱性や信頼性が必要であることから,フェノールノボラック型エポキシ樹脂またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂またはビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂を用いることが望ましく,その添加量は特に規定されないが,十分な硬化物を得るためには,全樹脂組成物中1〜50重量%の範囲が好ましい。
【0020】
また,加工性改良,添加したエポキシの硬化促進等の目的で,硬化剤を添加することができる。硬化剤には,フェノール系,アミン系,シアネート系,酸無水物系,ジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物等ある。その添加量は,樹脂組成物の硬化反応を著しく阻害しない範囲であれば,任意の量を添加することができ,特に樹脂組成物の0〜50重量%の範囲で用いることが好ましい。具体的には,フェノールノボラック,クレゾールノボラック,ビスフェノールA,ビスフェノールF,ビスフェノールS,メラミン変性ノボラック形フェ-ノール樹脂等のフェノール性水酸基を有する硬化剤,ジシアンジアミド等アミン系硬化剤等であり,公知のシアネート系硬化剤,酸無水物,ジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物を用いることができる。ここでいうジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物は,メチルエチルケトン(MEK)等の適当な溶媒中で,フェノール類,アミン類,アルデヒド類を,加熱反応させ,溶剤および水を除去することでから容易に合成できる。例えば,用いるフェノール1モルに対して,アニリンを1モル,ホルムアルデヒドを2モルの割合で配合し,還流させ任意の反応率の点で冷却。その後に,溶剤および水分,場合によっては未反応物質を除去することにより樹脂を得ることができる。フェノール類としてはフェノール,クレゾール,ビスフェノールA,ビスフェノールF,ビスフェノールS等を用いることができ,アミン類としてはアニリン,ジアミノベンゼン等を用いることができ,アルデヒド類では,ホルムアルデヒド,パラホルム等を用いることができる。むろん,これら硬化剤は単独で用いる必要はなく,複数組み合わせ用いても良い。
また本発明で用いるエポキシ樹脂および硬化剤を,事前に適宜反応させてから用いることもできる。
【0021】
本発明の樹脂組成物は,このほかに,可燃成分を減少させる目的で,フィラーを添加することも可能である。シリカ,タルク,マイカ,ケイ酸カルシウム,ケイ酸カリウム,焼成クレー,酸化チタン,硫酸バリウム,酸化アルミニウム,炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム,炭酸バリウムなど,酸化モリブデン,酸化亜鉛,珪酸マグネシウム,等の金属酸化物が良く,このほかにも,モリブデン,亜鉛,カルシウム,リン,アルミニウム,カリウム等の複数の元素からなる酸化物等の化合物であっても良い。また,モリブデン,珪素,マグネシウム,亜鉛からなる酸化物の複数の組み合わせからなる化合物であっても良い。
【0022】
また,本発明の樹脂組成物には,これら以外に高剛性化,低熱膨張化の目的で無機質充填剤を添加することもでき,これ以外に顔料,接着助剤,酸化防止剤,硬化促進剤および有機溶剤などを添加することができるが,それぞれ公知の物質を使用することができ,非ハロゲン化合物で積層板,プリント配線板特性を低下させない物質であれば特に制限はない。
【0023】
有機溶剤の種類と量については,樹脂組成物を構成するエポキシ樹脂と硬化剤を均一に溶解もしくは分散し,プリプレグを作製するのに適正な粘度と揮発性を有していれば特に限定されるものではないが,これらの要件を満たし,かつ価格や取扱い性,安全性の観点から,メチルエチルケトン,2−メトキシエタノール,2−メトキシプロパノール,1−メトキシ−2−プロパノール等の溶剤を含む樹脂組成物全重量の5〜40重量%程度使用することが好ましい。
【0024】
また,本発明の樹脂組成物は,ガラスもしくはアラミド樹脂等を原料とする不織布,もしくはガラスクロス等の基材に含浸・乾燥することによってプリプレグを作製することができる。またさらに,このプリプレグに金属箔を重ね,加熱・加圧して積層一体化することにより積層板を製造することができる。
【0025】
また,この積層板の金属箔の不要な部分をエッチング除去することによってプリント配線板を製造することもでき,必要に応じて,これらプリント配線板と,プリプレグ,樹脂付き銅はく,もしくは接着フィルム,および銅はくを単独もしくは複数組合せて適宜積層し,加熱,加圧することにより,多層化したプリント配線板を製造することもできる。これらプリプレグ,積層板,樹脂付き銅はく,接着フィルム,プリント配線板の製造においては,当該業界における通常の塗工,積層,回路加工工程を適用することができ,これにより高耐熱性,高難燃性,高信頼性でかつハロゲン系難燃剤を含有しない積層板およびプリント配線板が得られる。
【実施例】
【0026】
以下,本発明の実施例およびその比較例によって本発明をさらに具体的に説明するが,本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0027】
実施例および比較例においてエポキシ樹脂,硬化剤,有機リン化合物,およびその他の特殊材料には下記のものを用いた。その他の有機溶剤,添加剤,汎用無機質充填剤および積層板・プリプレグを構成するガラス布,銅箔などについては,特に記載したものを除き化学工業および電子工業分野において一般的に用いられる原材料類を用いた。
エポキシ樹脂:大日本インキ化学工業製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
商品名N−673(エポキシ当量210)
フェノール系硬化剤A:大日本インキ化学工業製メラミンノボラック樹脂
商品名フェノライト LA-7054
ジヒドロベンゾオキサジン化合物(硬化剤B)
メチルエチルケトン(MEK)中ビスフェノールA,アニリン,ホルマリンを1/2/4のモル比で混合し,4時間還流させた後,水分とMEKを蒸留除去して残った樹脂状物を取り出し粉砕したもの
有機リン化合物A:前記式(2)の構造を有する化合物
商品名:SANKO−BCA
製造元:三光株式会社
有機リン化合物B:10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド
商品名 HCA−HQ
製造元:三光株式会社
有機リン化合物C:縮合型リン酸エステル
商品名 PX−200
製造元:大八化学化株式会社
添加剤A:ポリビニルブタジエン
商品名 KS−31Z
製造元:積水化学工業株式会社
無機難燃剤:住友化学製 水酸化アルミ 商品名CL−310
積層板: 銅張り積層板
商品名 MCL−BE67G(H) 製品厚み 0.4mm
製造元:日立化成工業株式会社
【0028】
特性評価は,難燃性についてはUL−94垂直法による燃焼時間により評価し,平均燃焼時間5秒以下かつ最大燃焼時間10秒以下をV−0,平均燃焼時間10秒以下かつ最大燃焼時間30秒以下をV−1,それ以上燃焼した場合をHBで分類した。その他の積層板特性(銅箔引き剥がし強さ,吸湿はんだ耐熱性,耐薬品性)についてはJIS C6481に基づき評価した。吸湿はんだ耐熱性の評価は,○:変化なし,△:ミーズリングまたは目浮き発生,×:ふくれ発生で判定し,ワニスの硬化性は160℃のホットプレート上に0.5ccのワニスを滴下し,直径1mmの棒で攪拌しゲル化するまでの時間(ゲル化時間)で評価した。
【0029】
実施例1〜4
表1に示す配合により積層板用樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物を銅はく(厚さ18μm)に塗布し,160〜175℃で4分間乾燥して樹脂厚80μmの樹脂付き銅はくを得た。同様にポリエチレンフィルム(厚さ30μm)に樹脂を塗布し160〜175℃で3分間乾燥し,樹脂厚80μmの接着シートを得た。
銅はくをエッチング除去した積層板の両面に、接着シート各1枚を重ね、さらにその外側に樹脂付き銅はくをはり185℃,圧力3MPaにて80分間加熱加圧成形して厚さ0.65mmの両面銅張積層板を作製した。積層板の特性を表1に示した。
実施例1から4で作製した両面銅張積層板の表面にサブトラクティブ法により回路形成(テストパターン)を行った。さらに,作製した2枚の回路付き両面銅張積層板表面を接着性向上のため酸化粗化処理し,実施例1から4で作製した接着シート1枚を挟んで重ね合せ,さらに外側に樹脂付き銅はく1枚を積層プレスして内層回路付き6層プリント配線板を作製した。これらプリント配線板に定法により外層回路加工,スルーホール形成,レジストインク印刷,部品実装を行ったが,通常のプリント配線板製造工程において問題無く製造できることを確認した。
【0030】
比較例1〜2
実施例1〜4と同様にして,表1に示す配合および実施例に示す方法で樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物を用いて実施例と同様に樹脂付き銅はく、接着シートを作製し,銅張積層板の作製を行った。しかし,比較例1においては,硬化系のバランスが崩れたことにより、良好な接着シートおよび樹脂つき銅はくを得られず、成形物が得られなかったため、評価を中止した。また、比較例2においては、リン系難燃剤を添加しなかったために,十分な難燃性が得られなかった。よって,他の評価は中止した。
【0031】
【表1】

【0032】
表1より,例示した実施例においては,必要なリン系難燃剤量を含み且つ樹脂組成物の組成が適正であるため,生産性・成形性に問題がなく十分な難燃性を保持した樹脂付き銅はく、および接着フィルムが得られた。実施例1では,本発明で必須とする難燃剤を用いることで,十分な難燃性を確保すると共に,良好な製品特性を得ることが出来た。実施例2では、縮合型燐酸エステルも併用したが,十分な特性を得ることができた。実施例3では,反応性リン系難燃剤を併用したが,その割合が適切であった為に,硬化系に大きな影響を与えることがなく良好な特性を得ることが出来た。また、実施例1のフィラーを除去し、可燃成分である樹脂単独の配合を作製したが、本発明の規定する範囲内のリン含有量で難燃性を確保できると共に、良好な特性を得ることができた。
【0033】
一方,比較例2においては,リン系難燃剤を添加したが,反応性を有する化合物が過剰であったために,硬化特性が著しく変動し,成形性に大きな影響がでた。また,比較例2においては,リン系難燃剤を添加しなかったために難燃性を確保できなかった。
よって,十分な難燃性を確保しつつ適正な硬化性を保てる適正な難燃剤の配合比,配合量という点において,本発明の優位性は明確である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示す有機リン化合物を含むエポキシ樹脂、または尿素樹脂、またはメラミン樹脂、またはフェノール樹脂からなる難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート。
【化1】

(但し,R1〜13は水素原子もしくは,ハロゲン元素を含まず,かつ反応性を有さないC〜C20の炭素を有する有機基を示す)
【請求項2】
上記有機リン化合物が下記式(2)で示される化合物である難燃性樹脂組成物を用いた請求項1記載の樹脂付き銅はく、接着シート。
【化2】

【請求項3】
請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物に下記式(3)に示す有機リン化合物を添加した難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート。
【化3】

(但し,R14〜18は水素原子もしくは,ハロゲン元素を含まないC〜C20の炭素を有する有機基を示す)
【請求項4】
請求項3の式(3)で示した,有機リン化合物が下記式(4)で示される縮合型燐酸エステルである難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート。
【化4】

【請求項5】
請求項1〜4記載の難燃性樹脂組成物にフィラーを添加した難燃性樹脂組成物を用いた樹脂付き銅はく、接着シート。
【請求項6】
請求項1〜5記載の樹脂付き銅はく,もしくは接着シートおよび金属張り積層板,プリプレグを任意に組合せて作られるプリント配線板。


【公開番号】特開2006−1076(P2006−1076A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178186(P2004−178186)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】