説明

難燃性樹脂組成物及び難燃性樹脂積層体

【課題】ハロゲン系化合物を使用せず、リン系化合物を配合してなる難燃性樹脂組成物において、従来の難燃性樹脂組成物に比べて、より優れた難燃性を付与することができる、新たな難燃性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)、リン系化合物(B)、及び未発泡状態の発泡剤(C)を含有してなる樹脂組成物であり、前記樹脂組成物を厚み0.1mmのシート状に成形したときのJIS K7361−1に基づき測定した全光線透過率が80%以上であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の封止材や、光学部材の接着剤など、高度な難燃性と透明性が要求される用途に用いることができる、難燃性樹脂組成物及び難燃性樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂などに代表されるような、紫外線や電子線などの活性エネルギー線によって硬化する樹脂組成物を難燃化するための手法として、従来は、ハロゲン系化合物、特に臭素系化合物を配合する手法が一般的に用いられてきた。しかし、ハロゲン系化合物は、燃焼時にダイオキシン類などの有害ガスが発生する要因となることが指摘されており、廃棄物焼却処理やサーマルリサイクルの際の安全性に問題があるだけでなく、火災発生時における有害ガスの発生が人体に影響を及ぼす可能性もある。そのため、ハロゲン系化合物の代替として、リン系化合物や、金属水酸化物、窒素系化合物等の無機系難燃剤を使用することが検討されている。
【0003】
例えば特許文献1には、エポキシ樹脂、硬化剤、及びホスフィンオキサイドを必須成分として含有する難燃性樹脂組成物が開示され、特許文献2には、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤としてホスフィン酸塩又はジホスフィン酸塩を含有する難燃性エポキシ樹難燃性が開示され、特許文献3には、難燃性、耐熱性、金属箔引き剥がし強度に優れた樹脂組成物として、平均粒径が2〜5μmであり、且つ比表面積が2.0〜4.0m/gであるホスフィン酸塩、熱硬化性樹脂、該熱硬化性樹脂の硬化剤を含有する樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−200140号公報、請求項1
【特許文献2】特開2002−284963号公報、請求項1
【特許文献3】特開2006−143844号公報、要約書及び請求項1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リン系化合物は、ハロゲン系化合物のように燃焼時に有毒ガスを発生することはないが、難燃性付与効果はハロゲン系化合物に及ばない。そのため、樹脂組成物層の層厚さが大きい場合、特に層厚さが1mm以上の場合であれば、十分に難燃性を付与できるが、層厚さが小さい場合、特に層厚さが1mm未満の場合には、難燃性を十分に付与できないという課題を抱えていた。また、ポリエチレンテレフタレートなどのような非難燃性樹脂からなるフィルム間に、リン系化合物を含有する樹脂組成物層を介在させた場合、積層体として十分な難燃性を付与することができないという課題を抱えていた。
【0006】
さらに、金属水酸化物、窒素系化合物については、難燃性を付与するためには多量に添加したとしても十分な難燃性は得られず、透明性を損なうため、実用に耐えうるものではない。
【0007】
そこで本発明は、ハロゲン系化合物を使用せず、リン系化合物を配合してなる難燃性樹脂組成物であって、透明性を維持しつつ、従来のこの種の難燃性樹脂組成物に比べて、より優れた難燃性を付与することができる、新たな難燃性樹脂組成物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)、リン系化合物(B)、及び未発泡状態の発泡剤(C)を含有してなる樹脂組成物であり、前記樹脂組成物を厚み0.1mmのシート状に成形したときのJIS K7361−1に基づき測定した全光線透過率が80%以上であることを特徴とする難燃性樹脂組成物を提案する。
【0009】
本発明の難燃性樹脂組成物は、ハロゲン系化合物を含有しないため、環境汚染や、燃焼時の有毒ガスを発生することがなく、安全性に優れている。しかも、高温に加熱されると、リン系化合物(B)の炭化反応が進むと共に発泡剤(C)が発泡して断熱層を形成するため、極めて薄く成形した場合であっても、透明性を維持しつつ、格別優れた難燃性を付与することができる。よって、半導体の封止材や、光学部材の接着剤など、高度な難燃性と透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
また、本発明の難燃性樹脂組成物は、これを用いてなる樹脂組成物層の厚さが薄くても十分な難燃性を付与することができる上、ポリエチレンテレフタレートなどのような非難燃性樹脂からなる層の少なくとも片面に、本発明の難燃性樹脂組成物からなる難燃性透明樹脂層を形成することにより、積層体としても十分な難燃性を発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例としての難燃性樹脂組成物(以下「本難燃性樹脂組成物」という)について説明する。ただし、本発明の範囲が、本難燃性樹脂組成物に限定されるものではない。
【0011】
<本難燃性樹脂組成物の成分>
本難燃性樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)、リン系化合物(B)、及び未発泡状態の発泡剤(C)を含有してなる難燃性樹脂組成物である。
【0012】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A))
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)の主成分である樹脂(ベース樹脂)は、活性エネルギー線によって硬化され、かつ少なくとも硬化後に透明性を有するものであれば、特に制約なく使用することができる。
活性エネルギー線としては、例えば紫外線、電子線、γ線、X線などのように、工業的に利用可能なエネルギー線を挙げることができる。
【0013】
中でも、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)の主成分樹脂(ベース樹脂)としては、硬化前の段階で、軟化温度や弾性率を低下させる可塑化作用を有する樹脂が好ましい。かかる観点から、分子量3000以下のモノマーとして一般に使われる樹脂が好ましい。
【0014】
その中でも特に、分子内に(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基、チオール基、マレイミド基の何れか1種類以上を有する化合物を少なくとも含む樹脂が好ましい。
具体例としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリ(又はモノ)エチレングリコールのジ(メタ)アクリレート;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリ(又はモノ)プロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート;1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,14−テトラデカメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル]−プロパン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]−スルフォン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]−スルフォン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]−スルフォン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル]−スルフォン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル]−スルフォン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル]−スルフォン、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]−スルフィド、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]−スルフィド、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル]−スルフィド、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル]−スルフィド、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル]−スルフィド、ジ[(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェート、トリ[(メタ アクリロイルオキシエトキシ]フォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]フェニル−ホスフェート、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸フォスフォエチル、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等の(メタ)アクリレート化合物、スチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、N−ビニルピロリドン等のビニル化合物、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリル、ジアリルフタレート、ジメタリルフタレート等のアリル化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルポキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペートなどのグリシジル(エポキシ)基を有する化合物、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼンなどのオキセタニル基を有する化合物、1,4−ブタンジチオール、1,10
− デカンジチオール、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、4,5− ビス(メルカプトメチル)−o−キシレン、1,6−ヘキサンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、s−トリアジン−2,4,6−トリチオール等チオール化合物、4,4’−メチレンビス(N−フェニルマレイミド)、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイミド、1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、トリエチレングリコールビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、m−トリレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−ジフェニルメタンジマレイミド、N,N’−ジフェニルエーテルジマレイミド、N,N’−ジフェニルスルホンジマレイミド、1,4−ビス(マレイミドエチル)−1,4−ジアゾニアビシクロ−[2,2,2]オクタンジクロリド、4,4’−イソプロピリデンジフェニル=ジシアナート・N,N’−(メチレンジ−p−フェニレン)ジマレイミドのようなマレイミド;N−(9−アクリジニル)マレイミドのようなマレイミド基とマレイミド基以外の重合性官能基とを有するマレイミドなどを挙げることができる。
これらの化合物は、1種を単独で、又は相溶性、非熱反応性、活性エネルギー線硬化性等を損なわない組み合わせで2種以上を併用することができる。
【0015】
なお、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)は、エネルギーとして比較的弱い紫外線等で硬化させる場合には、フィルムの硬化反応性を上げるために、光開始剤を含有するのが好ましい。但し、エネルギーとして比較的強い電子線等で硬化がさせる場合には、光開始剤はあまり必要ない。
【0016】
この際、光開始剤としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)の主成分樹脂(ベース樹脂)がアクリロイル基、ビニル基、アリル基、チオール基の何れか1種類以上を有する化合物を含む場合には、例えばベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフインオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド、カンファーキノン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピロリル−1−フェニル)チタニウム等のラジカル重合開始剤を挙げることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
これらの中では特に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2− ジフェニルエタン−1−オンが溶融成形時の熱安定性、反応性、透明性、価格などの面で好適である。
【0017】
他方、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)の主成分樹脂(ベース樹脂)が、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基の何れか1種類以上を有する化合物を含む場合には、例えばp−フェニルベンジルメチルスルホニウム塩、p−フェニルジメチルスルホニウム塩や、p−ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウム塩等のベンジルメチルスルホニウム塩や、トリフェニルスルホニウム塩、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム塩等のトリアリールスルホニウム塩や、ビス−[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド骨格を持つジスルホニウム塩などカチオン重合開始剤の開始剤などを好適に用いることができ、これらは1種を単独で使用してもよいし、又2種以上を併用してもよい。
中でも、熱安定性の点から、ビス−[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド骨格を持つジスルホニウム塩が特に好ましい。これらスルホニウム塩の対アニオンとしては、SbF6−、AsF6−、PF6−、BF6−等が挙げられるが、親核性が比較的強くアニオンの安定性が高いことからPF6−が好適に用いられる。
【0018】
光開始剤の配合量については、組成物の硬化性等に応じて適宜調整すればよい。反応性、透明性、価格の面を考慮すると、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.2〜5質量部配合するのが好ましい。
【0019】
(リン系化合物(B))
リン系化合物(B)は、リンを含有する化合物であって、融解温度が180℃以上である化合物であることが好ましい。本難燃性樹脂組成物は、加工或いは使用時において、150℃以上に加熱される場合が想定されるため、融解温度が180℃以上であるリン系化合物(B)を用いることにより、このような加工及び使用時においても、樹脂組成物(A)との相分離や、リン系化合物の成形品表面へのブリードアウトを抑制することができる。
よって、リン系化合物(B)としては、融解温度が180℃以上であるリン系化合物を用いることがより好ましい。但し、融解温度が180℃以上であるリン系化合物には、より高温(例えば250℃付近)で固体状態にあるリン系化合物が包含されるものとする。
【0020】
融解温度が180℃以上であるリン系化合物としては、例えばジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等のジアルキルホスフィン酸、または、ジアルキル酸のアルカリ金属塩を、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、錫、鉛、ゲルマニウム、チタン、亜鉛、鉄、セシウム、ストロンチウム、マンガン、リチウム、ナトリウム、カリウム等の金属化合物と反応させることで得られるホスフィン酸塩、縮合リン酸エステルアミド、及び、ポリリン酸アンモニウム等を挙げることができる。これらのうちの一種又は二種以上の組み合わせからなる混合物を使用することができる。
【0021】
中でも、リン系化合物の炭化反応の進み易さの観点から、ホスフィン酸塩、その中でもホスフィン酸の金属塩、例えばジエチルホスフィン酸アルミニウムを用いるのが好ましい。リン系化合物(B)としてホスフィン酸塩を配合すれば、他のリン系化合物に比べて低濃度でも難燃性を得ることができるため、例えば本難燃性樹脂組成物からフィルムを作製する場合に、増粘し難いからフィルムを作製し易く、且つフィルム強度を維持することができる。また、燃焼時における燃焼物の滴下を抑制することもできる。
【0022】
商業的に入手可能なホスフィン酸塩としては、例えばクラリアントジャパン社製EXOLIT OP1230、930、935、縮合リン酸エステルアミドとしては、四国化成工業社製SP703H、ポリリン酸アンモニウムとしては、CHITEC社製ZURAN484を挙げることができる。
【0023】
リン系化合物(B)の配合量は特に限定するものではない。例えば本難燃性樹脂組成物の全体の質量に対して10〜70質量%の含有量であるのが好ましく、中でも30質量%以上或いは60質量%以下であるのがより好ましく、その中でも40質量%以上或いは55質量%以下であるのがさらに好ましい。
かかる範囲で、リン系化合物(B)、特にホスフィン酸塩を配合することで、リン系化合物(B)が少な過ぎて難燃性が得られないことがない一方、リン系化合物(B)が多過ぎて、機械物性、例えばフィルム強度などが低下したり、成形時に粘度が過度に上昇したりすることがないから、好ましい。
【0024】
(発泡剤(C))
発泡剤(C)は、未発泡状態で本難燃性樹脂組成物に含有されていることが重要である。本難燃性樹脂組成物が未発泡状態の発泡剤を含有していれば、本難燃性樹脂組成物を加熱して燃焼させた時に、発泡剤が速やかに分解して発泡し、分解時の吸熱作用と、窒素或いは二酸化炭素等の不活性ガスによる可燃性ガスの希釈効果とによって、目的とする難燃性を実現することができる。加えて、燃焼時における発泡により断熱層が形成されるため、格別に優れた難燃性を実現することができる。
【0025】
発泡剤(C)が未発泡状態であるか否かは、本難燃性樹脂組成物からなる層或いは成形物(フィルムや膜含む)の断面を電子顕微鏡で観察し、発泡剤の様子や発泡剤を中心とした空隙の様子などを観察することにより、明確に判定することができる。定量的に判断する場合には、例えば本接着性樹脂組成物からなる成形物(フィルムや膜含む)から厚さ700Åの薄片を採取し、走査型電子顕微鏡により2000倍にて観察し、実寸法30μm×30μmのサイズ内に1μm以上の空隙が幾つ存在するかを計測し、空隙の数が5個以下となるものを「未発泡状態」と判定することができる。
【0026】
発泡剤には、発熱型発泡剤と、吸熱型発泡剤とがあるが、本難燃性樹脂組成物には、吸熱型発泡剤を用いるのが好ましい。発熱型発泡剤を用いると、発泡による発熱によって加速度的に燃焼が進んでしまうため、難燃性の観点から、吸熱型発泡剤を使用するのが好ましい。但し、発熱型発泡剤と吸熱型発泡剤の両方を混合して用いることもできる。
吸熱型発泡剤としては、例えば炭酸水素ナトリウムや炭酸マグネシウム等の無機物を主成分とする無機系発泡剤、或いは、アゾジカルボンアミドを主成分とする有機系発泡剤を挙げることができる。
【0027】
また、発泡剤(C)としては、分解温度が180℃以上、特に190℃以上の発泡剤を用いることが好ましい。本難燃性樹脂組成物は150℃以上に加熱しながら加工したり、或いは使用時に150℃以上にエージング処理したりすることが想定されるため、加工及び使用時に発泡剤が発泡しないように、発泡剤(C)の分解温度は180℃以上、特に190℃以上であることが好ましい。
理想的には、発泡剤(C)が発泡した際に発熱される熱によってリン系化合物(B)の炭化反応が促進されるのが好ましい。よって、発泡剤の分解温度が高過ぎると、発泡剤(C)が発泡する前に、リン系化合物(B)が炭化することになるため、発泡剤(C)の分解温度は350℃以下であるのが好ましい。
このような点を総合すると、発泡剤(C)の分解温度は190〜350℃であることがより好ましく、中でも195℃以上或いは300℃以下であることがさらに好ましく、その中でも特に200℃以上或いは250℃以下であることがさらに好ましい。
なお、発泡剤(C)の分解温度は、例えばRIGAKU社製Thermo Plus TG8120を用いて、発泡剤10mgを昇温速度5℃/分、窒素雰囲気下で加熱し、質量が1%減少した時の温度を分解温度として計測することができる。
【0028】
このような発泡剤(C)の具体例としては、例えば炭酸水素ナトリウムや炭酸マグネシウムを主成分とする無機系発泡剤、或いは、アゾジカルボンアミド、N,N‘−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等を主成分とする有機系発泡剤を挙げることができ、これらを一種単独で用いることもできるが、これらを混合して用いることもできる。
中でも、炭酸水素ナトリウム及びアゾジカルボンアミドの何れか、又は、これらの混合物を用いるのが好ましい。
【0029】
商業的に入手可能な発泡剤としては、三協化成社製「セルマイク」シリーズ(有機系発泡剤、無機系発泡剤)、永和化成工業社製「セルボン」シリーズ(無機系発泡剤)、「ネオセルボン」シリーズ(有機系発泡剤)、「エクセラー」シリーズ(有機系発泡剤)、「スパンセル」シリーズ(有機系発泡剤)、「ビニホールAC」シリーズ(有機系発泡剤)、「セルラー」シリーズ(有機系発泡剤)等を挙げることができる。
【0030】
発泡剤(C)の配合量は特に限定するものではない。例えば本難燃性樹脂組成物の全体の質量に対して0.1〜10質量%の割合で配合することが好ましく、中でも1質量以上或いは8質量%以下の割合、中でも特に2質量%以上或いは5質量%以下の割合で配合することがさらに好ましい。
かかる範囲で発泡剤(C)を配合することにより、機械物性(例えばフィルムの強度)を低下させることなく、優れた接着性と難燃性を付与することができる。
【0031】
(その他)
なお、本難燃性樹脂組成物は、用途に応じて適宜成分を配合することができる。例えば紫外線吸収剤、可塑剤、充填材、顔料、染料等の着色剤、酸化防止剤、熱安定剤等を配合することが可能である。ただし、これらの成分に限定するものではない。
【0032】
<本難燃性樹脂組成物の物性>
本難燃性樹脂組成物の形態は、特に限定するものではない。例えば液状、粘性ゲル状、その他の接着剤状など任意である。
【0033】
本難燃性樹脂組成物は、厚み0.1mmのシート状に成形したとき、すなわちシート表面が平滑になるように厚み0.1mmに成形したとき、成形したシートについて、JIS K7361−1に基づき測定した全光線透過率が80%以上であることが重要であり、好ましくは該全光線透過率が85%以上、特に好ましくは90%以上である。
厚み0.1mmにシート成形したときに全光線透過率が80%以上であれば、本難燃性樹脂組成物をどのような形態で用いたとしても、十分に透明性を確保することができるから、例えば半導体の封止材や、光学部材の接着剤など、高度な難燃性と透明性が要求される用途に好適に用いることができる。また、ポリエチレンテレフタレートなどのような非難燃性樹脂からなる層の少なくとも片面に積層することで、透明性を損なうことなく十分な難燃性を付与することができる。
このように本難燃性樹脂組成物の透明性を高めるためには、次のように製造すればよく、特に発泡剤の分解、混合時における気体の混入などに留意して製造するのが好ましい。
【0034】
<本難燃性樹脂組成物の製造方法>
本難燃性樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)、リン系化合物(B)、発泡剤(C)及びその他添加剤を混合して製造することができる。この際、必要に応じて、樹脂の種類、粘度に応じて適宜選択して加熱しながら混合を行うこともできる。但し、加熱温度は少なくとも発泡剤(C)の分解温度より低温とする必要があり、中でもリン系化合物(B)の融解温度より低温とするのがさらに好ましく、特に130℃以下とするのがより一層好ましい。また、原材料の混合は、必要に応じて窒素雰囲気下で行なうのが好ましい。
【0035】
<本難燃性樹脂組成物の硬化物>
本難燃性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させた場合の形態についても任意であり、例えば液状、粘性ゲル状、その他の接着剤状、膜状、フィルム状、シート状、パネル状、その他の形状に任意に加工することができ、その際、それぞれの成形方法は公知の方法を適宜採用すればよい。
【0036】
活性エネルギー線としては、特に制約なく、工業的に利用できるものが応用でき、紫外線、電子線、γ線、X線等が挙げられる。透過厚さ、エネルギー、設備コストのほか、光開始剤や増感剤等の添加剤のコストや、品質への負荷等総合的などを総合的に判断すると、紫外線が利用しやすい。
紫外線源としては低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ等の紫外線ランプをはじめ、各種発光特性のものが特に制限なく利用でき、フィルム厚さや硬化状況等に応じて調整ができる。
【0037】
また、本難燃性樹脂組成物に照射する活性エネルギー線のエネルギーに関しても、用途や形態に応じて適宜調整すればよい。目安としては、紫外線の場合、照度として0.1J/cm〜5J/cm程度が好ましい。但し、電子線、γ線、X線では、1kGy〜50kGy程度が好ましい。
また、照射効率を向上するために、照射雰囲気を窒素等の不活性ガスとしたり、成形した組成物を加温しながら照射したりしてもよい。
【0038】
<本難燃性樹脂組成物の用途>
本難燃性樹脂組成物は、1mm未満の厚さに成形した場合であっても、優れた難燃性と優れた接着性と透明性を得ることができるため、例えば難燃性と透明性が要求される接着剤として好適に使用することができる。例えば半導体封止材、LED封止材、電子回路基板、ダイボンディング材料、電気製品組立用接着剤、高電圧変圧器用材料、電車モーター用材料、リニアモーター用材料、自動車搭載用材料、電気絶縁用材料、光導波路用材料等に好適に用いることができる。
また、ポリエチレンテレフタレートなどのような非難燃性樹脂からなる層の少なくとも片面に積層することで、透明性を損なうことなく十分な難燃性を付与することができる。
【0039】
<難燃性樹脂積層体>
本難燃性樹脂組成物は、燃焼時に、リン系化合物(B)の炭化反応と共に発泡剤(C)が発泡して断熱層を形成するため、従来難燃化が困難であった非難燃性樹脂層に、本難燃性樹脂組成物からなる難燃性透明樹脂層を積層することによって、優れた難燃性を付与することができる。
【0040】
例えば、本難燃性樹脂組成物からなる難燃性透明樹脂層の片面若しくは両面に、熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂を含有する非難燃性樹脂層を形成することにより、難燃性樹脂積層体を形成することができる。
この際、非難燃性樹脂層は、例えばオリフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、スチレン系樹脂等のように、難燃性樹脂とは認められない非難燃性樹脂から形成することができる。
【0041】
なお、上記難燃性樹脂積層体は、その総厚みが500μm以下であり、かつ、当該総厚みに占める難燃性透明樹脂層の厚みの割合が20〜70%、中でも30%以上或いは70%以下、その中でも特に40%以上或いは70%以下であるのが好ましい。かかる範囲にすることにより、非難燃性樹脂が本来有する機械特性や耐熱性などを損なうことなく、難燃性を付与することができる。
【0042】
本難燃性樹脂組成物からなる難燃性透明樹脂層を、非難燃性樹脂層に積層するには、本難燃性樹脂組成物を、他の熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂と共押出したり、或いは、押出ラミネート、熱ラミネート、ドライラミネート等により本難燃性樹脂組成物からなるフィルムを積層したりすることで、積層体とすることができる。
但し、加工する際の加熱温度は、少なくとも発泡剤(C)の分解温度より低温である必要があり、さらにリン系化合物(B)の融解温度より低温であるのが好ましく、特に130℃以下であるのがより好ましい。
【0043】
本難燃性樹脂組成物を用いてなる難燃性樹脂積層体は、優れた難燃性、透明性、耐熱性を有するため、例えば、半導体封止材、LED封止材、電子回路基板、ダイボンディング材料、電気製品組立用接着剤、高電圧変圧器用材料、電車モーター用材料、リニアモーター用材料、自動車搭載用材料、電気絶縁用材料、光導波路用材料等に用いることができる。
【0044】
<用語の説明>
本発明において「難燃性樹脂組成物」及び「難燃性樹脂積層体」などにおける「難燃性」とは、UL94垂直燃焼試験UL94VTMの判定基準に基づき、少なくともVTM−2規格を満たすものであり、好ましくはVTM−1規格を満たすもの、中でも好ましくはVTM−0規格を満たすものである。
「難燃性樹脂組成物」の形態は、任意であり、例えば液状、層状、膜状、フィルム状、シート状、パネル状、その他のいずれの形態であってもよい。
「非難燃性樹脂層」とは、UL94垂直燃焼試験UL94VTMの判定基準に基づき、VTM−2規格を満たさないものである。
【0045】
本発明において「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含するものである。特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、その成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)が組成物中で50質量%以上、特に70質量%以上、中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める場合を包含する。
【0046】
また、本明細書において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意であり、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であるのが好ましい」旨の意図も包含する。
【0047】
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を示すが、本発明の範囲が実施例に制限を受けるものではない。
先ず、実施例の評価方法について説明する。
【0049】
<難燃性の評価>
実施例・比較例で得たフィルム(サンプル)を、長さ200mm×幅50mmに裁断して評価用サンプルを作成した。
Underwriters Laboratories社の安全標準UL94薄手材料垂直燃焼試験の手順に基づき、試験回数5回にて燃焼試験を実施し、燃焼の様子(特に燃焼中における滴下物の有無)を観察すると共に燃焼時間(試験回数5回の合計燃焼時間)を測定した。
なお、試験中にUL94垂直燃焼試験に定められる標線まで燃焼したものについては、燃焼時間を「標線までの燃焼時間の合計時間以上」と表に記載した。
UL94垂直燃焼試験UL94VTMの判定基準に基づき、VTM−0、1、2の規格を満たすか否か判例し、VTM−2を満たさないものは規格外と評価し、VTM−0を満たすものを合格品と評価した。
【0050】
<透明性の評価>
実施例・比較例で得たフィルム(サンプル)について、JIS K7105に基づいて、全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。厚さ0.1mmでの全光線透過率が80%以上、ヘーズが2%以下であるものを合格と評価した。
[ヘーズ]=([拡散透過率]/[全光線透過率])×100
【0051】
<耐熱性の評価>
実施例・比較例で得たフィルム(サンプル)を、長さ100mm×幅100mmに裁断して評価用サンプルを作製し、この評価用サンプルをベーキング試験装置(大栄科学精器製作所製DKS−5S)内に静置し、120℃で60分間加熱した。加熱後のサンプルの外観を目視にて観察し、加熱前と変化がないものを「○」、収縮、シワ、変形等が生じているものを「×」と評価した。
【0052】
<発泡剤の発泡・未発泡の確認>
実施例・比較例で得たフィルム(サンプル)から厚さ700Åの薄片を採取し、走査型電子顕微鏡により2000倍にて観察し、実寸法30μm×30μmのサイズ内に、1μm以上の空隙が幾つ存在するかを計測し、空隙の数が5個以下の場合を「未発泡状態」、空隙の数が5個より多い場合を「発泡状態」と判定した。
【0053】
<原料>
次に、実施例・比較例で用いた原料、すなわち活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)、リン系化合物(B)、及び、発泡剤(C)について説明する。
【0054】
=活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)=
(A)−1:EMI社製OPTOCAST3507(紫外線硬化型エポキシ樹脂)
【0055】
=リン系化合物(B)=
(B)−1:クラリアント社製EXOLIT OP930(ジエチルホスフィン酸アルミニウム、平均粒径5μm、250℃で固体状態)
(B)−2:四国化成工業社製SP−703H(縮合リン酸エステルアミド、平均粒径:1.6μm、融解温度:180℃)
(B)−3:CHITEC社製ZURAN484(ポリリン酸アンモニウム、平均粒径:8μm、融解温度:280℃)
【0056】
=発泡剤(C)=
(C)−1:三協化成社製セルマイクC−2(吸熱型発泡剤、アゾジカルボンアミド系発泡剤、分解温度:204℃)
(C)−2:三協化成社製セルマイク417(吸熱型発泡剤、無機系発泡剤、分解温度:208℃)
【0057】
<実施例1>
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として(A)−1、リン系化合物として(B)−1、発泡剤として(C)−1を用い、(A)−1、(B)−1、(C)−1を質量比78:20:2で均一混合攪拌した後、減圧して気泡を取り除いた。次いで、この混合物を、厚さ0.05mmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にアプリケータを用いて厚さ0.1mmに塗工し、ウシオ電機製高圧水銀ランプを用いて80Wで積算光量2000mJ/cmとなるように前記塗工面に紫外線を照射し、その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、厚さ0.1mmの硬化フィルム(サンプル)を得た。
得られたフィルム(サンプル)に関して、難燃性、透明性、耐熱性の評価を行った結果を表1に示す。
【0058】
<実施例2>
(A)−1、(B)−1、(C)−1の混合比率を質量比58:40:2に変更した以外は実施例1と同様の方法で硬化フィルム(サンプル)を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
<実施例3>
(A)−1、(B)−1、(C)−1の混合比率を質量比38:60:2に変更した以外は実施例1と同様の方法で硬化フィルム(サンプル)を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
<実施例4>
リン系化合物として(B)−2を用い、(A)−1、(B)−2、(C)−1の混合比率を質量比58:40:2の割合に変更した以外は実施例1と同様の方法で硬化フィルム(サンプル)を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
<実施例5>
リン系化合物として(B)−3を用い、(A)−1、(B)−3、(C)−1の混合比率を質量比58:40:2の割合に変更した以外は実施例1と同様の方法で硬化フィルム(サンプル)を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
<実施例6>
発泡剤として(C)−2を用い、(A)−1、(B)−1、(C)−2の混合比率を質量比58:40:2の割合に変更した以外は実施例1と同様の方法で硬化フィルム(サンプル)を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
<実施例7>
実施例2において、離型処理していない厚さ0.05mmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に前記混合物を塗工し、総厚み0.15mmの積層フィルム(サンプル)としたものについて、実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0064】
<比較例1>
発泡剤を用いず、(A)−1、(B)−1を質量比60:40の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法で硬化フィルム(サンプル)を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
<比較例2>
リン系化合物を用いず、(A)−1、(C)−1を質量比95:5の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法で硬化フィルム(サンプル)を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
<比較例3>
リン系化合物の代わりに、昭和電工社製ハイジライトH−34(水酸化アルミニウム)を用い、(A)−1、ハイジライトH−34、(C)−1を質量比58:40:2の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法で硬化フィルム(サンプル)を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
(考察)
発泡剤を使用した実施例及び比較例(実施例1〜7、比較例2及び3)で得たフィルム(サンプル)について、発泡剤の発泡・未発泡の判定を行ったところ、いずれもフィルム内の発泡剤は「未発泡状態」であることが確認された。
【0069】
実施例と比較例を比較すると、リン系化合物(B)及び発泡剤(C)のいずれかを欠いている比較例に比べ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)、リン系化合物(B)、及び、発泡剤(C)を含有する実施例1〜7は、いずれも難燃性に優れ、全てが合格品と評価できることが分かった。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)、リン系化合物(B)、及び、発泡剤(C)を含有する実施例1〜6はいずれも、厚み0.1mmのフィルム(サンプル)の全光線透過率が80%以上、特に実施例1−2及び4−6は全光線透過率が90%以上であった。
【0070】
実施例及び比較例と、これまでの実施経験から、リン系化合物(B)としては、融解温度が180℃以上である化合物を用いることが必要であり、特に融解温度が190℃以上であるリン系化合物を用いることが好ましいことが分かった。
また、実施例及び比較例と、これまでの実施経験から、リン系化合物(B)としては、他のリン系化合物に比べて、低濃度でも難燃性を得ることができるという観点から、ジエチルホスフィン酸アルミニウムなどのホスフィン酸塩が好ましいことが分かった。
さらにまた、実施例及び比較例と、これまでの実施経験から、リン系化合物(B)の配合量に関しては、難燃性付与、機械物性、例えばフィルム強度、さらには成形時における粘度上昇などの観点から、本難燃性樹脂組成物の全体の質量に対して10〜70質量%の含有量であるのが好ましく、中でも30質量%以上或いは60質量%以下であるのがより好ましく、その中でも40質量%以上或いは55質量%以下であるのがさらに好ましいことが分かった。
なお、リン系化合物(B)の比表面積は、難燃性および成形性の観点より、1m/g〜50m/gの範囲内、好ましくは5m/g〜20m/gの範囲内であるのがよいと考えられる。
【0071】
発泡剤(C)に関しては、実施例及び比較例と、これまでの実施経験から、吸熱型発泡剤を用いるのが好ましく、中でも分解温度が190℃以上、特に195〜300℃、中でも特に200〜250℃の発泡剤を用いるのが好ましいことが分かった。
同じく実施例及び比較例と、これまでの実施経験から、発泡剤(C)の配合量は、難燃性、接着性、機械物性(フィルムの強度等)などの観点から、0.1〜10質量%、特に1〜8質量%の割合、中でも特に3〜5質量の割合で配合することがさらに好ましいことが分かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)、リン系化合物(B)、及び未発泡状態の発泡剤(C)を含有してなる樹脂組成物であり、前記樹脂組成物を厚み0.1mmのシート状に成形したときのJIS K7361−1に基づき測定した全光線透過率が80%以上であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
発泡剤(C)が、吸熱型発泡剤であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
発泡剤(C)が、分解温度が190℃以上の発泡剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(A)が紫外線硬化性エポキシ系樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
リン系化合物(B)がホスフィン酸塩であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
リン系化合物(B)が、ジエチルホスフィン酸アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
難燃性樹脂組成物中に占めるリン系化合物(B)の含有量が10〜70質量%であって、発泡剤(C)の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の難燃性樹脂組成物からなる難燃性透明樹脂層の少なくとも片面に、熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂を含有する非難燃性樹脂層を備えた難燃性樹脂積層体。
【請求項9】
上記難燃性樹脂積層体の総厚みが500μm以下であり、かつ、当該総厚みに占める難燃性透明樹脂層の厚みの割合が20〜70%であることを特徴とする請求項8に記載の難燃性樹脂積層体。
【請求項10】
上記非難燃性樹脂層が、ポリエチレンテレフタレートを含有する層であることを特徴とする請求項8又は9に記載の難燃性樹脂積層体。

【公開番号】特開2011−105821(P2011−105821A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260763(P2009−260763)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】